(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】車両の換気、暖房および/または空調システム用の換気装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/24 20060101AFI20240917BHJP
F24F 1/0022 20190101ALI20240917BHJP
F04D 29/44 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
B60H1/24 621
F24F1/0022
F04D29/44 S
(21)【出願番号】P 2022577320
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2021066175
(87)【国際公開番号】W WO2021255063
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2023-02-15
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505113632
【氏名又は名称】ヴァレオ システム テルミク
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100208188
【氏名又は名称】榎並 薫
(72)【発明者】
【氏名】ファブリス、アイル
(72)【発明者】
【氏名】オリビエ、ラウアー
(72)【発明者】
【氏名】ネストル、イスマエル、バレラ、サントヨ
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ、ドゥモリ
(72)【発明者】
【氏名】モアメド、アラウイ、ベンザクルム
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル、エンネル
(72)【発明者】
【氏名】マキシム、ローラン
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2014-0126501(KR,A)
【文献】特開2016-033352(JP,A)
【文献】特開2014-055568(JP,A)
【文献】特開平09-100800(JP,A)
【文献】特開2005-075347(JP,A)
【文献】実開平02-114797(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2017/0210198(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/24
F24F 1/0022
F04D 29/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の換気、暖房および/または空調システム(200)用の換気装置(100)であって、
前記換気装置(100)は、内部容積(210)を規定する少なくとも1つの壁(114)を含む少なくとも1つのハウジング(110)を備え、
前記内部容積(210)には、回転可能な少なくとも1つのラジアルプロペラ(120)と少なくとも1つのガイド部材(130)とが収容され、
前記ラジアルプロペラ(120)および前記ガイド部材(130)は、空気流(FA)を生成するように構成され、
前記空気流(FA)は、前記ラジアルプロペラ(120)の空気入口(126)と前記換気装置(100)の前記ハウジング(110)の前記壁(114)に形成された空気出口開口(112)との間において、前記ラジアルプロペラ(120)の回転軸
線(R)に対して平行な全体方向を有し、
前記ハウジング(110)の前記壁(114)の少なくとも一部は、前記ラジアルプロペラ(120)から流出する前記空気流(FA)をまっすぐにするように構成される、
換気装置(100)において、
前記換気装置(100)の前記ハウジング(110)は、前記ラジアルプロペラ(120)を収納する少なくとも1つの上部(115)と、前記ガイド部材(130)を収納する下部(116)と、を含み、
前記上部(115)は、前記ラジアルプロペラ(120)の前記回転軸線(R)から見た場合に凸状の少なくとも1つの第1湾曲部(117c)と、前記ラジアルプロペラ(120)の前記回転軸線(R)から見た場合に凹状の少なくとも1つの第2湾曲部(118c)と、を含み、
前記第1湾曲部(117c)は、前記ラジアルプロペラ(120)の縁部(124)を覆い、
前記第2湾曲部(118c)は、前記ラジアルプロペラ(120)の径方向空気出口(221)と対面するように配置され、
前記ラジアルプロペラ(120)は、複数の可動ブレード(122)を含み、
各可動ブレード(122)は、前記ラジアルプロペラ(120)の前記回転軸線(R)に面するように配向された内縁部(129)と、前記内縁部(129)から離れるように配向された外縁部(220)と、を含み、
少なくとも1つの外縁部(220)は、前記ラジアルプロペラ(120)の前記回転軸線(R)に対して平行に延び、 前記ガイド部材(130)は、前記空気流(FA)
の一部を、前記ラジアルプロペラ(120)の前記回転軸
線(R)に向けて導くように構成さ
れ、
前記空気流(FA)ガイド部材(130)は、複数の固定ブレード(132)を含み、
当該空気流(FA)ガイド部材(130)の少なくとも1つの固定ブレード(132)は、前縁部(135)および後縁部(136)により互いに接続する圧力面(137)と吸引面(138)とを含み、
前記固定ブレード(132)は、それぞれの前記固定ブレード(132)の径方向延在軸(X)に対して垂直な平面において見た場合に、キャンバライン(C)に沿って前記前縁部(135)と前記後縁部(136)との間で延びる断面を有し、
当該キャンバライン(C)は、円(C1、C2、C3)に内接し、
第1角度(β1)が、前記前縁部(135)における前記円(C1、C2、C3)に対する接線と前記前縁部(135)における前記キャンバライン(C)との間で形成され、
第2角度(β2)が、前記前縁部(135)における前記円(C1、C2、C3)に対する前記接線と前記後縁部(136)における前記キャンバライン(C)との間で形成され、
前記第1角度(β1)は、3°~10°の範囲にあり、
前記第2角度(β2)は、79°~128°の範囲にあり、
前記空気流(FA)ガイド部材(130)の少なくとも1つの固定ブレード(132)は、第1部分(S1)と第2部分(S2)と第3部分(S3)とを含み、
前記第1部分(S1)と前記第2部分(S2)と前記第3部分(S3)とは、前記固定ブレード(132)の前記径方向延在軸(X)に沿って前記ハウジング(110)の前記壁(114)に向かってこの順で整列し、
前記第1部分(S1)において測定される前記第1角度(β1)と前記第2角度(β2)との比率が、0.03~0.07の範囲にあり、
前記第2部分(S2)において測定される前記第1角度(β1)と前記第2角度(β2)との前記比率が、0.05~0.12の範囲にあり、
前記第3部分(S3)において測定される前記第1角度(β1)と前記第2角度(β2)との前記比率が、0.02~0.07の範囲にあり、
前記ハウジング(110)は、前記空気出口開口(111)を完全に閉鎖する空気フィルタ(113)を収容する、
ことを特徴とする換気装置(100)。
【請求項2】
前記空気流(FA)ガイド部材(130)は、前記ラジアルプロペラ(120)と前記空気出口開口(112)との間において軸方向に配置される複数の固定ブレード(132)を含む、
請求項1に記載の換気装置(100)。
【請求項3】
前記空気流(FA)ガイド部材(130)の少なくとも1つの固定ブレード(132)は、前記ハウジング(110)の前記壁(114)に堅固に接続する少なくとも1つの外端部(134)を含む、
請求項2に記載の換気装置(100)。
【請求項4】
前記ラジアルプロペラ(120)の前記回転軸
線(R)と前記ラジアルプロペラ(120)の前記可動ブレード(122)のうちの1つの前記内縁部(129)との間で、前記ラジアルプロペラ(120)の前記回転軸
線(R)に対して垂直な平面において測定される前記ラジアルプロペラ(120)の内径(R1)が、36mm~54mmの範囲にある、
請求項
1~3のいずれか一項に記載の換気装置(100)。
【請求項5】
可動ブレード(122)の前記内縁部(129)は、前記ラジアルプロペラ(120)の前記回転軸
線(R)に対して平行に測定される高さ(h1)を有し、
前記高さ(h1)は、前記ラジアルプロペラ(120)の前記回転軸
線(R)に対して平行に測定される当該可動ブレード(122)の前記外縁部(220)の高さ(h2)よりも大きい、
請求項
1~4のいずれか一項に記載の換気装置(100)。
【請求項6】
前記ラジアルプロペラ(120)は、少なくとも1つの動作部品(140)により回転可能であり、
前記ハウジング(110)は、前記ラジアルプロペラ(120)を動作させるための少なくとも1つの前記
動作部品(140)を収容可能な少なくとも1つの支持体(131)を含み、
前記ガイド部材(130)は、少なくとも1つの前記動作部品(140)を収容可能な前記支持体(131)と前記ハウジング(110)の前記壁(114)との間に配置される、
請求項1~
5のいずれか一項に記載の換気装置(100)。
【請求項7】
前記空気流(FA)ガイド部材(130)は、複数の固定ブレード(132)を含み、
当該空気流(FA)ガイド部材(130)の少なくとも1つの固定ブレード(132)は、前記動作部品(140)を収容可能な前記支持体(131)に堅固に接続する少なくとも1つの内端部(133)と、前記ハウジング(110)の前記壁(114)に堅固に接続する少なくとも1つの外端部(134)と、を含む、
請求項
6に記載の換気装置(100)。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載の少なくとも1つの換気装置(100)を備える、車両用の換気、暖房および/または空調システム(200)であって、
前記換気装置(100)により流される前記空気流(FA)と冷却材との間で熱を交換するように構成された少なくとも1つの熱交換器(202)を備える、換気システム(200)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気駆動自動車等の自動車に組み込まれることが意図される換気、暖房および/または空調システムの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、従来的に、この車両の車室に導かれることが意図された空気流を熱処理することが意図される換気、暖房および/または空調システムを備えている。この換気、暖房および/または空調システムは、少なくとも1つのケーシングを備え、その内部に少なくとも1つの熱交換器および少なくとも1つの換気装置が収容されている。例えば、熱伝達流体、すなわち、カロリーを収集し、運搬し、供給することができる流体が、この熱交換器内を通流する。空気流もこの熱交換器を通過する。この空気流は、熱交換器を通過することにより、車室に導かれる前にその温度を熱処理するように、温度を変化させる。
【0003】
熱交換器を通過し得る空気流を生成するように、換気、暖房および/または空調システムは、従来的に少なくとも1つの換気装置を備えている。換気装置は、ハウジングに収容された少なくとも1つのプロペラを備えている。このプロペラは、同じくハウジングに収容され得る動作部品により回転する。現行の換気装置は、軸方向空気入口と径方向空気出口とを備えている。軸方向空気入口は、すなわち、空気流を換気装置に、この換気装置のプロペラの回転軸に対して平行または実質的に平行な方向において流入させ得る開口である。径方向空気出口において、空気流はプロペラから径方向において流出する。換言すれば、このような換気装置は、従来的に、渦巻状に配置されていることにより、空気流は換気装置に第1方向において流入し、第1方向に対して垂直な第2方向においてこのハウジングから流出する。
【0004】
これらの換気装置の欠点は、装置から流出する空気流が径方向であるという性質を理由として、非常に嵩張るということである。このため、特に狭い換気システムに容易に設置することができない。
【0005】
KR2014/0054655A文書は、例えば、以下のような換気装置を記載している。この換気装置では、空気流が、この換気装置のプロペラの回転軸に対して平行な全体方向において、このプロペラの空気入口と換気装置の出口との間で通流する。本文書に記載の換気装置の欠点は、空気流がハウジングに形成された出口開口の周辺部を経由して換気装置から流出する傾向があるということである。換言すれば、換気装置のハウジングに形成された空気出口開口の周辺部で測定される空気流の流量が、この空気出口開口の中央部で測定されるこの空気流の流量よりも大きい。換気装置のこのようなタイプの空気出口開口は、空気フィルタにより閉鎖され得る。したがって、空気出口開口の周辺部と中央部との流量の差により、このような空気フィルタが最適に使用されない場合がある。これにより、この空気フィルタを、空気流の流量が空気出口開口の表面全体に亘って一定である、すなわち空気出口開口の中央部でも周辺部でも一定または実質的に一定である場合よりも頻繁に交換しなければならないことがある。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、この文脈に含まれ、その目的は、先行技術の換気装置よりも嵩張らず、空気流が空気出口開口のすべての場所で実質的に一定の流量を有する換気装置を提案することにより、少なくとも上に挙げた欠点に対処することである。
【0007】
したがって、本発明の目的は、車両の換気、暖房および/または空調システム用の換気装置であって、前記換気装置は、内部容積を規定する少なくとも1つの壁を備える少なくとも1つのハウジングを備え、前記内部容積には、回転可能な少なくとも1つのラジアルプロペラと少なくとも1つのガイド部材とが収容され、前記ラジアルプロペラおよび前記ガイド部材は、空気流を生成するように構成され、前記空気流は、前記ラジアルプロペラの空気入口と前記換気装置の前記ハウジングの前記壁に形成された空気出口開口との間において、前記ラジアルプロペラの回転軸に対して平行な全体方向を有し、前記ハウジングの前記壁の少なくとも一部は、前記ラジアルプロペラから流出する前記空気流をまっすぐにするように構成される。本発明によれば、前記ガイド部材は、前記空気流を、前記ラジアルプロペラの回転軸に向けるように構成されている。
【0008】
「ラジアルプロペラ」とは、空気流が、第1方向において、本例ではこのプロペラの回転軸に対して平行な方向において流入し、第2横断方向において、例えばこのプロペラの回転軸に対して垂直な方向において流出するプロペラを意味すると理解される。換言すれば、ラジアルプロペラは、本発明の意味において、軸方向空気入口および径方向空気出口を備える。「前記ハウジングの前記壁の少なくとも一部は、前記ラジアルプロペラから流出する前記空気流をまっすぐにするように構成される」とは、空気流がラジアルプロペラから流出する際に、空気流がハウジングの壁のこの一部に接触することにより、空気流をまっすぐにするように偏位させる、すなわち空気流をガイド部材に向かって導くように設計された形状をこの壁が有することを意味すると理解される。したがって、この換気装置のハウジングの形状、およびこの換気装置に収容された空気流ガイド部材が一体となって、ラジアルプロペラの回転により生成された空気流を、先行技術の換気装置と比較して本換気装置の全体的な嵩が減少した態様で流すことを可能とする。したがって、本発明による換気装置の空気出口は、ラジアルプロペラの軸方向延長線に配置することができるため、このような装置の径方向の嵩を減少させることができる。この結果、本発明による換気装置は、小型の車両、例えば少なくとも部分的に電気で駆動される車両の内部に、より容易に設置され得る。例えば、ラジアルプロペラは、動作部品により回転され得る。選択的に、この動作部品の支持体は、ハウジングの内部容積に収容され得る。本発明による換気装置により、ハウジングの壁に形成された出口開口の中心に軸方向に配置された支持体が存在する場合であっても、空気流を傾斜させてこれをラジアルプロペラの回転軸が通る出口開口の部分に合流させることにより、空気流の均質な分布をハウジングの壁に形成された出口開口の全表面に亘って得ることができる。
【0009】
本発明によれば、前記空気流ガイド部材は、前記ラジアルプロペラと前記空気出口開口との間において軸方向に配置される複数の固定ブレードを備え得る。例えば、前記空気流ガイド部材の少なくとも1つの固定ブレードは、前記ハウジングの前記壁に堅固に接続する少なくとも1つの外端部を備える。有利には、空気流ガイド部材の各固定ブレードは、ハウジングの壁に堅固に接続する外端部を備える。
【0010】
本発明の1つの特徴によれば、前記ラジアルプロペラは、複数の可動ブレードを備え、各可動ブレードは、前記ラジアルプロペラの前記回転軸に面するように配向された内縁部と、前記内縁部から離れるように配向された外縁部と、を備え、少なくとも1つの外縁部は、前記ラジアルプロペラの前記回転軸に対して平行に延びる。有利には、可動ブレードの各々の外縁部は、ラジアルプロペラの回転軸に対して平行な方向に各々延びる。
【0011】
本発明の別の特徴によれば、前記ラジアルプロペラの前記回転軸と前記ラジアルプロペラの前記可動ブレードのうちの1つの前記内縁部との間で、前記ラジアルプロペラの前記回転軸に対して垂直な平面において測定される前記ラジアルプロペラの内径は、36mm~54mmの範囲にある。例えば、前記回転軸と前記ラジアルプロペラの前記可動ブレードのうちの1つの前記外縁部との間で、前記回転軸に対して垂直な平面において測定される前記ラジアルプロペラの外径は、64mm~96mmの範囲にあり得る。
【0012】
有利には、可動ブレードの前記内縁部は、前記ラジアルプロペラの前記回転軸に対して平行に測定される高さを有し、前記高さは、前記ラジアルプロペラの前記回転軸に対して平行に測定される当該可動ブレードの前記外縁部の高さよりも大きい。例えば、ラジアルプロペラの可動ブレードの内縁部の高さとラジアルプロペラのこの可動ブレードの外縁部の高さとの比率は、1.1~1.9の範囲にあることが規定され得る。例えば、ラジアルプロペラの可動ブレードの内縁部の高さは、36mm~54mmの範囲にあり得るとともに、ラジアルプロペラのこの同一の可動ブレードの外縁部の高さは、29mm~44mmの範囲にあり得る。また、ラジアルプロペラの可動ブレードの内縁部と、ラジアルプロペラのこの可動ブレードの外縁部とは、異なる位置を取り得る、すなわち、ラジアルプロペラの回転軸に沿って互いに対してオフセットし得る。
【0013】
より具体的には、ラジアルプロペラの可動ブレードは、プロペラのボウルとプロペラの縁部との間でそれぞれ延びる。プロペラのボウルは、このラジアルプロペラの可動ブレードから見た場合に、凸状の形状を有する。可動ブレードの内縁部の高さおよびこの可動ブレードの外縁部の高さは、プロペラのボウルとプロペラの縁部との間において、このラジアルプロペラの回転軸に対して平行にそれぞれ測定される。
【0014】
本発明の1つの特徴によれば、ラジアルプロペラの各可動ブレードは、ラジアルプロペラの空気入口に面して配向される少なくとも1つの上ラインと、ハウジングの壁に形成された空気出口開口に面して配向される少なくとも1つの下ラインとにより規定され、このラジアルプロペラの少なくとも1つの可動ブレードの上ラインは、ラジアルプロペラの縁部からこのラジアルプロペラの回転軸に向かって突出する少なくとも1つの第1部分と、ラジアルプロペラのこの縁部により覆われる第2部分と、を有する。有利には、ラジアルプロペラの可動ブレードのすべての上ラインは、この第1部分とこの第2部分とを有する。ラジアルプロペラのボウルは、より具体的には、このラジアルプロペラの可動ブレードの下ラインを接続するように配置される。有利には、ラジアルプロペラのこのボウルは、閉鎖され得る。すなわち、このボウルは2つの連続する可動ブレードの間において連続的に延びる。この結果、ラジアルプロペラの回転により生成される空気流全体が、このラジアルプロペラから、その径方向空気出口を介して流出する。
【0015】
本発明の別の特徴によれば、前記換気装置の前記ハウジングは、前記ラジアルプロペラを収納する少なくとも1つの上部と、前記ガイド部材を収納する下部と、を備え、前記上部は、前記ラジアルプロペラの前記回転軸から見た場合に凸状の少なくとも1つの第1湾曲部と、前記ラジアルプロペラの前記回転軸から見た場合に凹状の少なくとも1つの第2湾曲部と、を備え、前記第1湾曲部は、前記ラジアルプロペラの縁部を覆い、前記第2湾曲部は、前記ラジアルプロペラの径方向空気出口と対面するように配置される。より具体的には、ラジアルプロペラの回転軸に対して垂直な平面において見た場合、第1湾曲部は、このラジアルプロペラの縁部を覆う。同様に、ラジアルプロペラの回転軸に対して垂直な平面において見た場合、第2湾曲部は、このラジアルプロペラの径方向空気出口と対面するように配置される。換言すれば、ハウジングの上部の第2湾曲部は、ラジアルプロペラから流出する空気流がこの第2湾曲部に接触するように配置され、これにより、この第2湾曲部は、ラジアルプロペラから流出する空気流をまっすぐにするように構成された一部を形成する。
【0016】
本発明の1つの特徴によれば、前記空気流ガイド部材は、複数の固定ブレードを備え、当該空気流ガイド部材の少なくとも1つの固定ブレードは、前縁部および後縁部により互いに接続する圧力面と吸引面とを備え、前記固定ブレードは、それぞれの前記固定ブレードの径方向延在軸に対して垂直な平面において見た場合に、キャンバラインに沿って前記前縁部と前記後縁部との間で延びる断面を有し、当該キャンバラインは、円に内接し、第1角度が、前記前縁部における前記円に対する接線と前記前縁部における前記キャンバラインとの間で形成され、第2角度が、前記前縁部における前記円に対する前記接線と前記後縁部における前記キャンバラインとの間で形成され、前記第1角度は、3°~10°の範囲にあり、前記第2角度は、79°~128°の範囲にある。例えば、ガイド部材の固定ブレードは、円形プロファイルとして、この円形プロファイルの中心がガイド部材の中心を形成する状態で配置され得る。有利には、空気流ガイド部材のすべての固定ブレードは、構造的に同一であり得る。
【0017】
本発明の1つの特徴によれば、前記空気流ガイド部材の少なくとも1つの固定ブレードは、第1部分と第2部分と第3部分とを備え、前記第1部分と前記第2部分と前記第3部分とは、前記ブレードの前記径方向延在軸に沿って前記ハウジングの前記壁に向かってこの順で整列し、前記第1部分において測定される前記第1角度と前記第2角度との比率が、0.03~0.07の範囲にあり、前記第2部分において測定される前記第1角度と前記第2角度との前記比率が、0.05~0.12の範囲にあり、前記第3部分において測定される前記第1角度と前記第2角度との前記比率が、0.02~0.07の範囲にある。有利には、第1部分と第2部分と第2部分とは、一体的に形成されている。すなわち、それらは、これらの部分のうちの少なくとも1つに損傷を与えることなく分解することができない単一のアセンブリを形成している。
【0018】
本発明によれば、前記ラジアルプロペラは、少なくとも1つの動作部品により回転可能であり、前記ハウジングは、前記ラジアルプロペラを動作させるための少なくとも1つの前記部品を収容可能な少なくとも1つの支持体を備え、前記ガイド部材は、少なくとも1つの前記動作部品を収容可能な前記支持体と前記ハウジングの前記壁との間に配置される。本発明の特定の適用例によれば、ガイド部材の中心と動作部品の支持体の中心とは、一致する。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、前記空気流ガイド部材は、複数の固定ブレードを備え、当該空気流ガイド部材の少なくとも1つの固定ブレードは、前記動作部品を収容可能な前記支持体に堅固に接続する少なくとも1つの内端部と、前記ハウジングの前記壁に堅固に接続する少なくとも1つの外端部と、を備える。換言すれば、空気流ガイド部材は、ハウジングに対して固定されることが理解される。有利には、空気流ガイド部材のすべての固定ブレードは、動作部品の支持体に堅固に接続する内端部と、ハウジングの壁に堅固に接続する少なくとも1つの外端部と、を備え得る。選択的に、ハウジングと空気流ガイド部材と動作部品の支持体とは、一体部品であり得る、すなわち、少なくともハウジング、空気流ガイド部材および/または支持体に損傷を与えることなく分解することができない単一のアセンブリを形成し得る。
【0020】
選択的に、空気フィルタが、ハウジングの壁に形成された空気出口開口と対面するように配置され得る。有利には、空気フィルタは、ハウジングの空気出口開口を閉鎖し得る。換言すれば、空気流ガイド部材により、ラジアルプロペラから流出する空気流を偏位させることで、空気フィルタの利用可能な全表面が使用され得ることになり、この空気フィルタの効率および耐久性が向上する。
【0021】
有利には、換気装置は、ラジアルプロペラを動作させるための部品を備える。例えば、ラジアルプロペラを動作させるための部品は、ラジアルプロペラのハブに収容され得る駆動シャフトを備える直流電気モータであり得る。したがって、必要に応じて、動作部品は、ハウジングにおいてこの目的のために設けられた支持体に収容されることが、以上から理解される。
【0022】
また、本発明は、上述の少なくとも1つの換気装置を備える、車両用の換気、暖房および/または空調システムであって、前記ラジアルプロペラにより生成された前記空気流と冷却材との間で熱を交換するように構成された少なくとも1つの熱交換器を備える、換気システムに関する。「冷却材」とは、状態を変化させる、または変化させないことによりカロリーを運搬し交換するように構成された流体を意味すると理解される。
【0023】
さらなる特徴、詳細および利点が、以下の図面に示す本発明の種々の図を参照しつつ例示を目的として以下に提供される詳細な説明を読むことで、より明瞭に明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本発明による少なくとも1つの換気装置を備える本発明による換気、暖房および/または空調システムの一部を概略的に示す。
【
図2】
図2は、本発明による換気装置の斜視図を示す。
【
図3】
図3は、本発明による換気装置のラジアルプロペラの斜視図を示す
【
図4】
図4は、本発明による換気装置の空気ガイド部材の斜視底面図を示す。
【
図5】
図5は、
図4に示す空気流ガイド部材の固定ブレードの第1セクションの断面であって、
図4に示す第1横断平面AAに沿って作製した断面を示す。
【
図6】
図6は、
図5に示す空気流ガイド部材の固定ブレードの第2セクションの断面であって、
図4に示す第2横断平面BBに沿って作製した断面を示す。
【
図7】
図7は、
図5に示す空気流ガイド部材の固定ブレードの第3セクションの断面であって、
図4に示す第3横断平面CCに沿って作製した断面を示す。
【
図8】
図8は、本発明による換気装置の鉛直断面図であって、
図1に示す鉛直平面DDに沿って作製した鉛直断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の特徴、代替実施形態および種々の実施形地は、それらが両立しない、または相互に排他的でない限り、種々の組み合わせにおいて組み合わせることができる。特に、以下に記載の特徴の選択のみを記載される他の特徴から別個に有する本発明の代替実施形態が想定され得る。これは、特徴のこの選択が、十分に技術的な利点を提供する、または本発明を先行技術から区別するのに十分である場合に限る。
【0026】
図1は、本発明による換気、暖房および/または空調システム200の一部を概略的に示している。以下で「システム200」と称するこの換気、暖房および/または空調システム200は、電気駆動自動車等の自動車に組み込まれて、空気流FAがその熱処理のために車両の車室に導かれる前にこれを熱処理することが意図されている。換言すれば、空気流FAは、車両の車室を冷却または加熱するように使用される。本発明によるシステム200は、少なくとも1つの熱交換器202が収納される少なくとも1つのケーシング201と、空気流FAを生成するように構成された本発明による少なくとも1つの換気装置100と、を備えている。熱交換器202は、冷却材と車両の車室に導かれることが意図された空気流FAとの間で熱を交換するように構成されている。ケーシング201は、有利には、処理済の空気流FAが車両の車室に向かって導かれることを可能とする。「冷却材」とは、本明細書において、状態を変化させる、または変化させないことによりカロリーを運搬し交換するように構成された流体を意味すると理解される。
【0027】
図示のように、本発明による換気装置100は、少なくとも1つのハウジング110を備えている。ハウジング110は、内部容積210を規定する少なくとも1つの壁114を備えている。内部容積210に、少なくとも1つの動作部品140と、ラジアルプロペラ120と、少なくとも1つの空気流FAガイド部材130と、少なくとも1つの空気フィルタ113が収容されている。有利には、空気フィルタ113は、ガイド部材130と熱交換器202との間で軸方向に配置される。動作部品140は、ラジアルプロペラ120を回転軸(回転軸線)Rを中心として回転させて空気流FAを生成するように構成されている。一方、ガイド部材130は、ハウジング110の壁114の少なくとも一部とともに、空気流FAをまっすぐにすることを支援する。これにより、空気流は、ラジアルプロペラ120の空気入口126とハウジング110の壁114に形成された出口開口との間において、ラジアルプロペラ120の回転軸Rに対して平行な全体移動方向を有する。以下にさらに詳細に説明するように、ラジアルプロペラ120の動作部品140の少なくとも1つの支持体131が、換気装置のハウジング110の内部容積210に同様に収容されている。空気流FAガイド部材130は、この支持体131とハウジング110の壁114との間に配置されている。
【0028】
図1に示す例によれば、換気装置のハウジング110とシステム200のケーシング201とは、一体的に形成されている。すなわち、それらは、ハウジング110および/またはケーシング201に損傷を与えることなく分解することができない単一のアセンブリを形成している。
【0029】
図2~
図8を参照して、本発明による換気装置100をさらに詳細に説明する。
【0030】
図2は、この換気装置100の斜視図を示す。換気装置100は、少なくともハウジング110を備え、その中に少なくとも1つの空気入口開口111および空気出口開口112が形成されている。空気出口開口112は、例えば空気フィルタ113により少なくとも部分的に閉鎖されている。より具体的には、空気入口開口111および空気出口開口112は、ハウジング110の壁114にそれぞれ形成されている。有利には、空気フィルタ113は、空気出口開口112を完全に閉鎖することができ、これにより換気装置100から排出されるすべての空気が、車両の車室に導かれる前に、この空気フィルタ113を通過することが保証される。
【0031】
図示例によれば、換気装置100は、主延在ラインDに沿って延びている。空気入口開口111および空気出口開口112は、この主延在ラインDに対して平行な平面および垂直な平面、または実質的に平行な平面および実質的に垂直な平面において延びている。
【0032】
ハウジング110、より具体的にはこのハウジング110の壁114は、全体としてベル型の形状を有している。すなわち、ハウジング110は、ハウジング110の主延在ラインDに対して垂直な平面において見た場合、空気入口開口111から空気出口開口112に向かって増加する寸法を持つ断面を有している。
【0033】
上述のように、ハウジング110の壁114は、換気装置100の内部容積を規定している。内部容積は、動作部品140により回転するように構成されたラジアルプロペラ120と、ラジアルプロペラ120の回転により生成された空気流がガイド部材130を通過した後に、その少なくとも一部をラジアルプロペラ120の回転軸に向けて導くように構成されたガイド部材130と、を少なくとも収納している。ラジアルプロペラ120は、支持体131に収容された動作部品140により回転可能である。例えば、動作部品140は、少なくとも1つのステータと少なくとも1つのロータとを備える電気モータであり得る。ロータは、ラジアルプロペラ120のハブ121に収容されたシャフトに回転的に接続している。換言すれば、ラジアルプロペラ120の回転軸Rは、このハブ121に対して平行に延びている。
【0034】
図2において、動作部品140ならびにその支持体131、ラジアルプロペラ120、およびガイド部材130が概略的に破線で示されている。図示のように、ラジアルプロペラ120およびガイド部材130は、ラジアルプロペラ120の回転軸Rに沿って、ハウジング110の壁114に形成された入口開口111と出口開口112との間に、この順で配置されている。ガイド部材130は、動作部品140とハウジング110の壁114との間に配置されている。より具体的には、ガイド部材130は、この動作部品140の支持体131とハウジング110の壁114との間に配置されている。「ラジアルプロペラ」とは、空気が、このプロペラの回転軸Rに対して平行な方向において流入し、プロペラの回転軸Rを横断する方向において流出するプロペラを意味すると理解される。以下に説明するように、図示例におけるラジアルプロペラの回転軸Rは、ハウジング110の主延在軸Dに対して平行である。
【0035】
ハウジング110は、ラジアルプロペラ120を収納する少なくとも1つの上部115と、空気流ガイド部材130を収納する下部116と、を備えている。例えば、このハウジング110の上部115と下部116とは、一体部品であり得る。すなわち、それらは、それらのうちの少なくとも一方に損傷を与えることなく分解することができない単一のアセンブリを形成している。
【0036】
上部115は、少なくとも1つの第1部分117と少なくとも1つの第2部分118とを備えている。第1部分117は、ハウジング110の壁114に形成された出口開口112に向かってフレア状になっており、その端部には空気入口開口111が形成されている。第2部分118は、少なくとも部分的に湾曲している。図示のように、第1フレア状部分117は、ハウジング110の延在ラインDに一致する旋回軸を有し、第2円筒状部分118は、同じくハウジング110の主延在ラインDに一致する旋回軸を有している。より具体的には、第1部分117は、空気入口開口111が形成された第1端部117aと、ハウジング110の主延在ラインDに沿って第1端部117aの反対側にある第2端部117bとの間で延びている。一方、第2部分118は、ハウジング110の主延在ラインDに沿って互いに対向する第1端部118aと第2端部118bとの間で延びている。図示のように、第2部分118の第1端部118aと第1部分117の第2端部117bとは、一致している。
【0037】
ハウジング110の上部115の第1部分117は、第1端部117aと第2端部117bとの間で延びる第1湾曲部117cを有している。一方、第2部分118は、第1部分117を延長する少なくとも1つの第2湾曲部118cを備えている。この第2湾曲部118cは、直線部118dにより延長している。換言すれば、この第2湾曲部118cは、第1部分117の第1湾曲部117cと第2部分118の直線部18dとの間に配置されている。図示のように、第1部分117の第1湾曲部117cおよび第2部分118の第2湾曲部118cは、反対方向に湾曲している。換言すれば、第1部分117の第1湾曲部117cは、ラジアルプロペラの回転軸Rから見た場合に凸状である。一方、第2湾曲部118cは、ラジアルプロペラの回転軸Rから見た場合に凹状である。換言すれば、第1湾曲部117cは、本発明による換気装置を取り囲む周囲環境に中心が配置された円に内接している。そして、第2湾曲部118cは、本発明による換気装置の内部容積に中心が配置された円に内接している。例えば、第2湾曲部118cは、ラジアルプロペラの回転軸Rに対して垂直な平面において45°の角度セクタに亘って測定される、23.1mm~34.7mmの範囲の曲率半径を有し得る。有利には、第2湾曲部118cは、28.9mmに等しい、または実質的に等しい曲率半径を有する。以下に説明するように、第2湾曲部118cは、ハウジング110の壁114の一部分であって、ラジアルプロペラ120から流出する空気流をまっすぐにするように構成された部分を形成する。
【0038】
こうして本構成がもたらされることで、図示例によれば、空気流は、換気装置100に空気入口開口111を介して第1方向において流入するとともに、この換気装置100から空気出口開口112を介して、第1方向に対して平行または実質的に平行な第2の方向において流出する。本明細書に図示の例によれば、第1方向および第2方向は、ハウジング110の主延在軸Dに対しても、ひいてはラジアルプロペラ120の回転軸Xに対しても平行である。
【0039】
図示しない実施形態によれば、ラジアルプロペラ120の回転軸Rから見た場合に、第1湾曲部117cも凹状であるように規定され得る。
【0040】
図3は、ハウジングの内部容積に収容可能なラジアルプロペラ120の斜視図である。以下の説明において、「ラジアルプロペラ」および「プロペラ」という用語は互換的に使用される。
【0041】
ラジアルプロペラ120は、複数の可動ブレード122を備えている。可動ブレード122は、一方でラジアルプロペラ120のボウル123により、他方でこのラジアルプロペラの縁部124により互いに接続している。より具体的には、各可動ブレード122は、ラジアルプロペラ120の空気入口126に面するように配向された少なくとも1つの上ライン125と、対応する上ライン125から離れるように配向された少なくとも1つの下ライン127と、を備えている。ラジアルプロペラ120の縁部124は、このラジアルプロペラ120の可動ブレード122の上ライン125を接続している。一方、ボウル123は、これらの可動ブレード122の下ライン127を接続している。
【0042】
可動ブレード122の上ライン125は、より具体的には、縁部124からプロペラ120の回転軸Rに向かって突出する少なくとも1つの第1部分125aと、本例においてプロペラ120の縁部124により覆われる第2部分125bと、を備えている。各可動ブレード122は、少なくとも1つの内縁部129と少なくとも1つの外縁部220とをさらに備え、これらは、この可動ブレード122の上ライン125を下ライン127に接続している。これらの可動ブレード122の内縁部129は、プロペラ120の回転軸Rに面するように配向され、外縁部220は、この回転軸Rから離れるように径方向に配向されている。
【0043】
したがって、可動ブレード122の内縁部129は、プロペラ120の内周P1を規定し、これらの可動ブレード122の外縁部220は、プロペラ120の外周P2を規定する。有利には、プロペラの縁部124の一部は、プロペラ120の空気入口126を規定する助けとなる。図示例によれば、可動ブレード122のうちの少なくとも1つの内縁部129は、このプロペラ120の前縁部を形成している。有利には、可動ブレード122の各々の内縁部129は、このプロペラ120の可動ブレード122の前縁部を形成している。
【0044】
プロペラのボウル123は、可動ブレード122の下ライン127を接続している。
図3に部分的に示すように、ボウル123は閉鎖している。換言すれば、2つの連続する可動ブレード122間に形成される各スペース222は、閉鎖している。プロペラ120のこのボウル123について、以下に
図8を参照してさらに詳細に説明する。
【0045】
上述のように、ラジアルプロペラ120は、少なくとも空気入口126と少なくとも1つの径方向空気出口221とを備えている。空気入口126を介して、空気は、プロペラ120に、このプロペラ120の回転軸Rに対して平行な方向に流入する。径方向空気出口221を介して、空気は、このプロペラ120から、このプロペラ120の回転軸Rを横断する方向において流出する。本明細書に図示の例によれば、この径方向空気出口221は、プロペラ120の外周P2に形成されている。すなわち、この径方向空気出口221は、一側ではプロペラ120の縁部124により、他側ではこのプロペラ120のボウル123により軸方向に規定されている。換言すれば、少なくとも1つの可動ブレード122の少なくとも外縁部220は、ラジアルプロペラ120の後縁部を形成している。有利には、すべての可動ブレード122の外縁部220が、ラジアルプロペラ120の後縁部をそれぞれ形成する。プロペラ120のボウル123が閉鎖した状態において、プロペラ120の回転により生成された空気流全体が、このプロペラ120から径方向空気出口221を介して流出することが理解される。
【0046】
最後に、
図3に示す例によれば、プロペラ120の可動ブレード122は、各々湾曲した形状を有している。すなわち、可動ブレード122は、その内縁部129とその外縁部220との間で円弧形状において延びている。有利には、プロペラ120は一体部品であり得る。すなわち、プロペラ120は、プロペラ120のハブ121、可動ブレード122、ボウル123、および/または縁部124に損傷を与えることなく分解することができない単一のアセンブリを形成し得る。
【0047】
本発明によれば、換気装置100は、空気流ガイド部材130も備えている。空気流ガイド部材130は、空気流をラジアルプロペラの回転軸Rに向けてその下流側に導くことができる。
図4は、このガイド部材130の実施形態を示す。より具体的には、
図4は、このガイド部材130をハウジングの壁114の一部と併せて示す底面斜視図である。
【0048】
図示例によれば、空気流ガイド部材130は、動作部品の支持体131とハウジングの壁114との間に径方向に配置されている。このガイド部材130は、より具体的には、支持体131とハウジングの壁114との間でそれぞれ延びる複数の固定ブレード132により形成されている。これらの固定ブレード132の各々は、径方向延在軸Xに沿って、支持体131に接触している内端部133と壁114に接触している外端部134との間で延びている。例えば、固定ブレード132のうちの1つの少なくとも1つの内端部133は、支持体131に堅固に接続し、この固定ブレード132の外端部134は壁114に堅固に接続している。図示例によれば、固定ブレード132のすべての内端部133が支持体131に堅固に接続し、これらの固定ブレード132のすべての外端部134が壁114に堅固に接続している。例えば、ガイド部材130と支持体131とハウジングの壁114とは、一体的に形成され得る。すなわち、それらは、ガイド部材130、支持体131または壁114に損傷を与えることなく分解することができない単一のアセンブリを形成する。
【0049】
また、固定ブレード132の各々は、少なくとも1つの前縁部135と少なくとも1つの後縁部136とを備えている。前縁部135を介して空気流がガイド部材130に流入し、後縁部136を介して空気流がこのガイド部材130から流出する。したがって、ガイド部材130がハウジングにおいて所定位置にある場合、前縁部135は、ハウジングに形成された空気入口開口に面するように配向され、後縁部136は、このハウジングの出口開口112に面するように配向される。また、前縁部135および後縁部136は、圧力面137および吸引面138により互いに接続している。
【0050】
有利には、これらの固定ブレード132は、均等に分散配置され得る。すなわち、第1固定ブレード132の圧力面137をこの第1固定ブレード132に続く第2固定ブレード132の吸引面138から分離するスペース139が、第2固定ブレード132の圧力面137を第2固定ブレード132の直後に続く第3固定ブレード132の吸引面から分離するスペース139の寸法と同等または実質的に同等の寸法を有し得る。
【0051】
以下にさらに詳細に説明するように、これらの固定ブレード132の各々は、特定の特徴を有する少なくとも3つの部分S1、S2、S3を事実上共有し得る。これらにより、これらの固定ブレード132の各々は、空気流をラジアルプロペラの回転軸に向けて導くことができる。
【0052】
図5~
図7は、これらの固定ブレード132のうちの1つの第1部分S1の断面、同一の固定ブレード132の第2部分S2の断面、およびこの固定ブレード132の第3部分S3の断面を示す。第1部分S1の断面は、ガイド部材130の中心230から第1距離r1を置いて配置された第1横断平面AAに沿って作成され、第2部分S2の断面は、ガイド部材130の中心230から第2距離r2をおいて配置された第2横断平面BBに沿って作成され、第3部分S3の断面は、ガイド部材130の中心230から第3距離r3を置いて配置された第3横断平面BBに沿って作成されている。第1横断平面AA、第2横断平面BBおよび第3横断平面BBは、関連する固定ブレード132の径方向延在軸Xに対して各々垂直である。図示のように、第1距離r1、第2距離r2、および第3距離r3は、本例においてプロペラを動作させる部品の支持体131の中央と一致するガイド部材130の中心230と、関連する固定ブレード132の前縁部135との間で測定される。本明細書に図示の例によれば、第1距離r1は80mmに等しい、または実質的に等しい。第2距離r2は90mmに等しい、または実質的に等しい。第3距離r3は100mmに等しい、または実質的に等しい。換言すれば、固定ブレード132の第1部分S1、第2部分S2および第3部分S3は、関連する固定ブレード132の径方向延在軸Xに沿って、関連する固定ブレード132の内端部133とこの固定ブレード132の外端部134との間において、この順で整列している。
【0053】
図示例によれば、第1部分S1において前縁部135を通過する第1直線D1と第2部分S2において前縁部135を通過する第2直線D2との間で測定される第1角度オフセットα1は、2.5°~4.5°の範囲にある。第2直線D2と第3部分S3において前縁部135を通過する第3直線D3との間で測定される第2角度オフセットα2は、3°~5°の範囲にある。より具体的には、第1直線D1は、ガイド部材の中心230、およびガイド部材のこの中心230から第1距離r1を置いて配置された固定ブレード132の前縁部135の一点を通過する。第2直線D2は、ガイド部材の中心230、およびこの中心230から第2距離r2を置いて配置された固定ブレード132の前縁部135の一点を通過する。第3直線D3は、ガイド部材の中心230、およびこの中心230から第3距離r3を置いて配置された固定ブレード132の前縁部135の一点を通過する。
【0054】
図5~
図7を参照して、これら3つの部分S1、S2、S3の各々に共通する特徴を、各部分に固有の特徴を提供する前に説明する。
【0055】
したがって、上述のように、各固定ブレード132は、前縁部135および後縁部136により互いに接続した圧力面137および吸引面138を備えている。固定ブレード132の断面は、キャンバラインCに沿って、前縁部135と後縁部136との間で延びていることに留意されたい。このキャンバラインCは、図中に破線で概略的かつ部分的に示す円C1、C2、C3に内接している。
【0056】
固定ブレード132の断面は、いくつかの共通の寸法を有する。特に、各固定ブレード132は、少なくとも1つの翼弦線Chと少なくとも1つの最大キャンバHmaxとを有している。固定ブレード132の翼弦線Chは、この固定ブレード132の前縁部135と後縁部136との間で延びる直線部分に相当する。本明細書に図示の例によれば、この翼弦線Chの寸法は、20.2mm~30.4mmの範囲にある。一方、固定ブレード132の最大キャンバHmaxは、翼弦線ChとキャンバラインCとの間において、翼弦線Chに対して垂直に延びるとともにキャンバラインCと交差する直線dに対して平行に測定されたこの固定ブレード132の寸法に相当する。最大キャンバHmaxは、このように測定され得る最大寸法に相当する。図示例によれば、最大キャンバHmaxは、3.1mm~4.7mmの範囲にある。また、固定ブレード132の前縁部135と、圧力面137と直線dとの交点との間で測定される距離P.Hmaxは、10mm~15.2mmの範囲にある。直線dは、上述の翼弦線Chに対して垂直な直線dであり、これに沿って最大キャンバHmaxが測定される。
【0057】
また、各固定ブレード132のこれらの部分の断面は、第1角度β1と第2角度β2との比率により特徴付けられる。第1角度β1は、固定ブレード132の前縁部135におけるキャンバラインCと、この固定ブレード132の前縁部135における円C1、C2、C3に対する接線との間で測定される。第2角度β2は、後縁部136におけるキャンバラインCと、この固定ブレード132の前縁部135における円C1、C2、C3に対する接線との間で測定される。
【0058】
図示例によれば、第1部分S1で測定される第1角度β1と第2角度β2との比率は、0.03~0.07の範囲にあり、第2部分S2で測定されり第1角度β1と第2角度β2との比率は、0.05~0.12の範囲にあり、第3部分S3で測定される第1角度β1と第2角度β2との比率は、0.02~0.07の範囲にある。換言すれば、この比率は、第1部分S1および第3部分S3において実質的に等しく、第2部分S2ではより大きい。
【0059】
これら種々の比率は、ガイド部材130の固定ブレード132の各々が担う曲率の進展を表す。これら種々の比率により、空気流は、ラジアルプロペラの回転軸に向かってガイドされ得る。本発明による換気装置100の動作を、
図8を参照して以下により詳細に説明する。
【0060】
例えば、第1部分S1で測定される第1角度β1は、4°~6.2°の範囲にあり、この第1部分S2で測定される第2角度β2は、85°~128°の範囲にある。一方、第2部分S2で測定される第1角度β1は、6°~9.3°の範囲にあり得るとともに、この第2部分S2で測定される第2角度β2は、79.5°~119.3°の範囲にある。最後に第3部分S3において測定される第1角度β1は、3.4°~5.2°の範囲にあり、第3部分S3において測定される第2角度β2は、79.4°~119.3°の範囲にある。
【0061】
図8は、換気装置100を、例えば
図2に示す鉛直平面DDに沿って作成した鉛直断面として示しており、したがって、ハウジング110の内部容積210、ならびに特にハウジング110のこの内部容積210内でのプロペラ120および空気流ガイド部材130の配置を示す。
【0062】
上述のように、ハウジング110は、主延在ラインDに沿って、空気入口開口111と空気出口開口112との間で延びている。空気入口開口111、プロペラ120、ガイド部材130、および空気出口開口112は、ハウジング110の主延在ラインDに沿って、この順で整列している。
【0063】
プロペラ120は、より具体的には、その空気入口126がハウジング110の壁114に形成された空気入口開口111に出現するように配置されている。プロペラ120を動作させるための部品の支持体131および空気ガイド部材130が、このプロペラ120の下方に、すなわちこのプロペラ120と空気出口開口112との間に、この空気ガイド部材130が動作部品の支持体131とハウジング110の壁114との間に配置された状態で、配置されている。上述のように、ここでは図示しない動作部品は、例えば電気モータの形態を取り得るとともに、プロペラ120のハブ121内に延び入る駆動シャフトを備え得る。したがって、駆動シャフトは、ハブ121を回転させ、これによりプロペラ全体120、特にこのプロペラ120の可動ブレード122が回転することで空気流FAが生成される。
【0064】
上述のように、プロペラ120の可動ブレード122は、プロペラ120のボウル123とこのプロペラ120の縁部124との間で延びている。プロペラ120のボウル123は、プロペラ120の内周から見た場合に、凸状の形状を有している。また、動作部品の駆動シャフトを収容し得るプロペラ120のハブ121が、このボウル123を横断している。図示のように、プロペラ120の少なくとも1つの可動ブレード122の外縁部220は、プロペラ120の回転軸Rに対して平行に延びている。有利には、すべての可動ブレード122の外縁部220は、プロペラ120の回転軸Rに対して平行にそれぞれ延びている。
【0065】
また、各可動ブレード122の内縁部129および外縁部220は、異なる高さおよび異なる位置を有することに留意されたい。「異なる位置」とは、可動ブレード122の内縁部129とこの可動ブレード122の外縁部220とは、プロペラ120の回転軸Rに沿って、互いに対してオフセットしていることを意味すると理解される。「縁部の高さ」とは、プロペラの回転軸Rに対して平行に、このプロペラ120のボウル123と縁部124との間で測定したこの縁部の寸法を意味すると理解される。したがって、プロペラ120の可動ブレード122の内縁部129の高さh1は、このプロペラ120の外縁部220の高さh2よりも大きい。特に、例えば、可動ブレード122の内縁部129の高さh1が、36.6mm~55mmの範囲にあり、この同一の可動ブレード122の外縁部220の高さh2が29mm~44mmの範囲にあるということが規定され得る。換言すれば、ブレードの内縁部129の高さh1とこの可動ブレード122の外縁部220の高さh2との比率は、1.1~1.9の範囲にある。また、プロペラ120は、内径R1によっても特徴付けられ得る。この内径R1は、プロペラ120の回転軸Rに対して垂直な平面において、プロペラ120の回転軸Rとプロペラ120の可動ブレード122のうちの1つの内縁部129の右側に位置するボウル123の点との間で測定される。換言すれば、この内径R1は、ハブ121の中心とプロペラ120の可動ブレード122のうちの1つの内縁部129との間で測定される。例えば、プロペラ120の内径R1は、36mm~54mmの範囲にある。最後に、プロペラ120は、プロペラ120の回転軸Rに対して垂直な平面において、この回転軸Rとプロペラ120の可動ブレード122のうちの1つの外縁部220の右側に位置するボウル123の点との間で測定される外径R2を有している。例えば、プロペラ120の外径R2は、64mm~96mmの範囲にあり得る。
【0066】
図示のように、この空気流FAは、ハウジング110に空気入口開口111を介して流入し、そして、このプロペラ120の径方向空気出口221を介して排出される前に、プロペラ120の空気入口126を介してこのプロペラ120に流入する。ハウジング110の壁114の第1湾曲部117cは、プロペラ120の縁部124を覆う。そして、この壁114の第2湾曲部118cは、プロペラ120の径方向空気出口221と対面するように配置されている。
【0067】
こうして、プロペラ120から流出した空気流FAは、壁114の第2湾曲部118cに接触することにより、この空気流FAの経路が変更されて、空気流FAは空気流ガイド部材130に向かって導かれる。ラジアルプロペラ120を流出する際の空気流FAをまっすぐにすることができるように、第2湾曲部118cは、上述のように、23.1mm~34.7mmの範囲にある曲率半径であって、有利には28.9mmに等しいまたは実質的に等しい曲率半径を有している。そして、空気流FAは、ガイド部材130に、このガイド部材の固定ブレード132の前縁部135を介して流入する。上述のように、これらの固定ブレード132は、ガイド部材130に合流する空気流FAの少なくとも一部を、それがプロペラ120の回転軸Rに向けて導かれるように偏位させ得る特定の形状を有している。これらの固定ブレード132の形状は、空気流の別の一部がガイド部材130を通過することにより、これをほとんど偏位させない、または偏位させないようなものでもある。換言すれば、ハウジング110の壁114の形状、およびガイド部材130の固定ブレード132の形状、ならびにガイド部材130の連続する固定ブレード132の間に形成されたスペース139により、空気流FAは、空気流の全体方向が、プロペラ120の空気入口126と壁114に形成された空気出口開口112との間で、ハウジング110の主延在ラインDであって、それ自体がプロペラ120の回転軸Rに一致する主延在ラインDに対して平行であるように導かれ得ることを理解されたい。有利には、空気流FAは、空気出口開口112の、回転軸Rが通るその中心を含む全表面に亘って導かれる。これにより、この空気出口開口112を覆う空気フィルタ113の全表面が使用され得ることになり、この空気フィルタ113の効率および耐久性が向上する。
【0068】
以上より、本発明は、空気流が単一の全体方向においてプロペラの空気入口とハウジングの空気出口開口との間で移動する換気装置を提案することが理解され得る。
【0069】
しかしながら、本発明は、本明細書に記載され図示された手段及び構成に限定されるものではなく、任意の同等の手段及び構成、ならびにかかる手段の任意の技術的に動作する組合せにも及ぶ。特に、ラジアルプロペラおよび空気流ガイド部材の形状および特徴は、それらが本書に記載された機能性を満たす限り、本発明を損なうことなく変更することができる。