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  • 特許-活性炭素及びこの製造方法 図1A
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  • 特許-活性炭素及びこの製造方法 図2a
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  • 特許-活性炭素及びこの製造方法 図4b
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】活性炭素及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/318 20170101AFI20240917BHJP
   C01B 32/168 20170101ALI20240917BHJP
【FI】
C01B32/318
C01B32/168
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022577680
(86)(22)【出願日】2021-11-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 KR2021017143
(87)【国際公開番号】W WO2022114694
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2022-12-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0159437
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ヨチャン・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】チャンフン・イ
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-059856(JP,A)
【文献】特開2011-105545(JP,A)
【文献】特開2011-049067(JP,A)
【文献】特開2015-167941(JP,A)
【文献】国際公開第2012/081601(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0074360(KR,A)
【文献】国際公開第2005/028719(WO,A1)
【文献】LEE, Seul-Yi et al.,Effect of temperature on activated carbon nanotubes for hydrogen storage behaviors,International Journal of Hydrogen Energy,2010年05月05日,Vol.35, No.13,PP. 6757-6762,ISSN:0360-3199, DOI:10.1016/j.ijhydene.2010.03.114
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00-32/991
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の線形炭素を含む炭素凝集体及び無定形炭素を含み、比表面積が350m/g以上であり、
前記線形炭素の断面直径は2nm~100nmである、活性炭素。
【請求項2】
前記線形炭素は炭素ナノチューブ(carbon nanotube、CNT)及び炭素繊維(carbon fiber)からなる群から選択された1種以上を含むものである、請求項1に記載の活性炭素。
【請求項3】
前記炭素凝集体の表面に前記線形炭素の断面が露出されたものである、請求項1又は2に記載の活性炭素。
【請求項4】
前記活性炭素のI/Iは2.0以下で、
前記I及びIはそれぞれラマン分光法によって測定された活性炭素の最大ピーク強度を示すもので、Iは振動周波数1560cm‐1ないし1600cm‐1範囲での最大ピーク強度で、Iは振動周波数1310cm‐1ないし1350cm‐1範囲での最大ピーク強度である、請求項1~のいずれか一項に記載の活性炭素。
【請求項5】
前記活性炭素の気孔体積は0.8cm/gないし3.0cm/gである、請求項1~のいずれか一項に記載の活性炭素。
【請求項6】
(S1)多数の線形炭素を含む炭素凝集体前駆体をボールミーリングして前処理する段階;及び
(S2)前記前処理された炭素凝集体前駆体をCOと反応させて活性化させる段階;を含み、
前記線形炭素の断面直径は2nm~100nmである、活性炭素の製造方法。
【請求項7】
前記(S1)段階のボールミーリングは、常温、常圧及び30%ないし70%湿度条件下で遂行されることである、請求項に記載の活性炭素の製造方法。
【請求項8】
前記(S1)段階のボールミーリングは、炭素凝集体前駆体:ミーリングボールの重量比を1:1ないし100:1の条件で遂行することである、請求項又はに記載の活性炭素の製造方法。
【請求項9】
前記ボールミーリングの際に使用するボールは、ジルコニア(ZrO)ボールまたはアルミナ(Al)ボールである、請求項のいずれか一項に記載の活性炭素の製造方法。
【請求項10】
前記(S2)段階の活性化は1℃/minないし10℃/minの速度で昇温した後、熱処理して活性化させることである、請求項のいずれか一項に記載の活性炭素の製造方法。
【請求項11】
前記熱処理は900℃ないし1200℃の温度で遂行されることである、請求項10に記載の活性炭素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年11月25日付韓国特許出願第2020‐0159437号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として組み込む。
【0002】
本発明は活性炭素及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
一般に、活性炭素は特有の吸着性のため日常生活から産業用まで多様な分野で幅広く利用されていて、活性炭素を製造する多様な方法が開発されてきた。
【0004】
活性炭素の製造方法は大きく化学的活性化法(chemical activation)と物理的活性化法(physical activation)に分けられる。
【0005】
化学的活性化法は、高温、及びNまたはAr雰囲気下で、炭素素材をKOH、NaOH、HPO、ZnClなどのような塩基性物質と反応させ、炭素素材の気孔と比表面積を増加させることで活性化させる工程である。しかし、前記化学的活性化法は反応後、塩基性塩及び不純物を取り除かなければならないので煩わしく、工程効率が低下されることがある。また、前記高温下における反応中にK、Naなどの金属が形成されて爆発の危険があり得る。
【0006】
物理的活性化法はCO/O混合物、OまたはHOストリームを単独または複合的に活用して700℃ないし900℃の高温で炭素素材を酸化させて活性化させる工程である。炭素素材を酸化させる時、COのみを使用すれば、activation kineticが非常に遅いので、CO/O混合物、OまたはHOストリームを単独または複合的に活用しなければならない。また、物理的活性化法は化学的活性化法に比べて比表面積及び気孔構造の改善に制約があって、CNTのような場合は物理的活性化法による比表面積及び気孔構造の改善が難しいと知られている。また、高温で酸素ガスとスチームを使用するという点で爆発の危険がある。
【0007】
したがって、CNTを始め、炭素素材活性化工程の効率を改善させて常用化することができるよう、不純物を取り除くための別途工程が必要なく、爆発の危険がない炭素素材活性化工程の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国公開特許第2011‐0044367号
【文献】韓国公開特許第2014‐0018569号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明は従来の炭素素材活性化方法の問題点を解消して、安定性と効率性が改善された工程を通じて比表面積及び気孔構造が改善された活性炭素及びこの製造方法を提供しようとする。
【0010】
ここで、本発明の目的は比表面積及び気孔構造が改善された活性炭素を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は、安定性と効率性が改善された活性炭素の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するために、本発明は、多数の線形炭素を含む炭素凝集体を含み、比表面積が350m/g以上である、活性炭素を提供する。
【0013】
本発明は、また、(S1)多数の線形炭素を含む炭素凝集体前駆体をボールミーリングして前処理する段階;及び(S2)前記前処理された炭素凝集体前駆体をCOと反応させて活性化させる段階;を含む、活性炭素の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明による活性炭素は活性化工程によって比表面積と気孔率が増加しながら炭素材固有の電気伝導度減少現象が最小化されることができる。
【0015】
また、本発明による活性炭素の製造方法は別途化学物質を使用せず、乾式ボールミーリング及びCOとの反応工程によって炭素を活性化するので、活性化工程の安全性と効率性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1A図1Aは炭素凝集体前駆体をボールミーリングした時の形態変化を示す模式図である。
図1B図1Bは炭素凝集体前駆体を化学的処理した時の形態変化を示す模式図である。
図2A図2A及び図2Bはそれぞれ実施例1と比較例1で製造された活性炭素の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)写真及び透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy、TEM)である。
図2B図2A及び図2Bはそれぞれ実施例1と比較例1で製造された活性炭素の走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM)写真及び透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy、TEM)である。
図3】実施例1と比較例1で製造された活性炭素の粒度分析結果を示すグラフである。
図4A図4A及び図4Bは実施例1、2及び比較例1、2で製造された活性炭素の比表面積測定結果を示すグラフである。
図4B図4A及び図4Bは実施例1、2及び比較例1、2で製造された活性炭素の比表面積測定結果を示すグラフである。
図5】実施例1で製造された活性炭素の粉体抵抗分析結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をより詳細に説明する。
【0018】
本明細書で使われた用語「炭素凝集体前駆体」とは、活性炭素を製造するための原料物質で使われた炭素材として線形炭素が互いに絡まって凝集された綿のかたまりのような形状を成している炭素材を意味する。
【0019】
本明細書で使われた用語「炭素凝集体」とは、活性炭素に含まれた炭素材を意味し、線形炭素を含む炭素凝集体前駆体がボールミーリング工程を経て線形炭素のボールとの摩擦力によって多数の断面が形成された後で活性化された炭素材を意味する。前記線形炭素を含む炭素凝集体前駆体は、綿のかたまりのような形状を成していて、ボールと摩擦する時、一本一本とけず、線形炭素が中間に切れて破断されたり線形炭素の表面の一部が切断されてエッジ(edge)が形成されることがある。
【0020】
本明細書で使われた用語「断面」とは、炭素凝集体前駆体がボールミーリングの際にボールとの摩擦によって破断されて形成された末端(end)や、摩擦によって線形炭素の表面に形成されたエッジ(edge)をいずれも含むことを意味する。
【0021】
活性炭素
本発明は比表面積と気孔構造が改善された活性炭素に関する。
【0022】
本発明による活性炭素は、多数の線形炭素を含む炭素凝集体を含み、比表面積が350m/g以上である。
【0023】
同一比表面積を持つ単一炭素と炭素凝集体を比べると、前記単一炭素の場合は炭素凝集体に比べて体積が大きくて軽いため、容易に飛散され、加工性がよくない問題がある。特に、前記単一炭素と炭素凝集体を電極素材で適用する場合、単一炭素はスラリー製造の際に溶媒が多く消耗されてスラリーの固形分が低くなって加工性が低下される問題がある。
【0024】
本発明において、前記炭素凝集体は線形炭素が互いに絡まって綿のかたまりのような形状を成している。前記線形炭素は炭素ナノチューブ(carbon nanotube、CNT)及び炭素繊維(carbon fiber)からなる群から選択された1種以上を含むが、多数の線形炭素が互いに絡まって凝集体の形を形成することができれば、これに制限されるものではない。
【0025】
また、前記線形炭素の長さは500nm以上で、断面直径は2nmないし100nmである。具体的に、線形炭素の長さは500nm以上、600nm以上または700nm以上であってもよく、前記長さの上限は特に制限されないが、300μm以下、400μm以下または500μm以下であってもよい。また、前記線形炭素の断面直径は2nm以上、5nm以上または10nm以上であってもよく、80nm以下、90nm以下または100nm以下であってもよい。前記線形炭素の長さと断面直径の範囲は互いに絡まって凝集体をよく形成することができる適正範囲で設定されたものである。
【0026】
前記線形炭素の長さが500nm未満であれば、長さが短くて炭素凝集体を形成しにくいことがあって、炭素凝集体を形成するとしても容易に脱離されることがある。前記線形炭素の長さが500μm超過であれば、少数の線形炭素によっても炭素凝集体が形成されるので、炭素凝集体の表面に露出される線形炭素の断面個数も減少するようになって比表面積が向上される度合いが微々たるものである。
【0027】
本発明において、前記線形炭素の断面は炭素凝集体の表面に露出されたものであってもよい。
【0028】
前記線形炭素の断面は後述するようなボールミーリング工程で線形炭素を含む炭素凝集体前駆体がボールと摩擦して前記線形炭素が破断されて形成されたものである。
【0029】
前記線形炭素の断面が炭素凝集体の表面に露出されることで、炭素凝集体を含む活性炭素の比表面積を増加させることができる。前記定義されたように、本明細書で前記線形炭素の「断面」とは、炭素凝集体前駆体がボールミーリングの際にボールとの摩擦によって破断されて形成された末端(end)や、摩擦によって線形炭素の表面に形成されたエッジ(edge)を全て含むことを意味する。
【0030】
本発明において、前記活性炭素は無定形炭素を含む。前記無定形炭素は活性炭素の比表面積をさらに増加させる効果を奏することができる。
【0031】
一般に、無定形炭素は炭素が活性化される過程で形成され、活性炭素では無定形炭素を確認することができる。例えば、炭素ナノチューブは物理的な活性化工程で活性化がよく行われないので、物理的な活性化工程後も炭素ナノチューブでは無定形炭素をほとんど確認することができない。
【0032】
しかし、前記無定形炭素が過度に形成されると、活性炭素内部の無秩序度が増加する結果をもたらすので、電気伝導度と機械的強度が低下されることがある。このように前記無定形炭素は活性炭素内部の無秩序度と係わるので、無定形炭素の適正量は後述するI/Iと関連がある。
【0033】
本発明において、前記活性炭素の比表面積は350m/g以上であってもよい。具体的に、前記炭素凝集体の比表面積は350m/g以上、450m/g以上または550m/g以上であってもよい。
【0034】
前記活性炭素の比表面積が350m/g未満であると活性化されていない炭素素材と大差ないため、電極素材などの用途で適用する時、反応性が低下されることがある。前記活性炭素の比表面積の上限は特に制限されることではないが、活性炭素の耐久性を考慮して1000m/g以下であってもよい。
【0035】
また、前記活性炭素の総気孔体積は0.8cm/gないし3.0cm/gであってもよく、具体的に、0.8cm/g以上、1.0cm/g以上または1.5cm/g以上であってもよく、2.5cm/g以下または3.0cm/g以下であってもよい。
【0036】
前記活性炭素の総気孔体積が0.8cm/g未満であれば、活性化前の炭素と同等水準なので吸着剤または電極素材などで適用する時、吸着量またはリチウムイオンなどの貯蔵能が低下されることがあって、3.0cm/g超過であれば活性炭素の耐久性が低下されることがある。
【0037】
また、前記活性炭素結晶構造の無秩序(disorder)または欠陷(defect)の生成度合いを定量的に示すパラメーターである、I/Iは2.0以下であってもよく、具体的に、2.0以下、1.5以下、1.3以下または1.0以下であってもよい。前記I/Iの下限は特に制限されないが、0.5以上であってもよい。前記I/Iが2.0超過であれば、炭素構造内に多すぎる欠陷によって電気伝導度と機械的強度が大きく低下されることがあって、0.5未満であれば、活性化がまともに行われなかったことを意味する。
【0038】
前記I及びIはそれぞれラマン分光法を利用して測定及び計算されることができ、Iはラマン分光法によるスペクトル1310cm‐1以上1350cm‐1以下の範囲で最大ピーク強度であり、Iはラマン分光法によるスペクトル1560cm‐1以上1600cm‐1以下の範囲で最大ピーク強度である。
【0039】
一般に、ラマン分光法はラマン効果によって発生する特殊な光の配列を利用した物質の構造研究に一般的に使われている。
【0040】
ラマンスペクトルの中で波数1360cm‐1付近の領域に存在するピークをDバンドと言い、Dバンドはsp結合を示すピークであって、sp結合からなる原子結合が切れてsp結合になる場合に増加する。
【0041】
また、ラマンスペクトルの中で波数1580cm‐1付近の領域に存在するピークをGバンドと言い、Gバンドはsp結合を示すピークであって、構造欠陷がないことを意味する。
【0042】
前記Dバンドは物質の構造内で無秩序(disorder)または結合(defect)が生成される場合に増加するようになるので、Gバンドの最大ピーク強度(I)に対するDバンドの最大ピーク強度(I)の比(I/I)を計算して無秩序ないし欠陷の生成度合いを定量的に評価することができる。
【0043】
本発明による活性炭素は線形炭素を含む炭素凝集体を含み、線形炭素が絡まった綿のかたまり形態という特徴によって、ボールミーリング工程でボールとの摩擦によって線形炭素の表面に欠陷(defect)が発生するよりは、線形炭素が破断されて発生する断面が炭素凝集体の表面に露出されて比表面積が大きくなって、活性化によって気孔率も高くなると同時に線形炭素の形態的な特徴によって電気伝導度も優秀である。
【0044】
前記活性炭素は炭素凝集体の形態を維持するので、電極素材または複合素材に添加する時に必要な溶媒量が少なくて、体積及び飛散性が少なくて加工が容易である。また、前記炭素凝集体形態の活性炭素は綿のかたまり形態を既に成しているため、炭素が不規則的に再凝集(re‐aggregation)される現象を防ぐことができる。
【0045】
活性炭素の製造方法
本発明はまた活性炭素の製造方法に係り、前記活性炭素の製造方法は、(S1)多数の線形炭素を含む炭素凝集体前駆体をボールミーリングして前処理する段階;及び(S2)前記前処理された炭素凝集体前駆体をCOと反応させて活性化させる段階;を含む。
【0046】
この時、前記炭素凝集体前駆体とは、線形炭素が絡まって綿のかたまり形態のようになった構造体を意味する。前記線形炭素の種類は上述したとおりである。
【0047】
本発明において、前記(S1)段階では、粒度が均一で比表面積が向上された活性炭素を製造できるように、前記炭素凝集体前駆体をボールミーリングすることができる。
【0048】
前記ボールミーリング工程において、前記炭素凝集体前駆体がボールと摩擦され、前記炭素凝集体前駆体に含まれた線形炭素が破断されて多数の断面が発生されることがある。前記炭素凝集体前駆体は綿のかたまりのような形態であるため、ボールと摩擦する時、線形炭素が一本一本解けるよりは、ボールと摩擦される部分が破断されて、末端、表面エッジのような断面が形成されることがある。また、前記炭素凝集体前駆体はスプリングのように弾性があるので、ボールミーリング工程によって押されるなどのような物理的な形態の変化が最小化されることができ、xyz方向で全てボールとの摩擦が発生されるので、特定方向への形態変形の起きる確率が少ない。
【0049】
図1aは炭素凝集体前駆体をボールミーリングした時の形態変化を示す模式図で、図1bは炭素凝集体前駆体を化学的に処理した時の形態変化を示す模式図である。
【0050】
図1aに示すように、前記炭素凝集体前駆体をボールミーリング(BM)する場合は表面に欠陷(defect)も一部発生するが一部に過ぎず、前記炭素凝集体前駆体がボールと摩擦して破断され、多数の断面(edge)が発生して比表面積が増加されることがある。
【0051】
一方、図1bに示すように、前記炭素凝集体前駆体を酸処里、O2/steam処理などをした時は大概表面欠陷が発生する。このように、欠陷が多数発生するようになればI/Iが大きく増加し、sp炭素を通じた電子の移動に抵抗が大きくかかるようになるので、電気伝導度が低下される問題がある。
【0052】
ここで、前記ボールミーリング工程では、ボールと炭素凝集体前駆体の摩擦力を極大化させることができるように、ボールミーリング工程の種類、温度、圧力、湿度、ボールと炭素凝集体前駆体の重量比、ボールの素材などを規定することができる。
【0053】
前記ボールミーリングは乾式ボールミーリングであってもよい。すなわち、前記炭素凝集体前駆体自体をボールと摩擦させるもので、ボールミーリング工程中に別途溶媒を使用しない。前記乾式ボールミーリングは湿式ボールミーリングに比べてボールと炭素凝集体前駆体との摩擦力が向上されることがあるし、これによって前記炭素凝集体前駆体に形成される断面の個数が増加して比表面積をさらに向上させることができる。また、乾式ボールミーリング工程を導入する場合、湿式ボールミーリングで溶媒を取り除いて発生する廃水或いは溶媒を取り除く時間と溶媒を取り除いて発生するコーヒーリング現象(coffee ring effect)などの問題がないという長所がある。
【0054】
また、前記ボールミーリングは常温及び常圧条件下で遂行されることができ、この場合、前記ボールと炭素凝集体前駆体との間の摩擦力を向上させることができる長所がある。この時、前記常温は0℃以上、25℃以上であってもよく、60℃以下または100℃以下であってもよい。前記常圧は0.5atm以上または0.8atm以上であってもよく、1.3atm以下また2atm以下であってもよい。例えば、前記常温及び常圧は25℃及び1atmである。
【0055】
また、前記ボールミーリングは30%ないし70%湿度下で遂行されることができ、具体的に、前記湿度は30%以上、40%以上または45%以上であってもよく、55%以下、60%以下または70%以下であってもよい。前記湿度が30%未満であれば摩擦で発生する静電気力による集まりによって粉砕力が低下されることがあって、70%超過であれば水分によって炭素凝集体の構造的な変形が発生することがある。
【0056】
また、前記ボールミーリング工程は直径1~10mm大きさのミーリングボールを使用して、100~400RPMのミーリング条件で0.5~50時間ボールミーリングを遂行することができる。
【0057】
また、前記ボールミーリングは炭素凝集体前駆体:ミーリングボールの重量比を1:1ないし100:1の条件で遂行することができ、具体的に、前記重量比は1:1以上、10:1以上、20:1以上または30:1以上であってもよく、70:1以下、80:1以下、90:1以下または100:1以下であってもよい。前記重量比が1:1未満であれば炭素凝集体前駆体に断面が過度に形成されて耐久性がよくないこともあって、100:1超過であれば炭素凝集体前駆体が過量使用されて比表面積増加の効果が微々たるものである。
【0058】
また、前記ミーリングボールはジルコニア(ZrO)ボールまたはアルミナ(Al)ボールを使用することができ、好ましくは、前記炭素凝集体前駆体との摩擦力を考慮してジルコニアボールを使用することができる。
【0059】
このようなボールミーリング工程を通じて、前記炭素凝集体前駆体を微分化して均一な粒度になるようにし、炭素凝集体前駆体に多数の断面を形成して、後述するような(S2)段階でactivation kineticを著しく向上させることができる。
【0060】
本発明において、前記(S2)段階では、前記(S1)段階で前処理された炭素凝集体前駆体をCOと反応させて活性化させることができる。
【0061】
前記前処理された炭素凝集体前駆体はボールミーリングの際にボールとの摩擦によって表面に多数の断面が形成されて比表面積が増加された状態なので、前記前処理された炭素凝集体前駆体をCOと反応させて活性化させることで、activation kineticを著しく向上させることができる。
【0062】
前記炭素凝集体前駆体とCOの反応は活性雰囲気下で行われるものであってもよい。この時、前記活性雰囲気とは、活性気体によって形成されるもので、前記活性雰囲気下で反応が行われることで前記炭素凝集体前駆体の表面に形成された断面とCOの反応性をさらに促進させて活性化効率を向上させることができる。
【0063】
また、前記活性化は一酸化炭素、酸素、水素、エチレン、エタン及びメタンからなる群から選択される1種以上の還元性気体下で遂行されることができ、過度な活性化を防ぐために不活性気体である窒素、アルゴンなどを一部混合して活性化工程を遂行することもできる。
【0064】
また、前記活性化は昇温後に熱処理して遂行されることができる。
【0065】
前記活性化の際に温度を徐々に高めながら遂行することが活性化効率の側面でよいことがある。昇温速度を制御することで炭素凝集体が全般的に均一に活性化されることができ、昇温速度を極端的に速くする場合は不均一に活性化されることがある。この時、前記昇温速度は1℃/minないし10℃/minであってもよく、具体的に、1℃/min以上、2℃/min以上または3℃/min以上であってもよく、8℃/min以下、9℃/min以下または10℃/min以下であってもよい。前記昇温速度が1℃/min未満であれば昇温速度が遅すぎて活性化される温度範囲で活性化され過ぎて機械的及び/または電気的物性が低下されることがあって、10℃/min超過であれば昇温速度が速すぎて不均一な活性化が行われることがある。
【0066】
前記昇温後、900℃ないし1200℃の温度で熱処理されることができる。具体的に、前記熱処理温度は900℃以上、1000℃以上または1050℃以上であってもよく、1100℃以下、1150℃以下または1200℃以下であってもよい。前記熱処理温度が900℃未満であれば前記炭素凝集体前駆体とCOの反応性が低下されて活性化効率がよくないし、1200℃超過であれば炭素凝集体が酸化されて機械的/電気的強度と収率が大きく低下されることがある。
【0067】
前記熱処理時間は特に制限されないが、活性化効率を考慮して1時間以上または2時間以上であってもよく、5時間以下、7時間以下または10時間以下であってもよい。
【0068】
また、前記活性化段階は均一な反応のために流動層反応器(Fluidized Bed Reactor)で遂行するものであってもよく、例えば、前記流動層反応器はチューブ炉(tube furnace)またはボックス炉(box furnace)であってもよい。
【0069】
前記流動層反応器を使用する場合、もっと均一な活性化(activation)が可能で、活性炭素粒子が均一に比表面積が増大されることがあって、また、活性炭素粒子の粉砕も防ぐことができる。
【0070】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で多様な変更及び修正が可能であることは当業者にとって自明なことであり、このような変更及び修正が添付の特許請求範囲に属することも当然である。
【0071】
実施例1
(1)ボールミーリングを利用した前処理
25℃、1atm及び50%湿度条件下で、多数のCNTが絡まっている形の炭素凝集体前駆体(FT series、Canon社、以下、CNT1と称する)をボールミーリング工程で前処理した。前記ボールミーリング工程は直径3mm大きさのジルコニアボールを使用して、300rpmのミーリング条件で1時間遂行した。また、前記炭素凝集体前駆体とボールの重量比は50:1になるようにした(BM.CNT1)。
【0072】
前記CNT1はCNTの壁(wall)数が9個のものである。
【0073】
(2)COとの反応を通じた活性化
流動層反応器を利用して、前記前処理された炭素凝集体前駆体をCOと反応させて活性化させた。この時、前記活性化は950℃の温度で熱処理し、5℃/minの速度で3時間昇温した後、950℃で3時間活性化を遂行し、活性炭素を製造した(Act.BM.CNT1)。
【0074】
比較例1
前処理していない炭素凝集体前駆体(CNT1)を650℃の温度で熱処理したことを除いて、実施例1と同様の方法で活性炭素を製造した(Act.CNT1)。
【0075】
実施例2
多数のCNTが絡まっている形の炭素凝集体前駆体(FT series、Canon社、CNT1)と比べて、炭素ナノチューブ壁(wall)の数、直径及び長さが相違する炭素凝集体前駆体(FT series、Canon社、以下、CNT2と称する)使用したことを除いて、実施例1と同様の方法でボールミーリングを利用して前処理された炭素凝集体前駆体(BM.CNT2)及び活性炭素(Act.BM.CNT2)を製造した。
【0076】
前記CNT2はCNTの壁(wall)の数が6個のもので、前記CNT1に比べて壁の数が小さいので直径も相対的に小さい。
【0077】
比較例2
前処理していない炭素凝集体前駆体(CNT2)を650℃の温度で熱処理したことを除いて、実施例2と同様の方法で活性炭素を製造した(Act.CNT2)。
【0078】
実験例1:形状及び粒度分析
実施例1及び比較例1でそれぞれ製造された活性炭素の形状及び粒度を分析した。
【0079】
活性炭素の形状は走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope、SEM、JSM7610F、JOEL社)及び透過電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy、TEM、JEM1400FLASH、JOEL社)を利用して分析した。
【0080】
図2aは原料物質である炭素凝集体前駆体(CNT1)、ボールミーリングを利用して前処理された炭素凝集体前駆体(BM.CNT1)、比較例1で前処理なしにCOと反応して活性化された活性炭素(Act.CNT1)及び実施例1で前処理した後COと反応して活性化された活性炭素(Act.BM.CNT1)のSEM写真で、図1bはTEM写真である。
【0081】
図2aに示すように、実施例1の活性炭素(Act.BM.CNT1)は微細で均一な形状を持ち、線形炭素が絡まって形成された凝集体形態を維持することが分かる。
【0082】
一方、比較例1の活性炭素(Act.CNT1)は原料物質で使用された炭素凝集体前駆体(CNT1)と比べて、その大きさがさほど変化されていないことが分かる。
【0083】
また、図2bに示すように、実施例1の活性炭素(Act.BM.CNT1)には無定形炭素(amorphous carbon)が多く形成されたことを確認することができる。前記無定形炭素が確認されるので、活性化がよく行われたことが分かる。また、前記無定形炭素によって比表面積増大効果も示されることができる。
【0084】
活性炭素の粒度は粒度分析機(Bluewave、Microtrac社)を利用して分析し、下記表1及び図3に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
前記表1及び図3に示すように、実施例1の活性炭素(Act.BM.CNT1)は原料物質である炭素凝集体前駆体(CNT1)に比べてその粒度が著しく小さくなったことが分かる。
【0087】
一方、比較例1の活性炭素(Act.CNT1)は炭素凝集体前駆体(CNT1)と比べてその粒度がさほど変化されていないことが分かる。
【0088】
実験例2:比表面積分析
実施例1、2及び比較例1、2でそれぞれ製造された活性炭素の比表面積(Specific surface area)を分析した。
【0089】
前記活性炭素の比表面積はBET(Brunauer‐Emmett‐Teller)分析機(ASAP 2020、Micrometrics Inc.)を利用して分析し、その結果を下記表2、図4a及び図4bに示す。
【0090】
【表2】
【0091】
前記表2、図4a及び図4bに示すように、原料物質である炭素凝集体前駆体(CNT1、CNT2)に比べて実施例1(Act.BM.CNT1)と実施例2(Act.BM.CNT2)の活性炭素の比表面積が著しく増加したことが分かる。
【0092】
また、実施例1のCNT1は実施例2のCNT2に比べて壁の数が多くて直径が相対的に大きく、一般に、CNTの壁の数が増加するにつれ機械的強度も減少するので、ボールミーリング及び活性化による比表面積増大効果も実施例1は比較例1対比210%程度であって、実施例2の160%程度の増大に比べて効果が大きいことが分かる。
【0093】
比較例1(Act.CNT1)と比較例2(Act.CNT2)の活性炭素も炭素凝集体前駆体(CNT1、CNT2)に比べて比表面積が増加したが、実施例1と実施例2に比べては相対的に比表面積増加の度合いが微々たるものであった。
【0094】
実験例3:結晶性分析
実施例1及び比較例1でそれぞれ製造された活性炭素の結晶性を分析した。
【0095】
前記活性炭素の結晶性は、ラマン分光法[DXR Raman Microscope(Thermo Electron Scientific Instruments LLC)を利用]によって得られた1580±20cm‐1でのGバンドの最大ピーク強度(I)に対する1360±50cm‐1でのDバンドの最大ピーク強度(I)の比(I/I、R値)を測定して下記表3に示す。
【0096】
前記I/Iはその値が大きくなるほど結晶の無秩序ないし欠陷が多く形成されたことを意味する。
【0097】
【表3】
【0098】
前記表3に示すように、実施例1で製造された活性炭素(Act.BM.CNT1)のI/Iは原料物質である炭素凝集体前駆体(CNT1)と比べて、その増加幅が大きくないため、ボールミーリング及びCOとの反応を含む活性化工程によって内部の無秩序ないし欠陷が大きく増加しないことが分かる。
【0099】
実験例4:粉体抵抗分析
実施例1で製造された活性炭素に対して粉体抵抗を分析した。
【0100】
粉体抵抗装備(Loresta‐GX社、MCP‐PD51)装備を利用して、試料0.5gを視標ホルダーに充填し、400kgf、800kgf、1200kgf、1600kgf、2000kgfで押圧し、60MPaの時の伝導度(Conductivity)を測定した。
【0101】
図5に示すように、実施例1で製造された活性炭素(Act.BM.CNT1)は原料物質である炭素凝集体前駆体(CNT1)と比べて、伝導度が大差ないことが分かる。
【0102】
これより、本願発明によると、原料物質である炭素凝集体前駆体自体の比表面積を大きく増加させ、粒度を均一で小さくしながら、電気伝導度がさほど低下されていない活性炭素を製造することができることを確認することができた。
【0103】
以上、本発明はたとえ限定された実施例と図面によって説明されたが、本発明はこれによって限定されず、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者によって本発明の技術思想と下記特許請求範囲の均等範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは勿論である。
図1A
図1B
図2a
図2b
図3
図4a
図4b
図5