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特許7556080光学デバイス、及び光学デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】光学デバイス、及び光学デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/02 20060101AFI20240917BHJP
   H01L 23/02 20060101ALI20240917BHJP
   H01L 21/56 20060101ALI20240917BHJP
   H01L 31/12 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
H01L31/02 B
H01L23/02 F
H01L21/56 J
H01L31/12 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023033115
(22)【出願日】2023-03-03
(65)【公開番号】P2024125047
(43)【公開日】2024-09-13
【審査請求日】2023-03-03
(73)【特許権者】
【識別番号】390009667
【氏名又は名称】セイコーNPC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 学
(72)【発明者】
【氏名】内藤 孝洋
【審査官】丸橋 凌
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0292553(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0061653(US,A1)
【文献】特開2013-235887(JP,A)
【文献】国際公開第2009/113262(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0222041(US,A1)
【文献】国際公開第2021/049138(WO,A1)
【文献】特開昭64-064374(JP,A)
【文献】実開昭63-180949(JP,U)
【文献】特開平06-260625(JP,A)
【文献】特開2016-033963(JP,A)
【文献】特開2016-100385(JP,A)
【文献】特開2009-081346(JP,A)
【文献】特開2009-239106(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0091515(US,A1)
【文献】特表2017-504959(JP,A)
【文献】特開2009-239258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L31/00-H01L31/18
H10K30/00-H10K39/38
H10K59/60-H10K59/65
H10K71/00-H10K99/00
H01L21/56
H01L23/00-H01L23/66
B29C31/00-B29C73/34
H01L33/00-H01L33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に受光部を有する光学素子と、
発光素子と、
前記光学素子及び前記発光素子を搭載し、前記光学素子及び前記発光素子と電気的に接続された配線基板と、
樹脂を用いて前記光学素子の周囲に形成されると共に前記光学素子の前記発光素子側の側面、及び、前記光学素子の前記表面の一部を覆う樹脂部と、
前記樹脂部に設けられ、少なくとも前記受光部及び前記受光部の周辺の前記表面が露出するようにモールド金型により凹状に形成され、前記光学素子の上面と面一とされた底面と、前記底面の前記発光素子側に設けられ前記配線基板の上面の一部を露出させる貫通部とを備え、前記光学素子と前記貫通部の間が前記樹脂部とされている開口部と、
前記光学素子を覆う前記樹脂部の前記開口部の端縁から前記受光部までの間に設けられ、前記モールド金型による成形時における前記受光部の上への前記樹脂の入り込みを抑制する抑制部と、
を有する光学デバイス。
【請求項2】
前記光学素子の前記表面に光透過層が設けられており、
前記抑制部は、前記光透過層に形成された溝である請求項に記載の光学デバイス。
【請求項3】
前記溝は、前記受光部を囲んでいる請求項に記載の光学デバイス。
【請求項4】
前記抑制部は、前記光学素子の前記表面に設けられた突堤である請求項に記載の光学デバイス。
【請求項5】
表面に受光部を有する光学素子と、発光素子と、前記光学素子を搭載し前記光学素子及び前記発光素子と電気的に接続された配線基板を備えた光学デバイスの製造方法であって、
前記光学素子の前記発光素子側の側面を含む少なくとも前記光学素子の一部を、モールド金型を用いて樹脂封止する樹脂封止工程を有し、
前記モールド金型は、封止用の樹脂が充填される凹状のキャビティ部と、前記樹脂に少なくとも前記受光部及び前記受光部の周辺を露出させ、前記光学素子の上面と面一とされた底面と、前記底面の前記発光素子側に設けられ前記配線基板の上面の一部を露出させる貫通部とを備える開口部を形成するための凸部を有し、
前記樹脂封止工程の前に、前記光学素子を覆う前記樹脂の前記開口部の端縁から前記受光部までの間に、前記モールド金型による成形時における前記受光部の上への前記樹脂の入り込みを抑制する抑制部を形成する工程を有し
前記樹脂封止工程では、前記光学素子と前記貫通部の間に前記樹脂を充填して前記光学素子の前記発光素子側の側面を樹脂封止する光学デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学デバイス、及び光学デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学デバイス、及びその製造方法として、例えば、特許文献1に記載の光学デバイス、及びその製造方法が知られている。この光学デバイスは、配線基板の上に光学素子が搭載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-99680号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学素子のうち、光を受光する受光部以外の部分は、光を透過し難い例えば黒色の封止樹脂により封止されている。封止樹脂は、液状の状態で滴下され、パッケージ構成部材で押圧され、光学素子と突堤部との間に充填される。受光部は、封止樹脂に形成される開口部に位置している。液状の封止樹脂が受光部の上に流れ込まないように、受光部の周囲には溝部が設けられている(特許文献1の図7)。溝部の位置は、開口部の端縁なる位置に概ね一致している。
【0005】
一方、モールド金型を用いたトランスファー成形により、開口部を有する封止樹脂を成形する場合がある。この場合、上記した従来例のように、開口部の端縁となる位置に溝部を設けても、液状の封止樹脂が溝部を越えて開口部内に入り込むことが考えられる。
【0006】
本発明は、封止樹脂の成形にモールド金型を用い、光学素子のうち受光部を露出させるための開口部を形成する場合において、受光部の位置への封止樹脂の入り込みを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様に係る光学デバイスは、表面に受光部を有する光学素子と、前記光学素子を搭載し、前記光学素子と電気的に接続された配線基板と、樹脂を用いて前記光学素子の周囲に形成され、かつ前記光学素子の前記表面の一部を覆う樹脂部と、前記樹脂部に設けられ、少なくとも前記受光部及び前記受光部の周辺の前記表面が露出するようにモールド金型により形成された凹状の開口部と、前記光学素子を覆う前記樹脂部の前記開口部の端縁から前記受光部までの間に設けられ、前記モールド金型による成形時における前記受光部の上への前記樹脂の入り込みを抑制する抑制部と、を有する。
【0008】
この光学デバイスでは、光学素子を覆う封止樹脂の開口部の端縁から受光部までの間に抑制部が設けられているので、抑制部が開口部の端縁から離れている。これにより、モールド金型による樹脂部の成形時に封止樹脂の開口部に露出する部分の上に液状の樹脂が入り込んだとしても、該樹脂が抑制部に至るまでに硬化することを促進できる。また、この樹脂の入り込みを抑制部で止めることにより、受光部の位置への樹脂の入り込みを抑制できる。
【0009】
第2の態様は、第1の態様に係る光学デバイスにおいて、前記光学素子の前記表面に光透過層が設けられており、前記抑制部は、前記光透過層に形成された溝である。
【0010】
この光学デバイスでは、光学素子の表面に設けられた光透過層の溝により、樹脂部の成形時に開口部内へ入り込んだ液状の樹脂を受け入れることができる。これにより、受光部の位置への樹脂の入り込みを抑制できる。
【0011】
第3の態様は、第2の態様に係る光学デバイスにおいて、前記溝が、前記受光部を囲んでいる。
【0012】
この光学デバイスでは、溝が受光部を囲んでいるので、様々な方向からの受光部の位置への樹脂の入り込みを抑制できる。
【0013】
第4の態様は、第1の態様に係る光学デバイスにおいて、前記抑制部が、前記光学素子の前記表面に設けられた突堤である。
【0014】
この光学デバイスでは、光学素子の前記表面に設けられた突堤により、樹脂部の成形時に開口部内へ入り込んだ液状の樹脂の流れを止めることができる。これにより、受光部の位置への樹脂の入り込みを抑制できる。
【0015】
第5の態様に係る光学デバイスの製造方法は、表面に受光部を有する光学素子と、前記光学素子を搭載し前記光学素子と電気的に接続された配線基板を備えた光学デバイスの製造方法であって、少なくとも前記光学素子の一部を、モールド金型を用いて樹脂封止する樹脂封止工程を有し、前記モールド金型は、封止用の樹脂が充填される凹状のキャビティ部と、前記樹脂に少なくとも前記受光部及び前記受光部の周辺を露出させる開口部を形成するための凸部を有し、前記樹脂封止工程の前に、前記光学素子を覆う前記樹脂の前記開口部の端縁から前記受光部までの間に、前記モールド金型による成形時における前記受光部の上への前記樹脂の入り込みを抑制する抑制部を形成する工程を有する。
【0016】
この光学デバイスの製造方法では、樹脂封止工程の前に、光学素子を覆う樹脂の開口部の端縁から受光部までの間に抑制部を形成する工程を有するので、モールド金型による成形時における受光部の位置への樹脂の入り込みを抑制することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、封止樹脂の成形にモールド金型を用い、光学素子のうち受光部を露出させるための開口部を形成する場合において、受光部の位置への封止樹脂の入り込みを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第1実施形態に係る光学デバイスを示す斜視図である。
図2】(A)は、図1に示す光学デバイスの2A-2A線断面図であり、(B)は図1に示す光学デバイスの2B-2B線断面図であり(C)は、樹脂封止を行うモールド金型の断面図(図4(A)の2C-2C線断面図)である。
図3】(A)は第1実施形態に係る光学デバイスを示す平面図であり、(B)は受光部の一部を示す拡大平面図である。
図4】(A)~(D)は、樹脂封止工程を示す説明図である。
図5図4(D)の拡大断面図である
図6】樹脂封止が行われた連続した基板を示す断面図である。
図7】個々に切断した光学デバイスを示す断面図である。
図8】第1実施形態に係る光学デバイスの要部を示す平面図である。
図9】樹脂部の成形時に開口部内へ液状の樹脂が入り込んだ場合に、該樹脂を溝で受け止めている状態を示す断面図である。
図10】第2実施形態に係る光学デバイスの要部を示す平面図である。
図11】第3実施形態に係る光学デバイスの要部を示す平面図である。
図12】第4実施形態に係る光学デバイスの要部を示す平面図である。
図13】第4実施形態において、樹脂部の成形時に開口部内へ液状の樹脂が入り込んだ場合に、該樹脂を溝で受け止めている状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[第1実施形態]
図1図6を用いて、本発明の第1実施形態に係る光学デバイス10について説明する。なお、以下の説明における上下の区別は便宜的なものであり、実際に光学デバイスが使用されるときの上下を限定するものではない。
本実施形態では、便宜上、図面の矢印U方向側を上側、図面の矢印D方向側を下側、図面の矢印L方向側を左側、図面の矢印R方向側を右側、図面の矢印F方向側を前側、図面の矢印B方向側を後側とする。また、図面の矢印U方向を上方向、図面の矢印D方向を下方向、図面の矢印L方向を左方向、図面の矢印R方向を右方向、図面の矢印F方向を前方向、図面の矢印B方向を後方向と呼ぶ。
【0020】
(光学デバイスの構成)
図1、及び図2(A),(B)に示すように、本実施形態の光学デバイス10は、配線基板12、光学素子14、発光素子16、封止用の樹脂で形成された樹脂部18、抑制部としての溝52等を含んで構成されており、いわゆる反射型のフォトインタラプタとして構成されており、一例としてエンコーダ等に使用されるものである。
【0021】
配線基板12は、矩形状に形成されており、図1、及び図3(A)に示すように、配線基板12の上面に、矩形状に形成された光学素子14が搭載されている。
【0022】
光学素子14は、配線基板12よりも小さく形成されている。本実施形態の光学素子14には、その表面(図2(A)の図面矢印U方向側の面、例えば上面)に、図面矢印L方向側の辺、矢印B方向側の辺、及び矢印R方向側の辺に沿って、複数の電極パッド20が設けられている。
【0023】
図3(A)に示すように、光学素子14の表面には、電極パッド20が設けられていない矢印F方向側の辺に沿って、長方形(長尺状)の受光部22が設けられている。光学素子14を上面視した際の受光部22の面積は、開口部28に露出した光学素子14の上面よりも小さい。
受光部22は、その長手方向が、光学素子14の矢印F方向側の辺に沿って平行とされている。図3(B)に示すように、本実施形態の受光部22には、複数の画素の一例としてのフォトダイオード22Aが、受光部22の長手方向に沿って等間隔で配置されている。言い換えれば、本実施形態の受光部22は、ラインセンサとして機能するものである。
【0024】
図3(A)に示すように、配線基板12には、光学素子14の周囲であって、光学素子14の電極パッド20と隣接する位置に、複数の電極パッド24が設けられている。
【0025】
光学素子14の電極パッド20と配線基板12の電極パッド24とは、ボンディングワイヤ26で電気的に接続されている。
【0026】
図1乃至図3に示すように、配線基板12の一部、光学素子14の一部、及びボンディングワイヤ26は、樹脂部18で覆われている。樹脂部18は、樹脂を用いて光学素子14の周囲に形成され、かつ光学素子14の表面の一部を覆っている。樹脂部18の上面は、ボンディングワイヤ26が樹脂中に埋設されるように、ボンディングワイヤ26の上端よりも上方に位置している。樹脂部18の上面は、配線基板12と平行な平面状に形成されている。なお、本実施形態の樹脂部18には、一例として、一般の半導体パッケージに用いられる黒色の樹脂が用いられている。
【0027】
樹脂部18の例えば中央には、凹状の開口部28が形成されている。この開口部28は、少なくとも受光部22及び受光部22の周辺の表面が露出するように、モールド金型40(図2(C)、図4、図)により形成される。樹脂部18の上面における開口部28の端縁28Aは、例えば矩形状に形成されている。開口部28は、光学素子14の上面と面一とされた底面30と、底面30の矢印F方向側に設けられ配線基板12の上面の一部を露出させる貫通部32とを備えている。なお、配線基板12の上面から立ち上がっている底面30を有した樹脂部分は、光学素子周囲部の一例である。
【0028】
図2(A),(B)に示すように、開口部28の矢印F方向側の側面28F、矢印B方向側の側面28B、矢印L方向側の側面28L、及び矢印R方向側の側面28Rは、各々配線基板12に対して略垂直とされている。なお、略垂直としたのは、側面28F、側面28B、側面28L、及び側面28Rには、開口部28を形成するための後述するモールド上金型40Aから樹脂部18を抜くための抜き勾配が付けられているからである。なお、側面28F、側面28B、側面28L、及び側面28Rは、樹脂成形する際に付けられる通常の抜き勾配よりも大きな角度を付けてもよい。
【0029】
図1図3に示すように、開口部28において、光学素子14のボンディングワイヤ26が配置されている領域を除いた受光部22周囲の光学素子上面、及び底面30の上面が露出している。より詳しくは、開口部28に露出している光学素子14の矢印L方向側、矢印F方向側、及び矢印R方向側に底面30の上面が露出している。
【0030】
図2(A)、及び図3(A)に示すように、底面30の左右方向の長さL0は、光学素子14の左右方向の長さL1(底面30に露出している長さでもある)よりも長く、底面30の前後方向の幅W0は、開口部28の底面30に露出している光学素子14の前後方向の幅W1よりも広い。
【0031】
図3(A)に示すように、本実施形態の光学デバイス10で用いられている光学素子14では、受光部22の左右方向の長さL2が光学素子14の左右方向の長さL1よりも短く、受光部22の前後方向の幅W2は、底面30に露出している光学素子14の前後方向の幅W1よりもより狭い。
【0032】
したがって、図3(A)に示す光学素子14においては、受光部22の左右方向両側に受光部22を長くする余裕があり、受光部22の後方向側に受光部22を幅広にする余裕がある。
図3(A)において、2点鎖線は、長さ、及び幅を大きくした光学素子14を示している。
【0033】
また、本実施形態の光学デバイス10では、図2(A),(B),及び図3(A)に示すように、開口部28の内部において、開口部28の底面30において光学素子14の周囲を囲む樹脂部18のうち、貫通部32と貫通部32に対向した光学素子14の一辺との間の樹脂部18の幅をAとし、開口部28の側面28L,28Rと光学素子14の一辺に隣接する他辺との間の樹脂部18の幅をBとしたときに、A>Bに設定されている、
言い換えれば、開口部28の内部において、受光部22の長手方向側に位置する樹脂部18の厚さA[W0-W1]を、受光部22の幅方向側に位置する樹脂部18の受光部22の幅方向に沿って計測する厚さB[(L0-L1)/2]よりも大きく設定している。
【0034】
図1図2(B)、及び図3(A)に示すように、開口部28に露出している配線基板12の上面には、中央部分にLED等の発光素子16が搭載されている。図2(B)、及び図3に示すように、発光素子16と配線基板12とは、ボンディングワイヤ34で電気的に接続されている。本実施形態の発光素子16は、配線基板12の上方向に向けて光を出射することができる。
【0035】
図1図2(B)、図3(A)、図4(C)、図4(D)、図5から図7において、光学素子14の表面には、光透過層50が設けられている。光透過層50は、例えばポリイミドの膜であり、光学素子14の表面のうち、例えば樹脂部18に覆われる部位から受光部22までを覆っている。
【0036】
抑制部としての溝52は、光透過層50に形成されている。この溝52は、光学素子14を覆う樹脂部18の開口部28の端縁28Aから受光部22までの間に設けられ、モールド金型40による成形時における受光部22の位置への樹脂の入り込みを抑制する。本実施形態では、溝52は、光透過層50の一部を省略するか、又は光透過層50の一部の厚さを低減することで形成されている。溝52は、例えば受光部22の長手方向(矢印F方向)と平行に直線状に形成されている。溝52の長さは、受光部22の長さよりも長い。溝52は、受光部22の両端よりもそれぞれ矢印L方向及び矢印R方向にそれぞれ長く突出している。
【0037】
(光学デバイスの製造方法)
本実施形態に係る光学デバイスの製造方法は、表面に受光部22を有する光学素子14と、光学素子14を搭載し光学素子14と電気的に接続された配線基板12を備えた光学デバイスの製造方法であって、少なくとも光学素子14の一部を、モールド金型40を用いて樹脂封止する樹脂封止工程を有し、モールド金型40は、封止用の樹脂が充填される凹状のキャビティ部42と、樹脂に少なくとも受光部22及び受光部22の周辺を露出させる開口部28を形成するための凸部42Aを有し、樹脂封止工程の前に、光学素子14を覆う樹脂の開口部28の端縁から受光部22までの間に、モールド金型40による成形時における受光部22の位置への樹脂の入り込みを抑制する抑制部の一例としての溝52を形成する工程を有する。
【0038】
図2、及び図4には、光学デバイス10の樹脂部18を形成するためのモールド金型40が断面図にて示されている。
【0039】
モールド金型40は、モールド上金型40Aと、モールド下金型40Bとを含んで構成されている。モールド金型40には、連続した配線基板12A(図4(C),(D)参照)、光学素子14、樹脂部18を形成するための凹状のキャビティ部42が形成されている。なお、ここでいう連続した配線基板12Aとは、図1に示す個々の配線基板12が連続して繋がったものを指し、後ほど切断されることにより個々の配線基板12となる。なお、モールド金型40に装填する連続した配線基板12Aに発光素子16は搭載されていない。
【0040】
(1) 先ず、図4(B)に示すように、モールド上金型40Aの下面に、柔軟性と剥離性とを有した薄い合成樹脂シート44を貼り付ける。合成樹脂シート44には、一例として、フッ素樹脂シートを用いることができる。なお、図4(B)では、構成を分かり易くするため、合成樹脂シート44を厚く描いている。
【0041】
(2) 次に、図4(C)に示すように、光学素子14の表面に光透過層50を設け、該光透過層50に溝52を形成する。
【0042】
(3) 続いて、図4(C)に示すように、複数の光学素子14が搭載された連続した配線基板12Aをモールド下金型40Bの上に配置してモールド金型40を閉じる。なお、連続した配線基板12Aにおいて、光学素子14と配線基板とを電気的に接続するボンディングワイヤ26は、配線済みである。
【0043】
(4) 次に、図4(D)、図5に示すように、キャビティ部42の内部に溶融状態の樹脂を注入し、ボンディングワイヤ26、その他の必要箇所を樹脂封止する。これにより、光学素子14の受光部22、及び受光部22周辺の光学素子上面の一部、及び発光素子16が搭載される連続した配線基板12Aの上面の一部(発光素子16を設ける部分周辺)を除いた残りの部分が樹脂によって封止される。なお、ボンディングワイヤ26は、全て樹脂の内部に埋設される。
【0044】
(5) 樹脂が固化した後、モールド金型40を開き、図6に示すように、連続した配線基板12Aをモールド金型40から取り出し、配線基板12Aの樹脂部18で封止されていない部分に、発光素子16を搭載する。
【0045】
(6) その後、連続した配線基板12Aを図示しないダイシングブレードで切断し、図7に示すように、個々の光学デバイス10に切り離す。
以上の工程を経ることで、図1に示す光学デバイス10が出来上がる。
【0046】
(作用、効果)
本実施形態の光学デバイス10では、発光素子16から出射した光を、開口部28の貫通部32(図2(B)、図3(A)参照)を介して外部に設けられた照射対象(図示せず)に向けて出射し、照射対象で反射した反射光を光学素子14の受光部22で受光することができる。
なお、本実施形態の光学デバイス10は、一例としてエンコーダ等に使用することができる。
【0047】
図2(A)、及び図3(A)に示すように、本実施形態の配線基板12に搭載した光学素子14は、左右方向の長さL1が、底面30の左右方向の長さL0よりも短い。
そして、樹脂が充填されるモールド上金型40Aのキャビティ部42においては、図2(C)に示すように、光学素子14の底面30を形成するための凸部42Aの左右方向の長さL3が、底面30の左右方向の長さL0と同等となっている(なお、薄い合成樹脂シート44の厚みは無視した)。なお、凸部42Aの頂面(図2(C)における下面)が、本発明の接触部に相当している。
【0048】
図2(A)に示すように、本実施形態の光学素子14の左右方向の長さL1は、モールド上金型40Aの凸部42Aの左右方向の長さL3よりも短いため、光学素子14の左右方向の長さL1を、底面30の左右方向の長さL0まで長くしても光学素子14の左右の上面が樹脂部18で覆われることは無い。
【0049】
言い換えれば、本実施形態の光学デバイス10の構造を採用することで、図1~3に示すサイズの光学素子14よりも左右の長さが長く、左右の上面が樹脂部18で覆われない大きなサイズの光学素子14を搭載した配線基板12の必要箇所を、モールド金型40を変更することなく樹脂封止することができる。
【0050】
即ち、光学デバイス10を上記本実施形態の構造とすることで、種々のサイズの受光部22、及び光学素子14に対して、モールド金型40の共通化(標準化)ができ、製造コストを低減することが可能となる。
【0051】
また、光学素子14の左右方向の長さL1を長くすることで、光学素子14の上面に設けた受光部22の左右方向の長さL2を、光学素子14の左右方向の長さを長くした分だけ長くすることができ、これにより、受光部22のフォトダイオード22A(画素)の数を増やすことができる。
【0052】
なお、開口部28、及び底面30の寸法(左右方向、前後方向)は、最も大型の光学素子14を配線基板12に搭載することを考慮して決めておけばよい。言い換えれば、モールド金型40を設計する際に、最も大型の光学素子14を想定して、開口部28を形成する部分の寸法を予め決めておけばよい。
【0053】
また、本実施形態の光学デバイス10の構造によれ、受光部22の前後方向の幅W2が、底面30で露出している光学素子14の前後方向の幅W1よりもより狭いので、受光部22の前後方向の幅W2をより広くすることもできる。
【0054】
また、本実施形態の光学デバイス10の構造によれ、底面30に露出している光学素子14の大きさに対して、受光部22が小さいので、受光部22の配置の自由度が高い。
【0055】
なお、本実施形態の光学デバイス10では、図2(A),(B)、及び図3(A)に示すように、光学素子14の周囲を囲む樹脂部18のうち、貫通部32と光学素子14の一辺との間の樹脂部18の幅Aを、開口部28の壁面28L,28Rと光学素子14の一辺に隣接する他辺との間の樹脂部18の幅Bよりも大きくしているが、幅Aと幅Bの大小関係は必要に応じて変更でき、幅A≦幅Bとしてもよい。
【0056】
なお、この種の光学デバイスにおいて、透明樹脂で受光部やワイヤを覆うように樹脂封止する構造のものがあるが、該透明樹脂は、一般の半導体装置で用いられる黒色の樹脂に比較して、リフロー、温度サイクル等の信頼性が弱いことが多く、ボンディングワイヤの断線などを生じる場合があった。
【0057】
しかし、本実施形態の光学デバイス10では、受光部22を開口部28に露出させており、樹脂部18に一般の半導体装置で用いられる信頼性の高い黒色の樹脂を使用できることから、一般の半導体装置と同様の高い信頼性が得られる。
【0058】
また、図8図9に示されるように、この光学デバイス10では、光学素子14を覆う封止樹脂の開口部28の端縁28Aから受光部22までの間に抑制部としての溝52が設けられている。溝52は、光学素子14の表面に設けられた光透過層50に設けられている。この溝52は、開口部28の端縁28Aから離れている。これにより、モールド金型40による樹脂部18の成形時に封止樹脂の開口部28に露出する部分の上に、溶融状態の液状の樹脂が入り込んだとしても、該樹脂が溝52に至るまでに硬化することを促進できる。また、この樹脂の入り込みを溝52で受け入れることにより、受光部22の位置への樹脂の入り込みを抑制できる。
【0059】
本実施形態では、光学素子14の表面に設けられた光透過層50の溝52により、樹脂部18の成形時に開口部28内へ入り込んだ液状の樹脂を受け入れることができる。これにより、受光部22の位置への樹脂の入り込みを抑制できる。またこれによって、光学デバイス10の歩留まりを向上させることができる。
【0060】
また、本実施形態に係る光学デバイスの製造方法では、樹脂封止工程の前に、光学素子14を覆う樹脂の開口部28の端縁28Aから受光部22までの間に溝52(抑制部)を形成する工程を有するので、モールド金型40による成形時における受光部22の位置への樹脂の入り込みを抑制することができる。
[第2実施形態]
図10において、本実施形態に係る光学デバイス210では、溝52が受光部22を囲んでいる。この溝52は、受光部22の全周又は一部において、光透過層50の一部を省略するか、又は光透過層50の一部の厚さを低減することで形成されている。なお、図10の略半円形の二点鎖線は、開口部28の端縁28Aから溶融状態の液状の樹脂が入り込む様子を仮想的に描いたものである。
【0061】
本実施形態では、溝52が受光部22を囲んでいるので、様々な方向からの受光部22の位置への樹脂の入り込みを抑制できる。
[第3実施形態]
図11において、本実施形態に係る光学デバイス310では、矢印F方向にそって2つの受光部22が互いに離間して配置されている。これらの受光部22と、開口部28における受光部22の矢印L方向及び矢印R方向の端縁28Aとの間に、それぞれ抑制部としての溝52が形成されている。溝52は、例えば矢印F方向と平行に形成され、2つの受光部22に跨っている。
【0062】
本実施形態では、溝52により、モールド金型40による成形時における受光部22の位置への矢印R方向及び矢印L方向からの樹脂の入り込みを抑制できる。
[第4実施形態]
図12図13において、本実施形態に係る光学デバイス410では、抑制部が、光学素子14の表面に設けられた突堤54とされている。この例では、第1~第3実施形態における光透過層50が省略され、受光部22が開口部28に露出している。上面視での突堤54の形状は、第1実施形態における溝52と同様である。断面視では、突堤54は光学素子14の表面から上(矢印U方向)に突出している。突堤54の高さは、光学素子14の表面とモールド上金型40Aとの隙間よりも小さく、かつ樹脂の越流を抑制できる程度に設定される。突堤54は、ダミー配線により構成されていてもよい。
【0063】
この光学デバイスでは、光学素子14の前記表面に設けられた突堤により、樹脂部18の成形時に開口部28内へ入り込んだ液状の樹脂の流れを止めることができる。これにより、受光部22の位置への樹脂の入り込みを抑制できる。
【0064】
[その他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0065】
上記第1実施形態では、矩形状に形成された光学素子14の3辺にボンディングワイヤ26が配線されていたが、本発明はこれに限らず、ボンディングワイヤ26は、光学素子14の1辺に配線されていればよい。
【0066】
上記実施形態の受光部22は、複数のフォトダイオード22Aを受光部22の長手方向に沿って配列した構造であったが、フォトダイオード22Aの配列は特に限定されず、また、受光部22は単一のフォトダイオード22Aであってもよい。
【0067】
上記実施形態の光学デバイス10では、配線基板12に発光素子16が設けられていたが、発光素子16は必要に応じて設ければよく、無くてもよい。発光素子16が設けられていない光学デバイス10においては、開口部28に貫通部32を設けなくてもよい。
【0068】
上記実施形態の光学デバイス10では、受光部22の平面視形状が矩形であったが、六角形、円弧形状など、矩形以外の形状であってもよい。
【0069】
抑制部としての溝52及び突堤54は、上面視で直線的なものに限られず、折れ線状や曲線状、直線と曲線の組合せ等であってもよい。溝52及び突堤54の幅は、一定でもよく、また位置によって変化していてもよい。また、抑制部として溝52及び突堤54を挙げたが、抑制部はこれらに限られず、受光部22の位置への樹脂の入り込みを抑制できる手段であれば、他の手段を用いてもよい。
【0070】
上記実施形態は、適宜組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0071】
10 光学デバイス
12 配線基板
14 光学素子
16 発光素子
18 樹脂部
22 受光部
28 開口部
28A 端縁
40 モールド金型
42 キャビティ部
42A 凸部(頂部が接触部)
50 光透過層
52 溝(抑制部)
54 突堤(抑制部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13