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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】医療用容器パッケージ
(51)【国際特許分類】
   B65D 77/02 20060101AFI20240917BHJP
   A61J 1/14 20230101ALI20240917BHJP
【FI】
B65D77/02 D
A61J1/14 500
A61J1/14 520
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023116177
(22)【出願日】2023-07-14
(65)【公開番号】P2024015989
(43)【公開日】2024-02-06
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】63/390,169
(32)【優先日】2022-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】523269915
【氏名又は名称】ゲレスハイマー グラス ゲーエムベーハー
(73)【特許権者】
【識別番号】517311600
【氏名又は名称】ステヴァナト グループ エス.ピー.エー
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンツェル ノヴァク
(72)【発明者】
【氏名】レイムズ,クエバス
(72)【発明者】
【氏名】ウド,ロイシュナー
(72)【発明者】
【氏名】リカルド,プレテ
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-071046(JP,A)
【文献】特開昭59-199463(JP,A)
【文献】実開昭56-156751(JP,U)
【文献】国際公開第2015/076780(WO,A1)
【文献】実開平03-066870(JP,U)
【文献】実開平04-114345(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0116098(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/02
A61J 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用容器の為のパッケージであって、
槽であり、
底壁であって、当該底壁を通した少なくとも一つの孔部を具備する底壁と、
前記底壁の周囲から延出する周囲側壁であって、当該周囲側壁の上縁部に沿って周囲フランジを具備する周囲側壁であり、前記底壁と向かい合う前記槽の上部に開口を形成する周囲側壁と、
を具備する槽と、
前記槽に接続されて、前記底壁を通して少なくとも一つの前記孔部上に配設される多孔質材料のインサートと、
複数の医療用容器を支持するように構成されている入れ子と、
前記槽の前記上部の前記開口を密閉するように前記周囲フランジに接続される密閉層と、
を具備し、
少なくとも一つの前記孔部は前記底壁を通した複数の孔部を包含し、
前記複数の孔部は、少なくとも二種の長孔を包含する、パッケージ。
【請求項2】
多孔質材料の前記インサートは少なくとも一つの前記孔部上で前記槽の前記底壁に密閉され、少なくとも一つの前記孔部を液体通過から密閉するように前記多孔質材料は構成されている、請求項1に記載のパッケージ。
【請求項3】
前記入れ子と前記槽の前記底壁との間で前記多孔質材料は前記槽に接続される、請求項1又は請求項2に記載のパッケージ。
【請求項4】
前記複数の孔部は、前記底壁の第1縦端部に配設される第1複数孔部と、前記第1縦端部と向かい合う前記底壁の第2縦端部に配設される第2複数孔部とを包含し、前記第1複数孔部は、前記底壁の横中心線について前記第2複数孔部と対称的である、請求項に記載のパッケージ。
【請求項5】
前記多孔質材料は前記多孔質材料のストリップで前記複数の孔部上に配設され、多孔質材料の第1ストリップが前記第1複数孔部を密閉して多孔質材料の第2ストリップが前記第2複数孔部を密閉する、請求項に記載のパッケージ。
【請求項6】
前記密閉層は透明なポリマー膜を具備する、請求項1又は請求項2に記載のパッケージ。
【請求項7】
前記周囲フランジと前記密閉層との間で前記密閉層は接着剤により前記周囲フランジに接続される、請求項1又は請求項2に記載のパッケージ。
【請求項8】
前記接着剤は、前記周囲フランジに沿った連続的な非直線パターンで、又は前記周囲フランジに沿った正弦パターンで配設される、請求項に記載のパッケージ。
【請求項9】
前記入れ子は、前記入れ子の下方から前記入れ子の上方への消毒気体の流れを可能にするように構成されている前記入れ子の周囲の凹部を具備する、請求項1又は請求項2に記載のパッケージ。
【請求項10】
医療用容器の為の殺菌済みパッケージを形成する方法であって、
底壁と前記底壁から延出する周囲側壁とを具備する槽を形成することであって、前記底壁は前記底壁を通した少なくとも一つの孔部を具備し、前記周囲側壁は前記周囲側壁の上縁部に沿った周囲フランジを具備し、前記周囲側壁は前記底壁と向かい合う前記槽の上部に開口を形成することと、
少なくとも一つの前記孔部上に配設される多孔質材料のインサートで少なくとも一つの前記孔部を密閉することと、
前記槽に入れ子を配設することであって、前記入れ子は複数の医療用容器を支持するように構成されることと、
前記槽の前記上部の前記開口を密閉層で密閉することと、
を包含し、
少なくとも一つの前記孔部は前記底壁を通した複数の孔部を包含し、
前記複数の孔部は、少なくとも二つの長孔を包含する、方法。
【請求項11】
前記多孔質材料を通して前記槽の内部へ消毒剤を注入することを更に包含し、前記消毒剤は前記複数の医療用容器を殺菌するように構成されている、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
多孔質材料の前記インサートによる少なくとも一つの前記孔部を密閉することは、前記多孔質材料を前記槽にオーバーモールディングすること、又は前記多孔質材料を前記槽に熱密閉することを包含する、請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記多孔質材料はタイベック(登録商標)を包含する、請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記槽を形成することは前記槽を熱成形すること、又は射出成形することを包含する、請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記密閉層による前記槽の前記上部の前記開口を密閉することは、接着剤により前記密閉層を前記周囲フランジに接着することを包含する、請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記密閉層を前記周囲フランジに接着することは、前記周囲フランジに沿って連続的な非直線パターンで接着剤を塗着すること、又は前記周囲フランジに沿って正弦パターンで前記接着剤を塗着することを包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記槽から前記密閉層を除去することを更に包含する、請求項10又は請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記密閉層を除去することは、吸着ローラカッティング、グレーティング、又は前記槽から前記密閉層を手で剥がすことを包含する、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬瓶、注射器、カートリッジなど殺菌済み医療用容器の為の槽及びパッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用容器の為のパッケージは、注射器、薬瓶、又はカートリッジなど医療用容器の殺菌と安全な操作及び輸送に使用される。パッケージの内容物の殺菌は、パッケージの容器又は槽の上部開口全体を被覆する気体浸透性及び耐水性の材料層を通した殺菌剤の注入により行われる。第1箇所で製造されて第2箇所で充填される時、又は同じ箇所で製造及び充填されてから別の箇所へ配送される時など、パッケージは一つの現場から別の現場へ輸送され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本開示では、医療用容器パッケージの為の槽が記載される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
開示の幾つかの態様において、医療用容器の為のパッケージは、底壁を通した少なくとも一つの孔部を具備する底壁と、底壁の周囲から延出する周囲側壁とを具備する槽を含み、周囲側壁の上縁部に沿って周囲側壁が周囲フランジを具備し、周囲側壁は底壁と向かい合う槽の上部に開口を形成する。パッケージはまた、槽に接続されて、底壁を通して少なくとも一つの孔部上に配設される多孔質材料のインサートと、複数の医療用容器を支持するように構成されている入れ子(nest)と、槽の上部の開口を密閉するように周囲フランジに接続される密閉層とを含む。
【0005】
この態様及び他の態様は、以下の特徴のうち一以上を含み得る。多孔質材料のインサートは、少なくとも一つの孔部上で槽の底壁に密閉され、多孔質材料は液体通過から少なくとも一つの孔部を密閉するように構成されている。多孔質材料は、入れ子と槽の底壁との間で槽に接続される。少なくとも一つの孔部は、底壁を通した複数の孔部を包含する。複数の孔部は、底壁の第1縦端部に配設される第1複数孔部と、第1縦端部と向かい合う底壁の第2縦端部に配設される第2複数孔部とを包含し、第1複数孔部は、底壁の横中心線について第2複数孔部と対称的である。多孔質材料は多孔質材料のストリップで複数の孔部上に配設され、多孔質材料の第1ストリップが第1複数孔部を密閉し、多孔質材料の第2ストリップが第2複数孔部を密閉する。密閉層は透明なポリマー膜を具備する。周囲フランジと密閉層との間で接着剤により密閉層は周囲フランジに接続される。周囲フランジに沿った連続的な非線形パターンで、又は周囲フランジに沿った正弦パターンで、接着剤は配設される。入れ子は、入れ子の下方から入れ子の上方への消毒気体の流れを可能にするように構成されている、入れ子の周囲の凹部を具備する。
【0006】
開示の或る態様は、医療用容器の為の殺菌済みパッケージを形成する方法を内包する。この方法は、底壁と底壁から延出する周囲側壁とを具備する槽を形成することであって、底壁を通した少なくとも一つの孔部を底壁は具備し、周囲側壁の上縁部に沿った周囲フランジを周囲側壁は具備し、周囲側壁は底壁と向かい合う槽の上部に開口を形成することと、少なくとも一つの孔部上に配設される多孔質材料のインサートにより少なくとも一つの孔部を密閉することと、槽に入れ子を配設することであって、複数の医療用容器を支持するように入れ子は構成されることと、槽の上部の開口を密閉層で密閉することとを包含する。
【0007】
この態様及び他の態様は、以下の特徴のうち一以上を含み得る。方法は更に、多孔質材料を通して槽の内部へ消毒剤を注入することであって、複数の医療用容器を殺菌するように消毒剤は構成されていることを包含する。多孔質材料のインサートによる少なくとも一つの孔部の密閉は、多孔質材料を槽にオーバーモールディングすること、又は多孔質材料を槽に熱密閉することを包含する。多孔質材料はタイベック(Tyvek)(登録商標)を包含する。槽の形成は、槽を熱成形すること、又は射出成形することを包含する。密閉層による槽の上部の開口の密閉は、接着剤により密閉層を周囲フランジに接着することを包含する。周囲フランジへの密閉層の接着は、周囲フランジに沿った連続的な非線形パターンで接着剤を塗着することと、周囲フランジに沿った正弦パターンで接着剤を塗着することとを包含する。方法は更に、密閉層を槽から除去することを包含する。密閉層の除去は、吸着ローラカッティング、グレーティング、又は槽から密閉層を手で剥がすことのうち一つを包含する。
【0008】
本開示に記載される主題の一以上の実装例の詳細は、添付図面と下の記載とに提示される。主題の他の特徴、態様、及び利点は、明細書、図面、及び請求項から明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】医療用容器の為の実例のパッケージの分解斜視図である。
図2】組立位置における図1の実例のパッケージの概略上面図である。
図3図1の実例のパッケージで使用され得る実例の槽の概略底面図である。
図4】多孔質材料のインサートを含む図3の実例の槽の概略底面図である。
図5図3の実例の槽の概略底面斜視図である。
図6図3の実例の槽の概略上面斜視図である。
図7図3の実例の槽の概略底面図である。
図8図3の実例の槽の底壁112上に表示された干渉マップの概略底面図である。
図9】実例の槽と実例の成形組立体との分解斜視図である。
図10】槽又は医療用容器を形成する為の実例の方法のフローチャートである。
図11】医療用容器の為の殺菌済みパッケージを形成する実例の方法のフローチャートである。 様々な図面の同様の参照番号及び呼称は同様の要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、注射器、薬瓶、カートリッジ、又は他の容器などの医療用製品の為のパッケージに関する。殺菌状態で輸送が容易である医療用製品を用意することが医療の分野では重要であり、医療用パッケージにより、殺菌済みの壊れやすい(例えばガラス)製品の操作及び輸送可能性が得られる。本開示において、医療用製品のパッケージは、槽の底壁に一つ以上の孔部を備える槽を含み、気体浸透性かつ液体不浸透性であって孔部上の選択的フィルタ層として作用する多孔質繊維材料などの多孔質材料により、孔部は被覆及び密閉される。一以上の孔部を密閉するように、多孔質材料が槽にオーバーモールディングされるか、槽に熱密閉されるか、他の形で槽に接続され得る。孔部及び多孔質材料は、例えばパッケージ内部の内容物を消毒及び殺菌するように、槽の底部を介して孔部及び多孔質材料を通した殺菌気体の注入を可能にする。孔部上の多孔質材料の密閉は、孔部を通した槽の内部空間への細菌侵入及び液体浸入が行われないことを保証する一方で、それでも多孔質材料を通した殺菌気体の注入を可能にする。輸送、保管、又はその両方の準備としてパッケージの内部を包囲するように、不透過性ポリマー膜などにより槽の上部開口でもパッケージが密閉され得る。
【0011】
幾つかの従来のパッケージ組立体で、槽は、孔部を除いて連続的な側壁と底壁とを有し、槽の上部開口全体の上に配設される密閉層は、多孔質フィルタ材料を含む。多孔質材料を備える密閉層を上部開口から除去(例えば剥離)することは困難であり得、パッケージの殺菌済み内容物を感染させるか他の形で汚染し得る実質的な粒子発生という結果を生じることが多い。本開示で、底壁、側壁、又はその両方の孔部など、槽の本体の一以上の孔部を被覆するように、多孔質材料が配置変更される。一以上の開口を被覆するのに使用される多孔質材料の量は、槽の上部開口全体を被覆する多孔質材料のシートよりもかなり少ないので、この多孔質材料の配置変更は、パッケージ全体に使用される多孔質材料の量を減少させることによりコストを削減する。例えば、孔部を被覆する多孔質材料又は半透過性材料の量は、上部開口を画定するエリアの5%と80%の間など1%と100%の間であり得る。幾つかの例で、孔部を被覆する多孔質又は半透過性材料の量は、上部開口を画定するエリアの約15%、20%、25%、30%、又は35%である。或る実装例で、多孔質の半透過性材料の量は、パッケージの殺菌サイクルに従って規定される。また、本開示のパッケージには、開口を密閉する密閉層が組み込まれる。密閉層は多孔質材料を除外し、密閉層の急速及び/又は容易な設置(例えば接着)、及び/又は、槽からの密閉層の除去(例えば剥離)を可能にする。
【0012】
図1は、医療用容器の為の実例のパッケージ100の分解斜視図である。実例のパッケージ100は、槽102と、槽102に接続される多孔質の半透過性材料のインサート104(二つのインサートが図示)と、医療用容器108(例えば図1に示されているガラス薬瓶)を支持する入れ子(nest)106と、槽102の内部空間に内容物を包囲する槽102の上の密閉層110とを含む。槽102は、少なくとも一つの孔部114(実例のパッケージ100では合計6個の孔部114。図1では2個が図示)を備える底壁112と、底壁112の周囲から延出する周囲側壁116と、周囲側壁116の上縁部に沿った周囲フランジ118とを含む。側壁116とフランジ118とは、底壁と向かい合う槽102の上部に開口を形成する。開口は、槽102の内部空間への入れ子106とこれに支持された容器108との挿入を可能にするのに充分なほど大きい。多孔質材料インサート104は孔部114上に配設されてこれを被覆し、下でより詳細に記載されるオーバーモールディング、熱密閉、又は他の装着形態により、槽102に接続される。
【0013】
槽102は、単一の材料又は多数の材料から一体的に形成され得る。幾つかの事例で、槽102は、ポリスチレンなど、成形プラスチック又は熱成形プラスチックから形成される。槽102は多孔質材料のインサート104を槽102の適所に保持し、幾つかの例では、多孔質材料のインサート104は、成形中に槽102に対してオーバーモールディングされるか、又は槽102の形成後に槽102に熱密閉される。槽102は剛性であり、実例のパッケージ100に構造及び剛性を付与し、槽102の内部空間の内容物の殺菌の為の実質的な包囲環境を設ける。槽102の材料と多孔質材料のインサート104とは、例えば、注射器など尖った医療用容器による槽102の穿孔に耐える耐穿孔性である。(密閉層110により被覆され得る)上部開口と(多孔質材料のインサート104により密閉される)孔部114とを除くと、槽102は流体通過に対して不浸透性である。
【0014】
図1の実例のパッケージ100では、縦、横、及び垂直の方向が3座標軸系で示されている。通常、縦方向は槽の長い方の寸法に沿っており、横方向は槽の短い方の寸法に沿っており、垂直方向は槽の高さ寸法に沿っている。幾つかの例で、槽の横中心線は横寸法に平行であって槽の縦辺を概ね二分し、槽の縦中心線は縦寸法と平行であって槽の横辺を概ね二分する。
【0015】
槽102は、多様な形状及びサイズを取り得る。図1の実例のパッケージ100では、側壁116は実質的に管形であって底壁112の矩形周囲から垂直に延出している。周囲フランジ118は、実質的に平坦な上面を備える矩形の形状を有し、側壁116の垂直上部に位置している。周囲フランジ118は側壁116と一体的に形成されている。代替的に、周囲フランジは他の形で側壁116に結合されてもよい。実例のパッケージ100の側壁116は、底壁112の縦縁部に沿った第1組の両側壁124と、底壁112の横縁部に沿った第2組の両側壁126とを含む。幾つかの実装例で、周囲側壁116は、側壁116の連続長さの全体又は一部分に沿って内側肩部120を含む。肩部120は、実質的に垂直である側壁116の外向き段部により形成され、槽102の内部空間に肩部表面を設ける。また側壁116の外向き段部は、槽102を操作するユーザ又は機械類の為の把持表面として使用され得る底向き肩部表面を槽102の外部に設ける。肩部120は、側壁116に沿って一定の垂直高さを有する。図1の実例のパッケージ100において、肩部120は、側壁116の中間高さで側壁116の連続した長さ全体に及ぶ。実例のパッケージ100の組立位置において、入れ子106のフランジ状縁部122が肩部120に置かれて槽102の内部空間に容器108が懸架されるように、肩部120は入れ子106のフランジ状縁部122を支持する。
【0016】
実例のパッケージ100の組立位置において、入れ子106は槽102の内部空間に位置し、多孔質材料のインサート104と槽102の底壁112との上方に懸架される。多孔質材料のインサート104は少なくとも一つの孔部114上で槽102の底壁112に密閉され、多孔質材料は、液体通過から少なくとも一つの孔部114を密閉するように構成されている。多孔質材料は、入れ子106と槽102の底壁112との間で槽102に接続される。密閉層110は、槽102の上部で開口を密閉するように周囲フランジ118に接続される。密閉層110は周囲フランジ118に接着、熱密閉、又は他の形で密閉結合されて、槽102の内部空間と槽102の外部空間との間に気密シールを設けることができる。密閉層110は多様な形態を取り得る。例えば、密閉層110は、クリアポリエチレン(PE)膜又はポリエチレンテレフタレート(PET)膜などのポリマー膜、あるいは別のポリマーで作られる膜であり得る。例えば、密閉層110の設置後にパッケージ100の内容物を確認する為に、密閉層110は透明であり得る。幾つかの実装例では、多孔質材料インサート104が槽102の底壁112に配置されるので、パッケージの内容物の殺菌を可能にする為に密閉層110が多孔質材料を含む必要はない。密閉層110は多孔質材料を含まないので、密閉層110の透明性によりパッケージ100の内容物の視認が可能となる。例えば、実例のパッケージ100からの密閉層110の除去を必要とすることなく、内容物のタイプ(例えば薬瓶、注射器、及び/又は、カートリッジ)、内容物のサイズ及び状態(容器サイズ、パッケージ100内の容器数、及び/又は、容器が破損しているかどうか)、及び/又は、実例のパッケージ100の内容物の他の視覚的及び表面的な詳細をユーザが検査することができる。槽102に対する密閉層110の気密シール又はパッケージ100での医療用容器の殺菌状態を犠牲にすることなくパッケージの内容物を視認するのに、この視覚的検査は有益であり得る。
【0017】
幾つかの例で、槽102はポリスチレンで作られ、多孔質材料のインサート104は医療用の高密度ポリエチレン(HDPE)で作られ、入れ子はポリプロピレンで作られ、密閉層110はクリアPET‐PEで作られる。
【0018】
図2は、組立位置における図1の実例のパッケージ10の概略上面図である。密閉層110は透明であり、入れ子106と医療用容器108とは密閉層110を通して視認可能である。医療用容器108が互いに直接接触状態とならないように入れ子106は医療用容器108を確実に保持する。例えば、医療用容器108はガラス容器であり、入れ子106はガラスどうしの直接的な接触を回避するようにガラス容器を保持する。
【0019】
幾つかの実装例では、例えば入れ子106の下方から入れ子の上方への消毒気体の流れを可能にするように、入れ子106は入れ子106の周囲に凹部を含む。凹部128は入れ子106のフランジ状縁部122に形成され、フランジ状縁部122のインセットとして形成される。例えば、図2の実例のパッケージ100のフランジ状縁部122の各縦端部は、入れ子106の下方にある槽102の内部空間を入れ子106の上方にある槽102の内部空間と流体接続する一つの凹部128を含む。凹部128の形状及び箇所は変化し得る。図2の実例のパッケージ100において、凹部128は形状が半円形であって、入れ子106の医療用容器108に存在する間隙と整合している。例えば、入れ子106に適合できる容器108の数を最大化するように、医療用容器108は列ごとのオフセットパターンで入れ子106に配設され、入れ子106に適合する容器108の数を減じないように、凹部128は医療用容器108のオフセットパターンの周囲に存在する間隙と整合している。或る実装例で、凹部128は、ユーザ又は機械による槽102からの入れ子106の充填及び/又は除去の間に指掛け又は手掛けとして使用され得る。
【0020】
幾つかの実装例では、周囲フランジ118と密閉層110との間で接着剤202により密閉層110が周囲フランジ118に接続される。図2の実例のパッケージ100で、接着剤202は、周囲フランジ118に沿った接着剤202の正弦パターンなど、周囲フランジ118に沿った連続的な非線形パターンで接着剤202が配設される。周囲フランジ118の周りに完全な密閉を保つように接着剤202のパターンは連続的であり、連続的な非線形パターンの接着剤202により、周囲フランジ118に沿った線形パターンの接着剤と比較して、周囲フランジ118からの密閉層110の容易な剥離が得られる。例えば、非線形パターンは、完全な線状の接着剤から密閉層110が一度に剥離される事例で必要となる高い瞬時剥離力を回避する。言い換えると、完全な直線状の接着剤を一度に剥がすのに必要となる剥離力と比較して、非線形パターンの接着剤202は剥離中に所与の点で必要となる剥離力の規模が小さい。或る実装例で、周囲フランジ118に沿った接着剤202のパターンは、接着剤202のパターンの幾何学形状ゆえに、上部密閉層110の箔を剥離する時に必要となる剥離力を低下させる。例えば、剥離力の印加は幾何学的に画定されたエリアに縮小され得る。接着剤202のパターンは、ジグザグパターン、正弦パターン、波パターン、湾曲パターン、波状パターン、又は他の連続パターンなど、多様な形態を取り得る。
【0021】
例えば医療用容器108の充填動作を実施する為に、密閉層110は多様な手法で除去され得る。幾つかの例では、密閉層110を手で剥がすなど、密閉層110を周囲フランジ118から手で剥離することにより、密閉層110は除去される。或る例では、機械などによる吸着ローラカッティング又はグレーティングにより密閉層110は除去される。
【0022】
図3は、実例の槽300の概略底面図である。図3の実例の槽300は、図1の実例の槽102と同じであって図1の実例のパッケージ100に使用され得る。図5,6,7は、図3の実例の槽300のそれぞれ概略底面斜視図、概略上面斜視図、そして概略底面図である。実例の槽300は、槽300の底壁112を通した複数の孔部114を含む。孔部114は対称パターンで底壁112に配設される。幾つかの事例で、孔部114を含む槽300全体は、横中心線X‐Xについて、縦中心線Y‐Yについて、あるいはその両方について対称的である。実例の槽300及び孔部114の対称性により、槽300の製造、充填、及び/又は、輸送中などに、槽300の配向の柔軟性が得られる。例えば、実例の槽300はいずれの方向にも配向され、それでも殺菌、組立、及び/又は、保管など同じ動作ステップが可能であるという点で、槽300の対称性は医療用容器の組立者及び顧客である製薬会社にとって有益であり得る。
【0023】
図3及び図5~7の実例の槽300の孔部114は、底壁112の第1縦端部306に配設される第1複数孔部302を含むとともに、第1縦端部306と向かい合う底壁112の第2縦端部308に第2複数孔部304を含む。第1複数孔部302は、横中心線X‐Xについて、また縦中心線Y‐Yについて、第2複数孔部302と対称的である。第1複数孔部302と第2複数孔部304の各々は、合計3個の孔部を含む。しかしながら、孔部の数、サイズ、そして形状は変化し得る。例えば、各々の複数はより多い孔部又はより少ない孔部を含んでもよい。
【0024】
実例の槽300の底壁112における孔部114のレイアウトにより、槽300の構造的剛性を犠牲にすることなく、孔部114を通した殺菌及び注入プロセスを実施するのに充分な開口エリアが底壁112を通して設けられる。例えば、縦端部306及び308において、孔部114は底壁112の縁部と平行に、しかし若干オフセットして整列される。槽300の底壁112における孔部114の箇所及び位置は変化し得る。しかしながら、図3の実例の槽300における孔部114のレイアウトは、実例の槽300によるパッケージの形成、操作、及び使用中に使用され得る他の設備との干渉を回避するように位置決めされる。例えば、実例の槽300を含むパッケージの製造、充填、殺菌、操作、輸送、及び/又は、開封を含む動作中のローラ、吸着パッド、操作ツール、又は他の機械設備の為の装着点又は支持点として、実例の槽300の底壁112は使用され得る。図8は、図3の実例の槽300の底壁112上に表示される干渉マップ800の概略底面図である。干渉マップ800は、上記動作のうち一以上で設備により利用され得る底壁112の区分及びエリアを指す。底壁112における孔部114の位置決めは、孔部114(そして挿入される関連の多孔質材料)とこれらの設備エリアとの干渉を回避する。例えば、パターン802はローラ干渉例を指し、パターン804は吸着パッド干渉例を指し、パターン806は様々な機械マーカの干渉例を指す。孔部114は、これらのパターン802,804,806と重複せず、またこれらの干渉パターンでの既存の動作プロセスを妨害しない。
【0025】
幾つかの実装例において、複数の孔部114は追加のピンポイント孔部又はディンプルを底壁112に含む。例えば、図3及び図5~7の実例の槽300は、第1複数孔部302及び第2複数孔部304に隣接してその周りで離間している追加のピンポイント孔部310を含む。これらのピンポイントディンプル又は孔部310は、インサート104が槽300にオーバーモールディングされる時など槽300のオーバーモールディング動作中に、多孔質の半透過性材料の一以上のインサート104の為の装着点又は位置決め点となる。例えば、ピンポイント孔部310は、槽300とインサート104とのオーバーモールディング中にインサート104の位置決めを補助できる。他の例において、ピンポイント孔部310は、槽300の射出成形プロセス中にインサート104を適所に固定する保持ピンによるキャリーオーバマークである。図3及び図5~7の実例の槽300のこれらのピンポイント孔部310は任意であって、図3及び図5~7に示されているもの以外の構成で配置されてもよい。
【0026】
孔部114は、槽300の形成中に槽300に成形されるか、槽300の本体が形成された後に槽300の底壁112に切り抜かれるか、他の形で槽300に形成され得る。図3及び図5~7の実例の槽300は、槽300の底壁112に多数の孔部114を有するものとして示されているが、幾つかの実装例では、底壁112の孔部114の代わりに、あるいはこれに加えて側壁116が孔部を含み得る。
【0027】
図4も、孔部114上に配設される多孔質の半透過性材料のインサート400を含む、図3の実例の槽300の概略底面図である。多孔質(半透過性)材料のインサート400は図1の実例のパッケージの多孔質材料のインサート104と同じであり、図1の実例のパッケージ100で使用され得る。多孔質材料のインサート400は孔部14上の槽300の底壁112に密閉され、多孔質材料は液体通過から孔部114を密閉する。図4の多孔質材料の実例のインサート400は、多孔質材料のストリップ(二つが図示)で孔部114上に配設される。例えば、多孔質材料の第1ストリップ402は第1複数孔部302を密閉して、多孔質材料の第2ストリップ404は第2複数孔部304を密閉する。図4の実例の槽300は二つのインサート400を含むが、例えば、追加の孔部又は異なる間隔の孔部を備える事例では、単一のインサート又は二以上のインサートが孔部114上に配設されてもよい。幾つかの実装例では、ストリップが槽300とオーバーモールディングされるように多孔質材料のストリップが槽300のモールド成形に組み込まれる。単一の成形動作による最終製品は、既に多孔質材料ストリップが孔部上に密閉された槽を含むので、多孔質材料のストリップのオーバーモールディングは槽の製造を簡素化できる。
【0028】
図4の実例の槽300で、インサート400は二つの別々のインサートとして示されており、第1インサートは槽300の第1端部で第1組孔部を被覆して、第2インサートは槽300の第2端部で第2組孔部を被覆する。幾つかの実装例で、インサート400は、槽300の底壁112の孔部全てを被覆する多孔質の半透過性材料の単一シートである。単一シートが底壁112を通した孔部全体を被覆するのであれば、単一シートインサートは底壁112の全体を被覆しても底壁112の一部分のみを被覆してもよい。幾つかの例では、単一シートインサートあるいは多数のインサート400は型に挿入されて、槽300の形成中に槽300にオーバーモールディングされ得る。
【0029】
多孔質の半透過性材料は、HDPE繊維から形成される医療用ファブリックなど、多様な気体浸透性かつ液体不浸透性の材料で作られ得る。例えば、多孔質材料としてタイベックが使用され得る。タイベックはHDPE繊維で作られる合成ファブリックであり、水及び細菌の侵入に対する耐性を備え、(殺菌の為の消毒剤など)気体の通過を可能にするのに充分な多孔質を持つ。幾つかの実装例で、多孔質材料のインサート400は、タイベックで作られた第1ストリップ402とタイベックで作られた第2ストリップ404など、タイベック材料のストリップを含む。
【0030】
実例の槽300の製造は変化し得る。上述のように、実例の槽300は型を使用して熱成形又は射出成形され、多孔質材料インサートは槽300にオーバーモールディングされるか、槽300に熱密閉されるか、他の形で槽300に結合されて孔部114に位置決めされる。図9は、実例の成形体アセンブリ例900における実例の槽902の分解斜視図である。実例の槽902は図3の実例の槽300と同じである。実例の成形組立体900は、多孔質材料による一以上のオーバーモールディングインサートを含む実例の槽902を製造するのに使用され得る。
【0031】
図10は、図1及び2の実例の槽102、図3~8の実例の槽300、あるいは図9の実例の槽902など、医療用容器の為の槽を形成する実例の方法1000のフローチャートである。1002では、底壁と、底壁から延出する複数の側壁とを具備する槽が形成される。複数の側壁は、底壁と向かい合う槽の上部に開口を形成する。幾つかの実装例で、槽の形成は、槽を熱成形又は射出成形することを包含する。1004では、槽の底壁に少なくとも一つの孔部が形成される。幾つかの事例で、少なくとも一つの孔部の形成は、少なくとも一つの孔部を含むように槽の底壁を成形すること、又は槽の底壁に少なくとも一つの孔部を切り抜くことを包含する。1006では、少なくとも一つの孔部が多孔質材料で密閉される。幾つかの実装例で、多孔質材料による少なくとも一つの孔部の密閉は、多孔質材料を槽にオーバーモールディングすること、又は多孔質材料を槽に熱密閉することを包含する。或る事例で、多孔質材料はタイベックを含み、少なくとも一つの孔部はタイベックで密閉される。
【0032】
図11は、図1及び2の実例のパッケージ100など、医療用容器の殺菌済みパッケージを形成する実例の方法1100のフローチャートである。1102では、底壁と、底壁から延出する周囲側壁とを具備する槽が形成される。底壁は、底壁を通した少なくとも一つの孔部を具備し、周囲側壁は周囲側壁の上縁部に沿った周囲フランジを具備し、周囲側壁は底壁と向かい合う槽の上部に開口を形成する。幾つかの事例で、槽の形成は、槽を熱成形又は射出成形することを含む。1104では、少なくとも一つの孔部上に配設される多孔質材料のインサートにより少なくとも一つの孔部が密閉される。多孔質材料のインサートによる少なくとも一つの孔部の密閉は、多孔質材料を槽にオーバーモールディングすること、又は多孔質材料を槽に熱密閉することを含み得る。1106では、入れ子が槽に配設され、入れ子は複数の医療用容器を支持するように構成されている。1108では、開口部が槽の上部で密閉層により密閉される。或る実装例で、密閉層による槽の上部の開口の密閉は、接着剤により、そして任意であるが正弦パターンなど周囲フランジに沿った連続的な非線形パターンで、密閉層を周囲フランジに接着することを包含する。幾つかの例で、方法1100は、多孔質材料を通して槽の内部へ消毒剤を注入することを含み、消毒剤は複数の医療用容器を殺菌する。或る例で、方法1100は、吸着ローラカッティング、グレーティング、あるいは槽からの密閉層の手作業剥離などにより、密閉層を槽から除去することも含む。密閉層の除去は、例えばパッケージの殺菌状態を維持するように殺菌環境で行われ得る。
【0033】
幾つかの実装例が記載された。それにもかかわらず、開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく様々な変形が行われ得ることが理解されるだろう。
【符号の説明】
【0034】
100 パッケージ
102 槽
104 インサート
106 入れ子
108 医療用容器
110 密閉層
112 底壁
114 孔部
116 側壁
118 周囲フランジ
120 内側肩部
122 フランジ状縁部
124 側壁
126 側壁
128 凹部
202 接着剤
300 槽
302 孔部
304 孔部
306 第1縦端部
308 第2縦端部
310 ピンポイント孔部
400 インサート
402 第1ストリップ
404 第2ストリップ
800 干渉マップ
802 パターン
804 パターン
900 成形組立体
902 槽
1000 方法
1100 方法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11