(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】魚が掛かりやすく根掛かりしにくいひと組の釣り針
(51)【国際特許分類】
A01K 83/02 20060101AFI20240917BHJP
【FI】
A01K83/02
(21)【出願番号】P 2023171019
(22)【出願日】2023-10-01
【審査請求日】2023-10-02
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】303025674
【氏名又は名称】守屋 孝敏
(72)【発明者】
【氏名】守屋孝敏
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特表平05-506352(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 83/00 - 83/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの釣り針を、針先を向かい合わせにして重ね、二つの釣り針の軸が互いに外側及び内側に開閉可能に二つの釣り針のチモトの部分をコイルにして止め金具で止め、一方の釣り針の針先が他方の釣り針の軸の内側にあって、二つの釣針が重なった状態よりも軸が外側に開かないように、一方の釣り針のチモトの部分のコイルを1回半以上回し、その先端を直角方向に曲げたストッパーで他方の釣り針の軸を押さえ、また、魚が釣り針に付けた餌を食べた時に、二つの釣り針の軸を挟む力が働き、二つの釣り針の軸が内側に閉じ、二つの針先が交差移動して互いに軸の外側に飛び出し、魚が餌を食べるのを止めても二つの針先が飛び出たままでいるひと組の釣り針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は魚釣りにおいて、魚が掛かりやすく、しかも根掛かりしにくいひと組の釣り針に関する。
【背景技術】
【0002】
魚が掛かりやすい釣り針に関する従来技術は多い。また、根掛かりしにくい釣り針に関する従来技術も多い。しかし、通常、根掛りを防ごうとすれば魚が掛かりにくくなってしまう。そのため、魚が掛かりやすく、しかも根掛かりしにくい釣り針に関する従来技術は少ない。そこで、従来技術の中で、本願発明に類似する技術について要約して説明する。
【0003】
特許文献1は一本のバネ線材の中央部を小さなコイルにして釣り糸が結べるようにし、バネ線材の両端部にそれぞれ釣り針を形成し、二つの釣り針の針先を向かい合わせにして重ねた釣り針である。よって、この状態では二つの釣り針の針先が互いに軸の内側にあって外側に出ていないので海底を引きずっても根掛かりすることがない。また、魚が二つの釣り針の軸を挟むように噛めば、その力によって二つの釣り針の針先が交差移動して軸の外側に出るので針が魚に掛かるようになっている。
【0004】
特許文献2は、[要約]の[解決手段]をそのまま記載すると、「複数の釣り針の針先を内側に向け外部から隠れる状態で連結し、その連結された複数の針に弾力を持たせることによって通常時は針先が外側の障害物には触れない状態で維持され、魚が喰いついた際には咬む圧力によって針先が内側から外側へと交差移動し通常の釣り針同様の機能を果たす仕組みから成る物」である。この特許文献2の特徴は「弾力のある物質」で複数の釣り針をチモトの部分で連結してある点である。この釣り針もこのままの状態では海底を引きずっても根掛かりすることがなく、また、魚が喰いついたときには針先が交差移動して軸の外側に出るので針が魚に掛かるようになっている。
【0005】
特許文献3は特許文献1と同じように、一本のバネ線材の中央部を小さなコイルにして釣り糸が結べるようにし、バネ線材の両端部にそれぞれ釣り針を形成し、二つの釣り針の針先を向かい合わせにして重ねた釣り針である。特許文献1と異なる点は、二つの釣り針の軸がバネ線材の弾力によって開かないように、二つの釣り針の軸をまたぐようにストッパーを設けている点である。よって、ストッパーが働いていれば二つの釣り針の軸が開かないので、海底を引きずっても根掛かりすることがない。また、魚が二つの釣り針の軸を挟むように噛めば、その力によってストッパーが外れ、二つの釣り針の軸が外側に開くので、針が魚に掛かるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許公報 昭34-6876号公報
【文献】特開2004-065235号公報
【文献】公表特許公報 平5-506352公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
魚が掛かりやすく、しかも根掛かりしにくい釣り針を提供することが課題であるが、課題をより明確にするために、そもそも魚がどのように餌を食べるのか、その生態を調べる必要がある。
【0008】
そこで、水槽で飼っている魚が餌をどのように食べるのかをつぶさに観察してみた。すると、まず、餌によって食べ方が異なることが分かった。口をパクパク動かしながら餌を少しずつ噛み砕いて食べる場合と、餌を口の中に吸い込んでから口をパクパク動かしながら食べる場合がある。
【0009】
餌を少しずつ噛み砕いて食べる場合は、口の中に入れた餌をより細かくする、すなわち咀嚼するときも口を動かしているが、それだけではなく、餌を飲み込むときにも口を動かしていると思われる。餌を吸い込んでから食べる場合は、吸い込んだ餌を、口を動かしながら飲み込んでいると思われる。つまり、魚は餌を噛み砕くときだけでなく、飲み込むときにも口を動かすのである。
【0010】
次に分かったことは、いずれの場合も魚が餌を口の中に入れた後に、一瞬、口を動かすのを止めることである。餌を吸い込んでから飲み込む場合も、餌を吸い込んだ後にすぐには口を動かさない。つまり、すぐには飲み込まない。これは、餌であるか、それとも餌ではなく異物であるか、あるいは危険な餌ではないかなどを吟味しているのである。このことは魚には感覚器官があることから想定できる。そして、餌ではなく異物であるとか、危険な餌であるとか、餌に何らかの違和感を覚えたときには必ず吐き出す。
【0011】
このことが分かるのは、砂の中にいるイソメなどの餌を食べる魚は、餌を吸い込んでから、一瞬、口を動かすのを止め、餌に砂や小石などが混じっているときには、口を動かしながら砂や小石などを吐き出して餌だけを食べるからである。また、小魚を吸い込んでから飲み込む魚は、尻尾から吸い込んだときには一旦吐き出して、再度、頭から吸い込むのである。これば尻尾から吸い込むと背ビレや腹ビレのトゲが口の中で刺さるためである。以上のことは、水槽で飼っている魚が餌を食べる所をよく観察していれば分かるが、釣った魚や鮮魚店で買った魚の腹を裂いて調べてみれば良く分かる。すなわち、魚の腹の中に砂や小石などの異物は入っていないし、小魚はほとんど頭から飲み込んでいるのである。
【0012】
以上のことから、魚が掛かりやすい釣り針に必要な第1の課題は、餌を付けた釣り針を魚が口の中に入れた時に、これは餌ではなく異物であるとか、危険な餌であるとかを魚に察知されないようにして、魚が釣り針を吐き出さないようにすることである。つまり、釣り針が硬い砂や小石と同じように口の中で当たったり、釣り針の針先が硬い魚の背ビレや腹ビレのトゲと同じように、口の中で刺さったりしないようにすることである。そして、魚が安心して釣り針に付けた餌を食べるようにすることである。
【0013】
釣り針はそもそも硬い金属でできているので魚にとっては異物である。よって、餌を付けた釣り針を魚が口の中に入れたときに異物だと察知されないようにしなければならない。このためには、釣り針に餌を付けるときにできるだけ「通し刺し」にして釣り針を餌の中に隠すべきだが、餌によってはそうはできない場合もある。しかし、少なくても、針先が魚の口の中で刺さらないように、針先を何らかの方法で隠さなければならない。このことは、釣り針を用いて魚を釣るには矛盾しているように思えるが、魚が餌を付けた釣り針を吐き出さないようにするためには必要なのである。
【0014】
魚が掛かりやすい釣り針に必要な第2の課題は、釣り針に付けた餌を魚が吐き出さずに食べた時に、隠しておいた針先が飛び出て魚に掛かるようにすることである。さらに、第3の課題は、掛かった針を魚が外そうとしても容易に外れないようにすることである。以上の三つの課題を解決することが、魚が掛かりやすい釣り針に必要なのである。
【0015】
ところが、特許文献1と2の釣り針は魚が釣り針に付けた餌を噛んだ時に針先が出て魚の口の中で針が刺さるが、魚が噛むのを止めれば弾力によって刺さった針が抜けて元の状態に戻ってしまうのである。つまり、魚が口をパクパク動かすたびに針が刺さったり抜けたりするのである。よって、魚は危険な餌だと察知して、すぐにこの釣り針を吐き出すものと思われる。なぜなら、噛むのを止めれば弾力によって刺さった針が抜けるので、容易に吐き出すことができるからである。
【0016】
特許文献1と2の釣り針を魚が吐き出すことは既に説明したように、魚の生態、及び感覚器官によるものである。よって、特許文献1と2の釣り針には魚が掛かからないと思われる。ちなみに、この魚の生態及び感覚器官は人でも全く同じである。例えば、人が骨付きの魚を食べたときに、魚の骨が口の中で刺さったときには、すぐに食べるのを止めて吐き出し、刺さった骨を抜こうとする。
【0017】
特許文献3の釣り針は、魚が口の中に入れた途端に吐き出すものと思われる。つまり、釣り針に付けた餌を食べる前に吐き出してしまうのである。なぜなら、既に説明したように、魚は砂や小石などの異物を吸い込んだときには吐き出すからである。二つの釣り針の軸をまたぐように取り付けた硬い金属のストッパーは魚にとっては異物なのである。よって、すぐに吐き出すのである。ちなみに、このことは人でも全く同じである。例えば、人がアサリやシジミの味噌汁を食べたときに、アサリやシジミと一緒に砂や小石が混じっていれば、人は食べるのを止めてすぐに吐き出す。
【0018】
特許文献1、2、3に共通している問題点は、魚の生態や感覚器官を無視していることと、弾力を利用して強引に魚を釣り針に掛けようとしていることである。
【0019】
以上の問題点は従来の魚の釣り方にも関係がある。従来の魚の釣り方は、釣り人が強引に魚を釣り針に掛ける釣り方だからである。つまり、魚が釣り針に付けた餌を食べると、その反応が釣り糸を通してウキや竿先に伝わる。これを「当たり」と言うが、この「当たり」があった時に、釣り人がその「当たり」に「合わせ」て竿を立てて糸を強く引っ張り、強引に魚を釣り針に掛ける釣り方なのである。
【0020】
従来の釣り方の場合、釣り人はタイミングを計って「合わせ」を行う必要がある。魚が餌を少しずつ噛み砕いて食べる場合は、小さな「当たり」があってもすぐには「合わせ」ない。魚が餌をつついているうちは小さな「当たり」が何度もあるからである。また、このときには釣り針がまだ魚の口の中に入っていないからである。その後大きな「本当たり」があった時に、すなわち釣り針が魚の口の中に入って、魚が餌を本格的に食べたのを見計らって「合わせ」るのである。また、魚が餌を吸い込んでから食べる場合は、最初に餌を吸い込んだ時に大きな「本当たり」があり、魚の口の中に釣り針が入ったことが分かるので、最初の大きな「本当たり」で合わせるのである。これが従来の魚の釣り方である。
【課題を解決するための手段】
【0021】
二つの釣り針を、針先を向かい合わせにして重ね、二つの釣り針の軸が互いに外側及び内側に開閉可能に二つの釣り針のチモトの部分をコイルにして止め金具で止め、一方の釣り針の針先が他方の釣り針の軸の内側にあって、二つの釣り針が重なった状態よりも軸が外側に開かないようにするストッパーを設け、また、魚が釣り針に付けた餌を食べた時に、二つの釣り針の軸を挟む力が働き、二つの釣り針の軸が内側に閉じ、二つの針先が交差移動して互いに軸の外側に飛び出し、魚が餌を食べるのを止めても二つの針先が飛び出たままでいるひと組の釣り針。
【0022】
前記ストッパーは一方の釣り針のチモトの部分のコイルを1回半以上回し、その先端を直角方向に曲げて他方の釣り針の軸を押さえるようにした前記記載のひと組の釣り針。
【0023】
前記ストッパーは一方の釣り針のチモト近くの軸に所定の長さのバーの一端を固定し、他端を直角方向に曲げて他方の釣り針の軸を押さえるようにした前記記載のひと組の釣り針。
【0024】
前記ストッパーは一方の釣り針のチモト近くの軸を曲げて所定の長さのヘアピンカーブ状の折り返しを設け、その先端を直角方向に曲げて他方の釣り針の軸を押さえるようにした前記記載のひと組の釣り針。
【発明の効果】
【0025】
二つの釣り針のうち、一方の釣り針の針先が他方の釣り針の軸の内側にあって、二つの釣り針が重なった状態では、すなわち、ストッパーが働いて二つの針先が共に軸に隠れていて軸の外側に出ていない状態では、魚が餌を付けたひと組の釣り針を口の中に入れても針先が口の中で刺さることがない。また、ストッパーを簡易な構造にしたうえでチモトの部分、あるいはチモト近くに取り付けてあるので、餌を付けたこのひと組の釣り針を魚は異物だとは気づかない。よって、魚はこのひと組の釣り針を吐き出すことなく安心して餌を食べる。また、この状態であれば、このひと組の釣り針を海中や海底で引きずっても、針先が海草や岩礁に根掛かりすることがない。
【0026】
魚がこのひと組の釣り針に付けた餌を吐き出さずに安心して食べた時に、二つの釣り針の軸を挟む力が働き、軸が内側に閉じる。すると、二つの針先が交差移動して軸の外側に飛び出る。魚の口の中で、二つの針先が同時に反対方向に飛び出るので、どちらかの針、又は両方の針が魚に刺さる。本願発明のひと組の釣り針は、従来技術と異なり弾力を用いていないので、針先がひとたび飛び出れば、二つの針先は出たままである。よって、針が魚に刺さったままになる。通常、釣り針には「返し」がついているため、魚が刺さった針をすぐに外すのは難しい。なお、特許文献1と2の釣り針の場合は、魚が噛むのを止めれば弾力によって刺さった針が抜ける(外れる)ので容易に吐き出すことができるのである。
【0027】
魚が餌を食べた時に働く二つの釣り針の軸を挟む力は、軸に対して直角の方向でなくても斜めの方向であってもよい。斜めの方向であっても軸は内側に閉じて二つの針先が軸の外側に飛び出るからである。
【0028】
魚が刺さった針をすぐに外すことができない場合には、魚はその生態によって、刺さった針を全力で外そうとする。このため、左右に走ったり、体をひねったり、飛び跳ねたりするが、そのような動作をすればするほど、魚の口の中で二つの針先が互いに反対方向に飛び出ているので、一つの針にだけ掛かっていたのに両方の針に掛かってしまったり、より深く掛かってしまったりする。よって、掛かった針を魚が外すのは難しい。したがって、本願発明のひと組の釣り針は従来の釣り針よりも魚がかかりやすいという効果がある。
【0029】
本願発明の釣り針を用いた釣り方は魚が自ら釣り針に掛かる、いわゆる「向こう合わせ」になる釣り方である。従来の釣り方のように、タイミングを計って「合わせ」る必要がない。魚が「向こう合わせ」で掛かるのを待っていれば良いのである。そして、魚が刺さった針を全力で外そうとして、左右に走ったり体をひねったりした時に、すなわち道糸が水中に強く引き込まれた時にゆっくりと竿を立てて魚を取り込めば良いのである。要するに、釣り人がタイミングを計って、「当たり」に「合わせ」て糸を強く引っ張り、強引に魚を釣り針に掛けるのではなく、魚が自ら釣り針に掛かってしまうのである。よって、「向こう合わせ」になるのである。
【0030】
本願発明のひと組の釣り針は構造が簡単で容易に製作出来るので、コストがあまりかからない。よって、大量生産できる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】ハリスを結ぶチモトの部分を1回半回してコイルにし、コイルの先端を直角方向に曲げた釣り針(1A-1)の正面図、平面図、側面図である。
【
図2】ハリスを結ぶチモトの部分を1回だけ回してコイルにした釣り針(1B-1)の正面図、平面図、側面図である。
【
図3】
図1で示した釣り針(1A-1)と
図2で示した釣り針(1B-1)とを重ね合わせ、止め金具で止めて形成した、本願発明のひと組の釣り針(L)の正面図、平面図、側面図である。
【
図4】
図3で示したひと組の釣り針(L)に、(a)図に矢印で示すように二つの軸を挟む力が働いたときに、(b)図のように針先が軸の外側に飛び出る状態を表した正面図である。
【
図5】
図4で示したひと組の釣り針(L)に、餌を付けた時の状態を表した正面図と側面図である。
【
図6】ハリスを結ぶチモトの部分を1と1/4回、回してコイルにした釣り針(1B-2)の正面図、平面図、側面図である。
【
図7】
図6の釣り針(1B-2)のチモト近くの軸に所定の長さのバーの一端を固定し、他端を直角方向に曲げた釣り針(1A-2)の正面図、平面図、側面図である。
【
図8】
図7で示した釣り針(1A-2)と
図6で示した釣り針(1B-2)とを針先を向かい合わせにして重ね、止め金具で止めて形成した、本願発明のひと組の釣り針(M)の正面図である。
【
図9】
図8で示したひと組の釣り針(M)に、(a)図に矢印で示すように二つの軸を挟む力が働いたときに、(b)図のように針先が軸の外側に飛び出る状態を表した正面図である。
【
図10】ハリスを結ぶチモトの部分を1と1/4回、回してコイルにし、チモト近くの軸を曲げて所定の長さのヘアピンカーブ状の折り返しを設け、その先端を直角方向に曲げた釣り針(1A-3)の正面図、平面図、側面図である。
【
図11】
図10で示した釣り針(1A-3)と
図6で示した釣り針(1B-2)とを針先を向かい合わせにして重ね、止め金具で止めて形成した、本願発明のひと組の釣り針(N)の正面図である。
【
図12】
図11で示したひと組の釣り針(N)に、(a)図に矢印で示すように二つの軸を挟む力が働いたときに、(b)図のように針先が軸の外側に飛び出る状態を表した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1から
図12は本願発明のひと組の釣り針の実施形態である。
図1は、ハリス(7)を止めるチモトの部分を1回半回してコイル(2)にし、コイル(2)の先端(5)を直角方向に曲げた釣り針(1A―1)の正面図、平面図、側面図である。コイル(2)にしたのは、後述する他の釣り針(1B-1)と重ね合わせて二つの釣り針(1A―1・1B―1)同士を開閉可能に接続するためと、ハリス(7)が止められるようにするためと、二つの釣り針(1A―1・1B―1)の軸(4・4)が後述する状態から開かないようにするストッパーをコイル(2)の先端(5)に設けるためである。なお、図では分かりやすいように、釣り針(1A―1)の大きさに比較してコイル(2)の大きさを大きく描いてある。
【0033】
コイル(2)の先端(5)がストッパーとして働くように、コイル(2)の先端(5)を直角方向に曲げて、後述する他の釣り針(1B-1)と重ね合わせた時に、他の釣り針(1B-1)の軸(4)を外側から押さえられるようにした。コイル(2)の先端(5)を少し曲げるだけなので、魚に違和感を与えることがない。また、曲げ加工だけで済むので製作も容易であり、コストもあまりかからない。
【0034】
釣り針(1A―1)のコイル(2)は1回半以上回しても良い。これは後述する他の釣り針(1B-1)と重ね合わせ、本願発明のひと組の釣り針(L)を形成した後、どちらかの釣り針(1A-1又は1B-1)に餌を付けるときに、二つの釣り針(1A-1・1B-1)の間に隙間が必要だからである。どの程度の隙間が必要かはコイルの太さ、釣り針の大きさ、餌の大きさなどによって異なるので、コイル(2)を何回回すかは場合による。
【0035】
コイル(2)の先端(5)を直角方向に曲げるときの直角方向とは、必ずしも直角でなくても、多少斜めになっていてもほぼ直角であれば良いと言う意味である。後述する他の釣り針(1B-1)と重ね合わせた時に、他の釣り針(1B-1)の軸(4)を押さえることができれば良い。
【0036】
図2はハリス(7)を結ぶチモトの部分を1回だけ回してコイル(2)にした釣り針(1B-1)の正面図、平面図、側面図である。この釣り針(1B-1)のコイル(2)は1回以上回さない方が良い。コイル(2)を1回以上回すと、他の釣り針(1A-1)と重ね合わせるときに段差ができてしまうからである。二つの釣り針(1A-1・1B-1)の間に隙間を設けたい場合には、他の釣り針(1A-1)のコイル(2)を2回半以上回すようにする。
【0037】
図3は
図1で示した釣り針(1A―1)と
図2で示した釣り針(1B-1)とを針先(3)を向かい合わせにして重ね、二つのコイル(2・2)を中空の止め金具(6)で止めて形成した本願発明のひと組の釣り針(L)の正面図、平面図、側面図である。二つのコイル(2・2)を中空の止め金具(6)で止めることによって、二つの釣り針(1A―1・1B-1)の軸(4・4)が互いに外側及び内側に開閉可能になると共に、ハリス(7)が止められるようになる。中空の止め金具(6)にすれば、ハリス(7)を直接結ぶこともでき、ハリス(7)の先端に取り付けたスナップで接続することもできる。中空の止め金具(6)はハトメ、又は中空ネジなどにする。なお、止め金具(6)は、必ずしも中空でなくともよい。例えばリベットなどであってよい。この場合、ハリスを止める部分は別に設ける。
【0038】
図3のL(1A―1・1B-1)は一方の釣り針(1A―1又は1B-1)の針先(3)が他方の釣り針(1B-1又は1A―1)の軸(4)の内側にあって、二つの釣り針(1A-1・1B-1)が重なっている状態である。また、釣り針(1A―1)のコイル(2)の先端(5)がストッパーとして働いて二つの軸(4・4)がこれ以上外側に開かない状態である。この状態であれば、針先(3)が互いに軸(4)の内側に隠れているので、餌を付けたこのひと組の釣り針(L)を魚が口の中に入れても針先(3)が口の中で刺さることがない。よって、魚は餌を付けたこのひと組の釣り針(L)を吐き出すことなく、安心して餌を食べる。また、この状態であれば、このひと組の釣り針(L)を海中や海底で引きずっても海草や岩礁に根掛かりすることがない。なお、同じ釣り針(1A―1)を二つ、針先(3)を向かい合わせにして重ね、ひと組の釣り針を形成し、それぞれのストッパー機能を働かせ相手の軸を互いに押さえるようにすることもできる。この場合には他の釣り針(1B-1)は必要ない。
【0039】
このひと組の釣り針(L)は、餌をつけて海中にあるときは
図3のLに示す状態であることが望ましい。仮にストッパー機能がない場合は、
図3のLに示す状態を保てず二つの軸(4・4)がこの状態から外側に開いてしまうので、二つの針先(3・3)の間に隙間ができ、海底や海中を引きずった時に海藻などがこの隙間に入り込み根掛かりしてしまう。また、二つの軸(4・4)がこの状態から外側に開いてしまうと、魚がこのひと組の釣り針(L)を口に入れにくくなってしまう。さらに、二つの軸(4.4)がこの状態から外側に開いてしまうと、このひと組の釣り針(L)を海底や海中で引きずったときに海草や岩礁が軸(4)に当たり、その反動で二つの軸(4・4)が内側に閉じ、後述するように、二つの針先(3・3)が交差移動して共に軸(4・4)の外側に飛び出た状態(すなわち
図4(b)の状態)になってしまう。こうなると海草や岩礁に容易に根がかりしてしまう。よって、ストッパー機能を設けて、二つの軸(4・4)が
図3のLに示す状態より外側に開かないようにしている。
【0040】
図4(a)は
図3のLと同じ本願発明のひと組の釣り針(L)の正面図である。魚がこのひと組の釣り針(L)に付けた餌を食べた時に、
図4(a)に矢印で示すように、二つの軸(4・4)を挟む力が働き、二つの軸(4・4)が内側に閉じる。すると、
図4(b)に示すように二つの針先(3・3)が交差移動して共に軸(4・4)の外側に飛び出る。これによって、針先(3)が魚の口の中で刺さる。なお、魚が餌を食べた時の二つの軸(4・4)を挟む力は軸(4・4)に対して必ずしも直角の方向でなくても斜めの方向であってもよい。斜めの方向であっても二つの軸(4・4)が内側に閉じるので二つの針先(3・3)が共に軸(4・4)の外側に飛び出るからである。
【0041】
図4(b)に示すように、ひとたび二つの針先(3・3)が共に軸(4・4)の外側に飛び出ると、構造上、針先(3・3)は飛び出たままである。よって、針先(3)が魚に刺さったままになる。通常、針先(3)には「返し」がついているため、魚が刺さった針先(3)を外すのは難しい。このような時に、魚はその生態によって、刺さった針先(3)を全力で外そうとする。このため、口をパクパク動かしながら左右に走ったり、体をひねったり、飛び跳ねたりする。しかし、そのような動作をすればするほど、本願発明のひと組の釣り針(L)は魚の口の中で二つの針先(3・3)が互いに反対方向に飛び出たままなので、一つの針先(3)にだけ掛かっていたのに両方の針先(3・3)に掛かってしまったり、より深く掛かってしまったりする。よって、魚が自らひと組の釣り針(L)に掛かってしまうのである。従来のように、釣り人がタイミングを計って「当たり」に「合わせ」て道糸を強く引っ張り、強引に魚を釣り針に掛けるのではないのである。
【0042】
以上のようにして魚がひと組の釣り針(L)に掛かるので、いわゆる「向こう合わせ」となる。よって、小さな「当たり」があっても「合わせ」ないようにする。なぜなら、針先(3・3)がまだ軸(4・4)の内側にあって、外側に出ていない状態では、「合わせ」ても魚は掛からないからである。よって、「早合わせ」は禁物である。「向こう合わせ」で魚に掛かり、魚が掛かった釣り針(L)を外そうとして全力で左右に走ったり、体をひねったりしたときに、すなわち、道糸、あるいはウキが水中に強く引き込まれたときにゆっくりと竿を立てて魚を取り込めばよい。
【0043】
図5は本願発明のひと組の釣り針(L)に餌を付けた状態を表した正面図と側面図である。
図5(a)はエビ、又はオキアミの尾を取って「通し刺し」にした図であり、
図5(b)はカニ餌を「横掛け」にした図である。餌を付けるときには
図4(a)図の矢印で示したように、指で二つの軸(4・4)を挟むように力を入れれば軸(4・4)が内側に閉じるので、
図4(b)図のように二つの針先(3・3)が共に軸(4・4)の外側に飛び出る。そこで、どちらか一方の釣り針(1A-1又は1B―1)に餌を付ける。餌を付けた後に、両手の指で二つの軸(3・3)を外側に開く。すると、ストッパー機能があるので
図4(a)の状態で止まる。すると、一方の釣り針(1A-1又は1B―1)に付けた餌を他方の釣り針(1A-1又は1B―1)で押さえる形になる。よって、付けた餌が外れにくくなる。
【0044】
オキアミやイソメのような柔らかい餌は、一方の釣り針(1A-1又は1B-1)に餌を付けるだけでなく、両方の釣り針(1A-1・1B-1)に餌を付けることもできる。両方の釣り針(1A-1・1B-1)に「通し刺し」で餌を付ければ、両方の釣り針(1A-1・1B-1)が餌の中に隠れる。そのうえ、既に、二つの針先(3・3)が共に軸(4・4)の内側に隠れているので、魚は口の中に入れたこのひと組の釣り針(L)を異物であるとは気づかない。よって、吐き出すことなく安心して口をパクパク動かしながら餌を食べる。
【0045】
釣り針(1A-1又は1B-1)に付ける餌は、人口の餌、つまり疑似餌を用いることもできる。また、釣り針(1A-1又は1B-1)を予め擬餌針にすることもできる。一つの釣り針(1A-1又は1B-1)を擬餌針にするだけでなく、二つの釣り針(1A-1・1B-1)を擬餌針にすることもできる。
【0046】
図6はハリス(7)を結ぶチモトの部分を1と1/4回、回してコイル(2)にした釣り針(1B-2)の正面図、平面図、側面図である。既に説明したように、餌を付けるための隙間を設けるためにコイル(2)は1と1/4回以上回しても良い。また、1と1/4回以上とするのは、後述するように、他の釣り針(1A-2)と重ね合わせ、二つのコイル(2・2)を止め金具(6)で止めるときに、コイル(2・2)同士に段差がないようにするためでもある。
【0047】
なお、この釣り針(1B-2)を二つ、針先(3・3)を向かい合わせにして重ね、二つのコイル(2・2)を止め金具(6)で止めてひと組の釣り針を形成することもできる。この場合には、二つのコイル(2・2)の先端(5・5)同士がぶつかって、ストッパーとしての機能を果たすことができる。ただし、このストッパーとしての機能は釣り針(1B-2)が大きく、コイル(2)の線材が太い場合には機能するが、釣り針(1B-2)が小さく、コイル(2)の線材が細い場合にはコイル(2)の先端同士がうまくぶつからない場合があるので、ストッパーとしての機能を果たすことが難しい。
【0048】
図7は
図6で示した釣り針(1B-2)のチモト近くの軸に所定の長さのバー(8)の一端を固定し、他端(5)を直角方向に曲げてストッパーとして働くようにした釣り針(1A―2)の正面図、平面図、側面図である。所定の長さとは、後述するように、この釣り針(1A―2)と他の釣り針(1B-2)とを重ね合わせたときに、他の釣り針(1B-2)の軸(4)を外側から押さえて、ストッパーとして働くために必要な長さである。また、バー(8)の一端をしっかりと固定するためには溶接するのが望ましい。なお、図では分かりやすいように、釣り針(1A―2)の大きさに比較してコイル(2)の大きさを大きく描いているが、実際には、魚に違和感を与えないようにコイル(2)をできるだけ小さくすると共に、バー(8)をできるだけコイルの近くに設置するようにする。
【0049】
図8は
図7の釣り針(1A―2)と
図6の釣り針(1B―2)とを針先(3・3)を向かい合わせにして重ね、二つのコイル(2・2)を中空の止め金具(6)で止めて形成した本願発明のひと組の釣り針(M)の正面図である。釣り針(1A-2)のストッパー機能が働いて、他の釣り針(1B-2)の軸(4)を外側から押さえている。なお、同じつり針(1A-2)を二つ、針先(3・3)を向かい合わせにして重ね、ひと組の釣り針を形成し、それぞれのストッパー機能を働かせて互いに相手の軸(4)を押さえることもできる。しかし、この場合はひと組の釣り針に余計な金属、すなわち、バー(8)をもう一つ付けることになるので魚に違和感を覚えさせてしまう恐れがある。また、コストもかかってしまう。
【0050】
図9(a)は
図8と同じひと組の釣り針(M)の正面図である。
図9(a)に矢印で示すように、ひと組の釣り針(M)に付けた餌を魚が食べると、二つの軸(4・4)を挟む力が働き、軸(4・4)が内側に閉じる。すると、
図9(b)のように二つの針先(3・3)が交差移動して共に軸(4・4)の外側に飛び出る。よって、針先(3)が魚に刺さる。ひとたび、針先(3・3)が軸(4・4)の外側に飛び出ると、構造上、針先(3・3)は飛び出たままになるので、針先(3)が魚に刺さったままになる。
【0051】
図10は釣り針(1A―3)のチモト部分のコイル(2)を1と1/4回、回し、チモト近くの軸(4)を曲げて所定の長さのヘアピンカーブ状の折り返し(9)を設け、その先端(5)を直角方向に曲げてストッパー(5)として働くようにした釣り針(1A―3)の正面図、平面図、側面図である。この釣り針(1A―3)は軸(4)の曲げ加工だけでストッパー機能を持たせるようにしたものである。
【0052】
図11は
図10の釣り針(1A―3)と
図6の釣り針(1B-2)とを針先(3・3)を向かい合わせにして重ね、二つの釣り針(1A―3・1B-2)のコイル(2・2)を中空の止め金具(6)で止めて形成した本願発明のひと組の釣り針(N)の正面図である。なお、同じつり針(1A-3)を二つ、針先(3・3)を向かい合わせにして重ね、ひと組の釣り針を形成し、それぞれのストッパー機能を働かせて互いに相手の軸(4)を押さえることもできる。しかし、この場合はひと組の釣り針に余計な金属、すなわち、ヘアピンカーブ状の折り返し(9)をもう一つ付けることになるので魚に違和感を覚えさせてしまう恐れがある。また、コストもかかってしまう。
【0053】
図12(a)は
図11と同じひと組のつり針(N)の正面図である。
図12(a)に矢印で示すように、ひと組の釣り針(N)に付けた餌を魚が食べると、二つの軸(4・4)を挟む力が働き、軸(4・4)が内側に閉じる。すると、
図12(b)のように二つの針先(3・3)が交差移動して共に軸(4・4)の外側に飛び出る。よって、針先(3)が魚に刺さる。ひとたび、針先(3・3)が軸(4・4)の外側に飛び出ると、構造上、針先(3・3)は飛び出たままになるので、針先(3)が魚に刺さったままになる。
【符号の説明】
【0054】
1A-1 釣り針
1B-1 釣り針
1B-2 釣り針
1A-2 釣り針
1A-3 釣り針
2 コイル
3 針先
4 軸
5 先端
6 中空の止め金具
7 ハリス
8 バー
9 ヘアピンカーブ状の折り返し
L(1A-1・1B-1) ひと組の釣り針
M(1A-2・1B-2) ひと組の釣り針
N(1A-3・1B-2) ひと組の釣り針
【要約】
【課題】魚が掛かりやすく、しかも根掛りしにくい釣り針を提供することが課題である。
【解決手段】ハリスを結ぶチモトの部分をコイルにした二つの釣り針を、針先を向かい合わせにして重ね、二つのコイルを中空の止め金具で止めて二つの軸が互いに開閉可能に、かつハリスが結べるようにする。一方の釣り針の針先が他方の釣り針の軸の内側にあって、二つの釣り針が重なった状態から二つの釣り針の軸が外側に開かないようにストッパーを設ける。この状態では、針先が魚の口の中で刺さらないので魚がこの釣り針に付けた餌を吐き出すことなく安心して食べる。また、この状態では海中を引きずっても、根がかりすることがない。魚がこの釣り針に付けた餌を食べたときに、二つの軸を挟む力が働き二つの軸が内側に閉じる。すると、二つの針先が交差移動して互いに軸の外側に飛び出るので魚が針にかかる。
【選択図】
図4