(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】アスファルト舗装材の車載溶解装置
(51)【国際特許分類】
E01C 19/08 20060101AFI20240917BHJP
【FI】
E01C19/08
(21)【出願番号】P 2023203501
(22)【出願日】2023-12-01
【審査請求日】2024-05-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502230701
【氏名又は名称】株式会社シー・エス・ケエ
(74)【代理人】
【識別番号】100107700
【氏名又は名称】守田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】工藤 守
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-081310(JP,A)
【文献】実開平01-147008(JP,U)
【文献】特開2003-336211(JP,A)
【文献】特開平10-183522(JP,A)
【文献】特開2002-173907(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0052169(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/08
E01C 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入されたアスファルト舗装材を貯留する
直立した有底筒状のタンクと、当該タンクに付設され、タンク内に貯留された前記アスファルト舗装材を加熱溶解する加熱手段と、車両の荷台に設置されて前記タンクを、
その直立姿勢を維持したまま、荷台内方の後退位置
と前記タンクの少なくとも底壁の一部が荷台外へはみ出す進出位置との間で移動可能とするガイド手段と、前記底壁の一部に設けられて開放時に内部の溶解したアスファルト舗装材を落下排出可能とするゲート手段と、を備えるアスファルト舗装材の車載溶解装置。
【請求項2】
前記ガイド手段は、前記タンクに付設されて、前記荷台上に設けられた平行レール上を転動する車輪で構成されている請求項1に記載のアスファルト舗装材の車載溶解装置。
【請求項3】
前記タンクには当該タンク内の溶解したアスファルト舗装材を攪拌する攪拌手段が設けられている請求項1に記載のアスファルト舗装材の車載溶解装置。
【請求項4】
前記ゲート手段は、前記底壁の一部に設けられた排出口と、当該排出口を横切るように移動してこれを開閉する板状弁体で構成されている請求項1に記載のアスファルト舗装材の車載溶解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアスファルト舗装材を道路補修現場等で調製できるようにしたアスファルト舗装材の車載溶解装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の車載溶解装置として、例えば引用文献1には、骨材供給手段、フィラ供給手段およびアスファルト供給手段等からなるアスファルト混合機をトラックの荷台上に搭載ししたものが提案されている。この場合、荷台に位置するアスファルト混合機で調整したアスファルト舗装材(アスコン)を手押し車へ移送する場合には引用文献1に示されているようにシュータ(
図3の符号35)が多用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、出願人は骨材にバインダを混ぜて加熱溶解するだけで速やかに調整できるアスコン(出願人登録商標「E・Rアスコン」)を開発し使用しているが、上記アスコンのバインダはアスファルト成分を含み粘度が高いためにシュータに付着しやすく、このため、手押し車に供給されるアスコン中のバインダの量が減少してその品質が低下し、あるいは供給されるアスコンが所望量よりも少なくなるという問題があった
【0005】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、調製されたアスファルト舗装材の成分やその量を変動させることなく供給することができるアスファルト舗装材の車載溶解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために本発明は、投入されたアスファルト舗装材(M)を貯留する直立した有底筒状のタンク(3)と、当該タンク(3)に付設され、タンク(3)内に貯留された前記アスファルト舗装材(M)を加熱溶解する加熱手段(7)と、車両の荷台(L)に設置されて前記タンク(3)を、その直立姿勢を維持したまま、荷台(L)内方の後退位置と前記タンク(3)の少なくとも底壁の一部が荷台(L)外へはみ出す進出位置との間で移動可能とするガイド手段(91,92)と、前記底壁の一部に設けられて開放時に内部の溶解したアスファルト舗装材(M)を落下排出可能とするゲート手段(31,8)と、を備える。
【0007】
好ましくは、前記ガイド手段は、前記タンク(3)に付設されて、荷台上に設けられた平行レール(92)上を転動する車輪(91)で構成される。
【0008】
好ましくは、前記タンク(3)に、当該タンク(3)内の溶解したアスファルト舗装材(M)を攪拌する攪拌手段(6)が設けられている。
【0009】
好ましくは、前記ゲート手段は、前記底壁の一部に設けられた排出口(31)と、当該排出口(3))を横切るように移動してこれを開閉する板状弁体(8)で構成されている。
【0010】
上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を参考的に示すものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、加熱手段によってタンク内のアスファルト舗装材を溶解した後、ガイド手段によってタンクを進出位置へ移動させることが可能になる。進出位置でゲート手段を開放すると、タンク内から下方に位置させた手押し車等へ、溶解したアスファルト舗装材が直接落下排出される。本発明ではシュータを使用する必要が無いから、アスファルト舗装材の成分がシュータに付着して手押し車等に供給されるアスファルト舗装材の成分が変動し品質が低下する、あるいは供給量が減る、という従来の問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】蓋体を取り去った状態でのタンクの平面図である。
【
図5】溶解したアスコンを排出している車載溶解装置の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1には車載溶解装置の平面図を示し、
図2にはその垂直断面図を示す。車載溶解装置は四隅に立柱を備えた矩形のフレーム体1を有し、上記各立柱11は下端と上端で横梁12によって連結されている。フレーム体1の内空間には、内壁面に所定厚の断熱材21(
図2)を備えた有底円筒状の外郭体2が設けられており、当該外郭体2の上半部内に、有底円筒状の内郭体が位置してこれがタンク3となっている。
【0014】
タンク3の開放口には、所定厚の断熱材41を備えた蓋体4が覆着されている。蓋体4はその片隅の半月部分41(
図1)がU字取手42によって上方へ回動開放可能となって、タンク3内へアスコン材料を投入するための開閉部となっている。なお、
図3には蓋体4を取り去った状態でのタンク3の平面図を示す。
【0015】
フレーム体1の上端の横梁12の中央部間に平行梁13が架設されて、これら平行梁13の中央部間にモータ51付き回転減速機5が載設されている。回転減速機5の、下方へ突出する出力軸52(
図2)には攪拌扇6の主軸61が連結されている。主軸61の中間位置から対称径方向へ逆L字形の支軸62、63がそれぞれ延びて、各支軸62,63の下端にそれぞれ平板状の翼体621,631が、タンク3の底壁に対して垂直に近接して設けられている。
【0016】
主軸61の回転時には翼体621はタンク3の周壁に沿った最外周の円軌跡C1(
図3)を旋回移動し、翼体631はその内方の円軌跡C2を旋回移動する。主軸61の下端には平板状の翼体611がタンク底壁に対して垂直に近接して設けられて、主軸の回転時には翼体611はタンク3の周壁に沿った最内周の円軌跡C3を旋回移動する。また、主軸61の下端に近い中間部には外周両側に、翼体611の先端とほぼ同じ円周位置へ突出する攪拌棒612が設けられている。
【0017】
タンク3の下方の、外郭体2の内空間は加熱室22(
図2)となっており、加熱室22に面する外郭体2の周壁にガスバーナ7が設けられて、その吹出口71が加熱室22に開口している。加熱室22外にあるタンク3の底壁部は内方へ円弧状に抉れて排出口31となっている(
図3)。そしてこの排出口31には、当該排出口31よりやや大径の扇状に成形された板状弁体8が下方から接してこれを閉鎖している。
【0018】
板状弁体8はその中心軸81周りに回動可能に軸支されており、その一辺には、タンク3の外周接線方向へ延びる操作棒82の基端が接合されている。これにより、操作82棒を
図1の状態から
図3の状態へ上方から見て反時計回りに回動操作することによって、板状弁体8を回動移動させて排出ゲート31を開放することができる。なお、上記モータ51の運転やガスバーナ7の燃焼制御は、フレーム体1に設置された制御盤14(
図2)で行う。
【0019】
フレーム体1の左右(
図1の上下)両側下端を前後(
図1の左右)方向へ延びる各横梁12(
図2)にはそれぞれ長手方向の2カ所に車輪91が設けられている。一方、車両の荷台L(
図4)上に固定設置される一対の平行レール92が設けられて、これら平行レール92上にそれぞれ上記車輪91が位置して(
図4)当該平行レール92に沿ってフレーム体1全体が
図1の左右方向へ移動可能となっている。フレーム体1の移動操作はこれに設けた取手15(
図2)を掴んで手動で行う。
【0020】
各平行レール92の外側にはこれに沿ってそれぞれガイド板93が設けられており、ガイド板93から内方へ突出させられた規制板931(
図4)が後側車輪91の上方に近接して位置して、その浮き上がりを防止している。平行レール92は
図2に示すように車両荷台Lの端L1から内方へ向けて設置される。これにより、フレーム体1を引き出し移動させた
図2に示す進出位置では、排出ゲート31を設けたタンク3の底壁の一部が荷台L外へはみ出すようになっている。
【0021】
以上のような構造の車載溶解装置を使用する場合には、フレーム体1を車両荷台Lの内方の後退位置へ押し込み(
図2の矢印)、この状態でタンク3の開閉蓋41を開けてアスコン材料である所定量の骨材とバインダをタンク3内へ装入する。その後、加熱室22のガスバーナ7に点火してタンク3内のアスコン材料を溶解してアスコンとする。この時、同時に攪拌扇6を回転させて溶解したアスコンを混練する。
【0022】
アスコンが充分に溶解混錬された状態でフレーム体1を進出位置へ引き出して(
図2の状態)タンク3の排出ゲート31を荷台L外に位置させ、排出ゲート31の下方へ手押し車V(
図5)を置いた後に、操作棒82によって板状弁体8を開放回動移動させる(
図3の状態)。これにより、
図5に示すように、タンク3内の溶解したアスコンMが排出ゲート31を経て下方の手押し車Vへ直接落下排出させられる。
【0023】
以上のように、本実施形態で説明した車載溶解装置によれば、溶解したアスコンMを、シュータを使用することなく直接下方の手押し車Vに排出できるから、従来のようにバインダがシュータに付着してアスコン中のバインダの量が減少しその品質が低下してしまうという問題を回避することができる。また、本実施形態によれば、従来のようにシュータに付着したバインダの除去に手間取るという問題もない。
【0024】
なお、上記実施形態は、シュータにバインダが付着してアスコンの成分が変動してしまう、あるいは供給量が減るという課題の解決を図ったものであるが、一般にシュータにはアスコンの一部が付着することが多く、本発明は「E・Rアスコン」に限らず広く一般のアスコンにも適用できるものである。
【符号の説明】
【0025】
1…フレーム体、2…外郭体、3…タンク、31…排出口、6…攪拌扇(攪拌手段)、7…ガスバーナ(加熱手段)、8…板状弁体、91…車輪、92…平行レール、L…荷台、M…アスコン(アスファルト舗装材)。
【要約】
【課題】調製されたアスファルト舗装材の成分やその量を変動させることなく供給することができるアスファルト舗装材の車載溶解装置を提供する。
【解決手段】投入されたアスファルト舗装材Mを貯留するタンク3と、当該タンク3に付設され、タンク3内に貯留されたアスファルト舗装材Mを加熱溶解するガスバーナ7と、車両の荷台Lに設置されてタンク3を、荷台L内方の後退位置と、タンク3の底壁の一部が荷台L外へはみ出す進出位置との間で移動可能とする車輪91および平行レール91とと、底壁の一部に設けられて開放時に内部の溶解したアスファルト舗装材Mを落下排出可能とする排出口31および板状弁体8と、を備える。
【選択図】
図2