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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】多層構造体、積層体、及び関連物品
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/085 20060101AFI20240917BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
B32B15/085 Z
B65D65/40 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023504582
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-10-12
(86)【国際出願番号】 CN2020105717
(87)【国際公開番号】W WO2022021188
(87)【国際公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ルー、ボー
(72)【発明者】
【氏名】ユン、シャオビン
(72)【発明者】
【氏名】パン、ジャンピン
(72)【発明者】
【氏名】シュー、ジンイー
【審査官】大塚 美咲
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0318589(US,A1)
【文献】特表2023-542783(JP,A)
【文献】特表2020-517502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 15/085
B65D 65/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層構造体であって、
多層ポリエチレンフィルムであって、前記ポリエチレンフィルムの外層が、前記外層の重量に基づいて200~4000ppmのフルオロエラストマー加工助剤を含む、多層ポリエチレンフィルムと、
前記ポリエチレンフィルムの前記外層に蒸着した金属を含む金属層と、
を含み、前記ポリエチレンフィルムは、フィルムの総重量に基づいて95重量パーセント以上のポリエチレンを含む、多層構造体。
【請求項2】
前記フルオロエラストマー加工助剤が、
フッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、1-ヒドロペンタフルオロプロピレン、及び2-ヒドロペンタフルオロプロピレンから選択されるコモノマーとのコポリマー;
フッ化ビニリデンと、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレン又は1-若しくは2-ヒドロペンタフルオロプロピレンとのコポリマー
テトラフルオロエチレンと、プロピレンとのコポリマーあるいは、
テトラフルオロエチレンと、プロピレンと、フッ化ビニリデンとのコポリマーである、
請求項1に記載の多層構造体。
【請求項3】
前記フルオロエラストマー加工助剤が、
i)フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン;
ii)フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン;
iii)テトラフルオロエチレン/プロピレン;又は
iv)テトラフルオロエチレン/プロピレン/フッ化ビニリデンの共重合した単位を含む、
請求項1又は2に記載の多層構造体。
【請求項4】
前記金属が、Al、Si、Zn、Au、Ag、Cu、Ni、Cr、Ge、Se、Ti、Sn、それらの酸化物、及びそれらの組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項5】
前記金属が、Al金属、Alの酸化物、又はその両方を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項6】
前記金属が、真空金属化によって前記ポリエチレンフィルム上に蒸着されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項7】
前記金属層が、20~60ナノメートルの厚さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の多層構造体。
【請求項8】
第2のフィルムと接着接触している請求項1~7のいずれか一項に記載の多層構造体を含む、積層体。
【請求項9】
前記第2のフィルムが、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、又はポリエチレンを含む、請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
請求項8又は9に記載の積層体を含む、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層構造体、そのような多層構造体を含む積層体、及びそのような多層構造体又は積層体を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
序論
食品包装などの一部の包装は、外部環境から内容物を保護し、より長い有効期間を促進するように設計されている。そのような包装は、多くの場合、低い酸素透過率(oxygen transmission rate、OTR)及び水蒸気透過率(water vapor transmission rate、WVTR)を有するバリアフィルムを使用して構築される。しかしながら、バリア特性のバランスを保つ上で、例えば、漏出を避けるための包装の完全性もまた考慮される。
【0003】
バリアフィルムを作製するための典型的なアプローチは、真空金属化プロセスによりポリマー基材フィルム上に金属層を配置することである。金属、多くの場合、アルミニウムの薄コーティングを使用して、単独では蒸気及び/又は気体の透過に対する耐性を欠く可能性があるポリマーフィルムに、バリア特性を提供することができる。そのような基材フィルムを作製し、高品質の金属化製品を得るためには、基材は、概して、高い剛性、張力下での寸法安定性、並びに安定した生産及び光沢のある外観のための平滑な表面を有している必要がある。典型的な金属化基材としては、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、二軸延伸ポリプロピレン(biaxially oriented polypropylene、BOPP)、及びポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)が挙げられる。
【0004】
真空金属化BOPP構造体及び真空金属化PET構造体は、食品包装において広く使用されている。従来の多層構造体は、3枚のフィルム、つまり、印刷されたPET外層(例えば、製品情報、ブランド表示、装飾などを有する)、金属化BOPP又は金属化PET構造体である中間層、及び封止のためのポリエチレン内層(例えば、シーラントフィルム)を利用する。
【0005】
ポリエチレンフィルムは、特に高速真空金属化プロセスにおける張力下での寸法安定性が劣っているため、また金属層とポリエチレンフィルムとの間には優れた接着が必要とされるため、金属化のための基材として広くは使用されていない。例えば、真空金属化アルミニウム層とポリエチレンフィルム表面との間の接着が弱いと、アルミニウム層で欠陥が生じる恐れがあり、これが、次いで、酸素/水蒸気がフィルムを通過するための経路を提供し、良好なバリア特性の欠如を引き起こす恐れがあるとの仮説が立てられる。
【0006】
良好なバリア特性、金属層とフィルム層との間の良好な接着、望ましいパッケージの完全性、好ましい封止条件、及び他の特性を提供する多層構造体への新しいアプローチが依然として必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、金属層とポリエチレンフィルムの外層との間に良好な接着を有する金属化ポリエチレンフィルムである多層構造体を提供する。そのような多層構造体は、単一の金属化フィルムにおいてバリア特性及び封止特性の良好な相乗作用をもたらすことができる。例えば、本発明の多層構造体は、いくつかの実施形態では、ポリエチレンシーラントフィルムに積層された金属化BOPPフィルム(又は金属化BOPETフィルム)を含んでいた以前の構造体の代わりに使用することができる。その結果、積層体又は物品を使用するためのより単純な構造体(金属化フィルム及びシーラントフィルムに代わる単一の金属化フィルム)が得られる。本発明の多層構造体は、いくつかの実施形態では、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、又はポリエチレンを含む第2のフィルムに積層することができ、その結果、物品で使用することができる積層体が得られる。本発明のいくつかの実施形態によれば、そのような積層体は、本発明の多層構造体によってもたらされる利点により、3枚のフィルムの代わりに2枚のフィルムのみを含む。
【0008】
一態様では、本発明は、多層構造体を提供し、本多層構造体は、多層ポリエチレンフィルムであって、ポリエチレンフィルムの外層が、外層の重量に基づいて200~4000ppmのフルオロエラストマー加工助剤を含む、多層ポリエチレンフィルムと、ポリエチレンフィルムの外層上に蒸着した金属を含む金属層と、を含む。
【0009】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示される本発明の多層構造体のうちのいずれかと第2のフィルムとを含む、積層体に関する。第2のフィルムは、いくつかの実施形態では、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、又はポリエチレンを含む。別の態様では、本発明は、本明細書に開示される本発明の積層体のうちのいずれかを含む、食品包装などの物品に関する。
【0010】
別の態様では、本発明は、本明細書に開示される本発明の多層構造体のうちのいずれかを含む、食品包装などの物品に関する。
【0011】
これら及び他の実施形態は、「発明を実施するための形態」において、より詳細に説明される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
矛盾する記述がなく、文脈から暗に示されてもおらず、当該技術分野において慣習的でもない限り、全ての部及びパーセントは重量に基づき、全ての温度は℃であり、全ての試験方法は本開示の出願日時点で最新のものである。
【0013】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、組成物を構成する材料、並びに組成物の材料から形成される反応生成物及び分解生成物の混合物を指す。
【0014】
「ポリマー」は、同じ種類であるか又は異なる種類であるかにかかわらず、モノマーを重合させることによって調製されるポリマー化合物を意味する。したがって、ポリマーという総称は、ホモポリマーという用語(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下に、1種類のモノマーのみから調製されるポリマーを指すために用いられる)及び本明細書において以下に定義されるインターポリマーという用語を包含する。微量の不純物(例えば、触媒残渣)が、ポリマー中及び/又はポリマー内に導入される場合がある。ポリマーは、単一ポリマーであっても、ポリマーブレンドであっても、ポリマー混合物であってもよい。
【0015】
本明細書で使用される場合、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2種類の異なるモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、インターポリマーという総称は、コポリマー(2種類の異なるモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)及び2種類を超える異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。
【0016】
本明細書で使用される場合、「オレフィン系ポリマー」又は「ポリオレフィン」という用語は、(ポリマーの重量に基づいて)過半量のオレフィンモノマー、例えば、エチレン又はプロピレンを重合形態で含み、任意選択で1つ以上のコモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0017】
「ポリプロピレン」又は「プロピレン系ポリマー」は、50重量%を超えるプロピレンモノマーに由来する単位を有するポリマーを意味する。「ポリプロピレン」という用語は、アイソタクチックポリプロピレンなどのプロピレンのホモポリマー、プロピレンが少なくとも50モルパーセントを構成するプロピレンと1つ以上のC2、4~8α-オレフィンとのランダムコポリマー、及びポリプロピレンの耐衝撃性コポリマーを含む。
【0018】
本明細書で使用される場合、「エチレン/α-オレフィンインターポリマー」という用語は、(インターポリマーの重量に基づいて)過半量のエチレンモノマー、及びα-オレフィンを重合形態で含むインターポリマーを指す。
【0019】
本明細書で使用される場合、「エチレン/α-オレフィンコポリマー」という用語は、2種のみのモノマーとして、(コポリマーの重量に基づいて)過半量のエチレンモノマー、及びα-オレフィンを重合形態で含むコポリマーを指す。
【0020】
「接着接触」などの用語は、1つの層の1つの対向面と別の層の1つの対向面とが互いに触れており結合して接触し、その結果、両方の層の層間表面(すなわち、接触している対向面(facial surfaces)に損傷を与えることなく一方の層を他方の層から除去することができないようになっていることを意味する。
【0021】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの派生語は、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、いずれの追加の成分、工程、又は手順の存在も除外することを意図するものではない。いかなる疑念も避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用をとおして特許請求される全ての組成物は、別段矛盾する記述がない限り、ポリマー性か又は別のものであるかにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、いずれの他の成分、工程、又は手順も、いずれの以降の記述の範囲からも除外する。「からなる」という用語は、具体的に描写又は列記されていないいずれの成分、工程、又は手順も除外する。
【0022】
「ポリエチレン」又は「エチレン系ポリマー」は、50重量%を超えるエチレンモノマーに由来する単位を含むポリマーを意味するものとする。これは、ポリエチレンホモポリマー又はコポリマー(2つ以上のコモノマーに由来する単位を意味する)を含む。当該技術分野において既知のポリエチレンの一般的な形態は、低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene、LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(Linear Low Density Polyethylene、LLDPE)、超低密度ポリエチレン(Ultra Low Density Polyethylene、ULDPE)、超低密度ポリエチレン(Very Low Density Polyethylene、VLDPE)、直鎖状低密度樹脂及び実質的に直鎖状の低密度樹脂の両方を含む、シングルサイト触媒による直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(Medium Density Polyethylene、MDPE)、並びに高密度ポリエチレン(High Density Polyethylene、HDPE)が挙げられる。これらのポリエチレン材料は、概して、当該技術分野において既知である。しかしながら、以下の記載は、これらの異なるポリエチレン樹脂のうちのいくつかの間の差異を理解するのに役立ち得る。
【0023】
「LDPE」という用語はまた、「高圧エチレンポリマー」又は「高度分岐ポリエチレン」と称されてもよく、ポリマーが、ペルオキシドなどのフリーラジカル開始剤を用いて、14,500psi(100MPa)超の圧力でオートクレーブ又は管型反応器中で部分的又は完全にホモポリマー化されるか、又はコポリマー化されることを意味するように定義される(例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,599,392号を参照のこと)。LDPE樹脂は、典型的には、0.916~0.935g/cmの範囲内の密度を有する。
【0024】
「LLDPE」という用語は、従来のチーグラー・ナッタ触媒系、並びにビス-メタロセン触媒及び束縛構造触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製される樹脂(「m-LLDPE」と称されることもある)を含み、直鎖状、実質的に直鎖状、又は不均質なポリエチレンコポリマー又はホモポリマーも含む。LLDPEは、LDPEよりも少ない長鎖分岐を含み、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第5,582,923号、及び同第5,733,155号に更に定義されている実質的に直鎖状のエチレンポリマー、米国特許第3,645,992号のものなどの、均質に分岐した直鎖状エチレンポリマー組成物、米国特許第4,076,698号に開示されているプロセスに従って調製されるものなどの不均質分岐エチレンポリマー、及び/又はこれらのブレンド(米国特許第3,914,342号又は同第5,854,045号に開示されているものなど)が挙げられる。LLDPEは、当該技術分野で既知の任意の種類の反応器又は反応器構成を使用して、気相、溶液相、若しくはスラリー重合、又はそれらの任意の組み合わせを介して作製され得る。
【0025】
「MDPE」という用語は、0.926~0.935g/cmの密度を有するポリエチレンを指す。「MDPE」は、典型的には、クロム若しくはチーグラー・ナッタ触媒を使用して、又はビス-メタロセン触媒及び束縛構造触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製され、典型的には、2.5を超える分子量分布(「MWD(molecular weight distribution)」)を有する。
【0026】
「HDPE」という用語は、概して、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、又はビス-メタロセン触媒及び束縛構造触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を用いて調製される、約0.935g/cmを超える密度を有するポリエチレンを指す。
【0027】
「ULDPE」という用語は、概して、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、又はビス-メタロセン触媒及び束縛構造触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を用いて調製される、0.880~0.912g/cmの密度を有するポリエチレンを指す。
【0028】
一態様では、本発明は、多層構造体を提供し、本多層構造体は、多層ポリエチレンフィルムであって、ポリエチレンフィルムの外層が、外層の総重量に基づいて200~4000ppmのフルオロエラストマー加工助剤を含む、多層ポリエチレンフィルムと、ポリエチレンフィルムの外層上に蒸着した金属を含む、金属層と、を含む。
【0029】
いずれの特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、フルオロエラストマー加工助剤は、金属とポリエチレンフィルムの外層との間の接着を促進すると考えられる。フルロエラストマー加工助剤は、いくつかの実施形態では、フッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、1-ヒドロペンタフルオロプロピレン、及び2-ヒドロペンタフルオロプロピレンから選択されるコポリマーとのコポリマー;フッ化ビニリデンと、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレン又は1-若しくは2-ヒドロペンタフルオロプロピレンとのコポリマー;あるいはテトラフルオロエチレンと、プロピレンと、任意選択でフッ化ビニリデンとのコポリマーであり得る。いくつかの実施形態では、フルオロポリマー加工助剤は、i)フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン;ii)フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン;iii)テトラフルオロエチレン/プロピレン;又はiv)テトラフルオロエチレン/プロピレン/フッ化ビニリデンの共重合した単位を含む。
【0030】
金属層は、いくつかの実施形態では、20~60ナノメートルの厚さを有する。いくつかの実施形態では、金属は、Al、Si、Zn、Au、Ag、Cu、Ni、Cr、Ge、Se、Ti、Sn、それらの酸化物、及びそれらの組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、金属は、Al金属、Alの酸化物、又はその両方を含む。金属は、いくつかの実施形態では、真空金属化によってポリエチレンフィルム上に蒸着されている。
【0031】
本発明の多層構造体は、本明細書に記載の2つ以上の実施形態の組み合わせを含むことができる。
【0032】
他の態様では、本発明は、本明細書に開示される本発明の多層構造体のうちのいずれかと第2のフィルムとを含む、積層体に関する。そのような積層体は、第2のフィルムと接着接触している本明細書に開示される本発明の多層構造体のうちのいずれかを含む。第2のフィルムは、いくつかの実施形態では、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、又はポリエチレンを含む。
【0033】
他の態様では、本発明は、食品包装などの物品に関する。いくつかの実施形態では、物品は、本明細書に開示される本発明の多層構造体のうちのいずれかを含む。いくつかの実施形態では、物品は、本明細書に開示される本発明の積層体のうちのいずれかを含む。本発明の物品は、本明細書に記載される2つ以上の実施形態の組み合わせを含み得る。
【0034】
多層ポリエチレンフィルム
本発明の多層構造体は、多層ポリエチレンフィルムを含む。多層ポリエチレンフィルムは、いくつかの実施形態では、金属層(後述)の接着を促進する、また有利なことに単一の金属化フィルムにおいて良好なバリア特性と封止特性との相乗的組み合わせをもたらす、外層を含む。
【0035】
多層ポリエチレンフィルムは、ポリエチレンと、外層の重量に基づいて200~4000ppmのフルオロエラストマー加工助剤とを含む外層を含む。
【0036】
本発明において有用なフルオロポリマー加工助剤は、25℃未満のT値を有するフッ素含有有機ポリマーであり、結晶性をほとんど又は全く呈しない、弾性フルオロポリマー(フルオロエラストマー)である。好適なフルオロポリマーを得るために共重合させてもよいフッ素化モノマーとしては、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、及びペルフルオロアルキルペルフルオロビニルエーテルが挙げられる。用いてもよいフルオロポリマーの具体例としては、フッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、1-ヒドロペンタフルオロプロピレン、及び2-ヒドロペンタフルオロプロピレンから選択されるコモノマーとのコポリマー;フッ化ビニリデンと、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレン又は1-若しくは2-ヒドロペンタフルオロプロピレンとのコポリマー;並びにテトラフルオロエチレンと、プロピレンと、任意選択でフッ化ビニリデンとのコポリマーが挙げられ、これらは全て当該技術分野において既知である。いくつかの場合では、これらのコポリマーはまた、米国特許第4,035,565号に教示されているような臭素含有コモノマー、又は米国特許第4,243,770号に教示されているような末端ヨード基を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、ポリエチレンフィルムの外層に用いられるフルオロポリマーは、少なくとも1:2、いくつかの更なる実施形態では少なくとも1:1のフッ素対炭素モル比を含む。フルオロポリマー加工助剤として使用するのに特に望ましいフルオロポリマーは、i)フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン;ii)フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン;iii)テトラフルオロエチレン/プロピレン;又はiv)テトラフルオロエチレン/プロピレン/フッ化ビニリデンの共重合した単位を含む。本発明のいくつかの実施形態によるポリエチレンフィルムの外層に用いてもよい好適なフルオロポリマーの例は、米国特許第6,774,164号、同第6,642,310号、同第6,610,408号、同第6,599,982号、同第6,512,063号、同第6,048,939号、同第5,707,569号、同第5,587,429号、同第5,010,130号、同第4,855,360号、同第4,740,341号、同第3,334,157号、及び同第3,125,547号に開示されている。
【0037】
本発明の実施形態で使用されるポリエチレンフィルムは、ポリエチレンフィルムの外層の重量に基づいて200~4000ppmのフルオロエラストマー加工助剤を含む。いくつかの実施形態では、ポリエチレンフィルムは、ポリエチレンフィルムの外層の重量に基づいて200~1500ppmのフルオロエラストマー加工助剤、又はポリエチレンフィルムの外層の重量に基づいて200~1000ppmのフルオロエラストマー加工助剤を含む。
【0038】
本発明のいくつかの実施形態に示されるように、ポリエチレンの外層に極少量のフルオロエラストマー加工助剤を含めることで、金属層のフィルムへの接着を著しく改善できることが判明した。
【0039】
本発明の実施形態において使用することができる市販のフルオロエラストマー加工助剤の非限定的な例としては、3Mから市販されているDynamar Polymer Processing Additives、例えば、Dynamar FX9613が挙げられる。
【0040】
いくつかの実施形態では、フルオロエラストマー加工助剤に加えて、ポリエチレンフィルムは、1つ以上の界面剤を更に含んでもよい。「界面剤」は、(1)押出温度で液体状態である(又は溶融している)こと、(2)フルオロエラストマー加工助剤よりも低い溶融粘度を有すること、及び(3)押出可能な組成物中のフルオロエラストマー加工助剤の表面を自由に湿潤することを特徴とする熱可塑性ポリマーを指す。そのような界面剤の例は、米国特許第7,652,102号に開示されている。
【0041】
ポリエチレンフィルムは、多層フィルムである。概して、ポリエチレンフィルムは、(1)外層の金属化が望ましい任意の多層フィルム、又は(2)外層の金属化が望ましい積層構造体の一部であるポリエチレンフィルムであり得る。いくつかの実施形態では、金属化フィルムは、少なくとも1つの他のフィルム(例えば、ポリアミドフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリプロピレンフィルム、又は第2のポリエチレンフィルム)を含む積層体の一部として、シーラントフィルムとして機能し得る。そのような実施形態では、ポリエチレンフィルムは、金属化された外層の反対側に第2の外層であるシーラント層を含んでいてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、上に金属が蒸着することになる外層に1つ以上の直鎖状低密度ポリエチレンを使用することが有益であることが分かっている。外層で使用することができる1つ以上のLLDPEは、チーグラー・ナッタ触媒による直鎖状低密度ポリエチレン、及びシングルサイト触媒(メタロセンを含む)による直鎖状低密度ポリエチレン、並びに前述のうちの2つ以上の組み合わせを含み得る。
【0043】
いくつかの実施形態では、外層は、0.906~0.940g/cmの密度を有する直鎖状低密度ポリエチレンを含む。0.906~0.940g/cmの全ての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.906、0.908、0.910、0.915、0.918、又は0.920g/cmの下限から、0.920、0.925、0.930、0.935、又は0.940g/cmの上限までであり得る。いくつかの実施形態では、直鎖状低密度ポリエチレンは、0.908~0.940g/cmの密度を有する。
【0044】
いくつかの実施形態では、直鎖状低密度ポリエチレンは、2g/10分以下のメルトインデックス(I)を有する。2g/10分からの全ての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、直鎖状低密度ポリエチレンは、2、1.9、1.8、1.7、1.6、又は1.5g/10分の上限までのIを有し得る。特定の態様では、直鎖状低密度ポリエチレンは、下限が0.3g/10分であるIを有する。0.3g/10分からの全ての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、第1の直鎖状低密度ポリエチレンは、0.3、0.4、又は0.5g/10分以上のIを有し得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、外層は、0.906~0.940g/cmの密度を有する第2の直鎖状低密度ポリエチレンを含む。0.906~0.940g/cmの全ての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、第2の直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.906、0.908、0.910、0.915、0.918、又は0.920g/cmの下限から、0.920、0.925、0.930、0.935、又は0.940g/cmの上限までであり得る。いくつかの実施形態では、第2の直鎖状低密度ポリエチレンは、0.908~0.940g/cmの密度を有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、第2の直鎖状低密度ポリエチレンは、2g/10分以下のメルトインデックス(I)を有する。2g/10分からの全ての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、第2の直鎖状低密度ポリエチレンは、2、1.9、1.8、1.7、1.6、又は1.5g/10分の上限までのIを有し得る。特定の態様では、第2の直鎖状低密度ポリエチレンは、下限が0.3g/10分であるIを有する。0.3g/10分からの全ての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、第2の直鎖状低密度ポリエチレンは、0.3、0.4、又は0.5g/10分以上のIを有し得る。
【0047】
外層が2つの直鎖状低密度ポリエチレンを含むいくつかの実施形態では、第1の直鎖状低密度ポリエチレンは、0.915~0.930g/cmの密度を有し、第2の直鎖状低密度ポリエチレンは、0.930~0.940g/cmの密度を有する。いくつかのそのような実施形態では、外層は、20~50重量%の第1の直鎖状低密度ポリエチレンを含む。20~50重量パーセント(重量%)の全ての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、第1の直鎖状低密度ポリエチレンの量は、20、30、又は40重量%の下限から、25、35、45、又は50重量%の上限であり得る。例えば、第1の直鎖状低密度ポリエチレンの量は、20~50重量%、あるいは20~35重量%、あるいは35~50重量%、あるいは25~45重量%であり得る。そのような実施形態では、外層は、80~50重量%の第2の直鎖状低密度ポリエチレンを含む。80~50重量%の全ての個々の値及び部分範囲が本明細書に含まれ、本明細書に開示される。例えば、第2の直鎖状低密度ポリエチレンの量は、50、60、又は70重量%の下限から、55、65、75、又は80重量%の上限であり得る。例えば、第2の直鎖状低密度ポリエチレンの量は、80~50重量%、あるいは80~60重量%、あるいは70~50重量%、あるいは75~60重量%であり得る。
【0048】
いくつかの実施形態で外層に使用することができる直鎖状低密度ポリエチレンの例としては、The Dow Chemical Companyから市販されているDOWLEX(商標)直鎖状低密度ポリエチレン、例えば、DOWLEX(商標)2036G、DOWLEX(商標)NG2038B、DOWLEX(商標)2045G、ELITE(商標)AT6202、及びELITE(商標)AT6410が挙げられる。
【0049】
実施形態では、外層は、1つ以上の直鎖状低密度ポリエチレンに加えて、他のポリエチレンを含んでもよい。そのような実施形態では、外層は、外層の重量に基づいて、少なくとも50重量パーセントの1つ以上の直鎖状低密度ポリエチレンを含み、外層は、重合形態において過半量のエチレン(ポリマーの重量に基づいて)を有する他のポリマーを更に含むことができ、任意選択で、1つ以上のコモノマーを含んでもよい。そのようなポリマーとしては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、ポリエチレンプラストマー、ポリエチレンエラストマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、エチレンアクリル酸エチルコポリマー、少なくとも50%のエチレンモノマーを含む任意の他のポリマー、及びそれらの組み合わせが挙げられる。当業者であれば、本明細書の教示に基づいて外層に使用するための好適な市販のエチレン系ポリマーを選択することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、外層は、(上記のような)1つ以上の直鎖状低密度ポリエチレン及び低密度ポリエチレンを含む。いくつかのそのような実施形態では、外層は、外層の総重量に基づいて最大20重量パーセントの低密度ポリエチレンを含み、残りは、1つ以上の直鎖状低密度ポリエチレン、フルオロエラストマー加工助剤、及び他の添加剤で構成される。
【0051】
ポリエチレンフィルムの外層は、当該技術分野において概して既知である1つ以上の添加剤を含んでもよい。そのような添加剤には、IRGANOX1010及びIRGAFOS168(BASFから市販)などの酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、染料、成核剤、充填剤、スリップ剤、難燃剤、可塑剤、加工助剤、潤滑剤、安定剤、発煙抑制剤、粘度制御剤、表面改質剤、及びブロッキング防止剤が含まれる。
【0052】
多層フィルムとして、ポリエチレンフィルムは、用途に応じて、典型的に多層フィルムに含まれる他の層、例えば、シーラント層、バリア層、タイ層、他のポリエチレン層などを更に含み得る。
【0053】
一例として、いくつかの実施形態では、ポリエチレンフィルムは、上対向面及び底対向面を有する別の層(層B、層Aは前述の外層である)を含み得、層Bの上対向面は、層Aの底対向面と接着接触している。いくつかのそのような実施形態では、層Bは、シーラント層において使用するのに好適であることが当業者に知られている1つ以上のエチレン系ポリマーから形成されるシーラント層であり得る。
【0054】
しかしながら、上記のように、層Bは、任意の数の他のポリマー又はポリマーブレンドを含むことができる。追加の層及び多層フィルムの組成に応じて、いくつかの実施形態では、追加の層をフィルムにおける他の層と共押出することができる。
【0055】
前述の層のいずれも、例えば、酸化防止剤、紫外線安定剤、熱安定剤、滑剤、ブロッキング防止剤、顔料又は着色剤、加工助剤、架橋触媒、難燃剤、充填剤、及び発泡剤などの当業者に既知の1つ以上の添加剤を更に含み得ることを理解すべきである。
【0056】
本多層構造体に使用されるポリエチレンフィルムは、実質的にポリエチレンで構成される。いくつかの実施形態では、ポリエチレンフィルムは、フィルムの総重量に基づいて95重量パーセント以上のポリエチレンを含む。他の実施形態では、ポリエチレンフィルムは、フィルムの総重量に基づいて、96重量パーセント以上、97重量パーセント以上、98重量パーセント以上、又は99重量パーセント以上のポリエチレンを含む。
【0057】
そのようなポリエチレンフィルムは、例えば、層の数、フィルムの意図される用途、及び他の要因に応じて、様々な厚さを有し得る。そのようなポリエチレンフィルムは、いくつかの実施形態では、二軸延伸前に320~3200ミクロン(典型的には、640~1920ミクロン)の厚さを有する。
【0058】
ポリエチレンフィルムは、本明細書の教示に基づいて、当業者に既知の技術を使用して形成することができる。例えば、フィルムは、インフレーションフィルム(例えば、水急冷インフレーションフィルム)又はキャストフィルムとして調製することができる。例えば、多層ポリエチレンフィルムの場合、共押出され得る層については、そのような層は、本明細書の教示に基づいて、当業者に既知の技術を使用してインフレーションフィルム又はキャストフィルムとして共押出することができる。
【0059】
いくつかの実施形態では、フィルムの外層上に金属層を蒸着させる前に、ポリエチレンフィルムを延伸する。例えば、ポリエチレンフィルムは、本明細書の教示に基づいて当業者に既知の技術を使用して、一軸延伸(例えば、機械方向に一軸延伸)又は二軸延伸することができる。
【0060】
いくつかの実施形態では、ポリエチレンフィルムは、テンタフレーム逐次二軸延伸プロセスを使用して二軸延伸される。そのような技術は、概して当業者に既知である。他の実施形態では、ポリエチレンフィルムは、本明細書の教示に基づいて、二重気泡延伸プロセスなどの当業者に既知の他の技術を使用して二軸延伸することもできる。概して、テンタフレーム逐次二軸延伸プロセスでは、テンタフレームは、多層共押出ラインの一部として組み込まれる。フラットダイから押出した後、フィルムを冷却ロール上で冷却し、室温の水を充填した水浴に浸漬する。次いで、キャストフィルムは異なる回転速度を有する一連のローラ上に通されて、機械方向における伸展を達成する。製作ラインのMD伸展セグメントには数対のローラがあり、それらは全て油加熱されている。対のローラは、予熱ローラ、伸展ローラ、並びに弛緩及びアニーリング用ローラとして逐次作動する。ローラの各対の温度は、別々に制御される。機械方向に伸展させた後、フィルムウェブを、加熱ゾーンを有するテンタフレーム熱風炉に通して、横断方向における伸展を実行する。最初のいくつかのゾーンは予熱用であり、その後に伸展用のゾーン、次いでアニーリング用の最終ゾーンが続く。
【0061】
いくつかの実施形態では、ポリエチレンフィルムは、2:1~6:1の延伸比で、あるいは3:1~5:1の延伸比で、機械方向に延伸させることができる。ポリエチレンフィルムは、いくつかの実施形態では、2:1~9:1の延伸比で、あるいは3:1~8:1の延伸比で、横断方向に延伸させることができる。いくつかの実施形態では、ポリエチレンフィルムは、2:1~6:1の延伸比で機械方向に、2:1~9:1の延伸比で横断方向に延伸させる。ポリエチレンフィルムは、いくつかの実施形態では、3:1~5:1の延伸比で機械方向に、3:1~8:1の延伸比で横断方向に延伸させる。
【0062】
いくつかの実施形態では、機械方向における延伸比と横断方向における延伸比との比は、1:1~1:2.5である。いくつかの実施形態では、機械方向における延伸比と横断方向における延伸比との比は、1:1.5~1:2.0である。
【0063】
いくつかの実施形態では、二軸延伸ポリエチレンフィルムは、8~54の全体延伸比(機械方向における延伸比×横断方向における延伸比)を有する。二軸延伸ポリエチレンフィルムは、いくつかの実施形態では、9~40の全体延伸比(機械方向における延伸比×横断方向における延伸比)を有する。
【0064】
延伸後、いくつかの実施形態では、二軸延伸ポリエチレンフィルムは、10~60ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態では、二軸延伸ポリエチレンフィルムは、20~50ミクロンの厚さを有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、多層フィルムが一軸又は単軸延伸される場合、フィルムは、機械方向のみに延伸される。様々な加工パラメータが、本明細書の教示に基づいて当業者に既知であるように、機械方向における伸展に好適であると考えられる。例えば、一軸延伸多層フィルムは、1:1超かつ8:1未満の延伸比で、又は4:1~8:1の延伸比で機械方向に延伸されてもよい。延伸後、いくつかの実施形態では、機械方向延伸ポリエチレンフィルムは、10~60ミクロンの厚さを有する。いくつかの実施形態では、機械方向延伸ポリエチレンフィルムは、20~50ミクロンの厚さを有する。
【0066】
金属層
本多層構造体は、ポリエチレンフィルムの外層に蒸着した金属を含む金属層を更に含む。金属層は、真空金属化を使用してポリエチレンフィルムの外層に適用され得る。真空金属化は、金属源を真空環境で蒸発させ、フィルムが真空チャンバを通過するにつれて金属蒸気がフィルムの表面上で凝縮して薄層を形成する、金属を蒸着させるための周知の技術である。
【0067】
二軸延伸ポリエチレンフィルムの外層上に蒸着させることができる金属としては、Al、Si、Zn、Au、Ag、Cu、Ni、Cr、Ge、Se、Ti、Sn、又はそれらの酸化物が挙げられる。いくつかの実施形態では、金属層は、アルミニウム又はアルミニウムの酸化物(Al)から形成される。
【0068】
ポリエチレンフィルム上に金属層があることで、以下の試験方法の章に記載のとおりに測定したときの光学密度によって、本多層構造体を特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、本多層構造体は、1.0~3.0の光学密度を有する。本多層構造体は、いくつかの実施形態では、2.0~2.8の光学密度を有する。
【0069】
金属層は、酸素及び水蒸気に対する良好なバリアを有利に提供する。
【0070】
多層構造体
本発明の多層構造体は、いくつかの実施形態では、ポリエチレンフィルムと、(上記のとおり)その上に蒸着した金属層と、を含む。ポリエチレンフィルムの外層においてフルオロエラストマー加工助剤を使用することで、金属とフィルムの外層との間の接着が有利に改善され、これは、フィルム及びそれが組み込まれ得る他の構造体(例えば、積層体)の性能に利益をもたらす。上述したように、金属層は、良好なバリア特性を提供することができ、ポリエチレンフィルムにシーラント層を含めることにより、フィルムを多層構造体においてシーラントフィルムとして機能させることができる。
【0071】
積層体
本明細書に記載される様々な実施形態の多層構造体を使用して、積層体を形成することができる。そのような積層体は、本明細書に記載の多層構造体のうちのいずれからも形成することができる。
【0072】
積層体は、1つ以上の追加のフィルムと接着接触している様々な実施形態の多層構造体を含んでもよい。例えば、上述の1つ以上の実施形態の多層構造体を第2のフィルムに接着させてもよい。第2のフィルムは、例えば、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、又はそれらの組み合わせを含んでもよい。本多層構造体は、当業者に既知であるとおり、接着剤層を介して第2のフィルムに接着していてもよい。
【0073】
物品
本発明の多層構造体又は積層体を使用して、包装などの物品を形成することができる。そのような物品は、本明細書に記載の多層構造体又は積層体のうちのいずれからも形成することができる。
【0074】
本発明の多層構造体又は積層体から形成することができる物品の例としては、可撓性包装、パウチ、自立型パウチ、及び予め作製された包装又はパウチを挙げることができる。いくつかの実施形態では、本発明の多層構造体又は物品は、食品包装に使用することができる。そのような包装に含まれ得る食品の例としては、肉、チーズ、シリアル、ナッツ、ジュース、ソースなどが挙げられる。そのような物品は、本明細書の教示に基づいて、また包装の具体的な用途(例えば、食品の種類、食品の量など)に基づいて、当業者に既知の技術を使用して形成され得る。
【0075】
試験方法
本明細書に別段示されない限り、本発明の態様の説明では以下の分析方法を使用する。
【0076】
密度
密度測定のための試料は、ASTM D1928に従って調製する。ポリマー試料は、3分間、190℃及び30,000psi(207MPa)で、次いで1分間、21℃及び207MPaで押圧する。測定は、ASTM D792、方法Bを使用して、試料の押圧から1時間以内に行う。
【0077】
メルトインデックス
メルトインデックスI(又はI2)及びI10(又はI10)は、それぞれ、ASTM D-1238に従って、190℃、2.16kg及び10kg荷重で測定する。これらの値は、g/10分で報告する。「メルトフローレート」は、ポリプロピレン系の樹脂に関して使用し、ASTM D1238(230℃、2.16kg)に従って求める。
【0078】
メルトフローレート
メルトフローレートは、ASTM D-1238又はISO1133(230℃、2.16kg)に従って測定する。
【0079】
光学密度
金属化フィルム(例えば、上に金属層が蒸着しているポリエチレンフィルムを含む多層構造体)の光学密度は、光学密度計(Shenzhen Linshang Technology製のモデル番号LS177)を使用して測定する。
【0080】
これより、本発明のいくつかの実施形態を、以下の実施例において詳細に説明する。
【実施例
【0081】
以下の材料を、実施例として評価されるインフレーションフィルムで使用する。
【0082】
【表1】
【0083】
3層インフレーションフィルムラインを使用してある数の3層インフレーションフィルムを作製するために、上記材料を使用する。各フィルムは、同じ条件を使用して調製する。各フィルムの指定の配合物は、3つの押出機(各層につき1つの押出機)を通して提供される。層が複数の樹脂を含む場合、樹脂を乾式ブレンドした後、押出機に装填する。ブローアップ速度は2.3であり、出力速度は18kg/hである。各フィルムは50ミクロンの公称厚さを有し、内層及び外層は各々10ミクロンの公称厚さを有し、コア層は30ミクロンの公称厚さを有する。以下のインフレーションフィルムを作製する。
【0084】
【表2】
【0085】
「FPA含有量」と表示された表2の列は、フィルムの外層の重量に基づく、フィルムの外層中のフルオロエラストマー加工助剤の量を指す。後述するように、金属化されると、フィルム1~4は本発明の多層構造体1~4となり、フィルムA~Gは比較多層構造体A~Gとなる。
【0086】
フィルムは、調製後、商業的条件をシミュレートするために、周囲条件で1週間超保管して、添加剤をフィルム表面に移動させる。1週間超保管した後、当業者に既知の技術を使用して、フィルムをコロナ処理する。
【0087】
コロナ処理に続いて、フィルムを以下のように金属化する。Shenyang Vacuum Technology Instituteによって製造されたラボスケールの真空蒸着チャンバ内で膜の金属化を行う。コロナ処理後、フィルムを基材ホルダー上にテープで貼る。抵抗ヒーター(加熱ボート)の容器にアルミニウムワイヤを挿入する。まず真空ポンプを作動させて、冷却システムを15℃にして、チャンバ内で50Pa未満の圧力を誘導する。カットオフバルブを素早く開き、コーナーバルブを閉じ、バタフライバルブを開くことによって、チャンバの排気設定を真空ポンプから分子ポンプに変更する。そのような操作によって、チャンバは分子ポンプによってはるかに高い真空まで排気されるが、真空ポンプは分子ポンプの操作を保護していない。真空レベルが3×10-3Paに達したら、加熱ボートをオンにする。基材表面を一時的に覆うようにマスクを調整し、同時に、回転部品をオンにして、基材の一定速度回転を駆動し、より均一な蒸着を容易にする。次いで、QCM(水晶振動子マイクロバランス、Fil-Tech Inc.)に基づく厚さモニターをオンにする。必要とされるアルミニウム蒸着速度(通常10~50A/s)を得るように加熱ボートの電流を調整し、次いで、基材上のマスクを素早く除去し、同時にQCM上の厚さ読み取り値を0にリセットする。40~60ナノメートルの厚さが達成されるまで蒸着を継続する。次いで、加熱ボートを直ちにオフする。分子ポンプは、停止させるが、速度が0に低下するまでオフにしない。この段階中、真空ポンプからの保護も継続した。真空ポンプをオフにした後、チャンバを通気する。次に、金属化された生成物をチャンバから取り出し、防塵ボックスに入れる。
【0088】
次に、フィルムの外層に対する金属層の結合強度を、各多層構造体について以下のとおり測定する。多層構造体の金属層がEAAフィルムと接触している状態で、約7%のアクリル酸含有量を有するエチレンアクリル酸コポリマーから作製された100ミクロンのフィルム(「EAAフィルム」)に多層構造体をヒートシールする。上側ジョーがEAAフィルムと接触し、下側ジョーが多層構造体と接触している状態で、110℃の上側ジョーと70℃の下側ジョーとの間にフィルムを配置することによって、多層構造体及びEAAフィルムをヒートシールする。ジョーを、5バールの圧力下で20秒間、EAAフィルム及び多層構造体と接触させる。室温で24時間エージングした後、次いで、100Nのロードセルを用いて12インチ/分の試験速度でT-剥離を測定することによって、Instron5567引張試験機を使用して結合強度を測定する。平均値をフィルムと金属層との間の結合強度として使用する。結果を表3に示す。
【0089】
【表3】
【0090】
上に示したように、フィルムの外層がフルオロエラストマー加工助剤を含まない場合(比較多層構造体A及びB)、結合強度は1.5N/15mm未満である。75ppm及び150ppmのフルオロエラストマー加工助剤を組み込んでも、結合強度は改善されなかった(比較多層構造体C及びD)。しかしながら、多層構造体に使用されるフィルムの外層に200ppm超のフルオロエラストマー加工助剤を組み込むと、結合強度の改善が観察され、300ppm以上の添加量で著しい改善が見られる(本発明の多層構造体1~4)。
本願は以下の態様にも関する。
(1) 多層構造体であって、
多層ポリエチレンフィルムであって、前記ポリエチレンフィルムの外層が、前記外層の重量に基づいて200~4000ppmのフルオロエラストマー加工助剤を含む、多層ポリエチレンフィルムと、
前記ポリエチレンフィルムの前記外層に蒸着した金属を含む金属層と、
を含む、多層構造体。
(2) 前記フルオロエラストマー加工助剤が、フッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、1-ヒドロペンタフルオロプロピレン、及び2-ヒドロペンタフルオロプロピレンから選択されるコモノマーとのコポリマー;フッ化ビニリデンと、テトラフルオロエチレンと、ヘキサフルオロプロピレン又は1-若しくは2-ヒドロペンタフルオロプロピレンとのコポリマー;あるいはテトラフルオロエチレンと、プロピレンと、任意選択でフッ化ビニリデンとのコポリマーである、前記(1)に記載の多層構造体。
(3) 前記フルオロポリマー加工助剤が、i)フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン
;ii)フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン/テトラフルオロエチレン;iii)テトラフルオロエチレン/プロピレン;又はiv)テトラフルオロエチレン/プロピレン/フッ化ビニリデンの共重合した単位を含む、前記(1)又は(2)に記載の多層構造体。
(4) 前記金属が、Al、Si、Zn、Au、Ag、Cu、Ni、Cr、Ge、Se、Ti、Sn、それらの酸化物、及びそれらの組み合わせを含む、前記(1)~(3)のいずれかに記載の多層構造体。
(5) 前記金属が、Al金属、Alの酸化物、又はその両方を含む、前記(1)~(3)のいずれかに記載の多層構造体。
(6) 前記金属が、真空金属化によって前記ポリエチレンフィルム上に蒸着されている、前記(1)~(5)のいずれかに記載の多層構造体。
(7) 前記金属層が、20~60ナノメートルの厚さを有する、前記(1)~(6)のいずれかに記載の多層構造体。
(8) 第2のフィルムと接着接触している前記(1)~(9)のいずれかに記載の多層構造体を含む、積層体。
(9) 前記第2のフィルムが、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、又はポリエチレンを含む、前記(8)に記載の積層体。
(10) 前記(8)又は(9)に記載の積層体を含む、物品。
(11) 前記(1)~(7)のいずれかに記載の多層構造体を含む、物品。