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特許7556136多環芳香族誘導体化合物及びこれを用いた有機発光素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】多環芳香族誘導体化合物及びこれを用いた有機発光素子
(51)【国際特許分類】
   C07F 5/02 20060101AFI20240917BHJP
   C07F 7/10 20060101ALI20240917BHJP
   C09K 11/06 20060101ALI20240917BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20240917BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20240917BHJP
   H10K 50/18 20230101ALI20240917BHJP
   H10K 50/17 20230101ALI20240917BHJP
   H10K 50/12 20230101ALI20240917BHJP
   H10K 85/60 20230101ALI20240917BHJP
【FI】
C07F5/02 F CSP
C07F7/10 V
C09K11/06 660
H10K50/15
H10K50/16
H10K50/18
H10K50/17
H10K50/12
H10K85/60
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023514798
(86)(22)【出願日】2021-09-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-27
(86)【国際出願番号】 KR2021011828
(87)【国際公開番号】W WO2022050710
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】10-2020-0112964
(32)【優先日】2020-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0116188
(32)【優先日】2021-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】507074834
【氏名又は名称】エスエフシー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100137095
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 武史
(72)【発明者】
【氏名】シン, ボン-キ
(72)【発明者】
【氏名】ジュ, ソン-フン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン, ビョン-ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム, ジ-ファン
(72)【発明者】
【氏名】ジョ, ヒョン-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ソン-ウン
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111574544(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111574543(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0090123(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0112721(KR,A)
【文献】国際公開第2016/152418(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0066208(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第111153919(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 5/02
C07F 7/10
C09K 11/06
H10K 50/15
H10K 50/16
H10K 50/18
H10K 50/17
H10K 50/12
H10K 85/60
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化合物から選択されるいずれか1つである、有機化合物。
















【請求項2】
第1電極、前記第1電極に対向する第2電極、及び前記第1電極と前記第2電極との間に介在する有機層を含み、
前記有機層が、請求項1に記載の前記有機化合物を1種以上含む、有機発光素子。
【請求項3】
前記有機層は、電子注入層、電子輸送層、正孔注入層、正孔輸送層、電子阻止層、正孔阻止層及び発光層のうちの1層以上を含み、
前記層のうちの1層以上が、前記有機化合物を含む、請求項に記載の有機発光素子。
【請求項4】
前記発光層は、ホストとドーパントからなり、前記有機化合物が前記発光層内のドーパントである、請求項に記載の有機発光素子。
【請求項5】
前記ホストは、下記化学式Cで表されるアントラセン誘導体である、請求項に記載の有機発光素子。
【化C】
(前記化学式Cにおいて、
21~R28は、それぞれ、同一又は異なっており、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換のシリル基、ニトロ基、シアノ基及びハロゲン基から選択されるいずれか1つであり
Ar9及びAr10は、それぞれ、互いに同一又は異なっており、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のシクロアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールチオキシ基、ハロゲン基、置換もしくは非置換のアミン基、及び置換もしくは非置換のシリル基から選択されるいずれか1つであり、
13は、単結合であるか、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基、及び置換もしくは非置換の炭素数2~20のヘテロアリーレン基から選択されるいずれか1つであり、
kは、1~3の整数であり、前記kが2以上である場合に、それぞれのL13は互いに同一又は異なっている。)
【請求項6】
前記化学式CのAr9は、下記化学式C-1で表される置換基である、請求項に記載の有機発光素子。
【化C-1】
(前記化学式C-1において、
31~R35は、それぞれ、同一又は異なっており、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換のシリル基、ニトロ基、シアノ基及びハロゲン基から選択されるいずれか1つであり、互いに隣接する置換基と結合して飽和あるいは不飽和環を形成することができる。)
【請求項7】
前記化学式Cは、下記化学式C1~化学式C66から選択されるいずれか1つである、請求項に記載の有機発光素子。



【請求項8】
前記層から選択された前記1層以上の層は、蒸着工程または溶液工程によって形成される、請求項に記載の有機発光素子。
【請求項9】
前記有機発光素子は、平板ディスプレイ装置、フレキシブルディスプレイ装置、単色又は白色の平板照明用装置、及び単色又は白色のフレキシブル照明用装置から選択されるいずれか1つに使用される、請求項に記載の有機発光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多環芳香族誘導体化合物、及びこれを用いて発光効率が著しく向上した高効率、長寿命の有機発光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は、電子注入電極(カソード電極)から注入された電子(electron)と、正孔注入電極(アノード電極)から注入された正孔(hole)とが発光層で結合してエキシトン(exciton)を形成し、そのエキシトンがエネルギーを放出しながら発光する自発光型素子であり、このような有機発光素子は、低い駆動電圧、高い輝度、広い視野角及び速い応答速度を有し、フルカラー平板発光ディスプレイに適用可能であるという利点から、次世代光源として脚光を浴びている。
【0003】
このような有機発光素子が前記のような特徴を発揮するためには、素子内の有機層の構造を最適化し、各有機層をなす物質である正孔注入物質、正孔輸送物質、発光物質、電子輸送物質、電子注入物質、電子阻止物質などが安定かつ効率的な材料によって支えられることが先行しなければならないが、依然として、安定かつ効率的な有機発光素子用有機層の構造及び各材料の開発が継続して必要であるのが現状である。
【0004】
このように、有機発光素子の発光特性を改善できる素子の構造、及びこれを支える新たな材料に関する開発が継続して要求されているのが現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、素子の有機層に採用されて高効率及び長寿命の有機発光素子を実現できる有機化合物、及びこれを含む有機発光素子を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、下記化学式Iまたは化学式IIで表される有機化合物を提供する。
【0007】
【化I】
【化II】
【0008】
前記化学式Iと化学式IIの構造及び実現される具体的な化合物と、A環~F環、X、Y、L1~L4、Zの定義については後述する。
【0009】
また、本発明は、第1電極、前記第1電極に対向する第2電極、及び前記第1電極と第2電極との間に介在する有機層を含み、前記有機層が前記化学式Iまたは化学式IIで実現される具体的な多環芳香族化合物を1種以上含む、有機発光素子を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る多環芳香族誘導体化合物は、素子内の有機層に採用されて高効率及び長寿命の有機発光素子を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0012】
本発明は、有機発光素子に含まれ、下記化学式Iまたは化学式IIで表される多環芳香族誘導体化合物に関し、高効率及び長寿命の有機発光素子を実現できることを特徴とする。
【0013】
【化I】
【化II】
【0014】
前記化学式I及び化学式IIにおいて、
A環~F環は、互いに同一又は異なっており、それぞれ独立して、置換もしくは非置換の炭素数6~50の単環もしくは多環の芳香族炭化水素環であるか;または置換もしくは非置換の炭素数2~50の単環もしくは多環の芳香族ヘテロ環である。
【0015】
Xは、B、P、P=O、P=S及びAlから選択されるいずれか1つである。
【0016】
1~L4は、互いに同一又は異なっており、それぞれ独立して、単結合であるか、または
-O-、-S-及び-Se-から選択されてもよい。
【0017】
Yは、互いに同一又は異なっており、それぞれ独立して、単結合であるか、または
-O-、-S-及び-Se-から選択されてもよい。
【0018】
Zは、それぞれ独立して、CRまたはNである。
【0019】
前記R、R1~R10は、互いに同一又は異なっており、それぞれ独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のアリールチオキシ基、置換もしくは非置換のアミン基、置換もしくは非置換のシリル基、ニトロ基、シアノ基及びハロゲン基から選択されるいずれか1つである。
【0020】
また、前記R1は、すなわち、L1~L4がそれぞれ
である場合に、R1は、隣接する前記C環、D環、E環又はF環と結合して脂環族または芳香族の単環もしくは多環をさらに形成することができる。
【0021】
また、前記R6~R10は、それぞれ、前記A環又はRと結合して脂環族または芳香族の単環もしくは多環をさらに形成することができる。
【0022】
また、前記Rは、それぞれ、前記D環又はE環と結合して脂環族または芳香族の単環もしくは多環をさらに形成することができる。
【0023】
また、前記R2とR3、R4とR5、R7とR8、及びR9とR10は、それぞれ、互いに連結されて脂環族または芳香族の単環もしくは多環をさらに形成することができる。
【0024】
また、前記A環~F環には、置換もしくは非置換の単環もしくは多環の非芳香族環が接合されて縮合環をさらに形成することができ、前記A環とB環は互いに連結され得る。
【0025】
一方、本発明の一実施例によれば、前記化学式Iにおいて、前記C環とD環は、2つのL2で連結されてC環及びD環と共に環を形成して、下記化学式I-1のように表され得、下記2つのL2は、互いに同一又は異なっている。
【0026】
【化I-1】
【0027】
一方、本発明の一実施例によれば、前記化学式IIにおいて、前記C環とD環は、2つのL2で連結されてC環及びD環と共に環を形成して、下記化学式II-1のように表され得、下記2つのL2は、互いに同一又は異なっている。
【0028】
【化II-1】
【0029】
また、前記化学式IIにおいて、前記E環とF環は、2つのL3で連結されてE環及びF環と共に環を形成して、下記化学式II-2のように表され得、下記2つのL3は、互いに同一又は異なっている。
【0030】
【化II-2】
【0031】
また、前記化学式IIにおいて、前記C環とD環は、2つのL2で連結されてC環及びD環と共に環を形成し、前記E環とF環は、2つのL3で連結されてE環及びF環と共に環を形成する場合に、下記化学式II-3のように表され得る。
【0032】
【化II-3】
【0033】
本発明に係る化学式Iと化学式IIの具体的な構造及び追加の環を形成する構造は、後述する具体的な化合物からこれを確認することができる。
【0034】
一方、本発明において「置換もしくは非置換の」という用語は、A環~F環、R、R1~R10などが、それぞれ、重水素、シアノ基、ハロゲン基、ヒドロキシ基、ニトロ基、アルキル基、ハロゲン化されたアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ヘテロアルキル基、アリール基、アリールアルキル基、アルキルアリール基、ヘテロアリール基、ヘテロアリールアルキル基、アルコキシ基、アミン基、シリル基、アリールオキシ基及び脂肪族芳香族混合環基から選択された1又は2以上の置換基で置換されるか、前記置換基のうちの2以上の置換基が連結された置換基で置換されるか、またはいかなる置換基も有しないことを意味する。
【0035】
また、前記「置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基」、「置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基」などでの前記アルキル基またはアリール基の炭素数の範囲は、前記置換基が置換された部分を考慮せずに非置換のものと見なしたときのアルキル部分またはアリール部分を構成する全炭素数を意味する。例えば、パラ位にブチル基が置換されたフェニル基は、炭素数4のブチル基で置換された炭素数6のアリール基に該当することを意味する。
【0036】
また、本発明において、隣接する基と互いに結合して環を形成するという意味は、隣接する基と互いに結合して置換もしくは非置換の脂環族または芳香族環を形成できることを意味し、「隣接する置換基」は、当該置換基が置換された原子と直接連結された原子に置換された置換基、当該置換基と立体構造的に最も近く位置した置換基、または当該置換基が置換された原子に置換された他の置換基を意味することができる。例えば、ベンゼン環においてオルト(ortho)位に置換された2個の置換基、及び脂肪族環において同一炭素に置換された2個の置換基は、互いに「隣接する置換基」として解釈され得る。
【0037】
本発明において、アルキル基は、直鎖または分岐鎖であってもよく、具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、1-メチル-ブチル基、1-エチル-ブチル基、ペンチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、n-ヘキシル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、4-メチル-2-ペンチル基、3,3-ジメチルブチル基、2-エチルブチル基、ヘプチル基、n-ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、シクロペンチルメチル基、シクロヘキシルメチル基、オクチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、1-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルペンチル基、n-ノニル基、2,2-ジメチルヘプチル基、1-エチル-プロピル基、1,1-ジメチル-プロピル基、イソヘキシル基、2-メチルペンチル基、4-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基などがあるが、これらに限定されない。
【0038】
本発明において、アルケニル基は、直鎖または分岐鎖を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよく、具体的には、ビニル基、1-プロペニル基、イソプロペニル基、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、3-メチル-1-ブテニル基、1,3-ブタジエニル基、アリル基、1-フェニルビニル-1-イル基、2-フェニルビニル-1-イル基、2,2-ジフェニルビニル-1-イル基、2-フェニル-2-(ナフチル-1-イル)ビニル-1-イル基、2,2-ビス(ジフェニル-1-イル)ビニル-1-イル基、スチルベニル基、スチレニル基などがあるが、これらに限定されない。
【0039】
本発明において、アルキニル基もまた、直鎖または分岐鎖を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよく、エチニル(ethynyl)、2-プロピニル(2-propynyl)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0040】
本発明において、シクロアルキル基は、単環または多環を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよく、多環とは、シクロアルキル基が他の環基と直接連結または縮合された基を意味するものであって、他の環基とは、シクロアルキル基であってもよいが、他の種類の環基、例えば、ヘテロシクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などであってもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、3-メチルシクロペンチル基、2,3-ジメチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、2,3-ジメチルシクロヘキシル基、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などがあるが、これに限定されない。
【0041】
本発明において、ヘテロシクロアルキル基は、O、S、Se、NまたはSiなどの異種原子を含むものであって、これもまた単環または多環を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよく、多環とは、ヘテロシクロアルキル基が他の環基と直接連結または縮合された基を意味するものであって、他の環基とは、ヘテロシクロアルキル基であってもよいが、他の種類の環基、例えば、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基などであってもよい。
【0042】
本発明において、芳香族炭化水素環またはアリール基は、単環式または多環式であってもよく、単環式アリール基の例としては、フェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基、スチルベン基などがあり、多環式アリール基の例としては、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ピレニル基、ペリレニル基、テトラセニル基、クリセニル基、フルオレニル基、アセナフタセニル基、トリフェニレン基、フルオランテン基などがあるが、本発明の範囲がこれらの例のみに限定されるものではない。
【0043】
本発明において、芳香族ヘテロ環またはヘテロアリール基は、ヘテロ原子のうち1つ以上を含む芳香族環であって、その例としては、チオフェン基、フラン基、ピロール基、イミダゾール基、チアゾール基、オキサゾール基、オキサジアゾール基、トリアゾール基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジン基、トリアゾール基、アクリジル基、ピリダジン基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリン基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジニル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリン基、インドール基、カルバゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、ベンゾチアゾール基、ベンゾカルバゾール基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、ジベンゾフラニル基、フェナントロリン基、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基などがあるが、これらのみに限定されるものではない。
【0044】
本発明において、脂肪族炭化水素環とは、芳香族ではない環であって、炭素と水素原子のみからなる環を意味し、その例として単環または多環を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよく、多環とは、他の環基と直接連結または縮合された基を意味するものであって、他の環基とは、脂肪族炭化水素環であってもよいが、他の種類の環基、例えば、脂肪族ヘテロ環、アリール基、ヘテロアリール基などであってもよい。具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、アダマンチル基、3-メチルシクロペンチル基、2,3-ジメチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、3-メチルシクロヘキシル基、4-メチルシクロヘキシル基、2,3-ジメチルシクロヘキシル基、3,4,5-トリメチルシクロヘキシル基、4-tert-ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などのシクロアルキル、そして、シクロヘキサン、シクロペンタンなどのシクロアルカン、そして、シクロヘキセン、シクロブテンなどのシクロアルケンを含み、これに限定されるものではない。
【0045】
本発明において、脂肪族ヘテロ環とは、ヘテロ原子のうち1つ以上を含む脂肪族環を意味し、O、S、Se、NまたはSiなどの異種原子を含むものであって、これもまた単環または多環を含み、他の置換基によってさらに置換されてもよく、多環とは、ヘテロシクロアルキル、ヘテロシクロアルカン、ヘテロシクロアルケン基などが他の環基と直接連結または縮合された基を意味するものであって、他の環基とは、脂肪族ヘテロ環であってもよいが、他の種類の環基、例えば、脂肪族炭化水素環、アリール基、ヘテロアリール基などであってもよい。
【0046】
本発明において、脂肪族芳香族混合環は、2以上の環が互いに連結、縮合されており、脂肪族環と芳香族環が縮合されて全体的に非芳香族性(non-aromaticity)を有する環を意味し、また、多環の脂肪族芳香族混合環において、C以外に、N、O、P及びSから選択されたヘテロ原子を含むことができる。
【0047】
本発明において、アルコキシ基は、具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソブチルオキシ、sec-ブチルオキシ、ペンチルオキシ、iso-アミルオキシ、ヘキシルオキシなどであってもよいが、これらのみに限定されるものではない。
【0048】
本発明において、シリル基は、-SiH3、アルキルシリル基、アリールシリル基、アルキルアリールシリル基、アリールヘテロアリールシリル基などであってもよく、シリル基の具体的な例としては、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリフェニルシリル、トリメトキシシリル、ジメトキシフェニルシリル、ジフェニルメチルシリル、ジフェニルビニルシリル、メチルシクロブチルシリル、ジメチルフリルシリルなどが挙げられる。
【0049】
本発明において、アミン基は、-NH2、アルキルアミン基、アリールアミン基、アリールヘテロアリールアミン基などであってもよく、アリールアミン基は、アリールで置換されたアミンを意味し、アルキルアミン基は、アルキルで置換されたアミンを意味し、アリールヘテロアリールアミン基は、アリール及びヘテロアリール基で置換されたアミンを意味するものであって、アリールアミン基の例としては、置換もしくは非置換のモノアリールアミン基、置換もしくは非置換のジアリールアミン基、または置換もしくは非置換のトリアリールアミン基があり、前記アリールアミン基及びアリールヘテロアリールアミン基中のアリール基及びヘテロアリール基は、単環式アリール基、単環式ヘテロアリール基であってもよく、または多環式アリール基、多環式ヘテロアリール基であってもよく、前記アリール基、ヘテロアリール基を2以上含むアリールアミン基、アリールヘテロアリールアミン基は、単環式アリール基(ヘテロアリール基)、多環式アリール基(ヘテロアリール基)、または単環式アリール基(ヘテロアリール基)と多環式アリール基(ヘテロアリール基)を同時に含むことができる。また、前記アリールアミン基及びアリールヘテロアリールアミン基中のアリール基、ヘテロアリール基は、前述したアリール基、ヘテロアリール基の例示から選択されてもよい。
【0050】
本発明において、アリールオキシ基及びアリールチオキシ基中のアリール基は、前述したアリール基の例示と同一であり、具体的には、アリールオキシ基としては、フェノキシ基、p-トリルオキシ基、m-トリルオキシ基、3,5-ジメチル-フェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基、p-tert-ブチルフェノキシ基、3-ビフェニルオキシ基、4-ビフェニルオキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、4-メチル-1-ナフチルオキシ基、5-メチル-2-ナフチルオキシ基、1-アントリルオキシ基、2-アントリルオキシ基、9-アントリルオキシ基、1-フェナントリルオキシ基、3-フェナントリルオキシ基、9-フェナントリルオキシ基などがあり、アリールチオキシ基としては、フェニルチオキシ基、2-メチルフェニルチオキシ基、4-tert-ブチルフェニルチオキシ基などがあるが、これに限定されるものではない。
【0051】
本発明において、ハロゲン基の例としては、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素がある。
【0052】
より具体的には、本発明に係る化学式Iまたは化学式IIで表される多環芳香族誘導体化合物は、下記化合物から選択されるいずれか1つであってもよく、これを通じて具体的な置換基を明確に確認することができ、但し、これによって本発明に係る化学式Iまたは化学式IIの範囲が限定されるものではない。
【0053】
















【0054】
前記具体的な化合物から確認できるように、B、P、P=O、P=S、Alなどを含んで多環芳香族構造を形成し、これに置換基を導入して、その置換基の固有の特性を有する有機材料を合成することができ、例えば、有機発光素子の製造時に使用される正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、電子阻止層、正孔阻止層の物質などに使用される置換基を前記構造に導入することによって、各有機層で要求する条件を満たす物質を製造することができ、これを通じて、高効率の有機発光素子を実現することができる。
【0055】
また、本発明の他の一態様は、第1電極、第2電極、及び前記第1電極と第2電極との間に介在する1層以上の有機層からなる有機発光素子に関し、前記有機層に、前記化学式Iまたは化学式IIで表される本発明に係る有機化合物を少なくとも1個以上含むことができる。
【0056】
すなわち、本発明の一実施例に係る有機発光素子は、第1電極、第2電極、及びこれらの間に配置された有機層を含む構造からなることができ、本発明に係る化学式Iまたは化学式IIの有機化合物を素子の有機物層に使用する以外は、当技術分野での通常の素子の製造方法及び材料を使用して製造することができる。
【0057】
本発明に係る有機発光素子の有機層は単層構造からなってもよいが、2層以上の有機層が積層された多層構造からなることができる。例えば、正孔注入層、正孔輸送層、正孔阻止層、発光層、電子阻止層、電子輸送層、電子注入層などを含む構造を有することができる。しかし、これに限定されず、さらに少ない数またはさらに多くの数の有機層を含むこともでき、本発明に係る好ましい有機発光素子の有機物層の構造などについては、後述する実施例でより詳しく説明する。
【0058】
本発明に係る有機発光素子は、アノード、正孔輸送層、発光層、電子輸送層及びカソードを含み、必要に応じて、アノードと正孔輸送層との間に正孔注入層をさらに含むことができ、また、電子輸送層とカソードとの間に電子注入層をさらに含むことができ、それ以外にも、1層又は2層の中間層をさらに形成することもでき、正孔阻止層又は電子阻止層をさらに形成させることもできる。
【0059】
本発明の一実施例として、本発明は、前記第1電極と第2電極との間に介在する有機層が発光層を含み、前記発光層は、ホストとドーパントからなり、本発明に係る前記化学式Iまたは化学式IIで表される化合物を発光層内のドーパントとして含むことができる。このとき、前記発光層内のドーパントの含量は、通常、ホスト約100重量部を基準として約0.01~約20重量部の範囲で選択されてもよく、これに限定されるものではない。
【0060】
また、本発明の一実施例として、発光層内のホストは、下記化学式Cで表されるアントラセン誘導体化合物であってもよい。
【0061】
【化C】
【0062】
前記化学式Cにおいて、
21~R28は、それぞれ、同一又は異なっており、前記化学式Iまたは化学式IIのRで定義されたものと同一である。
【0063】
Ar9及びAr10は、それぞれ、互いに同一又は異なっており、互いに独立して、水素、重水素、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~50のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数3~30のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数5~30のシクロアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~50のヘテロアリール基、置換もしくは非置換の炭素数2~30のヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルコキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数1~30のアルキルチオキシ基、置換もしくは非置換の炭素数6~30のアリールチオキシ基、ハロゲン基、置換もしくは非置換のアミン基、及び置換もしくは非置換のシリル基から選択される。
【0064】
13は、単結合であるか、または置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリーレン基、及び置換もしくは非置換の炭素数2~20のヘテロアリーレン基から選択される。
【0065】
kは、1~3の整数であり、前記kが2以上である場合に、それぞれのL13は互いに同一又は異なっている。
【0066】
本発明の一実施例によれば、前記化学式CのAr9は、下記化学式C-1で表されてもよい。
【0067】
【化C-1】
【0068】
前記化学式C-1において、
31~R35は、それぞれ、同一又は異なっており、前記化学式Iまたは化学式IIのRで定義されたものと同一であり、互いに隣接する置換基と結合して飽和あるいは不飽和環を形成することができる。
【0069】
本発明の一実施例に係る化学式Cで表されるホストは、下記化学式C1~化学式C66から選択されるいずれか1つであってもよく、これによってその範囲が限定されるものではない。
【0070】



【0071】
一方、本発明の一実施例に係る有機発光素子の具体的な構造、その製造方法及び各有機層の材料について説明すると、次の通りである。
【0072】
まず、基板の上部にアノード電極用物質をコーティングしてアノードを形成する。ここで、基板としては、通常の有機発光素子で使用される基板を使用するが、透明性、表面平滑性、取り扱いの容易性及び防水性に優れた有機基板又は透明プラスチック基板が好ましい。そして、アノード電極用物質としては、透明でかつ伝導性に優れた酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO)などを使用する。
【0073】
前記アノード電極の上部に正孔注入層物質を真空熱蒸着又はスピンコートして正孔注入層を形成し、その次に、前記正孔注入層の上部に正孔輸送層物質を真空熱蒸着又はスピンコートして正孔輸送層を形成する。
【0074】
前記正孔注入層の材料は、当技術分野で通常使用されるものであれば、特に制限されずに使用することができ、具体的な例示として、2-TNATA[4,4’,4’’-tris(2-naphthylphenyl-phenylamino)-triphenylamine](4,4’,4’’-トリス(2-ナフチルフェニル-フェニルアミノ)-トリフェニルアミン)、NPD[N,N’-di(1-naphthyl)-N,N’-diphenylbenzidine)](N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニルベンジジン)、TPD[N,N’-diphenyl-N,N’-bis(3-methylphenyl)-1,1’-biphenyl-4,4’-diamine](N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-1,1’-ビフェニル-4,4’-ジアミン)、DNTPD[N,N’-diphenyl-N,N’-bis-[4-(phenyl-m-tolyl-amino)-phenyl]-biphenyl-4,4’-diamine](N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス-[4-(フェニル-m-トリル-アミノ)-フェニル]-ビフェニル-4,4’-ジアミン)、HAT-CN[1,4,5,8,9,11-Hexaazatriphenylenehexacarbonitrile](1,4,5,8,9,11-ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル)などを使用することができる。
【0075】
また、前記正孔輸送層の材料も、当技術分野で通常使用されるものであれば、特に制限されず、例えば、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1-ビフェニル]-4,4’-ジアミン(TPD)、またはN,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニルベンジジン(α-NPD)などを使用することができる。
【0076】
次いで、前記正孔輸送層の上部に正孔補助層及び発光層を続いて積層し、前記発光層の上部に選択的に、正孔阻止層を真空蒸着方法又はスピンコーティング方法で薄膜として形成することができる。前記正孔阻止層は、正孔が有機発光層を通過してカソードに流入する場合には、素子の寿命及び効率が減少するため、HOMO(Highest Occupied Molecular Orbital)レベルが非常に低い物質を使用することによって、このような問題を防止する役割を果たす。このとき、使用される正孔阻止物質は、特に制限されないが、電子輸送能力を有し、かつ発光化合物よりも高いイオン化ポテンシャルを有しなければならず、代表的にBAlq、BCP、TPBIなどが使用され得る。
【0077】
前記正孔阻止層に使用される物質として、BAlq、BCP、Bphen、TPBI、NTAZ、BeBq2、OXD-7、Liqなどが使用されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0078】
このような正孔阻止層上に電子輸送層を真空蒸着方法又はスピンコーティング方法を通じて蒸着した後に電子注入層を形成し、前記電子注入層の上部にカソード形成用金属を真空熱蒸着してカソード電極を形成することによって、本発明の一実施例に係る有機発光素子が完成する。
【0079】
ここで、カソード形成用金属としては、リチウム(Li)、マグネシウム(Mg)、アルミニウム(Al)、アルミニウム-リチウム(Al-Li)、カルシウム(Ca)、マグネシウム-インジウム(Mg-In)、マグネシウム-銀(Mg-Ag)などを使用することができ、前面発光素子を得るためには、ITO、IZOを用いた透過型カソードを使用することができる。
【0080】
前記電子輸送層の材料としては、カソードから注入された電子を安定に輸送する機能を行う公知の電子輸送物質を用いることができる。公知の電子輸送物質の例としては、キノリン誘導体、特に、トリス(8-キノリノレート)アルミニウム(Alq3)、TAZ、BAlq、ベリリウムビス(ベンゾキノリン-10-オラート)(beryllium bis(benzoquinolin-10-olate:Bebq2)、オキサジアゾール誘導体であるPBD、BMD、BNDなどのような材料を使用してもよい。
【0081】
また、前記有機層のそれぞれは、単分子蒸着方式又は溶液工程によって形成されてもよい。ここで、前記蒸着方式は、前記それぞれの層を形成するための材料として使用される物質を真空又は低圧状態で加熱などを通じて蒸発させて薄膜を形成する方法を意味し、前記溶液工程は、前記それぞれの層を形成するための材料として使用される物質を溶媒と混合し、これをインクジェット印刷、ロールツーロールコーティング、スクリーン印刷、スプレーコーティング、ディップコーティング、スピンコーティングなどのような方法を通じて薄膜を形成する方法を意味する。
【0082】
また、本発明に係る有機発光素子は、平板ディスプレイ装置、フレキシブルディスプレイ装置、単色又は白色の平板照明用装置、及び単色又は白色のフレキシブル照明用装置から選択される装置に使用することができる。
【実施例
【0083】
以下、好ましい実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのもので、本発明の範囲がこれによって制限されないということは、当技術分野における通常の知識を有する者には自明であろう。
【0084】
合成例1.化合物Aの製造
合成例1-1.中間体A-1の合成
A-1a A-1b A-1
【0085】
反応器に、文献(Angewandte Chemie-International Edition,2008,vol.47,#9,p.1726-1728)を参考にして合成したA-1a(50.0g)、文献(European Journal of Medicinal Chemistry,2017,vol.134,p.230-241)を参考にして合成したA-1b(26.8g)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)(2.23g)、ナトリウムtert-ブトキシド(27.9g)、トルエン(500mL)を投入し、24時間還流撹拌した。常温に冷却した後、水(200mL)を投入した。酢酸エチルで有機層を抽出し、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーでA-1を分離した。(15.1g、収率28.4%)
【0086】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula(化学式の計算値):C24192S (Pos)367.13,found 367.1
【0087】
合成例1-2.中間体A-2の合成
A-2a A-1 A-2
【0088】
反応器に、文献(米国特許公開公報US2020/395553A1)を参考にして合成したA-2a(12.0g)、A-1(11.9g)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)(0.33g)、ナトリウムtert-ブトキシド(6.23g)、トルエン(120mL)を投入し、18時間還流撹拌した。常温に冷却した後、水(50mL)を投入した。酢酸エチルで有機層を抽出し、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーでA-2を分離した。(17.8g、収率78.4%)
【0089】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C44H31ClN3S2 (Pos)700.17,found 700.1
【0090】
合成例1-3.化合物Aの合成
A-2 A
【0091】
反応器にA-2(12.0g)、tert-ブチルベンゼン(120mL)を投入した後、-60℃で1.7Mのtert-ブチルリチウム(30.2mL)を滴加した。60℃に昇温後、2時間撹拌した。-60℃に冷却した後、三臭化ホウ素(3.3mL)を滴加した。常温に昇温後、1時間撹拌した後、0℃に冷却後、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(6.0mL)を滴加した。120℃に昇温後、16時間撹拌した。常温に冷却後、水(50mL)、酢酸ナトリウム(2.8g)を投入した。酢酸エチルで有機層を抽出し、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで化合物Aを分離した。(2.1g、収率18.2%)
【0092】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C4429BN32 (Pos)674.19,found 674.1
【0093】
合成例2.化合物Bの製造
合成例2-1.化合物Bの合成
B-1 A-1 B-2 B
【0094】
中間体A-2aの代わりに、文献(韓国登録特許公報KR2239994B1)を参考にして合成したB-1を用いた以外は、前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体B-2から化合物Bを得た。(17.9%)
【0095】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C4539BN3S (Pos)664.30,found 664.3
【0096】
合成例3.化合物Cの製造
合成例3-1.化合物Cの合成
C-1 A-1 C-2 C
【0097】
中間体A-2aの代わりに、文献(韓国特許公開公報KR2020-009090158A)を参考にして合成したC-1を用いた以外は、前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体C-2から化合物Cを得た。(19.3%)
【0098】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C5147BN3S (Pos)744.36,found 744.3
【0099】
合成例4.化合物Dの製造
合成例4-1.化合物Dの合成
D-1 A-1b D-2 D-3 D
【0100】
中間体A-1aの代わりに、文献(Angewandte Chemie-International Edition,2018,vol.57,#38,p.12380-12384)を参考にして合成したD-1を用いた以外は、前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体D-3から化合物Dを得た。(20.2%)
【0101】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C4429BN3OS (Pos)658.21,found 658.2
【0102】
合成例5.化合物Eの製造
合成例5-1.化合物Eの合成
E-1 E-2 E
【0103】
中間体A-2aの代わりに文献(米国特許公開公報US2020/172558A1)を参考にして合成したE-1を用い、中間体A-1の代わりにD-2を用いた以外は、前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体E-2から化合物Eを得た。(16.7%)
【0104】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C4429BN32 (Pos)642.24,found 642.2
【0105】
合成例6.化合物Fの製造
合成例6-1.中間体F-1の合成
F-1a A-1b F-1
【0106】
中間体A-1aの代わりに、文献(Journal of Organometallic Chemistry,2013,vol.735,p.58-64)を参考にして合成したF-1aを用いた以外は、前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体A-1bから中間体F-1を得た。(30.3%)
【0107】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C26252Si (Pos)393.18,found 393.1
【0108】
合成例6-2.化合物Fの合成
F-2 F-1 F-3 F
【0109】
中間体A-2aの代わりに文献(米国特許公開公報US2020/172558A1)を参考にして合成したF-2を用い、中間体A-1の代わりにF-1を用いた以外は、前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体F-3から化合物Fを得た。(24.8%)
【0110】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C5647BN3SSi (Pos)832.34,found 832.3
【0111】
合成例7.化合物Gの製造
合成例7-1.中間体G-1の合成
G-1a A-1b G-1
【0112】
中間体A-1aの代わりに、文献(Chemistry-A European Journal,2010,vol.16,#41,p.12299-12302)を参考にして合成したG-1aを用いた以外は、前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体A-1bから中間体G-1を得た。(33.1%)
【0113】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C24192O (Pos)351.15,found 351.1
【0114】
合成例7-2.化合物Gの合成
F-2 G-1 G-2 G
【0115】
中間体A-2aの代わりに文献(米国特許公開公報US2020/172558A1)を参考にして合成したF-2を用い、中間体A-1の代わりにG-1を用いた以外は、前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体G-2から化合物Gを得た。(23.0%)
【0116】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C5441BN3OS (Pos)790.31,found 790.3
【0117】
合成例8.化合物Hの製造
合成例8-1.中間体H-1の合成
H-1a H-1b H-1
【0118】
中間体A-1aの代わりに文献(Cell Chemical Biology,2020,vol.27,#8,p.1063-1072)を参考にして合成したH-1aを用い、中間体A-1bの代わりにH-1bを用いた以外は、前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体H-1bから中間体H-1を得た。(17.1%)
【0119】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C5851BN3S (Pos)832.40,found 832.4
【0120】
合成例8-2.化合物Hの合成
H-2 H-1 H-3 H
【0121】
中間体A-2aの代わりに文献(米国特許公開公報US2020/172558A1)を参考にして合成したH-2を用い、中間体A-1の代わりにH-1を用いた以外は、前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体H-3から化合物Hを得た。(17.9%)
【0122】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C6454BN4S (Pos)921.42,found 921.4
【0123】
合成例9.化合物Iの製造
合成例9-1.化合物Iの合成
I-1 A-1 I-2 I
【0124】
中間体A-2aの代わりに、文献(米国特許公開公報US2018/0094000A1)を参考にして合成したI-1を用いた以外は、前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体I-2から化合物Iを得た。(22.6%)
【0125】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C5857BN3S (Pos)838.44,found 838.4
【0126】
合成例10.化合物Jの製造
合成例10-1.中間体J-1の合成
A-1a J-1a J-1
【0127】
中間体A-1bの代わりにJ-1aを用いた以外は、前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体J-1aから中間体J-1を得た。(30.0%)
【0128】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C241452S (Pos)372.16,found 372.1
【0129】
合成例10-2.中間体J-2の合成
J-2a J-1 J-2
【0130】
反応器にJ-2a(10.0g)、J-1(31.0g)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)(0.43g)、ナトリウムtert-ブトキシド(8.0g)、トルエン(100mL)を投入し、18時間還流撹拌した。常温に冷却した後、水(40mL)を投入した。酢酸エチルで有機層を抽出し、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーでJ-2を分離した。(29.9g、収率82.9%)
【0131】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C553010ClN42 (Pos)865.30,found 865.3
【0132】
合成例10-3.化合物Jの合成
J-2 J
【0133】
前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体J-2から化合物Jを得た。(24.8%)
【0134】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C552810BN42 (Pos)839.33,found 839.3
【0135】
合成例11.化合物Kの製造
合成例11-1.中間体K-1の合成
K-1a K-1b K-1
【0136】
反応器に、文献(Tetrahedron,2014,vol.70,#32,p.4754-4759)を参考にして合成したK-1a(15.0g)、文献(中国特許公開公報CN106674210)と文献(米国特許公開公報US2020/172558A1)を参考にして合成したK-1b(29.1g)、ビス(トリ-tert-ブチルホスフィン)パラジウム(0)(0.39g)、ナトリウムtert-ブトキシド(7.4g)、トルエン(150mL)を投入し、12時間還流撹拌した。常温に冷却した後、水(60mL)を投入した。酢酸エチルで有機層を抽出し、減圧濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーでK-1を分離した。(19.3g、収率73.0%)
【0137】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C4650Cl2N (Pos)686.33,found 686.3
【0138】
合成例11-2.中間体K-2の合成
A-1a K-2a K-2
【0139】
中間体A-2aの代わりに、文献(Tetrahedron Letters,2018,vol.59,#22,p.2145-2149)を参考にして合成したK-2aを用いた以外は、前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体K-2aから中間体K-2を得た。(21.4%)
【0140】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C24172S (Pos)365.11,found 365.1
【0141】
合成例11-3.中間体K-3の合成
K-1 K-2 K-3
【0142】
前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体K-1から中間体K-3を得た。(79.5%)
【0143】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C7065ClN3S (Pos)1014.46,found 1014.4
【0144】
合成例11-4.化合物Kの合成
K-3 K
【0145】
前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体K-3から化合物Kを得た。(19.5%)
【0146】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C7063BN3S (Pos)988.49,found 988.4
【0147】
合成例12.化合物Lの製造
合成例12-1.中間体L-1の合成
L-1a F-1a L-1
【0148】
前記合成例1と同様の方法で合成して、文献(Tetrahedron,2019,vol.75,#6,p.721-731)を参考にして合成した中間体L-1a及び中間体F-1aから中間体L-1を得た。(28.9%)
【0149】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C34292Si (Pos)493.21,found 493.2
【0150】
合成例12-2.中間体L-2の合成
L-2a L-1 L-2
【0151】
前記合成例1と同様の方法で合成して、文献(米国特許公開公報US2020/172558A1)を参考にして合成した中間体L-2a及び中間体L-1から中間体L-2を得た。(81.8%)
【0152】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C7874Cl4Si (Pos)1129.54,found 1129.5
【0153】
合成例12-3.化合物Lの合成
L-2 L
【0154】
前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体L-2から化合物Lを得た。(23.8%)
【0155】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C7871BN4Si (Pos)1103.56,found 1103.5
【0156】
合成例13.化合物Mの製造
合成例13-1.中間体M-1の合成
M-1a M-1b M-1
【0157】
反応器に、文献(中国特許公開公報CN111303149A)を参考にして合成した中間体M-1a(23.0g)、文献(Angewandte Chemie-International Edition,2015,vol.54,#51,p.15385-15389)を参考にして合成したM-1b(16.6g)、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(1.34g)、ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(0.91g)、ナトリウムtert-ブトキシド(14.1g)、トルエン(230mL)を投入し、18時間還流撹拌した。常温に冷却した後、水(100mL)を投入した後、有機層を分離した。シリカゲルクロマトグラフィーで分離して、中間体M-1を得た。(28.1g、83.6%)
【0158】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C3332NO (Pos)458.25,found 458.2
【0159】
合成例13-2.中間体M-2の合成
M-1 M-2a M-2
【0160】
前記合成例11と同様の方法で合成して、中間体M-1及びM-2aから化合物M-2を得た。(42.7%)
【0161】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C3934Cl2NO (Pos)602.20,found 602.2
【0162】
合成例13-3.中間体M-3の合成
A-1a M-3a M-3
【0163】
中間体A-1bの代わりに、文献(Tetrahedron,2019,vol.75,#6,p.721-731)を参考にして合成したM-3aを用いた以外は、前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体M-3aから中間体M-3を得た。(25.7%)
【0164】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C30232S (Pos)443.16,found 443.1
【0165】
合成例13-4.中間体M-4の合成
M-2 M-3 M-4
【0166】
前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体M-2及びM-3から中間体M-4を得た。(80.0%)
【0167】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C6955ClN3OS (Pos)1008.38,found 1008.3
【0168】
合成例13-5.化合物Mの合成
M-4 M
【0169】
前記合成例1と同様の方法で合成して、中間体M-4から化合物Mを得た。(22.3%)
【0170】
MS (ESI) calcd for Chemical Formula:C6953BN3OS (Pos)982.40,found 982.4
【0171】
実施例1~10:有機発光素子の製造
ITOガラスの発光面積が2mm×2mmのサイズとなるようにパターニングした後、洗浄した。前記ITOガラスを真空チャンバに装着した後、ベース圧力が1×10-7torrとなるようにした後、前記ITO上に2-TNATA(4,4’,4’’-Tris[2-naphthyl(phenyl)amino]triphenylamine)(700Å)、化学式G(250Å)の順に成膜した。発光層のホストとドーパントとして、下記表1に記載された本発明に係る化合物を重量比(98:2)で混合して成膜(250Å)した後、その後、電子輸送層として化学式E-1と化学式E-2を1:1の比で300Å、電子注入層として化学式E-1を5Å、Al(1000Å)の順に成膜して、有機発光素子を製造した。前記有機発光素子の発光特性は0.4mAで測定した。
【0172】
【0173】
比較例1~2
前記実施例の素子の構造において、発光層内に、本発明に係る化合物の代わりに、下記表1の比較例1~2に記載されたホスト化合物及びドーパント化合物を用いた以外は、同様にして有機発光素子を作製し、前記有機発光素子の発光特性は0.4mAで測定した。比較例1~2で用いられたBH1、BH2及びBD1の構造は、次の通りである。
【0174】
[BH1] [BH2] [BD1]
【0175】
前記実施例1~10と比較例1~2によって製造された有機発光素子に対して、電圧、外部量子効率及び寿命を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0176】
【表1】
【0177】
前記表1に示されたように、本発明の化学式Iまたは化学式IIによる化合物を、有機発光素子内の発光層のドーパント化合物として採用した有機発光素子は、本発明に係る化合物の特徴的な構造と対比して構造的な差を有する化合物(BD1)を採用した素子に比べて、効率及び寿命特性が著しく向上した高効率および長寿命の有機発光素子を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明に係る多環芳香族誘導体化合物は、素子内の有機層に採用されて高効率及び長寿命の有機発光素子を実現できるので、平板ディスプレイ装置、フレキシブルディスプレイ装置、単色又は白色の平板照明用装置、及び単色又は白色のフレキシブル照明用装置などで産業的に有用に活用することができる。