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  • 特許-プロピレンプラント改修プロセス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】プロピレンプラント改修プロセス
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/01 20060101AFI20240917BHJP
【FI】
C08F2/01
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2023528138
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-01
(86)【国際出願番号】 EP2021082860
(87)【国際公開番号】W WO2022112349
(87)【国際公開日】2022-06-02
【審査請求日】2023-06-27
(31)【優先権主張番号】20209879.4
(32)【優先日】2020-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】511114678
【氏名又は名称】ボレアリス エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】ベルグシュトラ ミヒエル
(72)【発明者】
【氏名】コックス ダニー
(72)【発明者】
【氏名】ニフォルス クラウス
(72)【発明者】
【氏名】モリン クラウス
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特表2002-504953(JP,A)
【文献】特表2001-518533(JP,A)
【文献】特表2009-545659(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0255554(US,A1)
【文献】特表2009-545644(JP,A)
【文献】特開2005-162978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-2/60、6/00-246/00、301/00
B01J 10/00-12/02、14/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのバルクループ反応器、任意選択で気相反応器とを含む既存のプロピレン重合プラントを改修する方法であって、既存のバルク反応器は1時間あたりxトンの総能力を有し、前記方法は、
前記既存のプロピレン重合プラントに併設して、1時間あたり少なくとも0.8xトンの能力を有する新しい気相反応器(3)を提供する工程と、
1時間あたり少なくとも0.8xトンの能力を有する前記新しい気相反応器を、前記新しい気相反応器(3)への直接の供給ライン(26)を介してループ出口に直接接続する工程と、
前記新しい気相反応器の下流に失活及び脱気ユニットを提供する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのバルクループ反応器は、直列に連結された2つのバルクループ反応器を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記新しい気相反応器の下流の前記失活及び脱気ユニットは、生成物受け槽(7)と、パージビン(8)と、プロピレン窒素回収ユニット(9)と、蒸留塔(11)と蒸気回収ライン(38)とを含む請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記新しい気相反応器の下流の前記失活及び脱気ユニットは、生成物受け槽(7)と、パージビン(8)と、プロピレン窒素回収ユニット(9)と、蒸留塔(11)と蒸気回収ライン(38)とを含み、前記方法は、前記新しい気相反応器(3)の下流かつ前記生成物受け槽(7)の上流に生成物排出容器(6)を提供する工程
をさらに含む請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記新しい気相反応器の下流の前記失活及び脱気ユニットは、生成物受け槽(7)と、パージビン(8)と、プロピレン窒素回収ユニット(9)と、蒸留塔(11)と蒸気回収ライン(38)とを含み、前記生成物受け槽(7)は、圧縮機(10)を挟んで前記蒸留塔(11)に連結される請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記新しい気相反応器の下流の前記失活及び脱気ユニットは、生成物受け槽(7)と、パージビン(8)と、プロピレン窒素回収ユニット(9)と、蒸留塔(11)と蒸気回収ライン(38)とを含み、前記蒸留塔(11)は、還流回収供給容器(12)に連結され、前記還流回収供給容器(12)は前記蒸気回収ライン(38)と連結される請求項1から請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記既存のポリプロピレンプラントから改修されたポリプロピレンプラントへの移行は、24時間を超える運転停止を伴わない請求項1から請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
既存のポリプロピレンプラントの貫流転化率を増加させるため、及び/又は触媒燃費を増加させるため、及び/又はスループットを増加させるための請求項1から請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
ガス循環ライン(28)又はガス循環ライン(27)、及び蒸気回収ライン(3)が存在し、前記ガス循環ライン(28)又は前記ガス循環ライン(27)は前記蒸気回収ライン(38)と連結されている請求項1から請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
改修されたプロピレン重合プラントは、ランダムポリプロピレンコポリマー及び/又はポリプロピレンホモポリマーを製造するのに適している請求項1から請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記新しい気相反応器(3)は、1時間あたり0.9xトン~1.2xトンの能力を有する請求項1から請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記ループ反応器の下流かつ前記新しい気相反応器の上流にフラッシュ段階は存在しない請求項1から請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記新しい気相反応器の下流の前記失活及び脱気ユニットは、生成物受け槽(7)、パージビン(8)、プロピレン窒素回収ユニット(9)、蒸留塔(11)及び蒸気回収ライン(38)を含み、前記方法は、前記新しい気相反応器(3)の下流かつ前記生成物受け槽(7)の上流に生成物排出容器(6)を提供する工程をさらに含み、さらに、前記生成物受け槽(7)は圧縮機(10)を挟んで前記蒸留塔(11)に連結され、前記蒸留塔(11)は還流回収供給容器(12)に連結され、前記還流回収供給容器(12)は前記蒸気回収ライン(38)と連結される請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項14】
既存のポリプロピレンプラントの貫流転化率に対して貫流転化率を増加させるための請求項13に記載の方法の使用。
【請求項15】
触媒燃費を増加させるための請求項13に記載の方法の使用。
【請求項16】
既存のプロピレン重合プラントのスループットを増加させるための請求項13に記載の方法の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存のプロピレンプラントを改修する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に運転される多数のプロピレン重合プラントは、ポリプロピレンを製造するための様々なバルクプロセスを使用する。一例として、バルクスラリープロセスであるSpheripolプロセスが言及されてもよく、これに関して、典型的なSpheripol構成では、直列に連結された2つのバルクループ反応器が、任意選択で、少なくとも1つの下流の気相反応器に接続され、この下流の気相反応器は比較的小さい。典型的なプラントは、1時間あたりxトンの能力を有する2つのループ反応器と、1時間あたり1/10xトンの能力を有する気相反応器とを組み合わせる。そのような構成は、1時間あたり約1.1xトンの総能力に限定される。例えば、ループが合計で1時間あたり20トンを生成する場合、追加の気相反応器はさらに1時間あたり2トンを生成することになり、合計で1時間あたり22トンの生成をもたらす。明らかに、能力は、1つのループ反応器のみが使用される場合、さらに低くなる。概して言えば、より大きいプラントほど、生成されるポリマーの1トン当たりのエネルギー消費もより低い。従って、より高い能力を有するより大きいプラントが概して望ましい。能力を増加させるために、ループ反応器を拡大することができよう。これは、各ループ反応器の脚(leg)を拡大するか、又は両方若しくは一方の反応器に追加の脚を追加するかのいずれかによって行うことができよう。反応器を拡大することの次は、例えば、モノマーパージ及び触媒失活工程も、同じ純度のポリマー生成物を維持するために、問題が解決されなければならない。
例えば、既存のバルクプロピレン重合プロセスからの従来の改修は、触媒の供給能力の増加、プロピレンの供給能力の増加、ループ反応器のサイズの増加、特に熱伝達領域の長さの増加、乾燥容器の容積の増加、回収圧縮機、ポンプ及びスクラバーの能力の増加を含んでもよい。
【0003】
上記のすべての項目は、既存のプラントにおける設備、配管及び器具の取り外し及び交換を意味する。大幅な改修プロジェクトのいずれの場合でも、下流仕上げセクション、すなわち均質化(押出機)及びペレット化セクションも問題が解決されるべきである。
いずれにせよ、改修は、完全な運転停止中に行われなければならず、これらの運転停止は、通常の保守及び通常のプロジェクトの転換(ターンアラウンド)と比較して、はるかに長く複雑である。完全な運転停止は、理解できるように、ポンプ及び配管の交換を可能にするが、運転停止に時間がかかりすぎるという欠点を伴う。さらに別の問題は触媒燃費(catalyst mileage)である。従来のポリプロピレン重合プラントは、通常、極めて限られた触媒燃費を示し、これは、既存のプラントを改修するときに対処されるべきである。
従って、既存のプロピレン重合プラントのそのような改修にはいくつかの問題がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、少なくとも1つのバルクループ反応器、好ましくは直列に連結された2つのバルクループ反応器と、任意選択で気相反応器とを含む既存のプロピレン重合プラントを改修する方法であって、既存のバルク反応器は1時間当たりxトンの総能力を有し、この方法は、
既存のプロピレン重合プラントに併設して、1時間あたり少なくとも0.8xトン、好ましくは1時間あたり0.9xトン~1.2xトンの能力を有する新しい気相反応器を提供する工程と、
1時間あたり少なくとも0.8xトン、好ましくは1時間あたり0.9xトン~1.2xトンの能力を有する上記新しい気相反応器をループ出口に接続する工程と、
上記新しい気相反応器の下流に失活及び脱気ユニットを提供する工程と
を含む方法を提供する。
【0005】
新しい気相反応器の下流に提供される失活及び脱気ユニットは、当該技術分野で公知である。改修は、既存のプラントを改変するいずれかの活動を意味する。
新しい気相反応器を提供することは、通常、既存のプラントに併設して新しい気相反応器を構築することと等価である。そのような建設作業中に、既存のプラントは、依然として運転されてもよい。建設作業が終了すると、任意選択の既存の気相反応器、並びに高圧フラッシュ、低圧フラッシュ、スチーマー及びスクラバー付き乾燥機等の何らかのさらなる任意選択のユニットは、三方弁又は同様の機器を用いて新しい気相反応器に単純に切り替えることによって、少なくとも一時的に稼働から外されてもよい。
「1時間あたり少なくとも0.8xトンの能力」を有することは、新しい気相反応器の能力が既存のバルクループ反応器の総能力、例えば、単独のバルク反応器のみが存在する場合の既存のバルクループ反応器の総能力、あるいは2つのループ反応器、例えば直列に連結された2つのループ反応器が存在する場合の既存の2つのループ反応器の総能力の少なくとも0.8倍であることを意味する。3つを超えるバルク反応器がある場合も同様である。存在する可能性がある気相反応器の能力は考慮されない。
【0006】
好ましくは、新しい気相反応器の下流の失活及び脱気ユニットは、生成物受け槽(タンク)(7)と、パージビン(パージ容器)(8)と、プロピレン窒素回収ユニット(9)と、蒸留塔(11)と、蒸気回収ライン(38)とを含む。
【0007】
上記蒸留塔(11)は、好ましくは、還流回収供給容器(12)に連結され、この還流回収供給容器(12)は、蒸気回収ライン(38)に連結される。
【0008】
より好ましくは、当該方法は、新しい気相反応器(3)の下流かつ生成物受け槽(7)の上流に生成物排出容器(6)を提供する工程を含む。このような生成物排出容器(6)は、重合プラントの貫流転化率(一回通過転化率、once through conversion)(通過当たり)を著しく改善する。固体濃度は、このような出口容器のない設定と比較して、このような出口容器において上昇する。流動床の密度対移動床の密度は、ガス取り出しが著しく減少するようにシフトされる。従って、圧縮の必要性が低減される。
【0009】
さらなる態様では、本発明に係る方法は、圧縮機(10)を間に挟んで上記塔(7)に連結された生成物受け槽(7)を提供することを含む。
なおさらなる態様では、上記蒸留塔(11)は、好ましくは、還流回収供給容器(12)に連結され、この還流回収供給容器(12)は、蒸気回収ライン(38)と連結される。このような構成により、例えばオリゴマーからプロピレンを分離し、蒸気回収ライン(38)を介して蒸気プロピレンを上記新しい気相反応器(3)に戻してリサイクルし、凝縮したプロピレン(45)をプロピレン供給槽に、任意選択で部分的にプロピレン-プロパンスプリッタを介してリサイクルすることができる。記載されるような構成は、ランダムポリプロピレンコポリマーを製造するために特に有益である。
【0010】
本発明に係る方法はさらに、既存のプラントからの移行のための極めて短い運転停止を特徴とする。既存のプロピレン重合プラントから改修されたプロピレン重合プラントへの移行は、好ましくは24時間を超える運転停止を伴わない。
【0011】
追加の、好ましくもある態様では、本発明に係る方法は、既存のプロピレン重合プラントの貫流転化率の増加、及び/又は触媒燃費の増加、及び/又はスループットの増加を可能にする。
特に好ましい態様では、本発明に係る方法は、
生成物受け槽(7)と、パージビン(8)と、プロピレン窒素回収ユニット(9)と、蒸留塔(11)と、蒸気回収ライン(38)とを含む、新しい気相反応器の下流の失活及び脱気ユニット
を含み、当該方法は、
新しい気相反応器(3)の下流かつ生成物受け槽(7)の上流の生成物排出容器(6)
を提供することをさらに含み、さらに、
生成物受け槽(7)は、圧縮機(10)を間に挟んで上記蒸留塔(11)に連結され、
上記蒸留塔(11)は、還流回収供給容器(12)に連結され、この還流回収供給容器(12)は、蒸気回収ライン(38)と連結される。
【0012】
従って、好ましい態様では、本発明は、既存のプロピレン重合プラントの貫流転化率を増加させ、かつ/又は触媒燃費を増加させ、かつ/又はスループットを増加させるための、本明細書に記載される方法、特に上記の好ましい方法の使用に関する。
【0013】
好ましい態様では、改修されたプロピレン重合プラントは、ランダムポリプロピレンコポリマー及び/又はポリプロピレンホモポリマーを製造するのに適している。さらに別の態様では、既存のポリプロピレンプラントは、異相ポリプロピレンコポリマーを製造するのに適したプラントである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明に係る改修されたプロピレンプラントの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明について、図を参照してより詳細に説明する。
改修される典型的な既存のポリプロピレンプラント(Ullmann’s Polymers and Plastics:Products and Processes 2016 Wiley-VCH Verlag GmbH & CO KGaA(ワイリー-ヴィシーエイチ・フェアラーク)、ヴァインハイム(Weinheim) ISBN:978-3-527-33823-8(951頁)に記載されているもの等)は、2つのループ反応器及び任意選択の気相反応器を含む。ループ反応器内での重合後、ポリマーは、高圧でプロピレンをフラッシングすることによって液体プロピレンから分離され、フラッシングされたプロピレンは熱交換器内で冷却水を使用して凝縮させることが可能である。次いで、このポリマーは高フラッシュ槽から下流の低圧脱気工程、蒸気による失活工程及び乾燥工程に移される。
任意選択で、ポリマーは、最初に高圧フラッシュから気相反応器に導かれ、次いで、気相反応器からの生成物が低圧脱気工程に排出される。このような典型的な既存のポリプロピレンプラントでは、フラッシュによって接続される気相反応器は、通常、限られた能力を有し、すなわち、プラントの総能力は主にループ反応器の総能力によって決定される。
【0016】
図1は、本発明に係る改修されたプロピレンプラントの概略図である。
【0017】
図1の参照番号
20 前重合反応器への供給ライン
0 前重合反応器
1 第1のループ反応器
21 第1のループ反応器へのプロピレンの供給ライン
31 第1のループ反応器へのコモノマーの供給ライン
41 第1のループ反応器への水素の供給ライン
24 第1の供給ライン
25 ループ反応器接続ライン
2 第2のループ反応器
22 第2のループ反応器へのプロピレンの供給ライン
32 第2のループ反応器へのコモノマーの供給ライン
42 第2のループ反応器への水素の供給ライン
26 気相反応器への直接供給ライン
3 気相反応器
4 循環ガス圧縮機
27、28 ガス循環ライン
23 ガス循環ラインへのプロピレンの供給ライン
33 ガス循環ラインへのコモノマーの供給ライン
43 ガス循環ラインへの水素の供給ライン
29 気相反応器出口
5 循環ガス冷却器
13 閉ループ冷却水ポンプ
14 閉ループ冷却水熱交換器
29 気相反応器出口ライン
6 生成物排出容器
34、34’ 生成物受け槽供給ライン
7 生成物受け槽
35 パージビン供給ライン
8 パージビン
36 生成物出口
9 プロピレン窒素回収ユニット
46 プロピレン窒素回収ユニット供給ライン
47 塔補給ライン
48 窒素再供給ライン
49 排気ライン
10 ガス回収圧縮機
11 塔
50 生成物受け槽とガス回収圧縮機とを接続するライン
45 オリゴマーの出口
12 還流回収供給容器
38 気相反応器への蒸気回収ライン
39 さらなる回収ライン
44 供給槽への凝縮プロピレンの回収ライン
【0018】
図2に示すプラントの運転を簡単に説明する。前重合(プレポリマー化)は、前重合反応器0において行われ、この際、反応物質は、供給ライン(複数可)20を介して前重合反応器に供給される。前重合中間体は、第1の供給ライン(24)を介して第1のループ反応器(1)に送られる。重合は、供給ライン21、31、41及び22、32、42を介してプロピレン、コモノマー及び水素等の連鎖移動剤を供給することによってループ反応器(1、2)内で起こる。第2のループ反応器からの中間体は、直接の供給ライン(26)を介して気相反応器に供給される。「直接の供給ライン」は、フラッシュ又は同様のユニットがないことを示す。
ループ反応器(複数可)の下流かつ新しい気相反応器の上流にはフラッシュユニットがないことを理解されたい。
新しい気相反応器(3)は、循環ガス圧縮機(4)、ガス循環ライン(27、28)、及び循環ガス冷却器(5)を使用して、上向き方向の流れを導入することによって運転される。この循環冷却器は、閉ループ冷却水熱交換器(14)によってプラント現場全体の冷却システムと連結される閉鎖冷却水回路を有する。
【0019】
ガス循環ライン(28)又はガス循環ライン(27)は、蒸気回収ライン(38)と連結される。蒸気回収ライン(38)は、プロピレン、水素及び任意選択のコモノマーを含む非凝縮物を気相反応器に戻してリサイクルすることを可能にする。驚くべきことに、この接続性はランダムポリプロピレンコポリマーを製造するのに特に有益であることが見出された。その主な理由は、ランダムプロピレンコポリマーを製造する際の気相中の高いプロピレン含有量であると考えられる。
気相反応器の排出は、気相反応器出口(29)を介して生成物排出容器(6)に、さらに生成物受け供給ライン(34)を介して生成物受け槽(7)に、又は直接、生成物受け供給ライン(34’)を介して生成物受け槽(7)に、さらにパージビン供給ライン(35)を介してパージビン(8)に行われる。生成物受け槽(7)は、ライン(50)を介してガス回収圧縮機(10)に接続される。パージビン(8)はさらに、プロピレン窒素回収ユニット(9)に連結される。窒素は、窒素再供給ライン(48)を介して、プロピレン窒素回収ユニット(9)からパージビン(8)に供給することができる。生成物は、生成物出口(36)を介して、ペレット化等のさらなる下流の処理に送られる。
回収ユニットは蒸留塔(11)も含み、オリゴマーのための出口(45)を含む回路がそれに結合される。蒸留塔(11)は、蒸気回収ライン(38)及び凝縮物回収ライン(44)を介してプロピレンの回収及びリサイクルにさらに寄与する還流回収供給容器(12)に接続される。
【実施例
【0020】
比較例CE1は、直列に連結された2つのループ反応器のみを用いて作製した。
ランダムポリプロピレンコポリマーの生成は、1時間あたり90キログラムであった。ポリマーを、第2のループ反応器からフラッシュパイプを介して高圧フラッシュに取り出し、そこでプロピレンを高圧でフラッシュし、スクラバーを介して回収に供し、凝縮させ、供給槽にリサイクルし、次にポリマーを低圧バッグフィルターに供給し、スチーマー及び乾燥機に重量供給した。
【0021】
約2時間の滞留時間及び1時間あたり90キログラムを超える能力を有する流動床型の気相反応器を、(CE1で使用した)既存のプラントのすぐ近くに併設して構築した。
発明例の重合は、第2のループ反応器からの反応性ストリームを、新たに構築された気相反応器に直接向け直すことによって行った。
生成物受け槽(7)、パージビン(8)、プロピレン窒素回収ユニット(9)、蒸留塔(11)及び蒸気回収ライン(38)を使用するが、新しい気相反応器(3)の下流かつ生成物受け槽(7)の上流の生成物排出容器(6)を使用せずに、図1に示すように新しい気相反応器からポリマーを回収した。
本発明に係る方法の利点は、総生成量を1時間あたり180.9kgに倍増し、触媒燃費を60%増加させることによって反映される。これに加えて、貫流転化率は55%から80%に増加した。
【0022】
発明例2。新しい気相反応器(3)の下流かつ生成物受け槽(7)の上流の生成物排出容器(6)を追加的に使用することによって、ポリマーを回収した。IE1の利点に加えて、貫流転化率は90%に増加し、これは、ガス回収圧縮機に対する負荷の著しい低減を意味する。
【0023】
比較例2:ホモポリプロピレンポリマーを単独のループ反応器で製造し、フラッシュラインを介して高圧フラッシュ及び下流低圧フラッシュに、続いて蒸気処理容器及び乾燥機流動床に供給した。ポリマーを仕上げセクションに供給し、そこで押出中に添加剤を供給し、ポリマーをペレット化した。
【0024】
発明例3:ホモポリプロピレンポリマーを単独のループ反応器で製造し、重合スラリーを約2時間の滞留時間で気相反応器に直接供給した。プロピレン重合をこの気相反応器中で継続し、ホモポリマーを、図2に示すように気相反応器から回収したが、ここでも、新しい気相反応器(3)の下流かつ生成物受け槽(7)の上流の生成物排出容器(6)を使用しなかった。
【0025】
発明例3の利点は、総生成量を1時間あたり120.6kgに倍増し、プロピレンモノマーの貫流転化率を61%から80%に増加させることによって反映される。
【0026】
表1は条件及び貫流転化率を示す。
【0027】
【表1】
【0028】
表2は、上記構成について触媒生産性を比較する。
【0029】
【表2】
図1