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特許7556154リン酸鉄リチウム電池におけるセルの電圧変曲点を決定する方法、装置、媒体及び機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】リン酸鉄リチウム電池におけるセルの電圧変曲点を決定する方法、装置、媒体及び機器
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/48 20060101AFI20240917BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240917BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
H01M10/48 P
H01M4/58
H02J7/00 Q
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2023539962
(86)(22)【出願日】2022-02-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-02-08
(86)【国際出願番号】 CN2022076692
(87)【国際公開番号】W WO2022206208
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-08-09
(31)【優先権主張番号】202110351934.X
(32)【優先日】2021-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BYD Company Limited
【住所又は居所原語表記】No. 3009, BYD Road, Pingshan, Shenzhen, Guangdong 518118, P. R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】▲馮▼天宇
(72)【発明者】
【氏名】李▲暁▼▲倩▼
(72)【発明者】
【氏名】▲でん▼林旺
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-061445(JP,A)
【文献】国際公開第2020/218826(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/010475(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/48
H01M 4/58
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸鉄リチウム電池におけるセルの電圧変曲点を決定する方法であって、
所定の電流閾値よりも大きい第1電流値で前記リン酸鉄リチウム電池を充電し、かつ前記リン酸鉄リチウム電池の充電状態SOCを監視するステップと、
前記リン酸鉄リチウム電池のSOCが所定の検出区間外にある場合、前記第1電流値で前記リン酸鉄リチウム電池を充電するステップと、
前記リン酸鉄リチウム電池のSOCが前記検出区間内にある場合、前記所定の電流閾値よりも小さい第2電流値で前記リン酸鉄リチウム電池を充電するステップと、
前記リン酸鉄リチウム電池のSOCが前記検出区間にある場合、前記リン酸鉄リチウム電池における各セル充電中のパラメータ情報に基づいて、前記リン酸鉄リチウム電池における各セルの電圧変曲点を検出するステップとを含む、ことを特徴とするリン酸鉄リチウム電池におけるセルの電圧変曲点を決定する方法。
【請求項2】
第1電流値で前記リン酸鉄リチウム電池を充電し、かつ前記リン酸鉄リチウム電池の充電状態SOCを監視する前に、前記方法は、
前記第2電流値で前記リン酸鉄リチウム電池を充電する場合、前記リン酸鉄リチウム電池における各セルの電圧変曲点を検出するステップと、
前記各セルの電圧変曲点に基づいて前記リン酸鉄リチウム電池のSOCを決定するステップと、
前記リン酸鉄リチウム電池のSOCに基づいて前記検出区間を決定するステップとをさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リン酸鉄リチウム電池のSOCに基づいて前記検出区間を決定するステップは、
Q=[SOC-W,SOC+W]に基づいて前記検出区間を決定するステップを含み、
ここで、SOCは、前記第2電流値で前記リン酸鉄リチウム電池を充電する場合、前記各セルの電圧変曲点に基づいて決定された前記リン酸鉄リチウム電池のSOCであり、Qは、前記検出区間であり、Wは、所定の定数であり、0<W<1である、ことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記リン酸鉄リチウム電池のSOCが前記検出区間にある場合、前記リン酸鉄リチウム電池における各セル充電中のパラメータ情報に基づいて、前記リン酸鉄リチウム電池における各セルの電圧変曲点を検出した後に、前記方法は、
検出された前記各セルの電圧変曲点に基づいて、前記検出区間を更新するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
検出された前記各セルの電圧変曲点に基づいて、前記検出区間を更新するステップは、
前記リン酸鉄リチウム電池における全てのセルの電圧変曲点が検出されると、前記各セルの電圧変曲点に基づいて前記リン酸鉄リチウム電池のSOCを決定するステップと、
決定された前記リン酸鉄リチウム電池のSOCに基づいて前記検出区間を更新するステップとを含む、ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
決定された前記リン酸鉄リチウム電池のSOCに基づいて前記検出区間を更新するステップは、
=[SOC-P,SOC+P]に基づいて前記検出区間を更新するステップを含み、
ここで、SOCは、今回の充電中に検出された前記各セルの電圧変曲点に基づいて決定された前記リン酸鉄リチウム電池のSOCであり、Qは、今回の充電後に更新された前記検出区間であり、Pは、所定の定数であり、0<P<1である、ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
検出された前記各セルの電圧変曲点に基づいて、前記検出区間を更新するステップは、
前記リン酸鉄リチウム電池内に電圧変曲点が検出されていない前記セルがあることを検出すると、前記検出区間を、Q=[M-m,N+m]に更新するステップを含み、
ここで、Qは、今回の充電後に更新された前記検出区間であり、mは、所定の定数であり、0<m<1であり、MとNは、それぞれ今回の充電に適用される前記検出区間の下限値と上限値である、ことを特徴とする請求項4~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
リン酸鉄リチウム電池の電圧変曲点を決定する装置であって、
所定の電流閾値よりも大きい第1電流値で前記リン酸鉄リチウム電池を充電し、かつ前記リン酸鉄リチウム電池の充電状態SOCを監視する監視モジュールと、
前記リン酸鉄リチウム電池のSOCが所定の検出区間外にある場合、前記第1電流値で前記リン酸鉄リチウム電池を充電する第1制御モジュールと、
前記リン酸鉄リチウム電池のSOCが前記検出区間内にある場合、前記所定の電流閾値よりも小さい第2電流値で前記リン酸鉄リチウム電池を充電する第2制御モジュールと、
前記リン酸鉄リチウム電池のSOCが前記検出区間にある場合、前記リン酸鉄リチウム電池における各セル充電中のパラメータ情報に基づいて、前記リン酸鉄リチウム電池における各セルの電圧変曲点を検出する第1検出モジュールとを含む、ことを特徴とするリン酸鉄リチウム電池の電圧変曲点を決定する装置。
【請求項9】
コンピュータプログラムが記憶されたコンピュータ読み取り可能な記憶媒体であって、当該プログラムがプロセッサにより実行されると、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を実現する、ことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
【請求項10】
コンピュータプログラムが記憶されたメモリと、
前記メモリにおける前記コンピュータプログラムを実行することにより、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を実現するプロセッサとを含む、ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の参照出願)
本開示は、2021年3月31日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202110351934.X、出願名称が「LFP電池におけるセルの電圧変曲点を決定する方法、装置、媒体及び機器」である中国特許出願の優先権を主張するものであり、その全ての内容は、参照により本開示に組み込まれるものとする。
【0002】
本開示は、動力電池自動制御の技術分野に関し、具体的には、リン酸鉄リチウム(LFP)電池におけるセルの電圧変曲点を決定する方法、装置、媒体及び機器に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池の電圧変曲点とは、充放電時の電圧-電気量特性曲線に変曲点が現れる現象を指す。これは、電池自体の電気化学的特性によるものであり、電池自体の温度、健康状態(State of health、SOH)、及び充放電電流などの要因は全て、変曲点の特性に影響を与える。リチウムイオン電池の電圧変曲点は、動力電池の健康状態(State of health、SOH)の推定、組電池の目標均等電気量の計算などに広く使用されている。
【0004】
交流充電パイルの小電流充電モードでは、電圧差分曲線に明らかな特徴ピークが存在するため、電圧変曲点を容易に検出することができる。電流が増加すると、特徴ピークは、徐々に消える。大電流急速充電モードでは、電池の電圧変曲点は、検出されにくいため、電圧変曲点に基づく上記機能の適用は、実現できない。例えば、長時間に急速充電モードで充電した運営車両に対して、電池SOHをタイムリーに更新できず、電池均等化を長期間有効にできないなどの問題が発生する。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、充電中に電圧変曲点を特定することができる、リン酸鉄リチウム(LFP)電池におけるセルの電圧変曲点を決定する方法、装置、媒体、及び機器を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するために、本開示に係るLFP電池におけるセルの電圧変曲点を決定する方法は、
所定の電流閾値よりも大きい第1電流値で前記LFP電池を充電し、かつ前記LFP電池の充電状態SOCを監視するステップと、
前記LFP電池のSOCが所定の検出区間外にある場合、前記第1電流値で前記LFP電池を充電するステップと、
前記LFP電池のSOCが前記検出区間内にある場合、前記所定の電流閾値よりも小さい第2電流値で前記LFP電池を充電するステップと、
前記LFP電池のSOCが前記検出区間にある場合、前記LFP電池における各セル充電中のパラメータ情報に基づいて、前記LFP電池における各セルの電圧変曲点を検出するステップとを含む。
【0007】
好ましくは、第1電流値で前記LFP電池を充電し、かつ前記LFP電池の充電状態SOCを監視する前に、前記方法は、
前記第2電流値で前記LFP電池を充電する場合、前記LFP電池における各セルの電圧変曲点を検出するステップと、
前記各セルの電圧変曲点に基づいて前記LFP電池のSOCを決定するステップと、
前記LFP電池のSOCに基づいて前記検出区間を決定するステップとをさらに含む。
【0008】
好ましくは、前記LFP電池のSOCに基づいて前記検出区間を決定するステップは、
Q=[SOC-W,SOC+W]に基づいて前記検出区間を決定するステップを含み、
ここで、SOCは、前記第2電流値で前記LFP電池を充電する場合、前記各セルの電圧変曲点に基づいて決定された前記LFP電池のSOCであり、Qは、前記検出区間であり、Wは、所定の定数であり、0<W<1である。
【0009】
好ましくは、前記LFP電池のSOCが前記検出区間にある場合、前記LFP電池における各セル充電中のパラメータ情報に基づいて、前記LFP電池における各セルの電圧変曲点を検出した後に、前記方法は、
検出された前記各セルの電圧変曲点に基づいて、前記検出区間を更新するステップをさらに含む。
【0010】
好ましくは、検出された前記各セルの電圧変曲点に基づいて、前記検出区間を更新するステップは、
前記LFP電池における全てのセルの電圧変曲点が検出されると、前記各セルの電圧変曲点に基づいて前記LFP電池のSOCを決定するステップと、
決定された前記LFP電池のSOCに基づいて前記検出区間を更新するステップとを含む。
【0011】
好ましくは、決定された前記LFP電池のSOCに基づいて前記検出区間を更新するステップは、
=[SOC-P,SOC+P]に基づいて前記検出区間を更新するステップを含み、
ここで、SOCは、今回の充電中に検出された前記各セルの電圧変曲点に基づいて決定された前記LFP電池のSOCであり、Qは、今回の充電後に更新された前記検出区間であり、Pは、所定の定数であり、0<P<1である。
【0012】
好ましくは、検出された各セルの電圧変曲点に基づいて、前記検出区間を更新するステップは、
前記LFP電池内に電圧変曲点が検出されていない前記セルがあることを検出すると、前記検出区間を、Q=[M-m,N+m]に更新するステップを含み、
ここで、Qは、今回の充電後に更新された前記検出区間であり、mは、所定の定数であり、0<m<1であり、MとNは、それぞれ今回の充電に適用される前記検出区間の下限値と上限値である。
【0013】
本開示に係るLFP電池の電圧変曲点を決定する装置は、
所定の電流閾値よりも大きい第1電流値で前記LFP電池を充電し、かつ前記LFP電池の充電状態SOCを監視する監視モジュールと、
前記LFP電池のSOCが所定の検出区間外にある場合、前記第1電流値で前記LFP電池を充電する第1制御モジュールと、
前記LFP電池のSOCが前記検出区間内にある場合、前記所定の電流閾値よりも小さい第2電流値で前記LFP電池を充電する第2制御モジュールと、
前記LFP電池のSOCが前記検出区間にある場合、前記LFP電池における各セル充電中のパラメータ情報に基づいて、前記LFP電池における各セルの電圧変曲点を検出する第1検出モジュールとを含む。
【0014】
本開示に係るコンピュータ読み取り可能な記憶媒体には、コンピュータプログラムが記憶され、当該プログラムがプロセッサにより実行されると、本開示に係る上記方法のステップを実現する。
【0015】
本開示に係る電子機器は、
コンピュータプログラムが記憶されたメモリと、
前記メモリにおける前記コンピュータプログラムを実行することにより、本開示に係る上記方法のステップを実現するプロセッサとを含む。
【0016】
上記技術手段によれば、LFP電池の大電流充電中に、所定の検出区間内に充電電流を調整し、セルの電圧変曲点を検出するために当該検出区間内に小電流で充電するように意図的に制御し、それ以外の区間に元の大電流で充電するポリシーに従って充電するように意図的に制御し、このように、もともと大電流で充電する場合にセルの電圧変曲点を検出することにより、LFP電池のSOHをタイムリーに更新し、電池をタイムリーに均等化することができる。
【0017】
本開示の他の特徴及び利点は、後の具体的な実施形態部分において詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図面は、本開示の更なる理解を提供し、明細書の一部を構成するものであり、以下の具体的な実施形態と共に本開示を説明するものであるが、本開示を限定するものではない。
【0019】
図1】リチウムイオン電池を充電する場合に充電電圧が電池充電容量に伴って変化する曲線の概略図である。
図2】リチウムイオン電池を充電する場合の電圧差分曲線の概略図である。
図3】例示的な実施例に係るLFP電池におけるセルの電圧変曲点を決定する方法のフローチャートである。
図4】別の例示的な実施例に係るLFP電池におけるセルの電圧変曲点を決定する方法のフローチャートである。
図5】さらなる例示的な実施例に係るLFP電池におけるセルの電圧変曲点を決定する方法のフローチャートである。
図6】例示的な実施例に係るLFP電池の充電電流を調整する場合の概略図である。
図7】例示的な実施例に係るLFP電池におけるセルの電圧変曲点を決定する装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本開示の具体的な実施形態を詳細に説明する。なお、ここで説明される具体的な実施形態は、本開示を説明又は解釈するためのものに過ぎず、本開示を制限するためのものではない。
【0021】
図1は、リチウムイオン電池を充電する場合に充電電圧が電池充電容量に伴って変化する曲線の概略図である。図1において、横軸は、電池充電容量(単位Ah)であり、縦軸は、充電電圧(単位V)である。図1は、充電電流が0.5Cである場合の曲線aと、充電電流が0.1Cである場合の曲線bを示している。
【0022】
図2は、リチウムイオン電池を充電する場合の電圧差分曲線の概略図である。図2において、横軸は、電池充電容量であり、縦軸は、電圧差分(dV/dQ)である。図2は、充電電流が0.5Cである場合の曲線Aと、充電電流が0.1Cである場合の曲線Bを示している。曲線bにおける破線丸は、曲線Bにおける破線丸に対応し、約80Ahにある当該リチウム電池の電圧変曲点を示している。充電電流が小さい曲線Bには明らかな電圧変曲点があり、充電電流が大きい曲線Aには電圧変曲点がないことが分かる。大電流急速充電モードでは、リチウムイオン電池の電圧変曲点が検出されにくいことが分かる。
【0023】
図3は、例示的な実施例に係るLFP電池におけるセルの電圧変曲点を決定する方法のフローチャートである。図3に示すように、方法は、以下のステップS11~ステップS14を含んでもよい。
【0024】
ステップS11では、所定の電流閾値よりも大きい第1電流値でリン酸鉄リチウム(LiFePO、LFP)電池を充電し、かつLFP電池の充電状態(State of charge、SOC)を監視する。
【0025】
ステップS12では、LFP電池のSOCが所定の検出区間外にある場合、第1電流値でLFP電池を充電する。
【0026】
ステップS13では、LFP電池のSOCが検出区間内にある場合、所定の電流閾値よりも小さい第2電流値でLFP電池を充電する。
【0027】
ステップS14では、LFP電池のSOCが検出区間にある場合、LFP電池における各セル充電中のパラメータ情報に基づいて、LFP電池における各セルの電圧変曲点を検出する。
【0028】
本開示は、LFP電池に適用される。充電中に、電池の電流と電圧をリアルタイムに検出し、かつLFP電池のSOCを算出することができる。SOCの決定方法は、当業者に周知であり、ここでは説明を省略する。
【0029】
検出区間は、予め決定されてもよい。具体的には、車両の組み立てが完了する前にLFP電池における各セルの電圧変曲点を検出することができ、各セルの電圧変曲点に基づいて電池のSOCを決定し、当該電池のSOCの近傍に検出区間の上限値及び下限値を設定し、決定された検出区間を記憶する。
【0030】
第1電流値は、例えば、当該急速充電モードの充電ポリシーのMAPテーブルに従って取得された充電電流であってもよく、第1電流値でLFP電池を充電し、即ちLFP電池を急速充電モードで正常に充電する。充電電流が第2電流値である場合、明らかな電圧変曲点があることを検出することができる。第2電流値は、充電電圧に明らかな変曲点がある充電電流値であってもよい。電池のSOCが検出区間にある場合、充電中に、それぞれ各セルのパラメータ情報に基づいて当該セルの電圧変曲点を検出する。電圧変曲点の検出方法は、当業者に周知であり、ここでは説明を省略する。
【0031】
即ち、本技術手段において、LFP電池の大電流(第1電流値)充電中に、一部のSOC区間(検出区間)において小充電電流(第2電流値)を調整して使用し、かつセルの電圧変曲点を検出し、それ以外のSOC区間において元の大電流(第1電流値)で充電する充電ポリシーを保持し、本技術手段は、電池管理システム(Battery Management System、BMS)により実行され得る。
【0032】
上記技術手段によれば、LFP電池の大電流充電中に、所定の検出区間内に充電電流を調整し、セルの電圧変曲点を検出するために当該検出区間内に小電流で充電するように意図的に制御し、それ以外の区間に元の大電流で充電するポリシーに従って充電するように意図的に制御し、このように、もともと大電流で充電する場合にセルの電圧変曲点を検出することにより、LFP電池のSOHをタイムリーに更新し、電池をタイムリーに均等化することができる。
【0033】
図4は、別の例示的な実施例に係るLFP電池におけるセルの電圧変曲点を決定する方法のフローチャートである。図4に示すように、図3に加えて、第1電流値でLFP電池を充電し、かつLFP電池のSOCを監視するステップ(ステップS11)の前に、当該方法は、以下のステップS01~ステップS03を含んでもよい。
【0034】
ステップS01では、第2電流値でLFP電池を充電する場合、LFP電池における各セルの電圧変曲点を検出する。
【0035】
ステップS02では、各セルの電圧変曲点に基づいてLFP電池のSOCを決定する。
【0036】
具体的には、各セルの電圧変曲点に基づいてLFP電池のSOCを一度決定し、次に複数回の決定されたLFP電池のSOCに基づいて最終的なLFP電池のSOCを決定することができる(例えば、平均値を取る)。
【0037】
ステップS03では、LFP電池のSOCに基づいて検出区間を決定する。
【0038】
小電流で充電する場合に電圧変曲点を検出することができるため、当該実施例において、車両の組み立てが完了する前に、動力電池サンプルに対してオフラインの小電流充電テストを行い、電圧変曲点が現れる時の電池のSOCを決定し、かつ当該SOCに基づいて検出区間を決定し、このように決定された検出区間が正確であるため、実車の大電流充電中に図3における方法に従ってセルの電圧変曲点を検出しやすい。
【0039】
さらなる実施例において、図4に加えて、LFP電池のSOCに基づいて検出区間を決定するステップ(ステップS03)は、
Q=[SOC-W,SOC+W](1)に基づいて検出区間を決定するステップを含んでもよく、
ここで、SOCは、第2電流値で上記LFP電池を充電する場合、各セルの電圧変曲点に基づいて決定されたLFP電池のSOCであり、Qは、検出区間であり、Wは、所定の定数であり、0<W<1である。
【0040】
即ち、低速充電モードでの充電(第2電流値で充電する)中に検出されたセルの電圧変曲点に基づいて決定された電池SOCをそれぞれ上下にW拡張することにより、検出区間を得る。このように、低速充電モードでの充電中に検出された電圧変曲点に基づいて決定された電池SOCは、検出区間の中点にあり、検出区間の設定が合理的であり、実車の大電流充電中に図3における方法に従って電圧変曲点を検出しやすい。
【0041】
さらなる実施例において、図3に加えて、LFP電池のSOCが検出区間にある場合、LFP電池における各セル充電中のパラメータ情報に基づいて、LFP電池における各セルの電圧変曲点を検出した(ステップS14)後、当該方法は、検出された各セルの電圧変曲点に基づいて、検出区間を更新するステップをさらに含んでもよい。
【0042】
今回の充電中に検出された電圧変曲点は、各セルの最新の特徴値であり、各セルの最新の状態を表すため、これに基づいて検出区間を更新し、検出区間を動的に調整することができ、このように、次回の大電流充電の場合、電圧変曲点の検出がより確実になるため、電池が徐々に劣化しても、セルの電圧変曲点をリアルタイムに検出することができる。
【0043】
一実施例において、上記検出された各セルの電圧変曲点に基づいて、検出区間を更新するステップは、LFP電池における全てのセルの電圧変曲点が検出されると、各セルの電圧変曲点に基づいてLFP電池のSOCを決定するステップと、決定されたLFP電池のSOCに基づいて検出区間を更新するステップとを含んでもよい。
【0044】
各セルの電圧変曲点に基づいてLFP電池のSOCを一度決定し、次に複数回の決定されたLFP電池のSOCに基づいて最終的なLFP電池のSOCを決定することができる。次に、LFP電池のSOCに基づいて更新後の検出区間を決定する。LFP電池の最新のSOCに基づいて検出区間を更新するため、次回の大電流充電の場合に電圧変曲点の検出がより確実になる。
【0045】
具体的には、電圧変曲点に対応するSOCに基づいて検出区間を更新する場合、当該SOCを含む区間を更新後の検出区間とすることができる。例えば、更新後の検出区間の上限値は、当該SOCに所定の定数aを加算したものであってもよく、更新後の検出区間の下限値は、当該SOCから定数bを減算したものであってもよく、定数aは、定数bに等しくなくてもよく、0<a<1、0<b<1。
【0046】
さらなる実施例において、決定されたLFP電池のSOCに基づいて検出区間を更新するステップは、
=[SOC-P,SOC+P](2)に基づいて検出区間を更新するステップを含んでもよい。
【0047】
ここで、SOCは、今回の充電中に検出された各セルの電圧変曲点に基づいて決定されたLFP電池のSOCであり、Qは、今回の充電後に更新された検出区間であり、Pは、所定の定数であり、0<P<1である。
【0048】
式(2)の構想は、式(1)に類似し、今回の充電中に検出された電圧変曲点に基づいて決定された電池SOCをそれぞれ上下にP拡張することにより、今回の充電後に更新された検出区間を得て、このように、今回の充電中に検出されたセルの電圧変曲点に基づいて決定された電池SOCは、検出区間の中点にあり、検出区間の設定が合理的であり、実車の大電流充電中に図3における方法に従って電圧変曲点を検出しやすい。
【0049】
電圧変曲点が検出されていないセルがある可能性があり、現在の検出区間内に当該セルの電圧変曲点を検出することできず、検出区間を拡大する必要があることを示す。
【0050】
さらなる実施例において、検出された各セルの電圧変曲点に基づいて、検出区間を更新するステップは、LFP電池内に電圧変曲点が検出されていないセルがあることを検出すると、検出区間を、Q=[M-m,N+m](3)に更新するステップをさらに含んでもよい。
【0051】
ここで、Qは、今回の充電後に更新された検出区間であり、mは、所定の定数であり、0<m<1であり、MとNは、それぞれ今回の充電に適用される検出区間の下限値と上限値である。
【0052】
即ち、電圧変曲点が検出されていないセルがある場合に、今回の充電に適用される検出区間を上下に同じ幅拡張することにより、次回の充電中に、全てのセルの電圧変曲点を検出することができる可能性がある。
【0053】
図5は、さらなる例示的な実施例に係るLFP電池におけるセルの電圧変曲点を決定する方法のフローチャートである。図5の実施例において、LFP電池の充電制御方法は、以下のステップ1~ステップ6を含んでもよい。
【0054】
ステップ1では、不揮発性メモリ(Non-Volatile Memory、NVM)に予め記憶されたSOC及びW値を読み取り、検出区間を決定し、検出区間の初期値において、SOC=60%、W=5%である。
【0055】
ステップ2では、充電電流が0.2C(低速充電)よりも小さい場合、低速充電のmapテーブルに従って充電する。
【0056】
ステップ3では、充電電流が0.2C(急速充電)よりも大きく、実測されたSOC≧SOC-Wであり、かつ実測されたSOC≦SOC+Wである場合、充電電流を0.2Cに低下させる。
【0057】
ステップ4では、充電電流が0.2Cよりも大きく、実測されたSOC≦SOC-W又は実測されたSOC≧SOC+Wである場合、急速充電のmapテーブルに従って充電する。
【0058】
ステップ5では、充電が完了した後、各セルの電圧変曲点を検出する場合、変曲点情報を記録し、かつNVWにおける検出区間を更新することにより、SOC=実測SOC、P=5%である。
【0059】
ステップ6では、充電が完了した後、電圧変曲点が検出されていないセルがある場合、NVWにおける検出区間を更新し、Wを3%増加させ、即ちm=3%である。
【0060】
図6は、例示的な実施例に係るLFP電池の充電電流を調整する場合の概略図である。図6に示すように、横軸は、充電時間であり、SOC曲線において、55%~65%の区間範囲(検出区間)内に電流を調整し、電流曲線における小さい充電電流に対応し、電圧曲線における対応する時間帯内の曲線に対応し、その拡大図における星印で示される点は、電圧変曲点であり、電圧差分曲線において明らかな変曲点である。
【0061】
図7は、例示的な実施例に係るLFP電池におけるセルの電圧変曲点を決定する装置のブロック図である。図7に示すように、LFP電池におけるセルの電圧変曲点を決定する装置700は、監視モジュール701と、第1制御モジュール702と、第2制御モジュール703と、第1検出モジュール704とを含んでもよい。
【0062】
監視モジュール701は、所定の電流閾値よりも大きい第1電流値でLFP電池を充電し、かつLFP電池の充電状態SOCを監視する。
【0063】
第1制御モジュール702は、LFP電池のSOCが所定の検出区間外にある場合、第1電流値でLFP電池を充電する。
【0064】
第2制御モジュール703は、LFP電池のSOCが検出区間内にある場合、所定の電流閾値よりも小さい第2電流値でLFP電池を充電する。
【0065】
第1検出モジュール704は、LFP電池のSOCが検出区間にある場合、LFP電池における各セル充電中のパラメータ情報に基づいて、LFP電池における各セルの電圧変曲点を検出する。
【0066】
好ましくは、装置700は、第2検出モジュールと、第1決定モジュールと、第2決定モジュールとをさらに含んでもよい。
【0067】
第2検出モジュールは、第2電流値でLFP電池を充電する場合、LFP電池における各セルの電圧変曲点を検出する。
【0068】
第1決定モジュールは、各セルの電圧変曲点に基づいてLFP電池のSOCを決定する。
【0069】
第2決定モジュールは、LFP電池のSOCに基づいて検出区間を決定する。
【0070】
好ましくは、第2決定モジュールにおいて、Q=[SOC-W,SOC+W]に基づいて検出区間を決定する。
【0071】
ここで、SOCは、第2電流値で上記LFP電池を充電する場合、各セルの電圧変曲点に基づいて決定されたLFP電池のSOCであり、Qは、検出区間であり、Wは、所定の定数であり、0<W<1である。
【0072】
好ましくは、装置700は、更新モジュールをさらに含んでもよい。
【0073】
更新モジュールは、検出された各セルの電圧変曲点に基づいて、検出区間を更新する。
【0074】
好ましくは、更新モジュールは、決定サブモジュール及び第1更新サブモジュールを含む。
【0075】
決定サブモジュールは、LFP電池における全てのセルの電圧変曲点が検出されると、各セルの電圧変曲点に基づいてLFP電池のSOCを決定する。
【0076】
第1更新サブモジュールは、決定されたLFP電池のSOCに基づいて検出区間を更新する。
【0077】
好ましくは、第1更新サブモジュールにおいて、Q=[SOC-P,SOC+P]に基づいて検出区間を更新する。
【0078】
ここで、SOCは、今回の充電中に検出された各セルの電圧変曲点に基づいて決定されたLFP電池のSOCであり、Qは、今回の充電後に更新された検出区間であり、Pは、所定の定数であり、0<P<1である。
【0079】
好ましくは、更新モジュールは、第2更新サブモジュールを含む。
【0080】
第2更新サブモジュールは、LFP電池内に電圧変曲点が検出されていないセルがあることを検出すると、検出区間を、Q=[M-m,N+m]に更新する。
【0081】
ここで、Qは、今回の充電後に更新された検出区間であり、mは、所定の定数であり、0<m<1であり、MとNは、それぞれ今回の充電に適用される検出区間の下限値と上限値である。
【0082】
上記実施例における装置について、各モジュールが操作を実行する具体的な方式は、当該方法に関連する実施例において詳細に説明されており、ここで詳細に説明しない。
【0083】
上記技術手段によれば、LFP電池の大電流充電中に、所定の検出区間内に充電電流を調整し、セルの電圧変曲点を検出するために当該検出区間内に小電流で充電するように意図的に制御し、それ以外の区間に元の大電流で充電するポリシーに従って充電するように意図的に制御し、このように、もともと大電流で充電する場合にセルの電圧変曲点を検出することにより、LFP電池のSOHをタイムリーに更新し、電池をタイムリーに均等化することができる。
【0084】
本開示に係るコンピュータ読み取り可能な記憶媒体には、コンピュータプログラムが記憶され、当該プログラムがプロセッサにより実行されると、本開示に係る上記方法のステップを実現する。
【0085】
本開示に係る電子機器は、コンピュータプログラムが記憶されたメモリと、前記メモリにおける前記コンピュータプログラムを実行することにより、本開示に係る上記方法のステップを実現するプロセッサとを含む。
【0086】
本開示に係る車両は、LFP電池と、本開示に係るLFP電池におけるセルの電圧変曲点を決定する装置700とを含む。
【0087】
以上、図面を参照しながら、本開示の好ましい実施形態を詳細に説明したが、本開示は、上記実施形態における具体的な内容に限定されるものではなく、本開示の技術的概念の範囲内に、本開示の技術手段に対して複数の簡単な変更を行うことができ、これらの簡単な変更は、いずれも本開示の保護範囲内にある。
【0088】
なお、上記具体的な実施形態に説明された各具体的な技術的特徴は、矛盾しない場合に、任意の適当な方式で組み合わせることができる。不要な重複を回避するために、本開示は、可能なあらゆる組み合わせ方式を別途に説明しない。
【0089】
また、本開示の様々な実施形態は、任意に組み合わせることができ、本開示の構想から逸脱しない限り、本開示に開示されている内容と見なすべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7