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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】アンテナユニットおよび送信機
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/00 20060101AFI20240917BHJP
   H01Q 1/24 20060101ALI20240917BHJP
   H01Q 19/02 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
H01Q7/00
H01Q1/24 C
H01Q19/02
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023544964
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2021032611
(87)【国際公開番号】W WO2023032187
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2024-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000204033
【氏名又は名称】太平洋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】河合 智哉
【審査官】佐藤 当秀
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3330108(EP,A1)
【文献】特開2005-134942(JP,A)
【文献】国際公開第2009/060735(WO,A1)
【文献】特開2013-214940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 7/00
H01Q 1/24
H01Q 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを送信するように構成された送信機に備えられるアンテナユニットであって、
前記送信機の筐体内に配置され、かつ給電されたループアンテナと、
前記筐体の外側に配置された螺旋状無給電素子であって、前記ループアンテナと電磁気的に結合するとともに、開放端である両端を有する螺旋状無給電素子と、を含む、アンテナユニット。
【請求項2】
前記ループアンテナの使用周波数の波長をλとすると、前記螺旋状無給電素子の全長は0.3λ以上である、請求項1に記載のアンテナユニット。
【請求項3】
前記ループアンテナは、前記筐体内に配置された基板に実装され、かつ前記ループアンテナで囲まれた部分に開口面を備え、
前記螺旋状無給電素子における螺旋の軸線と、前記開口面に対する垂線とが平行となるように前記螺旋状無給電素子が配置されている、請求項1又は請求項2に記載のアンテナユニット。
【請求項4】
前記螺旋状無給電素子は、当該螺旋状無給電素子における螺旋の軸線の延びる方向において、互いに反対側の第1端および第2端を備え、
前記ループアンテナの使用周波数の波長をλとし、前記軸線の延びる方向において前記第1端から0.02λ離れた位置を第1指定位置とし、前記軸線の延びる方向において前記第2端から0.02λ離れた位置を第2指定位置とし、
前記ループアンテナは、前記第1指定位置と前記第2指定位置との間の範囲に配置されている、請求項1~請求項3のうちいずれか一項に記載のアンテナユニット。
【請求項5】
データを送信するように構成された送信機であって、
筐体と、
前記筐体内に配置され、かつ給電されたループアンテナと、
前記筐体の外側に配置された螺旋状無給電素子であって、前記ループアンテナと電磁気的に結合するとともに、開放端である両端を有する螺旋状無給電素子と、を含む、送信機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送信機に備えられるアンテナユニットおよび送信機に関する。
【背景技術】
【0002】
データを送信するように構成された送信機は、データを送信するための送信アンテナを備える。特許文献1には、送信アンテナであるアンテナ装置が、送信機としての携帯機のケースに内蔵されることが開示されている。特許文献1の携帯機は、車両のキーレスシステムに用いられる送信機である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-35644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の携帯機を他のシステムでの送信機に使用しようとする場合、つまり、既存の送信機を他の用途で使用しようとする場合がある。このとき、送信機の送信出力が足りない場合には、送信機の送信アンテナを含めたハードウエアの変更や電源を必要とする機器を追加せずに送信出力を上げることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の第一の態様によれば、データを送信するように構成された送信機に備えられるアンテナユニットであって、前記送信機の筐体内に配置され、かつ給電されたループアンテナと、前記筐体の外側に配置された螺旋状無給電素子であって、前記ループアンテナと電磁気的に結合するとともに、開放端である両端を有する螺旋状無給電素子と、を含む。
【0006】
本開示の第二の態様によれば、データを送信するように構成された送信機であって、筐体と、前記筐体内に配置され、かつ給電されたループアンテナと、前記筐体の外側に配置された螺旋状無給電素子であって、前記ループアンテナと電磁気的に結合するとともに、開放端である両端を有する螺旋状無給電素子と、を含む。
【0007】
これらによれば、送信機のループアンテナに送信電力が供給されると、ループアンテナの周囲に磁界が発生するとともに電界が発生してループアンテナからエネルギーが放射される。筐体の外では、ループアンテナの磁界と結合した螺旋状無給電素子に誘導電流が流れる。筐体の外に配置された素子を直線状にした場合を比較例とすると、螺旋状無給電素子が螺旋状であることから、螺旋状無給電素子には比較例よりも大きな誘導電流が流れる。
【0008】
そして、誘導電流の流れた螺旋状無給電素子において、両方の開放端付近と、その他の部位との間に電位差が生じるため、電界が螺旋状無給電素子にも発生する。その結果、ループアンテナから受けたエネルギーが、螺旋状無給電素子を利用して電波として効率良く放射される。送信機のループアンテナだけからエネルギーが電波として放射される場合と比べると、送信機からの送信出力を上げることができる。ループアンテナへの送信電力が同じなら、送信機からの通信距離を伸ばすことができる。したがって、既存の送信機であっても、螺旋状無給電素子を筐体の外に追加するだけで、送信機のループアンテナを含めたハードウエアを変更することなく、また、電源を必要とする機器を追加することなく、送信機の送信出力を上げることができる。
【0009】
上記アンテナユニットについて、前記ループアンテナの使用周波数の波長をλとすると、前記螺旋状無給電素子の全長は0.3λ以上であるとよい。
【0010】
上記アンテナユニットについて、前記ループアンテナは、前記筐体内に配置された基板に実装され、かつ前記ループアンテナで囲まれた部分に開口面を備え、前記螺旋状無給電素子における螺旋の軸線と、前記開口面に対する垂線とが平行となるように前記螺旋状無給電素子が配置されているとよい。
【0011】
上記アンテナユニットについて、前記螺旋状無給電素子は、当該螺旋状無給電素子における螺旋の軸線の延びる方向において、互いに反対側の第1端および第2端を備え、前記ループアンテナの使用周波数の波長をλとし、前記軸線の延びる方向において前記第1端から0.02λ離れた位置を第1指定位置とし、前記軸線の延びる方向において前記第2端から0.02λ離れた位置を第2指定位置とし、前記ループアンテナは、前記第1指定位置と前記第2指定位置との間の範囲に配置されているとよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】送信機および螺旋状無給電素子を示す斜視図である。
図2図1の送信機および螺旋状無給電素子を示す側面図である。
図3図1の送信機を示す分解斜視図である。
図4図1の送信機および螺旋状無給電素子を示す正面図である。
図5図1の螺旋状無給電素子からループアンテナまでの距離と、改善効果との関係を示すグラフ。
図6図1の螺旋状無給電素子の全長と改善効果との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
アンテナユニットおよび送信機の一実施形態について説明する。
【0014】
送信機は、例えば、タイヤ状態監視装置の送信機とほぼ同じ構成である。つまり、送信機は既存の送信機であるといえる。図示しないが、タイヤ状態監視装置は、車両の4つの車輪にそれぞれ装着される送信機と、車両に設置される受信機とを備えている。送信機は、車輪のホイールやタイヤに装着されている。また、送信機は、タイヤの内部空間に配置されている。
【0015】
送信機は、筐体と、タイヤ状態検出部と、基板と、送信回路と、ループアンテナと、を備えている。筐体は、タイヤ状態検出部、基板、送信回路およびループアンテナを収容している。送信機は、送信回路およびループアンテナにより、タイヤ状態検出部によって検出したタイヤの情報を含むデータ信号を受信機に無線送信する。タイヤ状態監視装置は、送信機から送信されるデータ信号を受信機で受信することで、タイヤの状態を監視する。
【0016】
タイヤ状態監視装置の送信機は、タイヤ内の水分や腐食性ガスといったタイヤ内の環境に耐え得るよう高い耐環境性能を有している。高い耐環境性能を持たせるため、送信機の筐体は密閉構造を有している。また、送信機は、車両走行中に常に遠心力を受けるホイールやタイヤに装着されるため、小型化かつ軽量化されている。送信機の小型化および軽量化のため、筐体が小型化されるとともに、ループアンテナも小型化されている。
【0017】
このように、密閉構造を有するとともに小型化された送信機は、屋外でも使用されるニーズがあり、例えば、路面温度測定システムの送信機として使用される。
【0018】
路面温度測定システムは、送信機を備える1つ以上の温度測定装置と、1つ以上の受信機と、を備える。1つ以上の温度測定装置は、屋外の道路に配置されている。温度測定装置は、道路の温度を測定するとともに、測定した温度をデータ信号として、送信機から受信機に無線送信する。路面温度測定システムに用いられる送信機は、タイヤ状態検出部の代わりに、温度センサを備えている。以下、路面温度測定システムの送信機に用いられるアンテナユニットに具体化して説明する。
【0019】
図1に示すように、アンテナユニット20は、データを送信するように構成された送信機10に備えられる。アンテナユニット20は、ループアンテナ25と、螺旋状無給電素子50とを備えている。
【0020】
<送信機>
図1図3に示すように、送信機10は、筐体11と、基板22と、給電部23と、ループアンテナ25と、螺旋状無給電素子50と、を備えている。なお、給電部23は模式的に図示しているため、図2では詳細な図示を省略している。ループアンテナ25は、筐体11内に配置されている。螺旋状無給電素子50は、筐体11の外側に配置されている。送信機10に備えられるアンテナユニット20は、ループアンテナ25と、螺旋状無給電素子50とを含む。
【0021】
<筐体>
筐体11は、基板22、給電部23およびループアンテナ25を収容している。
【0022】
筐体11は、筐体本体12と、筐体本体12の開口部を閉塞する平板状の蓋13とを備えている。筐体本体12は、第1壁14と、第2壁15と、を備えている。第1壁14は、平板状である。第2壁15は周壁である。第2壁15は、第1壁14の周縁から四角筒状に延びている。筐体本体12と蓋13とは固定されている。この固定により、筐体11は密閉構造を有している。この密閉構造により、水分やガス等が筐体11の外部から内部に侵入することが抑制されている。このため、筐体11は高い耐環境性能を有しているといえる。筐体11は、筐体本体12の内部に樹脂が充填されることによって密閉構造を有していてもよい。この場合、筐体11は、蓋13を備えていなくてもよい。また、筐体11の表面には電気的な接続、又は信号的な接続のための外部接続端子は設けられていない。このため、筐体11は外部から内部の基板22および給電部23への接続が不可能な構造である。
【0023】
<基板>
基板22は、表面に板面22aを備えている。基板22の板面22aには給電部23、および図示しない温度センサが実装されている。給電部23は、図示しない送信回路、および制御装置を含む電子部品である。給電部23は、温度センサが検出した信号を無線信号に変調した後、使用周波数の送信電力をループアンテナ25に出力する。使用周波数帯としては、例えば、LF帯、MF帯、HF帯、VHF帯、UHF帯、及び2.4GHz帯を挙げることができる。
【0024】
<ループアンテナ>
送信アンテナとしてのループアンテナ25は、導体の一例である金属線材を屈曲させることで製造されている。ループアンテナ25は、基部26と、2つの延設部27と、2つの端子接続部28とを備えている。送信機10の小型化および軽量化を目的として、ループアンテナ25は可能な限り小型化されている。
【0025】
2つの延設部27の各々は、基部26の各端部から基板22に向けて突出している。2つの端子接続部28の各々は、基部26とは反対側に位置する各延設部27の端部から互いの端子接続部28に近付くように突出している。詳細に図示しないが、ループアンテナ25の端子接続部28は給電部23と電気的に接続されている。ループアンテナ25は給電部23から給電される。
【0026】
ループアンテナ25は、筐体本体12の底に基部26が近接するとともに、延設部27が基部26の両端部から基板22に向けて突出する形状で筐体11内に収容されている。
【0027】
ループアンテナ25と基板22とは、開口領域S1を画定している。開口領域S1は、ループアンテナ25に囲まれた部分であるといえる。開口領域S1は、金属線材に沿う仮想面35に開口している。仮想面35は、開口領域S1を囲むように金属線材に沿って延びる端縁31を仮想的に延長した面である。ループアンテナ25は、ループアンテナ25で囲まれた部分に開口面36を備えている。開口面36は、基板22の板面22aに垂直である。開口面36に垂直な直線を垂線Lとする。なお、ループアンテナ25は、開口面36が板面22aに対し斜めになるように基板22に配置されていてもよい。
【0028】
<螺旋状無給電素子>
図1図2および図4に示すように、螺旋状無給電素子50は、送信機10を外側から囲んでいる。螺旋状無給電素子50は、導体の一例である金属線材製である。螺旋状無給電素子50は、金属線材を螺旋状に巻回して形成されている。螺旋状無給電素子50は、ループアンテナ25と電磁気的に結合できる位置に配置されている。電磁気的に結合できるとは、ループアンテナ25で生じた磁界によって、螺旋状無給電素子50に誘導電流を流すことができることを示す。
【0029】
螺旋状無給電素子50は、第1端51と、第2端52とを備えている。第1端51は、金属線材の一端であるとともに、第2端52は、第1端51の反対側に位置する、金属線材の他端である。螺旋状無給電素子50は、当該螺旋状無給電素子50における軸線Tの延びる方向において、互いに反対側の第1端51および第2端52を備えている。なお、軸線Tは、螺旋状無給電素子50の螺旋の中心を通る線である。螺旋状無給電素子50の第1端51および第2端52は開放端である。つまり、螺旋状無給電素子50は、開放端である両端を有する。螺旋状無給電素子50の第1端51および第2端52は、グランドに接続されていない。
【0030】
螺旋状無給電素子50を軸線Tの延びる方向から見ることを、螺旋状無給電素子50の正面視とする。螺旋状無給電素子50は、正面視で四角形状の開口領域S2を画定している。開口領域S2は、正面視で螺旋状無給電素子50によって囲まれた部分である。開口領域S2は、軸線Tの延びる方向における螺旋状無給電素子50の両端に開口しているといえる。螺旋状無給電素子50の正面視が四角枠状となるようにするため、金属線材は、軸線Tの延びる方向に離れながら折り曲げられている。金属線材を折り曲げて形成される四角枠は、螺旋状無給電素子50の正面視で全て同じ大きさである。
【0031】
螺旋状無給電素子50は、複数の第1辺部50aと、複数の第2辺部50bと、複数の第3辺部50cと、複数の第4辺部50dとを備えている。第1辺部50aは、螺旋状無給電素子50の正面視で上下方向に延びている。第2辺部50bは、第1辺部50aと第3辺部50cとの間で延びている。第2辺部50bは、水平方向に延びている。第3辺部50cは、第2辺部50bと第4辺部50dとの間で延びている。第3辺部50cは、鉛直方向に延びている。第4辺部50dは、第3辺部50cから水平方向に延びている。第4辺部50dは、第3辺部50cと、第1辺部50aとの間で延びている。
【0032】
軸線Tの延びる方向では、第1辺部50a同士、第2辺部50b同士、第3辺部50c同士、および第4辺部50d同士の各々が平行である。全ての第1辺部50aの長さは同じであるとともに、全ての第2辺部50bの長さは同じである。また、全ての第3辺部50cの長さは同じであるとともに、全ての第4辺部50dの長さは同じである。軸線Tの延びる方向に隣り合い、かつ平行な辺部同士の距離は、第1~第4辺部50a~50dで同じである。
【0033】
なお、螺旋状無給電素子50は、螺旋状であれば、軸線Tの延びる方向に隣り合う辺部同士は平行でなくてもよいし、隣り合う辺部同士の距離は若干異なっていてもよい。また、同じ辺部同士で長さが異なっていてもよい。
【0034】
送信機10は、螺旋状無給電素子50の正面視で開口領域S2内に位置する。送信機10は、螺旋状無給電素子50の複数の第4辺部50d上に載置されている。送信機10は、螺旋状無給電素子50の第1端51および第2端52の各々よりも内側に配置されている。軸線Tの延びる方向に沿った、第1端51から、当該第1端51に最も近い筐体11の表面までの距離をK1とする。軸線Tの延びる方向に沿った、第2端52から、当該第2端52に最も近い筐体11の表面までの距離をK2とする。距離K1と距離K2が同じ、又はほぼ同じとなるように、螺旋状無給電素子50の内側に送信機10が配置されている。
【0035】
螺旋状無給電素子50は、軸線Tと、ループアンテナ25の開口面36の垂線Lとが平行となるように送信機10の外側に配置されている。また、螺旋状無給電素子50およびループアンテナ25を軸線Tおよび垂線Lに沿って見た場合、螺旋状無給電素子50の内側に、ループアンテナ25が位置している。螺旋状無給電素子50は、ループアンテナ25と電磁気的に結合する位置に配置されている。
【0036】
螺旋状無給電素子50の軸線Tの延びる方向における第1端51と第2端52との間の距離を、螺旋状無給電素子50の軸線方向への長さとする。送信機10は、螺旋状無給電素子50の軸線方向への長さの中央点P上に、ループアンテナ25の図示しない中心軸が位置するように、配置されている。
【0037】
ループアンテナ25は、螺旋状無給電素子50の第1端51および第2端52の各々よりも内側に配置されている。軸線Tの延びる方向に沿った、第1端51から、第1端51に最も近いループアンテナ25の端縁31までの距離をK3とする。軸線Tの延びる方向に沿った、第2端52から、第2端52に最も近いループアンテナ25の端縁31までの距離をK4とする。距離K3と距離K4が同じ、又はほぼ同じとなるように、螺旋状無給電素子50内に送信機10が配置されている。なお、送信機10は、距離K3と距離K4が異なるように螺旋状無給電素子50内に配置されていてもよい。
【0038】
<アンテナユニットの機能>
給電部23からループアンテナ25に送信電力が入力されると、ループアンテナ25から放射されたエネルギーが、螺旋状無給電素子50を利用して増幅されるとともに、電波として放射される。
【0039】
<アンテナユニットの利得>
アンテナユニット20では、螺旋状無給電素子50を用いることで、ループアンテナ25単体の場合と比べて利得Ga[dBi]が高められている。なお、利得Ga[dBi]は、全方位に均等な感度を持つ無指向性アンテナの感度を基準としたときの最大感度方位の感度を倍数として表している。
【0040】
ループアンテナ25単体での利得Gaが-13[dBi]程度であったのに対し、ループアンテナ25と螺旋状無給電素子50とを備えるアンテナユニット20の利得Gaが-1[dBi]程度にまで高められる。このため、ループアンテナ25単体の場合に対する改善効果は12[dB]程度になっている。
【0041】
<螺旋状無給電素子とループアンテナとの位置>
ループアンテナ25と螺旋状無給電素子50との磁界による結合が強くなると、螺旋状無給電素子50に流れる誘導電流が大きくなるため、アンテナユニット20の改善効果[dB]が高められる。改善効果[dB]を高めるため、螺旋状無給電素子50に対してループアンテナ25を配置できる範囲を定めるのが好ましい。ループアンテナ25は、螺旋状無給電素子50の第1端51と第2端52の間で螺旋状無給電素子50の内側に配置されるのが好ましい。
【0042】
図5に示すように、螺旋状無給電素子50の中央点Pにループアンテナ25が配置されていると、改善効果が15[dB]程度と、最も大きくなるため特に好ましい。また、ループアンテナ25は、螺旋状無給電素子50の第1端51と第2端52の間に配置されていても、改善効果が14[dB]程度であるため、好ましい。
【0043】
なお、ループアンテナ25は、軸線Tの延びる方向に沿って、螺旋状無給電素子50の第1端51および第2端52のいずれか一方から離れるように、螺旋状無給電素子50の外側に配置されていてもよい。ここで、ループアンテナ25の使用周波数での波長を「λ」とする。
【0044】
第1端51および第2端52のいずれか一方からループアンテナ25までの距離が0.02λまでであれば、ループアンテナ25が、軸線Tの延びる方向に沿って螺旋状無給電素子50から離れていても、6[dB]程度の改善効果を得ることができる。なお、6[dB]程度の改善効果を得られることは、ループアンテナ25単体に比べて2倍の送信出力を得られることを示している。
【0045】
軸線Tの延びる方向において第1端51から0.02λ離れた位置を第1指定位置とする。軸線Tの延びる方向において第2端52から0.02λ離れた位置を第2指定位置とする。ループアンテナ25は、第1指定位置と第2指定位置との間の範囲に配置されているのが好ましい。なお、ループアンテナ25と螺旋状無給電素子50との距離が0.02λであるため、筐体11の一部分は螺旋状無給電素子50の内側に配置されている。
【0046】
<螺旋状無給電素子の全長>
アンテナユニット20の改善効果[dB]を高めるため、ループアンテナ25から放射された電波に螺旋状無給電素子50を共振させる。螺旋状無給電素子50を共振させるため、螺旋状無給電素子50の全長の範囲を定めるのが好ましい。螺旋状無給電素子50の第1端51と第2端52との間での金属線材そのものの長さを螺旋状無給電素子50の全長とする。
【0047】
図6に示すように、アンテナユニット20の改善効果[dB]を6[dB]以上とするため、螺旋状無給電素子50の全長は0.3λ以上が好ましい。螺旋状無給電素子50の全長が0.5λ付近で改善効果[dB]が最大になっているため、螺旋状無給電素子50の全長は、0.5λ付近が特に好ましい。
【0048】
<作用>
本実施形態の作用について説明する。
【0049】
ループアンテナ25に送信電力が供給されて、ループアンテナ25に電流が流れると、ループアンテナ25の周囲に磁界が発生するとともに電界が発生してループアンテナ25からエネルギーが放射される。筐体11の外では、ループアンテナ25からの磁界の影響を受けて螺旋状無給電素子50に誘導電流が流れる。そして、螺旋状無給電素子50において、第1端51付近および第2端52付近と、その他の部位とに電位差が生じる結果、螺旋状無給電素子50に電界が発生する。ループアンテナ25から受けたエネルギーが、電波として螺旋状無給電素子50を利用して効率良く放射される。
【0050】
実施形態の効果について説明する。
【0051】
(1)アンテナユニット20は、送信機10のループアンテナ25と、螺旋状無給電素子50とを備えている。また、送信機10は、筐体11と、ループアンテナ25と、螺旋状無給電素子50と、を含む。
【0052】
螺旋状無給電素子50はループアンテナ25を取り囲んでいるか、ループアンテナ25に近接している。全長を螺旋状無給電素子50と同じとする、直線状の無給電素子を比較例とする。この比較例と比べると、螺旋状無給電素子50は、ループアンテナ25からの磁界の影響を強く受けるため、螺旋状無給電素子50には比較例よりも大きな誘導電流が流れる。そして、ループアンテナ25から受けたエネルギーを、螺旋状無給電素子50を利用して電波として効率良く放射できる。このため、ループアンテナ25単体から、電波を放射する場合と比べると、送信機10からの送信出力を上げることができる。ループアンテナ25への給電量が同じなら、アンテナユニット20からの通信距離を伸ばすことができる。
【0053】
送信機10は、タイヤ状態監視装置の送信機としても使用可能な既存の送信機である。また、送信機10の筐体11は密閉構造を有するとともに、筐体11およびループアンテナ25は小型化されている。タイヤ状態監視装置の送信機として使用可能な送信機を、路面温度測定システムの送信機10として単体で使用したとき、その送信出力が足りない場合がある。この場合、筐体11の外に螺旋状無給電素子50を配置するだけで、ループアンテナ25を含めたハードウエアを変更することなく、また、電源を必要とする機器を追加しなくても、送信機10の送信出力を上げることができる。
【0054】
(2)螺旋状無給電素子50の全長を0.3λ以上に規定している。このように螺旋状無給電素子50の全長を規定することで、螺旋状無給電素子50をループアンテナ25からの電波と共振させやすくなる。このため、ループアンテナ25単体だけの場合と比べて、アンテナユニット20の利得Gaを高めて改善効果[dB]を高めることができる。その結果、送信機10の送信出力を上げることができる。
【0055】
(3)ループアンテナ25を螺旋状無給電素子50の外側に配置する場合、第1端51および第2端52のいずれか一方からループアンテナ25までの距離を0.02λまでとした。つまり、ループアンテナ25を、第1指定位置と第2指定位置との間の範囲に配置した。例えば、ループアンテナ25が第1指定位置と第2指定位置との間の範囲から外れた位置に配置されている場合と比べると、ループアンテナ25と螺旋状無給電素子50との磁界による結合が強くなる。その結果、送信機10からの送信出力を上げることができる。
【0056】
(4)螺旋状無給電素子50の軸線Tと、開口面36に対する垂線Lとが平行となるように螺旋状無給電素子50を配置した。軸線Tと垂線Lとが平行からずれるように螺旋状無給電素子50およびループアンテナ25の少なくとも一方が配置されている場合と比べると、ループアンテナ25と螺旋状無給電素子50との磁界による結合が強くなる。このため、送信機10からの送信出力を上げることができる。
【0057】
(5)螺旋状無給電素子50は、第1端51および第2端52を開放端とするとともに、給電部23とは電気的に接続されていない。開放端を有する螺旋状無給電素子50を、送信機10に直接電気的に接続する場合と比べると、ループアンテナ25に対する落雷や静電気による送信回路への影響を軽減できる。
【0058】
上記の各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記の各実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0059】
・ループアンテナ25および螺旋状無給電素子50を導体としての金属線材で形成したが、これに限らない。ループアンテナ25および螺旋状無給電素子50は、導体であれば、材質の限定はない。ループアンテナ25および螺旋状無給電素子50は、金属線や金属板等を用いた金属加工品によって形成されていてもよいし、単線および撚り線を含むリード線によって形成されていてもよい。又は、ループアンテナ25および螺旋状無給電素子50は、導電性樹脂や導電性ゴム材料で形成されていてもよいし、ループアンテナ25および螺旋状無給電素子50は、樹脂又はセラミック製の筐体11に対するメッキや導電性塗料によるパターンによって形成されていてもよい。なお、ループアンテナ25は、プリント基板やフレキシブル基板上の導体パターンによって形成されていてもよい。
【0060】
・送信機10の基板22に設けられる電子部品は、圧力センサなど、どのような電子部品でもよい。
【0061】
・送信機10は、路面温度測定システム以外のシステムの送信機として用いられてもよい。
【0062】
・螺旋状無給電素子50は、螺旋状無給電素子50の軸線Tと、ループアンテナ25の開口面36に対する垂線Lとが平行からずれるように配置されていてもよい。
【0063】
・ループアンテナ25を、第1指定位置と第2指定位置との間の範囲から外れた位置に配置してもよい。
【0064】
・ループアンテナ25は、一つの長方形状の板バネを屈曲させることで製造されていてもよい。この場合は、ループアンテナ25は、導体の一例であるステンレス製である。この場合も、ループアンテナ25は、基部26と、2つの延設部27と、2つの端子接続部28とを備えている。基部26、延設部27、および端子接続部28の各々は長板状である。
【0065】
・螺旋状無給電素子50の正面視で、螺旋状無給電素子50は四角枠状でなくてもよく、丸枠状、多角枠状であってもよい。
【0066】
・送信機10は受信機として使用してもよい。
【符号の説明】
【0067】
L…垂線、T…軸線、10…送信機、11…筐体、20…アンテナユニット、22…基板、25…ループアンテナ、35…開口面、50…螺旋状無給電素子、51…開放端としての第1端、52…開放端としての第2端。
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図6