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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】エレベータ装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/22 20060101AFI20240917BHJP
【FI】
B66B5/22 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2023546706
(86)(22)【出願日】2021-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2021033501
(87)【国際公開番号】W WO2023037538
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2024-01-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】酒井 悠至
(72)【発明者】
【氏名】久保 洋輔
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-083579(JP,A)
【文献】特表2012-520810(JP,A)
【文献】特開2013-189283(JP,A)
【文献】特開2009-227353(JP,A)
【文献】特開平04-365771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/00-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごと、
前記乗りかごに設けられる非常止め装置と、
前記乗りかごに設けられ、前記非常止め装置を駆動する駆動機構と、
を備えるエレベータ装置において、
前記駆動機構は、
回動可能に支持され、前記非常止め装置に接続され、前記非常止め装置を動作させるレバー部と、
可動部材と、
回動可能に支持され、前記レバー部と係合し、前記可動部材と回動可能に接続されるリンク部と、
前記リンク部が回動するように、前記リンク部を付勢するばね部と、
待機状態において、前記可動部材を吸引する電磁石部と、
を備え、
前記待機状態において、前記電磁石部の励磁が停止されると、前記ばね部の付勢力によって前記リンク部が回動し、回動する前記リンク部によって前記レバー部が回動すると、前記非常止め装置が動作し、
前記リンク部は、
前記可動部材に接続される連結部を有し、
前記連結部は、前記リンク部の長手方向に沿って、移動可能であることを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエレベータ装置において、
前記駆動機構は、
前記電磁石部と螺合する送りねじと、
前送りねじを回転駆動するモータと、
を備えることを特徴とするエレベータ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のエレベータ装置において、
前記送りねじと、前記リンク部と、前記ばね部とは、前記送りねじの長手方向と、前記リンク部の長手方向と、前記ばね部の長手方向とが、前記乗りかごの床面に平行になるように、配置されていることを特徴とするエレベータ装置。
【請求項4】
請求項1に記載のエレベータ装置において、
前記リンク部は、
前記連結部を前記長手方向に沿って付勢する付勢ばねを有することを特徴とするエレベータ装置。
【請求項5】
請求項に記載のエレベータ装置において、
前記電磁石部は、前記モータによって前記送りねじを回転すると、前記送りねじの軸方向に沿って移動することを特徴とするエレベータ装置。
【請求項6】
請求項に記載のエレベータ装置において、
前記可動部材は、前記電磁石部に吸着されることにより、前記電磁石部とともに移動することを特徴とするエレベータ装置。
【請求項7】
請求項に記載のエレベータ装置において、
前記駆動機構は、前記乗りかごの下部に設けられることを特徴とするエレベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動で作動する非常止め装置を備えるエレベータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ装置には、乗りかごの昇降速度を常時監視して、所定の過速状態に陥った乗りかごを非常停止させるために、ガバナおよび非常止め装置が備えられている。一般に、乗りかごとガバナはガバナロープによって結合されており、過速状態を検出すると、ガバナがガバナロープを拘束することで乗りかご側の非常止め装置を動作させ、乗りかごを非常停止するようになっている。
【0003】
このようなエレベータ装置では、昇降路内に長尺物であるガバナロープを敷設するため、省スペース化および低コスト化が難しい。また、ガバナロープが振れる場合、昇降路内における構造物とガバナロープとが干渉しやすくなる。
【0004】
これに対し、ガバナロープを用いない非常止め装置が提案されている。
【0005】
ガバナロープを用いない非常止め装置に関する従来技術として、特許文献1に記載された技術が知られている。
【0006】
本従来技術では、乗りかご上に、非常止め装置を駆動する駆動軸と、駆動軸を作動させる作動機構が設けられる。作動機構は、接続片を介して駆動軸に機械的に接続される可動鉄心と、可動鉄心を吸着する電磁石を備えている。駆動軸は、駆動バネによって付勢されているが、通常時は、電磁石が通電され可動鉄心が吸着されているため、作動機構によって駆動軸の動きが拘束されている。
【0007】
非常時には、電磁石が消磁されて駆動軸の拘束が解かれ、駆動バネの付勢力によって駆動軸が駆動される。これにより、非常止め装置の引上げロッドが引き上げられるので、非常止め装置が動作して、乗りかごが非常停止する。
【0008】
また、非常止め装置を通常状態に復帰させるときには、非常時に移動した可動鉄心に、電磁石を移動して近付ける。電磁石が可動鉄心に当接したら、電磁石を通電し、可動鉄心を電磁石に吸着する。さらに、可動鉄心が電磁石に吸着された状態で、電磁石を駆動して、可動鉄心および電磁石を通常時の待機位置に戻す。なお、電磁石の移動機構は、電磁石が螺合する送りねじ軸と、送りねじ軸を回転させるモータとを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】国際公開第2020/110437号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記従来技術では、駆動軸を含む駆動機構および作動機構の占有スペースが大きくなる。このため、乗りかごにおける駆動機構および作動機構の設置の自由度が制限される。
【0011】
そこで、本発明は、占有スペースを低減でき、省スペース化に適した、電動の非常止め装置を備えるエレベータ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明によるエレベータ装置は、乗りかごと、乗りかごに設けられる非常止め装置と、乗りかごに設けられ、非常止め装置を駆動する駆動機構と、を備えるものであって、駆動機構は、回動可能に支持されるとともに非常止め装置に接続されて非常止め装置を動作させるレバー部と、可動部材と、回動可能に支持されるとともに駆動レバー部と係合するとともに可動部材と回動可能に接続されるリンク部と、リンク部が回動するように、リンク部を付勢するばね部と、待機状態において、可動部材を吸引する電磁石部と、を備え、待機状態において、電磁石部の励磁が停止されると、ばね部の付勢力によってリンク部が回動し、回動するリンク部によってレバー部が回動すると非常止め装置が動作し、リンク部は、可動部材に接続される連結部を有し、連結部は、リンク部の長手方向に沿って、移動可能である
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、非常止め装置を駆動する駆動機構が占有するスペースを低減できる。
【0014】
上記した以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例であるエレベータ装置の概略構成図である。
図2図1(A矢視)に示す非常止め装置200および電動駆動機構100の機械的構造を示す構成図である。
図3】非常止め装置200が非動作状態である場合における、非常止め装置200および電動駆動機構100の機械的構造を示す構成図である。
図4】非常止め装置200が動作状態である場合における、非常止め装置200および電動駆動機構100の機械的構造を示す構成図である。
図5】リンク部11の内部構造を示す、非常止め装置200および電動駆動機構100の構成図である。
図6】リンク部11の内部構造を示す、非常止め装置200が非動作状態である場合における、非常止め装置200および電動駆動機構100の機械的構造を示す構成図である。
図7】リンク部11の内部構造を示す、非常止め装置200が動作状態である場合における、非常止め装置200および電動駆動機構100の機械的構造を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態であるエレベータ装置について、実施例により、図面を用いながら説明する。なお、各図において、参照番号が同一のものは同一の構成要件あるいは類似の機能を備えた構成要件を示している。
【0017】
図1は、本発明の一実施例であるエレベータ装置の概略構成図である。
【0018】
本エレベータ装置は、昇降路上部に設置される巻上機を有し、巻上機におけるトラクションシーブ1並びに方向転換プーリ8に巻き掛けられる主ロープ2の一端部に乗りかご3が連結され、主ロープ2の他端部に釣り合いおもり4が連結されている。
【0019】
乗りかご3は、昇降路内において、主ロープ2によって吊られる。電動機によって巻上機が駆動されてトラクションシーブ1が回転すると、主ロープ2が駆動される。これにより、乗りかご3は、昇降路内に設置される一対のかご用ガイドレール5A,5Bに沿って、昇降路内を昇降する。また、釣り合いおもり4は、昇降路内に設置される一対のおもり用ガイドレール6A,6Bに沿って、乗りかご3とは反対方向に、昇降路内を昇降する。
【0020】
乗りかご3の下部には、非常時に、制動子(後述)によって、かご用ガイドレール5A,5Bを挟持して、乗りかご3の昇降を停止させる非常止め部20が配置されている。なお、本実施例では、非常止め部20は、乗りかご3の下部の左右に一台ずつ設けられる。
【0021】
図1中に併記されるA矢視図が示すように、非常止め部20は、制動子を有する非常止め装置200と、非常止め装置200を動作させる電動駆動機構100を有する。左右一対の非常止め部20の各々が、非常止め装置200を備える。電動駆動機構100は、左右一対の非常止め部20の一方に設けられる。本実施例では、かご用ガイドレール5A側の非常止め部20が電動駆動機構100を備えている。かご用ガイドレール5B側の非常止め部20における非常止め装置200は、図示しないリンク機構によって、かご用ガイドレール5A側の非常止め部20における非常止め装置200に連動して動作する。
【0022】
図示しない速度検出装置が、乗りかご3に備えられ、昇降路内における乗りかご3の昇降速度を常時検出する。したがって、速度検出装置により、乗りかご3の昇降速度が所定の過速度を超えたことを検出することができる。
【0023】
本実施例では、速度検出装置は、画像センサを備え、画像センサによって取得される、かご用ガイドレール5A,5Bの表面状態の画像情報に基づいて、乗りかご3の速度を検出する。例えば、速度検出装置は、所定時間における画像特徴量の移動距離から速度を算出する。
【0024】
なお、速度検出装置は、乗りかごの移動とともに回転するロータリーエンコーダの出力信号に基づいて、乗りかごの速度を算出してもよい。
【0025】
非常止め装置200が備える一対の制動子(後述)は、制動位置および非制動位置の間で可動であり、制動位置において、かご用ガイドレール5A,5Bを挟持する。さらに、非常止め装置200は、乗りかご3の下降により乗りかご3に対して相対的に上昇すると、制動子とかご用ガイドレール5A,5Bとの間に作用する摩擦力により、制動力を生じる。これにより、非常止め装置200は、乗りかご3が過速状態に陥ったときに動作し、乗りかご3を非常停止させる。
【0026】
本実施例のエレベータ装置は、ガバナロープを用いない、いわゆるロープレスガバナシステムを備えるものであり、乗りかご3の昇降速度が定格速度を超えて第1過速度(例えば、定格速度の1.3倍を超えない速度)に達すると、駆動装置(巻上機)の電源およびこの駆動装置を制御する制御装置の電源が遮断される。また、乗りかご3の下降速度が第2過速度(例えば、定格速度の1.4倍を超えない速度)に達すると、乗りかご3に設けられる電動駆動機構100が非常止め装置200を動作させて、乗りかご3が非常停止される。
【0027】
本実施例において、ロープレスガバナシステムは、前述の速度検出装置と、速度検出装置の出力信号に基づいて乗りかご3の過速状態を判定する安全制御装置と、から構成される。この安全制御装置は、速度検出装置の出力信号に基づいて乗りかご3の速度を計測し、計測される速度が第1過速度に達したと判定すると、駆動装置(巻上機)の電源およびこの駆動装置を制御する制御装置の電源を遮断するための指令信号を出力する。また、安全制御装置は、計測される速度が第2過速度に達したと判定すると、電動駆動機構100を作動するための指令信号を出力する。
【0028】
以下、電動駆動機構100の構造および動作について説明する。まず、図2を用いて、構造について説明する。次に、図3および図4を用いて、動作について説明する。
【0029】
図2は、図1(A矢視)に示す非常止め装置200および電動駆動機構100の機械的構造を示す構成図である。図2中では、上面図が併記される。
【0030】
非常止め装置200では、電動駆動機構100が作動すると、ロッド202が図中上方へ駆動される。このとき、ロッド202に係合する一対の楔状の制動子201が、図中で上方の制動位置まで上げられ、制動位置においてかご用ガイドレール(図1における5A,5B)を挟持する。これにより、非常止め装置200が動作する。なお、本実施例における非常止め装置200は、公知技術によるものである。
【0031】
電動駆動機構100は、ロッド202を駆動するL字状の駆動レバー12を有する。駆動レバー12は、乗りかご3の下方において位置が固定されている第1の作動軸19から延び、互いに垂直に配置される二つの短冊状部材からなる。二つの短冊状部材の一方における第1の作動軸19とは反対側の端部には、非常止め装置200のロッド202が接続される。二つの短冊状部材の他方における第1の作動軸19とは反対側の端部は、切り欠け部12Cを有する。駆動レバー12は、切り欠け部12Cにおいて、後述するリンク部11が備える連結軸部13を介して、このリンク部11と係合する。駆動レバー12は、リンク部11により、後述する電動作動部(34~37,41,42)に連動して、回動する。
【0032】
電動作動部は、リンク部11に回動可能に係合する可動部材34と、可動部材34を電磁力によって吸着する電磁石部35とを有する。電磁石部35は、磁極面が可動部材34に対向する2個の電磁石コア部35Aと、2個の電磁石コア部35Aが固定される電磁石支持板35Bを有する。可動部材34は、電磁石コア部35Aの磁極面に吸着される吸着部34Aと、係合ピン20を介してリンク部11に回動可能に接続される接続部34Bとを有する。係合ピン20は、リンク部11の端部における長孔15内に位置する。
【0033】
なお、可動部材34において、少なくとも吸着部34Aは磁性体からなる。
【0034】
電動作動部は、さらに、第1の支持部41および第2の支持部42によって回転可能に支持される送りねじ36(例えば、台形ねじ)と、送りねじ36を回転駆動するモータ37とを有する。送りねじ36は、電磁石部35が備える送りナット35Cと螺合する。モータ37が送りねじ36を回転させると、回転する送りねじ36と電磁石部35が備える送りナット35Cとによって、モータ37の回転が、送りねじ36の軸方向に沿った電磁石部35の直線的移動に変換される。
【0035】
上述の電動作動部と駆動レバー12を連動させるリンク部11は、長手方向の略中央部において、乗りかご3の下方において位置が固定されている第2の作動軸18によって回動可能に支持される。リンク部11は、長手方向の両端部の内、一端部において、係合ピン20を介して可動部材34と係合し、他端部において連結軸部13を介して駆動レバー12と係合する。
【0036】
リンク部11は、ばね部14(圧縮ばね)によって付勢される。ばね部14の一端部は、乗りかご3の下方において位置が固定されている。ばね部14の他端部は、連結軸部13と第2の作動軸18との間において、リンク部11に接続される。
【0037】
リンク部11が回動する時、係合ピン20と第2の作動軸18との距離が変化する。このとき、係合ピン20が長孔15の長さの範囲内において、相対的に移動可能であるため、リンク部11は円滑に回動できるとともに、リンク部11に係合する可動部材34は円滑に移動できる。
【0038】
また、リンク部11が回動する時、係合ピン20と第2の作動軸18との距離が変化する。このとき、連結軸部13が、駆動レバー12の切り欠け部12Cの長さの範囲内において、相対的に移動可能であるため、リンク部11および駆動レバー12は円滑に回動できる。
【0039】
本実施例によれば、非常止め装置200の電動駆動機構100の占有スペースを低減できる。したがって、電動駆動機構100を、乗りかご3の下部における狭隘な空間内に設置することができる。
【0040】
本実施例では、電動作動部(34~37,41,42)と、リンク部11と、ばね部14とが、送りねじ36の長手方向すなわち電動作動部の長手方向と、リンク部11の長手方向と、ばね部14の長手方向とが、いずれも、かご床50の平面に平行になるように、配置される。これにより、電動駆動機構100の占有スペースを確実に低減できる。
【0041】
なお、本実施例では、リンク部11の回動方向(水平方向)と、非常止め装置200の制動子201の移動方向(上下方向)とが、互いに異なる。これに対し、本実施例では、駆動レバー12により、リンク部11の動きが、制動子201が係合するロッド202の上下方向の動きに変換される。したがって、電動駆動機構100の占有スペースを低減しながらも、電動駆動機構100の構成を複雑化することなく非常止め装置200を動作させることができる。
【0042】
図3は、非常止め装置200が非動作状態である場合における、非常止め装置200および電動駆動機構100の機械的構造を示す構成図である。図2と同様に、上面図が併記される。なお、非常止め装置200が非動作状態であるから、電動作動部(34~37,41,42)を含む電動駆動機構は非作動状態(待機状態)にある。すなわち、エレベータ装置は通常の稼動状態にある。
【0043】
図3に示すように、待機状態においては、可動部材34が、励磁されている電磁石部35に吸着されている。電磁石部35は、待機状態における所定位置に位置している。ばね部14は、リンク部11によって圧縮され、リンク部11を、回動するように付勢している。可動部材34が電磁石部35に吸着されているため、ばね部14の付勢力に抗して、可動部材34およびリンク部11の動きが拘束されている。
【0044】
図4は、非常止め装置200が動作状態である場合における、非常止め装置200および電動駆動機構100の機械的構造を示す構成図である。図2と同様に、上面図が併記される。なお、非常止め装置200が動作状態であるから、電動作動部(34~37,41,42)を含む電動駆動機構は作動状態にある。すなわち、エレベータ装置は停止状態にある。
【0045】
前述の待機状態において、図示しない安全制御装置からの指令により、電磁石部35の励磁が停止されると、可動部材34に作用する吸引力が消失するので、ばね部14の付勢力によってリンク部11が第2の作動軸18の回りに回動する。このとき、リンク部11に接続されている可動部材34は、送りねじ36の長手方向に沿って、電磁石部35から離れる方向に移動する。なお、電磁石部35は、待機状態における所定位置に留まる。
【0046】
リンク部11が回動すると、リンク部11に係合している駆動レバー12が、第1の作動軸19の回りに回動して、ロッド202を図中上方向へ駆動する。ロッド202が駆動されると、ロッド202に係合する制動子201が、図4に示すように、制動位置まで移動する。
【0047】
ここで、図4に示す作動状態から図3に示す待機状態に復帰させる場合における、電動駆動機構の動作について説明する。
【0048】
電動駆動機構を待機状態に復帰させるには、まず、モータ37を駆動して送りねじ36を回転させる。回転する送りねじ36と電磁石部35が備える送りナット35Cとによって、モータ37の回転が、送りねじ36の軸方向に沿った電磁石部35の直線的移動に変換される。これにより、電磁石部35は、図4に示すような、動作位置に位置する可動部材34に近づいて、可動部材34に接触する。
【0049】
図示されないスイッチまたはセンサ、もしくはモータ37の負荷電流によって、電磁石部35と可動部材34の接触が検知されたら、電磁石部35を励磁するとともに、モータ37を停止する。可動部材34は、電磁力が作用して、電磁石部35に吸着される。可動部材34が電磁石部35に吸着されると、電磁石部35の励磁を継続しながら、モータ37の回転方向を逆にして、送りねじ36を逆転させる。これにより、可動部材34は、電磁石部35とともに、図3に示すような、待機状態における所定位置まで移動する。
【0050】
図示されないスイッチまたはセンサなどによって、電磁石部35または可動部材34が待機状態における所定位置に到達したことが検出されると、モータ37が停止される。電磁石部35の励磁は継続される。
【0051】
以下、リンク部11の内部構造および動作について説明する。まず、図5を用いて、内部構造について説明する。次に、図6および図7を用いて、動作について説明する。なお、図5,6および7は、それぞれ、図2,3および4において、リンク部11の内部構造を記載した図に相当する。
【0052】
図5は、リンク部11の内部構造を示す、非常止め装置200および電動駆動機構100の構成図である。図5中では、図2と同様に上面図が併記されるとともに、A矢視図が併記される。
【0053】
図5におけるA矢視図が示すように、リンク部11においては、短冊状の板状部材11Aおよび11Bが、これらの長手方向をそろえて、互いに平行に対向する。
【0054】
リンク部11は、板状部材11Aおよび11Bの間の空間内において、係合ピン20を介して可動部材34の接続部34Bに回動可能に接続される連結部38を有している。連結部38からは、付勢ばね11Dに挿通される軸部が延びている。この軸部は、板状部材11Aおよび11Bの間の空間内において位置が固定されている調整ねじ11Eの頭部における穴部に移動可能に嵌合されている。
【0055】
なお、調整ねじ11Eのねじ部は、板状部材11Aおよび11Bの間の空間内において、板状部材11Aおよび11Bに対して固定されているナット11Fと螺合している。これにより、調整ねじ11Eの位置が調整可能である。
【0056】
リンク部11が回動すると、係合ピン20と第2の作動軸18の距離が変化する。このため、リンク部11における連結部38の位置が固定されていると、リンク部11の円滑な回動が難しくなる恐れがある。
【0057】
これに対し、本実施例では、付勢ばね11Dによってリンク部11の長手方向に沿った付勢力が与えられる連結部38が、リンク部11の長手方向に沿って移動可能である。したがって、リンク部11の回動に応じて、リンク部11における係合ピン20と第2の作動軸18の距離が調整される。したがって、リンク部11は、円滑に回動する。
【0058】
なお、連結部38は、付勢ばね11Dによる付勢力により、板状部材11Aおよび11Bに対する動きが抑制されている。したがって、送りねじ36の回転軸に垂直な方向における、連結部38と送りねじ36との位置関係は安定に保たれる。したがって、リンク部11は、安定して、円滑に回動する。
【0059】
図6は、リンク部11の内部構造を示す、非常止め装置200が非動作状態である場合における、非常止め装置200および電動駆動機構100の機械的構造を示す構成図である。図2と同様に、上面図が併記される。なお、非常止め装置200が非動作状態であるから、電動作動部(34~37,41,42)を含む電動駆動機構は非作動状態(待機状態)にある。すなわち、エレベータ装置は通常の稼動状態にある。
【0060】
待機状態では、リンク部11は、図5における位置から、第2の作動軸18の回りに、図中、時計回りに回動する。このとき、連結部38は、リンク部11内において、リンク部11の長手方向に沿って、係合ピン20と第2の作動軸18との距離を増やすように移動する。したがって、リンク部11は、図5における位置と図6に示す待機状態における位置との間で、円滑に回動できる。
【0061】
図7は、リンク部11の内部構造を示す、非常止め装置200が動作状態である場合における、非常止め装置200および電動駆動機構100の機械的構造を示す構成図である。図2と同様に、上面図が併記される。なお、非常止め装置200が動作状態であるから、電動作動部(34~37,41,42)を含む電動駆動機構は作動状態にある。すなわち、エレベータ装置は停止状態にある。
【0062】
作動状態では、リンク部11は、図5における位置から、第2の作動軸18の回りに、図中、反時計回りに回動する。このとき、連結部38は、リンク部11内において、リンク部11の長手方向に沿って、係合ピン20と第2の作動軸18との距離を増やすように移動する。したがって、リンク部11は、図5における位置と図7に示す作動状態における位置との間で、円滑に回動できる。
【0063】
なお、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。
【0064】
例えば、非常止め装置200が、かご上方に設置される場合、電動駆動機構100はかご上に設けてもよい。
【0065】
また、エレベータ装置は、機械室を有するものでもよいし、いわゆる機械室レスエレベータでもよい。
【符号の説明】
【0066】
1…トラクションシーブ、2…主ロープ、3…乗りかご、4…釣り合いおもり、5A,5B…かご用ガイドレール、6A,6B…おもり用ガイドレール、8…方向転換プーリ、11…リンク部、11A,11B…板状部材、11D…付勢ばね、11E…調整ねじ、11F…ナット、12…駆動レバー、12C…切り欠け部、13…連結軸部、14…ばね部、15…長孔、18…第2の作動軸、19…第1の作動軸、20…係合ピン、34…可動部材、34A…吸着部、34B…接続部、35…電磁石部、35A…電磁石コア部、35B…電磁石支持板、35C…送りナット、36…送りねじ、37…モータ、38…連結部、41…第1の支持部、42…第2の支持部、50…かご床、100…電動駆動機構、200…非常止め装置、201…制動子、202…ロッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7