(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61D 17/12 20060101AFI20240917BHJP
B61D 17/08 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
B61D17/12
B61D17/08
(21)【出願番号】P 2024032385
(22)【出願日】2024-03-04
【審査請求日】2024-03-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 大輔
(72)【発明者】
【氏名】一ノ瀬 賢太
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大貴
(72)【発明者】
【氏名】國永 康晴
(72)【発明者】
【氏名】中宇地 真人
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-050850(JP,A)
【文献】特開2015-110406(JP,A)
【文献】特開2009-143447(JP,A)
【文献】特開平07-149232(JP,A)
【文献】国際公開第2023/285436(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 17/12
B61D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
台枠と、前記台枠の枕木方向の両端部に接合される一対の側構体と、一対の前記側構体の上端に接合される屋根構体と、を有する鉄道車両において、
前記屋根構体は、
一対の前記側構体を横架する第1部位と、
前記第1部位の枕木方向の外側端部から屈曲して上側に向かって立ち上がる第3部位と、により形成される雨樋部と、
枕木方向の内側端部が前記第3部位に接続すると共に前記第1部位よりも枕木方向の外方に向かって突出し、前記側構体の上端部と接合する第2部位と、
を備え、
前記側構体の上端部と前記屋根構体の前記第2部位との接合部が、前記
雨樋部よりも上側の位置に配置されていること、
を特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1の鉄道車両において、
前記側構体は、前記接合部から枕木方向の外方に向かって延伸しつつ、前記鉄道車両の外側に向かって湾曲する湾曲部を備え、
前記湾曲部では、前記接合部側から順に、第1湾曲部、第2湾曲部が形成されており、
前記第1湾曲部の曲げ半径が、前記第2湾曲部の曲げ半径よりも小さいこと、
を特徴とする鉄道車両
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、台枠と、台枠の枕木方向の両端部に接合される一対の側構体と、一対の側構体の上端に接合される屋根構体と、を有する鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、屋根構体の突出部の先端部が、溶接により側構体の側外板のフランジ部に接合される鉄道車両が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される鉄道車両においては、側構体と屋根構体との接合部(すなわち、側構体の側外板のフランジ部と屋根構体の突出部との接合部)は、側構体の側外板の第2湾曲部から屋根構体側に向かって立ち下がる立下り面の下端部の位置であって、かつ、屋根構体における垂木の部位と同じくらいの高さの位置に配置されている。
【0005】
このようにして、側構体と屋根構体との接合部は、側構体の側外板の立下り面と屋根構体における垂木の部位との間に挟まれる位置に配置されている。そのため、鉄道車両の製造時やメンテナンス時において側構体と屋根構体との接合部の溶接を行うときに、側構体の側外板の立下り面や屋根構体における垂木の部位に注意を払いながら作業を行う必要があり、作業性が低下するおそれがある。したがって、側構体と屋根構体との接合部にて、溶接の作業性の低下により、溶接品質が十分に得られないおそれがある。
【0006】
そこで、本開示は上記した課題を解決するためになされたものであり、側構体と屋根構体との接合部にて、溶接の作業性を向上させて、良好な溶接品質を確保できる鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の鉄道車両は、以下の構成を備えている。
(1)台枠と、前記台枠の枕木方向の両端部に接合される一対の側構体と、一対の前記側構体の上端に接合される屋根構体と、を有する鉄道車両において、前記屋根構体は、一対の前記側構体を横架する第1部位と、前記第1部位の枕木方向の外側端部から屈曲して上側に向かって立ち上がる第3部位と、により形成される雨樋部と、枕木方向の内側端部が前記第3部位に接続すると共に前記第1部位よりも枕木方向の外方に向かって突出し、前記側構体の上端部と接合する第2部位と、を備え、前記側構体の上端部と前記屋根構体の前記第2部位との接合部が、前記雨樋部よりも上側の位置に配置されていること、を特徴とする。
【0008】
本開示においては、側構体と屋根構体との接合部の溶接を行うときに、側構体や屋根構体(の第1部位)に注意を払う必要性が軽減され、溶接の作業性が向上する。そのため、側構体と屋根構体との接合部において、溶接欠陥が生じることを防ぐことができ、良好な溶接品質を確保できる。したがって、側構体と屋根構体との接合部における水密性を向上させることができる。ゆえに、例えば、トンネル通過時に車内の気圧の変化などが生じたとしても、側構体と屋根構体との接合部から車内へ雨水などが浸入することを防止できる。
また、側構体と屋根構体との接合部が雨樋部よりも上側に配置されているので、雨樋部にある雨水は、側構体と屋根構体との接合部まで到達し難くなる。そのため、雨樋部にある雨水が側構体と屋根構体との接合部から鉄道車両の車内へ浸入することを防止できる。
【0009】
(2)(1)の鉄道車両において、前記側構体は、前記接合部から枕木方向の外方に向かって延伸しつつ、前記鉄道車両の外側に向かって湾曲する湾曲部を備え、前記湾曲部では、前記接合部側から順に、第1湾曲部、第2湾曲部が形成されており、前記第1湾曲部の曲げ半径が、前記第2湾曲部の曲げ半径よりも小さいこと、が好ましい。
【0010】
本開示においては、側構体の湾曲部にて、第1湾曲部と第2湾曲部とにより、2段階の曲げ半径を設定している。そして、第1湾曲部の曲げ半径が、第2湾曲部の曲げ半径よりも小さくなっている。そのため、第1湾曲部の剛性が、第2湾曲部の剛性よりも高くなっている。したがって、側構体と屋根構体との接合部の溶接を行うときに側構体の湾曲部に生じる溶接歪みを、第1湾曲部により食い止めることができる。ゆえに、側構体と屋根構体との接合部の溶接を行った後において、側構体の湾曲部にうねりが生じることを抑制できるので、側構体の美観を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示の鉄道車両によれば、側構体と屋根構体との接合部にて、溶接の作業性を向上させて、良好な溶接品質を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】
図1の鉄道車両の車両構体を軌道方向から見た断面(A-A断面)を模式的に示す図である。
【
図3】
図1のB-B断面において、鉄道車両の枕木方向の両端部のうち、一方の端部における溶接部とその周辺を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の鉄道車両の実施形態について説明する。
【0016】
[鉄道車両の構成について]
まず、本実施形態に係る鉄道車両1の構成について説明する。
【0017】
図1に示すように、鉄道車両1は、軌道101上を走行する車両であり、車両構体11と台車12を有する。
【0018】
図1と
図2に示すように、車両構体11は、台枠21と、一対の切妻構体22と、一対の側構体23A,23Bと、屋根構体24と、により6面体をなすように構成されている。
【0019】
台枠21は、鉄道車両1の床部を形成している。一対の切妻構体22は、台枠21の軌道方向の両端部に立設されることで、鉄道車両1の連結部を形成している。一対の側構体23A,23Bは、台枠21の枕木方向の両端部に接合されて立設されることで、車両構体11の側面11aを形成している。屋根構体24は、切妻構体22および側構体23A,23Bの上端部に接合されることで、車両構体11の屋根面11bを形成している。
【0020】
また、車両構体11においては、
図2に示すように、側面11aの上端部から屋根面11bに向かって緩やかに湾曲している。さらに、車両構体11には、
図1に示すように、内部の客室に通じる乗客乗降口31および窓32が設けられている。
【0021】
台車12は、空気ばね13を介して車両構体11を支持している。
【0022】
なお、本実施形態の鉄道車両1は、
図1に示す例では軌道方向の両端部に連結部が形成される中間車両であるが、これに限定されるものではなく、先頭車両であっても良い。鉄道車両1が先頭車両である場合には、台枠21の軌道方向の両端部の内の一方に、鉄道車両1の先頭部を形成する先頭妻構体が立設され、他方の端部に、鉄道車両1の連結部を形成する切妻構体22が立設される。
【0023】
[側構体および屋根構体の構造について]
次に、側構体23A,23Bおよび屋根構体24の構造について、説明する。なお、
図3と
図4は、鉄道車両1の枕木方向の両端部のうち、一方の端部(側構体23A側の端部)を図示したものであるが、他方の端部(側構体23B側の端部)においても同様の構成である。そこで、以下の説明では、側構体23A側を代表して説明する。
【0024】
図3と
図4に示すように、屋根構体24は、垂木41と、屋根外板42と、桁材43とを備えている。
【0025】
垂木41は、炭素鋼、ステンレス鋼やアルミ合金などの金属により、枕木方向の中央部が上方に膨出したアーチ状に形成されており、鉄道車両1の枕木方向に沿って延在することで、一対の側構体23A,23Bを横架している(すなわち、
図2に示すように、横方向に架け渡している)。この垂木41は、鉄道車両1の軌道方向に所定の間隔(例えば0.4mの間隔)を持って、複数本設けられている。
【0026】
屋根外板42は、ステンレス鋼などにより形成されており、板厚が0.6~2.5mm程度の板材を用いて、鉄道車両1の軌道方向に沿って長尺に形成されたものであり、車両構体11の外側の表面である屋根面11bを形成している。この屋根外板42は、横架部421と、突出部422と、立設部423を備えている。
【0027】
横架部421は、枕木方向に切断した断面が、垂木41の形状に沿ったアーチ状に形成されており、垂木41に鉄道車両1の内側から支持されている。このようにして、横架部421は、垂木41と同様に、枕木方向の中央部が上方に膨出したアーチ状に形成されており、鉄道車両1の枕木方向に沿って延在することで、一対の側構体23A,23Bを横架している。なお、垂木41および屋根外板42の横架部421は、本開示の「第1部位」の一例である。
【0028】
突出部422は、枕木方向の端部に、垂木41により支持される横架部421よりも、枕木方向の外方に向かって略水平に突出している。この突出部422は、後述するように、溶接部61において、側構体23Aの側外板52のフランジ部523と接合している。また、突出部422は、屋根外板42の軌道方向の全長に渡って形成されている。なお、突出部422は、本開示の「第2部位」の一例である。
【0029】
立設部423は、横架部421の枕木方向の外側端部と突出部422の枕木方向の内側端部との間に、横架部421から上側(すなわち、突出部422側)に向かって立ち上がるようにして設けられている。なお、立設部423は、本開示の「第3部位」の一例である。
【0030】
桁材43は、ステンレス鋼などにより、鉄道車両1の軌道方向に沿って長尺に形成された部材である。桁材43は、垂木41に接合される第1接続片431と、屋根外板42に接合される第2接続片432と、を備えている。そして、この第1接続片431と第2接続片432とが段差を有するように形成されることで、桁材43の枕木方向に切断した断面は略Z字状となっている。
【0031】
第1接続片431は、垂木41の鉄道車両1の内方の面(すなわち、内面411)に、例えばスポット溶接により接合されている。第2接続片432は、屋根外板42の突出部422の鉄道車両1の内方の面に、例えばスポット溶接により接合されている。このようにして、桁材43は、屋根外板42の突出部422を補強している。
【0032】
側構体23Aは、縦骨51と、側外板52と、横骨53とを備えている。縦骨51は、台枠21(
図1参照)の枕木方向の端部に立設されて、鉄道車両1の上下方向に沿って延在している。また、縦骨51は、軌道方向に所定の間隔(例えば1mの間隔)を持って、複数本設けられている。このようにして、縦骨51は、側外板52を鉄道車両1の内側から支持している。
【0033】
縦骨51は、第1骨部材511と第2骨部材512を備えている。第1骨部材511は、炭素鋼、ステンレス鋼やアルミ合金などの金属の板材を、断面ハット状に形成したものである。また、第1骨部材511は、その下端(すなわち、
図3における下方の下端(不図示))が台枠21(
図1参照)に接合されており、側外板52が形成する側面11aを鉄道車両1の内側から支持するために、側面11aに沿うようにして、台枠21に対して略垂直に立設されている。
【0034】
第2骨部材512は、炭素鋼、ステンレス鋼やアルミ合金などの金属の板材を、溝形(断面コの字形)に形成したものである。この第2骨部材512は、第1骨部材511に対して角度を持った状態で配置されている。
【0035】
第2骨部材512の端部には、後述する側外板52のフランジ部523と平行な支持部513が設けられている。この支持部513は、例えばスポット溶接によりフランジ部523と接合されている。
【0036】
また、第2骨部材512の端部には、桁受514が設けられている。桁受514は、垂木41の枕木方向の端部を、桁材43を介して、下方から支持している。さらに、桁受514は、溶接により、桁材43と接合している。なお、垂木41の鉄道車両1の軌道方向における位置は、縦骨51の鉄道車両1の軌道方向における位置と、一致していても良いし、一致していなくても良い。一致していない場合でも、桁材43は軌道方向に長尺に形成されているため、桁受514は、桁材43に接合されることで、桁材43を介して垂木41を支持することが可能である。
【0037】
側外板52は、ステンレス鋼等からなる、板厚1.0~2.5mmの板材であり、車両構体11の外側の表面である車両構体11の側面11aを形成している。
【0038】
側外板52には、縦骨51の第1骨部材511と略平行で、車両構体11の側面11aを形成する垂直部521が形成されている。この垂直部521は、横骨53を介して、縦骨51(の第1骨部材511)により、鉄道車両1の内側から支持されている。
【0039】
さらに、側外板52は、溶接部61から枕木方向の外方(鉄道車両1の外側)に向かって延伸しつつ、徐々に下方へと湾曲する湾曲部522(即ち、車両外側に向かって凸形状に形成された部分)を備えている。この湾曲部522は、垂直部521の上端に繋がっている。
【0040】
さらに、側外板52には、屋根構体24の屋根外板42の突出部422と平行なフランジ部523が形成されている。このフランジ部523は、突出部422を下方から支持している。そして、溶接部61において、フランジ部523と突出部422の先端部とが、溶接(例えば、アーク溶接や、TIG溶接、MIG溶接など)により接合されている。この溶接は、鉄道車両1の軌道方向に沿って行われる連続溶接であり、突出部422は、その軌道方向の全長において、フランジ部523と接合される。なお、フランジ部523は、本開示の「側構体の上端部」の一例である。また、溶接部61は、本開示の「接合部」の一例である。
【0041】
また、屋根外板42は、横架部421と突出部422との段差により形成される、すなわち、横架部421と立設部423とにより形成される雨樋部62を備えており、屋根構体24に降った雨を受けることが可能となっている。上記した通り、突出部422は、突出部422の軌道方向の全長にわたって、連続溶接によってフランジ部523に接合されており、また、雨樋部62とは異なる位置に溶接部61が形成されるため、突出部422とフランジ部523との間の水密性が確保されている。
【0042】
横骨53は、炭素鋼、ステンレス鋼やアルミ合金などの金属の板材により、断面ハット状にかつ、鉄道車両1の軌道方向に沿って長尺に形成されている。この横骨53は、側外板52の鉄道車両1の内側の面に接合されており、側外板52は、横骨53を介して、縦骨51に接合および支持されている。具体的には、側外板52の垂直部521は、横骨53を介して、縦骨51の第1骨部材511に接合および支持されている。
【0043】
[側構体と屋根構体との溶接部およびその周辺の構造について]
本実施形態では、
図2に示すように、側構体23A,23Bと屋根構体24との溶接部61が、車両構体11における最上位の位置に配置されている。具体的には、
図3と
図4に示すように、溶接部61は、側構体23Aの上端部の位置であって、かつ、屋根構体24の垂木41および屋根外板42の横架部421よりも鉄道車両1の上側の位置に配置されている。
【0044】
このようにして溶接部61が車両構体11の最上位の位置に配置されていることにより、溶接部61の溶接を行うときに、側構体23Aの側外板52や屋根構体24の屋根外板42の横架部421に注意を払う必要性が軽減され、溶接の作業性が向上する。そのため、溶接部61にて、溶接欠陥が生じることを防ぐことができ、良好な溶接品質を確保できる。したがって、溶接部61における水密性を向上させることができる。ゆえに、例えば、トンネル通過時に車内の気圧の変化などが生じたとしても、溶接部61から車内へ雨水などが浸入することを防止できる。
【0045】
また、溶接部61は連続溶接により形成できるので、溶接部61における水密性を向上させることができ、溶接部61から車内へ雨水などが浸入し難くなる。そのため、溶接部61に水密用のシール材を施工する必要がなくなるので、部品点数を減らすことができるとともに、水密用のシール材のメンテナンスを行う手間を省くことができる。
【0046】
また、溶接部61が、側構体23Aの上端部の位置であって、かつ、屋根構体24の垂木41および屋根外板42の横架部421よりも鉄道車両1の上側の位置に配置されているので、側構体23Aと屋根構体24の段差部(すなわち、屋根外板42の立設部423)が車両構体11の側面11a側から見えないようにすることができる。そのため、鉄道車両1の美観を向上させることができる。
【0047】
また、溶接部61を屋根絶縁材(すなわち、屋根面11bにおける絶縁材)の塗布範囲内の位置に配置すれば、溶接部61における水密性を向上させることができるので、溶接部61から車内へ雨水などが浸入することを防止できる。
【0048】
また、
図3と
図4に示すように、側構体23Aの側外板52の湾曲部522では、溶接部61側から順に、第1湾曲部522A、第2湾曲部522Bが形成されている。そして、第1湾曲部522Aの曲げ半径(例えば、50mm)が、第2湾曲部522Bの曲げ半径(例えば、200mm)よりも小さくなっている。
【0049】
このようにして、溶接部61に繋がる湾曲部522にて、第1湾曲部522Aと第2湾曲部522Bとにより、2段階の曲げ半径を設定している。そして、第1湾曲部522Aの曲げ半径が、第2湾曲部522Bの曲げ半径よりも小さくなっている。そのため、第1湾曲部522Aの剛性が、第2湾曲部522Bの剛性よりも高くなっている。
【0050】
したがって、溶接部61の溶接を行うときに生じる溶接歪み(すなわち、湾曲部522に生じるうねり)を、第1湾曲部522Aにより食い止めて、第2湾曲部522Bまで達しないようにすることができる。ゆえに、溶接部61の溶接を行った後において、湾曲部522にうねりが生じることを抑制できるので、車両構体11の側面11a(すなわち、側構体23Aの側外板52)の美観を向上させることができる。
【0051】
また、側構体23Aの側外板52は、垂直部521と、この垂直部521の上端に繋がる湾曲部522とからなるものであるので、側外板52を単一方向に曲げるだけで湾曲部522を形成できる。したがって、側構体23Aの形状が単純で加工が容易になる。
【0052】
また、屋根構体24の屋根外板42は、横架部421と突出部422との間に、立設部423を備えている。そして、突出部422は、立設部423を介して、横架部421よりも鉄道車両1の上側の位置に配置されている。また、屋根外板42の横架部421と立設部423とにより、雨樋部62が形成されている。そして、溶接部61は、雨樋部62よりも上側の位置に配置されている。
【0053】
このように、溶接部61が雨樋部62よりも上側の位置に配置されているので、雨樋部62にある雨水は、溶接部61まで到達し難くなる。そのため、雨樋部62にある雨水が溶接部61から鉄道車両1の車内へ浸入することを防止できる。
【0054】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0055】
1 鉄道車両
11 車両構体
21 台枠
23A,23B 側構体
24 屋根構体
41 垂木
42 屋根外板
421 横架部
422 突出部
423 立設部
43 桁材
51 縦骨
52 側外板
522 湾曲部
522A 第1湾曲部
522B 第2湾曲部
523 フランジ部
53 横骨
61 溶接部
62 雨樋部
【要約】
【課題】側構体と屋根構体との接合部にて、溶接の作業性を向上させて、良好な溶接品質を確保できる鉄道車両を提供すること。
【解決手段】本開示の一態様は、台枠21と、台枠21の枕木方向の両端部に接合される一対の側構体23A,23Bと、一対の側構体23A,23Bの上端に接合される屋根構体24と、を有する鉄道車両1において、屋根構体24は、一対の側構体23A,23Bを横架する垂木41および屋根外板42の横架部421と、垂木41および屋根外板42の横架部421よりも枕木方向の外方に向かって突出し、側構体23A,23Bと接合する突出部422と、を備え、側構体23A,23Bの上端部と屋根構体24の突出部422との溶接部61が、屋根構体24の垂木41および屋根外板42の横架部421よりも上側の位置に配置されている。
【選択図】
図4