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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】切削用インサート及び切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/20 20060101AFI20240917BHJP
【FI】
B23C5/20
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024101685
(22)【出願日】2024-06-25
【審査請求日】2024-06-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390002521
【氏名又は名称】ダイジ▲ェ▼ット工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087572
【弁理士】
【氏名又は名称】松川 克明
(72)【発明者】
【氏名】早水 拓也
(72)【発明者】
【氏名】津曲 達也
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/008565(WO,A1)
【文献】特開2020-110921(JP,A)
【文献】特開2017-164900(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-2305441(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略五角形状になった上面部と下面部と、前記の上面部と下面部との間の側面部とを有する切削インサートにおいて、前記の側面部と交差する前記の上面部及び前記の下面部における各コーナー部にさらい刃を形成すると共に、各コーナー部間に、さらい刃に連続するようにして第1主切れ刃と第2主切れ刃を形成し、前記のさらい刃と第1主切れ刃とのなす角度θ1を、前記のさらい刃と第2主切れ刃とのなす角度θ2よりも小さくし、前記のさらい刃と第1主切れ刃とのなす角度θ1を15°~30°の範囲にすると共に、前記のさらい刃と第2主切れ刃とのなす角度θ2を40°~50°の範囲にしたことを特徴とする切削用インサート。
【請求項2】
多角形状になった上面部と下面部と、前記の上面部と下面部との間の側面部とを有する切削インサートにおいて、前記の側面部と交差する前記の上面部及び前記の下面部における各コーナー部にさらい刃を形成すると共に、各さらい刃に対応して、コーナー部間に第1主切れ刃と第2主切れ刃を形成し、前記のさらい刃と第1主切れ刃とのなす角度θ1を、前記のさらい刃と第2主切れ刃とのなす角度θ2よりも小さくすると共に、前記の第1主切れ刃を構成する上面部と側面部又は下面部と側面部のなす刃先角α1を鋭角に、前記の第2主切れ刃を構成する上面部と側面部又は下面部と側面部のなす刃先角α2を鈍角にしたことを特徴とする切削用インサート。
【請求項3】
請求項2に記載の切削用インサートの形状が略五角形状であることを特徴とする切削用インサート。
【請求項4】
請求項2に記載の切削用インサートにおいて、前記のさらい刃と第1主切れ刃とのなす角度θ1を15°~30°の範囲にすると共に、前記のさらい刃と第2主切れ刃とのなす角度θ2を40°~50°の範囲にしたことを特徴とする切削用インサート。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の切削用インサートを工具本体に設けられたインサートポケット内に取り付けたことを特徴とする切削工具。
【請求項6】
請求項5に記載の切削工具において、前記の工具本体におけるインサートポケット内に前記の切削用インサートを取り付けるにあたり、前記の切削用インサートにおける1つのコーナー部の片側における第1主切れ刃の部分の側面部と第2主切れ刃の部分の側面部の少なくとも1つに当接する第1拘束部と、コーナー部の反対側における第1主切れ刃の部分の側面部と第2主切れ刃の部分の側面部の少なくとも1つに当接する第2拘束部を設け、前記の第1拘束部と第2拘束部とによって前記の切削用インサートをインサートポケット内に拘束させたことを特徴とする切削工具。
【請求項7】
請求項2に記載の切削用インサートを工具本体に設けられたインサートポケットを取り付けた切削工具において、前記の切削用インサートにおける1つのコーナー部の片側における第2主切れ刃の部分の側面部に当接する第1拘束部と、反対側における第2主切れ刃の部分の側面部に当接する第2拘束部とを設け、前記の第1拘束部と第2拘束部とによって前記の切削用インサートをインサートポケット内に拘束させたことを特徴とする切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削用インサート及び前記の切削用インサートを工具本体のインサートポケット内に着脱自在に装着させた切削工具に関するものである。特に、切削用インサートを工具本体のインサートポケット内に装着させた切削工具を用いて被削材を切削するにあたり、高送りの切削加工に加えて、軸方向の切込みの深い高切込み切削加工も安定して行えるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、切削用インサートを工具本体のインサートポケット内に装着させた切削工具を用いて被削材を切削加工することが行われている。
【0003】
ここで、前記の切削インサートとしては、例えば、特許文献1~4等に示されるように、多角形状になった上面部と下面部と、前記の上面部と下面部との間の側面部とを有する切削インサートにおいて、上面部と側面部とが交差する上面側交差部及び下面部と側面部とが交差する下面側交差部における各コーナー部にさらい刃を形成すると共に、各さらい刃に対応するようにしてコーナー部間に主切れ刃を設けたものが使用されている。
【0004】
そして、前記のような切削用インサートをインサートポケット内に装着させた切削工具においては、面方向の送り速度を速くして高送りの加工を行うため、切削インサートの主切れ刃の稜線を傾斜させて、主切れ刃の軸方向すくい角が正の角度となるように調整したり、さらい刃に対する主切れ刃の角度を小さくしたりすることが行われている。
【0005】
しかし、主切れ刃の軸方向すくい角が正の角度となるように調整し、さらい刃に対する主切れ刃の角度を小さくした切削工具を用いて、軸方向の切込みの深い高切込み切削加工を行うようにした場合、主切れ刃に加わる負荷が大きくなり、主切れ刃が破損したりする等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5357963号公報
【文献】特許第5369185号公報
【文献】特許第5441615号公報
【文献】特許第5468172号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、多角形状になった上面部と側面部とが交差する上面側交差部及び多角形状になった下面部と側面部とが交差する下面側交差部における各コーナー部にさらい刃を形成すると共に、各さらい刃に対応するようにして主切れ刃を形成した切削用インサートを用い、前記の切削用インサートを工具本体のインサートポケット内に装着させた切削工具によって切削加工を行う場合における前記のような問題を解決することを課題とするものである。
【0008】
すなわち、本発明においては、前記のような切削工具を用いて被削材を切削するにあたり、面方向の送り速度を速くした高送りの切削加工に加えて、軸方向の切込みを深くした高切込み切削加工も安定して行えるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明における切削用インサートにおいては、前記のような課題を解決するため、略五角形状になった上面部と下面部と、前記の上面部と下面部との間の側面部とを有する切削インサートにおいて、前記の側面部と交差する前記の上面部及び前記の下面部における各コーナー部にさらい刃を形成すると共に、各コーナー部間に、さらい刃に連続するようにして第1主切れ刃と第2主切れ刃を形成し、前記のさらい刃と第1主切れ刃とのなす角度θ1を、前記のさらい刃と第2主切れ刃とのなす角度θ2よりも小さくし、前記のさらい刃と第1主切れ刃とのなす角度θ1を15°~30°の範囲にすると共に、前記のさらい刃と第2主切れ刃とのなす角度θ2を40°~50°の範囲にした。
【0010】
そして、前記の切削用インサートにおける前記のさらい刃と第1主切れ刃とによって被削材を切削加工し、前記の第2主切れ刃で切削を行わないようにした場合には、前記のようにさらい刃と第1主切れ刃とのなす角度θ1が小さくなっているため、被削材に対する切削抵抗が低減されて、高送りの切削加工が効率よく行えるようになる。一方、前記のさらい刃と第1主切れ刃と第2主切れ刃とによって被削材を切削加工する場合、前記のさらい刃と第2主切れ刃とのなす角度θ2が、前記のさらい刃と第1主切れ刃とのなす角度θ1よりも大きくなっているため、軸方向の切込みの深い切削加工を行う場合に、前記の第2主切れ刃によって高切込み切削加工が効率よく行えるようになる。
【0011】
また、本発明における切削用インサートにおいては、多角形状になった上面部と下面部と、前記の上面部と下面部との間の側面部とを有する切削インサートにおいて、前記の側面部と交差する前記の上面部及び前記の下面部における各コーナー部にさらい刃を形成すると共に、各さらい刃に対応して、コーナー部間に第1主切れ刃と第2主切れ刃を形成し、前記のさらい刃と第1主切れ刃とのなす角度θ1を、前記のさらい刃と第2主切れ刃とのなす角度θ2よりも小さくすると共に、前記の第1主切れ刃を構成する上面部と側面部又は下面部と側面部のなす刃先角α1を鋭角に、前記の第2主切れ刃を構成する上面部と側面部又は下面部と側面部のなす刃先角α2を鈍角にするようにした
【0012】
このように、前記の第1主切れ刃を構成する上面部と側面部又は下面部と側面部のなす刃先角α1を鋭角にすると、さらい刃と第1主切れ刃とによって被削材を切削加工する際における切削抵抗が低減されて、高送りの切削加工がより効率よく行えるようになる。一方、前記の第2主切れ刃を構成する上面部と側面部又は下面部と側面部のなす刃先角α2を鈍角にすると、前記の第2主切れ刃の強度が高くなり、軸方向の切込みの深い切削加工を行う場合に、前記の第2主切れ刃が損傷することなく、安定した高切込み切削加工が行えるようになる。
【0013】
また、本発明における切削用インサートにおいては、その平面形状を略五角形状にすることができる。
【0014】
また、本発明における切削用インサートにおいては、前記のさらい刃と第1主切れ刃とのなす角度θ1を15°~30°の範囲にすると共に、前記のさらい刃と第2主切れ刃とのなす角度θ2を40°~50°の範囲にすることができる。
【0015】
このように、さらい刃と第1主切れ刃とのなす角度θ1を15°~30°の範囲にすると、被削材に対する切削抵抗が低減されて、高送りの切削加工がより効率よく行えるようになる。一方、前記のさらい刃と第2主切れ刃とのなす角度θ2を40°~50°の範囲にすると、前記の第2主切れ刃によって軸方向の切込みの深い高切込み切削加工をより効率よく行えるようになる。
【0016】
そして、本発明における切削工具においては、前記の切削用インサートを工具本体のインサートポケット内に取り付けるようにした。
【0017】
そして、本発明における切削工具において、前記のように切削用インサートにおけるさらい刃と第1主切れ刃とによって被削材を切削加工し、第2主切れ刃で切削を行わないようにした場合には、さらい刃と第1主切れ刃とのなす角度θ1が小さくなっているため、被削材に対する切削抵抗が低減されて、高送りの切削加工が効率よく行えるようになる。一方、前記のように切削用インサートにおけるさらい刃と第1主切れ刃と第2主切れ刃とによって被削材を切削加工する場合には、さらい刃と第2主切れ刃とのなす角度θ2が、さらい刃と第1主切れ刃とのなす角度θ1よりも大きくなっているため、第2主切れ刃によって軸方向の切込みの深い高切込み切削加工が効率よく行えるようになる。
【0018】
また、本発明における切削工具において、前記の工具本体におけるインサートポケット内に取り付けるにあたっては、前記の切削用インサートにおける1つのコーナー部の片側における第1主切れ刃の部分の側面部と第2主切れ刃の部分の側面部の少なくとも1つに当接する第1拘束部と、コーナー部の反対側における第1主切れ刃の部分の側面部と第2主切れ刃の部分の側面部の少なくとも1つに当接する第2拘束部を設け、前記の第1拘束部と第2拘束部とによって前記の切削用インサートをインサートポケット内に拘束させるようにすることができる。
【0019】
ここで、前記のように第1拘束部と第2拘束部とによって切削用インサートをインサートポケット内に拘束させるにあたり、前記の第1拘束部と第2拘束部とが何れも前記のコーナー部から工具本体の先端側に向かうようにすると、切削用インサートが前記の第1拘束部と第2拘束部とによって工具本体の先端側に向かうようにして拘束され、切削加工時に切削用インサートが、インサートポケット内でがたついて、位置がずれたりするのが抑制されるようになる。
【0020】
また、本発明における切削工具において、前記の第1主切れ刃を構成する上面部と側面部又は下面部と側面部のなす刃先角α1を鋭角に、前記の第2主切れ刃を構成する上面部と側面部又は下面部と側面部のなす刃先角α2を鈍角にした切削用インサートを工具本体に設けられたインサートポケットを取り付けるにあたっては、前記の切削用インサートにおける1つのコーナー部の片側における第2主切れ刃の部分の側面部に当接する第1拘束部と、反対側における第2主切れ刃の部分の側面部に当接する第2拘束部を設け、前記の第1拘束部と第2拘束部とによって前記の切削用インサートをインサートポケット内に拘束させるようにすることができる。
【0021】
そして、前記のように第1拘束部と第2拘束部とによって切削用インサートをインサートポケット内に拘束させると、切削用インサートのコーナー部の両側における刃先角α2が鈍角になった第2主切れ刃の部分の側面部が、それぞれ第1拘束部と第2拘束部とに当接され、切削用インサートのコーナー部の両側における第2主切れ刃の部分の各側面部が第1拘束部と第2拘束部とによりインサートポケット内に押し付けられるようにして拘束され、切削加工時に切削用インサートが、インサートポケット内でがたついて、位置がずれたりするのが確実に抑制されるようになる。
【発明の効果】
【0022】
本発明においては、前記のように工具本体のインサートポケット内に装着させる切削用インサートとして、多角形状になった上面部と下面部と、前記の上面部と下面部との間の側面部とを有し、側面部と交差する上面部及び下面部における各コーナー部にさらい刃を形成すると共に、各さらい刃に対応して、コーナー部間に第1主切れ刃と第2主切れ刃を形成し、前記のさらい刃と第1主切れ刃とのなす角度θ1を、前記のさらい刃と第2主切れ刃とのなす角度θ2よりも小さくした切削用インサートを用いた。
【0023】
そして、前記の切削用インサートを工具本体のインサートポケット内に装着させた切削工具を用い、切削用インサートにおけるさらい刃と第1主切れ刃とによって被削材を切削加工し、第2主切れ刃で切削を行わないようにした場合には、さらい刃と第1主切れ刃とのなす角度θ1が小さくなっているため、被削材に対する切削抵抗が低減されて、高送りの切削加工が効率よく行えるようになり、また切削用インサートにおけるさらい刃と第1主切れ刃と第2主切れ刃とによって被削材を切削加工する場合には、さらい刃と第2主切れ刃とのなす角度θ2が、さらい刃と第1主切れ刃とのなす角度θ1よりも大きくなっているため、第2主切れ刃によって軸方向の切込みの深い高切込み切削加工が効率よく行えるようになった。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態1における切削用インサートを示した概略斜視図である。
図2】同実施形態1における切削用インサートを示した概略平面図である。
図3】同実施形態1における切削用インサートを示した概略側面図である。
図4】同実施形態1において、前記の切削用インサートを工具本体のインサートポケット内に取り付けた切削工具を示した概略説明図である。
図5】同実施形態1における切削工具において、工具本体のインサートポケット内に設けた第1拘束部と第2拘束部とによって前記の切削用インサートをインサートポケット内に拘束させた状態を示した部分概略説明図である。
図6】同実施形態1における切削工具において、切削用インサートに設けられたさらい刃と第1主切れ刃とによって被削材を切削加工する状態を示した部分概略説明図である。
図7】同実施形態1における切削工具において、切削用インサートに設けられたさらい刃と第1主切れ刃と第2主切れ刃とによって被削材を切削加工する状態を示した部分概略説明図である。
図8】本発明の実施形態2における切削用インサートを示した概略斜視図である。
図9】同実施形態2における切削用インサートを示した概略平面図である。
図10】同実施形態2における切削用インサートを示した概略側面図である。
図11】同実施形態2における切削用インサートにおいて、(A)は刃先角α1が鋭角になった第1主切れ刃の部分断面図、(B)は刃先角α2が鈍角になった第2主切れ刃の部分断面図である。
図12】同実施形態2において、前記の切削用インサートを工具本体のインサートポケット内に取り付けた切削工具を示した概略説明図である。
図13】同実施形態2における切削工具において、工具本体のインサートポケット内に設けた第1拘束部と第2拘束部とによって前記の切削用インサートをインサートポケット内に拘束させた状態を示した部分概略説明図である。
図14】同実施形態2における切削工具において、切削用インサートに設けられたさらい刃と第1主切れ刃とによって被削材を切削加工する状態を示した部分概略説明図である。
図15】同実施形態2における切削工具において、切削用インサートに設けられたさらい刃と第1主切れ刃と第2主切れ刃とによって被削材を切削加工する状態を示した部分概略説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態に係る切削用インサート及び切削工具を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明における切削用インサート及び切削工具は、特に下記の実施形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0026】
(実施形態1)
実施形態1において使用する切削用インサート10は、図1図3に示すように、略五角形状になった上面部11と下面部12と、上面部11と下面部12との間の側面部13を有しており、前記の側面部13と交差する前記の上面部11及び前記の下面部12における各コーナー部にそれぞれさらい刃14を形成すると共に、各さらい刃14に対応して、コーナー部間に第1主切れ刃15と第2主切れ刃16を形成し、前記の上面部11と下面部12の中央部を貫通するようにして取付け穴17を設けている。
【0027】
ここで、前記の切削用インサート10においては、前記の上面部11と下面部12とが表裏反転した状態になっており、上面部11と側面部13とが交差する第1主切れ刃15の部分に対応する下面部12と側面部13とが交差する部分には第2主切れ刃16が形成され、上面部11と側面部13とが交差する第2主切れ刃16の部分に対応する下面部12と側面部13とが交差する部分には第1主切れ刃15が形成されている。なお、図示していないが、前記の第1主切れ刃15の刃先角と第2主切れ刃16の刃先角は同じ角度になるようにしている。
【0028】
また、前記の切削用インサート10においては、図2に示すように、前記のさらい刃14と第1主切れ刃15とのなす角度θ1を15°~30°の範囲にする一方、前記のさらい刃14と第2主切れ刃16とのなす角度θ2を40°~50°の範囲にし、さらい刃14と第1主切れ刃15とのなす角度θ1を、さらい刃14と第2主切れ刃16とのなす角度θ2よりも小さくしている。
【0029】
そして、実施形態1においては、図4に示すように、前記の切削用インサート10に設けられた取付け穴17を通して、切削用インサート10を工具本体20に設けられた各インサートポケット21内にそれぞれ取付ネジ22によって取り付けるようにしている。
【0030】
ここで、切削用インサート10を工具本体20に設けられたインサートポケット21内に取付ネジ22によって取り付けるにあたっては、図5に示すように、前記の切削用インサート10において、切削を行うさらい刃14が形成されたコーナー部から離れたインサートポケット51内に位置するさらい刃14が形成されたコーナー部の両側において、コーナー部よりも工具本体20の外周側に位置する第1主切れ刃15(15a)の側面部13(13a)と当接するようにして、インサートポケット21内に第1拘束部23aを設けると共に、コーナー部よりも工具本体20の内周側に位置する第2主切れ刃16(16b)の側面部13(13b)と当接するようにして、インサートポケット21内に第2拘束部23bを設け、前記の第1拘束部23aとに第2拘束部23bを設け、前記の第1拘束部23aと第2拘束部23bとによって前記の切削用インサート10をインサートポケット21内に拘束させるようにしている。
【0031】
そして、前記の実施形態1においては、インサートポケット51内に位置するさらい刃14が形成されたコーナー部の両側における第1拘束部23aと第2拘束部23bとが、前記のコーナー部から工具本体20の先端側に向かうように傾斜されており、切削用インサート10が工具本体1の先端側に向かうようにして拘束されるようになり、切削加工時に切削用インサート10が、工具本体20のインサートポケット21内でがたついて、位置がずれたりするのが抑制されるようになる。
【0032】
なお、この実施形態1においては、前記のようにインサートポケット21の第1拘束部23aに、コーナー部よりも工具本体20の外周側に位置する第1主切れ刃15(15a)の側面部13(13a)を、第2拘束部23bに、コーナー部よりも工具本体20の内周側に位置する第2主切れ刃16(16b)の側面部13(13b)を拘束させるようにしただけであるが、第1拘束部23aと第2拘束部23bとに拘束させる側面部13はこのようなものに限定されない。例えば、図示していないが、第1拘束部23aに、コーナー部よりも工具本体20の外周側に位置する第1主切れ刃15(15a)の側面部13(13a)の他に、第2主切れ刃16の側面部13を拘束させたり、第2拘束部23bに、コーナー部よりも工具本体20の内周側に位置する第2主切れ刃16(16b)の側面部13(13b)の他に、第1主切れ刃15の側面部13を拘束させたりすることも可能である。
【0033】
そして、前記の実施形態1の切削工具において、図6に示すように、工具本体20のインサートポケット21から突出された切削用インサート10のコーナー部におけるさらい刃14と第1主切れ刃15とによって被削材Wを切削加工し、第2主切れ刃16で切削を行わないようにすると、被削材Wの切削を行う前記のさらい刃14と第1主切れ刃15とのなす角度θ1が小さくなっているため、被削材Wに対する切削抵抗が低減されて、高送りの切削加工が効率よく行えるようになる。
【0034】
一方、前記の実施形態1の切削工具において、図7に示すように、工具本体20のインサートポケット21から突出された切削用インサート10のコーナー部におけるさらい刃14と第1主切れ刃15と第2主切れ刃16とによって被削材Wを切削加工すると、前記のさらい刃14と第2主切れ刃16とのなす角度θ2が、さらい刃14と第1主切れ刃15とのなす角度θ1よりも大きくなっているため、前記の第2主切れ刃16によって高切込み切削加工が効率よく行えるようになる。
【0035】
(実施形態2)
実施形態2において使用する切削用インサート10は、図8図10に示すように、前記の実施形態1に使用した切削用インサート10と同様に、略五角形状になった上面部11と下面部12と、上面部11と下面部12との間の側面部13を有しており、前記の側面部13と交差する前記の上面部11及び前記の下面部12における各コーナー部にそれぞれさらい刃14を形成すると共に、各さらい刃14に対応して、コーナー部間に第1主切れ刃15と第2主切れ刃16を形成し、前記の上面部11と下面部12の中央部を貫通するようにして取付け穴17を設けている。
【0036】
ここで、前記の切削用インサート10においては、前記の上面部11と下面部12とが表裏反転した状態になっており、上面部11と側面部13とが交差する第1主切れ刃15の部分に対応する下面部12と側面部13とが交差する部分には第2主切れ刃16が形成され、上面部11と側面部13とが交差する第2主切れ刃16の部分に対応する下面部12と側面部13とが交差する部分には第1主切れ刃15が形成されている。
【0037】
また、前記の切削用インサート10においては、図2に示すように、前記のさらい刃14と第1主切れ刃15とのなす角度θ1を15°~30°の範囲にする一方、前記のさらい刃14と第2主切れ刃16とのなす角度θ2を40°~50°の範囲にし、さらい刃14と第1主切れ刃15とのなす角度θ1を、さらい刃14と第2主切れ刃16とのなす角度θ2よりも小さくしている。
【0038】
一方、実施形態2において使用する切削用インサート10においては、図11(A),(B)に示すように、前記の第1主切れ刃15の刃先角α1が鋭角になるようにする一方、前記の第2主切れ刃16の刃先角α2が鈍角になるようにしている。
【0039】
そして、実施形態2においては、図12に示すように、前記の切削用インサート10に設けられた取付け穴17を通して、切削用インサート10を工具本体20に設けられた各インサートポケット21内にそれぞれ取付ネジ22によって取り付けるようにしている。
【0040】
ここで、前記の切削用インサート10を工具本体20に設けられたインサートポケット21内に取付ネジ22によって取り付けるにあたっては、図13に示すように、前記の切削用インサート10をインサートポケット21内にセットさせた状態で、切削を行う位置におけるさらい刃14と第1主切れ刃15に連続して設けられた刃先角α2が鈍角になった第2主切れ刃16の側面部13が外周側に突出しないようにして取り付け、被削材Wの切削時に第2主切れ刃16の側面部13が被削材Wに接触して、被削材Wや切削用インサート10が傷つかないようにしている。
【0041】
また、前記の切削用インサート10を工具本体20に設けられたインサートポケット21内に取付ネジ22によって取り付けるにあたっては、切削加工時に切削用インサート10が、工具本体20のインサートポケット21内でがたついて、位置がずれたりするのを抑制するため、切削を行うさらい刃14が形成されたコーナー部から離れたインサートポケット51内に位置するさらい刃14が形成されたコーナー部の両側において、コーナー部よりも工具本体20の外周側に位置する第2主切れ刃16(16a)の側面部13(13a)と当接するようにして、インサートポケット21内に第1拘束部23aを設けると共に、コーナー部よりも工具本体20の内周側に位置する第2主切れ刃16(16b)の側面部13(13b)と当接するようにして、インサートポケット21内に第2拘束部23bを設け、前記の第1拘束部23aと第2拘束部23bとによって前記の切削用インサート10をインサートポケット21内に拘束させるようにしている。
【0042】
ここで、前記のようにして切削用インサート10をインサートポケット21内に拘束させるようにすると、インサートポケット51内の前記のコーナー部の両側における刃先角α2が鈍角になった第2主切れ刃16(16a),16(16b)の部分の側面部13(13a),13(13b)が、それぞれ第1拘束部23aと第2拘束部23bとに当接され、前記のコーナー部の両側における第2主切れ刃16(16a),16(16b)の部分の各側面部13(13a),13(13b)が、第1拘束部23aと第2拘束部23bとによってインサートポケット21内に押し付けられるようにして拘束され、切削加工時に、切削用インサート10がインサートポケット21内でがたついて、位置がずれたりするのが確実に抑制されるようになる。
【0043】
そして、前記の実施形態2の切削工具において、図14に示すように、工具本体20のインサートポケット21から突出された切削用インサート10のコーナー部におけるさらい刃14と第1主切れ刃15とによって被削材Wを切削加工し、第2主切れ刃16で切削を行わないようにすると、被削材Wの切削を行う前記のさらい刃14と第1主切れ刃15とのなす角度θ1が小さくなっていると共に、第1主切れ刃15の刃先角α1が鋭角になっているため、被削材Wに対する切削抵抗が低減されて、高送りの切削加工が効率よく行えるようになる。被削材Wに対する切削抵抗が低減されて、高送りの切削加工が効率よく行えるようになる。
【0044】
一方、前記の実施形態1の切削工具において、図15に示すように、工具本体20のインサートポケット21から突出された切削用インサート10のコーナー部におけるさらい刃14と第1主切れ刃15と第2主切れ刃16とによって被削材Wを切削加工すると、前記のさらい刃14と第2主切れ刃16とのなす角度θ2が、さらい刃14と第1主切れ刃15とのなす角度θ1よりも大きくなっているため、前記の第2主切れ刃16によって高切込み切削加工が効率よく行えるようになり、また前記の第2主切れ刃16の刃先角α2が鈍角になっているため、第2主切れ刃16の刃先強度が高くなって、第2主切れ刃16が損傷するのも防止されるようになる。
【符号の説明】
【0045】
1 :工具本体
10 :切削用インサート
11 :上面部
12 :下面部
13 :側面部
14 :さらい刃
15 :第1主切れ刃
16 :第2主切れ刃
17 :取付け穴
20 :工具本体
21 :インサートポケット
22 :取付ネジ
23a :第1拘束部
23b :第2拘束部
51 :インサートポケット
W :被削材
α1 :第1主切れ刃の刃先角
α2 :第2主切れ刃の刃先角
θ1 :さらい刃と第1主切れ刃とのなす角度
θ2 :さらい刃と第2主切れ刃とのなす角度
【要約】
【課題】 切削用インサートを工具本体のインサートポケットに装着させた切削工具を用い被削材を切削するにあたり、高送りの切削加工に加えて、軸方向の切込みの深い切削加工も安定して行えるようにする。
【解決手段】 多角形状になった上面部11と下面部12と、上面部と下面部との間の側面部13とを有する切削インサート10において、側面部と交差する上面部及び前記の下面部における各コーナー部にさらい刃14を形成すると共に、各さらい刃に対応して、コーナー部間に第1主切れ刃15と第2主切れ刃16を形成し、さらい刃と第1主切れ刃とのなす角度θ1を、さらい刃と第2主切れ刃とのなす角度θ2よりも小さくした。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
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図11
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図15