(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】作動伝達構造、及び当該構造を備えた検出装置並びに当該検出装置を備えた自動車用ドアロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 81/72 20140101AFI20240918BHJP
E05B 79/18 20140101ALI20240918BHJP
【FI】
E05B81/72
E05B79/18
(21)【出願番号】P 2020172969
(22)【出願日】2020-10-14
【審査請求日】2023-08-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083389
【氏名又は名称】竹ノ内 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100198317
【氏名又は名称】横堀 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】依田 勇二
(72)【発明者】
【氏名】宮永 凌
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-090414(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0012468(US,A1)
【文献】実開昭56-104020(JP,U)
【文献】特開2012-041764(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動可能に支持された伝達部材が予め定めた初期位置から
第1の駆動方向および前記第1の駆動方向とは逆の第2の駆動方向に回動することにより、当該回動を
、前記伝達部材の近傍に回動可能に支持され
て、予め定めた従動初期位置から第1の従動方向および前記第1の従動方向とは逆の第2の従動方向の各々に回動する被伝達部材に対して伝達可能とした作動伝達構造において、
前記伝達部材は、前記初期位置から前記第1の駆動方向へ回動するとき、前記被伝達部材に当接して前記被伝達部材を前記従動初期位置から前記第1の従動方向へ回動させる第1当接部と、前記初期位置から前記第2の駆動方向へ回動するとき、前記被伝達部材に当接して前記被伝達部材を前記従動初期位置から前記第2の従動方向へ回動させる第2当接部と、前記第1および第2の当接部の間にあって、前記被伝達部材の先端部およびその近傍を収容可能な収容部とを有しており、
前記伝達部材は、
前記初期位置から
前記第1の駆動方向へ回動
するとき、
前記第1当接部が前記被伝達部材に当接することにより、前記被伝達部材を
前記従動初期位置から
前記第1の従動方向へ回動させて
、予め定めた
第1の検出位置に回動させた後、引き続いて
前記第1の駆動方向へ回動しても
、前記被伝達部材を前記
第1の検出位置から
前記第1の従動方向へ大きく過回動させない構成を有
しており、
且つ前記伝達部材は、前記初期位置から前記第2の駆動方向へ回動するとき、前記第2当接部が前記被伝達部材に当接することにより、前記被伝達部材を前記従動初期位置から前記第2の従動方向へ回動させて、予め定めた第2の検出位置に回動させた後、引き続いて前記第2の駆動方向へ回動しても、前記被伝達部材を前記第2の検出位置から前記第2の従動方向へ大きく過回動させない構成を有していることを特徴とする作動伝達構造。
【請求項2】
前記伝達部材は、自体に設けた長孔に前記被伝達部材の近傍に設けた軸を嵌合して、前記軸を中心に所定角度回動可能で、かつ前記軸の軸方向に直交する遠近方向へ移動可能に支持されることにより、
前記初期位置から
前記第1の駆動方向へ回動するにつれて、前記被伝達部材に
当接した前記第1当接部が前記被伝達部材の回転中心から離れる方向に移動するように
なっており、前記初期位置から前記第2の駆動方向へ回動するにつれて、前記被伝達部材に当接した前記第2当接部が前記被伝達部材の回転中心から離れる方向に移動するようになっていることを特徴とする請求項1
に記載の作動伝達構造。
【請求項3】
前記伝達部材は、自体の近傍に配置される移動部材に回動可能に連結され、前記移動部材の移動に伴って、遠近方向に移動することを特徴とする請求項2
に記載の作動伝達構造。
【請求項4】
前記移動部材は、直線運動可能に支持されることを特徴とする請求項3
に記載の作動伝達構造。
【請求項5】
前記移動部材は、所定角度回動可能に支持されることを特徴とする請求項3
に記載の作動伝達構造。
【請求項6】
前記伝達部材は、前記軸を境にして、前記被伝達部材に
近接する一方側に前記第1当接部、前記第2当接部及び前記収容部を有し、前記一方側と反対側に前記移動部材を連結したことを特徴とする請求項3~5のいずれか
一項に記載の作動伝達構造。
【請求項7】
前記伝達部材は、前記被伝達部材の近傍に設けた軸により所定角度回動可能に支持されると共に、
前記第1および第2の当接部並びに前記収容部に加えて、自体の回転中心を中心とする円弧
部を有し、
前記被伝達部材は、前記伝達部材の
前記初期位置から
前記第1の駆動方向への回動に伴って、前記
第1当接部に対して当接することにより、
前記従動初期位置から前記
第1の検出位置に回動し、その
後、前記円弧部に対して相対的に回動方向へ摺動することにより、前記
第1の検出位置から
前記第1の従動方向へ大きく過回動
せず、
前記被伝達部材は、前記伝達部材の前記初期位置から前記第2の駆動方向への回動に伴って、前記第2当接部に対して当接することにより、前記従動初期位置から前記第2の検出位置に回動し、その後、前記円弧部に対して相対的に回動方向へ摺動することにより、前記第2の検出位置から前記第2の従動方向へ大きく過回動しないことを特徴とする請求項1
に記載の作動伝達構造。
【請求項8】
請求項1
~7のいずれか
一項に記載の作動伝達構造を備えた検出装置において、
前記被伝達部材は、電気的接点を備えた検出スイッチのケーシングに所定角度回動可能に支持され、予め定めた
前記従動初期位置から
前記第1および第2の従動方向へ回動して前記
第1および第2の検出位置
の各々に達することにより前記検出スイッチをオン作動させる検出レバーであり、
前記伝達部材は、所定の位置に設けられる操作装置の操作に基づいて
前記初期位置から
前記第1および第2の駆動方向へ回動するように、前記操作装置に連結されることを特徴とする検出装置。
【請求項9】
請求項
8に記載の検出装置と、ドアに設けられるキーシリンダの操作に応じてアンロック位置からロック位置及びその逆へ移動可能なロックレバーと、を備えた自動車用ドアロック装置において、
前記操作装置は、前記キーシリンダであり、
前記伝達部材は、前記キーシリンダのアンロック操作に応じて
前記初期位置から
前記第1の駆動方向へ回動することを特徴とする自動車用ドアロック装置。
【請求項10】
請求項
8に記載の検出装置と、ドアに設けられるキーシリンダの操作に応じてアンロック位置からロック位置及びその逆へ移動可能なロックレバーと、前記ロックレバーのアンロック位置を検出するポジションスイッチと、前記ロックレバー
のアンロック位置とロック位置との間の中間位置を境にして、前記ロックレバーに作用する付勢方向が反転するスプリングと、を備えた自動車用ドアロック装置において、
前記操作装置は、前記キーシリンダであり、
前記伝達部材は、前記キーシリンダのアンロック操作に応じて
前記初期位置から
前記第1の駆動方向へ回動し、前記キーシリンダのロック操作に応じて
前記初期位置から
前記第2の駆動方向へ回動し、
前記検出スイッチは、前記キーシリンダのアンロック操作に応じて、前記ロックレバーがロック位置から中間位置に達する前に、前記検出レバーが前記
第1の検出位置に回動することにより前記キーシリンダのアンロック操作を検出し、その後に、前記ポジションスイッチが前記ロックレバーのアンロックを検出することを特徴とする自動車用ドアロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作動伝達構造、及び当該構造を備えた検出装置並びに当該検出装置を備えた自動車用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用ドアロック装置は、ドアの車外側に設けられるキーシリンダの操作に応じて、アンロック位置/ロック位置に移動可能なロックレバーと、キーシリンダのアンロック/ロック操作に応じて作動するキーレバー及び被検出リンクと、被検出リンクに連結される検出レバーが被検出リンクの作動に応じて回動することで、キーシリンダのアンロック/ロック操作を検出する検出スイッチを備える(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
通常、自動車用ドアロック装置においては、車両のセキュリティ上の観点から、ポジションスイッチ(特許文献1においては、検出スイッチ27)がロックレバーのアンロックを検出する前に、検出スイッチがキーシリンダのアンロック操作による被検出リンクの作動に基づいてアンロック側の電気的接点がオンすることで、キーシリンダのアンロック操作を検出することが望ましい。なぜなら、例えば、不正行為によりロックレバーが直接アンロック作動させられて、ポジションスイッチがキーシリンダのアンロック操作検出前又は検出無しの状態でロックレバーのアンロックを検出するような事態が発生した際、警報装置を作動させる等のセキュリティ対策を講じている場合には、正規のユーザによりキーシリンダがアンロック操作されたとき、検出スイッチは、ポジションスイッチのアンロック検出よりも早期にキーシリンダのアンロック操作を確実に検出するようにしなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の自動車用ドアロック装置においては、検出スイッチによりキーシリンダのアンロック操作を早期に検出可能とすると、検出スイッチの検出レバーは、キーシリンダのアンロック操作に基づく被検出リンクの作動に応じて検出方向へ回動して、キーシリンダのアンロック操作を検出したあとも、さらに検出方向へ大きく回動することになる。このように、検出レバーを検出方向へ大きく回動させると、検出レバーに対して大きな負荷を与えてしまい、キースイッチにおける検出レバーの耐久性の低下を招く虞がある。
【0006】
また、自動車用ドアロック装置以外の装置にあっても、被検出リンクを伝達部材とし、検出レバーを被伝達部材とした場合、キーシリンダ、操作ハンドル又はアクチュエータ等の操作装置の操作により作動する伝達部材の動作を被伝達部材に対して伝達させる際、伝達部材の動作が必要以上に被伝達部材に伝達されてしまうと、被伝達部材に対して大きな負荷を与えて被伝達部材の耐久性の低下を招く虞があることから、伝達部材の動作を被伝達部材に対して必要以上に伝達させないようにした作動伝達構造が望まれる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑み、被伝達部材の耐久性向上を可能とした作動伝達構造、及び当該構造を備えた検出装置並びに当該検出装置を備えた自動車用ドアロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、上記課題は、次のようにして解決される。
本発明に係る作動伝達構造は、回動可能に支持された伝達部材が予め定めた初期位置から第1の駆動方向および前記第1の駆動方向とは逆の第2の駆動方向に回動することにより、当該回動を、前記伝達部材の近傍に回動可能に支持されて、予め定めた従動初期位置から第1の従動方向および前記第1の従動方向とは逆の第2の従動方向の各々に回動する被伝達部材に対して伝達可能とした作動伝達構造において、
前記伝達部材は、前記初期位置から前記第1の駆動方向へ回動するとき、前記被伝達部材に当接して前記被伝達部材を前記従動初期位置から前記第1の従動方向へ回動させる第1当接部と、前記初期位置から前記第2の駆動方向へ回動するとき、前記被伝達部材に当接して前記被伝達部材を前記従動初期位置から前記第2の従動方向へ回動させる第2当接部と、前記第1および第2の当接部の間にあって、前記被伝達部材の先端部およびその近傍を収容可能な収容部とを有しており、
前記伝達部材は、前記初期位置から前記第1の駆動方向へ回動するとき、前記第1当接部が前記被伝達部材に当接することにより、前記被伝達部材を前記従動初期位置から前記第1の従動方向へ回動させて、予め定めた第1の検出位置に回動させた後、引き続いて前記第1の駆動方向へ回動しても、前記被伝達部材を前記第1の検出位置から前記第1の従動方向へ大きく過回動させない構成を有しており、
且つ前記伝達部材は、前記初期位置から前記第2の駆動方向へ回動するとき、前記第2当接部が前記被伝達部材に当接することにより、前記被伝達部材を前記従動初期位置から前記第2の従動方向へ回動させて、予め定めた第2の検出位置に回動させた後、引き続いて前記第2の駆動方向へ回動しても、前記被伝達部材を前記第2の検出位置から前記第2の従動方向へ大きく過回動させない構成を有していることを特徴とする。
【0009】
好ましくは、前記伝達部材は、自体に設けた長孔に前記被伝達部材の近傍に設けた軸を嵌合して、前記軸を中心に所定角度回動可能で、かつ前記軸の軸方向に直交する遠近方向へ移動可能に支持されることにより、前記初期位置から前記第1の駆動方向へ回動するにつれて、前記被伝達部材に当接した前記第1当接部が前記被伝達部材の回転中心から離れる方向に移動するようになっており、前記初期位置から前記第2の駆動方向へ回動するにつれて、前記被伝達部材に当接した前記第2当接部が前記被伝達部材の回転中心から離れる方向に移動するようになっている。
【0010】
好ましくは、前記伝達部材は、自体の近傍に配置される移動部材に回動可能に連結され、前記移動部材の移動に伴って、遠近方向に移動する。
【0011】
好ましくは、前記移動部材は、直線運動可能に支持される。
【0012】
好ましくは、前記移動部材は、所定角度回動可能に支持される。
【0013】
好ましくは、前記伝達部材は、前記軸を境にして、前記被伝達部材に近接する一方側に前記第1当接部、前記第2当接部及び前記収容部を有し、前記一方側と反対側に前記移動部材を連結する。
【0014】
好ましくは、前記伝達部材は、前記被伝達部材の近傍に設けた軸により所定角度回動可能に支持されると共に、前記第1および第2の当接部並びに前記収容部に加えて、自体の回転中心を中心とする円弧部を有し、前記被伝達部材は、前記伝達部材の前記初期位置から前記第1の駆動方向への回動に伴って、前記第1当接部に対して当接することにより、前記従動初期位置から前記第1の検出位置に回動し、その後、前記円弧部に対して相対的に回動方向へ摺動することにより、前記第1の検出位置から前記第1の従動方向へ大きく過回動せず、
前記被伝達部材は、前記伝達部材の前記初期位置から前記第2の駆動方向への回動に伴って、前記第2当接部に対して当接することにより、前記従動初期位置から前記第2の検出位置に回動し、その後、前記円弧部に対して相対的に回動方向へ摺動することにより、前記第2の検出位置から前記第2の従動方向へ大きく過回動しない。
【0015】
本発明に係る検出装置は、前記作動伝達構造を備えた検出装置において、前記被伝達部材は、電気的接点を備えた検出スイッチのケーシングに所定角度回動可能に支持され、予め定めた前記従動初期位置から前記第1および第2の従動方向へ回動して前記第1および第2の検出位置の各々に達することにより前記検出スイッチをオン作動させる検出レバーであり、前記伝達部材は、所定の位置に設けられる操作装置の操作に基づいて前記初期位置から前記第1および第2の駆動方向へ回動するように、前記操作装置に連結されることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る自動車用ドアロック装置は、前記検出装置と、ドアに設けられるキーシリンダの操作に応じてアンロック位置からロック位置及びその逆へ移動可能なロックレバーと、を備えた自動車用ドアロック装置において、前記操作装置は、前記キーシリンダであり、前記伝達部材は、前記キーシリンダのアンロック操作に応じて前記初期位置から前記第1の駆動方向へ回動することを特徴とする。
【0017】
本発明に係る自動車用ドアロック装置は、前記検出装置と、ドアに設けられるキーシリンダの操作に応じてアンロック位置からロック位置及びその逆へ移動可能なロックレバーと、前記ロックレバーのアンロック位置を検出するポジションスイッチと、前記ロックレバーのアンロック位置とロック位置との間の中間位置を境にして、前記ロックレバーに作用する付勢方向が反転するスプリングと、を備えた自動車用ドアロック装置において、前記操作装置は、前記キーシリンダであり、前記伝達部材は、前記キーシリンダのアンロック操作に応じて前記初期位置から前記第1の駆動方向へ回動し、前記キーシリンダのロック操作に応じて前記初期位置から前記第2の駆動方向へ回動し、前記検出スイッチは、前記キーシリンダのアンロック操作に応じて、前記ロックレバーがロック位置から中間位置に達する前に、前記検出レバーが前記第1の検出位置に回動することにより前記キーシリンダのアンロック操作を検出し、その後に、前記ポジションスイッチが前記ロックレバーのアンロックを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る作動伝達構造によると、伝達部材の回動により被伝達部材を検出位置に回動させたあと、被伝達部材を検出位置から一従動方向へ大きく過回動させないため、被伝達部材の耐久性向上を図ることができる。
本発明に係る検出装置によると、伝達部材の回動により検出スイッチの検出レバーを検出位置に回動させたあと、検出レバーを検出位置から一従動方向へ大きく過回動させないため、検出スイッチの耐久性向上を図ることができる。
本発明に係る自動車用ドアロック装置によると、スプリングの付勢方向が反転する前に、検出スイッチがキーシリンダのアンロック操作を検出することにより、キーシリンダのアンロック操作をポジションスイッチのアンロック検出よりも早期に確実に検出できると共に、検出スイッチの耐久性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係るドアロック装置の後方から見た正面図である。
【
図2】
図1における矢印II方向から見た
ドアロック装置の車内
側の側面図である。
【
図3】
図1における矢印III方向から見た
ドアロック装置の車外
側の側面図である。
【
図4】ロック状態にあるときのドアロック装置の内部構造を明示するための車内側面図である。
【
図5】アンロック状態にあるときのドアロック装置の内部構造を明示するための車内側面図である。
【
図6】ロック状態にあるときの
ドアロック装置の要部の車内側面図である。
【
図7】キーシリンダがアンロック操作されたときの
ドアロック装置の要部の初期動作を示す車内側面図である。
【
図8】キーシリンダがアンロック操作されたとき、
ドアロック装置の要部が初期動作からさらに作動した状態を示す車内側面図である。
【
図9】キーシリンダがアンロック操作されたとき、
ドアロック装置の要部がさらに作動した状態を示す車内側面図である。
【
図10】キーシリンダのアンロック操作に基づいて、
ドアロック装置の要部がアンロック位置に作動した状態を示す車内側面図である。
【
図11】アンロック状態にあるときの
ドアロック装置の要部の車内側面図である。
【
図12】
図6におけるXII-XII線断面図である。
【
図13】
ドアロック装置の要部の作動タイミングを説明するためのタイムチャート図である。
【
図14】検出装置における変形例の動作説明図である。
【
図15】作動伝達構造における変形例の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1~3に示すドアロック装置1は、自動車の図示略のフロントドア(以下、ドアと記す)内の後端部に取り付けられ、ドアを閉鎖状態に保持するための噛合ユニット2と、噛合ユニット2に組み付けられる操作ユニット3とを備える。
【0021】
特に
図1に示すように、噛合ユニット2は、ドア内に図示略のボルトにより固定されるボディ4を有し、当該ボディ4内に、前後方向を向くラッチ軸5により枢支されドアの閉鎖時に車体側に設けられたストライカSと係合可能なラッチ6と、前後方向を向くポール軸7により枢支されラッチ6に係脱可能なポール8とを配置し、ボディ4の前面側に、ポール8と一体的に回動可能なオープンレバー9(
図4、5参照)を配置することで構成される。
【0022】
ドアが閉じられると、ストライカSは、相対的に車内側からボディ4に設けられたストライカ進入溝41内に進入してラッチ6に係合する。ラッチ6は、
図1に示すオープン位置からラッチ軸5を中心に反時計方向へ略90度回動すると共に、ポール8は、図示略のスプリングの付勢力によりラッチ6に係合することによりラッチ6のオープン方向(
図1において時計方向)回動を阻止してドアを閉鎖状態に保持する。
【0023】
ドアが閉じられている場合には、ドアの車外側に設けられるアウトサイドハンドルOH又はドアの車内側に設けられるインサイドハンドルIHの開操作に基づくオープンレバー9の回動により、ポール8をオープン方向(
図1において時計方向)へ回動させてラッチ6から離脱させることでドアの開放を可能にする。
【0024】
図2、3に示すように、操作ユニット3は、ボディ4の前面に取り付けられる合成樹脂製のハウジング10を有する。ハウジング10には、特に
図3~5に示すように、ドアの車外側に設けられるキーシリンダ(本発明に係る操作装置に相当)Kに連結されるキーレバー11と、アンロック位置及びロック位置に回動可能なロックレバー12と、ロックレバー12のアンロック位置を検出可能なポジションスイッチ13と、ロックレバー12と共にアンロック位置及びロック位置に移動可能なオープンリンク14と、キーレバー11とロックレバー12とを互いに連結する連結リンク15と、正逆回転可能なモータ16と、モータ16により正逆転し、当該回動をロックレバー12に伝達可能なウォームホイール17と、アウトサイドハンドルOHに連結されるアウトサイドレバー18と、インサイドハンドルIHに連結されるインサイドレバー19と、キーシリンダKの操作を検出するための検出装置20とが設けられる。
なお、
図4、5は、操作ユニット3の内部構造を明示するため、ボディ4の一部を切り欠くと共に、ハウジング10の後面を閉塞するためのカバー101(
図2参照)を省略して示している。
【0025】
キーレバー11は、ハウジング10の下部に車内外方向を向く軸113により回動可能に枢支されると共に、ハウジング10外に露呈する外部レバー111及びハウジング10の内側に配置され、外部レバー111と一体的に回動可能な内部レバー112を有する。
【0026】
外部レバー111は、キーシリンダKのレバーK1に上下方向のロッド等の操作力伝達部材R(
図3参照)を経由して連結されることにより、キーシリンダKのロック操作によるレバーK1の中立位置から
反時計方向への回動に応じて、
図3に示す初期位置からロック方向(
図3において時計方向)へ所定角度回動し、また同じくアンロック操作によるレバーK1の中立位置か
ら時計方向への回動に応じて、初期位置からアンロック方向(
図3において反時計方向)へ所定角度回動する。
【0027】
内部レバー112は、外部レバー11と一体的に
図4、5に示す
各初期位置からロック方向(
図4、5において反時計方向)及びアンロック方向(
図4、5において時計方向)へ所定角度回動すると共に、下部に設けた円弧状の長孔112aが連結リンク15を介してロックレバー12に連結され、上下方向に移動する端部が後述のリンク23の下部に連結される。これにより、キーシリンダKのアンロック操作及びロック操作は、キーレバー11、連結リンク15を経由してロックレバー12に伝達され、また、キーレバー11、リンク23、後述の伝達部材21を経由して検出スイッチ
22に伝達される。なお、長孔112aは、ロックレバー12のロック位置からアンロック位置及びその逆への移動量に相当する長さより若干長く設定される。
【0028】
ロックレバー12は、車内外方向を向く軸121によりハウジング10内に所定角度回動可能に枢支されると共に、
図4に示すロック位置から
図5に示すアンロック位置及びその逆へ回動可能であって、ハウジング10に支持されたオーバーセンタースプリング25の付勢力によりそれぞれの方向へ付勢される。ロックレバー12は、ハウジング10に設けられた第1ストッパ部104(例えば、
図6参照)に当接することによりロック位置に保持され、ハウジング10に設けられた第2ストッパ部105(例えば、
図11参照)に当接することによりアンロック位置に保持される。
【0029】
ロックレバー12の下端部には、ドアの車内側に設けられるロックノブLKの操作力を伝達可能な操作力伝達部材24の端部、及び連結リンク15が連結される。さらに、ロックレバー12には、ウォームホイール17がモータ16の駆動により回動した際、ウォームホイール17の表裏面にそれぞれ設けられた複数(本実施形態においては3個)の突部171に対して選択的に係合可能な第1、
2アーム部122、123が設けられる。これにより、ロックレバー12は、ロックノブLK及びキーシリンダKの手動操作、並びにモータ16の電動によるウォームホイール17の回動に基づいて、オーバーセンタースプリング25の付勢力に抗して、
図4に示すロック位置から
図11に示すアンロック位置及びその逆へ回動する。
【0030】
オーバーセンタースプリング25は、
図6~11から理解できるように、コイル部251がハウジング10に支持され、一方のアーム部252がハウジング10に固定され、他方の山形状のアーム部253が自由端となっている。ロックレバー12は、自体に設けた突部125が他方のアーム部253を撓ませながら摺動することにより、ロック位置からアンロック位置及びその逆へ回動可能である。
【0031】
ロックレバー12に作用するオーバーセンタースプリング25の付勢方向は、ロックレバー12のアンロック位置とロック位置との間の中間位置を境にして反転する。すなわち、ロックレバー12が中間位置よりもアンロック位置寄り側に位置しているときには、オーバーセンタースプリング12の付勢力はアンロック方向へ作用し、ロックレバー12が中間位置よりもロック位置寄り側に位置しているときには、オーバーセンタースプリング12の付勢力はロック方向へ作用する。
【0032】
図4、5に示すように、オープンリンク14は、下部に設けた鼓状の支持孔141がアウトサイドレバー18の端部181に前後方向へ揺動可能に嵌合されると共に、上下方向の長孔142がロックレバー12に対して上下方向に摺動可能に嵌合されることにより、ロックレバー12のアンロック位置及びロック位置への移動に従動して、端部181を中心に
図4に示すロック位置から
図11に示すアンロック位置及びその逆へ揺動可能であり、かつアウトサイドハンドルOHの開操作に伴うアウトサイドレバー18の回動に基づいてオープン方向(上方)へ移動する。
【0033】
ウォームホイール17は、軸26によりハウジング10に回動可能に枢支されて、モータ16の回転軸に止着されたウォーム161に噛合することにより、モータ16の電動により正逆転する。
【0034】
図4に示すように、ロックレバー12及びオープンリンク14がロック位置にあるとき、車内に設けられた操作スイッチ又は携帯用の操作スイッチのアンロック操作に基づいてモータ16が回転した場合には、ウォームホイール17がアンロック方向(
図4において反時計方向)へ回動して、裏面側の複数の突部171のうち一つの突部171が第2アーム部123に対して当接する。これにより、ロックレバー12は、オーバーセンタースプリング25の付勢力に抗してアンロック方向(
図4において時計方向)へ回動して
図5に示す
アンロック位置に移動する。そして、ロックレバー12及びオープンリンク14がアンロック位置に移動すると、その直前にポジションスイッチ13の検出レバ
ー131がロックレバー12の被検出部124に接触することでオンになって、モータ16の回転は停止する。また、ロックノブLKがアンロック操作された場合には、ロックノブLKのアンロック操作が操作力伝達部材24を経由してロックレバー12に伝達されることで、ロックレバー12は、オーバーセンタースプリング25の付勢力に抗してロック位置からアンロック位置に移動する。
なお、キーシリンダKがアンロック操作された場合の動作については、後で詳述する。
【0035】
図5に示すように、ロックレバー12及びオープンリンク14がアンロック位置にあるとき、車内に設けられた操作スイッチまたは携帯用の操作スイッチのロック操作に基づいてモータ16が回転した場合には、ウォームホイール17がロック方向(
図5において時計方向)へ回動して、表面側の複数の突部171のうち一つの突部171が第1アーム部122に対して当接する。これにより、ロックレバー12は、オーバーセンタースプリング25の付勢力に抗してロック方向(
図5において反時計方向)へ回動して
図4に示すロック位置に移動する。そして、ロックレバー12及びオープンリンク14がロック位置に移動すると、その直前にポジションスイッチ13の検出レバ
ー131がロックレバー12の被検出部124から離れることで、ロックレバー12がロック位置に移動したことが検出されて、モータ16の回転を停止させる。また、ロックノブLKがロック操作された場合には、ロックノブLKのロック操作が操作力伝達部材24を経由してロックレバー12に伝達されることで、ロックレバー12は、オーバーセンタースプリング25の付勢力に抗してアンロック位置からロック位置に移動する。
【0036】
アウトサイドレバー18は、ハウジング10の下部に前後方向を向く軸182(
図1参照)により所定角度回動可能に枢支されると共に、車外側端部が上下方向を向く操作力伝達部材27を介してアウトサイドハンドルOHに連結されると共に、車内側の端部181には前述のようにオープンリンク14の支持孔141が連結されることによって、アウトサイドハンドルOHのドア開操作に基づく回動によりオープンリンク14を上方へ移動させる。
【0037】
図5に示すように、ロックレバー12及びオープンリンク14がアンロック位置にあるアンロック状態において、アウトサイドレバー18がアウトサイドハンドルOHのドア開操作に基づいて回動した場合には、オープンリンク14がアンロック位置から上方へ移動して、オープンリンク14に設けた解除部143がオープンレバー9に対して下方から当接する。これにより、ポール8は、オープンレバー9と一緒にオープン方向へ回動して、ラッチ6との係合を解除してドアの開きを可能にする。
【0038】
また、
図4に示すように、ロックレバー12及びオープンリンク14がロック位置にあるロック状態において、アウトサイドレバー18がアウトサイドハンドルOHのドア開操作に基づいて回動した場合には、オープンリンク14がロック位置から上方へ移動するが、この場合には解除部143がオープンレバー9の前方を横切るように上方へ移動するため、ポー
ル8をオープン方向へ回動させることができず、ドアを開けることはできない。
【0039】
インサイドレバー19は、ハウジング10に車内外方向を向く軸191により所定角度回動可能に枢支され、下部が操作力伝達部材28を介してインサイドハンドルIHに連結される。これにより、インサイドレバー19は、インサイドハンドルIHの開操作に基づいて、初期位置(
図4、5に示す位置)からオープン方向(
図4、5において時計方向)へ所定角度回動することにより、自体に設けた当接部192がアウトサイドレバー18の被当接部183に下方から当接して、アウトサイドレバー18をオープン方向に回動させて、ロックレバー12及びオープンリンク14がロック位置にあれば、上述のようにしてドアを開けることができる。
【0040】
検出装置20は、ハウジング10に支持される伝達部材21と、伝達部材21の回動に伴ってオン・オフするキースイッチ(本発明に係る検出スイッチに相当)22と、キーレバー11の回動に連動して上下動可能なリンク23と、を含んで構成される。なお、検出装置20は、リンク23を必ずしも必要するものではない。例えば、伝達部材21をキーレバー11に直接した連結した場合には、リンク23を省略することができる。
【0041】
さらに、本発明に係る作動伝達構造は、伝達部材21と、被伝達部材をなすキースイッチ22の検出レバー221とを含んで構成され、検出装置20及び自動車用ドアロック装置以外の装置にも適用可能である。
【0042】
キースイッチ22は、ハウジング10に固定されると共に、電気的接点を内蔵したケーシング222と、ケーシング222に回転軸221aにより所定角度回動可能に枢支された被伝達部材をなす検出レバー221とを有する。
【0043】
検出レバー221は、常時は
図6、11に示す初期位置
(従動初期位置)に図示略のスプリングにより保持され、初期位置から
一従動方向である時計方向へ所定角度回動することにより、キーシリンダKがアンロック操作されたことを検出し、初期位置から
他方の従動方向である反時計方向へ所定角度回動することにより、キーシリンダKがロック操作されたことを検出する。なお、検出レバー221の回動許容範囲は、予め定めた最大角度に設定される。したがって、検出レバー221は、最大角度を超えた位置までは実質的に回動不能である。
【0044】
リンク23(本発明に係る「移動部材」に相当)は、ハウジング10に設けたガイド部103により上下方向へ直線運動可能に支持されると共に、上端部231が伝達部材21の後端部に設けた連結軸部211に対して相対的に所定角度回動可能に連結され、下端部に設けた前後方向の長孔232が内部レバー112に設けた連結軸部112bに連結される。これにより、内
部レバー112がキーシリンダKのロック操作又はアンロック操作に基づいて、初期位置から反時計方向又は時計方向へ回動した場合には、リンク23は、
図6、11に示す初期位置から下方又は上方へ所定量直線移動することで、当該直線移動を回転運動に変換して伝達部材21に伝達する。
【0045】
リンク23の上端部231、すなわち伝達部材21に対する連結部位は、
図6、11に示すように、伝達部材21及びリンク23が共に初期位置にある場合には、ハウジング10に設けられた後述の軸102に対して最も接近した位置にあり、内部レバー112の時計方向又は反時計方向への回動に伴って、リンク23が上昇又は下降するにしたがって、軸102から離れるように移動する。
【0046】
伝達部材21は、キースイッチ22の後近傍に配置され、自体に設けた前後方向を向く長孔212がハウジング10にあってキースイッチ22の近傍に設けた車内側へ向けて突出する軸102に嵌合されることにより、回転軸線方向に対して直交する遠近方向(
図6~11において左右方向)へ所定量移動可能で、かつ軸102回りに所定角度回動可能に支持されると共に、後端部に設けた連結軸部211がリンク23の上端部231に所定角度回動可能に連結される。なお、伝達部材21が
図6、11に示す初期位置にある場合には、軸102は、伝達部材21の長孔212の後端に位置している。また、伝達部材21の連結軸部211は、リンク23の上端部231に対して少なとも前後方向に実質的に遊びが生じないように回動可能に連結される。
【0047】
さらに、伝達部材21は、軸102を境にして、検出スイッチ22に近接する側の前側に第1当接部213、第2当接部214及び収容部215を有し、後側にリンク23を連結するための連結軸部211を有する。
【0048】
第1当接部213は、伝達部材21が初期位置から
図6、11において
一駆動方向である反時計方向(アンロック方向)へ回動した場合、検出スイッチ22の検出レバー221に対して上方から当接することで、検出レバー221を回転軸221aを中心に
一従動方向である時計方向へ回転させる。
【0049】
第2当接部214は、伝達部材21が初期位置から
図6、11において
他方の駆動方向である時計方向(ロック方向)へ回動した場合、検出スイッチ22の検出レバー221に対して下方から当接することで、検出レバー221を回転軸221aを中心に
他方の従動方向である反時計方向へ回転させる。
【0050】
収容部215は、第1当接部213と第2当接部214との間にあって、
図12から理解できるように、表面側が覆い部215aにより閉塞されて、検出レバー221の先端部及びその近傍を収容する。検出レバー221を伝達部材21の収容部215に収容することにより、検出レバー221の軸線方向への振れを覆い部215aにより抑えて、検出レバー221に対する伝達部材21の第1当接部213及び第2当接部214の当接を確実なものとすることができる。
【0051】
上述により、リンク23がキーシリンダKのアンロック操作に基づいて初期位置から上昇すると、これに伴って、リンク23の上端部231が軸102から離れる上方へ移動するため、伝達部材21の連結軸部211は、軸102に対して後斜め上方へ移動する。これにより、伝達部材21は、軸102を中心にして初期位置から反時計方向へ回動しつつ後斜め上方へ移動する。伝達部材21が後斜め上方に移動すると、検出レバー221に対する第1当接部213の当接部位が検出レバー221の回転軸221aから離れる方向へ移動する。
【0052】
次に、
図6~13に基づいて、本実施形態に係る要部(キーレバー11、ロックレバー12、ポジションスイッチ13、検出装置20、作動伝達構造)の作用について説明する。
【0053】
図6は、ロック状態、
図7~10は、アンロック操作状態、
図11は、アンロック状態にあるときの要部の側面図、
図12は、
図6におけるXII-XII線断面図、
図13は、要部の動作のタイミングを説明するためのタイムチャート図である。
【0054】
図6に示すロック状態において、キーシリンダKがアンロック操作されると、当該アンロック操作が操作力伝達部材Rを経由してキーレバー11の内部レバー112に伝達される。内
部レバー112は、キーシリンダKのアンロック操作に基づいて、
図6に示す初期位置Aから時計方向へ回動し、当該回動を連結リンク15を経由してロックレバー12、またリンク23を経由して伝達部材21にそれぞれ伝達する。
【0055】
先ず、
図7に示すように、内部レバー112が初期位置Aから角度A1回動すると、リンク23は、初期位置Bから位置B1迄上昇移動する。これにより、伝達部材21は、軸102を支点として、反時計方向へ回動しつつ後斜め上方へ移動して、伝達部材21の第1当接部213がキースイッチ22の検出レバー
221の上面に当接する。
【0056】
なお、
図7に示す状態においては、内部レバー112の長孔112aの後端と連結リンク15の連結軸151との間に時計方向への初期遊びがあるため、内部レバー112の時計方向への初期回動はロックレバー12には伝達されない。また、伝達部材21の第1当接部213と検出レバー
221との間にも初期遊びがあるため、伝達部材21の反時計方向への初期回動は検出レバー
221に対しても伝達されていない。
【0057】
さらに、キーシリンダKのアンロック操作に伴って、内部レバー112が時計方向へさら
に回動して
図8に示す角度A2迄回動すると、ロックレバー12は、ロック位置からアンロック方向へ回動して、オーバーセンタースプリング25の付勢方向反転位置(ロック位置とアンロック位置との間の中間位置)の手前位置
C迄回動する。また、リンク23は、さらに上昇して位置B2迄上昇移動する。
【0058】
図8に示すように、リンク23が位置B2迄上昇移動すると、伝達部材21は、軸102を支点して反時計方向へ回動しつつ後斜め上方へさらに移動する。これに伴って、キースイッチ22の検出レバー
221が、回転軸221aを中心にして初期位置Nから時計方向に所定角度θ1、すなわち検出位置まで回動すると、キースイッチ22は、ケーシング222内の電気的接点であるアンロック接点がオンになることでアンロックを検出する。アンロック検出信号は、車載搭載の図示略のECU(Electronic Control Unit)に送信される。
【0059】
図13から理解できるように、キースイッチ22がキーシリンダKのアンロック操作を検出するタイミングは、ロックレバー12がオーバーセンタースプリング25の付勢方向反転
位置の手前位置Cに達した時点、換言すると、オーバーセンタースプリング25の付勢方向が反転する前に設定される。このようにすると、キースイッチ22におけるアンロック検出を、ポジションスイッチ13におけるアンロック検出よりも確実に先に検出することができるため、キーシリンダKが正規のユーザによるキープレート使用によりアンロック操作されたのか、不正行為によりロックレバー12がアンロック操作されたかを確実に判別することが可能となる。
【0060】
さらに、
図9に示すように、内部レバー112がキーシリンダKのアンロック操作に基づいて角度A3迄回動すると、ロックレバー12は、オーバーセンタースプリング25の付勢方向反転位置(中間位置)を通過して、オーバーセンタースプリング25のアンロック方向への付勢力によりアンロック方向へ勢いよく回動する。ポジションスイッチ13は、検出レバー131がロックレバー12の被検出部124に接触することで、ロックレバー12のアンロック位置を検出する。また、リンク23は、内部レバー112の時計方向への回動に伴って位置B3迄上昇移動し、当該移動を伝達部材21に伝達する。伝達部材21は、リンク23の上昇移動に伴って、さらに反時計方向へ回動しつつ後斜め上方に移動する。検出レバー
221は、伝達部材21の回動に伴って、さらに時計方向へ回動して、自体の最大回動位置、又はその直前位置
である回動角度θ2
の位置迄回動する。
【0061】
さらに、
図10に示すように、内部レバー112がキーシリンダKのアンロック操作に基づいて角度A4迄回動すると、ロックレバー12が第2ストッパ部105に当接してアンロック位置に停止することで、内部レバー112のそれ以上の回動は阻止される。ポジションスイッチ13は、検出レバー131がロックレバー12の被検出部124に接触したまま、ロックレバー12のアンロック位置に移動したことを検出する。また、リンク23は、内部レバー112の時計方向への回動に伴って位置B4迄上昇移動し、当該移動を伝達部材21に伝達する。しかし、伝達部材21は、リンク23の上昇移動に伴って、反時計方向へさらに回動するが、後斜め上方へさらに移動することから、検出レバー221に対する第1当接部213の当接部位が検出レバー221の回転軸221aから離れる方向へ移動するため、キースイッチ22の検出レバー221は、
図9に示す
回動角度θ2の直前位
置から逆に当該
直前位
置よりも小
さい回動角度
θ3の位
置に回動する。
【0062】
上述により、キースイッチ22がキーシリンダKのアンロック操作を検出したあと、伝達部材21がキーシリンダKのアンロック方向への操作に基づいて反時計方向へさらに回動しても、検出レバー221を検出位置から時計方向へ大きく過回動させないため、検出レバー221に対して時計方向へ無理な負荷を与えることがない。よって、キースイッチ22は、キーシリンダKのアンロック操作を早期に検出し、かつ検出レバー221の破損を確実に防止できる。
【0063】
ロックレバー12がアンロック位置に回動したあとは、キーシリンダKのアンロック操作を止めて、キーシリンダKを初期位置に戻す。これにより、
図11に示すように、ドアロック装置1は、ロックレバー12及びオープンリンク14がアンロック位置に保持され、キーレバー11、リンク23、伝達部材21及びキースイッチ22の検出レバー221がそれぞれの初期位置に戻ってアンロック状態となる。
【0064】
図11に示すアンロック状態において、キーシリンダKがロック操作された場合には、図示は省略するが、当該ロック操作が操作力伝達部材Rを経由してキーレバー11の内部レバー112に伝達される。内
部レバー112は、キーシリンダKのロック操作に基づいて、
図11に示す初期位置から反時計方向(ロック方向)へ回動し、当該回動を連結リンク15を経由してロックレバー12、またリンク23を経由して伝達部材21にそれぞれ伝達する。
【0065】
内部レバー112が反時計方向へ回動すると、リンク23が初期位置Bから下降移動することで、伝達部材21は、軸102を支点として、時計方向へ回動しつつ後斜め下方へ移動して、伝達部材21の第2当接部214がキースイッチ22の検出レバー221の下面に当接する。これにより、キースイッチ22は、検出レバー221が回転軸221aを中心にして反時計方向へ所定角度回動することで、ロック側接点がオンになって、キーシリンダKのロック操作を検出する。この場合においても、キーシリンダKがアンロック操作された場合と同様に、伝達部材21が軸102を支点して時計方向へ回動しつつ後斜め下方へ移動するため、キースイッチ22の検出レバー221をロック側接点がオンになる検出位置から時計方向へ大きく過回動させることがない。
【0066】
また、伝達部材21の初期位置から反時計方向への回動と併行して、内部レバー112の反時計方向への回動に応じて、ロックレバー12は、オーバーセンタースプリング25の付勢力に抗して、アンロック位置からロック位置に回動する。ロックレバー12がロック位置に回動したあとは、キーシリンダKのロック操作を止めて、キーシリンダKを初期位置に戻す。これにより、
図6に示すように、ドアロック装置1は、ロックレバー12及びオープンリンク14がロック位置に保持され、キーレバー11、リンク23、伝達部材21及びキースイッチ22の検出レバー221がそれぞれの初期位置に戻ってロック状態となる。
【0067】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、次のような変形や変更及び組み合わせを施すことが可能である。
【0068】
(1)検出装置20を、
図14に示す変形例のように、前記実施形態で説明した検出装置20における直線運動可能な前記リンク23を、回転運動可能な移動部材29に変更する。
この変形例について説明すると、移動部材29は、キーシリンダKのロック操作に応じて初期位置Dから軸30を中心に時計方向へ所定角度回動し得るように、キーシリンダKに直接又はキーレバー11等を介して連結されると共に、前端部291が伝達部材21の連結軸部211に回動可能に連結される。
【0069】
図14(a)~(e)に基づいて、変形例の動作について説明する。なお、
図14(a)~(e)において、前記実施形態と同一機能を有する部位については、前記実施形態と同じ符号を付して、説明を省略する場合もある。
【0070】
先ず、キーシリンダKのアンロック操作に応じて、移動部材29が図
14(a)に示す初期位置Dから時計方向へ角度D1回動すると、図
14(b)に示すように、伝達部材21は、自体の初期位置Eから軸102を中心に反時計方向へ角度E1回動する。伝達部材21の初期回動(角度E1の回動)は、伝達部材21の第1当接部213とキースイッチ22の検出レバー221との間に回動方向への初期遊びが設定されているため、検出レバー221に対して伝達されない。なお、図
14(a)は、前記実施形態における
図6に示す状態に相当し、図
14(b)は、前記実施形態における
図7に示す状態に相当する。
【0071】
図
14(c)に示すように、キーシリンダKのアンロック操作に応じて、移動部材29が前端部291が上方へ移動し得るように、さらに時計方向へ角度D2回動すると、伝達部材21は、軸102を中心に反時計方向へ角度E2回動しつつ右斜め上方へ移動し、第1当接部213が検出レバー221に対して上方から当接する。これにより、検出レバー221は、自体の初期位置Fから回転軸221aを中心に時計方向へ角度F1回動し、検出スイッチ22の電気的接点のアンロック接点をオンにする。なお、図
14(c)は、前記実施形態における
図8に示す状態に相当する。
【0072】
図
14(d)に示すように、キーシリンダKのアンロック操作に応じて、移動部材29がさらに時計方向へ角度D3回動すると、伝達部材21は、軸102を中心にさらに反時計方向へ角度E3
回動しつつ右斜め上方へ移動する。これにより、検出レバー221は、検出スイッチ22の電気的接点のアンロック接点をオンに維持しつつ、回転軸221aを中心に時計方向へ角度F1よりも僅かに大き
い角度F2回動する。なお、図
14(d)は、前記実施形態における
図9に示す状態に相当する。
【0073】
図
14(e)に示すように、キーシリンダKのアンロック操作に応じて、移動部材29がさらに時計方向へ回動して最大角度D4迄回動すると、伝達部材21は、軸102を中心にさらに反時計方向へ角度E4
回動しつつ右斜め上方へ移動する。しかし、伝達部材21の右斜め上方への移動に伴って、検出レバー221に対する伝達部材21における第1当接部213の当接部位が回転軸221aから離れる方向に移動するため、検出レバー221は、角度F2を保持したまま時計方向へ回動しない。なお、図
14(e)は、前記実施形態における
図10に示す状態に相当する。
【0074】
(2)作動伝達構造を、
図15に示す変形例のような構成とする。
図15において、符号31で示す回動部材は、本発明に係る伝達部材又は前記実施形態の伝達部材21に相当し、符号32で示す被伝達部材は、本発明に係る被伝達部材又は前記実施形態の検出レバー221に相当する。
【0075】
回動部材31は、被伝達部材32の近傍に設けた軸311により所定角度回動可能に支持されて、キーシリンダK、アウトサイドハンドルOH、インサイドハンドルIH等の操作装置の操作に応じて、軸311を中心に、
図15(a)に示す初期位置Gから時計方向又は反時計方向へ回動し得るように、操作装置に連結される。
【0076】
さらに、回動部材31は、被伝達部材32に対して回動方向に当接可能な第1当接部312aおよび第2当接部312bと、収容部314と、自体の外周部にあって、軸311を中心とする円弧部313とを有する。
【0077】
被伝達部材32は、軸321により所定角度回動可能に支持されると共に、図示略のスプリングにより図15(a)に示す、収容部314中の初期位置Hに保持される。被伝達部材32の初期位置Hからの回動は、図示略の他のレバーに伝達されることで、操作装置の操作は、回動部材31及び被伝達部材32を経由して、他のレバーに伝達される。
【0078】
回動部材31が、操作装置の操作に応じて、図15(a)に示す初期位置Gから例えば時計方向へ所定角度G1回動すると、回動部材31の第2当接部312bが被伝達部材32のアーム部322に対して下方から当接する。これにより、図15(b)に示すように、被伝達部材32は、図15(a)に示す初期位置Hから検出位置H1に回動する。回動部材31がさらに時計方向へ回動すると、図15(c)に示すように、被伝達部材32が検出位置H1から反時計方向へ僅かに回動することで、被伝達部材32のアーム部322が第2当接部312bから外れて、円弧部313に乗り上げる。そして、さらに、回動部材31が図15(c)に示す位置からさらに時計方向へ回動しても、被伝達部材32のアーム部322の先端部が回動部材31の円弧部313を回動方向に沿って相対的に移動するため、被伝達部材32は、検出位置H1から反時計方向へ大きく過回動しない。
【符号の説明】
【0079】
1 ドアロック装置 2 噛合ユニット
3 操作ユニット 4 ボディ
41 ストライカ進入溝 5 ラッチ軸
6 ラッチ 7 ポール軸
8 ポール 9 オープンレバー
10 ハウジング 101 カバー
102 軸 103 ガイド部
104 第1ストッパ部 105 第2ストッパ部
11 キーレバー 111 外部レバー
112 内部レバー 112a 長孔
112b 連結軸部 113 軸
12 ロックレバー 121 軸
122 第1アーム部 123 第2アーム部
124 被検出部 125 突部
13 ポジションスイッチ 131 検出レバー
14 オープンリンク 141 支持孔
142 長孔 143 解除部
15 連結リンク 151 連結軸
16 モータ 161 ウォーム
17 ウォームホイール 171 突部
18 アウトサイドレバー 181 端部
182 軸 183 被当接部
19 インサイドレバー 191 軸
192 当接部 20 検出装置
21 伝達部材 211 連結軸部
212 長孔 213 第1当接部
214 第2当接部 215 収容部
215a 覆い部 22 キースイッチ(検出スイッチ)
221 検出レバー(被伝達部材) 221a 回転軸
222 ケーシング 23 リンク(移動部材)
231 上端部 232 長孔
24 操作力伝達部材
25 オーバーセンタースプリング(スプリング)
251 コイル部 252、253 アーム部
26 軸 27、28 操作力伝達部材
29 移動部材 30 軸
31 回動部材(伝達部材) 311 軸
312a 第1当接部 312b 第2当接部
313 円弧部 314 収容部
312 当接部 313 円弧部
32 被伝達部材 321 軸
322 アーム部 IH インサイドハンドル
LK ロックノブ K キーシリンダ(操作装置)
OH アウトサイドハンドル R 操作力伝達部材
S ストライカ