(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】認識カメラ校正プレートおよび認識カメラ校正方法
(51)【国際特許分類】
H04N 17/00 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
H04N17/00 200
(21)【出願番号】P 2020137738
(22)【出願日】2020-08-18
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】塙 康弘
【審査官】塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-070135(JP,A)
【文献】特開2006-226676(JP,A)
【文献】特開2011-035148(JP,A)
【文献】特開2006-030157(JP,A)
【文献】特開2017-167190(JP,A)
【文献】特開平07-162200(JP,A)
【文献】特開平07-306007(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0271503(US,A1)
【文献】国際公開第2006/098258(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第111056302(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
認識カメラを校正するための認識カメラ校正プレートであり、
第1の屈折率を有する平板形状の第1の透光プレートと、
前記第1の透光プレートの裏面に積層され、前記第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する平板形状の第2の透光プレートと、
を有し
前記第1の透光プレートと前記第2の透光プレートの界面には入射光の一部を透過し一部を反射する面が形成され、
前記第1の透光プレートの表面には第1の基準マークが形成され、
前記第2の透光プレートの表面の前記第1の基準マークに対向する位置には第2の基準マークが形成され、
前記第1の透光プレートの厚さと前記第2の透光プレートの厚さとの比が、前記第1の透光プレートの表面に略垂直な方向または前記第2の透光プレートの表面に略垂直な方向
に前記認識カメラ
が位置する場合に、前記第1の基準マークと前記第2の基準マークとに同時に
前記認識カメラの焦点が合う比にな
るように選定されている、
ことを特徴とする認識カメラ校正プレート。
【請求項2】
前記第1の透光プレートの表面および前記第2の透光プレートの表面および前記入射光の一部を透過し一部を反射する面が平滑である
ことを特徴とする請求項1に記載の認識カメラ校正プレート。
【請求項3】
前記第1の透光プレートおよび前記第2の透光プレートのうちの少なくとも一方がガラスである、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の認識カメラ校正プレート。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の認識カメラ校正プレートを用い、
前記認識カメラ校正プレートの表面に略垂直な方向から認識カメラで前記認識カメラ校正プレートを撮影し、
前記第1の基準マークの認識位置である第1の認識位置を取得し、
前記第2の基準マークの認識位置である第2の認識位置を取得し、
前記第1の認識位置と、前記第2の認識位置との差分と、前記第1の透光プレートの厚さと、前記第2の透光プレートの厚さと、前記第1の屈折率と、前記第2の屈折率とに基づいて、前記認識カメラの光軸の、前記認識カメラ校正プレートの表面に垂直な方向からの角度ずれ量を算出する
ことを特徴とする認識カメラ校正方法。
【請求項5】
前記角度ずれ量に基づいて、前記認識カメラの前記認識カメラ校正プレートの表面に平行な面内の位置ずれ量を算出する
ことを特徴とする請求項4に記載の認識カメラ校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、認識カメラ校正プレートおよび認識カメラ校正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイスを基板の所定の位置に高精度に位置決めして搭載するために、電子デバイスおよび基板に形成した位置決めマークが利用されている。多くの場合、まず、電子デバイスおよび基板の位置決めマークを認識カメラで認識して、それぞれの位置決めマーク位置を算出し、電子デバイスおよび基板の位置を高精度に計測する。そして、電子デバイスあるいは基板を移動させて、電子デバイスを、基板の所定の搭載位置に位置決めして搭載する。
【0003】
上記の工法において、搭載装置が稼働を続けると、装置各部の温度変化や摩擦によって、カメラの位置にずれが生じる。このため、電子デバイスを基板へ高精度で位置決めするためには、認識カメラを正確に校正することが必要となる。この校正とは、基準状態からの認識カメラのずれ量の測定である。基準状態は装置ごとに任意に設定することができるが、例えば、搭載装置を立ち上げて、搭載装置が仕様の精度を満足するように認識カメラの調整を行なった時の初期状態とすることができる。
【0004】
上記のような認識カメラの校正を正確に行う方法が、例えば特許文献1に開示されている。この技術では、実寸の刻まれた平板状の測定治具を使用する。校正に当たっては、まず、搭載治具を搭載面に配置する。次いで、測定治具を測定治具の上面に垂直な方向から、認識カメラで測定治具の画像を撮影する。この時、測定治具を昇降させ、認識カメラと測定治具との距離が異なる複数枚の画像を撮影する。そして撮影された画像から、カメラの1画素あたりの寸法と実寸との対応を、測定治具の上面高さごとに求める。また、複数枚の撮影画像における、測定治具の中心位置と撮影画像の中心位置とのズレ量と、測定治具の上面高さとの関係を求めることにより、認識カメラの撮像方向の、測定治具の上面に垂直な方向に対する傾きを求めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、測定治具の高さを変えながら複数枚の画像を撮影している。このため、測定治具の高さを、複数回変えるステップが必要になり、校正に時間がかかるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、短時間で認識カメラの校正を行うことを可能にする認識カメラ校正プレートおよび認識カメラ校正方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の認識カメラ校正プレートは、第1の屈折率を有する第1の透光プレートと、第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する第2の透光プレートとが積層された構成を有している。第1の透光プレートと第2の透光プレートとの界面には入射光の一部を透過し一部を反射する面が形成されている。第1の透光プレート1の表面には第1の基準マークが形成され、第2の透光プレートの、第1の基準マーク4に対向する位置には、第2の基準マークが形成されている。第1の透光プレートと第2の透光プレートの厚さの比は、認識カメラ校正プレートの主面の略垂直方向から観察したときに、第1の基準マークと第2の基準マークに同時に焦点が合う比になっている。
【0009】
また、本発明の認識カメラ校正方法は、上記の認識カメラ校正プレートを用い、認識カメラ校正プレートの主面の略垂直方向から認識カメラで校正プレートを撮影し、第1の基準マークの認識位置である第1の認識位置と、第2の基準マークの認識位置である第2の認識位置を取得する。そして、第1の認識位置と、第2の認識位置と、第1の透光プレートの厚さと、第2の透光プレートの厚さと、第1の屈折率と、第2の屈折率とに基づいて、カメラの光軸の、認識カメラ校正プレートの主面の略垂直方向からの角度ずれ量を算出する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の効果は、短時間で認識カメラの校正を行うことを可能にする認識カメラ校正プレートおよびカメラ校正方法を提供できることである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態の認識カメラ校正プレートを示す斜視図である。
【
図2】第2の実施形態の認識カメラ校正方法の光路の一例を示す模式図である。
【
図3】第2の実施形態の認識カメラ校正方法の別の光路の一例を示す模式図である。
【
図4】第2の実施形態の認識カメラと認識カメラ校正プレートの配置を示す斜視図である。
【
図5】第2の実施形態のカメラ基準角度の算出方法を説明するための模式図である。
【
図6】第2の実施形態の比較例を説明するための模式図である。
【
図7】第3の実施形態の第1の認識カメラと第2の認識カメラと認識カメラ校正プレートの配置を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。但し、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお各図面の同様の構成要素には同じ番号を付し、説明を省略する場合がある。
【0013】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態の認識カメラ校正プレート10を示す斜視図である。認識カメラ校正プレート10は、第1の屈折率を有する平板形状の第1の透光プレート1と、第1の屈折率とは異なる第2の屈折率を有する平板形状の第2の透光プレート2とが積層された構成を有している。第1の透光プレート1と第2の透光プレート2との界面には入射光の一部を透過し一部を反射する面3が形成されている。ここで、第1の透光プレート1の表面と入射光の一部を透過し一部を反射する面3が形成されている裏面とは平行であり、第2の透光プレート2の表面と入射光の一部を透過し一部を反射する面3が形成されている裏面とは平行である。したがって、第1の透光プレート1の表面と第2の透光プレート2の表面も平行になっている。
【0014】
第1の透光プレート1の表面には第1の基準マーク4が形成されている。また、第2の透光プレート2の表面(
図1の認識カメラ校正プレート10の下面)の、第1の基準マーク4に対向する位置には第2の基準マーク5が形成されている。すなわち、
図1に示す座標系における第1の基準マーク4と第2の基準マーク5のXY方向の位置は同一となっている。第1の基準マーク4、第2の基準マーク5の形状は任意であるが、例えば、
図1に示すように、同一の十字線とすることができる。
【0015】
第1の透光プレート1、第2の透光プレート2の材料には、例えば、屈折率の異なるガラスや、透光性樹脂を用いることができる。なかでもガラスは、表面の平坦性、平滑性に優れたプレートが得やすく、傷が付きにくいため好適である。
【0016】
第1の透光プレート1と第2の透光プレート2の厚さの比は、認識カメラ校正プレート10の主面の略垂直方向から観察したときに、同時に焦点が合う比になっている。
【0017】
上記の構成の認識カメラ校正プレート10を用いた認識カメラの校正では、まず、認識カメラ校正プレート10の主面の略垂直方向から、認識カメラで、第1の基準マーク4の位置と、第2の基準マーク5の位置を認識(計測)する。ここで、認識カメラの光軸が認識カメラ校正プレート10の主面の厳密な垂直方向からずれている(傾いている)と、第1の基準マーク4の認識位置と、第2の基準マーク5の認識位置に、傾きに応じた違いが生じる。この違いに基づいて、認識カメラの傾きを算出することができる。
【0018】
以上説明したように、本実施形態の認識カメラ校正プレートを用いれば、特許文献1のような測定対象の高さを変えながら複数枚の画像を撮影する処理を行うことなく、カメラの校正を行うことができる。このため、短時間でカメラの校正を行うことができる。
【0019】
(第2の実施形態)
本実施形態では、第1の実施形態の認識カメラ校正プレート10の詳細と、認識カメラ校正プレート10を用いたカメラの校正方法について説明する。本実施形態では、搭載機等で、認識対象物である基板の搭載面を水平面とし、認識カメラはこの搭載面に略垂直な方向から撮影を行うものとする。そして、認識カメラの光軸の、搭載面に対し厳密な垂直方向からのずれ量を取得する校正を行う。なお、以降の説明では、搭載面に平行な方向を水平方向、搭載面に垂直な方向を垂直方向と略す場合があるものとする。
【0020】
校正を行う場合には、まず認識カメラと認識カメラ校正プレート10の位置関係を固定した状態で、第1の基準マーク4と第2の基準マーク5の認識を行う。この時、第1の透光プレート1の厚さt
1と第2の透光プレート2の厚さt
2の関係は、カメラに接続されているレンズ21の開口数NA、空気の屈折率n
0、第1の透光プレート1の屈折率n
1、第2の透光プレート2の屈折率n
2に基づいて計算される。
図2、3にt
1とt
2の関係を算出するための模式図を示す。なおNAは、Numerical Apertureの略である。
【0021】
図2は、認識カメラ校正プレート10を主面が搭載面(図示せず)と平行になるように搭載面に搭載し、搭載面の略垂直方向から、認識カメラ20で、認識カメラ校正プレート10を撮影した時の光路を示す模式図である。ここで、認識カメラ20の光軸が、搭載面の垂直方向からずれがあった場合に、この角度ずれを算出し、認識カメラの認識結果を補正する校正を行うことが、本実施形態の目的である。
図2では、第1の透光プレート1に形成されている第1の基準マーク4を認識カメラ20が撮像する光路を太線で示している。
図3では、第2の透光プレート2に形成されている第2の基準マーク5を認識カメラ20が撮像する光路を太線で示している。第1の透光プレート1の厚さt
1と第2の透光プレート2の厚さt
2は、
図2および
図3に示すように、第1の基準マーク4と第2の基準マーク5に同時に焦点が合うように選定する。これにより、第1の基準マーク4と第2の基準マーク5は、認識カメラ20の位置あるいは認識カメラ校正プレート10の位置を変えることなく、同時にカメラで認識することが可能となる。
【0022】
認識カメラ20のレンズ21の開口数NAと、空気の屈折率n
0と、
図2の、第1の透光プレート1への入射角θ
Aとは次式の関係となる。
【0023】
NA=n0×sinθA (1)
θAと、屈折角θBとの関係は、空気の屈折率n0、第1の透光プレートの屈折率n1とを用いて、スネルの法則により次式となる。
【0024】
sinθA/sinθB=n1/n0 (2)
空気の屈折率n0を1とすると、式(1)、式(2)は次式となる。
【0025】
NA=sinθ
A (3)
sinθ
A/sinθ
B=n
1 (4)
第1の基準マーク4を撮像する光路(
図2)は、入射光の一部を透過し一部を反射する面3で反射するので、反射角もθ
Bとなり、第1の基準マーク4の認識位置での光路角度もθ
Bとなる。
図2において、第2の基準マーク5と、入射光の一部を透過し一部を反射する面3における太線の光路の反射点との水平距離Lは次式で表すことができる。
【0026】
L=t
1×tanθ
B (5)
第2の基準マーク5を撮像する光路(
図3)は、入射光の一部を透過し一部を反射する面3を透過するので、θ
Bと屈折角θ
Cとの関係は、第1の透光プレート1の屈折率をn
1、透光プレートの屈折率をn
2とすると、スネルの法則により次式となる。
【0027】
sinθ
B/sinθ
C=n
2/n
1 (6)
第2の基準マーク5の認識位置での光路角度もθ
Cとなる。
図3において、Lは次式で表すことができる。
【0028】
L=t2×tanθC (7)
式(5)、式(7)より
t1×tanθB=t2×tanθC (8)
となる。式(8)を変形すると
t2=t1×tanθB/tanθC (9)
式(3)より
θA=sin-1(NA) (10)
式(4)、(10)より
sinθB=sinθA/n1
θB=sin-1{sinθA/n1}
θB=sin-1{sin{sin-1(NA)}/n1} (11)
式(6)、(11)より
sinθC=sinθB×n1/n2
θC=sin-1{sinθB×n1/n2}
θC=sin-1{sin{sin-1{sin{sin-1(NA)}/n1}}×n1/n2} (12)
式(11)と式(12)で算出されたθBとθCを式(9)に入力することにより、第1の基準マーク4と第2の基準マーク5が同時に認識可能(合焦状態)となる第1の透光プレート1の厚さt1と第2の透光プレート2の厚さt2の関係が求まる。
【0029】
次に本実施形態の認識カメラ校正プレート10を使用したカメラ校正を行うための構成について説明する。
図4は、校正を行う時の、認識カメラ20と、認識カメラ校正プレート10との配置を示す斜視図である。認識カメラ校正プレート10は図示しない認識カメラ校正プレート移動手段30によって、
図4の座標系のZ方向に沿って上下できるようになっている。なお、認識カメラ校正プレート移動手段30は、認識カメラ20と認識カメラ校正プレート10との相対距離を調整するものであるため、認識カメラ校正プレート移動手段30の代わりに、認識カメラ20をZ方向に移動させる認識カメラ移動手段を設けてもよい。また、
図4には記載していないが、認識カメラ20を
図4の座標系のXY方向に移動させる手段、または認識カメラ校正プレート10をXY方向に移動させる手段、または両方の手段があってもよい。
【0030】
次に、電子デバイスを基板に搭載する場合の、本実施形態のカメラ校正方法について説明する。本実施形態の認識カメラ校正方法では、予め認識カメラ基準角度(θx、θy)を測定しておく。ここで、認識カメラ基準角度とは、任意に定めた基準状態で、認識カメラの光軸の、搭載面に垂直な方向とのなす角である。基準状態は、例えば、搭載機の立ち上げを行い、機械計測などにより、認識カメラの光軸をできるだけ搭載面の垂直方向に近づける調整を行った時の状態とすることができる。この状態で取得した角度ずれ量を基準角度とする。そして、基準状態から、ある時間が経過した、電子デバイスを基板へ搭載する直前の時点の角度ずれ量を、認識カメラ角度(θx’、θy’)とする。認識カメラ角度(θx’、θy’)と、認識カメラ基準角度(θx、θy)との差分を算出して、認識カメラ角度ずれ(Δθx、Δθy)を算出する。次いで、認識カメラ角度ずれに起因する電子デバイスおよび基板の位置合わせマークの認識位置のずれ量(ΔLx、ΔLy)を算出する。そして、そのずれ量を、認識した位置合わせマーク位置に加算(または減算)することで、位置合わせマークの認識位置を補正する。定義から、搭載直前の認識カメラ角度の、認識カメラ基準角度からの角度ずれΔθx、Δθyは次式で表すことができる。
【0031】
Δθx=θx-θx’ (13)
Δθy=θy-θy’ (14)
また、認識カメラ20内の撮像面22と、撮像素子と合焦状態の電子デバイスあるいは基板の位置合わせマークとの距離をDとすると、認識カメラ角度ずれによる位置合わせマークのXY方向の認識のずれ量(ΔLx、ΔLy)は、次式で算出できる。
【0032】
ΔL
x=D×tan(Δθ
x) (15)
ΔL
y=D×tan(Δθ
y) (16)
次に認識カメラ角度ずれ量の初期値である認識カメラ基準角度の算出方法について説明する。
図5は本実施形態のY軸周りの認識カメラ基準角度θ
yの算出方法を説明するための、認識カメラ20と認識カメラ校正プレート10とをY軸方向から見た時の模式図である。ここではY軸周りのカメラ基準角度θ
yについて説明するが、X軸周りの認識カメラ基準角度θ
xも、認識カメラ基準角度θ
yと同様の方式で算出することが可能である。
【0033】
認識カメラ20の光軸は、空気と第1の透光プレート1との境界面で屈折する。この境界面での、光軸の屈折角をθy1とすると、空気の屈折率n0、第1の透光プレート1の屈折率を1とを用いて、スネルの法則により
sinθy/sinθy1=n1/n0 (17)
となる。空気の屈折率n0を1とすると式(17)は次式となる。
【0034】
sinθy/sinθy1=n1 (18)
第1の基準マーク4を認識する光軸は、第1の透光プレート1と第2の透光プレート2の境界の入射光の一部を透過し一部を反射する面3で反射するので反射角もθy1となる。また、第2の基準マーク5を認識する光軸は、第1の透光プレート1と第2の透光プレート2の境界の入射光の一部を透過し一部を反射する面3を透過する。この時の屈折角をθy2とする。θy1とθy2との関係は、第1の透光プレート1の屈折率n1、第2の透光プレート2の屈折率n2とを用いて、スネルの法則により次式となる。
【0035】
sinθ
y1/sinθ
y2=n
2/n
1 (19)
ここで、第1の基準マーク4のX方向の認識位置(認識カメラ視野中心Q
x1を0とする)をP
x1とする。
図5における、第1の透光プレート1の表面における認識カメラ視野中心Q
x1の光軸が入射光の一部を透過し一部を反射する面3と交わる点と第1の基準マーク4との距離Fは次式で算出することができる。
【0036】
F=P
x1+t
1×tanθ
y1 (20)
また、第2の基準マーク5のX方向の認識位置(認識カメラの視野中心Q
x2を0とする)をP
x2とすると、
図5におけるFは次式で算出することができる。
【0037】
F=Px2+t2×tanθy2 (21)
式(20)、式(21)より、
Px1+t1×tanθy1=Px2+t2×tanθy2 (22)
認識カメラ20の光軸は認識カメラ校正プレート10に対して垂直に近づけるように調整するため、θyは微小角度となる。また、透光プレートの屈折率n1、n2は、空気の屈折率n0よりも大きいため、θy1、θy2はθyより小さくなる。よって次式が近似される。
【0038】
sinθy≒θy (23)
sinθy1≒tanθy1≒θy1 (24)
sinθy2≒tanθy2≒θy2 (25)
式(24)、式(25)を式(19)に代入すると次式となる。
【0039】
θy1/θy2=n2/n1
θy2=θy1×n1/n2 (26)
式(24)、式(25)を式(22)に代入すると次式となる。
【0040】
Px1+t1×θy1=Px2+t2×θy2 (27)
式(26)を式(27)に代入すると次式となる。
【0041】
Px1+t1×θy1=Px2+t2×θy1×n1/n2
Px2-Px1=t1×θy1-t2×θy1×n1/n2
Px2-Px1=(t1-t2×n1/n2)×θy1
θy1=(Px2-Px1)/(t1-t2×n1/n2) (28)
式(23)、式(24)を式(18)に代入すると次式となる。
【0042】
θy/θy1=n1
θy=θy1×n1 (29)
式(28)を式(29)に代入すると次式となる。
【0043】
θy=(Px2-Px1)/(t1-t2×n1/n2)×n1 (30)
式(30)より第1の基準マーク4および第2の基準マーク5の認識位置、第1の透光プレート1の厚さと屈折率、第2の透光プレート2の厚さと屈折率から認識カメラ基準角度θyを求めることができる。同様に第1の基準マーク4および第2の基準マーク5のY方向の認識位置をそれぞれPy1、Py2とすると、認識カメラ基準角度θxは次式で求めることができる。
【0044】
θx=(Py2-Py1)/(t1-t2×n1/n2)×n1 (31)
なお、認識カメラの座標系と方向によっては、第1の基準マーク4および第2の基準マーク5の認識位置(Px1、Py1、Px2、Py2)の符号が反転する場合がある。
【0045】
電子デバイスを基板へ搭載する時の認識カメラ20の校正は、搭載直前の認識カメラ20の角度と、認識カメラ基準角度との差分を求めることで行う。搭載直前の認識カメラ20(θx’、θy’)の測定は、搭載直前の時点で、認識カメラ基準角度(θx、θy)と同じ方法で行うことができる。そして、両者の差分から角度ずれ(Δθx、Δθy)を求め、X、Y方向のずれ量(ΔLx、ΔLy)を計算し、認識位置の補正を行うことができる。
【0046】
以上説明したように、本実施形態によれば、特許文献1のような測定対象の高さを変えながら複数枚の画像を撮影する処理を行うことなく、カメラの校正を行い、認識カメラの認識位置の補正を行うことができる。このため、短時間で、認識カメラの校正と認識位置の補正を行うことができる。
【0047】
(比較例)
上記では、第1の透光プレート1の第1の屈折率と、第2の透光プレート2の第2の屈折率が異なる認識カメラ校正プレート10を用いて、認識カメラ20の角度ずれ量が計算できることを説明した。一方、第1の屈折率と第2の屈折率とが同じ場合、上記のような角度ずれ量の計算ができない。このことを説明する。
【0048】
図6は、第1の屈折率と第2の屈折率とが同じ認識カメラ校正プレート11を用いて、上記第2の実施形態と同様な計測を行う構成を説明する模式図である。認識カメラ20の光軸は、空気と第1の透光プレート1との境界面で屈折する。この屈折角をθ
1とする。第1の基準マーク4を認識する光軸は、第1の透光プレート1と第2の透光プレート2の境界面の入射光の一部を透過し一部を反射する面3で反射し、その反射角はθ
1となる。
【0049】
一方、第2の基準マーク5を認識する光軸は、入射光の一部を透過し一部を反射する面3を透過するが、第1の屈折率と第2の屈折率が同じであるため、ここでは屈折しない。したがって、第2の透光プレート2を透過する光の屈折角もθ
1である。また
図6から明らかなように、第1の基準マーク4と第2の基準マーク5に同時に焦点が合うための、第1の透光プレート1の厚さt
1と、第2の透光プレート2の厚さt
2は同じになる。
【0050】
これらの結果、認識カメラ20が認識する第1の基準マーク4の認識位置Px1と、第2の基準マーク5の認識位置Px2は同一となる。このため、認識カメラ20が傾いていても、その傾きはPx1とPx2の差に表れない。したがって、第1の屈折率と第2の屈折率とが同じ認識カメラ校正プレート11では、カメラ角度を算出することはできない。
【0051】
(第3の実施形態)
電子デバイスの搭載機には、第2の実施形態の認識カメラ20に加えて、認識カメラ校正プレート10(搭載面)の下側にも認識カメラを持つものがある。本実施形態では、このような下方の認識カメラの校正について説明する。
【0052】
図7は、認識カメラ校正プレート10が配置される搭載面の、上方に認識カメラ20、下方に第2の認識カメラ40を有する構成を示す斜視図である。第2の認識カメラ40も、認識カメラ校正プレート10の第2の透光プレート2の表面に垂直な方向に、光軸を近づけるように調整される。
【0053】
図7から明らかなように、第2の認識カメラ40と、第2の透光プレート2および第1の透光プレート1との関係は、第2の実施形態における、認識カメラ20と第1の透光プレート1および第2の透光プレート2の関係と同じである。したがって、この関係の対応に従って、各データの置き換えを行うことによって、第2の実施形態と同様にして、第2の認識カメラ40の校正を行うことができる。このため、第2の実施形態と同様に、第2の認識カメラ40の校正と、認識位置の補正とを短時間で行うことができる。
【0054】
以上、上述した第1から第3の実施形態を模範的な例として本発明を説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態には限定されない。即ち、本発明は、本発明のスコープ内において、当業者が理解し得る様々な態様を適用することができる。
【符号の説明】
【0055】
1 第1の透光プレート
2 第2の透光プレート
3 入射光の一部を透過し一部を反射する面
4 第1の基準マーク
5 第2の基準マーク
10 認識カメラ校正プレート
20 認識カメラ
21 レンズ
22 撮像面
30 認識カメラ校正プレート移動手段
40 第2の認識カメラ