(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】トイレ装置
(51)【国際特許分類】
E03D 11/00 20060101AFI20240918BHJP
E03D 11/14 20060101ALI20240918BHJP
E03D 11/17 20060101ALI20240918BHJP
E03C 1/01 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
E03D11/00 Z
E03D11/14
E03D11/17
E03C1/01
(21)【出願番号】P 2020146235
(22)【出願日】2020-08-31
【審査請求日】2023-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】宮下 貴行
【審査官】野尻 悠平
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-111926(JP,A)
【文献】特開平08-218469(JP,A)
【文献】特開2020-063653(JP,A)
【文献】登録実用新案第3118665(JP,U)
【文献】特開平11-200461(JP,A)
【文献】特開2008-240380(JP,A)
【文献】特開2015-001081(JP,A)
【文献】特開2020-111925(JP,A)
【文献】特開2017-133288(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00- 7/00
E03D 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器本体後方に配設したトイレ室後壁に沿って設置するトイレ装置において、
前記トイレ室後方に形成したライニングと、
前記ライニング内に設置した洗浄水タンクと、
前記便器本体を支持する便器支持部と、
前記洗浄水タンクを支持する洗浄水タンク支持部と、
前記洗浄水タンク支持部の上下ガイドを介して前記洗浄水タンクの高さ位置を調整可能に構成したガイド機構と、を具備し、
前記ライニングは前記便器本体の上方位置に点検口を設けると共に前記洗浄水タンク支持部は前記便器本体に対する高さを調整可能に構成し、
前記洗浄水タンク支持部は、板厚方向を略上下方向とするタンク固定プレートと、前記タンク固定プレートから下方に向けて設けられた高さ調整フレームと、を有し、
前記上下ガイドは、前記高さ調整フレームの下方に形成されて
おり、
前記便器支持部は、前記上下ガイドと係合する摺動ガイドチャンネルを有する
ことを特徴とするトイレ装置。
【請求項2】
前記上下ガイドおよび前記摺動ガイドチャンネルは、いずれも横断面略C字状に形成され
ており、略C字状の開口を互いに同じ方向に向けている
ことを特徴とする請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記ライニングの内部に支持フレームを配設し、
前記支持フレームは、左右方向に伸延した前フレームおよび後フレームと、前後方向に伸延した左フレームおよび右フレームとを備え、
かかる前記支持フレームを前記ライニングの上部空間であって、前記洗浄水タンクの上方側に配設し、
前記洗浄水タンクの前後幅員は、前記支持フレームにおける前記前後フレーム間の幅員よりも小とし、前記洗浄水タンクの左右幅員は、前記支持フレームにおける前記左右フレーム間の幅員よりも小としたことを特徴とする請求項1
~3のいずれか1項に記載のトイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水タンクの高さを調整する為の機構を備えた大便器スタンドに関する。
【背景技術】
【0002】
大便器や小便器や洗面化粧台の配管取り回しが必要な衛生設備機器を設置する為の構成として、衛生設備機器の背面側に設けられるライニングがある。ライニングは、衛生設備機器の背後の壁面等に対して設置され、ライニングの前側に衛生設備機器が設けられる。
【0003】
ライニングには、衛生設備機器と接続する洗浄水タンク、配管、および止水栓などが内蔵されている。これらのライニング内蔵物は、定期的な点検によって清掃や交換をする必要がある。
【0004】
従来、ライニングのメンテナンス性を向上させる為に、種々の提案がされている。例えば、特許文献1では、ライニングを備えた便器の設置方法が開示されている。特許文献1に開示のライニングは、前面に点検口を備えており、点検口からライニング内蔵物の清掃あるいは交換が可能に構成されている。
【0005】
また、特許文献2では、便器本体の製造誤差、または取付施工誤差が生じた場合であっても、容易にタンクと便器本体とを接続することができる便器装置が開示されている。具体的には、特許文献2に開示の便器装置は、便器本体と、便器本体に給水する水を貯水する洗浄水タンクと、洗浄水タンクから便器に水を給水する剛性の高い給水管と、便器本体の後方に配置され洗浄水タンクを支持すると共に洗浄水タンクの高さを調節可能にするタンク支持手段と、を備えている。このような構成要素を備える便器装置によれば、便器本体の製造誤差、またはタンクや便器本体の取付施工誤差が生じた場合であっても、容易にタンクと便器本体とを剛性の高い給水管で接続することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-180522号公報
【文献】特許第6066458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した先行技術文献1および2に開示されるライニングおよび便器装置においては、点検口の位置や機器の配置によっては、十分な視認性とメンテナンス性を確保できない虞があった。また、便器本体と洗浄水タンクとの間(以下、作業空間とも言う。)が十分な広さを確保できない為に作業効率が低下する虞もあった。
【0008】
一般的に、ライニングには、点検しやすい位置に点検口が既成された専用ライニングと、点検口を現場造作する造作ライニングとがある。造作ライニングの利点は、トイレ装置を設置するトイレ室の環境に応じた位置、かつメンテナンス性を確保できる位置に点検口を設けることが可能な点にある。
【0009】
一般的に、造作ライニングの点検口は、洗浄水タンクが点検口の枠等に干渉しないようにする為、専用ライニングのものと比較して高い位置に設置される傾向にある。そのため、内部に収容する洗浄水タンクの高さ寸法が大きい場合は、洗浄水タンク下部のメンテナンス性を確保するために一層高い位置に洗浄水タンクを設置する必要があった。
【0010】
本発明は、このような造作ライニングの問題点に鑑みてなされたものであり、便器本体および洗浄水タンクの形状や設置位置に影響を受けることなく、十分な視認性、およびライニング内蔵物の高いメンテナンス性を備えるトイレ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るトイレ装置は、便器本体後方に配設したトイレ室後壁に沿って設置するトイレ装置において、前記トイレ室後方に形成したライニングと、前記ライニング内に設置した洗浄水タンクと、前記便器本体を支持する便器支持部と、前記洗浄水タンクを支持する洗浄水タンク支持部とを具備し、前記ライニングは前記便器本体の上方位置に点検口を設けると共に前記洗浄水タンク支持部は前記便器本体に対する高さを調整可能に構成したものである。
【0012】
このような構成のトイレ装置は、便器に対して、タンクの高さが変えられるため、点検口から、タンクと便器との間をメンテナンスする際に、便器とタンクとの間を広げることが出来る。そのため、タンク下部の視認性や作業性を向上させることができる。
【0013】
本発明のうち他の態様に係るトイレ装置は、前記洗浄水タンクと前記便器本体とを接続する給水管を備えると共に、前記給水管は上下方向の長さを調整可能としたものである。
【0014】
このような構成のトイレ装置は、給水管を着脱することなく、メンテナンス等を行うことができる。
【0015】
本発明のうち他の態様に係るトイレ装置は、前記洗浄水タンク支持部の上下ガイドを介して前記洗浄水タンクの高さ位置を調整可能に構成したガイド機構を具備したものである。
【0016】
このような構成のトイレ装置は、高さを調整する際、洗浄水タンクが傾いて内蔵する水が漏れてしまうことを抑制することができる。
【0017】
本発明のうち他の態様に係るトイレ装置は、前記ライニングの内部に支持フレームを配設し、前記支持フレームは、左右方向に伸延した前フレームおよび後フレームと、前後方向に伸延した左フレームおよび右フレームとを備え、かかる前記支持フレームを前記ライニングの上部空間であって、前記洗浄水タンクの上方側に配設し、前記洗浄水タンクの前後幅員は、前記支持フレームにおける前記前後フレーム間の幅員よりも小とし、前記洗浄水タンクの左右幅員は、前記支持フレームにおける前記左右フレーム間の幅員よりも小としたものである。
【0018】
このような構成のトイレ装置は、洗浄水タンクの高さを調整したときに、洗浄水タンクが支持フレームに干渉してしまうことを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、タンクと便器との間を広げることによるタンク下部の視認性向上、および作業空間の確保ができるため、ライニング内蔵物のメンテナンス性が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態に係るトイレ装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るトイレ装置の構成を示す側断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る洗浄水タンクの変位について説明する斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るトイレ装置の構成を示す平面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る給水タンク支持部近傍の構成を示す背面斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るガイド機構の構成を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る給水管の構成を示す一部切り欠き斜視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
この発明の要旨は、便器本体後方に配設したトイレ室後壁に沿って設置するトイレ装置において、前記トイレ室後方に形成したライニングと、前記ライニング内に設置した洗浄水タンクと、前記便器本体を支持する便器支持部と、前記洗浄水タンクを支持する洗浄水タンク支持部とを具備し、前記ライニングは前記便器本体の上方位置に点検口を設けると共に前記洗浄水タンク支持部は前記便器本体に対する高さを調整可能に構成したことを特徴とする。
【0022】
また、前記洗浄水タンクと前記便器本体とを接続する給水管を備えると共に、前記給水管は上下方向の長さを調整可能としたことを特徴とする。
【0023】
また、前記洗浄水タンク支持部の上下ガイドを介して前記洗浄水タンクの高さ位置を調整可能に構成したガイド機構を具備したことを特徴とする。
【0024】
また、前記ライニングの内部に支持フレームを配設し、前記支持フレームは、左右方向に伸延した前フレームおよび後フレームと、前後方向に伸延した左フレームおよび右フレームとを備え、かかる前記支持フレームを前記ライニングの上部空間であって、前記洗浄水タンクの上方側に配設し、前記洗浄水タンクの前後幅員は、前記支持フレームにおける前記前後フレーム間の幅員よりも小とし、前記洗浄水タンクの左右幅員は、前記支持フレームにおける前記左右フレーム間の幅員よりも小としたことを特徴とする。
【0025】
以下、本発明の実施例を図面に基づき詳細に説明する。なお、
図1から
図4は、本発明の一実施形態に係るトイレ装置の全体の構成を説明する図である。
図5から
図7は、トイレ装置の構成要素を詳細に説明する図である。
【0026】
本実施形態にかかるトイレ装置1は、トイレ室後方に形成したライニング10と、ライニング10内に設置した洗浄水タンク20と、便器本体2を支持する便器支持部30と、洗浄水タンク20を支持する洗浄水タンク支持部40とを具備し、しかも、ライニング10は便器本体2の上方位置に点検口11を設けると共に洗浄水タンク支持部40は便器本体に対する高さを調整可能に構成されている。
【0027】
ライニング10は、
図1に示すように、トイレ室内の床面4上であって左側壁5と右側壁6との間において、後壁3の前側に、床面4および各壁3、5、6とともに箱状の中空構造をなすように設けられる。ライニング10は、床面4の上方において床面4に対して平行状(水平状)に設けられた上面部12と、後壁3の前方において後壁3に対して平行状(鉛直
状)に設けられた前面部13とを有する。上面部12および前面部13は、ライニング10の前上部の角部において互いに直角状をなすとともに、左側壁5と右側壁6との間に挟まれた態様(架設された態様)で設けられている。
【0028】
ライニング10は、便器本体2の後方に設置されている。つまり、ライニング10の前側に便器本体2が設置される。便器本体2は、前面部13の下部における左右方向の中間部に設けられる。なお、ライニング10において、前面部13に対面した向きでの左右方向を左右方向とし、同向きで奥側および手前側をそれぞれ後側および前側とする(
図1参照)。
【0029】
ライニング10の上方位置、すなわち前面部13の上方には、ライニング内蔵物の清掃あるいは交換をするための点検口11が形成される。本実施例におけるライニング内蔵物は、
図2に示すように、洗浄水タンク20、便器支持部30、洗浄水タンク支持部40、および給水管50である。点検口11は、略矩形型の開口部である。点検口11は、基本的には化粧板等により封止されているが、メンテナンスの際には化粧板等を取り外してライニング内蔵物を視認可能な態様に構成してる。
【0030】
便器本体2は、
図1から
図3に示すように、床面4から浮いた状態で支持されたいわゆる壁掛便器である。便器本体2は、ライニング10内に設けられた便器支持部30に固定され支持されている。便器支持部30は、
図2に示すように、ライニング10の内部において前面部13の裏面近傍に位置するように前側寄りの位置に設置され、前面部13を介して便器本体2を支持する。
【0031】
便器支持部30は、
図5に示すように、床面4にボルト等により固定された状態で立設された互いに平行な左右一対の立設フレーム31と、左右の立設フレーム31間に架設された架設フレーム32とを有する。立設フレーム31は、
図5に示すように、断面略L字状に構成されている。すなわち、立設フレーム31において、フレーム下端面は、床面4と対向し、ボルト等によって立設固定されている。断面L字の内側上部には、後方に向けて開
口している断面略C型の摺動ガイドチャンネル34が形成されている
。
【0032】
摺動ガイドチャンネル34は、断面略C字状に形成した鋼材によって構成されている。摺動ガイドチャンネル34は、後述する洗浄水タンク支持部40が備える高さ調整フレーム42の内側下方に形成された上下ガイド44と係合し、C字内部を上下ガイド44が上下方向に摺動可能に構成されている。
【0033】
また、摺動ガイドチャンネル34は、
図6(a)に示すように、前側にボルト挿貫孔33が複数個穿設されている。ボルト挿貫孔33は、摺動ガイドチャンネル34の中央部に上下方向に沿って形成されている。このボルト挿貫孔33を介して、摺動ガイドチャンネル34は、洗浄水タンク支持部40の高さ調整フレーム42を係止可能に構成されている。
【0034】
便器支持部30では、立設フレーム31、架設フレーム32、および摺動ガイドチャンネル34が例えば角型鋼材やL型鋼材等の鋼材により構成されている。便器支持部30は、便器本体2および便器本体2に作用する荷重に対する支持強度を確保すべく十分な堅牢性を有する。
【0035】
このように構成される便器支持部30に対し、便器支持部30の前側に便器本体2が固定される。便器本体2は、例えば次のような構造により便器支持部30に固定される。便器支持部30においては、その上部の左右両側の2箇所に便器固定用ボルトが前方に向けて突設されている。一方、便器本体2においては、各便器固定用ボルトが挿入される貫通孔部が便器本体2の後面側に開口するように設けられている。そして、便器本体2の固定用孔部を貫通した便器固定用ボルトにナットが螺合されることにより、便器本体が締結固定される。なお、図示において、便器本体2は、陶器製であり、便器本体の上には便座や便蓋等の各種構造が設けられている。
【0036】
洗浄水タンク20は、
図3に示すように略方形状の箱体である。洗浄水タンク20の底面部には、排水口21が下方に突出するように設けられている。排水口21には、一端側が便器本体2の後面側に開口する給水口に連通接続される給水管50の他端側が連通接続される。すなわち、給水管50は、洗浄水タンク20と便器本体2とを接続している。
【0037】
給水管50は、上下方向の長さを調整可能に構成している。具体的には、給水管50は、
図7に示すように、排水口21と一端側で連通接続する第1給水管51と、第1給水管51の他端側を一端側で外嵌し摺動可能な第2給水管52と、第1給水管51の他端側と第2給水管52の一端側とに形成され、第2給水管52から第1給水管51が抜けないように摺動を規制する摺動規制部53、53’とを備えている。すなわち、給水管50は、第1給水管51および第2給水管52により、内部連通の筒状体を形成し、これらが摺動することにより上下方向の長さを調節可能に構成されている。
【0038】
また、洗浄水タンク20は、
図5に示すように、便器支持部30の摺動ガイドチャンネル34と係合する洗浄水タンク支持部40上に載置され、後述する上下ガイド44によって上下方向に変位可能に構成されている。
【0039】
洗浄水タンク支持部40は、
図5に示すように、洗浄水タンク20の底部略中心部と対応する板状体で構成されたタンク固定プレート41と、タンク固定プレート41から下方に向けて略垂直に構成された高さ調整フレーム42とを有している。詳細には、洗浄水タンク支持部40は、板厚方向を略上下方向とする略水平に配設されたタンク固定プレート41と、タンク固定プレート41の後方縁部から下方に向けて立設される高さ調整フレーム42とを有し、全体としては側面視で略L字状に構成されている。
【0040】
高さ調整フレーム42は、下方の左右両端が前方に屈曲形成されている。その先端部は、更に外側に向けて屈曲され、後方に向けて開口を備える略C字状に形成された上下ガイド44を構成している。上下ガイド44は、
図6(a)に示すように、C字開口側を後側に向けて配置されてているため、上下ガイド44および便器支持部30の摺動ガイドチャンネル34は、同じ方向にC字の開口を向けた態様で構成されている。
【0041】
しかも、上下ガイド44は、前側の中央部に上下方向に沿ってボルト挿貫孔43が複数個形成されている。このボルト挿貫孔43は、摺動ガイドチャンネル34が備えるボルト挿貫孔33と対応関係にあり、孔の間隔が等しくなるように形成されている。
【0042】
このように、洗浄水タンク支持部40および便器支持部30は、上下ガイド44が摺動ガイドチャンネル34の内部を上下に摺動することによって、洗浄水タンク20の高さを上下方向に調整するガイド機構60を構成している。洗浄水タンク20の高さを調整する際には、給水管50が上下方向の長さを調整可能に構成されているために、給水管50を取り外して、適切な長さの給水管に再度取付をするという手間が不要となる。
【0043】
また、ガイド機構60は、便器支持部30の摺動ガイドチャンネル34に穿設されたボルト挿貫孔33と、洗浄水タンク支持部40の上下ガイド44に穿設されたボルト挿貫孔43とが対応する位置に調整され、内部に挿貫させたボルト62にナット63(図示しない)が螺嵌することにより、便器支持部30と洗浄水タンク支持部40の高さが固定される。
【0044】
しかも、ガイド機構60は摺動ガイドチャンネル34および上下ガイド44から構成され、これらは同じ方向(後方)に向けてC字の開口を形成しているため、ボルト62およびナット63が摺動ガイドチャンネル34および上下ガイド44に干渉することがない。これにより、洗浄水タンク20の円滑な高さ調整および固定を実現する。
【0045】
洗浄水タンク20の高さを上下方向に変位させる際には次のような操作により行う。まず、摺動ガイドチャンネル34と上下ガイド44とを係合するボルト62およびナット63を取り外す。洗浄水タンク支持部40をガイド機構60に沿って上下に変位させ、ボルト挿貫孔43が便器支持部30のボルト挿貫孔33と対応する位置となるように調整する。最後に、ボルト挿貫孔33、43にボルト62を挿貫して、ボルト62にナット63に螺合させることにより、洗浄水タンク20の変位が完了する。
【0046】
また、洗浄水タンク20は、
図3および
図4に示すように、上下方向に変位してもライニング10空間内に配設された支持フレーム70と干渉しない構成となっている。具体的には、ライニング10の上面部12の下方かつ前面部13の後方に沿うように配設された支持フレーム70が、洗浄水タンク支持部40によって上下方向に変位する洗浄水タンク20と干渉しない構成となっている。
【0047】
支持フレーム70は、
図3および
図4に示すように、上面部12の長手方向に沿って左右方向に伸延した前フレーム71と後フレーム72とを備えている。前フレーム71は上面部12の前側縁の近傍に設けられ、後フレーム72は上面部12の後側縁の近傍に設けられている。
【0048】
また、支持フレーム70は、
図3および
図4に示すように、上面部12の短手方向に沿って前後方向に伸延した左フレーム73と右フレーム74とを備えている。左フレーム73は上面部12の左側端よりも中央寄りに設けられ、右フレーム74は上面部12の右側端よりも中央寄りに設けられている。しかも、左フレーム73および右フレーム74は、前方が下方に向けて屈曲延設されており、符号75で示す延設部がライニング10の前面部13後方を沿う態様で構成されている。すなわち、左フレーム73および右フレーム74は、側面視で略L字状に構成されており、両フレーム73、74においてL字の横線に相当する部分が上面部12と対応し、L字の縦線に相当する部分(延設部75)が前面部13と対応する位置に配置されている。
【0049】
したがって、支持フレーム70は、前フレーム71、後フレーム72、左フレーム73、および右フレーム74により、ライニング10の前面部13および上面部12の位置を規制する態様に設けられている。また、これらのフレーム71、72、73、74は、棒状の鋼材を組み合わせて構成されている。
【0050】
このように支持フレーム70が構成されることにより、洗浄水タンク20は、
図4に示すように、洗浄水タンク支持部40によって上下方向に変位してもライニング10空間内に配設された支持フレーム70と干渉しない構成となっている。すなわち、洗浄水タンク20の前後幅は、前フレーム71および後フレーム72間の幅よりも小に形成されている。また、洗浄水タンク20の左右幅は、左フレーム73および右フレーム74間の幅よりも小に形成されている。
【0051】
トイレ装置1において、洗浄水タンク20と支持フレーム70とが互いに干渉しない構成とするため、洗浄水タンク20を可及的に上方まで変位させることが可能となる。これにより、洗浄水タンク20下部の視認性を充分に確保することが可能となり、トイレ装置のメンテナンス性向上を実現する。
【0052】
以上説明したように、本発明は、便器本体2および洗浄水タンク20等の形状や設置位置に影響を受けることなく、十分な視認性、及びライニング内蔵物の高いメンテナンス性を備えるトイレ装置の提供を可能とする。以下、本実施形態に係るトイレ装置による作用効果について説明する。
【0053】
本実施形態のトイレ装置1は、
図1に示すように、トイレ室後方に形成したライニング10と、ライニング10内に設置した洗浄水タンク20と、便器本体2を支持する便器支持部30と、洗浄水タンク20を支持する洗浄水タンク支持部40とを具備し、しかも、ライニング10は便器本体2の上方位置に点検口11を設けると共に洗浄水タンク支持部40は便器本体2に対する高さを調整可能に構成している。このような構成によれば、洗浄水タンク20が洗浄水タンク支持部40によって上下方向の変位が可能な状態で設けられることから、メンテナンス時の視認性および作業性の低さを回避することができる。これにより、トイレ装置の設置作業において、点検口11の位置、洗浄水タンク20、および便器本体2等の配置関係を考える必要がない為、負担を軽減することができる。
【0054】
また、本実施形態のトイレ装置1は、
図3に示すように、洗浄水タンク20と便器本体2を接続する給水管50を備えると共に、給水管50は上下方向の長さを調整可能に構成されている。このような構成によれば、洗浄水タンク支持部40の高さを調整した際に、給水管50は洗浄水タンク支持部40に載置された洗浄水タンク20の位置に追従して自ら長さを調整することになる。これにより、洗浄水タンク20の位置を調整した際に、洗浄水タンク20と便器本体2との間の距離に適合する給水管を別途用意したり、給水管を着脱する操作が不要となる。
【0055】
また、本実施形態のトイレ装置1は、
図5に示すように、洗浄水タンク支持部40の上下ガイド44を介して洗浄水タンク20の高さ位置を調整可能に構成したガイド機構60を具備している。このような構成によれば、洗浄水タンク20が上下への動きのみに制限される為、洗浄水タンク20が傾倒することがない。しかも、洗浄水タンク支持部40と便器支持部30とを係合する。すなわち、洗浄水タンク20は、洗浄水タンク支持部40に左右平行となるよう設けられたガイド機構60によって前後左右の動きが規制される為に、自身の重量および内部に貯留された洗浄水の重量で傾倒することを防ぐことができる。これにより、洗浄水タンク20の落下による部材の破損、或いは洗浄水タンク20の傾倒を防ぐ作業の手間を省くことができる。
【0056】
また、本実施形態のトイレ装置1は、
図3および
図4に示すように、ライニング10空間内に支持フレーム70を配設し、支持フレーム70は、内部に洗浄水タンク20を収容し、左右方向に伸延した前フレーム71および後フレーム72と、前後方向に伸延した左フレーム73および右フレーム74とを備え、かかる支持フレーム70をライニング10の上部空間に配設し、しかも、洗浄水タンク20の前後幅員は、支持フレーム70における前後フレーム71、72間の幅員よりも小とし、洗浄水タンク20の左右幅員は、支持フレーム70における左右フレーム73、74間の幅員よりも小としている。このような構成によれば、洗浄水タンク20は、その外縁部がライニング10と干渉することなく上下方向に変位可能となる。しかも、ライニング内蔵物を視認しやすい位置に点検口11を設けた際に、支持フレーム70がライニング内蔵
物と点検口11との間に位置することを避けることもできる。これにより、洗浄水タンク20下部における可及的に良好な視認性の確保が可能となる。
【0057】
以上のように実施形態を用いて説明した本発明にかかるトイレ装置は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲で、種々の態様を採用することができる。
【0058】
上述した実施形態においては、洗浄水タンク20と便器本体2とを連結する部材として、
図7に示すような2本の管体(第1給水管51および第2給水管52)より構成される給水管50が設けられているが、このような構成に限定されるものではない。例えば、給水管50は、蛇腹状の管体或いは伸縮性の高いゴムを素材とする管体のように、伸縮することで上下方向に伸長可能な1本の管体を採用してもよい。
【0059】
また、上述した実施形態においては、洗浄水タンク20および洗浄水タンク支持部40は、
図5に示すように、別体の部材として構成されているが、洗浄水タンク支持部40が備える高さ調整フレーム42は、洗浄水タンク20の一部として設けられてもよい。
【0060】
また、上述した実施形態においては、ボルト挿貫孔33、43は複数個穿設されているが、このような構成に限定されるものではない。例えば、ボルト挿貫孔33、43は、
図6(b)に示すように、上下方向に伸延して穿設された一つの溝であってもよい。これにより、ボルト62およびナット63を完全にボルト挿貫孔33、43から取り外すことなく洗浄水タンク20の高さを変位させることが可能となる。
【符号の説明】
【0061】
1 トイレ装置
2 便器本体
3 後壁
4 床面
5 左側壁
6 右側壁
10 ライニング
11 点検口
12 上面部
13 前面部
20 洗浄水タンク
21 排水口
30 便器支持部
31 立設フレーム
32 架設フレーム
33 ボルト挿貫孔
34 摺動ガイドチャンネル
40 洗浄水タンク支持部
41 タンク固定プレート
42 高さ調整フレーム
43 ボルト挿貫孔
44 上下ガイド
50 給水管
51 第1給水管
52 第2給水管
53 摺動規制部
60 ガイド機構
62 ボルト
63 ナット
70 支持フレーム
71 前フレーム
72 後フレーム
73 左フレーム
74 右フレーム
75 延設部