(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】マスク装置
(51)【国際特許分類】
B41N 1/24 20060101AFI20240918BHJP
B23K 1/00 20060101ALI20240918BHJP
B41F 15/08 20060101ALI20240918BHJP
B41F 15/40 20060101ALI20240918BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
B41N1/24
B23K1/00 U
B41F15/08 303E
B41F15/40 B
H05K3/34 505D
(21)【出願番号】P 2020147192
(22)【出願日】2020-09-02
【審査請求日】2023-08-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100149618
【氏名又は名称】北嶋 啓至
(72)【発明者】
【氏名】青山 悠生
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-062974(JP,A)
【文献】特開2000-177102(JP,A)
【文献】特開平09-155687(JP,A)
【文献】国際公開第2013/186956(WO,A1)
【文献】特表2012-505767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41N 1/24
B23K 1/00
B41F 15/08
B41F 15/40
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
温度上昇により有意に軟化する流動物の対象物への塗布による印刷を行うためのパターンが形成されたプレート部の周囲の部分が固定されることにより前記プレート部と熱的に接続されており、内部に空洞が形成されたフレーム部と、
前記空洞に液体を通過させるポンプと、
前記液体の温度を調整することによって前記プレート部の温度を調整する温度調整部と、
前記液体が通過する前記空洞を第一空洞及び第二空洞のいずれかに切り替える切替部と、
前記フレーム部に備えられる固定部と、
を備
え、
前記プレート部の温度は、前記フレーム部と前記プレート部との間の熱伝導により調整され、
前記固定部は、前記切替部が前記液体が通過する前記空洞を第一空洞に切り替えた場合に前記プレート部の前記フレーム部への固定を行い、前記切替部が前記液体が通過する前記空洞を第二空洞に切り替えた場合に前記プレート部の前記フレーム部への固定を解除する、
マスク装置。
【請求項2】
前記固定部は、可動式のセパレータで仕切られた第一室と第二室とを有するシリンダを備えており、前記第一室は前記第一空洞に接続されており、前記第二室は前記第二空洞に接続されており、
前記切替部が前記液体が通過する前記空洞を前記第一空洞及び前記第二空洞のうちのいずれかに切り替えることによる前記セパレータの移動により、前記固定及び前記解除が行われる、
請求項1に記載されたマスク装置。
【請求項3】
前記固定は、前記セパレータの移動により前記プレート部の引張力が高められることにより行われ、前記解除は、前記セパレータの移動により前記プレート部の引張力が低められることにより行われる、
請求項2に記載されたマスク装置。
【請求項4】
前記プレート部と前記フレーム部とは、金属で形成されている、請求項1
乃至請求項3のうちのいずれか一に記載されたマスク装置。
【請求項5】
前記空洞は前記フレーム部に沿って形成されている、請求項1
乃至請求項4のうちのいずれか一に記載されたマスク装置。
【請求項6】
前記液体は、オイルである、請求項1乃至請求項
5のうちのいずれか一に記載されたマスク装置。
【請求項7】
前記ポンプは、前記液体に前記空洞を循環させる、請求項1乃至請求項
6のうちのいずれか一に記載されたマスク装置。
【請求項8】
前記流動物は、はんだペーストである、請求項1乃至請求項
7のうちのいずれか一に記載されたマスク装置。
【請求項9】
前記プレート部をさらに備える、
請求項1乃至請求項
8のうちのいずれか一に記載されたマスク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷に用いられるマスクに関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板の部品搭載位置に設けられたランド(パッド)上にチップ部品などの電子回路部品を実装する場合、一般的には、はんだにより形成したランドを介して電子回路部品と、プリント基板の内層、表層の配線との、電気的な導通を確保する。ここで、ランド(パッド)は、プリント基板における、プリント基板の配線とチップ部品との接続端子である。
【0003】
はんだによる実装方式としては、リフロー方式が知られている。リフロー方式においては、まず、フラックスとはんだ粉を混合してペースト状にしたはんだペースト(クリームはんだ、ソルダペースト)がランド上に印刷される。そして、電子回路部品の端子がはんだペースト上に載せられたのち、リフロー炉ではんだペーストが溶融され、電子回路部品の端子がランドに接合される。
【0004】
はんだペーストの印刷には、一般的に、メタルスクリーン印刷が採用されている。メタルスクリーン印刷に用いられる金属製のマスクは、厚さ0.1mm程度の金属板に基板のパターンに合わせて穴を設けたプレート部と、プレート部の張力を保持するためにプレート部外周を囲むフレーム部とで構成される。
【0005】
メタルスクリーン印刷においては、マスクのプレート部がプリント基板に押し当て、はんだペーストをプレート部上にのせて掃引される。そして、プレート部の開口部にはんだペーストが充填され、メタルマスクがプリント基板から引き離されることで、基板に、はんだペーストが印刷される。
【0006】
このようなメタルスクリーン印刷においては、はんだペーストの粘度が、印刷の品質に大きく影響する。例えば、はんだペーストの粘度が高すぎると流動性が悪く、メタルマスクのプレート部の開口部に十分な量のはんだペーストが充填されず、意図した量よりも少ないはんだペーストが印刷されるという不具合が生じる。逆に、はんだペーストの粘度が低すぎると、メタルマスクのプレート部の開口部にはんだペーストを充填する際に、開口部からメタルマスクのプレート部とプリント基板との間にはんだペーストが入り込む不具合が生じる。
【0007】
プレート部上のはんだペーストの粘度の調整は、一般的に、はんだペーストの温度を調整することにより行われる。そして、はんだペーストの温度を調整する方法として、空調による方法と特許文献1の方法とが知られている。
【0008】
空調による方法においては、印刷機における、メタルスクリーン印刷が実行される部分を囲む閉空間の空気が、空調機により温度調整される。その空調により、メタルスクリーン印刷が実行される部分のはんだペーストの温度及び粘度が調整される。
【0009】
一方、特許文献1が開示する方法においては、メタルマスクの開口部内周面に通電時に発熱する発熱体層が形成され、マスク表面(開口部内周面を除く)に上記発熱体層よりも抵抗率の低い金属がコーティングされる。そして、マスク上下面で通電されることでメタルマスクのプレート部の開口部が発熱し、はんだペーストの加熱の程度が調整され、はんだペーストの粘度が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
はんだペーストの印刷を行う場合、メタルマスクの取替えや点検がある度に印刷機の内部と外部を隔てるカバーを開ける必要がある。その際に、印刷機のカバーで囲まれた内部の空気が入れ替わる。そのため、背景技術の項で説明した、空調によって印刷機内部を温度調整する方法では、印刷機内部の温度が設定温度に戻るまでに長時間を要する。また、この方法は、空調機のような大型の装置を必要とし、印刷装置全体の設置面積や体積が大きくなる。
【0012】
一方、特許文献1の方法は、上記空調を用いた場合の課題は解決できるが、プレート部の温度を上げることはできても、温度を下げることはできない。そのため、この方法は、プレート部上のはんだペーストの粘度を下げることはできても上げる調整はできない。
【0013】
本発明は、印刷に用いられる流動物の粘度調整速度の向上、印刷機の小型化及び流動物の粘度増加調整の可能化を両立させるマスク装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のマスク装置は、温度上昇により有意に軟化する流動物の対象物への塗布による印刷を行うためのパターンが形成されたプレート部の周囲の部分が固定されることにより前記プレート部と熱的に接続されており、内部に空洞が形成されたフレーム部と、前記空洞に液体を通過させるポンプと、前記プレート部の温度を調整する温度調整部と、を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明のマスク装置は、印刷に用いられる流動物の粘度調整速度の向上、印刷機の小型化及び流動物の粘度増加調整の可能化を両立させる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第一実施形態のマスク装置の構成例を表す斜視概念図である。
【
図2】フレーム部及びプレート部の組合せの構成例(その1)の断面概念図である。
【
図3】フレーム部及びプレート部の組合せの構成例(その2)の断面概念図である。
【
図4】第二実施形態のマスク装置の構成例を表す外観概念図である。
【
図5】フレーム部、プレート部及び切替部の構成例を表す上面概念図である。
【
図6】マスク固定部の構成例を表す断面概念図である。
【
図7】実施形態のマスク装置の最小限の構成を表す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第一実施形態>
本実施形態のマスク装置は、フレーム部の中空部を循環させるオイルを温度調整することにより、オイルからフレーム部、さらにはプレート部への熱伝導により、プレート部の温度を調整する。前記マスク装置は、これにより、プレート部に接するはんだペーストの温度及び粘度の調整を可能にする。
[構成と動作]
図1は、本実施形態のマスク装置の例であるマスク装置100の構成を表す斜視概念図である。また、
図2は、
図1に表される、フレーム部101及びプレート部102の組合せの、線9a又は9bに沿った断面概念図である。
【0018】
図1のように、マスク装置100は、フレーム部101と、プレート部102と、ポンプ103と、温調装置104と、温度センサ105と、チューブ106と、オイル107とを備える。フレーム部101と温調装置104及びポンプ103とは、チューブ106により接続されることが想定されている。
【0019】
フレーム部101及びプレート部102は、金属等の熱伝導性の良好な材料で構成されている。フレーム部101は、
図2のように中空になっており、その中空の空洞部にオイル107が流れることができるようになっている。
【0020】
また、フレーム部101の中空部における、チューブ106の端部が取り付けられる取付け口8aと取付け口8bとの間は仕切られており、オイル107はフレーム部101の空洞に沿って一方向に流れるようになっている。
【0021】
これらにより、温調装置104により温度が調整されたオイル107は、ポンプ103により、チューブ106及びフレーム部101の空洞を循環する。温調装置104で温度が調整されたオイル107が循環することで、フレーム部101の温度が調整される。そして、フレーム部101とプレート部102との間の熱伝導により、プレート部102の温度が調整される。
【0022】
なお、温調装置104は、温度センサ105から送付されるプレート部102の中心等の温度が設定値になるように、オイル107を加熱し又は冷却する装置である。そのような装置は、例えば、一方の端部がオイル107に接触し、他方の端部は接触しない、ペルチェ素子と、温度センサ105からの温度情報により、ペルチェ素子に流す電流の方向と値を制御する制御装置とにより作成され得る。なお、
図1においては、温度センサ105と温調装置104との間のデータ線は、図示が省略されている。
【0023】
温調装置104は、あるいは、ペルチェ素子に代えて、オイル107を加熱するヒータと、冷却するクーラー(チラー)とを組み合わせた構成を備えても構わない。
【0024】
なお、フレーム部101の断面形状は、
図2の形状に限定されず任意である。例えば
図3のように、フレーム部101の強度を高めるために、中空部に架橋構造7aが設けられていても構わない。フレーム部101の空洞を大きくすると、フレーム部101は、肉薄になることにより、その強度が低下する場合がある。そのような場合でも、架橋構造7aを設けることにより、フレーム部101の十分な強度を確保し得る。フレーム部101の中空部の形状は、オイル107が循環できるものであれば任意である。
【0025】
このように、マスク装置100は、温度センサ105でプレート部102の温度(中心温度等)を測定しながら、プレート部102の温度を、フレーム部101内の温度調整用オイルの温度により温度調整する。
【0026】
背景技術の項で説明した、空調によって印刷機内部を温度調整する方法では、メタルマスクの取替えや点検がある度に印刷機の内部と外部を隔てるカバーを開け、その度に温調した空気が印刷機外部に放出される。そのため、印刷機内部の温度が元の温度に戻るまでに長い時間を要する。これに対し、マスク装置100は、熱伝導性の高く、かつ空気に比べて熱容量の小さな、プレート部102とフレーム部101との組合せを温度調節し、周囲の空気は温度調節しない。そのため、マスク装置100は、メタルマスクの取替えや点検のためにするため、温度調節を停止したとしても、空調を用いる場合と比較して、温度調整を再開してプレート部102及びはんだペーストの温度が設定温度に調整されるまでの時間を短縮できる。
【0027】
また、マスク装置100の温調装置104としては、空調機のような大型の装置ではなく、特に前述のペルチェ素子を用いた場合には、小型化することができる。その場合、マスク装置100は、印刷装置全体の設置面積や体積を削減できる。
【0028】
また、空調を用いる方法は、はんだペーストが、はんだペーストの印刷に直接関係しない部分(貯蔵部分等)も加熱、冷却される。そのため、空調を用いる方法は、はんだペースト全体の温度変化による劣化や乾燥が生じる場合がある。これに対し、マスク装置100は、はんだペーストの印刷に直接関係するプレート部102近傍のはんだペーストのみ加熱、冷却する。そのため、マスク装置100は、空調を用いる方法と比較して、はんだペーストの劣化や乾燥を抑制できる。
【0029】
また、特許文献1の方法は、プレート部の温度を上げることはできても、温度を下げることはできない。これに対し、マスク装置100は、プレート部102の温度を下げることにより、プレート部102上に掃引されるはんだペーストの粘度を増加させる調整も可能である。
[効果]
本実施形態のマスク装置は、以上説明したように、印刷時のはんだペーストの温度調整速度の向上と、印刷装置の小型化と、はんだペーストの粘度を増加させる調整の可能化とを両立させる。
<第二実施形態>
本実施形態は、プレート部の温度調整用にフレーム部に流すオイルの流路を切り替えることにより、プレート部の脱着を可能化する、マスク装置に関する実施形態である。
[構成と動作]
図4は、本実施形態のマスク装置の例であるマスク装置100の構成を表す斜視概念図である。
図4のマスク装置100は、
図1のマスク装置100が備える構成に加えて、パイプ108及び109と、切替部110とを備える。パイプ108及び109はフレーム部101内の空洞に備えられている。パイプ108は、プレート部の張力を下げる際にオイルを流入させるパイプである。また、パイプ109はプレート部の張力を上げる際にオイルを流入させるパイプである。
【0030】
切替部110は、フレーム部101の中空部内でオイル107が流れる経路を、パイプ108及び109のいずれかに切り替える。
【0031】
図5は、フレーム部101及びプレート部102の組合せ並びに切替部110を表す上面概念図である。
図5においては、フレーム部101の上板は透視して示されている。
【0032】
フレーム部101は、パイプ108及び109、及び、複数の固定部111を備え、切替部110とチューブ106に接続されている。固定部111は、フレーム部101の四方全てに配置されている。プレート部102は、フレーム部101の下部(
図5の奥側)において固定部111に接続されている。
【0033】
図6は、固定部111を、
図5の線9cに沿って切断した断面概念図である。固定部111は、シリンダ112と、セパレータ113と、ピストン118と、支持部材114と、ポール115とを備える。シリンダ112の油圧室112aは、
図6の奥側及び手前側(
図5の上側及び下側)においてパイプ108に接続されている。また、シリンダ112の油圧室112aは、
図6の奥側及び手前側(
図5の上側及び下側)においてパイプ109に接続されている。
【0034】
プレート部102に形成された穴116にはポール115が貫通している。そして、プレート部102の左端部周辺は、支持部材114とフレーム部101との間の挟まっている。この挟まった状態で、プレート部102の左端部周辺は、フレーム部101と支持部材114との間を左右に移動できる。なお、支持部材114とフレーム部101とは、図示はされないが、互いに、固定されている。
【0035】
さらに、支持部材114には,左右方向に長い長穴117が形成されている。図示はされないが、長穴117の手前及び奥側には、支持部材114の穴のない部分が存在している。また、フレーム部101の下面にも、長穴117と同形状の長穴119が、長穴117と上下方向に重なるように形成されている。これらにより、ポール115の下方の部分は、長穴117及び119に挿入された状態で、手前及び奥方向には移動せずに、左右方向に、穴116ごと移動できるようになっている。
【0036】
ここで、
図5の切替部110が、オイル107を通過させるパイプを、パイプ109に切り替えたとする。その場合、パイプ109と接続された油圧室12bをオイル107が通過する際の油圧により、セパレータ113は、左向き(フレーム部101の外向き)に移動する。そして、ポール115はセパレータ113の移動に連動して左方に移動する。これにより、穴116及びプレート部102の左端部近傍は左方に移動し、プレート部102の張力が高まる。これにより、プレート部102は、フレーム部101から外れなくなり、はんだペーストを印刷可能な状態になる。
【0037】
一方、切替部110がオイル107を通過させるパイプをパイプ108に切り替えたとする。その場合、油圧室112aを通過するオイル107によるセパレータ113に対する右向き(フレーム部内向き)の圧力により、セパレータ113は右向きに移動する。そして、ポール115がセパレータ113に連動して内向きに移動することで、プレート部102の張力が弱まる。これにより、プレート部102は、取り外し及び交換が可能な状態になる。
【0038】
なお、
図5においては、固定部111は各辺に3つ設置されているが、固定部111の数は、プレート部102全体の張力を略均一に保つことができれば任意である。
【0039】
図5の全ての固定部111は、パイプ108及び109により連結されている。この状態で油圧をかけることで全ての固定部111が同一圧力で連動する。そのため、プレート部102全体の張力を均一にできる。また、オイル107の油圧を常に一定となるよう保つことで、プレート部102の張力を一定に保つことができる。
【0040】
また、オイル107の油圧を一定時間ごとに記録することで、はんだペースト印刷時に基板とプレート部102が接触した際の油圧変化を感知することがより好ましい。これにより、プレート部102と基板が接触した後のプレート部102の押し込み深さを、基板の厚さのばらつきによらず一定にすることができる。
[効果]
本実施形態のマスク装置は、まず、第一実施形態のマスク装置と同様の構成を備え、同様の効果を奏する。
【0041】
それに加え、本実施形態のマスク装置は、セパレータで仕切られた油圧室のいずれにオイルを通過させるかを切り替えることにより、プレート部のフレーム部への固定とその解除とを切り替える。これにより、本実施形態のマスク装置は、プレート部の交換を容易化する。
【0042】
なお、実施形態の印刷に用いられる流動物は、はんだペーストに限定されず、温度上昇により有意に軟化する性質のものであれば構わない。
【0043】
図7は、実施形態のマスク装置の最小限の構成であるマスク装置100xの構成を表す概念図である。マスク装置100xは、フレーム部101xと、ポンプ103xと、温度調整部104xとを備える。
【0044】
フレーム部101xには、温度上昇により有意に軟化する流動物の対象物への塗布による印刷を行うためのパターンが形成されているプレート部の周囲の部分が固定され、内部に空洞が形成されている。ポンプ103xは、前記空洞に液体を通過させる。温度調整部104xは、前記プレート部の温度を調整する。
【0045】
マスク装置100xは、上記構成により前記プレート部の温度を調整する。それにより、マスク装置100xは、印刷に用いられる流動物の粘度調整速度の向上、印刷機の小型化及び前記流動物の粘度増加調整の可能化を両立させる。
【0046】
そのため、マスク装置100xは、前記構成により、[発明の効果]の項に記載した効果を奏する。
【0047】
以上、本発明の各実施形態を説明したが、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の基本的技術的思想を逸脱しない範囲で更なる変形、置換、調整を加えることができる。例えば、各図面に示した要素の構成は、本発明の理解を助けるための一例であり、これらの図面に示した構成に限定されるものではない。
【0048】
また、前記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記述され得るが、以下には限られない。
(付記1)
温度上昇により有意に軟化する流動物の対象物への塗布による印刷を行うためのパターンが形成されたプレート部の周囲の部分が固定されることにより前記プレート部と熱的に接続されており、内部に空洞が形成されたフレーム部と、
前記空洞に液体を通過させるポンプと、
前記プレート部の温度を調整する温度調整部と、
を備える、マスク装置。
(付記2)
前記プレート部と前記フレーム部とは、金属で形成されている、付記1に記載されたマスク装置。
(付記3)
前記空洞は前記フレーム部に沿って形成されている、付記1又は付記2に記載されたマスク装置。
(付記4)
前記液体は、オイルである、付記1乃至付記3のうちのいずれか一に記載されたマスク装置。
(付記5)
前記ポンプは、前記液体に前記空洞を循環させる、付記1乃至付記4のうちのいずれか一に記載されたマスク装置。
(付記6)
前記液体が通過する前記空洞を第一空洞及び第二空洞のいずれかに切り替える切替部と、
前記フレーム部に備えられる固定部とをさらに備え、
前記固定部は、前記切替部が前記液体が通過する前記空洞を第一空洞に切り替えた場合に前記プレート部の前記フレーム部への固定を行い、前記切替部が前記液体が通過する前記空洞を第二空洞に切り替えた場合に前記プレート部の前記フレーム部への固定を解除する、
付記1乃至付記5のうちのいずれか一に記載されたマスク装置。
(付記7)
前記固定部は、可動式のセパレータで仕切られた第一室と第二室とを有するシリンダを備えており、前記第一室は前記第一空洞に接続されており、前記第二室は前記第二空洞に接続されており、
前記切替部が前記液体が通過する前記空洞を前記第一空洞及び前記第二空洞のうちのいずれかに切り替えることによる前記セパレータの移動により、前記固定及び前記解除が行われる、
付記6に記載されたマスク装置。
(付記8)
前記固定は、前記セパレータの移動により前記プレート部の引張力が高められることにより行われ、前記解除は、前記セパレータの移動により前記プレート部の引張力が低められることにより行われる、
付記7に記載されたマスク装置。
(付記9)
前記流動物は、はんだペーストである、付記1乃至付記8のうちのいずれか一に記載されたマスク装置。
(付記10)
前記対象物は基板である、付記9に記載されたマスク装置。
(付記11)
前記印刷は、リフロー方式で、前記基板にはんだを形成するためのものである、付記10に記載されたマスク装置。
(付記12)
前記プレート部をさらに備える、
付記1乃至付記11のうちのいずれか一に記載されたマスク装置。
なお、付記における「流動物」は、例えば、
図1乃至
図4のオイル107である。また、「プレート部」は、例えば、
図1乃至
図6のプレート部102である。また、「フレーム部」は、例えば、
図1乃至
図6のフレーム部101又は
図7のフレーム部101xである。また、「空洞」は、例えば、
図1乃至
図4のフレーム部101の中空部、又は
図5のパイプ108、109の内部の空洞である。
【0049】
また、「液体」は、例えば、
図1乃至
図4のオイル107である。また、「ポンプ」は、例えば、
図1又は
図4のポンプ103、又は、
図7のポンプ103xである。また、「温度調整部」は、例えば、
図1又は
図4の温調装置104と温度センサ105との組合せ、又は、
図7の温度調整部104xである。また、「マスク装置」は、例えば、
図1乃至
図4のマスク装置100又は
図7のマスク装置100xである。
【0050】
また、「第一空洞」は、例えば、
図4又は
図5のパイプ108の内部の空洞である。また、「第二空洞」は、例えば、
図4又は
図5のパイプ109の内部の空洞である。また、「切替部」は、例えば、
図4又は
図5の切替部110である。また、「固定部」は、例えば、
図5又は
図6の固定部111である。
【0051】
また、「セパレータ」は、例えば、
図6のセパレータ113である。また、「第一室」は、例えば、
図6の油圧室112aである。また、「第二室」は、例えば、
図6の油圧室112bである。また、「シリンダ」は、例えば、
図6のシリンダ112である。
【符号の説明】
【0052】
100、100x マスク装置
101、101x フレーム部
102 プレート部
103 ポンプ
104 温調装置
104x 温度調整部
105 温度センサ
106 チューブ
107 オイル
110 切替部
111 固定部
112 シリンダ
112a、112b 油圧室
113 セパレータ
114 支持部材
115 ポール
116 穴
117、119 長穴
118 ピストン
8a、8b 取付け口
9a、9b、9c 線