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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】車両の走行制御方法及び走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/08 20120101AFI20240918BHJP
   B60W 30/10 20060101ALI20240918BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20240918BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
B60W30/08
B60W30/10
B60W60/00
G08G1/16 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020181552
(22)【出願日】2020-10-29
(65)【公開番号】P2022072222
(43)【公開日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 泰久
【審査官】平井 功
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-46150(JP,A)
【文献】特開2019-121063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
B60W 30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行速度を自律制御する自律速度制御と、前記自車両の操舵を自律制御する自律操舵制御とを含む自律走行制御により、現在走行中の第1車線から、これに隣接する第2車線へ車線変更する、プロセッサが実行する車両の走行制御方法において、
前記第1車線における自車両の後続車両の走行速度を検出し、
前記自車両の走行速度が前記後続車両の走行速度未満の場合は、前記車線変更を禁止し、
前記自車両の走行速度が前記後続車両の走行速度未満の場合は、
前記第1車線において、前記自車両の走行速度を前記後続車両の走行速度以上に調整し、
前記自車両の走行速度が前記後続車両の走行速度以上になるまでは、前記車線変更を禁止する車両の走行制御方法。
【請求項2】
前記自車両の走行速度が前記後続車両の走行速度以上の場合は、前記車線変更を許可する請求項1に記載の車両の走行制御方法。
【請求項3】
前記自車両の走行速度が前記後続車両の走行速度以上になったら、前記車線変更を許可する請求項1又は2に記載の車両の走行制御方法。
【請求項4】
自車両の走行速度を自律制御する自律速度制御と、前記自車両の操舵を自律制御する自律操舵制御とを含む自律走行制御により、現在走行中の第1車線から、これに隣接する第2車線へ車線変更する、プロセッサが実行する車両の走行制御方法において、
前記第1車線における自車両の後続車両の走行速度を検出し、
前記自車両の走行速度が前記後続車両の走行速度未満の場合は、前記車線変更を禁止し、
前記第2車線を走行する車両の平均走行速度は、前記第1車線を走行する車両の平均走行速度に比べて遅い車両の走行制御方法。
【請求項5】
自車両の走行速度を自律制御する自律速度制御と、前記自車両の操舵を自律制御する自律操舵制御とを含む自律走行制御により、現在走行中の第1車線から、これに隣接する第2車線へ車線変更する、プロセッサが実行する車両の走行制御方法において、
前記第1車線における自車両の後続車両の走行速度を検出し、
前記自車両の走行速度が前記後続車両の走行速度未満の場合は、前記車線変更を禁止し、
前記第1車線において、前記検出された後続車両の走行速度を目標速度に設定し、前記自車両の走行速度を調整する車両の走行制御方法。
【請求項6】
自車両の走行速度を自律制御する自律速度制御と、前記自車両の操舵を自律制御する自律操舵制御とを含む自律走行制御により、現在走行中の第1車線から、これに隣接する第2車線へ車線変更する、プロセッサが実行する車両の走行制御方法において、
前記第1車線における自車両の後続車両の走行速度を検出し、
前記自車両の走行速度が前記後続車両の走行速度未満の場合は、前記車線変更を禁止し、
前記自律走行制御を用いてドライバーの運転操作を支援する運転支援モードに、前記自車両の走行動作の制御に対する前記プロセッサを含む走行制御装置の介入程度を示す複数の支援レベルが設定され、
自車両が自律走行制御により車線変更している間は、前記走行制御装置が介入する支援レベルは低下しない車両の走行制御方法。
【請求項7】
自車両の走行速度を自律制御する自律速度制御と、前記自車両の操舵を自律制御する自律操舵制御とを含む自律走行制御を実行するためのプロセッサを備える車両の走行制御装置において、
自律走行制御により、現在走行中の第1車線から、これに隣接する第2車線へ車線変更する場合に、
前記プロセッサは、
前記第1車線における自車両の後続車両の走行速度を検出し、
前記自車両の走行速度が前記後続車両の走行速度未満の場合は、前記車線変更を禁止し、
前記自車両の走行速度が前記後続車両の走行速度未満の場合は、
前記第1車線において、前記自車両の走行速度を前記後続車両の走行速度以上に調整し、
前記自車両の走行速度が前記後続車両の走行速度以上になるまでは、前記車線変更を禁止する車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御方法及び走行制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車線変更制御の実行を中止する要求が、車線変更制御の開始後に検出された場合であって、車線変更先の車線に後続車両が存在するときは、後続車両に対する影響レベルと車線変更の進捗レベルとの組み合わせに基づいて、車線変更制御の続行の可否を判定する自動運転システムが知られている。この自動運転システムでは、車線変更制御の実行を中止する要求がされた場合に、車線変更先の後続車両が自車両に接近している影響レベルであるときは、車線変更の進捗レベルに拘らず、車線変更制御の続行を禁止する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-35070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、車線変更制御を実行中に元の車線へ復帰する場合に、元の車線の後続車両が自車両に接近してくるなど、自律走行制御では対応が難しい状況になることもある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、自律走行制御による車線変更時に、車線変更を止めて元の車線へ戻った場合に、後続車両が自車両に接近するのを抑制できる車両の走行制御方法及び走行制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、現在の車線における自車両の後続車両の走行速度を検出し、自車両の走行速度が後続車両の走行速度未満の場合は車線変更を禁止することで上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、自車両の走行速度が、元の車線における後続車両の走行速度以上である場合に車線変更が許可されるので、車線変更を止めて元の車線へ戻ったときでも、後続車両が自車両に接近するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の車両の走行制御装置の一実施の形態を示すブロック図である。
図2図1の入力装置の一部を示す正面図である。
図3図1の走行制御装置の車線変更制御の一例を示す平面図である。
図4A図1の制御装置の車線変更制御の一例を示す平面図(その1)である。
図4B図1の制御装置の車線変更制御の一例を示す平面図(その2)である。
図4C図1の制御装置の車線変更制御の一例を示す平面図(その3)である。
図4D図1の制御装置の車線変更制御の一例を示す平面図(その4)である。
図5図1の制御装置の車線変更制御する際の速度プロファイルの一例を示すタイムチャートである。
図6図1の制御装置の状態遷移を示すブロック図である。
図7A図1の制御装置が実行する走行制御処理の一例を示すフローチャートである(その1)。
図7B図1の制御装置が実行する走行制御処理の一例を示すフローチャートである(その2)。
図7C図1の制御装置が実行する走行制御処理の一例を示すフローチャートである(その3)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
《走行制御装置の構成》
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本実施形態に係る車両の走行制御装置1の構成を示すブロック図である。本実施形態の走行制御装置1は、本発明に係る車両の走行制御方法を実施する一実施の形態でもある。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の走行制御装置1は、センサ11、自車位置検出装置12、地図データベース13、車載機器14、ナビゲーション装置15、提示装置16、入力装置17、駆動制御装置18、及び制御装置19を備える。これらの装置は、たとえばCAN(Controller Area Network)その他の車載LANにより接続され、相互に情報の送受信を行うことができる。
【0011】
センサ11は、自車両の走行状態を検出する。たとえば、センサ11として、自車両の前方を撮像する前方カメラ、自車両の後方を撮像する後方カメラ、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー、自車両の後方の障害物を検出する後方レーダー、自車両の左右の側方に存在する障害物を検出する側方レーダー、自車両の車速を検出する車速センサ、ドライバーがハンドルを持っているか否かを検出するタッチセンサ(静電容量センサ)およびドライバーを撮像する車内カメラなどが挙げられる。なお、センサ11として、上述した複数のセンサのうち1つを用いる構成としてもよいし、2種類以上のセンサを組み合わせて用いる構成としてもよい。センサ11の検出結果は、所定時間間隔で制御装置19に出力される。
【0012】
自車位置検出装置12は、GPSユニット、ジャイロセンサ、および車速センサ等を備える。自車位置検出装置12は、GPSユニットにより複数の衛星通信から送信される電波を検出し、対象車両(自車両)の位置情報を周期的に取得する。また、自車位置検出装置12は、取得した対象車両の位置情報と、ジャイロセンサから取得した角度変化情報と、車速センサから取得した車速とに基づいて、対象車両の現在位置を検出する。自車位置検出装置12により検出された対象車両の位置情報は、所定時間間隔で制御装置19に出力される。
【0013】
地図データベース13は、各種施設や特定の地点の位置情報を含む三次元高精度地図情報を格納し、制御装置19からアクセス可能とされたメモリである。三次元高精度地図情報は、データ取得用車両を用いて実際の道路を走行した際に検出された道路形状に基づく三次元地図情報である。三次元高精度地図情報は、地図情報とともに、カーブ路及びそのカーブの大きさ(たとえば曲率又は曲率半径)、道路の合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置などの詳細かつ高精度の位置情報が、三次元情報として関連付けられた地図情報である。
【0014】
車載機器14は、車両に搭載された各種機器であり、ドライバーの操作により動作する。このような車載機器としては、ステアリングホイール、アクセルペダル、ブレーキペダル、方向指示器、ワイパー、ライト、クラクション、その他の特定のスイッチなどが挙げられる。車載機器14は、ドライバーにより操作された場合に、その操作情報を制御装置19に出力する。
【0015】
ナビゲーション装置15は、自車位置検出装置12から自車両の現在の位置情報を取得し、誘導用の地図情報に自車両の位置を重ね合わせてディスプレイなどに表示する。また、ナビゲーション装置15は、ドライバーが目的地を入力すると、その目的地までのルートを演算し、設定されたルートをドライバーに案内するナビゲーション機能を備える。このナビゲーション機能により、ナビゲーション装置15は、ディスプレイの地図上に目的地までのルートを表示するとともに、音声等によってルート上の走行推奨行動をドライバーに知らせる。
【0016】
提示装置16は、ナビゲーション装置15が備えるディスプレイ、ルームミラーに組み込まれたディスプレイ、メーター部に組み込まれたディスプレイ、フロントガラスに映し出されるヘッドアップディスプレイ等の各種ディスプレイを含む。また、提示装置16は、オーディオ装置のスピーカー、振動体が埋設された座席シート装置など、ディスプレイ以外の装置を含む。提示装置16は、制御装置19の制御に従って、各種の提示情報をドライバーに報知する。
【0017】
入力装置17は、たとえば、ドライバーの手動操作による入力が可能なボタンスイッチ、ディスプレイ画面上に配置されたタッチパネル、又はドライバーの音声による入力が可能なマイクなどの装置である。本実施形態では、ドライバーが入力装置17を操作することで、提示装置16により提示された提示情報に対する設定情報を入力することができる。図2は、本実施形態の入力装置17の一部を示す正面図であり、ステアリングホイールのスポーク部などに配置されたボタンスイッチ群からなる一例を示す。
【0018】
図示する入力装置17は、制御装置19が備える自律走行制御機能(自律速度制御機能及び自律操舵制御機能)のON/OFF等を設定する際に使用するボタンスイッチである。本実施形態の入力装置17は、メインスイッチ171、リジューム・アクセラレートスイッチ172、セット・コーストスイッチ173、キャンセルスイッチ174、車間調整スイッチ175、及び車線変更支援スイッチ176を備える。
【0019】
メインスイッチ171は、制御装置19の自律速度制御機能及び自律操舵制御機能を実現するシステムの電源をON/OFFするスイッチである。リジューム・アクセラレートスイッチ172は、自律速度制御機能を停止(OFF)したのちOFF前の設定速度で自律速度制御機能を再開したり、設定速度を上げたり、先行車両に追従して停車したのち制御装置19によって再発進させたりするためのスイッチである。セット・コーストスイッチ173は、走行時の速度で自律速度制御機能を開始したり、設定速度を下げたりするスイッチである。キャンセルスイッチ174は、自律速度制御機能をOFFするスイッチである。車間調整スイッチ175は、先行車両との車間距離を設定するためのスイッチであり、たとえば短距離・中距離・長距離といった複数段の設定から1つを選択するスイッチである。車線変更支援スイッチ176は、制御装置19が車線変更の開始をドライバーに確認した場合に車線変更の開始を指示する(承諾する)ためのスイッチである。なお、車線変更の開始を承諾した後に、車線変更支援スイッチ176を所定時間よりも長く押すことで、制御装置19による車線変更の提案の承諾を取り消すことができる。
【0020】
図2に示すボタンスイッチ群以外にも、方向指示器の方向指示レバーやその他の車載機器14のスイッチを入力装置17として用いることができる。たとえば、制御装置19から自律制御により車線変更を行うか否かを提案された場合に、ドライバーが方向指示器のスイッチをオンにすることで、車線変更の承諾又は許可を入力する構成とすることもできる。また、制御装置19から自律制御により車線変更を行うか否かを提案された場合に、ドライバーが方向指示レバーを操作すると、提案された車線変更ではなく、方向指示レバーが操作された方向に向かって車線変更を行う構成とすることもできる。入力装置17により入力された設定情報は、制御装置19に出力される。
【0021】
駆動制御装置18は、自車両の走行を制御する。たとえば、駆動制御装置18は、自律速度制御機能により自車両が設定速度で定速走行する場合には、自車両が設定速度となるように、加速および減速、並びに走行速度を維持するために、駆動機構の動作(エンジン自動車にあっては内燃機関の動作、電気自動車系にあっては走行用モータの動作を含み、ハイブリッド自動車にあっては内燃機関と走行用モータとのトルク配分も含む)およびブレーキ動作を制御する。また、駆動制御装置18は、自律速度制御機能により自車両が先行車両に追従走行する場合には、自車両と先行車との車間距離が一定距離となるように、加減速度および走行速度を実現するための駆動機構の動作およびブレーキ動作を制御する。
【0022】
また、駆動制御装置18は、自律操舵制御機能により、上述した駆動機構とブレーキの動作制御に加えて、ステアリングアクチュエータの動作を制御することで、自車両の操舵制御を実行する。たとえば、駆動制御装置18は、自律操舵制御機能によりレーンキープ制御を実行する場合に、自車両が走行する自車線のレーンマーカを検出し、自車両が自車線内の所定位置を走行するように、自車両の幅員方向における走行位置を制御する。また、駆動制御装置18は、後述する車線変更支援機能により車線変更支援を実行する場合に、自車両が車線変更を行うように、自車両の幅員方向における走行位置を制御する。さらに、駆動制御装置18は、自律操舵制御機能により右左折支援を実行する場合には、交差点などにおいて右折又は左折する走行制御を行う。なお、駆動制御装置18は、後述する制御装置19の指示により自車両の走行を制御する。また、駆動制御装置18による走行制御方法として、その他の公知の方法を用いることもできる。
【0023】
制御装置19は、自車両の走行を制御するためのプログラムを格納したROM(Read Only Memory)と、このROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)等を備える。なお、動作回路としては、CPU(Central Processing Unit)に代えて又はこれとともに、MPU(Micro Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などを用いることができる。
【0024】
《制御装置19により実現される機能》
制御装置19は、ROMに格納されたプログラムをCPUにより実行することにより、自車両の走行状態に関する情報を取得する走行情報取得機能と、自車両の走行シーンを判定する走行シーン判定機能と、自車両の走行速度及び/又は操舵を自律制御する自律走行制御機能とを実現する。以下、制御装置19が備える各機能について説明する。
【0025】
制御装置19の走行情報取得機能は、制御装置19が自車両の走行状態に関する走行情報を取得するための機能である。たとえば、制御装置19は、センサ11の前方カメラ、後方カメラ及び側方カメラにより撮像された自車両外部の画像情報を走行情報として取得する。また、制御装置19は、前方レーダー、後方レーダー及び側方レーダーによる検出結果を、走行情報として取得する。さらに、制御装置19は、センサ11の車速センサにより検出された自車両の車速情報や、車内カメラにより撮像されたドライバーの顔の画像情報も走行情報として取得する。
【0026】
さらに、制御装置19は、自車両の現在の位置情報を走行情報として自車位置検出装置12から取得する。また、制御装置19は、設定された目的地及び目的地までのルートを走行情報としてナビゲーション装置15から取得する。さらに、制御装置19は、カーブ路及びそのカーブの大きさ(たとえば曲率又は曲率半径)、合流地点、分岐地点、料金所、車線数の減少位置などの位置情報を走行情報として地図データベース13から取得する。加えて、制御装置19は、ドライバーによる車載機器14の操作情報を、走行情報として車載機器14から取得する。以上が、制御装置19により実現される走行情報取得機能である。
【0027】
制御装置19の走行シーン判定機能は、制御装置19のROMに記憶されたテーブルを参照して、自車両が走行している走行シーンを判定する機能である。制御装置19のROMに記憶されたテーブルには、たとえば車線変更や追い越しに適した走行シーンとその判定条件が、走行シーンごとに記憶されている。制御装置19は、ROMに記憶されたテーブルを参照して、自車両の走行シーンが、たとえば車線変更や追い越しに適した走行シーンであるか否かを判定する。
【0028】
たとえば、「先行車両への追いつきシーン」の判定条件として、「前方に先行車両が存在」、「先行車両の車速<自車両の設定車速」、「先行車両への到達が所定時間以内」、および「車線変更の方向が車線変更禁止条件になっていない」の4つの条件が設定されているとする。この場合、制御装置19は、たとえば、センサ11に含まれる前方カメラや前方レーダーによる検出結果、車速センサにより検出された自車両の車速、および自車位置検出装置12による自車両の位置情報などに基づいて、自車両が上記条件を満たすか否かを判断する。上記条件を満たす場合には、制御装置19は、自車両が「先行車両への追いつきシーン」であると判定する。以上が、制御装置19により実現される走行シーン判定機能である。
【0029】
制御装置19の自律走行制御機能は、制御装置19が自車両の走行をドライバーの操作に依ることなく自律制御するための機能である。制御装置19の自律走行制御機能は、自車両の走行速度を自律制御する自律速度制御機能と、自車両の操舵を自律制御する自律操舵制御機能とを含む。以下、本実施形態の自律速度制御機能と自律操舵制御機能について説明する。
【0030】
自律速度制御機能は、先行車両を検出しているときは、ドライバーが設定した車速を上限にして、車速に応じた車間距離を保つように車間制御を行いつつ先行車両に追従走行する一方、先行車両を検出していない場合には、ドライバーが設定した車速で定速走行する機能である。前者を車間制御、後者を定速制御ともいう。なお、自律速度制御機能は、センサ11により道路標識から走行中の道路の制限速度を検出し、あるいは地図データベース13の地図情報から制限速度を取得して、その制限速度を自動的に設定車速にする機能を含んでもよい。
【0031】
自律速度制御機能を作動するには、まずドライバーが、図2に示す入力装置17のリジューム・アクセラレートスイッチ172又はセット・コーストスイッチ173を操作して、所望の走行速度を入力する。たとえば、自車両が70km/hで走行中にセット・コーストスイッチ173を押すと、現在の走行速度がそのまま設定されるが、ドライバーが所望する速度が80km/hであるとすると、リジューム・アクセラレートスイッチ172を複数回押して、設定速度を上げればよい。リジューム・アクセラレートスイッチ172に付された「+」の印は、設定値を増加させるスイッチであることを示しているからである。逆にドライバーが所望する速度が60km/hであるとすると、セット・コーストスイッチ173を複数回押して、設定速度を下げればよい。セット・コーストスイッチ173に付された「-」の印は、設定値を減少させるスイッチであることを示しているからである。また、ドライバーが所望する車間距離は、図2に示す入力装置17の車間調整スイッチ175を操作し、たとえば短距離・中距離・長距離といった複数段の設定から1つを選択すればよい。
【0032】
ドライバーが設定した車速で定速走行する定速制御は、センサ11の前方レーダー等により、自車線の前方に先行車両が存在しないことが検出された場合に実行される。定速制御では、設定された走行速度を維持するように、車速センサによる車速データをフィードバックしながら、駆動制御装置18によりエンジンやブレーキなどの駆動機構の動作を制御する。
【0033】
車間制御を行いつつ先行車両に追従走行する車間制御は、センサ11の前方レーダー等により、自車線の前方に先行車両が存在することが検出された場合に実行される。車間制御では、設定された走行速度を上限にして、設定された車間距離を維持するように、前方レーダーにより検出した車間距離データをフィードバックしながら、駆動制御装置18によりエンジンやブレーキなどの駆動機構の動作を制御する。なお、車間制御で走行中に先行車両が停止した場合は、先行車両に続いて自車両も停止する。また、自車両が停止した後、たとえば30秒以内に先行車両が発進すると、自車両も発進し、再び車間制御による追従走行を開始する。自車両が30秒を超えて停止している場合は、先行車両が発進しても自動で発進せず、先行車両が発進した後、リジューム・アクセラレートスイッチ172を押すか又はアクセルペダルを踏むと、再び車間制御による追従走行を開始する。
【0034】
一方、自律操舵制御機能は、ステアリングアクチュエータの動作を制御することで、自車両の操舵制御を実行するための機能である。本実施形態の自律操舵制御機能には、(1)車線のたとえば中央付近を走行するようにステアリングを制御して、ドライバーのハンドル操作を支援するレーンキープ機能(車線幅員方向維持機能)、(2)ドライバーがウィンカーレバーを操作するとステアリングを制御し、車線変更に必要なハンドル操作を支援する車線変更支援機能、(3)設定車速よりも遅い車両を前方に検出すると、表示によりドライバーに追い越し操作を行うか確認し、ドライバーが承諾スイッチを操作した場合、ステアリングを制御し追い越し操作を支援する追い越し支援機能、(4)ドライバーがナビゲーション装置などに目的地を設定している場合には、ルートに従って走行するために必要な車線変更地点に到達すると、表示によりドライバーに車線変更を行うか確認し、ドライバーが承諾スイッチを操作した場合、ステアリングを制御し車線変更を支援するルート走行支援機能などが含まれる。
【0035】
ここで、自律操舵制御機能のうちの車線変更支援機能について説明する。図3は、本実施形態の制御装置19が実行する車線変更制御(車線変更支援機能)の一例を示す平面図である。図3に示すように、ドライバーが自車両V1のウィンカーレバーを操作すると、制御装置19は方向指示器を点灯し、予め設定された車線変更開始条件を満たすと車線変更操作(自律車線変更の一連の処理。以下、LCPともいう。)を開始する。制御装置19は、センサ11により取得した各種の走行情報に基づいて、車線変更開始条件が成立するか否かを判断する。車線変更開始条件としては、特に限定されないが、(1)ハンズオンモードのレーンキープモードであること、(2)ハンズオン判定中であること、(3)速度60km/h以上で走行していること、(4)車線変更方向に車線があること、(5)車線変更先の車線に車線変更可能なスペースがあること、(6)レーンマーカの種別が車線変更可能であること、(7)道路の曲率半径が250m以上であること、(8)ドライバーが方向指示レバーを操作してから1秒以内であること、といった全ての条件(1)~(8)が成立することを例示できる。なお、制御装置19は、ドライバーの指示がなくても、車線変更支援機能により車線変更開始条件が成立すると判断した場合には、提示装置16によってドライバーに報知することで、ドライバーに車線変更を提案してもよい。
【0036】
ちなみに、ハンズオンモードのレーンキープモードとは、詳しくは後述するが、自律速度制御機能と自律操舵制御機能のレーンキープ機能とが実行中で、かつ、ドライバーによるハンドルの保持が検出されている状態を言う。また、ハンズオン判定中とは、ドライバーによるハンドルの保持が継続されている状態を言う。
【0037】
車線変更開始条件を満たすと、制御装置19は、車線変更操作LCPを開始する。本実施形態の車線変更操作LCPは、図3に示すように、自車両V1の隣接車線L2への横移動と、実際に隣接車線L2へ移動する車線変更操縦(以下、LCMともいう。)を含む。制御装置19は、車線変更操作LCPを実行中に、自律制御により車線変更を行っていることを表す情報を、提示装置16を介してドライバーに提示し、周囲への注意を喚起する。制御装置19は、車線変更操縦LCMが完了すると、方向指示器を消灯し、隣接車線L2でのレーンキープ機能の実行などを開始する。なお、車線変更操作LCPは、ウィンカーレバーの操作による方向指示器の点灯から消灯までの期間を言い、車線変更操縦LCMは、自車両V1が自車線L1と隣接車線L2との境界線を踏み始めてから踏み終わるまでの期間を言うものとする。
【0038】
さて、本実施形態の制御装置19においては、車線変更支援機能を用いることで、図3に示す車線変更が自律走行制御により実現される。ただし、同図に示すようにウィンカーレバーを操作して車線変更操作LCPを開始してから、方向指示器が消灯して車線変更操作LCPが終了するまでの間、制御装置19は、センサ11などを用いて自車両V1の周囲の走行環境を走査し続け、車線変更の成立条件が維持されているか否かを連続して判定している。したがって、他車両の走行状態が急激に変化するなどして、車線変更先の車線に予測していなかった他車両や障害物が現れた場合や、ドライバーによる車線変更の中止要求がされた場合、自律走行制御による車線変更操作を止めなければならないことがある。このように自律走行制御による車線変更操作を止めると、それまでの制御装置19による自律制御から、ドライバーの手動操作へ遷移させる必要が生じ、ドライバーの運転負荷が増加する。
【0039】
そこで、本実施形態の制御装置19の車線変更支援機能には、当該車線変更支援機能による車線変更操作を開始する際に、現在の走行車線に後続車両がいる場合は当該後続車両の走行速度を検出し、自車両の走行速度を後続車両の走行速度以上に調整し、自車両の走行速度が後続車両の走行速度以上になるまでは、車線変更を禁止し、自車両の走行速度が後続車両の走行速度以上になった場合に限り、車線変更を許可する機能が含まれている。以下、この機能について説明する。なお、車線変更の途中とは、図3に示す車線変更操作LCPの開始から車線変更操作LCPの終了までの間を言い、車線変更を止めるとは、それまで予定されていた車線変更制御を中止又は中断することを言う。
【0040】
図4A図4Dは、現在走行中の車線L1から左の隣接車線L2への車線変更の途中で、当該車線変更を中止して元の車線L1に戻る車線変更制御の一例を示す平面図である。車線変更操作を開始するときの走行シーンを図4Aに示し、特に限定されないが、現在走行中の車線L1の走行速度に比べ、隣接車線L2の走行速度の方が遅く、たとえば隣接車線L2の前方にサービスエリアや高速道路の出口道路があるものとする。図4Aにおいて、自車両V1が走行する車線L1には、自車両V1の後方に他車両V2(以下、後続車両V2ともいう)が走行し、左の隣接車線L2には数台の他車両V3が走行しているものの、自車両V1が隣接車線L2へ車線変更するスペースは存在するものとする。この状態で所定の車線変更条件が成立すると、図4Aに示すように左方への方向指示器を点灯し、矢印にて示すように、横移動を開始して自車線L1と隣接車線L2との境界線を跨ぎ、隣接車線L2を走行する他車両V3の後方に車線変更する。
【0041】
ところが、図4Bに示すように、自車両V1が車線変更しようとしている途中で、隣接車線L2の他車両V3の後方のスペースが小さくなったり、ドライバーが車線変更をキャンセルする要求を出したりした場合、自車両V1は自律走行制御による車線変更操作を中止又は中断せざるを得ない。しかしながら、図4Bに示す車線変更操作を中止又は中断せざるを得ないと判定したときに、図4Cに示すように、自車両V1が元の車線L1に戻っても、後続車両V2が急接近しなければ、それまで予定されていた自律走行制御による車線変更制御(隣接車線L2方向への車線変更)は止めるものの、これに続けて、元の車線L1へ戻る車線変更制御(元の車線L1方向への車線変更)を改めて設定することが可能となる。
【0042】
そのため、本実施形態の制御装置19は、図4A及び図4Bに示すように車線変更操作を開始した自車両V1が、図4Cに示すように車線変更を中止又は中断し、図4Dに示すように元の車線L1へ戻った場合に、当該元の車線L1を走行する後続車両V2が自車両V1に急接近しないように、予め車線変更を開始する前に後続車両V2の走行速度を検出し、元の車線L1において、自車両V1の走行速度が後続車両V2の走行速度より遅ければ、当該後続車両V2の走行速度以上に加速しておく。そのうえで車線変更制御を開始すれば、たとえ図4Cに示すようにそれまでの車線変更制御を止めて元の車線へ戻ったとしても、後続車両V2との速度差は等しいか又はそれほど差異がないため、後続車両V2が急接近するといった事態を回避することができる。自車両V1が、車線変更を開始する前に調整する走行速度は、後続車両V2の走行速度に等しいことが最も望ましいが、たとえば±10%の範囲であれば、後続車両V2の急接近を充分に抑制することができる。
【0043】
本実施形態の制御装置19は、図4Aに示す車線変更操作を開始する直前の自車両V1の走行速度VE1が、後続車両V2の走行速度VE2に比べて、VE1<VE2である場合は、車線変更操作を禁止する。一方、図4Aに示す車線変更操作を開始する直前の自車両V1の走行速度VE1が、後続車両V2の走行速度VE2に比べて、VE1≧VE2ある場合は車線変更操作を許可する。
【0044】
図5は、車線変更支援機能による車線変更の途中で当該車線変更を止めて元の車線L1に戻る車線変更制御の速度プロファイルの一例を示すタイムチャートである。実線が本発明に係る実施例のタイムチャートを示し、点線は本発明に係る実施例であって車線変更を止めることなく終了した場合を示す。また、二点鎖線は、本発明に係る実施例に対する比較例のタイムチャートを示す。
【0045】
本発明に係る実施例では、たとえば、時間t1の前において、自車両V1は、現在走行中の車線L1の後続車両V2の走行速度VE2にほぼ等しいか僅かに低い速度VE1で走行しているところ、時間t1において自車両V1を加速し、後続車両V2の走行速度VE2にほぼ等しい走行速度に調整する。ついで、時間t2において車線変更の条件が成立すると、方向指示器を点灯し、車線変更操作LCPを開始する。走行速度VE2を維持しながら時間t3にて横移動し始め、自車線L1と隣接車線L2との境界線を跨ぎ始める。ここで、隣接車線L2の状況等に変化がなく、車線変更の継続が可能であれば、図5に点線で示すように、自車両V1は走行速度VE2から、隣接車線L2の走行速度VE3に向かって減速しながら、隣接車線L2への車線変更操作を終了する。
【0046】
これに対し、車線変更の途中である時間t4において、隣接車線L2への車線変更ができないと判定されると、隣接車線L2への車線変更制御は中止し、これに代えて元の車線L1への車線変更制御を開始する。この元の車線L1への車線変更制御では、方向指示器の点灯方向を変更するとともに、元の車線L1の平均走行速度VE2に向かって加速しながら、逆方向への横移動を開始する。上述したとおり、本実施形態の制御装置19が実行する車線変更制御では、車線変更の許可条件に、こうした車線変更の中止又は中断と元の車線L1へ戻った場合の後続車両V2との相対速度が考慮されている。したがって、僅かに加速するだけで後続車両V2の走行速度VE2まで戻ることができ、後続車両V2が急接近するといった状況の発生を抑制することができる。
【0047】
これに対して、図5に二点鎖線で示す比較例のように、車線変更を開始する前の時間t1から減速を開始し、隣接車線L2の走行速度VE3に向かって減速し続けた場合、車線変更の途中である時間t4において、隣接車線L2への車線変更ができないと判定され、元の車線L1への車線変更制御を開始しても、現在の走行速度VE3と、元の車線L1の後続車両V2の走行速度VE2には大きな速度差がある。そのため、急加速が必要になってドライバーの手動運転へ遷移せざるを得なかったり、元の車線L1へ戻れたとしても後続車両V2が急接近して車の流れを乱したりする。以上が、本実施形態の制御装置19の車線変更支援機能に含まれる車線変更を途中でやめた場合の自律走行制御である。
【0048】
ちなみに、本実施形態の車線変更支援機能により実現される運転支援モードには、複数の水準が設定されている。運転支援モードとは、運転操作の支援における支援の形態又は様式を意味する。本実施形態では、当該支援の水準を支援レベルというものとする。運転支援モードの各支援レベルは、車両の走行動作の制御に対して、制御装置19がどの程度介入するのか、換言すれば、ドライバーの手動操作がどの程度介入するのか、が定められている。制御装置19は、自律速度制御機能を用いた走行速度の自律制御と、自律操舵制御機能を用いた操舵操作の自律制御とを組み合わせて、自車両の走行を自律制御するにあたり、各支援レベルで定められた運転操作の支援を実現する。
【0049】
本実施形態の支援レベルは、たとえば、米国自動車技術会(SAE:Society of Automotive Engineers)から公開されているSAE J3016: SEP2016, Taxonomy and Definitions for Terms Related to Driving Automation Systems for On-Road Motor Vehiclesにおいて定義された運転自動化レベルに基づいて設定することができる。たとえば、このSAEにより定義された支援レベル0は、走行動作に必要な運転タスクのすべてをドライバーが実行する水準である。同じく支援レベル1は、制御装置19が自律速度制御または自律操舵制御のいずれか(両方同時ではない)を特定の限定領域において持続的に実行し、ドライバーは自車両の走行速度またはステアリングによる自車両の操舵のいずれか(両方同時ではない)を実行する水準である。同じく支援レベル2は、制御装置19が自律速度制御および自律操舵制御を特定の限定領域において持続的に実行し、ドライバーは自車両の走行速度またはステアリングによる自車両の操舵のいずれか(両方同時ではない)を実行する水準である。同じく支援レベル3は、制御装置19がすべての運転タスクを限定領域において持続的に実行する水準である。同じく支援レベル4は、制御装置19がすべての運転タスクを実行し、制御継続が困難な場合への応答は、限定領域において持続的に実行する水準である。同じく支援レベル5は、制御装置19がすべての運転タスクおよび制御継続が困難な場合への応答を持続的かつ無制限に実行する水準である。
【0050】
本実施形態で設定される支援レベル1は、特に限定はされないが、制御装置19が自律速度制御によって自車両の走行速度を制御することに対応する。また同じく支援レベル2は、制御装置19が自律操舵制御によってハンズオンモードの車線変更を実行することに対応する。したがって、たとえば、図3に示す自車両V1が自車線L1から隣接車線L2に車線変更しようとした場合に、自車両V1の走行環境が変化し、ハンズオンモードの車線変更制御を継続するための条件を満たさなくなり、自律速度制御に移る場合などは、運転支援モードの支援レベルが低下する状況となる。すなわち、運転操作の主導権が制御装置19からドライバーに移るような状況が、支援レベルが低下する状況となり、ドライバーにとって運転負荷が増加することになる。
【0051】
《走行制御装置の状態遷移》
図6は、制御装置19に確立された各機能の状態遷移を示すブロック図である。同図に示すシステムとは、制御装置19により実現される自律走行制御システムを意味する。同図に示すシステムOFFの状態から、図2のメインスイッチ171をONすると、当該システムがスタンバイ状態となる。このスタンバイ状態から、図2のセット・コーストスイッチ173又はリジューム・アクセラレートスイッチ172をONすることで、自律速度制御が立ち上がる。これにより、上述した定速制御又は車間制御が開始し、ドライバーはハンドルを操作するだけで、アクセルやブレーキを踏むことなく、自車両を走行させることができる。
【0052】
自律速度制御を実行中に、図6の条件(1)が成立すると自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンキープモードに遷移する。この条件(1)としては、特に限定されないが、自車両の両側のレーンマーカを検出していること、ドライバーがハンドルを持っていること、車線の中央付近を走行していること、ウィンカーが作動していないこと、ワイパーが高速(HI)で作動していないこと、高精度地図がある場合、前方約200m以内に料金所、出口、合流、交差点、車線数減少地点がないこと、といった全ての条件が成立することなどを例示できる。なお、ハンズオンモードとは、ドライバーがハンドルを持っていないと自律操舵制御が作動しないモードをいい、ハンズオフモードとは、ドライバーがハンドルから手を離しても自律操舵制御が作動するモードをいう。
【0053】
自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンキープモードを実行中に、図6の条件(2)が成立すると、自律操舵制御・ハンズオフモードのレーンキープモードに遷移する。この条件(2)として、特に限定されないが、自車両が自動車専用道を走行していること、対向車線と構造的に分離された道路を走行していること、高精度地図がある道路を走行していること、制限速度以下の車速で走行していること、GPS信号が有効であること、ドライバーがハンドルを持っていること、ドライバーが前を向いていること、前方約800m以内に料金所、出口、合流、交差点、車線数減少地点がないこと、前方約500m以内に100R以下の急カーブがないこと、トンネル入り口から500mを超えたトンネル内走行していないこと、アクセルペダルが踏まれていないこと、といった全ての条件が成立することなどを例示できる。
【0054】
逆に、自律操舵制御・ハンズオフモードのレーンキープモードを実行中に、図6の条件(3)が成立すると、自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンキープモードに遷移する。この条件(3)として、特に限定されないが、自車両が自動車専用道以外の道路を走行していること、対面通行区間を走行していること、高精度地図がない道路を走行していること、制限速度を超えた車速で走行していること、GPS信号が受信できなくなったこと、前方注視警報が作動した後、ドライバーが5秒以内に前を向かなかったこと、ドライバーモニターカメラで運転者を検知できなくなったこと、前方約800m先に料金所、出口、合流、車線数減少のいずれかがあること、車速が約40km/h未満で走行している場合、前方約200m以内に100R以下の急カーブがあること、車速が約40km/h以上で走行している場合、前方約200m以内に170Rの以下急カーブがあること、トンネル入り口から500mを超えたトンネル内を走行していること、ドライバーがハンドルを持って、アクセルペダルを踏んだこと、接近警報が作動したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。
【0055】
自律操舵制御・ハンズオフモードのレーンキープモードを実行中に、図6の条件(4)が成立すると、自律操舵制御を中止して自律速度制御に遷移する。この条件(4)として、特に限定されないが、自車両の両側のレーンマーカを一定時間検出しなくなったこと、ドライバーがハンドル操作をしたこと、ワイパーが高速(HI)で作動したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。また、自律操舵制御・ハンズオフモードのレーンキープモードを実行中に、図6の条件(5)が成立すると、自律操舵制御及び自律速度制御を中止してスタンバイ状態に遷移する。この条件(5)として、特に限定されないが、ドライバーがブレーキを操作したこと、ドライバーが図2のキャンセルスイッチ174を操作したこと、自車両のドアが開いたこと、運転席のシートベルトが解除されたこと、着座センサでドライバーが運転席からいなくなったことを検知したこと、セレクトレバーが「D」または「M」以外になったこと、パーキングブレーキが作動したこと、自車両の横滑り防止装置がOFFになったこと、横滑り防止装置が作動したこと、スノーモードがONにされたこと、エマージェンシーブレーキが作動したこと、車速制御により自車両が停止した後、停止状態が約3分継続したこと、フロントカメラが、汚れ、逆光、雨・霧などで対象物を正しく認識できないといった視界不良を検出したこと、フロントレーダが遮蔽、電波障害を検出したこと、フロントレーダが軸ずれを検出したこと、サイドレーダが遮蔽、電波障害を検出したこと、サイドレーダが軸ずれを検出したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。
【0056】
自律操舵制御・ハンズオンモードを実行中に、図6の条件(6)が成立すると、自律操舵制御を中止して自律速度制御に遷移する。この条件(6)として、特に限定されないが、自車両の両側のレーンマーカを検出しなくなったこと、ドライバーがハンドル操作をしたこと、ドライバーがウィンカーを操作したこと、ワイパーが高速(HI)で作動したこと、高精度地図がある場合に料金所区間になったこと、フロントカメラが、汚れ、逆光、雨・霧などで対象物を正しく認識できない視界不良を検出したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。また、自律操舵制御・ハンズオンモードを実行中に、図4の条件(7)が成立すると、自律操舵制御及び自律速度制御を中止してスタンバイ状態に遷移する。この条件(7)として、特に限定されないが、ドライバーがブレーキを操作したこと、ドライバーが図2のキャンセルスイッチ174を操作したこと、自車両のドアが開いたこと、運転席のシートベルトが解除されたこと、着座センサでドライバーが運転席からいなくなったことを検知したこと、セレクトレバーが「D」または「M」以外になったこと、パーキングブレーキが作動したこと、自車両の横滑り防止装置がOFFになったこと、横滑り防止装置が作動したこと、スノーモードがONにされたこと、エマージェンシーブレーキが作動したこと、車速制御により自車両が停止した後、停止状態が約3分継続したこと、フロントレーダが遮蔽、電波障害を検出したこと、フロントレーダが軸ずれを検出したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。
【0057】
自律速度制御を実行中に、図6の条件(8)が成立すると、スタンバイ状態に遷移する。この条件(8)として、特に限定されないが、ドライバーがブレーキを操作したこと、ドライバーが図2のキャンセルスイッチ174を操作したこと、自車両のドアが開いたこと、運転席のシートベルトが解除されたこと、着座センサでドライバーが運転席からいなくなったことを検知したこと、セレクトレバーが「D」または「M」以外になったこと、パーキングブレーキが作動したこと、自車両の横滑り防止装置がOFFになったこと、横滑り防止装置が作動したこと、スノーモードがONにされたこと、エマージェンシーブレーキが作動したこと、車速制御により自車両が停止した後、停止状態が約3分継続したこと、フロントレーダが遮蔽、電波障害を検出したこと、フロントレーダが軸ずれを検出したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。
【0058】
自律操舵制御・ハンズオフモードのレーンキープモードを実行中に、図6の条件(9)が成立すると、自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンチェンジモードに遷移する。この条件(8)として、特に限定されないが、システムがレーンチェンジを提案したときに、ドライバーが図2の車線変更支援スイッチ176を押したこと、ドライバーがウィンカーを操作したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。
【0059】
自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンチェンジモードを実行中に、図4の条件(10)が成立すると、自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンキープモードに遷移する。この条件(10)として、特に限定されないが、車線変更操作LCP開始前に、制限速度を超えたこと、車線変更操作LCP開始前に、ドライバーが、ハンドルを持って、アクセルペダルを踏んだこと、前方に遅い車がいた場合の車線変更提案中に車線変更支援スイッチ176を押した後、10秒以内に車線変更操作LCPが開始できなかったこと、ルートに従って走行するための車線変更提案中に車線変更支援スイッチ176を押した後、車線変更操作LCPを開始できず分岐に近づきすぎてしまったこと、車線変更操作LCP作動後、5秒以内に実際の車線変更操縦LCMを開始できなかったこと、車線変更操作LCPを開始し、車線変更操縦LCMを開始する前に車速が約50km/hを下回ったこと、車線変更操作LCPが作動した後、車線変更操縦LCMを開始する前に車線変更に必要な隣接車線のスペースがなくなったこと、車線変更操縦LCM開始前にドライバーがキャンセル操作を行ったこと、車線変更操縦LCM開始前にレーンマーカが非検知となったこと、車線変更操縦LCM開始前に、車線変更する方向に隣接車線L2がない、または、前方一定距離内にその隣接車線L2がなくなると判断したこと、車線変更操縦LCM開始前に、前方一定距離内に曲率半径250m以下のカーブがあると判断したこと、車線変更操縦LCM開始前に、前方一定距離内に区分線の種類がその隣接車線L2への車線変更禁止している区間があると判断したこと、車線変更操縦LCM開始前に、サイドレーダが遮蔽、電波障害を検出したこと、車線変更操縦LCM開始前に、サイドレーダが軸ズレを検出したこと、ハンズオン警報が作動したこと(車線変更操作LCPが作動した後、約2秒以内にドライバーがハンドルを持たなかった、前方に遅い車がいた場合の車線変更提案中に車線変更支援スイッチ176を押した後、約2秒以内にドライバーがハンドルを持たなかった、ルートに従って走行するための車線変更提案中に車線変更支援スイッチ176を押したのち、約2秒以内にドライバーがハンドルを持たなかったといういずれかの条件にて成立)、ドライバーがウィンカーを消したこと、車線変更操作LCPが完了したこと、といったいずれかの条件が成立することなどを例示できる。
【0060】
なお、自律操舵制御・ハンズオフモード、自律操舵制御・ハンズオンモード、自律速度制御、スタンバイ状態のいずれかの状態でメインスイッチ171をOFFすると、システムOFFとなる。
【0061】
《走行制御処理》
次に、図7A図7Cを参照して、本実施形態に係る走行制御処理について説明する。図7A図7Cは、本実施形態の制御装置19が実行する走行制御処理の一例を示すフローチャートである。図7A及び図7Bは、基本的な走行制御処理を示し、図7Cは、図7AのステップS10のサブルーチンを示す。
【0062】
以下に説明する走行制御処理は、制御装置19により所定時間間隔で実行される。また、以下においては、制御装置19の自律走行制御機能により、自律速度制御と自律操舵制御が実行され、自車両がドライバーの設定した速度で車線内を走行するように、自車両の幅員方向における走行位置を制御するレーンキープ制御が行われているものとする。
【0063】
図7AのステップS1において、制御装置19は、メインスイッチ171がONであるか否かを判断する。メインスイッチ171がOFFである場合は、制御装置19は、メインスイッチ171がONになるまでステップS1を繰り返す。これに対して、メインスイッチ171がONである場合は、ステップS2に進む。
【0064】
ステップS2において、制御装置19は、ドライバーが走行速度を設定しているか否かを判断する。走行速度が設定されていない場合は、ステップS1へ戻り、走行速度が設定されるまでステップS1およびS2を繰り返す。これに対して、走行速度が設定されている場合は、ステップS3へ進む。なお、ドライバーによる走行速度の設定は、ドライバーが、図2に示す入力装置17のリジューム・アクセラレートスイッチ172又はセット・コーストスイッチ173を操作して、所望の走行速度を入力することにより行われる。
【0065】
ドライバーが走行速度を設定すると、自律速度制御が開始される。ステップS3において、制御装置19は、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー(センサ11)を用いて、自車両が走行する車線の前方に先行車両が存在するか否かを検出する。先行車両を検出した場合はステップS4へ進み、車間制御を実行する。これに対して、先行車両を検出しない場合はステップS5へ進み、定速制御を実行する。これにより、ドライバーは、ハンドルを操作するだけで、アクセルやブレーキを踏むことなく、自車両を所望の速度で走行させることができる。
【0066】
ステップS4の車間制御又はステップS5の定速制御が実行されている間に、ステップS6において、制御装置19は、図6に示す自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンキープモードに遷移する条件(1)が成立するか否かを判断する。図6に示す条件(1)が成立しない場合は、ステップS3へ戻り、車間制御又は定速制御を続ける。これに対して、図6に示す条件(1)が成立する場合は、ステップS7へ進む。
【0067】
ステップS7において、制御装置19は、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー(センサ11)を用いて、自車両が走行する車線の前方に先行車両が存在するか否かを検出する。先行車両を検出した場合は、ステップS8へ進んで車間制御・レーンキープモードを実行する。これに対して、先行車両を検出しない場合は、ステップS9へ進んで定速制御・レーンキープモードを実行する。なお、この状態において、ステップS10の車線変更支援機能や追い越し支援機能の実行処理が行われる。ステップS10の詳細は、後述する。
【0068】
ステップS8の車間制御・レーンキープモードまたはステップS9の定速制御・レーンキープモードが実行されている間に、続く図7BのステップS11において、制御装置19は、図6に示す自動操舵制御・ハンズオフモードに遷移する条件(2)が成立するか否かを判断する。図6に示す条件(2)が成立する場合は、ステップS12へ進む。これに対して、図6に示す条件(2)が成立しない場合は、後述するステップS15へ進む。
【0069】
自動操舵制御・ハンズオフモードに遷移する条件(2)が成立したステップS12において、制御装置19は、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー(センサ11)を用いて、自車両が走行する車線の前方に先行車両が存在するか否かを検出する。先行車両が検出された場合は、ステップS13へ進んで車間制御・レーンキープモード・ハンズオフを実行する。これに対して、先行車両を検出しない場合は、ステップS14へ進んで定速制御・レーンキープモード・ハンズオフを実行する。
【0070】
ステップS15において、制御装置19は、自車両の前方の障害物を検出する前方レーダー(センサ11)を用いて、自車両が走行する車線の前方に先行車両が存在するか否かを検出する。先行車両を検出しない場合はステップS1へ戻り、それ以降の処理を継続する。これに対して、先行車両を検出する場合はステップS16へ進む。
【0071】
ステップS16において、制御装置19は、ステップS6と同様に、自律操舵制御・ハンズオンモードのレーンキープモードに遷移する条件(1)が成立するか否かを判断する。図6に示す条件(1)が成立しない場合はステップS1へ戻り、それ以降の処理を継続する。これに対して、図6に示す条件(1)が成立する場合はステップS17へ進む。
【0072】
ステップS17において、制御装置19は、ステップS11と同様に、自動操舵制御・ハンズオフモードに遷移する条件(2)が成立するか否かを判断する。図6に示す条件(2)が成立する場合はステップS12へ戻り、それ以降の処理を継続する。これに対して、図6に示す条件(2)が成立しない場合はステップS1へ戻り、それ以降の処理を継続する。
【0073】
図7AのステップS10では、車線変更支援機能の実行処理として、図7Cに示す処理が実行される。まず、図7CのステップS101において、制御装置19は、自車両V1が車線変更をする必要か否かを判定する。この判定には、ナビゲーション装置15により設定された目的地までのルートが用いられ、現在走行中の車線と目的地までのルートに設定された車線とを比較する。車線変更が必要ないと判定した場合は、車線変更支援を実行せずに図7CのステップS11へ進み、それ以降の走行制御処理を継続する。これに対して、車線変更が必要であると判定した場合は、図7CのステップS102に進む。
【0074】
ステップS102において、制御装置19は、自車両V1の前方の障害物を検出する前方レーダー及び前方カメラ(センサ11)を用いて、隣接車線L2にて自車両V1の前方を走行する他車両V3(図4A参照、先行車両である)が存在するか否かを検出する。隣接車線L2を走行する他車両V3を検出した場合はステップS103へ進む。これに対して、隣接車線L2を走行する他車両V3を検出しない場合はステップS104へ進む。
【0075】
ステップS103において、制御装置19は、自車両V1が、ステップS102にて検出した他車両V3に追従できるか否かを判定する。この追従できるか否かは、たとえば他車両V3と自車両V1の相対速度が所定値未満であるかといった条件で判定することができる。自車両V1が他車両V3に追従できると判定した場合はステップS105Aへ進む。これに対して、隣接車線L2を走行する他車両V3の走行速度が速過ぎるなど、当該他車両V3に追従できないと判定した場合は、ステップS104へ進む。
【0076】
ステップS104において、制御装置19は、自車両V1の走行速度が、自車線L2から隣接車線L2への車線変更の前後で自車両V1の支援レベルが低下しない所定の走行速度以下か否かを判定する。自車両V1の走行速度は、車速センサ(センサ11)を用いて検出する。自車両V1の走行速度が所定走行速度以下である判定した場合は、ステップS105Aへ進む。これに対して、自車両V1の走行速度が所定走行速度を超えると判定した場合は、車線変更支援を実行せずに図7CのステップS11へ進み、それ以降の走行制御処理を継続する。
【0077】
ステップS105Aにおいて、制御装置19は、車線変更支援機能により、元の車線L1を走行する後続車両V2が存在するか否かを判定し、存在しない場合はステップS106へ進むが、後続車両V2が存在する場合は、その走行速度VE2を検出し、自車両V1の走行速度VE1と比較する。自車両V1の走行速度VE1が後続車両V2の走行速度VE2以上であればステップS106へ進み、自車両V1の走行速度VE1が後続車両V2の走行速度VE2未満であれば、ステップS105Bへ進み、所定量だけ自車両V1を加速する。ステップS105A及びS105Bを繰り返すことで、自車両V1の走行速度VE1が後続車両V2の走行速度VE2以上になったら加速を止め、ステップS106へ進む。
【0078】
ステップS106において、制御装置19は、車線変更支援機能により、図3に示すような車線変更操作を開始するが、ステップS108において車線変更操作が終了するまでの間、ステップS107においてセンサ11などを用いて自車両V1の周囲の状況を走査し続け、ドライバーによる車線変更の中止要求を含む、車線変更条件を満足しているか否かを判定する。そして、図4Bに示すように、車線変更操作の途中で、車線変更条件を満たさなくなった場合には、ステップS109へ進む。
【0079】
ステップS109において、制御装置19は、車線変更支援機能により、ステップS106で設定された車線L1から車線L2への車線変更制御を中止し、これに代えて、図4Cに示すように、現在位置から元の車線L1への車線変更制御を改めて設定する。そして、ステップS110において、図4Dに示すように元の車線L1への車線変更が終了するまでこれを継続する。
【0080】
以上のとおり、本実施形態の車両の走行制御方法及び走行制御装置1によれば、車線L1から車線L2への車線変更を開始する前に、元の車線L1における自車両V1の後続車両V2の走行速度VE2を検出し、自車両V1の走行速度VE1が後続車両V2の走行速度VE2未満の場合は、当該車線変更を禁止する。したがって、走行環境の変化によって車線変更を中止せざるを得なくなり、やむを得ず元の車線へ戻った場合に、後続車両が急接近するといった状況の発生が未然に回避される。その結果、自律走行制御による車線変更時にドライバーの運転負荷が増加するのを抑制することができる。
【0081】
また、本実施形態の車両の走行制御方法及び走行制御装置1によれば、自車両V1の走行速度VE1が後続車両V2の走行速度VE2未満の場合は、元の車線L1において、自車両V1の走行速度VE1を後続車両V2の走行速度VE2以上に調整し、自車両V1の走行速度VE1が後続車両V2の走行速度VE2以上になるまでは、当該車線変更を禁止する。したがって、車線変更を止めて元の車線へ戻った場合の状況を考慮しつつ、自律制御により車線変更できる状況を作り出すことができる。
【0082】
また、本実施形態の車両の走行制御方法及び走行制御装置1によれば、上記の自車両V1の走行速度VE1が後続車両V2の走行速度VE2以上になったら、当該車線変更を許可するので、仮に車線変更の途中で当該車線変更を止めて元の車線L1へ戻ったとしても、自車両V1と元の車線L1を走行する後続車両V2との相対速度差が十分に小さい。したがって、僅かに加速するだけで後続車両との速度差がなくなり、急激な加速を行わなくても、滑らかな加速操作によって元の車線L1に戻ることができる。
【0083】
また、本実施形態の車両の走行制御方法及び走行制御装置1によれば、隣接車線L2を走行する車両の平均走行速度は、自車線L1を走行する車両の平均走行速度に比べて遅く、したがって、相対的に走行速度が遅い車線へ車線変更するので、仮に車線変更の途中で当該車線変更を止めて元の車線L1へ戻った場合に必要とされる加速量が大きい。しかしながら、本実施形態によれば、急激な加速を行わなくても、滑らかな加速操作によって元の車線L1に戻ることができるので、その効果がより一層発揮される。
【0084】
また、本実施形態の車両の走行制御方法及び走行制御装置1によれば、元の車線L1において、後続車両V2の走行速度VE2を目標速度に設定し、自車両V1の走行速度VE1を調整するので、自車両V1の走行速度VE1が後続車両V2の走行速度VE2に等しくなるので、元の車線へ戻った場合に後続車両が急接近するといった状況の発生が、より一層未然に回避される。
【0085】
また、本実施形態の車両の走行制御方法及び走行制御装置1によれば、自律走行制御を用いてドライバーの運転操作を支援する運転支援モードに、複数の支援レベルが設定され、支援レベルは、自車両が自律走行制御により車線変更している間は低下しないので、仮に車線変更の途中で当該車線変更を止めて元の車線L1へ戻ったとしても、支援レベルは低下せず、ドライバーの運転負荷が増加するのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0086】
1…走行制御装置
11…センサ
12…自車位置検出装置
13…地図データベース
14…車載機器
15…ナビゲーション装置
16…提示装置
17…入力装置
171…メインスイッチ
172…リジューム・アクセラレートスイッチ
173…セット・コーストスイッチ
174…キャンセルスイッチ
175…車間調整スイッチ
176…車線変更支援スイッチ
18…駆動制御装置
19…制御装置
V1…自車両
V2…後続車両
V3…他車両
L1…元の車線(第1車線)
L2…隣接車線(第2車線)
VE1…自車両の走行速度
VE2…後続車両の走行速度
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7A
図7B
図7C