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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ダイカスト鋳造品の品質管理方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 17/32 20060101AFI20240918BHJP
   B29C 45/76 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
B22D17/32 J
B29C45/76
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020203192
(22)【出願日】2020-12-08
(65)【公開番号】P2022090725
(43)【公開日】2022-06-20
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】300041192
【氏名又は名称】UBEマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】岡本 昭男
(72)【発明者】
【氏名】有馬 祐一朗
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-279268(JP,A)
【文献】特開2000-120603(JP,A)
【文献】特開平03-003003(JP,A)
【文献】特開2020-146737(JP,A)
【文献】特表2010-536580(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22D 17/00-32、46/00
B22D 17/20
B29C 45/00-84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出スリーブ内に配置されたプランジャチップの後退動作後の待機位置で前記射出スリーブの内部に溶湯を供給し、前記プランジャチップの前進動作後の射出完了位置で金型キャビティ内に該溶湯の射出充填を終える、ダイカスト鋳造品の品質管理方法であって、
前記プランジャチップの後退動作の移動範囲内に検出区間を設定し、該検出区間内の前記プランジャチップと前記射出スリーブとの摺動抵抗を連続的に採取し、予め採取した良品鋳造時の摺動抵抗と比較して実鋳造時のショット毎の摺動抵抗の良否を判別する摺動抵抗判別装置を備え、
前記摺動抵抗は、前記プランジャチップの後退動作又は前進動作を制御する電気制御式油圧サーボバルブシステムの制御指令値から求められ、
前記摺動抵抗判別装置の評価結果に基づいてショット毎の実鋳造品の品質良否を判別する、ダイカスト鋳造品の品質管理方法。
【請求項2】
前記検出区間は、前記射出完了位置を起点として前記待機位置までの範囲内とする、請求項1記載のダイカスト鋳造品の品質管理方法。
【請求項3】
前記電気制御式油圧サーボバルブシステムの前記制御指令値は電流値である、請求項1又2に記載のダイカスト鋳造品の品質管理方法。
【請求項4】
前記待機位置を起点とし前記射出完了位置までの範囲内の前記プランジャチップの前進動作における前記摺動抵抗の採取をさらに備える、請求項13のいずれか一項に記載のダイカスト鋳造品の品質管理方法。
【請求項5】
前記摺動抵抗判別装置は、前記検出区間における前記プランジャチップの位置と前記制御指令値とを波形表示させ、前記良品鋳造時の良品波形と前記実鋳造時の鋳造波形とを重ね合わせて乖離する波形の総面積を求め、予め設定した判定基準面積と比較して、ショット毎の実鋳造品の品質良否を判別する、請求項14のいずれか一項に記載のダイカスト鋳造品の品質管理方法。
【請求項6】
実鋳造品の品質が否と判別されると、前記摺動抵抗判別装置は注意警報を発信するとともに、注意警報回数の積算を開始し、予め設定した積算回数を超えると、実鋳造の運転を停止するとともに危険警報を発信する、請求項15のいずれか一項に記載のダイカスト鋳造品の品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカストマシン等における鋳造品の品質管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイカストマシンによる鋳造は、所定の射出速度及び鋳造圧力に設定されたプランジャチップの前進動作により、射出スリーブの内部に供給された溶湯を金型キャビティ内に射出充填する。
【0003】
ところが、高温の溶湯により射出スリーブは加熱され熱変形し、射出スリーブとプランジャチップの摺動抵抗が大きくなって、プランジャチップの動きが不安定となることがある。また、溶湯が凝固した溶湯残渣物が射出スリーブ内に付着することにより、摺動抵抗は大きく変動することがある。さらにはプランジャチップの摩耗により、射出スリーブとの隙間が大きくなって溶湯の差し込みが増えて溶湯残渣物の堆積が助長され、その結果、摺動抵抗はさらに大きく変動することがある。
【0004】
これらの摺動抵抗の大きな変動は、射出速度及び鋳造圧力の変動となり、射出充填時に溶湯が波打つように暴れて、空気巻き込み(ボイド混在)、湯ジワ不良、湯廻り不良等の鋳造不良を誘発する。また、射出スリーブ内に堆積した溶湯残渣物が剥離し溶湯と混ざることで、鋳巣や異物混入等の新たな鋳造不良の原因となる。
さらには、鋳造不良が頻発や、プランジャチップや射出スリーブの摩耗が大きくなってダイカストマシンの正常運転に支障がでるなどにより、部品交換等の復旧作業のため鋳造運転は停止され生産性は大きく低下する(機会損失)。
【0005】
ここで、鋳造不良や機会損失等の起点は、射出スリーブとプランジャチップとの摺動抵抗の変化にあることから、この摺動抵抗の変化を精度良く検知することが提案されている。さらには、鋳造品質の変化予測と、機会損失に至るまでの寿命予測とを組み合わせて、鋳造品の品質安定化と鋳造運転の安定稼働を得る品質管理(予防管理)につなげることが望ましい。
例えば、特許文献1及び特許文献2では、射出充填工程におけるプランジャチップを制御する油圧シリンダ等の作動油圧(鋳造圧力)の変動から摺動抵抗の変化を検知するとしている。また、特許文献3では、射出充填工程におけるプランジャチップの移動速度(射出速度)の変動から摺動抵抗の変化を検知するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特公昭60-2952号公報
【文献】特開平3-32460号公報
【文献】特開平2-303667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
鋳造品質の変化予測と機械損失に至るまでの寿命予測による予防管理を実現させるためには、目的に応じたタイミングで摺動抵抗の変化を検知することが好ましい。
例えば、鋳巣や異物混入等の鋳造不良の予防管理では、溶湯残渣物の生成と堆積及び剥離を正確に把握するために、検知するタイミングとしては、プランジャチップと射出スリーブとが直接に接触する溶湯の無い状態で行うのが正しい。つまり、射出充填工程が終わり、次ショットの準備のためにプランジャチップの後退動作の範囲内で行う。
また、プランジャチップや射出スリーブの摩耗の程度を把握する場合でも、検知するタイミングとしては、溶湯の無い状態のプランジャチップの後退動作の範囲内で行うことで高精度に検知できる。
これに対して、特許文献1から特許文献3に示す検知するタイミングは、金型キャビティに溶湯を射出充填するプランジャチップの前進動作の範囲で行うとしている。溶湯が有る状態のため、高温の溶湯による射出スリーブの熱変形や溶湯残渣物の加熱軟化及び溶湯の重さ等の外乱因子を含んでしまうため、溶湯残渣物だけの検査精度が大きく低下し、鋳巣や異物混入等の鋳造不良の予防管理には好ましくない状態である。
【0008】
また、射出充填工程の射出速度や鋳造圧力の変動に起因する、空気巻き込み、湯ジワ不良、湯廻り不良等の鋳造不良の予防管理においては、検知するタイミングとしては、溶湯が存在するプランジャチップの前進動作の範囲で行うことが正しい。
ここで、特許文献1から特許文献3に示す検知手段では、溶湯があるプランジャチップの前進動作のタイミングで行うとしているが、制御の下流に当たる油圧シリンダ等の駆動部にセンサを配置し、配置したセンサからの信号情報を元に、射出速度や鋳造圧力の変動を計測するとしている。そのために、作動油の温度変化による誤差やセンサの故障による誤検知等の問題を完全に解決することは難しい。さらに、射出速度や鋳造圧力が変動した時点では、既に鋳造品の品質も変動しており、予防管理とはいえない。
【0009】
本発明は、上記の問題を鑑みてなされたものであり、鋳造不良や機会損失が発生する段階よりも前の初期状態である摺動抵抗の微小な変化を、プランジャチップの後退動作と前進動作の検知タイミングを目的に応じて選択して検知することで、鋳造品質の変化予測と機械損失に至るまでの寿命予測を組み合わせて予防管理することを目的とする、ダイカストマシンにおける鋳造品の品質管理方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記の問題を解決するための第1の手段として、
射出スリーブ内に配置されたプランジャチップの後退動作後の待機位置で射出スリーブの内部に溶湯を供給し、プランジャチップの前進動作後の射出完了位置で金型キャビティ内に溶湯の射出充填を終える、ダイカスト鋳造品の品質管理方法であって、
プランジャチップの後退動作の移動範囲内に検出区間を設定し、検出区間内のプランジャチップと射出スリーブとの摺動抵抗を連続的に採取し、予め採取した良品鋳造時の摺動抵抗と比較して実鋳造時のショット毎の摺動抵抗の良否を判別する摺動抵抗判別装置を備え、摺動抵抗判別装置の評価結果に基づいてショット毎の実鋳造品の品質良否を判別することにある。
上記第1の手段によれば、溶湯が無い状態で摺動抵抗の直接検知により、鋳造品質の変化や機会損失の兆候の正確な予測による予防管理ができる。
【0011】
本発明は、上記の問題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、
検出区間は射出完了位置を起点として待機位置までの範囲とすることになる。
上記第2の手段によれば、射出スリーブ内の溶湯残渣物の状態や、プランジャチップと射出スリーブの摩耗状態の正確な検知により、鋳巣や異物混入等の鋳造不良の予防管理と、突発的な生産停止による機械損失を回避する予防管理が確実にできる。
【0012】
本発明は、上記の問題を解決するための第3の手段として、第1又は第2のいずれか1の手段において、
摺動抵抗は、プランジャチップの前進動作及び後退動作を制御する電気制御式油圧サーボバルブシステムの制御指令値とすることにある。
上記第3の手段によれば、油温の変化やセンサ類の故障等の外乱要因の排除と、鋳造不良や摩耗等の機械異常が発生する段階の前の初期状態の小さな変化まで正確な検知により、予防管理の精度を高めることができる。
【0013】
本発明は、上記の問題を解決するための第4の手段として、第1又は第3のいずれか1の手段において、
プランジャチップの前進動作における摺動抵抗の採取をさらに備え、待機位置を起点とし射出完了位置の範囲内で検出区間を任意に設定することにある。
上記第4の手段によれば、溶湯がある状態で摺動抵抗の検知により、射出充填動作に起因する、空気巻き込み、湯ジワ不良、湯廻り不良等の鋳造不良の予防管理ができる。
【0014】
本発明は、上記の問題を解決するための第5の手段として、第1ないし第4のいずれか1の手段において、
摺動抵抗判別装置は、検出区間におけるプランジャチップの位置と制御指令値とを波形表示させ、良品鋳造時の良品波形と実鋳造時の鋳造波形とを重ね合わせて乖離する波形の総面積を求め、予め設定した判定基準面積と比較して、ショット毎の実鋳造品の品質良否を判定することにある。
上記第5の手段によれば、鋳造品質の変化や機会損失の兆候の数値化により、予測精度を高め精度の高い予防管理ができる。さらに、射出スリーブの異常個所の特定と交換時期の予測による交換部品等の計画手配により、突発的な生産停止による機械損失を最低限に抑えることができる。
【0015】
本発明は、上記の問題を解決するための第6の手段として、第1ないし第5のいずれか1の手段において、
実鋳造品の品質が否と判定されると、摺動抵抗判別装置は注意警報を発信するとともに、注意警報回数の積算を開始し、予め設定した積算回数を超えると、実鋳造の運転を停止するとともに危険警報を発信することにある。
上記第6の手段によれば、ショット毎の鋳造品の分別(良品、要検査品、不良品)と、鋳造品質の変化や機会損失の兆候の数値化により、鋳造品の品質安定化と鋳造運転の安定稼働の予防管理ができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、鋳造不良や機会損失が発生する段階よりも前の初期状態の微妙な変化を精度良く検知でき、検知結果に基づいて、鋳造品質の変化や機会損失の兆候を数値化して予測する品質管理方法により、鋳造品の品質安定化と鋳造運転の安定稼働の予防管理が確実にできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のダイカストマシンの射出装置の概念図である。
図2】プランジャチップ後退動作における摺動抵抗を示す波形図である。
図3】プランジャチップ後退動作における処理フロー図である。
図4】プランジャチップ前進動作における摺動抵抗を示す波形図である。
図5】プランジャチップ後退動作における処理のフロー図である。
図6】摺動抵抗判別装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(ダイカストマシンの概略構成)
図1に示すダイカストマシン1は、図示しない固定盤に支持された固定金型2と、図示しない可動盤に支持され固定盤2に対して進退可能な可動金型3と、溶湯を射出する射出装置10と、射出装置10の動作を制御する射出制御部20と、射出制御部20の処理モジュールの一部を含んで構成される摺動抵抗判別装置30とを備えている。
アルミニウムやアルミニウム合金等の溶湯が、射出装置10により固定金型2及び可動金型3の間の金型キャビティ4に向けて射出充填されることで鋳造品が製造される。
【0019】
(射出装置)
射出装置10は、溶湯が内部に供給される射出スリーブ11と、射出スリーブ11の内側で射出スリーブ11に対して進退可能なプランジャチップ12と、プランジャチップ12と連結されたプランジャロッド13と、プランジャロッド13と連結しプランジャチップ12を駆動する油圧シリンダ14等の駆動源とを備えている。
射出装置10のプランジャチップ12の移動に関し、金型キャビティ4に近い側Fに向かっての移動を「前進動作」と定義し、金型キャビティ4から遠い側Bに向かっての移動を「後退動作」と定義し、プランジャチップ12の後退動作の完了位置を「待機位置BE」と定義し、プランジャチップ12の前進動作の完了位置を「射出完了位置FE」と定義する。つまり、プランジャチップ12は待機位置BEと射出完了位置FEの間で前後方向D1に進退する。
【0020】
(射出スリーブ)
射出スリーブ11は、図示しない固定盤から後方に突出した状態に水平に支持される円筒体である。射出スリーブ11の軸方向は、前後方向D1に一致する。射出スリーブ11の前側は、金型キャビティ4と連通するように、固定盤を貫通し、固定金型2の所定の位置に締結される。
射出スリーブ11の後側は貫通孔の注湯口15が設けられている。プランジャチップ12が待機位置BEに待機している時に、図示しない給湯装置等から溶湯が注湯口15を通じて射出スリーブ11の内部に注湯される。
射出スリーブ11には、必要に応じて、水等の冷却媒体が流れる流路を含む図示しない冷却機構が設けられている。また、プランジャチップ12の摩耗損傷の防止や摺動状態の安定化及び溶湯残渣物の付着抑制等のため、射出スリーブ11とプランジャチップ12との摺動面に潤滑剤を塗布することが好ましい。
【0021】
(プランジャチップ)
プランジャチップ12は、射出スリーブ11内の溶湯を前方に向けて押し出して金型キャビティ4内に射出充填する円柱状の形状をしており、射出スリーブ11とは適切な隙間を有している。つまり、溶湯は漏れずに、射出スリーブ11とプランジャチップ12とが固着せずに、プランジャチップ12がスムーズに進退できる程度の隙間が精密に調整されている。プランジャロッド13は、プランジャチップ12と油圧シリンダ14とを連結する中間体であり、油圧シリンダ14の駆動をプランジャチップ12に伝達する。
また、プランジャチップ12には、水等の冷却媒体が流れる流路を含む水冷機構が設けられている。
【0022】
(射出制御装置)
射出制御装置20は、油圧シリンダ14と接続され、油圧シリンダ14の駆動を制御することで、プランジャロッド13を介してプランジャチップ12の前進動作又は後退動作を制御する。特に、プランジャチップ12の前進動作は、射出スリーブ11内の溶湯を金型キャビティ4内へ射出充填する動作であることから、鋳造品の品質に直接影響する重要な動作である。
射出充填の動作は、射出スリーブ11内の溶湯を金型キャビティ4内へ正確に充填させるために、多段に設定されたプランジャチップ12の前進速度(射出速度)と、充填された金型キャビティ4内の溶湯を正確に冷却凝固させるために、多段に設定された鋳造圧力とで構成される。そこで、射出制御装置20には、多段に設定された射出速度及び鋳造圧力の高精度制御に最適な電気制御式油圧サーボバルブシステムを搭載した制御装置を用いることが好ましい。
【0023】
(摺動抵抗判別装置)
摺動抵抗判別装置30は、油圧シリンダ14の駆動を制御する射出制御装置20の制御指令値の情報から、プランジャチップ12と射出スリーブ11の摺動抵抗を演算し良否の判別を行うものである。摺動抵抗判別装置30には、図2に示すように、信号入力部31、波形表示部32、検出区間設定部33、演算部34、判別部35、警報発信部36から構成される。
【0024】
ここで、制御の下流に当たる油圧シリンダ等の駆動部にセンサを配置し、配置したセンサからの信号情報を元に、射出速度や鋳造圧力の変動を計測して摺動抵抗の変化を検知する従来の手段(カジリ検知)では、作動油の温度変化による誤差やセンサの故障による誤検知等の問題を完全に解決することは難しい。さらに、射出速度や鋳造圧力が変動した時点では、既に鋳造品の品質も変動しており、予防管理とはいえない。
【0025】
これに対して、本発明では、制御の最上流となる射出制御装置20の制御指令値を用いることで、誤差や誤検知等の問題の無い高精度な摺動抵抗の変化の検知を実現する。また、射出速度や鋳造圧力の変動の異常現象が発生する前の段階の極微小な摺動抵抗の変化まで正確に検知できることで、鋳造不良や摩耗等の機械異常が発生する段階の前の早期の段階で予防管理を行うことができる。
【0026】
また、鋳造運転の一連の動作の中で摺動抵抗を検知するタイミングを、摺動抵抗判別装置30で予め設定しておく。
例えば、鋳巣や異物混入等の鋳造不良の予防管理では、溶湯残渣物の生成と堆積及び剥離を正確に把握するために、プランジャチップ12と射出スリーブ11とが直接に接触する確率の高い溶湯の無い状態で検知するとする。また、プランジャチップ12や射出スリーブ11の摩耗の程度を把握する場合でも、溶湯の無い状態が好ましい。つまり、射出充填工程が終わり、次ショットの準備のためにプランジャチップ12の後退動作の範囲内を設定することが正しい。
また、射出充填工程の射出速度や鋳造圧力の変動に起因する、空気巻き込み、湯ジワ不良、湯廻り不良等の鋳造不良の予防管理においては、溶湯が有る状態のプランジャチップ12の前進動作による金型キャビティ4への溶湯の射出充填の範囲内で設定する。
このように、目的に応じたタイミングで摺動抵抗の変化を検知することで、鋳造品質の変化予測と機械損失に至るまでの寿命予測による予防管理を確実とする。
【0027】
(摺動抵抗の波形:後退動作時)
プランジャチップ12の後退動作のタイミングで摺動抵抗を検知し予防管理を行う手順について、図3図4を用いて説明する。
図3は、射出充填を終え、次の鋳造ショットの準備のためのプランジャチップ12の後退動作の波形を示す。射出制御部20の制御指令値を摺動抵抗判別装置30の信号入力部31が受けると、波形表示部32にて制御指令値波形として表示する。
波形の横軸は、プランジャチップ12の位置、又は後退開始からの経過時間のいずれかが選択できる。例えば、射出スリーブ11の異常個所を特定したい場合は、プランジャチップ12の位置を選択することが好ましい。プランジャチップ12の射出完了位置FEから待機位置BEの範囲が表示される。
【0028】
波形の縦軸は、射出制御装置20の制御指令値であり、後退動作におけるプランジャチップ12と射出スリーブ11との摺動抵抗を表す。
ここで、射出制御装置20は、電気制御式油圧サーボシステムを搭載した制御装置とすることで、射出制御装置20からの制御指令値の分解能は高くなり、摺動抵抗の小さな変化も精度良く検知できる。これにより、鋳造不良や摩耗等の異常現象が発生する段階の前の初期状態の小さな変化まで正確に検知できることで、鋳造品質の変化予測と機械損失に至るまでの寿命予測が正確にできる。
なお、電気制御式油圧サーボシステムとは、油圧シリンダ等の油圧装置の作動油の流量を緻密に制御できる制御装置である。作動油の流量制御はスプールと呼ばれている調整ロッドの位置で行い、スプールの位置は連結されたサーボモータで駆動される。
そこで、制御指令値20は、スプールの位置を駆動するサーボモータへの「スプール位置制御電流値」を用いる。あるいは、スプールの位置をモニターする機能がある制御装置であれば、制御指令値20は「スプールモニタ表示値」を選択することが好ましい。
【0029】
図3の波形の破線は、予め採取した良品鋳造時の摺動抵抗の波形(基準値波形301)である。図3では分かりやすく1本の破線で表しているが、複数の良品鋳造時の波形データを集積して、上下限を含む良品鋳造時の範囲で表しても良い。あるいは、鋳造不良が生じた時の波形データを限界値として、この限界値又は限界値に安全係数を乗じ良品鋳造を確実に得るという安全範囲で示しても良い。又は、分解清掃等のメンテナンス後の無負荷運転時に取得したデータを用いても良い。
【0030】
次に、波形表示部32で表示した波形から、目的に応じて摺動抵抗を評価する範囲を検出区間302として検出区間設定部33で設定する。
例えば、鋳巣や異物混入等の鋳造不良の予防管理を行う場合には、鋳造不良の発生原因となる溶湯残渣物の生成と堆積及び剥離が生じる可能性のある範囲を設定する。つまり、射出スリーブ11内で溶湯と接する範囲は全て可能性があるので、射出完了位置FEから待機位置BEの全範囲を設定することが好ましい。
また、射出スリーブ11内の局部的な摩耗等の損傷や、油圧シリンダ14やプランジャロッド13を含む射出装置10の機械部品の緩み等を検知して予防管理を行う場合も、射出完了位置FEから待機位置BEの全範囲を設定することが好ましい。なお、予め異常個所が分かっている場合においては、その異常個所を含む局所的な範囲に絞って設定することも可能である。
【0031】
図3に示す波形の実線は、連続運転中の実鋳造1ショットにおける後退動作の摺動抵抗の波形(実鋳造時波形303)である。基準値波形301と重ね書き表示させることで、基準値波形301と実鋳造時波形303の乖離の有無と乖離の程度が明確となる。
演算部34は、例えば二値化処理等の手法を用いて、検出区間設定部33で設定した検出区間302の範囲の重ね書き波形の乖離部分の面積の総和(図3の斜線部で囲んだエリア)を乖離面積303aとして数値化し、判別部35へデータを送信する。
判別部35は、演算部34から送信されたデータを受けて、予め設定した判定基準面積と比較して、実鋳造1ショットの鋳造品の品質良否の判別と、次ショットの鋳造品の品質予測を行う。連続運転中は、この情報処理の流れを連続して行うことで、連続運転中の実鋳造1ショット毎の鋳造品の品質判別と品質予測が連続して行われる。これにより、鋳造品質の変化をデータ化し、次ショット以降の鋳造品質の変化予測と機械損失に至るまでの寿命予測を行うことができる。
【0032】
ここで、判定基準面積とは、複数の良品鋳造時の波形データを集積して求めた良品鋳造時の上下限で示される幅の面積に安全係数を乗じた面積である。あるいは、溶湯残渣物の剥離に起因する鋳造不良が生じた時の波形データを限界値として、この限界値又は限界値に安全係数を乗じ良品鋳造を確実に得るという安全範囲を示す面積である。つまり、溶湯残渣物に係る鋳巣や異物混入等鋳造不良が既に生じている状態や、あるいは、プランジャチップ12又は射出スリーブ11等の射出装置に機械損失の疑いが生じている状態よりも前の段階の微小な変化の時点で判定を行うことで、良品の中に不良品が混ざることや生産を停止する等の異常事態を未然に防ぐことができる。
【0033】
また、判別部35は、基準値波形301と実鋳造時波形303の乖離の最大値303bのデータを用いて、次の実鋳造ショットの鋳造品の品質予測等を行うことができる。例えば、明確な鋳造品の不良や機械損失が発生した時の波形を基準値波形301とし、最大値303bが基準値波形301の最大値を超えたことを検知すると、判別部35は突発的な事態の発生として異常判別が瞬時にでき、生産停止などの致命的な機械損失の防止ができる。あるいは、複数の良品鋳造時のデータを集積して求めた良品鋳造時の上下限の平均値を基準平均値303cとし、実鋳造1ショットの波形の数値が基準平均値303cを超過した回数をカウントすることで、鋳造品の品質の変動傾向や機械損失への寿命予測などを行うことができる。
【0034】
(処理フロー:後退動作時)
プランジャチップ12の後退動作における摺動抵抗判別装置30の処理フローを図4に示す。射出充填の鋳造を終えると、射出制御部20によって油圧シリンダ14が駆動され、プランジャチップ12は設定された速度で後退動作を開始し、プランジャチップ12が待機位置BEに達すると後退動作は停止する。
【0035】
後退開始(射出完了位置FE)から後退停止(待機位置BE)の全範囲における射出制御部20からの制御指令値が信号入力部31を経由して波形表示部32で波形表示される(波形計測)。検出区間設定部33で設定した検出区間302の波形を抽出し、演算部34で数値化処理を行った後、判別部35にて判別処理を行う(波形解析)。
【0036】
判別部35では、2段階の判別処理を行う。最初の1段目の判別処理は、検出区間302の範囲の基準値波形301と実鋳造時波形303の2つの波形を比較して、例えば乖離面積303aを演算する(解析結果B1)。解析結果B1と予め設定した判定基準面積(基準値A1)とを比較して、A1≦B1であれば「要検査」と判別し、警報発信部36に判別結果の情報を送付する。警報発信部36は警報を発信すると同時に、判別部35からの警報信号の回数のカウントが開始される。
なお、要検査とは、次ショットの鋳造品の品質良否の判別を明確に予測するには躊躇する程度の軽微の摺動抵抗の変化のものであり、鋳造品は一時保管され、次ショットの判別結果の確認後に改めて品質判別を受けるものである。
なお判定部35の判別結果が、A1>B1の場合は、鋳造品は良品判定C1として良品保管され、連続鋳造は継続される。
【0037】
さらに、警報発信部36において、カウントされた警報回数E1が、予め設定された基準回数D1と比較して、D1≦E1であれば警報発信部36は異常判定G1を発信するとともに、連続鋳造作業の停止処置を行う(2段目の判別処理)。
この異常判定G1とは、これ以上の連続鋳造を継続しても良品が得られる確率が極端に低下したことを示し、射出速度や鋳造圧力等の射出充填の鋳造条件の見直しや、射出スリーブ11やプランジャチップ12等を含む射出装置10の清掃やメンテナンスを行うことを示唆するものである。あるいは、射出装置10の故障など致命的な機械損失が生じる確率が高く、早期に部品交換などの保全処置が必要であることを示唆するものである。
このように、警報回数をカウントする判別処置により、鋳造品質や射出装置の小さな変化を予測し、計画的に鋳造条件の再調整や射出装置の簡単なメンテナンスを行うことで安定生産を継続できる。また、射出装置の故障等の致命的な機械損失の発生の予測ができ、これにより交換部品の先行手配等の予防管理を確実とする。
ここで、基準回数D1とは、必要とする予防管理の内容によって基準値A1と組み合わせて設定されることが好ましい。例えば、鋳造品質の安定化を最優先とした場合では、基準値A1は厳しく、基準回数D1は少なく設定する。
なお、判別部35の判別結果が、D1>E1の場合は、連続鋳造は継続されるが、鋳造品は要検査として一時保管され、次ショットの判別結果の確認後に改めて品質判定を受けるとする。
【0038】
(摺動抵抗の波形:前進動作時)
プランジャチップ12の前進動作のタイミングで摺動抵抗を検知し予防管理を行う手順について、図5図6を用いて説明する。
図5は、射出充填工程における摺動抵抗の重ね書きの波形である。制御指令値から波形表示及び演算処理等は図3と同様であるので、図3と異なる箇所を主に説明する。
波形の横軸は、プランジャチップ12の位置、又は射出開始からの経過時間のいずれかが選択できる。待機位置BEは注湯口15から射出スリーブ11内に溶湯を注湯するプランジャチップ12の位置である。また、射出完了位置FEは、射出充填工程を終えプランジャチップがこれ以上前に進まない前進の位置である。
波形の縦軸は、射出制御装置20の制御指令値であり、前進動作におけるプランジャチップ12と射出スリーブ11との摺動抵抗を表す。図3と異なる点は、射出スリーブ11内には溶湯が有る状態で、プランジャチップ12の前進動作に伴う射出スリーブ11内と金型キャビティ4内を溶湯が流動する状態を含めた摺動抵抗として表される。これにより、射出充填工程の摺動抵抗の小さな変化は、射出充填工程に係る鋳造品の僅かな品質変化を表しており、鋳造品質の変化予測による予防管理を行うことができる。さらに、電気制御式油圧サーボシステムの制御指令値を使うことで予防管理の精度は高くなる。
【0039】
射出充填工程は、図5に示すように、低速射出と高速射出を組み合わせた射出速度制御の範囲と、充填圧力を高め溶湯の凝固収縮を確実に補う高圧充填の鋳造圧力制御の範囲の組合せが一般的である。
図5に示す波形の破線は、予め採取した良品鋳造時の摺動抵抗の波形(基準値波形401)である。図5では分かりやすく1本の破線で表しているが、複数の良品鋳造時の波形データを集積して、上下限を含む良品鋳造時の範囲で表しても良い。あるいは、鋳造不良が生じた時の波形データを限界値として、この限界値又は限界値に安全係数を乗じ良品鋳造を確実に得るという安全範囲で示しても良い。
【0040】
検出区間402は、検出する目的等に応じて選択され設定される。例えば、空気巻き込みや湯ジワ不良及び湯廻り不良等の溶湯の射出流動に関係する鋳造不良が問題となる場合では、低速射出と高速射出の2区間を設定する。また、鋳巣やヒケ等の溶湯の冷却凝固過程を把握したい場合には、高速射出と高圧充填の2つの範囲を設定することが好ましい。異物混入を含む全ての不良を確認したい場合は、待機位置BEから射出完了位置FEまでの全範囲を設定しても良い。図5では、摺動抵抗の変動が大きく表れやすく鋳造不良を誘発しやすい低速射出の区間を検出区間402と設定した。
【0041】
図5に示す波形の実線は、連続運転中の実鋳造1ショットにおける前進動作の摺動抵抗の波形(実鋳造時波形403)である。基準値波形401と重ね書き表示させることで、基準値波形401と実鋳造時波形403の乖離の有無と乖離の程度が明確となる。
演算部34は、例えば二値化処理等の手法を用いて、検出区間設定部33で設定した検出区間402の範囲の重ね書き波形の乖離部分の面積の総和(図5の斜線部で囲んだエリア)を乖離面積403a)として数値化し、判別部35へデータを送信する。
判別部35は、演算部34から送信されたデータを受けて、予め設定した判定基準面積と比較して、実鋳造1ショットの鋳造品の品質良否の判別と、次ショットの鋳造品の品質予測を行う。連続運転中は、この情報処理の流れを連続して行うことで、連続運転中の実鋳造1ショット毎の鋳造品の品質判別と品質予測が連続して行われる。これにより、鋳造品質の変化をデータ化し、次ショット以降の鋳造品質の変化予測と機械損失に至るまでの寿命予測を行うことができる。
【0042】
ここで、判定基準面積とは、複数の良品鋳造時の波形データを集積して求めた良品鋳造時の上下限で示される幅の面積に安全係数を乗じた面積である。あるいは、射出充填に起因する鋳造不良が生じた時の波形データを限界値として、この限界値又は限界値に安全係数を乗じ良品鋳造を確実に得るという安全範囲を示す面積である。つまり、射出速度や鋳造圧力の変動によって既に鋳造品質に影響が生じている状態や、あるいは、射出スリーブの熱変形や溶湯残渣物との擦れ等によるプランジャチップ12又は射出スリーブ11等の射出装置に機械損失の疑いが生じている状態よりも前の段階の微小な変化の時点で判定を行うことで、良品の中に不良品が混ざることや生産を停止する等の異常事態を未然に防ぐことができる。
【0043】
また、判別部35は、基準値波形401と実鋳造時波形403の乖離の最大値403bのデータを用いて、次の実鋳造ショットの鋳造品の品質予測等を行うことができる。例えば、明確な鋳造品の不良や機械損失が発生した時の波形を基準値波形401とし、最大値403bが基準値波形401の最大値を超えたことを検知すると、判別部35は突発的な事態の発生として異常判別が瞬時にでき、生産停止などの致命的な機械損失の防止ができる。あるいは、複数の良品鋳造時のデータを集積して求めた良品鋳造時の上下限の平均値を基準平均値403cとし、実鋳造1ショットの波形の数値が基準平均値403cを超過した回数をカウントすることで、鋳造品の品質の変動傾向や機械損失への寿命予測などを行うことができる。
【0044】
これまで、低速射出の範囲を検出区間402として説明してきたが、検出区間の範囲を変更しても同様である。なお、低速射出から高圧充填までの全ての範囲をまとめて判定してもよい。あるいは、それぞれの範囲毎に区分けして判定し、鋳造不良の形態や機械損失の懸念事項等を鑑みて優先順位を付けた判定とすることもできる。
【0045】
(処理フロー:前進動作時)
プランジャチップ12の前進動作における摺動抵抗判別装置30の処理フローを図6に示す。なお、射出スリーブ11内には溶湯が注湯され、プランジャチップ12は待機位置BEに待機している状態からのスタートとする。
射出充填工程が開始すると、射出制御部20によって油圧シリンダ14が駆動され、プランジャチップ12は、低速射出、高速射出、高圧充填の設定された射出速度と鋳造圧力で前進動作し、金型キャビティ4内への溶湯の射出充填を終えると、プランジャチップ12の前進動作は射出完了位置FEで停止する。
【0046】
射出開始(待機位置BE)から射出停止(射出完了位置FE)の全範囲における射出制御部20からの制御指令値が信号入力部31を経由して波形表示部32で波形表示される(波形計測)。検出区間設定部33で設定した検出区間302の波形を抽出し、演算部34で数値化処理を行った後、判別部35にて判別処理を行う(波形解析)。
【0047】
判別部35では、2段階の判別処理を行う。最初の1段目の判別処理は、検出区間402の範囲の基準値波形401と実鋳造時波形403の2つの波形を比較して、例えば乖離面積403aを演算する(解析結果B2)。解析結果B2と予め設定した判定基準面積(基準値A2)とを比較して、A2≦B2であれば「要検査」と判別し、警報発信部36に判別結果の情報を送付する。警報発信部36は警報を発信すると同時に、判別部35からの警報信号の回数のカウントが開始される。
なお、要検査とは、鋳造品の品質良否を明確に判別するには躊躇する程度の軽微の摺動抵抗の変化のものであり、鋳造品は一時保管され、次ショットの判別結果の確認後に改めて品質判別を受けるものである。
なお判定部35の判別結果が、A2>B2の場合は、鋳造品は良品判定C2として良品保管され、連続鋳造は継続される。
【0048】
さらに、警報発信部36において、カウントされた警報回数E2が、予め設定された基準回数D2と比較して、D2≦E2であれば警報発信部36は異常判定G2を発信するとともに、連続鋳造作業の停止処置を行う(2段目の判別処理)。
この異常判定G2とは、これ以上の連続鋳造を継続しても良品が得られる確率が極端に低下したことを示し、射出速度や鋳造圧力等の射出充填の鋳造条件の見直しや、射出スリーブ11やプランジャチップ12等を含む射出装置10の清掃やメンテナンスを行うことを示唆するものである。あるいは、射出装置10の故障など致命的な機械損失が生じる確率が高く、早期に部品交換などの保全処置が必要であることを示唆するものである。
このように、警報回数をカウントする判別処置により、鋳造品質や射出装置の小さな変化を予測し、計画的に鋳造条件の再調整や射出装置の簡単なメンテナンスを行うことで安定生産を継続できる。また、射出装置の故障等の致命的な機械損失の発生の予測ができ、これにより交換部品の先行手配等の予防管理を確実とする。
ここで、基準回数D2とは、必要とする予防管理の内容によって基準値A2と組み合わせて設定されることが好ましい。例えば、鋳造品質の安定化を最優先とした場合では、基準値A2は厳しく、基準回数D2は少なく設定する。
なお、判別部35の判別結果が、D2>E2の場合は、連続鋳造は継続されるが、鋳造品は要検査として一時保管され、次ショットの判別結果の確認後に改めて品質判定を受けるとする。
【0049】
上記以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態に挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 ダイカストマシン
2 固定金型
3 可動金型
4 金型キャビティ
10 射出装置
11 射出スリーブ
12 プランジャチップ
13 プランジャロッド
14 油圧シリンダ
15 注湯口
20 射出制御装置
30 摺動抵抗判別装置
31 信号入力部
32 波形表示部
33 検出区間設定部
34 演算部
35 判別部
36 警報発信部
301、401 基準値波形
302、402 検出区間
303、403 実鋳造時波形
303a、403a 基準値波形と実鋳造時波形との乖離面積
303b、403b 実鋳造時波形の最大値
303c、403c 基準値波形の平均値

図1
図2
図3
図4
図5
図6