(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】車両用表示装置
(51)【国際特許分類】
H05B 47/11 20200101AFI20240918BHJP
H05B 45/18 20200101ALI20240918BHJP
H05B 47/17 20200101ALI20240918BHJP
H05B 45/14 20200101ALI20240918BHJP
H05B 47/14 20200101ALI20240918BHJP
H05B 47/16 20200101ALI20240918BHJP
H05B 47/175 20200101ALI20240918BHJP
B60Q 3/16 20170101ALI20240918BHJP
B60K 35/22 20240101ALI20240918BHJP
B60K 35/40 20240101ALI20240918BHJP
【FI】
H05B47/11
H05B45/18
H05B47/17
H05B45/14
H05B47/14
H05B47/16
H05B47/175
B60Q3/16
B60K35/22
B60K35/40
(21)【出願番号】P 2020216862
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100195648
【氏名又は名称】小林 悠太
(74)【代理人】
【識別番号】100175019
【氏名又は名称】白井 健朗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 駿一
(72)【発明者】
【氏名】大塚 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 昭宏
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-006462(JP,A)
【文献】特開2012-194404(JP,A)
【文献】特開2008-026688(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0213781(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 39/00-39/10
H05B 45/00-45/59
H05B 47/00-47/29
B60Q 3/00- 3/88
B60K 35/22
B60K 35/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出素子が検出した外光の照度に応じた電圧を出力する電圧出力部と、
前記電圧出力部から出力された前記電圧の値に応じて、車両に搭載された表示器の表示輝度を調整する制御部と、
前記制御部によって第1状態又は第2状態に制御され、前記第2状態の場合に前記電圧出力部から出力される前記電圧の値を前記第1状態の場合よりも低下させる電圧調整部と、を備え、
前記制御部は、予め定めた電圧調整条件が成立していない場合に前記電圧調整部を前記第1状態に制御し、前記電圧調整条件が成立している場合に前記電圧調整部を前記第2状態に制御
し、
前記制御部は、前記電圧調整部の制御状態が前記第1状態の場合と前記第2状態の場合とに関わらず、前記電圧出力部から出力された前記電圧を、同一の信号線及び入力ポートを介して入力する、
車両用表示装置。
【請求項2】
前記電圧出力部は、前記信号線とグラウンドの間に接続される第一抵抗と、前記第一抵抗に並列に接続される第二抵抗とを有し、
前記電圧調整部は、前記第1状態では前記第二抵抗に流れる電流を遮断し前記第2状態では前記第二抵抗に電流を流すことで、前記電圧の値を低下させる、
請求項1に記載の車両用表示装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記表示器の周辺の温度が予め定められた温度閾値以上である場合に、前記電圧調整条件が成立していると判別し、
前記温度が前記温度閾値未満である場合に、前記電圧調整条件が成立していないと判別する、
請求項1
または2に記載の車両用表示装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記電圧の値が予め定められた電圧閾値以上である場合に、前記電圧調整条件が成立していると判別し、
前記電圧の値が前記電圧閾値未満である場合に、前記電圧調整条件が成立していないと判別する、
請求項1
または2に記載の車両用表示装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記電圧調整部を前記第1状態及び前記第2状態の一方から他方に切り替えてから、予め定めた期間が経過するまでの間に前記電圧出力部から出力された前記電圧の値を前記表示輝度の調整に用いない、
請求項1乃至
4のいずれか1項に記載の車両用表示装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記電圧調整条件が成立していない場合には、前記電圧調整部が前記第1の状態である場合に前記電圧出力部から出力される前記電圧の値と前記表示輝度との関係を示す第1調光情報に基づいて前記表示輝度を調整し、
前記電圧調整条件が成立している場合には、前記電圧調整部が前記第2の状態である場合に前記電圧出力部から出力される前記電圧の値と前記表示輝度との関係を示す第2調光情報に基づいて前記表示輝度を調整する、
請求項1乃至
5のいずれか1項に記載の車両用表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両用表示装置として、例えば特許文献1には、フォトトランジスタ、フォトIC(Integrated Circuit)等から構成される光検出素子が検出した外光の照度に応じた電圧を出力する電圧出力部(同文献の変換回路)と、電圧出力部から出力された電圧の値に応じて、車両に搭載された表示器の表示輝度を調整する制御部と、を備えるものが記載されている。また、この光検出素子は、車両用表示装置の筐体に設けられた透光性カバーを介して外光を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光検出素子の出力は温度依存性があるため、表示器の周辺の温度によっては、制御部が取得する電圧の値が上限値を超える事態が生じる可能性がある。また、透光性カバーに個体差が生じると、その透過率によっては光検出素子に過剰に外光が到達して、制御部が取得する電圧の値が上限値を超える事態が生じる可能性もある。これらの事態が生じると、外光の照度に応じた表示器の表示輝度の調整を行うこと(調光を行うこと)が困難となる虞がある。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、良好に表示器の調光を行うことができる車両用表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の第1の観点に係る車両用表示装置は、
光検出素子が検出した外光の照度に応じた電圧を出力する電圧出力部と、
前記電圧出力部から出力された前記電圧の値に応じて、車両に搭載された表示器の表示輝度を調整する制御部と、
前記制御部によって第1状態又は第2状態に制御され、前記第2状態の場合に前記電圧出力部から出力される前記電圧の値を前記第1状態の場合よりも低下させる電圧調整部と、を備え、
前記制御部は、予め定めた電圧調整条件が成立していない場合に前記電圧調整部を前記第1状態に制御し、前記電圧調整条件が成立している場合に前記電圧調整部を前記第2状態に制御し、
前記制御部は、前記電圧調整部の制御状態が前記第1状態の場合と前記第2状態の場合とに関わらず、前記電圧出力部から出力された前記電圧を、同一の信号線及び入力ポートを介して入力する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、良好に表示器の調光を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の第1実施形態に係る車両用表示装置の電気的構成を示す図。
【
図2】同上実施形態に係る車両用表示装置の概略断面図。
【
図4】制御部への入力電圧と照度の関係を示す図であって、同上実施形態による効果を説明するための図。
【
図5】本開示の第1及び第2実施形態に係る調光処理のフローチャート。
【
図6】本開示の第3実施形態に係る検査処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態に係る車両用表示装置1は、
図1又は
図2に示すように、表示器10と、光検出素子20と、電圧出力部30と、電圧調整部40と、温度検出部50と、制御部60と、筐体70と、を備える。例えば、車両用表示装置1は、車両に関する各種の状態を報知する複合計器として機能する。
【0013】
表示器10は、制御部60の制御によって画像をするものであり、
図2に示すように、LCD(Liquid Crystal Display)11と、LCD11を背後から照明するバックライトとして機能する光源12と、光源12が発した光をLCD11に導く導光体13と、を備える。
【0014】
LCD11は、例えば、TFT(Thin Film Transistor)型で、且つ、マトリクス状に配された複数の画素を有するドットマトリクス型である。LCD11は、各画素が駆動されるとともに光源12によって照明されることで画像を表示面11aに表示する。例えば、LCD11は、画像をフルカラーで表示可能である。表示器10は、表示面11aが車両の運転者に向くようにインストルメンタルパネルに設置される。光源12は、例えば、LED(Light Emitting Diode)から構成され、LCD11の背後に位置する回路基板14に実装されている。導光体13は、アクリル等の透光性を有する樹脂から形成され、光源12が発した光をLCD11に導く。
【0015】
光検出素子20は、車両用表示装置1を照らす太陽光などの外光の照度を検出する。光検出素子20は、後述の透光性カバー72を透過した外光を受ける。光検出素子20は、
図1に示すように、例えばフォトトランジスタから構成され、コレクタが電源電圧Vccと電気的に接続され、エミッタが電圧出力部30と電気的に接続されている。なお、光検出素子20は、フォトICなどであってもよい。光検出素子20は、検出した照度に応じた値の電流(電流信号)を電圧出力部30に供給する。電源電圧Vcc(例えば5V)は、図示せぬ電源回路がバッテリー等からの入力電圧(例えば12V)を降圧することで生成される。例えば、光検出素子20は、
図2に示すように基板21に設けられ、回路基板14に実装された制御部60と電気的に接続される。
【0016】
電圧出力部30は、光検出素子20から供給される電流を電圧に変換して出力する。つまり、電圧出力部30は、光検出素子20が検出した外光の照度に応じた電圧を出力する。電圧出力部30は、
図1に示すように、抵抗31,32と、接地端子33と、を備える。なお、抵抗31,32としては、周知の抵抗素子を適用できる。後述の各種抵抗についても同様である。接地端子33は、例えば、回路基板14のグランドパターンと連続して設けられ、コネクタ、ケーブル等を介して車両用表示装置1の外部の接地用部材に接続される。後述の接地端子についても同様である。
【0017】
抵抗31は、一端が光検出素子20と電気的に接続され、他端が接地端子33と電気的に接続されている。光検出素子20と抵抗31の間には、電圧出力部30からの電圧信号を制御部60に供給するための信号線L1が接続されている。抵抗31は、プルダウン抵抗として機能し、信号線L1から制御部60に供給される電圧信号のゲインを調整する。電圧出力部30から制御部60に向かう信号線L1には抵抗34が設けられている。抵抗34と制御部60の間には、一端が信号線L1と接続され、他端が接地端子35と接続されたコンデンサ36(バイパスコンデンサ)が設けられている。
【0018】
抵抗31の抵抗値は、典型的な車両用表示装置1において、制御部60に入力される外光の照度に応じた電圧(以下、制御部60への入力電圧とも言う。)が適切な値を示すように定められる。なお、典型的な車両用表示装置1とは、第1実施形態では、車両用表示装置1の使用環境の温度範囲内における標準的な温度の下で動作するものを言う。
図3に示すグラフGは、典型的な車両用表示装置1における制御部60への入力電圧と照度との関係を示す。後述するように、制御部60は、照度が高いほど表示器10の表示輝度を高く制御し、照度が低いほど表示器10の表示輝度を低く制御する。
図3において、Lmaxは制御部60が最高の表示輝度で表示器10を制御する際の照度の例を示し、Lminは制御部60が最低の表示輝度で表示器10を制御する際の照度の例を示す。例えば、抵抗31の抵抗値は、典型的な車両用表示装置1において電源電圧Vccが5Vである場合、制御部60への入力電圧が2.5Vで照度がLmaxを示すように設定される。
【0019】
抵抗32は、信号線L1と電圧調整部40の間に設けられ、抵抗31と並列に接続される。抵抗32は、電圧調整部40が後述のオン状態である場合にプルダウン抵抗として機能する一方で、電圧調整部40が後述のオフ状態である場合には電流を流さない。電圧調整部40がオン状態で抵抗32がプルダウン抵抗として機能すると、電圧調整部40がオフ状態の場合よりも、電圧出力部30から出力される電圧の値が低下する。つまり、抵抗31に加えて抵抗32もプルダウン抵抗として機能すると、抵抗31と抵抗32の合成抵抗で信号線L1から制御部60に供給される電圧信号のゲインを調整する。一例として、抵抗31及び抵抗32のそれぞれの抵抗値が330kΩである場合、抵抗31及び抵抗32の合成抵抗の値は165kΩである。
【0020】
ここで、車両用表示装置1の使用環境や製品誤差によっては、制御部60に入力される外光の照度に応じた電圧(制御部60への入力電圧)が、前述の典型的な車両表示装置1に比べて増減する。特に、高温環境下においては、
図3に示すグラフGhのように制御部60への入力電圧が上限値(ここでは電源電圧Vcc=5V)を超えて、制御部60が照度に応じた調光制御を行うことが困難となる虞がある。
図3におけるAdisは、制御部60への入力電圧が異常値を示し、調光制御が困難となる箇所を示す。このような事態を回避するため、制御部60は、後述の電圧調整条件が成立している場合には、次に述べる電圧調整部40によって電圧出力部30から出力される電圧の値を低下させる制御を行う。
【0021】
電圧調整部40は、制御部60によってオフ状態(第1状態)又はオン状態(第2状態)に制御され、オン状態の場合に電圧出力部30から出力される電圧の値をオフ状態の場合よりも低下させる構成である。電圧調整部40は、
図1に示すように、トランジスタ41と、接地端子42と、抵抗43,44と、コンデンサ45と、を備える。電圧調整部40のオフ状態とはトランジスタ41がオフ状態であることを指し、電圧調整部40のオン状態とはトランジスタ41がオン状態であることを指す。
【0022】
トランジスタ41は、npn型であり、ベースが制御部60に繋がる信号線L2と電気的に接続されている。信号線L2には抵抗43が設けられている。トランジスタ41のエミッタは接地端子42と接続され、トランジスタ41のコレクタは電圧出力部30の抵抗32を介して信号線L1と接続されている。トランジスタ41のベースと接地端子42との間には、互いに並列接続された抵抗44及びコンデンサ45が設けられている。
【0023】
トランジスタ41は、制御部60から信号線L2を介して供給される制御信号によってオン又はオフ状態に制御される。制御信号がハイレベルを示している期間ではトランジスタ41がオン状態に制御される。オン状態では、電圧出力部30の抵抗32はプルダウン抵抗として機能し、信号線L1から接地端子42へ電流が流れる。これにより、電圧出力部30から出力される電圧の値はトランジスタ41がオフ状態の場合よりも低下する。一方、制御信号がローレベルを示している期間ではトランジスタ41がオフ状態に制御される。
【0024】
温度検出部50は、表示器10の周辺の温度を検出する構成であり、温度変化に応じて抵抗値が変化する周知のサーミスタ51と、抵抗52と、接地端子53とを備える。サーミスタ51は、一端が信号線L3と接続され、他端が接地端子53と接続されている。抵抗52は、電源電圧Vccと信号線L3の間に介挿されている。サーミスタ51と抵抗52は分圧回路を構成し、温度変化に応じてサーミスタ51への印加電圧が変化する。このように温度変化に応じて変化する電圧を示す電圧信号が信号線L3によって制御部60に供給される。
【0025】
制御部60は、車両用表示装置1の全体の動作を制御するマイクロコンピュータから構成され、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。ROMは、CPUの処理手順を定めるとともに、コンピュータを後述の各部として機能させるプログラムPG、後述の第1調光情報D1、第2調光情報D2などの固定データを予め記憶する。RAMは、各種の演算結果などを一時的に記憶する。制御部60は、
図2に示すように、例えば、回路基板14に実装されている。なお、制御部60の構成は、後に説明する機能を充足する限りにおいては任意である。制御部60は、1つのマイクロコンピュータから構成されてもよいし、互いに通信を行う複数のマイクロコンピュータから構成されてもよい。
【0026】
また、制御部60は、描画処理を行うGPU(Graphics Processing Unit)と、画像データを予め記憶する画像メモリとを備える。画像メモリとしては、例えば、フラッシュメモリ等の周知の不揮発性メモリを適用できる。GPUは、画像メモリに予め記憶された画像データを用いて表示器10に表示させる画像を生成し、CPUと協働してLCD11を駆動制御する。例えば、制御部60は、車両の走行に関する各種の状態を示す複合計器画像、各種の警告を示す警告画像などを表示器10に表示させる。例えば、複合計器画像は、指針式のメータを模した態様で車速を表示する速度計画像、バーグラフにより燃料の残量を示すフューエルメータ画像、積算走行距離を数値で表す数値画像等を含む。なお、制御部60は、車両の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)と通信を行い、複合計器画像、警告画像を表示するために必要な情報を取得可能である。
【0027】
また、制御部60は、各種の入出力端子を有する。具体的には、制御部60は、電圧出力部30から信号線L1で伝送される電圧信号(検出照度に応じた値を示す信号)を入力する第1入力端子、温度検出部50から信号線L3で伝送される電圧信号(検出温度に応じた値を示す信号)を入力する第2入力端子、電圧調整部40のトランジスタ41へ信号線L2を介して制御信号を出力する出力端子などを有する。なお、制御部60は、第1入力端子及び第2入力端子のそれぞれで取得した電圧信号(アナログ信号)をデジタル値に変換する、A/D(Analog-to-Digital)変換を行う機能を有する。また、制御部60は、A/D変換の基準電圧としての電源電圧Vccを、信号線L4を介して取得するための基準電圧端子を有する。
【0028】
筐体70は、
図2に示すように、上述の各部を収容する収容部71と、表示面11aと対向して収容部71を覆う透光性カバー72と、を備える。透光性カバー72は、例えばアクリルガラスから板状に構成されるとともに、必要に応じてスモーク処理などが施されて光の透過率及び反射率が調整されている。収容部71は、表示器10を収容する第1の部分と、光検出素子20を収容する第2の部分とを有し、第1の部分及び第2部分の間に、表示器10が発する光が光検出素子20に検出されてしまうことを防止する区画壁71aを備える。収容部71と透光性カバー72との間には、不要部分を覆い隠す見返し部73が設けられている。例えば、見返し部73は、表示器10の画像表示領域と、光検出素子20が外光を受けるために必要な箇所とを除く領域を覆い隠す。
【0029】
ここからは、制御部60の主な機能について説明する。制御部60は、プログラムPGを実行することで、調光手段及び電圧調整制御手段として機能する。
【0030】
調光手段は、光検出素子20が検出した外光の照度に応じた電圧を出力する電圧出力部30から出力された電圧の値に応じて、車両に搭載された表示器10の表示輝度を調整する(表示器10の調光を行う)。具体的に、調光手段として機能する制御部60は、電圧出力部30から供給された電圧信号をデジタル値に変換して得た電圧値と、ROMに予め記憶された第1調光情報D1又は第2調光情報D2とに基づいて、表示器10の表示輝度を決定する。調光手段として機能する制御部60は、表示輝度を決定すると、当該表示輝度を実現すべく、例えば、パルス幅変調制御によって光源12の発光を制御する。なお、調光手段は、後述の電圧調整条件が成立していない場合には第1調光情報D1を用いて調光を行い、電圧調整条件が成立している場合には第2調光情報D2を用いて調光を行う。
【0031】
第1調光情報D1は、電圧調整部40がオフ状態である場合に電圧出力部30から出力される電圧の値と表示輝度との関係を示すデータである。第2調光情報D2は、電圧調整部40がオン状態である場合に電圧出力部30から出力される電圧の値と表示輝度との関係を示すデータである。なお、第1調光情報D1及び第2調光情報D2は、制御部60への入力電圧と表示輝度との関係を示す関数のデータであってもよいし、制御部60への入力電圧と対応する表示輝度を規定したテーブルデータであってもよい。
【0032】
電圧調整制御手段は、予め定めた電圧調整条件が成立していない場合に電圧調整部40をオフ状態(第1状態)に制御し、電圧調整条件が成立している場合に電圧調整部40をオン状態(第2状態)に制御する。また、電圧調整制御手段として機能する制御部60は、温度検出部50から供給された電圧信号をデジタル値に変換して得た電圧値に基づいて、周知の手法によって表示器10の周辺の温度を算出する。なお、制御部60は、算出した温度に応じて、周知の手法を用いて第1調光情報D1及び第2調光情報D2の各々の電圧特性の温度補正を行ってもよい。
【0033】
また、調光手段として機能する制御部60は、電圧調整部40がオン状態及びオフ状態の一方から他方に切り替えられてから、予め定めた期間が経過するまでの間に電圧出力部30から出力された電圧の値を表示輝度の調整に用いない。この効果については後述する。
【0034】
続いて、制御部60がプログラムPGに従って実行する調光処理の一例を、
図5を参照して説明する。調光処理は、例えば、車両用表示装置1の動作中に継続して実行される。
【0035】
(調光処理)
まず、制御部60は、電圧出力部30から電圧信号を取得し、光検出素子20が検出した外光の照度に応じた電圧値を取得する(ステップS101)。これと併せて第1実施形態では、制御部60は、温度検出部50から取得した信号に基づいて表示器10の周辺の温度を算出する。なお、制御部60は、電圧出力部30からの電圧信号と温度検出部50からの電圧信号の各々を、例えば10msの周期で取得し、デジタル値に変換する。
【0036】
続いて、制御部60は、予め定めた電圧条件が成立しているか否かを判別する(ステップS102)。第1実施形態では、ステップS101で算出した温度がROM内に予め定められた温度閾値未満である場合に電圧調整条件が成立していない(ステップS102;No)と判別し、制御部60は、電圧調整部40をオフ状態に制御する(ステップS103)。具体的に、制御部60は、ローレベルの制御信号をトランジスタ41に供給して、トランジスタ41をオフ状態に制御する。
【0037】
続いて、制御部60は、前回の処理で電圧調整部40がオン状態であったか否か(つまり、今回のステップS103で電圧調整部40をオン状態からオフ状態に切り替えたか否か)を判別する(ステップS104)。前記の処理でも電圧調整部40がオフ状態であった場合(ステップS104;No)、制御部60は、今回のステップS101で取得した電圧出力部30からの電圧値と、第1調光情報D1とに基づいて、表示器10の表示輝度を制御する(ステップS105)。
【0038】
一方、今回の処理で電圧調整部40をオン状態からオフ状態に切り替えた場合(ステップS104;Yes)、制御部60は、今回のステップS101で取得した電圧出力部30からの電圧値を無効とする(ステップS106)。これにより、電圧調整部40がオン状態からオフ状態に切り替わって電圧出力部30から出力される電圧が急激に変化する期間を避けて、制御部60は調光を行うことができる。なお、トランジスタ41の応答速度は、電圧出力部30からの電圧信号の入力周期である10msよりも充分に短いため、制御部60は、このように1回分の入力電圧を無視すれば充分である。ステップS106の処理を実行した場合、例えば、制御部60は、前回決定した表示輝度を維持する。
【0039】
ステップS102に戻って、制御部60は、ステップS101で算出した温度がROM内に予め定められた温度閾値以上である場合に電圧調整条件が成立している(ステップS102;Yes)と判別し、電圧調整部40をオン状態に制御する(ステップS107)。具体的に、制御部60は、ハイレベルの制御信号をトランジスタ41に供給して、トランジスタ41をオン状態に制御する。これにより、前述のように電圧出力部30から出力される電圧が低下する。なお、温度閾値は、制御部60への入力電圧が上限値を超えないように、実験やシミュレーションを経て予め定められていればよい。
【0040】
ここで、
図3を参照して説明したように、何の対策も施さない場合には制御部60への入力電圧が上限値を超えそうな挙動を示すグラフGhは、電圧調整部40(トランジスタ41)がオン状態に制御された後は、
図4に示す調整後グラフGhaのように制御部60への入力電圧が上限値を超えないように挙動する。なお、点Pは、電圧調整部40がオフ状態からオン状態に切り替わったタイミングを示す。
【0041】
ステップS107に続いて、制御部60は、前回の処理で電圧調整部40がオフ状態であったか否か(つまり、今回のステップS107で電圧調整部40をオフ状態からオン状態に切り替えたか否か)を判別する(ステップS108)。前記の処理でも電圧調整部40がオン状態であった場合(ステップS108;No)、制御部60は、今回のステップS101で取得した電圧出力部30からの電圧値と、第2調光情報D2とに基づいて、表示器10の表示輝度を制御する(ステップS109)。
【0042】
一方、今回の処理で電圧調整部40をオフ状態からオン状態に切り替えた場合(ステップS108;Yes)、制御部60は、今回のステップS101で取得した電圧出力部30からの電圧値を無効とする(ステップS110)。これにより、電圧調整部40がオフ状態からオン状態に切り替わって電圧出力部30から出力される電圧が急激に変化する期間を避けて、制御部60は調光を行うことができる。なお、トランジスタ41の応答速度は、電圧出力部30からの電圧信号の入力周期である10msよりも充分に短いため、制御部60は、このように1回分の入力電圧を無視すれば充分である。ステップS110の処理を実行した場合、例えば、制御部60は、前回決定した表示輝度を維持する。
【0043】
制御部60は、ステップS105、S106、S109又はS110の処理の実行後は、ステップS101に戻って処理を実行する。
【0044】
制御部60は、以上の調光処理を実行することにより、制御部60への入力電圧を読み取り可能な値に制御することができ、当該入力電圧に基づいて表示器10の表示輝度を決定する。このため、良好に表示器10の調光を行うことができる。以上が第1実施形態である。
【0045】
ここからは、他の実施形態について説明する。なお、第1実施形態と共通の機能を有する各部については、第1実施形態と同一の符号を付すとともに、適宜説明を省略する。以下では、第1実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0046】
(第2実施形態)
第2実施形態に係る車両用表示装置1は、温度検出部50を備えない点が第1実施形態と異なる。それ以外の物理的構成は第1実施形態と同様である。また、第2実施形態に係る調光処理は、ステップS101及びS102の処理が第1実施形態と異なる。
【0047】
第2実施形態に係る制御部60は、ステップS101で、電圧出力部30から電圧信号を取得し、光検出素子20が検出した外光の照度に応じた電圧値を取得する。なお、第2実施形態に係る車両用表示装置1は温度検出部50を備えないため、第1実施形態とは異なり、制御部60は、温度に応じた電圧信号を取得しない。
【0048】
また、第2実施形態に係る制御部60は、ステップS102で、電圧出力部30から出力された電圧の値が予めROM内に定められた電圧閾値以上である場合に電圧調整条件が成立している(ステップS102;Yes)と判別し、当該電圧の値が電圧閾値未満である場合に電圧調整条件が成立していない(ステップS102;No)と判別する。なお、電圧閾値は、制御部60への入力電圧が上限値を超えないように、実験やシミュレーションを経て予め定められていればよい。調光処理を構成するその他の処理は、第1実施形態と同様である。
【0049】
以上の第2実施形態によっても、制御部60は、制御部60への入力電圧を読み取り可能な値に制御することができ、当該入力電圧に基づいて表示器10の表示輝度を決定する。このため、良好に表示器10の調光を行うことができる。
【0050】
(第3実施形態)
第1及び第2実施形態では、車両用表示装置1をユーザが使用している際に調光処理を実行可能な例を示したが、第3実施形態では、車両用表示装置1の出荷前の検査工程で実行可能な処理を説明する。なお、第3実施形態に係る車両用表示装置1は、温度検出部50を備えていても、備えていなくともよい。
【0051】
車両用表示装置1の使用環境に限らず、製品誤差によって、制御部60に入力される外光の照度に応じた電圧(制御部60への入力電圧)が、前述の典型的な車両用表示装置1に比べて増減する。例えば、透光性カバー72に施したスモーク処理のバラツキによっては、外光が光検出素子20へ過剰に入射し、
図3に示すグラフGhのように制御部60への入力電圧が上限値(ここでは電源電圧Vcc=5V)を超えて、制御部60が照度に応じた調光制御を行うことが困難となる虞がある。この問題を解決するため、第3実施形態に係る制御部60は、車両用表示装置1の出荷前の検査工程において、
図6に示す検査処理を実行する。なお、制御部60は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等のデータを書き換え可能な不揮発性メモリを備え、検査処理の前に、当該メモリ内に第1調光情報D1を記憶しているものとする。
【0052】
(検査処理)
検査処理を開始すると、制御部60は、電圧出力部30から電圧信号を取得し、光検出素子20が検出した外光の照度に応じた電圧値を取得する(ステップS301)。なお、制御部60は、電圧出力部30からの電圧信号をデジタル値に変換する。
【0053】
続いて、制御部60は、電圧調整条件が成立しているか否かを判別する(ステップS302)。
第3実施形態では、第2実施形態と同様に電圧出力部30から出力された電圧の値が予めROM内に定められた電圧閾値以上である場合に電圧調整条件が成立していると判別する。なお、電圧閾値は、制御部60への入力電圧が上限値を超えないように、実験やシミュレーションを経て予め定められていればよい。
【0054】
電圧出力部30から出力された電圧の値が電圧閾値未満である場合(ステップS302;No)、制御部60は検査処理を終了する。こうして検査処理を終了した車両用表示装置1の個体は、その動作中においては、電圧調整部40をオフ状態に維持しつつ、電圧出力部30から出力された電圧と第1調光情報D1とに基づいて、表示器10の調光を行う。
【0055】
一方、電圧出力部30から出力された電圧の値が電圧閾値以上である場合(ステップS302;Yes)、制御部60は、メモリに記憶されていた第1調光情報D1を第2調光情報D2に書き換える(ステップS303)。制御部60は、通信接続された他の機器から第2調光情報D2を取得可能であればよい。ステップS303の処理後、制御部60は検査処理を終了する。こうして検査処理を終了した車両用表示装置1の個体は、その動作中においては、電圧調整部40をオン状態に維持しつつ、電圧出力部30から出力された電圧と第2調光情報D2とに基づいて、表示器10の調光を行う。
【0056】
以上の検査処理によれば、制御部60への入力電圧が上限値を超える虞がある車両用表示装置1の個体について、予め制御部60への入力電圧を読み取り可能な値に制御することができる。そのため、当該個体についても、良好に表示器10の調光を行うことができる。
【0057】
なお、以上では条件を満たす場合に、メモリ内の第1調光情報D1を第2調光情報D2に書き換える例を示したが、調光処理を実行するプログラムPG自体を書き換えてもよい。この場合、書き換え前のメモリには、電圧調整部40をオフ状態に維持しつつ、電圧出力部30から出力された電圧と第1調光情報D1とに基づいて調光を行うプログラムが記憶され、書き換え後のメモリには、電圧調整部40をオン状態に維持しつつ、電圧出力部30から出力された電圧と第2調光情報D2とに基づいて調光を行うプログラムが記憶されればよい。また、メモリ内に第1調光情報D1及び第2調光情報D2の双方を予め記憶させておき、制御部60は、データを書き換えるステップS303の代わりに、今後の動作時に使用する調光情報を、第2調光情報D2に決定する処理を行ってもよい。
【0058】
なお、本開示は以上の実施形態及び図面によって限定されるものではない。本開示の要旨を変更しない範囲で、実施形態に適宜の変更(構成要素の削除も含む)を加えることが可能である。
【0059】
車両用表示装置1は、複合計器に限られず任意である。例えば、車両用表示装置1は、HUD(Head-Up Display)、CID(Center Information Display)等として構成されてもよい。表示器10もLCD11を用いたものに限られず任意である。表示器10は、OLED(Organic Light Emitting Diodes)等を用いた自発光型パネルから構成されてもよい。また、表示器10は、透過型スクリーンと当該スクリーンに表示光を投射するプロジェクタとを備えて構成されてもよい。いずれの場合においても、制御部60は、調光処理で決定した表示輝度を実現するように調光制御を実行すればよい。
【0060】
光検出素子20、電圧出力部30、電圧調整部40及び温度検出部50の各々は、以上に説明した機能を充足する限りにおいては、その構成は任意に変更可能である。例えば、光検出素子20としてフォトダイオードを用いてもよい。また、電圧調整部40と、オン状態の電圧調整部40によってプルダウン化する抵抗との組み合わせを複数設けることにより、制御部60への入力電圧を複数段階で調整可能な構成を採用することもできる。
【0061】
以上では、制御部60への電圧出力部30から出力される電圧(検出した照度に応じた電圧)に基づき、目標の表示輝度を直接決定する例を示したが、これに限られない。制御部60は、電圧出力部30から出力される電圧から照度を算出し、算出した照度に応じて目標の表示輝度を決定してもよい。したがって、第1調光情報D1及び第2調光情報D2の各々が電圧出力部30から出力される電圧の値と表示輝度との関係を示すという概念は、第1調光情報D1及び第2調光情報D2の各々が電圧出力部30から出力される電圧の値に応じて定まる照度などの物理量と表示輝度との関係を示すことも含む。
【0062】
以上では、ステップS106及びS110の各々の処理で、電圧出力部30からの電圧信号の入力周期の1回分の入力電圧を無効とする例を示したが、これに限られない。制御部60は、ステップS106及びS110の各々の処理で、トランジスタ41の応答速度よりも長い任意の期間(例えば数msの期間)が経過するまでは入力電圧を無効としてもよい。いずれにせよ、制御部60は、電圧調整部40がオン状態及びオフ状態の一方から他方に切り替えられてから、予め定めた期間が経過するまでの間に電圧出力部30から出力された電圧の値を表示輝度の調整に用いないことが好ましい。
【0063】
以上では、車両用表示装置1が光検出素子20及び温度検出部50を備える例を示したが、制御部60と電気的に接続されている限りにおいては、光検出素子20及び温度検出部50の少なくともいずれかは、車両用表示装置1の外部に設けられていてもよい。
【0064】
以上では、プログラムPGが制御部60のROMに予め記憶されているものとしたが、着脱自在の記録媒体により配布・提供されてもよい。また、プログラムPGは、制御部60と接続された他の機器からダウンロードされるものであってもよい。また、制御部60は、他の機器と電気通信ネットワークなどを介して各種データの交換を行うことによりプログラムPGに従う各処理を実行してもよい。
【0065】
以上の説明では、本開示の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略した。
【0066】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【符号の説明】
【0067】
1…車両用表示装置
10…表示器、11…LCD、12…光源
20…光検出素子
30…電圧出力部、31,32…抵抗
40…電圧調整部、41…トランジスタ
50…温度検出部、51…サーミスタ
60…制御部、PG…プログラム、D1…第1調光情報、D2…第2調光情報
70…筐体、72…透光性カバー