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特許7556291繊維強化樹脂成形材料、繊維強化樹脂成形品、および繊維強化樹脂成形品の製造方法
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  • 特許-繊維強化樹脂成形材料、繊維強化樹脂成形品、および繊維強化樹脂成形品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】繊維強化樹脂成形材料、繊維強化樹脂成形品、および繊維強化樹脂成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/12 20060101AFI20240918BHJP
   C08K 7/06 20060101ALI20240918BHJP
   C08K 5/49 20060101ALI20240918BHJP
   C08K 3/016 20180101ALI20240918BHJP
   C08K 3/014 20180101ALI20240918BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20240918BHJP
   C08K 5/36 20060101ALI20240918BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20240918BHJP
   C08K 9/08 20060101ALI20240918BHJP
   B29B 9/14 20060101ALI20240918BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240918BHJP
   C08J 5/04 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C08L101/12
C08K7/06
C08K5/49
C08K3/016
C08K3/014
C08K5/13
C08K5/36
C08K5/521
C08K9/08
B29B9/14
B29C45/00
C08J5/04 CEZ
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020573374
(86)(22)【出願日】2020-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2020041724
(87)【国際公開番号】W WO2021124726
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2019230008
(32)【優先日】2019-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091384
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 俊光
(74)【代理人】
【識別番号】100125760
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】吉弘 一貴
(72)【発明者】
【氏名】平田 慎
(72)【発明者】
【氏名】濱口 美都繁
【審査官】横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-114107(JP,A)
【文献】特開2013-011050(JP,A)
【文献】特開2014-159560(JP,A)
【文献】特開平10-168227(JP,A)
【文献】国際公開第2016/051562(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/021101(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
B29B 9/14
B29C 45/00
C08J 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記成分(A)~(C)を含む成形材料であって、窒素下および空気下での300℃で10分加熱した際の熱減量がともに1.5%以下であり、(D)酸化防止剤が1.0重量%以上添加されていることを特徴とする繊維強化樹脂成形材料。
(A)非晶性熱可塑性樹脂:100重量部
(B)強化繊維:4~60重量部
(C)リン系難燃剤:20~60重量部
【請求項2】
水分率が0.02%以下である、請求項1に記載の繊維強化樹脂成形材料。
【請求項3】
(D)酸化防止剤が硫黄系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤の混合物である、請求項1または2に記載の繊維強化樹脂成形材料。
【請求項4】
(C)リン系難燃剤の空気下での300℃で10分間加熱した際の熱減量が5%以下である、請求項1~のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料。
【請求項5】
ガラス転移温度が100℃以下である、請求項1~のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料。
【請求項6】
(C)リン系難燃剤が縮合リン酸エステルである、請求項1~のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料。
【請求項7】
(B)強化繊維が炭素繊維である、請求項1~のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料。
【請求項8】
(B)強化繊維の繊維長が3~50mmである、請求項1~のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料。
【請求項9】
(B)強化繊維に(A)非晶性熱可塑性樹脂が被覆されている、請求項1~のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料。
【請求項10】
(B)強化繊維に(E)樹脂が含浸されている、請求項1~のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料。
【請求項11】
ペレット形状に形成されている、請求項1~10のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料を用いて作製された繊維強化樹脂成形品。
【請求項13】
請求項1~11のいずれかに記載の繊維強化樹脂成形材料を用いて繊維強化樹脂成形品を製造する方法であって、成形前に繊維強化樹脂成形材料のガラス転移温度からガラス転移温度+20℃の温度で繊維強化樹脂成形材料を乾燥させる工程を含む、繊維強化樹脂成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化樹脂成形材料、繊維強化樹脂成形品、および繊維強化樹脂成形品の製造方法に関し、さらに詳しくは優れた難燃性と成形品外観を発現する繊維強化樹脂成形材料、その成形材料を用いた成形品、およびその成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強化繊維と熱可塑性樹脂からなる成形品は、軽量で優れた力学特性を有するために、スポーツ用品用途、航空宇宙用途および一般産業用途に広く用いられている。これらの成形品に使用される強化繊維は、その使用用途によって様々な形態で成形品を強化している。これらの強化繊維には、アルミニウム繊維やステンレス繊維などの金属繊維、アラミド繊維やPBO(ポリフェニレンベンズオキサゾール)繊維などの有機繊維、および炭素繊維やガラス繊維、シリコンカーバイド繊維などの無機繊維などが使用されている。
【0003】
さらに、かかる成形品を得るための成形材料(具体的には、連続した強化繊維、およびマトリックスとして熱可塑性樹脂を用いる成形材料)として、熱可塑性のプリプレグ、ヤーン、ガラスマット(GMT)など多種多様な形態が公知である。このような成形材料は、熱可塑性樹脂の特性を活かして成形を容易にし、熱硬化性樹脂のような貯蔵の負荷を必要とせず、また得られる成形品の靭性が高く、リサイクル性に優れるといった特徴がある。とりわけ、ペレット状に加工した成形材料は、射出成形やスタンピング成形などの経済性、生産性に優れた成形法に適用でき、工業材料として有用である。
【0004】
電子機器筐体のような用途においては、より一層の軽量化、薄型化が要求されており、成形材料から製造される成形品に高い力学特性、難燃性および成形品外観が求められている。
【0005】
難燃剤としては、環境面や安全性を考慮して、ハロゲン原子を含有しないホスファゼン難燃剤を用いたマスターバッチが提案されている(特許文献1および2参照)。また、難燃性と力学特性を両立するためにハロゲン原子を含有しないリン系難燃剤と強化繊維を配合した短繊維強化樹脂成形材料が記載されている(特許文献3参照)。また、強化繊維束にエポキシ樹脂を溶融含浸してなる樹脂含浸強化繊維に、難燃剤および/または液晶性樹脂を特定量含むポリカーボネート樹脂を被覆することで難燃性と力学特性に優れた繊維強化樹脂成形材料が提案されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-307178号公報
【文献】特開2008-101035号公報
【文献】国際公開2014/148641号公報
【文献】特開2013-209629号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上に示したように、難燃剤を用いた繊維強化樹脂成形材料は従来提案されてきた。しかしながら、製品の薄肉化の要求レベルの向上に伴い、より高いレベルでの力学特性、難燃性が要求されている。また、これまで問題としていなかった課題も顕在化してきた。例えば、高レベルの難燃性を達成するためには、多量の難燃剤の配合が必要であるが、低分子量化合物である難燃剤は、高分子量化合物である熱可塑性樹脂に比べて分解しやすいため、発生ガスによるウエルド部や成形品端部のガス焼け等の成形品外観不良を引き起こす。このため、前記したような従来の成形材料を用いた成形品では、難燃性、力学特性と成形品外観を十分に満たす成形品が得られないという問題が生じていた。
【0008】
例えば、特許文献1および2には、難燃剤マスターバッチに含まれるポリエチレンテレフタレート樹脂などのポリエステル樹脂やポリエステルエラストマー、フェノール系樹脂成分が難燃性を低下させるために、樹脂組成物の難燃性を効果的に発現させることができなかった。また特許文献1~3に記載された技術は、樹脂成形材料中の強化繊維が短繊維であり、繊維長が小さいため、成形品の力学特性を効果的に発現させることができなかった。特許文献4では、多量の難燃剤を配合した樹脂組成物を用いているが、成形品外観向上についての記載がない。
【0009】
かかる状況において、成形品が優れた難燃性、力学特性を発現し、良好な外観を有する繊維強化樹脂成形材料ならびにその成形品の開発が求められていた。
【0010】
本発明の課題は、従来技術が有する問題点に鑑み、難燃性、力学特性を発現し、外観に優れた成形品を製造できる繊維強化樹脂成形材料、その成形材料を用いた成形品、およびその成形品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記課題を解決することができる、次の繊維強化樹脂成形材料、その成形材料を用いた成形品、およびその製造方法を発明するに至った。
【0012】
本発明の繊維強化樹脂成形材料は、少なくとも下記成分(A)~(C)を含む成形材料であって、窒素下および空気下での300℃で10分加熱した際の熱減量がともに1.5%以下であることを特徴とする繊維強化樹脂成形材料である。
(A)非晶性熱可塑性樹脂:100重量部
(B)強化繊維:4~60重量部
(C)リン系難燃剤:20~60重量部
【0013】
また、本発明の繊維強化樹脂成形品は、上記のような繊維強化樹脂成形材料を用いて作製された成形品である。
【0014】
さらに、本発明の繊維強化樹脂成形品の製造方法は、上記のような繊維強化樹脂成形材料を用いて繊維強化樹脂成形品を製造する方法であって、成形前に繊維強化樹脂成形材料のガラス転移温度からガラス転移温度+20℃の温度で繊維強化樹脂成形材料を乾燥させる工程を含む方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の繊維強化樹脂成形材料を用いることにより、成形時のガス焼けを抑制した良好な製品外観を有しつつ、難燃性および力学特性に優れる成形品が得られる。本発明の成形材料を用いて成形された成形品は、電気・電子機器、OA機器、家電機器、または自動車の部品、内部部材および筐体などの各種部品・部材に極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施態様に係る繊維強化樹脂成形材料の、繊維軸またはペレット軸と垂直な方向の概略断面図である。
図2】本発明の別の実施態様に係る繊維強化樹脂成形材料の、繊維軸またはペレット軸と垂直な方向の概略断面図である。
図3】本発明の一実施態様に係る繊維強化樹脂成形材料の、繊維軸またはペレット軸と平行な方向の概略断面図である。
図4】本発明における(B)強化繊維と(E)樹脂からなる複合繊維束の、繊維軸と垂直な方向の断面の形態の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明について、実施の形態とともに詳細に説明する。
本発明の繊維強化樹脂成形材料(以下、単に「成形材料」ということもある)は、下記要件を満たす成形材料である。なお、本発明において、成形材料とは、成形品を射出成形などで成形する際に用いる原材料を意味する。
【0018】
本発明の成形材料は、少なくとも下記成分(A)~(C)を含む成形材料であって、窒素下および空気下での300℃で10分加熱した際の熱減量がともに1.5%以下であることを特徴とする成形材料である。
(A)非晶性熱可塑性樹脂:100重量部
(B)強化繊維:4~60重量部
(C)リン系難燃剤:20~60重量部
【0019】
成形時において、加熱された成形材料の一部は熱分解、加水分解を起こし分解ガスが発生する。発生した分解ガスは成形での加圧時に圧縮され、成形品端部、ウエルド部等で局所的な温度上昇を引き起こす。この際に、過剰に加熱された成形材料の酸化分解が促進され、ガス焼けと呼ばれる変色を伴う成形品の外観不良が発生する。
【0020】
本発明者らは、成形材料は窒素下の熱減量を一定以下とすることで、成形時に溶融された成形材料から発生するガス量が低減されることを見出した。また、空気下の熱減量を一定以下とすることで、成形加圧時の成分の酸化分解が抑制されることを見出した。さらに窒素下、空気下での熱減量がともに一定以下である成形材料を用いることで成形時のガス焼けの抑制効果が飛躍的に向上することを見出し、本発明に到達した。
【0021】
まず、上記各成分について説明する。
<(A)非晶性熱可塑性樹脂>
本発明における成形材料は(A)非晶性熱可塑性樹脂を含む。非晶性熱可塑性樹脂とは、熱可塑性樹脂のうち、積極的には結晶状態を作らないような熱可塑性樹脂をいう。より具体的には、分子の立体規則性がよく、側鎖が小さく、枝分かれがなく、分子間凝集力が大きいような熱可塑性樹脂は結晶性樹脂となるが、非晶性熱可塑性樹脂は、上記の一部又は全てを備えていないような樹脂をいう。一般的に非晶性熱可塑性樹脂は結晶性熱可塑性樹脂と比較して、難燃剤との相溶性が良好であるため、難燃性、流動性が向上する。
【0022】
(A)非晶性熱可塑性樹脂自体のガラス転移温度は100℃以上、250℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が100℃以上であると、耐熱性に優れ、樹脂分解による発生ガスが抑制できるため好ましい。120℃以上がより好ましい。ガラス転移温度が250℃以下であると成形時の流動性に優れるため好ましい。200℃以下がより好ましく、150℃以下がさらに好ましい。ここで、ガラス転移温度は、JIS K7121に従い、DSCにより、昇温速度20℃/分で測定した値を指す。
【0023】
このような(A)非晶性熱可塑性樹脂としては、特に制限されるものではないが、ポリアリレート系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、アクリル系樹脂、メタクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ビニル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂およびポリカーボネート系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種類以上の樹脂であることが好ましい。これらの非晶性熱可塑性樹脂は、可撓性が高く、難燃剤との相溶性が良好となる利点もある。難燃剤との相溶性の観点からポリカーボネート樹脂を含むことが特に好ましい。
【0024】
ポリカーボネート樹脂は、力学特性や熱安定性、難燃性にバランス良く優れた樹脂であり、強化繊維による補強効果や、難燃剤および/または液晶性樹脂による難燃性向上効果がより効果的に作用するため、好ましく用いられる。本発明においてポリカーボネート樹脂とは、主鎖中に炭酸エステル構造を有する重合体であり、脂肪族ポリカーボネート、脂肪族-芳香族ポリカーボネート、芳香族ポリカーボネートなどが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を組み合わせて使用してもよい。特に耐衝撃特性に優れるといった観点から、4,4’-ジヒドロキシジフェニル-2,2-プロパン(ビスフェノールA)の炭酸エステル構造を有する芳香族ポリカーボネートが特に好ましく用いられる。
【0025】
また、ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は10,000~50,000が好ましく、より好ましくは15,000~40,000、さらに好ましくは18,000~35,000である。粘度平均分子量(Mv)が10,000以上であると耐衝撃特性などの力学特性により優れることから好ましい。また、粘度平均分子量(Mv)が50,000以下であると、成形時の流動性に優れ、成形性が高いことから好ましい。
【0026】
ここで、粘度平均分子量(Mv)は、以下の方法により求めることができる。まず、塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを20℃で溶解した溶液について、次式にて算出される比粘度(ηSP)を、20℃でオストワルド粘度計を用いて求める。
比粘度(ηSP)=(t-t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
【0027】
続いて、求められた比粘度(ηSP)から次の数式により粘度平均分子量Mvを算出することができる。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-4Mv0.83
c=0.7
【0028】
ポリカーボネート樹脂を得る手法としては特に限定されるものではなく、公知の製造方法を用いることができ、例えば、ホスゲン法、エステル交換法あるいは固相重合法などが挙げられる。また、三菱エンジニアリングプラスチック(株)製「ユーピロン」、「ノバレックス」(商品名)、帝人化成(株)製「パンライト」(商品名)、出光石油化学(株)製「タフロン」(商品名)などとして上市されているものを入手して用いることもできる。
【0029】
<(B)強化繊維>
本発明における(B)強化繊維は、(A)非晶性熱可塑性樹脂に対する繊維補強効果により、力学特性を向上し得るものである。さらに、強化繊維が導電性や熱伝導性など、固有の特性を有する場合、(A)非晶性熱可塑性樹脂単体では為し得ない、それらの性質も付与することができる。こうした観点から、強化繊維の中でもPAN(ポリアクリルニトリル)系、ピッチ系、レーヨン系などの炭素繊維が、力学特性のさらなる向上、成形品の軽量化効果の観点から好ましく、得られる成形品の強度と弾性率とのバランスの観点から、PAN系炭素繊維がさらに好ましい。また、難燃性と力学特性のバランスをとる目的においては、ガラス繊維も好ましく用いられる。
【0030】
本発明の成形材料における(B)強化繊維の含有量は、(A)非晶性熱可塑性樹脂100重量部に対して、4~60重量部(4重量部以上60重量部以下)である。強化繊維の含有量が4重量部未満であると、成形品の曲げ強度等の力学特性が発現しにくい。また、ガス発生量が多くなるため、ガス焼けが発生する確率が増加する。強化繊維の含有量は、10重量部以上がより好ましく、20重量部以上がさらに好ましくい。一方、強化繊維の含有量が60重量部を超えると、成形加工の際に成形材料の流動性、難燃性が低下する場合がある。強化繊維の含有量は30重量部以下が好ましい。
【0031】
さらに強化繊維として炭素繊維を用いる場合には、炭素繊維としては、X線光電子分光法により測定される繊維表面の酸素(O)と炭素(C)の原子数の比である表面酸素濃度比[O/C]が0.05~0.5であるものが好ましく、より好ましくは0.08~0.4であり、さらに好ましくは0.15~0.3である。表面酸素濃度比が0.05以上であることにより、炭素繊維表面の官能基量を確保でき、熱可塑性樹脂とより強固な接着を得ることができる。また、表面酸素濃度比の上限には特に制限はないが、炭素繊維の取扱い性、生産性のバランスから一般的に0.5以下とすることが例示できる。
【0032】
炭素繊維の表面酸素濃度比は、X線光電子分光法により、次の手順にしたがって求めるものである。まず、溶剤で炭素繊維表面に付着しているサイジング剤などを除去した炭素繊維束を20mmにカットして、銅製の試料支持台に拡げて並べた後、X線源としてA1Kα1、2を用い、試料チャンバー中を1×10-8Torrに保つ。測定時の帯電に伴うピークの補正値としてC1sの主ピークの運動エネルギー値(K.E.)を1202eVに合わせる。C1sピーク面積をK.E.として1191~1205eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。O1sピーク面積をK.E.として947~959eVの範囲で直線のベースラインを引くことにより求める。
【0033】
ここで、表面酸素濃度比とは、上記O1sピーク面積とC1sピーク面積の比から装置固有の感度補正値を用いて原子数比として算出する。X線光電子分光法装置として、国際電気社製モデルES-200を用いる場合には、感度補正値を1.74とする。
【0034】
表面酸素濃度比[O/C]を0.05~0.5に制御する手段としては、特に限定されるものではないが、例えば、電解酸化処理、薬液酸化処理および気相酸化処理などの手法をとることができ、中でも電解酸化処理が好ましい。
【0035】
また、炭素繊維の平均繊維径は特に限定されないが、得られる成形品の力学特性と表面外観の観点から、1~20μmの範囲内であることが好ましく、3~15μmの範囲内であることがより好ましい。
【0036】
また、(B)強化繊維はサイジング剤が付与されてなることが、集束性、耐屈曲性や耐擦過性を改良し、高次加工工程において、毛羽、糸切れの発生を抑制できるため好ましい。さらに、サイジング剤は、炭素繊維表面の官能基等と相互作用し、接着性およびコンポジットの力学特性を向上させることができるため、好ましい。
【0037】
サイジング剤の付着量は、特に限定しないが、炭素繊維100重量部に対して、0.1~3重量部以下が好ましく、0.2~1.2重量部以下がより好ましく、0.5~1重量部以下付与することがさらに好ましい。0.1重量部以上では接着性が向上し、成型品の力学特性が向上する。3重量部以下では、成型品中での炭素繊維の分散性が向上する。さらにマトリックス樹脂の物性の低下を抑制するため好ましい。
【0038】
また、サイジング剤としては、エポキシ樹脂、ポリエチレングリコール、ポリウレタン、ポリエステル、乳化剤あるいは界面活性剤などが挙げられる。また、これらは1種で付与してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
サイジング剤成分として接着性の観点からエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂を強化繊維とマトリックス樹脂間に存在させた場合、柔軟で剥離しにくくさせるため、成形品の強度を向上しやすく好ましい。
【0040】
エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、マトリックス樹脂との接着性を発揮しやすいため、エポキシ樹脂としては、脂肪族エポキシ樹脂が好ましい。通常、エポキシ樹脂はエポキシ基を多数有すると、架橋反応後の架橋密度が高くなるために、靭性の低い構造になりやすい傾向にあり、炭素繊維とマトリックス樹脂間に存在させても、もろいために剥離しやすく、成形品の強度発現しないことがある。一方、脂肪族エポキシ樹脂は、柔軟な骨格のため、架橋密度が高くとも靭性の高い構造になりやすく、界面で柔軟で剥離しにくくさせるため、成形品の強度を向上しやすく好ましい。
【0041】
脂肪族エポキシ樹脂は分子内に芳香環を含まないエポキシ樹脂である。芳香環とは電子共役を有し、芳香族性を示す環状の化学骨格である。
【0042】
脂肪族エポキシ樹脂の具体例としては、例えば、ジグリシジルエーテル化合物では、エチレングリコールジグリシジルエーテル及び、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル類、プロピレングリコールジグリシジルエーテル及び、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル類等が挙げられる。また、ポリグリシジルエーテル化合物では、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル類、ソルビトールポリグリシジルエーテル類、アラビトールポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル類、トリメチロールプロパングリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル類、脂肪族多価アルコールのポリグリシジルエーテル類等が挙げられる。
【0043】
脂肪族エポキシ樹脂の中でも、3官能以上の多官能脂肪族エポキシ樹脂を用いるのが良く、さらには、反応性の高いグリシジル基を3個以上有する脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物を用いるのがより好ましい。この中でも、さらに好ましくは、グリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールグリシジルエーテル類、ポリプロピレングリコールグリシジルエーテル類が好ましい。脂肪族のポリグリシジルエーテル化合物は、柔軟性、架橋密度、マトリックス樹脂との相溶性のバランスがよく、効果的に成型品の力学特性を向上させることから好ましい。
【0044】
サイジング剤の付与手段としては特に限定されるものではないが、例えばローラーを介してサイジング液に浸漬する方法、サイジング液の付着したローラーに接する方法、サイジング液を霧状にして吹き付ける方法などがある。また、バッチ式、連続式いずれでもよいが、生産性がよくバラツキが小さくできる連続式が好ましい。この際、炭素繊維に対するサイジング剤有効成分の付着量が適正範囲内で均一に付着するように、サイジング液濃度、温度、糸条張力などをコントロールすることが好ましい。また、サイジング剤付与時に強化繊維を超音波で加振させることはより好ましい。
【0045】
サイジング剤に使用する溶媒としては、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミド、ジメリルアセトアミド、アセトン等が挙げられるが、取扱いが容易で防災の観点から水が好ましい。従って、水に不溶、若しくは難溶の化合物をサイジング剤として用いる場合には、乳化剤、界面活性剤を添加し、水分散して用いるのが良い。具体的には、乳化剤、界面活性剤としては、スチレン-無水マレイン酸共重合体、オレフィン-無水マレイン酸共重合体、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、ポリアクリル酸ソーダ等のアニオン系乳化剤、ポリエチレンイミン、ポリビニルイミダゾリン等のカチオン系乳化剤、ノニルフェノールエチレンオキサイド付加物、ポリビニルアルコール、ポリオキシエチレンエーテルエステル共重合体、ソルビタンエステルエチルオキサイド付加物等のノニオン系乳化剤等を用いることができるが、相互作用の小さいノニオン系乳化剤が多官能化合物の接着性効果を阻害しにくく好ましい。
【0046】
<(C)リン系難燃剤>
本発明の成形材料はリン系難燃剤を含む。リン系難燃剤は熱可塑性樹脂との相溶性が高く、その混合物が優れた難燃性と流動性を発現する。
【0047】
また、リン系難燃剤は(A)非晶性熱可塑性樹脂と相溶することが好ましい。相溶性が高い程、難燃性が高くなるため、好ましい。相溶性は(A)非晶性熱可塑性樹脂のガラス転移温度が変化することで確認することができる。混合物のガラス転移温度はJIS K7121に従い、示差走査熱量計(DSC)により、昇温速度20℃/分で測定することができる。
【0048】
本発明の成形材料おける(C)リン系難燃剤の含有量は、(A)非晶性熱可塑性樹脂100重量部に対して、20~60重量部(20重量部以上60重量部以下)である。リン系難燃剤の含有量が20重量部未満であると、成形品の難燃性、流動性が低下する。リン系難燃剤の含有量は、40重量部以上がさらに好ましくい。一方、リン系難燃剤の含有量が60重量部を超えると、成形品の力学特性が低下する。リン系難燃剤の含有量は50重量部以下が好ましい。
【0049】
本発明において用いられるリン系難燃剤は、窒素下で300℃、10分加熱した際の熱減量が5%以下であることが好ましい。5%以下であると、成形での樹脂溶融時に発生するガス量が低減し、ガス焼けが抑制できるため好ましい。
【0050】
本発明において用いられる(C)リン系難燃剤は、特に限定されず、公知のものを用いる事ができる。例えば、リン化合物系難燃剤、赤リン系難燃剤が挙げられる。
【0051】
リン化合物系難燃剤の代表的なものとしては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、2-エチルヘキシルジフェニルホスフェート、その他芳香族リン酸エステル等のようなリン酸エステル系化合物や、トリスジクロロプロピルホスフェート、トリスクロロエチルホスフェート、トリスクロロプロピルホスフェート等の含ハロゲンリン酸エステル化合物、また、縮合リン酸エステル化合物、ポリリン酸塩類、赤リン系化合物などが挙げられる。これらは単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0052】
リン化合物系難燃剤および赤リン系化合物は、脱水炭化促進作用により、成形品表面に緻密なチャーが形成され、熱や酸素を遮断し、炎の伝播を阻止する。また、熱分解におけるラジカル連鎖反応に対し、ラジカルトラップ効果により燃焼場において活性なHラジカルやOHラジカルを安定化することで難燃性を発現する。
【0053】
本発明において、上記種々の難燃剤の中でも、難燃性の発現や、有毒ガスの発生懸念の有無、難燃剤添加による比重の増加、(A)非晶性熱可塑性樹脂との相溶性といった観点からリン化合物系難燃剤を用いることが好ましく、縮合リン酸エステル化合物を用いることが特に好ましい。
【0054】
また、リン系難燃剤のリン含有濃度は5~50%が好ましい。リン含有濃度とはリン系難燃剤の重量の内、リンが占める重量であり、5%以上であると緻密なチャーが形成しやく、難燃性が向上する。7%以上が好ましく、9%以上がさらに好ましい。リン含有濃度が50%以下であると、(A)非晶性熱可塑性樹脂との相溶性が向上するため、難燃性が高くなるため好ましい。
【0055】
また、本発明において、(C)リン系難燃剤は、成形材料として、成形時に用いる原材料の中のいずれかに含まれていればよい。ここで、本発明において、原材料の中のいずれかに含まれる好ましい例を具体的に挙げると、例えば、非晶性熱可塑性樹脂とリン系難燃剤を溶融混練した、いわゆる樹脂組成物として、強化繊維を被覆する樹脂中に含まれていたり、強化繊維を得る工程において、強化繊維束中に予め含浸させておいてもよい。また、強化繊維を熱可塑性樹脂で被覆したものと、熱可塑性樹脂とリン系難燃剤を溶融混練した、いわゆる樹脂組成物をドライブレンドして、成形材料混合物としたものも、成形前に成形品に含まれる強化繊維や難燃剤の量を容易に調整することができることから好ましい。ここで、本発明においてドライブレンドとは、溶融混練とは異なり、2種の材料を樹脂成分が溶融しない温度で攪拌・混合し、実質的に均一な状態とすることを言い、主に射出成形や押出成形の際等にペレット形状の材料を用いる場合に好ましく用いられる。
【0056】
<(D)酸化防止剤について>
本発明の成形材料は(D)酸化防止剤を含むことが好ましい。酸化防止剤としては、ヒンダートフェノール系、ヒドロキノン系、リン系、ホスファイト系、アミン系、硫黄系およびこれらの置換体等の酸化防止剤を用いることが好ましい。
【0057】
その具体例としては、上記リン系、ホスファイト系酸化防止剤として例えば、テトラキス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレンフォスフォナイト、ビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトール-ジ-フォスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-t-ブチルフェニル)オクチルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)フォスファイト、ジフェニルイソデシルフォスファイト、フェニルジイソデシルフォスファイト、4,4-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェニル-ジ-トリデシル)フォスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシルフォスファイト)、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)フォスファイト、トリス(ノニル・フェニル)フォスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジフォスファイト、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレン-10-オキサイド、10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-フォスファフェナントレンなどあるいはこれらの混合物が例示できる。
【0058】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えばトリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2-チオビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルスルホン酸エチルカルシウム、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレイト、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’-メチレンビス-(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス-(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス-(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、オクチル化ジフェニルアミン、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ベンゼンプロパン酸,3-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-5-メチル-2,4,8,10-テトラオキサピロ[5.5]ウンデカン-3,9-ジイルビス(2,2-ジメチル-2,1-エタンジイル)エステル、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-sec-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、d-α-トコフェロール、3、9-ビス(2-(3-(3-ターシャリーブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニールオキシ)-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンなど、あるいはこれらの混合物を例示できる。
【0059】
アミン系酸化防止剤としては、例えばコハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3,-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6,-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、テトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)1,2,3,4-ブタンテトラカルボキシレート、ビス-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、1-[2-[3-(3.5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]-4-[3-(3,5-t-ブチル-ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジンなど、あるいはこれらの混合物が例示できる。
【0060】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば4,4’-チオビス(6-t-ブチル-3-メチルフェノール)、ジアルキル(C12-18)3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリチルテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)など、あるいはこれらの混合物が例示できる。
【0061】
上述した各種酸化防止剤のなかでも、分解抑制の観点から好ましくは硫黄系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤またはそれらの混合物が用いられる。
【0062】
酸化防止剤の含有量は、成形材料全量(100重量%)に対して、1.0重量%以上であることが好ましい。酸化防止剤が1.0重量%以上含まれると、成形加熱時の成形材料の成分の分解が抑制され、ガス焼けが起こりにくくなる。酸化防止剤の含有量の上限としては2.0重量%以下であることが好ましい。酸化防止剤の含有量が2.0重量%以下であると、酸化防止剤自身の分解によるガス焼けが抑制され、成形品外観が向上する。
【0063】
次に、本発明の成形材料について説明する。
本発明の成形材料は窒素下および空気下での300℃で10分加熱した際の熱減量がともに1.5%以下である。窒素下での熱減量が1.5%を超えると成形の樹脂溶融時に発生するガス量が増加するため、成形での加圧時にガス圧縮による温度上昇が顕著になり、ガス焼けによる外観不良が起こりやすくなる。1.3%以下がより好ましく、1.1%以下がさらに好ましい。また、空気下での熱減量が1.5%を超えると成形工程での加圧時にガスの圧縮により局所的に加熱された端部、ウエルド部などで酸化分解が起こりやすくなるため、ガス焼けによる外観不良が起こりやすくなる。1.3%以下がより好ましく、1.1%以下がさらに好ましい。さらに窒素下および空気下での熱減量がともに少ないことで相乗的にガス焼けを抑制することができる。
【0064】
本発明において「熱減量」とは、成形材料の重量を100%とし、前記加熱条件における加熱後の成形材料の重量減量率を表し、下記式により求めることができる。
(熱減量)[重量%]={(加熱前重量-加熱後重量)/加熱前重量}×100
【0065】
また、本発明の成形材料は、特に水分率が0.02%以下であることが好ましい。成形の樹脂溶融時には成形材料成分の熱分解と加水分解が起こりやすく、水分率が0.02%以下であると、とくに難燃剤の加水分解が抑制され、ガス焼けによる外観不良が抑制されるため好ましい。この水分率としては、0.01%以下がより好ましい。成形材料に含まれる水分率は高温下における乾燥により制御することができる。乾燥温度は成形材料のガラス転移温度からガラス転移温度+20℃が好ましい。乾燥時間は4時間以上が好ましい。また成形材料の水分率はカールフィッシャー法を用いて測定することができる。
【0066】
本発明の成形材料は、ガラス転移温度が100℃以下であることが好ましい。100℃以下であると、成形温度での流動性が向上するため好ましい。90℃以下がより好ましく、80℃以下がさらに好ましい。ガラス転移温度は、成形材料をJIS K7121に従い、示差走査熱量計(DSC)により、昇温速度20℃/分の条件で測定することができる。
【0067】
本発明の成形材料においては、強化繊維に(とくに、強化繊維束に)、(E)樹脂が含浸されていることが好ましい。ここで、「強化繊維に樹脂が含浸されている」とは、とくに(B)強化繊維の束内に(E)樹脂が含浸された状態を表す。
【0068】
(E)樹脂は、溶融粘度が(A)非晶性熱可塑性樹脂よりも低い樹脂である。(E)樹脂は、(B)強化繊維とともに含浸強化繊維束を形成し、成形時に(A)非晶性熱可塑性樹脂を(B)強化繊維に含浸させることを助け、また、(B)強化繊維が(A)非晶性熱可塑性樹脂中に分散することを助ける、いわゆる含浸助剤かつ分散助剤としての役割を持つ。
【0069】
(E)樹脂の200℃における溶融粘度は、0.01~10Pa・sが好ましい。200℃における溶融粘度が0.01Pa・s以上であれば、(E)樹脂を起点とする破壊をより抑制し、成形品の衝撃強度をより向上させることができる。溶融粘度は、0.05Pa・s以上がより好ましく、0.1Pa・s以上がさらに好ましい。一方、200℃における溶融粘度が10Pa・s以下であれば、(E)樹脂を(B)強化繊維の内部まで含浸させやすい。このため、成形材料を成形する際、(B)強化繊維の分散性をより向上させることができる。溶融粘度は、5Pa・s以下がより好ましく、2Pa・s以下がさらに好ましい。ここで、(E)樹脂の200℃における溶融粘度は、40mmのパラレルプレートを用いて、0.5Hzにて、粘弾性測定器により測定することができる。
【0070】
(E)樹脂としては、(A)非晶性熱可塑性樹脂と親和性の高いものが好ましい。(A)非晶性熱可塑性樹脂との親和性が高い(E)樹脂を選択することによって、成形材料の製造時や成形時に、(A)非晶性熱可塑性樹脂と効率よく相溶するため、(B)強化繊維の分散性をより向上させることができる。
【0071】
(E)樹脂は、マトリックス樹脂である(A)非晶性熱可塑性樹脂との組み合わせに応じて適宜選択される。例えば、成形温度が150~270℃の範囲であればテルペン樹脂が好適に用いられ、成形温度が270~320℃の範囲であれば、エポキシ樹脂が好適に用いられる。
【0072】
(E)樹脂はカルボキシル基、水酸基、エポキシ基を有することが好ましい。これらの官能基を有することで強化繊維表面のサイジング剤および(A)非晶性熱可塑性樹脂と相互作用するため、接着性が向上し、成形品の力学特性が向上する。接着性を向上させるためには、反応性の高いエポキシ樹脂が好ましい。
【0073】
また、(E)樹脂は、20℃/分昇温(空気中)条件で測定した成形温度における加熱減量が5重量%以下であることが好ましい。かかる加熱減量が5重量%以下であれば、成形時の分解ガスの発生を抑制し、ガス焼けを抑制することができる。より好ましくは3重量%以下である。
【0074】
なお、ここで言う「加熱減量」とは、加熱前の(E)樹脂の重量を100%とし、前記加熱条件における加熱後の(E)樹脂の重量減量率を表し、下記式により求めることができる。
(加熱減量)[重量%]={(加熱前重量-加熱後重量)/加熱前重量}×100
【0075】
また、本発明の成形材料は含浸された強化繊維(樹脂含浸強化繊維)が(A)非晶性熱可塑性樹脂によって被覆された構造を有することが好ましい。また「被覆された構造」とは、樹脂含浸強化繊維の表面に(A)非晶性熱可塑性樹脂が配置されて、(E)樹脂と接着している構造を指す。
【0076】
図1および図2は、本発明の成形材料の軸垂直方向(例えば、ペレット軸と垂直な方向)の断面形態の例を模式的に表したものである。なお、本発明において、軸垂直方向とは、軸心方向に直交する面での断面を意味する。図1に示されるように、(B)強化繊維および(E)樹脂を有する複合繊繊束(1)を芯構造として、その周囲を(A)非晶性熱可塑性樹脂(2)が被覆するような芯鞘構造に配置されている構成が好ましい。また、図2に示されるような複数の複合繊維束(1)を(A)非晶性熱可塑性樹脂(2)が被覆するように配置することもでき、この場合、複合繊維束(1)の数は2~6程度が望ましい。
【0077】
図3は、本発明の成形材料の好ましい軸平行方向(例えば、ペレット軸と平行な方向)の断面形態の一例を示す概略図である。本発明の成形材料は、図3に示すように、(B)強化繊維が成形材料の軸心方向にほぼ平行に配列され、かつ(B)強化繊維の長さは成形材料の長さと実質的に同じ長さであることが好ましい。
【0078】
ここで言う、「ほぼ平行に配列されている」とは、(B)強化繊維の長軸の軸線と、成形材料の長軸の軸線とが、同方向を指向している状態を示し、軸線同士の角度のずれが、好ましくは20°以下であり、より好ましくは10°以下であり、さらに好ましくは5°以下である。また、「実質的に同じ長さ」とは、例えばペレット状の成形材料において、ペレット内部の途中で(B)強化繊維が切断されていたり、ペレット全長よりも有意に短い(B)強化繊維が実質的に含まれたりしないことである。特に、そのペレット全長よりも短い(B)強化繊維の量について規定されているわけではないが、ペレット全長の50%以下の長さの(B)強化繊維の含有量が30重量部以下である場合には、ペレット全長よりも有意に短い(B)強化繊維が実質的に含まれていないと評価する。さらに、ペレット全長の50%以下の長さの(B)強化繊維の含有量は20重量部以下であることが好ましい。なお、ペレット全長とはペレット中の強化繊維配向方向の長さである。(B)強化繊維が成形材料と同等の長さを持つことで、成形品中の強化繊維長を長くすることが出来るため、優れた力学特性を得ることができる。
【0079】
また、強化繊維束と(A)非晶性熱可塑性樹脂の境界は接着され、境界付近で部分的に(A)非晶性熱可塑性樹脂が複合体の一部に入り込み、複合体を構成する(E)樹脂と相溶しているような状態、あるいは強化繊維に含浸しているような状態になっていてもよい。
【0080】
本発明の成形材料は、例えば射出成形により混練されて最終的な成形品となる。成形材料の取扱性の点から、強化繊維束と(A)非晶性熱可塑性樹脂は成形が行われるまでは接着されたまま分離せず、前述のような形状を保っていることが好ましい。そうでないと、強化繊維束と(A)非晶性熱可塑性樹脂では、形状(サイズ、アスペクト比)、比重、重量が全く異なるため、成形までの材料の運搬、取り扱い時、成形工程での材料移送時に分級し、成形品としたときの成形品の力学特性にバラツキを生じたり、成形加工の際の成形材料の流動性が低下して金型詰まりを起こしたり、成形工程でブロッキングする場合がある。
【0081】
かかる観点から、前記したような、図1に例示されるような芯鞘構造に配置されている構成が好ましい。このような配置であれば、(A)非晶性熱可塑性樹脂が強化繊維束を拘束し、より強固な複合化ができる。
【0082】
本発明の成形材料における(E)樹脂の含有量は、(A)非晶性熱可塑性樹脂100重量部に対して、0.1重量部以上、20重量部以下であることが好ましく、より好ましくは、3重量部以上、10重量部以下である。かかる範囲とすることで、成形材料を成形する際、(B)強化繊維の分散性をより向上させることができる。含浸樹脂の含有量が0.1重量部未満では(B)強化繊維への含浸が不十分となり、(B)強化繊維の分散性が不十分のため力学特性が低下する場合があり好ましくない。一方で、20重量部を超えると成形材料中の低粘度成分が相対的に多くなるため、マトリックス樹脂の物性が低下し、その結果、成形材料を成形して得られる成形品の力学特性が低下するため好ましくないことがある。
【0083】
次に、本発明の成形材料の製造方法について説明する。
ここで、本発明の成形材料としては、(B)強化繊維に(E)樹脂が含浸した繊維束を(A)非晶性熱可塑性樹脂で被覆した成形材料を1~50mmの長さでカットした成形材料が好ましい。この長さに調製することにより、成形加工の際の流動性、取扱性を十分に高めることができる。このように適切な長さに切断されてなる成形材料としてとりわけ好ましい態様は、射出成形用の長繊維ペレットが例示できる。
【0084】
ここで、繊維束の製造方法は、(B)強化繊維に(E)樹脂を供給し、(E)樹脂を100~300℃の溶融状態で(B)強化繊維と接触させる工程(I)と、(E)樹脂と接触している(B)強化繊維を加熱して(E)樹脂を(B)強化繊維に含浸させる工程(II)を有する方法である。
【0085】
工程(I)としては、特に限定されないが、繊維束に油剤、サイジング剤、マトリックス樹脂を付与するような公知の方法を用いることができ、中でも、ディッピング、もしくは、コーティングが好ましく、具体的なコーティングとしては、リバースロール、正回転ロール、キスロール、スプレイ、カーテンが好ましく用いられる。
【0086】
ここで、ディッピングとは、ポンプにて(E)樹脂を溶融バスに供給し、該溶融バス内で(B)強化繊維を通過させる方法をいう。(B)強化繊維を(E)樹脂の溶融バスに浸すことで、確実に(E)樹脂を(B)強化繊維に付着させることができる。また、リバースロール、正回転ロール、キスロールとは、ポンプで溶融させた(E)樹脂をロールに供給し、(B)強化繊維に(E)樹脂の溶融物を塗布する方法をいう。さらに、リバースロールは、2本のロールが互いに逆方向に回転し、ロール上に溶融した(E)樹脂を塗布する方法であり、正回転ロールは、2本のロールが同じ方向に回転し、ロール上に溶融した(E)樹脂を塗布する方法である。通常、リバースロール、正回転ロールでは、(B)強化繊維を挟み、さらにロールを設置し、(E)樹脂を確実に付着させる方法が用いられる。一方で、キスロールは、(B)強化繊維とロールが接触しているだけで、(E)樹脂を付着させる方法である。そのため、キスロールは比較的粘度の低い場合の使用が好ましいが、いずれのロールの方法を用いても、加熱溶融した(E)樹脂の所定量を塗布させ、(B)強化繊維を接着させながら走らせることで、繊維束の単位長さ当たりに所定量の(E)樹脂を付着させることができる。スプレイは、霧吹きの原理を利用したもので、溶融した(E)樹脂を霧状にして(B)強化繊維に吹き付ける方法であり、カーテンは、溶融した(E)樹脂を小孔から自然落下させ塗布する方法、または溶融槽からオーバーフローさせ塗布する方法である。塗布に必要な量を調節しやすいため、(E)樹脂の損失を少なくできる。
【0087】
また、(E)樹脂を供給する際の溶融温度としては、100~300℃が好ましい。より安定して付着させるためには、180~230℃であることが好ましい。100℃未満では、(E)樹脂の粘度が高くなり、供給する際に、付着むらが発生することがある。また、300℃を越えると、長時間にわたり製造した場合に、(E)樹脂が熱分解する可能性がある。100~300℃の溶融状態で(B)強化繊維と接触させることで、(E)樹脂を安定して供給することができる。
【0088】
次いで、工程(II)として、工程(I)で得られた、(E)樹脂と接触した状態の(B)強化繊維を、加熱して(E)樹脂を(B)強化繊維に含浸させる。具体的には、(E)樹脂と接触した状態の(B)強化繊維に対して、(E)樹脂が溶融する温度において、ロールやバーで張力をかける、拡幅、集束を繰り返す、圧力や振動を加えるなどの操作で(E)樹脂を(B)強化繊維の内部まで含浸するようにする工程である。より具体的な例として、加熱された複数のロールやバーの表面に強化繊維束を接触するように通して拡幅などを行う方法を挙げることができ、中でも、絞り口金、絞りロール、ロールプレス、ダブルベルトプレスを用いて含浸させる方法が好適に用いられる。ここで、絞り口金とは、進行方向に向かって、口金径の狭まる口金のことであり、強化繊維束を集束させながら、余分に付着した(E)樹脂を掻き取ると同時に、含浸を促す口金である。また、絞りロールとは、ローラーで強化繊維束に張力をかけることで、余分に付着した(E)樹脂を掻き取ると同時に、含浸を促すローラーのことである。また、ロールプレスは、2つのロール間の圧力で連続的に強化繊維束内部の空気を除去するのと同時に、含浸を促す装置であり、ダブルベルトプレスとは、強化繊維束の上下からベルトを介してプレスすることで、含浸を促す装置である。
【0089】
また、工程(II)において、(E)樹脂が(B)強化繊維に含浸されていることが好ましい。
【0090】
また、工程(II)において、(E)樹脂の最高温度が150~300℃であることが好ましい。好ましくは180~300℃であり、より好ましくは180℃~250℃である。150℃未満では、(E)樹脂を十分に溶融できず、含浸不足の強化繊維束になる可能性があり、400℃以上では、(E)樹脂の分解反応を起こすなどの好ましくない副反応が生じる場合がある。
【0091】
工程(II)における加熱方法としては、特に限定しないが、具体的には、加熱したチャンバーを用いる方法や、ホットローラーを用いて加熱と加圧を同時に行う方法が例示できる。
【0092】
また、(E)樹脂の架橋反応や分解反応などの好ましくない副反応の発生を抑制する観点から、非酸化性雰囲気下で加熱することが好ましい。ここで、非酸化性雰囲気とは酸素濃度が5体積%以下、好ましくは2体積%以下、さらに好ましくは酸素を含有しない雰囲気、すなわち、窒素、ヘリウム、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気であることを指し、この中でも特に経済性および取り扱いの容易さの面から、窒素雰囲気が好ましい。
【0093】
また、複合繊維束の引取速度は、工程速度に直接影響するため、経済性、生産性の観点から高いほど好ましい。具体的には、引取速度としては、10~100m/分が好ましい。より好ましくは、20~100m/分であり、さらに好ましくは30~100m/分である。引取方法としては、ニップローラーで引き出す方法や、ドラムワインダーで巻き取る方法や、直接ストランドカッターなどで、一定長に切断しながら複合繊維束を引き取る方法が挙げられる。
【0094】
さらに、本発明の成形材料は、上記のようにして得られた複合繊維束に(A)非晶性熱可塑性樹脂が接着されて構成される。複合繊維束に(A)非晶性熱可塑性樹脂を接着させる方法は特に限定されないが、より具体的には、押出機と電線被覆法用のコーティングダイを用いて、連続的に複合繊維束の周囲に(A)非晶性熱可塑性樹脂を被覆するように配置していく方法や、ロール等で扁平化した複合体の片面あるいは両面から押出機とTダイを用いて溶融したフィルム状の(A)非晶性熱可塑性樹脂を配置し、ロール等で一体化させる方法を挙げることができる。
【0095】
図4は、本発明で得られる複合繊維束(1)の軸垂直方向の形態の一例を模式的に表したものである。図4において、黒い丸(3)が(B)強化繊維の単糸を示し、白い部分(4)が(E)樹脂を示す。各単糸(3)間に、(E)樹脂(4)が満たされている。すなわち、(E)樹脂(4)の海に、(B)強化繊維の各単糸(3)が島のように分散している状態である。
【0096】
次に、本発明の繊維強化樹脂成形品(以下、単に「成形品」ということもある。)の製造方法について説明する。
【0097】
前述した本発明の成形材料を成形することにより、成形品を得ることができる。成形方法としては、特に限定しないが、射出成形、オートクレーブ成形、プレス成形、フィラメントワインディング成形、スタンピング成形などの生産性に優れた成形方法に適用でき、これらを組み合わせて用いることもできる。また、インサート成形、アウトサート成形などの一体化成形も容易に実施できる。さらに、成形後にも加熱による矯正処置や、熱溶着、振動溶着、超音波溶着などの生産性に優れた接着工法を活用することもできる。
【0098】
これらの中でも、金型を用いた成形方法が好ましく、特に射出成形機を用いた成形方法により、連続的に安定した成形品を得ることができる。射出成形の条件としては、特に規定はないが、例えば射出時間:0.5秒~10秒、より好ましくは2秒~10秒、背圧力:0.1MPa~10MPa、より好ましくは2MPa~8MPa、保圧力:1MPa~50MPa、より好ましくは1MPa~30MPa、保圧時間:1秒~20秒、より好ましくは5秒~20秒、シリンダー温度:250℃~320℃、金型温度:20℃~100℃の条件が好ましい。ここで、シリンダー温度とは、射出成形機の成形材料を加熱溶融する部分の温度を示し、金型温度とは、所定の形状にするための樹脂を注入する金型の温度を示す。これらの条件、特に射出時間、背圧力および金型温度を適宜選択することにより、成形品中の強化繊維の繊維長を容易に調整することができる。シリンダー温度は、250℃以上が好ましい。250℃以上であると自動車外装部材のような大型成形の際に成形材料の流動性が増加し、短時間で成形が可能になり、かつ端部まで成形材料が行き届くため好ましい。
【0099】
本発明の成形品の製造方法は、成形前に成形材料を乾燥させる工程を経ることが好ましい。乾燥温度はガラス転移温度からガラス転移温度+20℃の範囲の温度が好ましい。ガラス転移温度以上であると分子鎖中から水分が抜けやすく、成形材料の水分率が低下するため、成形時のガス焼けを抑制できるため,好ましい。また、ガラス転移温度+20℃以下であると成形材料同士の熱融着を抑制できるため、好ましい。乾燥時間は4時間以上が好ましい。4時間以上であると成形材料の水分率が低下するため、成形時のガス焼けを抑制できるため,好ましい。また、上限は特にないが24時間以上で水分率は一定となり、効果が小さくなることがある。このように、成形品の製造に供される本発明の成形材料としては、特に水分率が前述したように0.02%以下とされていることが好ましく、それによって特に成形時のガス焼けを抑制できる。
【0100】
上記成形方法により得られる成形品としては、例えば、インストルメントパネル、ドアビーム、アンダーカバー、ランプハウジング、ペダルハウジング、ラジエータサポート、スペアタイヤカバー、フロントエンドなどの各種モジュール、シリンダーヘッドカバー、ベアリングリテーナ、インテークマニホールド、ペダル等の自動車部品、部材および外板;ランディングギアポッド、ウィングレット、スポイラー、エッジ、ラダー、フェアリング、リブなどの航空機関連部品、部材および外板;モンキー、レンチ等の工具類;さらに電話、ファクシミリ、VTR、コピー機、テレビ、電子レンジ、音響機器、トイレタリー用品、レーザーディスク(登録商標)、冷蔵庫、エアコンなどの家庭・事務電気製品部品が挙げられる。またパーソナルコンピューター、携帯電話などに使用されるような筐体や、パーソナルコンピューターの内部でキーボードを支持する部材であるキーボード支持体に代表されるような電気・電子機器用部材も挙げられる。本発明において、(B)強化繊維として、導電性を有する炭素繊維を使用した場合、このような電気・電子機器用部材では、電磁波シールド性が付与されるためにより好ましい。
【0101】
また、本発明の成形品は、特に、充電器カバーやバッテリーACアダプターケース、コンデンサーケース、電力メーター、ドアパーツなどの自動車外装大型成形品としても好適に用いられる。
【実施例
【0102】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の記載に限定されるものではない。まず、本実施例および比較例で用いる各種特性の評価方法について説明する。
【0103】
(1)熱減量測定
成形材料または難燃剤の窒素下または空気下における熱減量は熱重量分析(TGA)にて測定した。白金サンプルパンを用いて、20ml/minの窒素または空気を測定室に流しながら、50℃/分の速度で300℃まで昇温した後、10分間保持した後の熱減量を測定した。試験機として、TG/DTA7200(日立ハイテクサイエンス社製)を用いた。
【0104】
(2)成形品の曲げ強度測定
各実施例および比較例により得られたISO型ダンベル試験片について、ISO 178に準拠し、3点曲げ試験冶具(圧子半径5mm)を用いて支点距離を64mmに設定し、試験速度2mm/分の試験条件にて曲げ強度を測定した。試験機として、“インストロン(登録商標)”万能試験機5566型(インストロン社製)を用いた。
【0105】
(3)成形品のシャルピー衝撃強度測定
各実施例および比較例により得られたJIS K7139に記載のタイプA1の多目的試験片の平行部を切り出し、株式会社東京試験機製C1-4-01型試験機を用い、ISO179に準拠してVノッチ付きシャルピー衝撃試験を実施し、衝撃強度(kJ/m)を算出した。
【0106】
(4)成形材料の水分率測定
平沼産業(株)社製のカールフィッシャー測定装置(気化装置:SE-24型、電解槽:AQ-6型)を用い測定した。試料は3gとし、水分気化に用いる窒素は、220℃、200ml/minとした。
【0107】
(5)成形材料のガラス転移温度
ガラス転移温度は、成形材料10±2mgをJIS K7121に従い、示差走査熱量計(DSC)により、昇温速度20℃/分で測定した。
【0108】
(6)ガス焼けの評価
ダンベル試験片の端部はガスが抜けにくいため、ガス焼けが起こりやすい。このため、成形品外観のモデル評価として、JIS K7139に記載のタイプA1のダンベル型多目的試験片を20本連続で成形し、そのうち、端部に2mm以上の変色箇所が見られたダンベル片の割合を測定した。成形条件は後述の各実施例および比較例に記載の方法で行った。
【0109】
(7)難燃性
125mm×13mm(0.5mmt[厚さ])の成形品(試験片)を成形し、UL-94に準拠して難燃性評価を実施した。具体的には、垂直に支持した上記試験片の下端にバーナー炎をあてて10秒間保ち、その後バーナー炎を試験片から離した。炎が消えた後、再びバーナー炎をあて、同様の操作を行った。そして、1回目の接炎終了後の有炎燃焼持続時間、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計、ならびに燃焼落下物の有無により判定を行った。UL94における各等級の基準は概略下記の通りである。
V-0:1回目、2回目の有炎燃焼持続時間が各10秒以内、5本の試験片の1、2回目の有炎燃焼持続時間の合計が50秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒以内であり、燃焼落下物がなかった。
V-1:1回目、2回目の有炎燃焼持続時間が各10秒超30秒以内、5本の試験片の1、2回目の有炎燃焼持続時間の合計が250秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒超60秒以内であり、燃焼落下物がなかった。
V-2:1回目、2回目の有炎燃焼持続時間が各10秒超30秒以内、5本の試験片の1、2回目の有炎燃焼持続時間の合計が250秒以内、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が30秒超60秒以内であり、燃焼落下物があった。
V-out:1回目の有炎燃焼持続時間が30秒超、または、2回目の有炎燃焼持続時間と無炎燃焼持続時間の合計が60秒超であった。
【0110】
(8)流動性試験
幅13mm、厚み0.5mmにて長手方向に延びるキャビティを有する金型を用いて、射出速度を一定として次の条件で金型キャビティの長手方向に射出成形を行い、キャビティ内で射出樹脂が到達できた流動距離に相当する長さの評価用試験片を成形した。試験片の先端(最も長い部分)までの長さを測定し、5本の試験片の長さの平均を流動長とした。流動性の良好な成形材料は、金型内に短時間で充填されるため、冷却され固化するまでに流動する距離が長くなることから、以下のC、B、Aの順に流動性が向上する。
A:最大長100mm以上
B:最大長80mm以上100mm未満
C:最大長60mm以上80mm未満
[射出成形の条件]
シリンダー温度/金型温度:300℃/70℃
射出速度:30mm/s
【0111】
(9)成形収縮率の測定
80mm×80mm(2mmt[厚さ])の成形品を成形し、樹脂試験片の樹脂の流れ方向(MD方向)と、樹脂の流れ方向と直角方向(TD方向)の各標線間距離を測定した。金型に刻印された標線間距離に対する収縮率を測定した。また測定値はMD方向とTD方向における収縮率の平均値とした。以下のD、C、B、Aの順に成形収縮率は良好になる。
A:0.2%未満
B:0.2%以上0.3%未満
C:0.3%以上0.5%未満
D:0.5%以上
[成形の条件]
シリンダー温度/金型温度:300℃/70℃
冷却時間:20s(金型による冷却時間)
保圧:射出ピーク圧の半分
【0112】
次に、実施例、比較例で用いた各成分について説明する。
(A)非晶性熱可塑性樹脂
(A-1)帝人化成(株)製 ビスフェノールAの炭酸エステル構造を有する芳香族ポリカーボネート樹脂“パンライト(登録商標)L-1225L”(粘度平均分子量:19,500、ガラス転移温度:145℃)を使用した。
【0113】
(B)強化繊維
(B-1)および(B-2)は後述の参考例1の製造方法により炭素繊維を製造した。
(B-1)グリセロールポリグリシジルエーテル(脂肪族エポキシ化合物:エポキシ基数3)を付与した炭素繊維
(B-2)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(芳香族エポキシ化合物:エポキシ基数2、ジャパンエポキシレジン(株)製jER828)を付与した炭素繊維
(B-3)ガラス繊維(日本電気硝子(株)製jER2400 T-423N)
【0114】
(C)リン系難燃剤
(C-1)大八化学工業(株)製 縮合リン酸エステル系難燃剤”PX-200”(リン濃度9%、空気下・300℃・10分の熱減量7%)
(C-2)大八化学工業(株)製 縮合リン酸エステル系難燃剤”CR-741”(リン濃度9%、空気下・300℃・10分の熱減量12%)
(C-3)大八化学工業(株)製 縮合リン酸エステル系難燃剤”SR-3000”(リン濃度7%、空気下・300℃・10分の熱減量3%)
(C-4)日産化学(株)製 ポリリン酸メラム・メラミン”PHOSMEL(登録商標)100”
【0115】
(D)酸化防止剤
(D-1)ヒンダードフェノール BASFジャパン(株)製 ”イルガノックス(登録商標)1010”
(D-2)チオエーテル (株)アデカ製 ”アデカスタブ(登録商標)AO-412S”
(D-3)(D-1)/(D-2)の1/1の混合物
(D-4)(D-1)/(D-2)の2/1の混合物
【0116】
(E)樹脂
(E-1)三菱化学(株)製 ビスフェノールA型エポキシ樹脂”jER1003”(溶融粘度:0.5Pa・s、加熱減量率:2%)
(E-2)三菱化学(株)製 ビスフェノールA型エポキシ樹脂”jER1004AF”(溶融粘度:1Pa・s、加熱減量率:1%)
(E-3)ヤスハラケミカル(株)製 水添テルペン重合体”クリアロンP125”(溶融粘度:400Pa・s、加熱減量率:18%)を用いた。
【0117】
(参考例1)炭素繊維の作製
ポリアクリロニトリルを主成分とする共重合体から紡糸、焼成処理、電解酸化処理を行い、総単糸数24,000本、単糸径7μm、単位長さ当たりの質量1.6g/m、比重1.8g/cmの連続炭素繊維を得た。この連続炭素繊維のストランド引張強度は4,880MPa、ストランド引張弾性率は225GPaであった。表面酸素濃度比(O/C)は電解酸化処理における電流密度により制御し、O/C=0.10であった。
【0118】
サイジング剤として、エポキシ樹脂を水に溶解、または界面活性剤を用いて分散させたサイジング剤母液を調製し、浸漬法により前述の炭素繊維にサイジング剤を付与し、220℃で乾燥を行った。サイジング剤の付着量は母液の濃度を調整することにより炭素繊維100重量部に対して1.0重量部に制御した。
【0119】
(参考例2)樹脂含浸強化繊維の作製
塗布温度に加熱されたロール上に、(E)樹脂を加熱溶融した液体の被膜を形成させた。ロール上に一定した厚みの被膜を形成するためリバースロールを用いた。このロール上を連続した(B)強化繊維を接触させながら通過させて(E)樹脂を付着させた。次に、含浸温度に加熱されたチャンバー内にて、5組の直径50mmのロールプレス間を通過させた。この操作により、(E)樹脂を強化繊維束の内部まで含浸させ、所定の配合量とした樹脂含浸強化繊維を形成した。
【0120】
(参考例3)樹脂組成物の作製
JSW製TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、ダイス直径5mm、バレル温度290℃、スクリュー回転数150rpm)を使用し、(A)非晶性熱可塑性樹脂と(B)強化繊維および/または(C)リン系難燃剤および/または(D)酸化防止剤をドライブレンドしたものをメインホッパーから供給し、下流の真空ベントより脱気を行いながら、溶融樹脂をダイス口から吐出し、得られたストランドを冷却後、カッターで切断して樹脂組成物の溶融混練ペレットを得た。
【0121】
実施例1
(工程X)(A-1)、(C-1)および(D-1)を表1に記載の処方でドライブレンドしたものを用いて、参考例3に従い、樹脂組成物を得た。
【0122】
(工程Y)樹脂含浸強化繊維(B-1)を日本製鋼所(株)TEX-30α型2軸押出機(スクリュー直径30mm、L/D=32)の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、押出機から上記樹脂組成物を溶融した状態でダイ内に吐出させ、樹脂含浸強化繊維の周囲を被覆するように連続的に配置した。ここで、樹脂含浸強化繊維の周囲を樹脂組成物で被覆する工程において、樹脂含浸強化繊維の樹脂成形材料中の配合量、および成形品中の強化繊維の重量含有率が表1に示した所定の値となるように上記(A)非晶性熱可塑性樹脂の吐出量を調整した。得られた連続状の成形材料を冷却後、カッターで切断して、7mmの長繊維ペレット状の成形材料を得た。
【0123】
(工程Z)得られた長繊維ペレット状の成形材料を、80℃、常圧下で4時間、熱風乾燥させた後、住友重機械工業社製SE75DUZ-C250型射出成形機を用いて、射出時間:10秒、保圧力:成形下限圧+10MPa、保圧時間:10秒、シリンダー温度:300℃、金型温度:70℃で特性評価用試験片(成形品)を成形した。
【0124】
得られた試験片は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。次に、得られた特性評価用試験片(成形品)を前述の評価方法に従い評価した。評価結果をまとめて表1に示した。
【0125】
実施例2
(工程X)実施例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
(工程Y)実施例1と同様の方法で成形材料を得た。
(工程Z)得られた長繊維ペレット状の成形材料を、乾燥条件を80℃、減圧下で24時間、真空乾燥させた以外は実施例1と同様の方法で成形品を得た。評価結果をまとめて表1に示した。
【0126】
比較例1
(工程X)(D-1)を除いた以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
(工程Y)実施例1と同様の方法で成形材料を得た。
(工程Z)実施例1と同様の方法で成形品を得た。評価結果をまとめて表1に示した。
【0127】
比較例2
(工程X)実施例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
(工程Y)実施例1と同様の方法で成形材料を得た。
(工程Z)工程Yで得られた長繊維ペレット状の成形材料を、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後、住友重機械工業社製SE75DUZ-C250型射出成形機を用いて、射出時間:10秒、保圧力:成形下限圧+10MPa、保圧時間:10秒、シリンダー温度:300℃、金型温度:80℃で特性評価用試験片(成形品)を成形した。評価結果をまとめて表1に示した。
【0128】
比較例3
(工程X)比較例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
(工程Y)実施例1と同様の方法で成形材料を得た。
(工程Z)比較例2と同様の方法で成形材料を得た。評価結果をまとめて表1に示した。
【0129】
実施例3~16,18~20、比較例4、比較例6~12
(工程X)表1~3に記載の原料組成に変更した以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
(工程Y)表1~3に記載の原料組成に変更した以外は実施例1と同様の方法で成形材料を得た。
(工程Z)実施例1と同様の方法で成形品を得た。
評価結果をまとめて表1~3に示した。
【0130】
比較例5
(工程X)表1に記載の原料組成に変更した以外は実施例1と同様の方法で樹脂組成物を得た。
(工程Y)(B-1)を(A-1)100重量部に対して80重量部に調整して成形材料を得ようとしたところ、樹脂含浸強化繊維への(A-1)を被覆が不十分であり、カッター切断時に切断不良が起こり、成形材料を得ることができなかった。
【0131】
一方、比較例1~4、7~12は窒素下または空気下での熱減量が多く、成形時にヤケが確認された。比較例5は強化繊維の配合量が多く、成形加工の際に金型詰まりを起こし、成形できなかった。比較例6はリン系難燃剤を用いておらず、難燃性が不十分であった。
【0132】
実施例17
(工程X)(A-1)、(C-1)および(D-1)を表2に記載の処方でドライブレンドしたものと(B-1)の3mmチョップド繊維を用いて、参考例3に従い、樹脂組成物を得た。この際の樹脂組成物に含まれる(B-1)の平均繊維長は0.3mmであった。
(工程Y)省略した。
(工程Z)(工程X)で得られた樹脂組成物を成形材料として、80℃、常圧下で4時間、熱風乾燥させた後、住友重機械工業社製SE75DUZ-C250型射出成形機を用いて、射出時間:10秒、保圧力:成形下限圧+10MPa、保圧時間:10秒、シリンダー温度:300℃、金型温度:70℃で特性評価用試験片(成形品)を成形した。
【0133】
得られた試験片は、温度23℃、50%RHに調整された恒温恒湿室に24時間放置後に特性評価試験に供した。次に、得られた特性評価用試験片(成形品)を前述の評価方法に従い評価した。評価結果をまとめて表2に示した。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
実施例1~20のいずれの成形材料も(A)非晶性熱可塑性樹脂を含み、(A)非晶性熱可塑性樹脂100重量部に対して(B)強化繊維4~60重量部、(C)リン系難燃剤20~60重量部を含み、かつ窒素下および空気下での300℃で10分加熱した際の熱減量が1.5%以下であるため、成形品は優れた難燃性、成形品外観、流動性、成形収縮率、力学物性を発現した。
【産業上の利用可能性】
【0138】
本発明の繊維強化樹脂成形材料は、優れた難燃性、力学特性、外観等が求められるあらゆる成形品の製造に適用できる。
【符号の説明】
【0139】
1:(B)強化繊維と(E)樹脂からなる複合繊維束
2:(A)非晶性熱可塑性樹脂
3:(B)強化繊維の単糸
4:(E)樹脂
図1
図2
図3
図4