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特許7556295情報処理装置、情報処理システム及び帯域制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム及び帯域制御方法
(51)【国際特許分類】
   H04L 47/10 20220101AFI20240918BHJP
   H04L 12/28 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
H04L47/10
H04L12/28 200B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021002413
(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公開番号】P2022107451
(43)【公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白木 長武
【審査官】長谷川 未貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-041858(JP,A)
【文献】国際公開第2016/003840(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0333994(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0094413(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 41/00-101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のテナントそれぞれについて複数のワークロードを備える情報処理装置であって、
他の情報処理装置におけるテナントごとの使用帯域情報を取得する取得部と、
自装置で処理するワークロードに分配する帯域を前記取得部により取得された使用帯域情報に基づいて計算する計算部と、
前記計算部により計算された帯域を設定する設定部と
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記取得部は、他の情報処理装置とテナントごとの使用帯域情報を交換することで他の情報処理装置におけるテナントごとの使用帯域情報を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記取得部は、他の情報処理装置とテナントごとの使用帯域情報を、前記複数の情報処理装置が共通にアクセスできる記憶領域を介して交換することで他の情報処理装置におけるテナントごとの使用帯域情報を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記計算部は、前記複数の情報処理装置を含む情報処理システムにおいて各テナントに分配される帯域の割合に基づいて、自装置で処理するワークロードに分配する帯域を計算することを特徴とする請求項1、2又は3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
帯域を設定するワークロードを決定する決定部をさらに有し、
前記設定部は、前記決定部により決定されたワークロードについて前記計算部により計算された帯域を設定する
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記決定部は、自装置で処理するワークロードの数が帯域の設定可能数を超える場合には、ワークロードで用いられるポートについて、帯域の使用情報から帯域の設定情報を引いた差分に応じて、ポートに対応するワークロードを帯域制御対象として決定する
ことを特徴とする請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
複数のテナントそれぞれについて複数のワークロードを複数の情報処理装置を用いて処理する情報処理システムにおいて、
各情報処理装置は、
他の情報処理装置におけるテナントごとの使用帯域情報を取得する取得部と、
自装置で処理するワークロードに分配する帯域を前記取得部により取得された使用帯域情報に基づいて計算する計算部と、
前記計算部により計算された帯域を設定する設定部と
を有することを特徴とする情報処理システム。
【請求項8】
複数のテナントそれぞれについて複数のワークロードを複数の情報処理装置を用いて処理する情報処理システムにおける帯域制御方法であって、
各情報処理装置は、
他の情報処理装置におけるテナントごとの使用帯域情報を取得し、
自装置で処理するワークロードに分配する帯域を、取得した使用帯域情報に基づいて計算し、
該計算した帯域を設定する
処理を実行することを特徴とする帯域制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理システム及び帯域制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数のテナントそれぞれについて複数のアプリケーションが、複数のノードを含む情報処理システムを共有して実行されるようになった。ここで、ノードは、情報処理を行う情報処理装置である。このような情報処理システムでは、各ノードで複数のワークロードが実行される。ここで、ワークロードは、ミドルウェアなどを含めたアプリケーションの実行イメージである。
【0003】
特に、コンテナによりアプリケーションを実行する場合、VM(Virtual Machine)上でアプリケーションを実行する場合と比較して、多く(100のオーダー)のワークロードが1つのノードで実行される。ここで、コンテナは、他のユーザーから隔離されたアプリケーション実行環境であることはVMと同様であるが、OS(Operating System)を有さないことがVMと異なる。すなわち、1つのOS上で複数のコンテナが実行される。
【0004】
なお、帯域制御に関する従来技術として、仮想環境において帯域確保サービス及び帯域分配サービスを実現する帯域制御を行う帯域制御システムがある。この帯域制御システムは、ホストサーバで利用可能な帯域から、一定の帯域を確保する帯域確保サービスを利用する仮想マシンに対して一定の帯域を優先して割り当てる。そして、この帯域制御システムは、利用可能な帯域から帯域確保サービスが実際に利用している帯域を除いた帯域を分配する帯域分配サービスを利用する仮想マシンに割り当てる帯域を、ホストサーバの通信による負荷状況に応じて調整する。
【0005】
また、帯域制御に関する従来技術として、複数のセッションを収容する複数の通信装置と、複数の通信装置の各々と接続する帯域制御サーバと、を備え、帯域利用率を向上させるネットワークシステムがある。このネットワークシステムでは、帯域制御サーバは、メモリ、及び、ネットワークインターフェースを備え、複数のセッションの各々に最低限割り当てられるべき最低帯域を算出するための情報を含む通信品質情報を、メモリに有する。そして、帯域制御サーバは、複数の通信装置の各々から、収容するセッションに関するセッション情報を、ネットワークインターフェースを介して受信し、受信したセッション情報と、通信品質情報とに基づいて、複数のセッションの各々に、最低帯域を割り当てる。そして、帯域制御サーバは、割り当てた最低帯域の各々を、複数の通信装置の各々に通知する。
【0006】
また、従来技術として、設定されたQoSポリシにしたがって各ノードにおけるポリシの運用状況を監視することができ、ポリシの運用自体を保証するネットワーク管理システムがある。このネットワーク管理システムでは、管理者端末を介し設定されたネットワーク内の複数のノードに対するQoSポリシを、ポリシサーバがそれぞれ固有のポリシIDを付与しポリシ情報として一元管理する。そして、ポリシサーバは、QoSポリシを、ノード情報を参照して、ポリシサーバに付与されているポリシサーバKEYとともに各ノードに対して設定する。各ノードは、QoSパラメータ管理テーブルに設定されたQoSポリシで指定されるフローを識別し、ポリシIDごとにQoSレポート管理テーブルに帯域監視情報を収集する。そして、各ノードは、一定時間T1ごとにポリシIDとポリシサーバKEYが含まれる帯域監視データをポリシサーバに送信する。ポリシサーバでは、帯域レポート処理部により一定時間T2ごとに、各ノードからの帯域監視データについて帯域分析とアラーム分析とが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-41858号公報
【文献】特開2014-116775号公報
【文献】特開2001-237831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
複数のテナントそれぞれについて複数のアプリケーションが複数のノードを含む情報処理システムを共有して実行される場合、情報処理システム全体として通信リソースの割り当てがテナント間で公平でないという問題がある。
【0009】
図21は、通信リソースの割り当てがテナント間で公平でないことを説明するための図である。図21において、情報処理システムは、ノードとノードを有する。また、Wtiはテナントtのノードiにおけるワークロードであり、RtiはWtiの生成するトラフィックのレートであり、Cはスイッチポートjの帯域幅である。
【0010】
また、RをRtiのiに関する総和(Rt=Σiti)とし、図示しないLをテナントtに与えられる帯域の割合とする。また、R1:R2=L1:L2の状態を「公平」とする。そして、帯域が不足した場合、例えばR11+R21>Cのとき、R1:R2=L1:L2と帯域制限するとする。また、このときC>R12+R22となっており、C側は帯域制限がかからないとする。
【0011】
ローカルノード内の情報のみで帯域を制御する場合、制御後の帯域r11、r21は以下のようになる。
11=L/(L+L)、r21=L/(L+L
【0012】
しかし、この帯域制御には、リモートノード(ノード)の状態(R12、R22)が反映されておらず、情報処理システム全体としてテナント間の帯域の割り当てが不公平な場合がある。例えば、R12が他のトラフィックと比較して非常に大きい場合、R1:R2=(R11+R12):(R21+R22)なので、テナント間の帯域の割り当てが不公平となる。
【0013】
本発明は、1つの側面では、情報処理システム全体としてテナント間で公平になるように帯域を制御することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
1つの態様では、情報処理装置は、複数のテナントそれぞれについて複数のワークロードを備える情報処理装置であって、他の情報処理装置におけるテナントごとの使用帯域情報を取得する取得部と、自装置で処理するワークロードに分配する帯域を前記取得部により取得された使用帯域情報に基づいて計算する計算部と、前記計算部により計算された帯域を設定する設定部と、を有する。
【発明の効果】
【0015】
1つの側面では、本発明は、情報処理システム全体としてテナント間で公平になるように帯域を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、実施例1に係る情報処理システムによる帯域制御を説明する図である。
図2図2は、ノードのハードウェア構成を示す図である。
図3図3は、実施例1に係るエージェントの機能構成を示す図である。
図4図4は、利用状況テーブルの一例を示す図である。
図5図5は、ローカルテーブルの一例を示す図である。
図6図6は、グローバルテーブルの一例を示す図である。
図7図7は、帯域設定テーブルの一例を示す図である。
図8図8は、設定情報テーブルの一例を示す図である。
図9図9は、ポート情報取得処理のフローを示すフローチャートである。
図10A図10Aは、情報交換処理のフローを示すフローチャート(1)である。
図10B図10Bは、情報交換処理のフローを示すフローチャート(2)である。
図11図11は、帯域計算処理のフローを示すフローチャートである。
図12図12は、割り当て帯域計算処理のフローを示すフローチャートである。
図13図13は、帯域初期設定処理のフローを示すフローチャートである。
図14図14は、ポート情報設定処理のフローを示すフローチャートである。
図15図15は、帯域計算の一例を示す図である。
図16図16は、実施例2に係る情報処理システムによる帯域制御を説明する図である。
図17図17は、実施例2に係るエージェントの機能構成を示す図である。
図18A図18Aは、帯域制御決定処理のフローを示すフローチャート(1)である。
図18B図18Bは、帯域制御決定処理のフローを示すフローチャート(2)である。
図19図19は、実施例3に係る情報処理システムの構成の一例を示す図である。
図20図20は、実施例4に係る情報処理システムの構成の一例を示す図である。
図21図21は、通信リソースの割り当てがテナント間で公平でないことを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本願の開示する情報処理装置、情報処理システム及び帯域制御方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施例は開示の技術を限定するものではない。
【実施例1】
【0018】
まず、実施例1に係る情報処理システムによる帯域制御について説明する。図1は、実施例1に係る情報処理システムによる帯域制御を説明する図である。図1に示すように、実施例1に係る情報処理システム1は、ノード及びノードで表される2台のノード10を有する。2台のノード10は、ネットワーク2により接続される。なお、ここでは説明の便宜上、2台のノード10のみを示したが、情報処理システム1は、3台以上のノード10を有してよい。
【0019】
ノード10は、情報処理を行う情報処理装置である。ノード10ではワークロード11が実行される。図1では、ワークロード11はW11と表される。Wtiはテナントtのノードiにおけるワークロード11であり、RtiはWtiの生成するトラフィックのレートである。なお、ワークロード11とは、例えば、コンテナ環境におけるコンテナのことをいう。
【0020】
ノード10では、仮想スイッチ12及びエージェント13が動作する。図1では、仮想スイッチ12はVSW12と表される。ワークロード11は、仮想スイッチ12の仮想ポート14を介して通信を行う。
【0021】
エージェント13は、仮想スイッチ12の統計情報を監視し、各ワークロード11の仮想ポート14における使用帯域を取得する。また、エージェント13は、他のノード10で動作するエージェント13とネットワーク2を介して情報交換を行い、他のノード10における通信状態を示す情報をテナントごとに取得する。そして、エージェント13は、各ワークロード11の仮想ポート14における使用帯域、及び、他のノード10から取得した情報に基づいて、情報処理システム1の全体においてテナント間で公平になるように自ノード10の仮想ポート14に分配する帯域を計算する。そして、エージェント13は、計算した帯域を自ノード10の仮想ポート14に設定する。
【0022】
このように、エージェント13が、他のノード10で動作するエージェント13と情報交換を行い、他のノード10と交換した情報に基づいて、情報処理システム1全体においてテナント間で公平になるように自ノード10の仮想ポート14に分配する帯域を計算する。したがって、情報処理システム1は、全体としてテナント間で公平になるように帯域を制御することができる。
【0023】
次に、ノード10のハードウェア構成について説明する。図2は、ノードのハードウェア構成を示す図である。図2に示すように、ノード10は、プロセッサ21と、RAM(Random Access Memory)22と、ディスク23と、グラフィックI/F(InterFace)24と、入力I/F25と、ストレージI/F26と、ネットワークI/F27とを有する。プロセッサ21、RAM22、ディスク23、グラフィックI/F24、入力I/F25、ストレージI/F26及びネットワークI/F27はバス28に接続される。
【0024】
プロセッサ21は、RAM22からプログラムを読み出して実行する処理装置である。RAM22は、プログラムやプログラムの実行途中結果などを記憶するメモリである。ディスク23は、プログラムやデータを格納する不揮発性記憶装置である。グラフィックI/F24は、表示装置3との接続に用いられるインタフェースである。入力I/F25は、マウス、キーボードなどの入力装置4との接続に用いられるインタフェースである。ストレージI/F26は、ポータブルストレージ5との接続に用いられるインタフェースである。ネットワークI/F27は、ネットワーク2との接続に用いられるインタフェースである。ネットワークI/F27は、仮想スイッチ12の機能を備える。
【0025】
エージェント13は、ノード10により読み出し可能な記録媒体の一例であるDVDに記憶され、DVDから読み出されてノード10にインストールされる。あるいは、エージェント13は、ネットワークI/F27を介して接続された他の情報処理システムのデータベースなどに記憶され、これらのデータベースから読み出されてノード10にインストールされる。そして、インストールされたエージェント13は、ディスク23に記憶され、RAM22に読み出されてプロセッサ21によって実行される。
【0026】
次に、エージェント13の機能構成について説明する。図3は、実施例1に係るエージェントの機能構成を示す図である。図3に示すように、エージェント13は、ポート情報取得部31と、利用状況テーブル32と、情報交換部33と、ローカルテーブル34と、グローバルテーブル35とを有する。また、エージェント13は、帯域設定テーブル36と、帯域計算部37と、設定情報テーブル38と、ポート情報設定部39とを有する。なお、情報交換部33は、取得部の一例である。また、帯域計算部37は、計算部の一例である。また、ポート情報設定部39は、設定部の一例である。
【0027】
ポート情報取得部31は、各仮想ポート14の帯域使用状況を取得して利用状況テーブル32に格納する。ポート情報取得部31は、例えば、仮想スイッチ12のポート統計情報を監視して各仮想ポート14の帯域使用状況を取得する。
【0028】
利用状況テーブル32は、各ワークロードの帯域利用状況を記憶するテーブルである。図4は、利用状況テーブルの一例を示す図である。図4に示すように、利用状況テーブル32は、ワークロードIDと利用帯域とを対応付けて記憶する。ワークロードIDは、ワークロード11を識別する識別子である。利用帯域は、ワークロード11が利用する、仮想ポート14における帯域である。例えば、ワークロードW11は帯域をB11利用する。なお、仮想ポート14とワークロード11は、設定情報テーブル38の情報に基づいて対応付けられる。
【0029】
図3に戻って、情報交換部33は、利用状況テーブル32が記憶する情報に基づいてローカルテーブル34を作成する。また、情報交換部33は、他のノード10のエージェント13とローカルテーブル34の内容を交換し、他のノード10の帯域使用状況とローカルテーブル34が記憶する情報に基づいてグローバルテーブル35を作成する。
【0030】
ローカルテーブル34は、自ノード10における帯域利用状況をテナントごとに記憶する。図5は、ローカルテーブルの一例を示す図である。図5に示すように、ローカルテーブル34は、テナントIDとローカル利用帯域を対応付けて記憶する。テナントIDは、テナントを識別する識別子である。ローカル利用帯域は、テナントが自ノード10で利用している帯域である。例えば、図4に示した利用状況テーブル32に基づいて、B=B11+B12、B=B21+B22、B=B31が計算される。
【0031】
図3に戻って、グローバルテーブル35は、情報処理システム1に含まれる各ノード10における帯域利用状況をテナントごとに記憶する。図6は、グローバルテーブルの一例を示す図である。図6に示すように、グローバルテーブル35は、テナントIDとグローバル利用帯域を対応付けて記憶する。テナントIDは、テナントを識別する識別子である。グローバル利用帯域は、テナントが情報処理システム1で利用している帯域である。グローバル利用帯域には、情報交換部33が他ノード10から受信した情報と自ノード10についてローカルテーブル34からコピーした情報がノード10ごとに記憶される。例えば、テナントTは、ノードにおいて帯域R11を使用し、ノードにおいて帯域R12を使用し、・・・、ノードにおいて帯域R1Nを使用している。
【0032】
図3に戻って、帯域設定テーブル36は、帯域の割合(重み)をテナントごとに記憶する。図7は、帯域設定テーブルの一例を示す図である。図7に示すように、帯域設定テーブル36は、テナントIDと帯域設定を対応付けて記憶する。テナントIDは、テナントを識別する識別子である。帯域設定は、テナントに割り当てられた帯域の割合である。例えば、テナントT、テナントT、テナントTで識別される3つのテナントにL、L、Lの割合の帯域が割り当てられた場合、テナントT、テナントT、テナントTで識別される3つのテナントの帯域利用がL:L:Lとなるように制御されることが期待される。
【0033】
図3に戻って、帯域計算部37は、自ノード10の各仮想ポート14の割り当て帯域を計算して設定情報テーブル38に格納する。帯域計算部37は、情報処理システム1全体でテナントに割り当てられる帯域が帯域設定テーブル36によって記憶される割合になるように各仮想ポート14の割り当て帯域を計算する。なお、計算方法の一例は、後述する。
【0034】
設定情報テーブル38は、ワークロード11の情報を記憶する。図8は、設定情報テーブルの一例を示す図である。図8に示すように、設定情報テーブル38は、ワークロードIDとテナントIDとポートIDと帯域初期設定と帯域設定とを対応付けて記憶する。
【0035】
ワークロードIDは、ワークロード11を識別する識別子である。テナントIDは、テナントを識別する識別子である。ポートIDは、仮想ポート14を識別する識別子である。帯域初期設定は、ワークロード11に割り当てられる帯域の割合であり、帯域調整前の値である。例えば、C11が、テナントTのポートIDとしてP11を利用するワークロード11の帯域初期設定であり、C12が、テナントTのポートIDとしてP12を利用するワークロード11の帯域初期設定であるとする。テナントTの他のテナントT,Tとの帯域の割り当ての割合がLであるとする。すると、C11=C12=L/2など、C11+C12=Lになるように割り当てられる。帯域設定は、ワークロード11に割り当てられる帯域の割合であり、帯域調整後の値である。なお、帯域設定=0の場合、仮想ポート14への帯域設定は行われない。
【0036】
例えば、ワークロードW11については、テナントはTであり、使用する仮想ポート14はP11であり、帯域調整前の帯域の割合はC11であり、帯域調整後の帯域の割合はA11である。
【0037】
図3に戻って、ポート情報設定部39は、帯域制限を行う仮想ポート14に対して帯域設定を行う。ポート情報設定部39は、帯域設定=0の場合、仮想ポート14への帯域設定を行わない。
【0038】
次に、エージェント13による処理のフローについて図9図14を用いて説明する。図9は、ポート情報取得処理のフローを示すフローチャートである。なお、ポート情報取得処理は、所定の時間間隔で実行される。図9に示すように、ポート情報取得部31は、ワークロード11をWとし、全てのワークロードWについて、以下のステップS1~ステップS2を実行する。すなわち、ポート情報取得部31は、ワークロードWの接続された仮想ポート14の統計情報(利用帯域)を仮想スイッチ12から取得し(ステップS1)、取得した利用帯域をワークロードWに対応付けて利用状況テーブル32に登録する(ステップS2)。
【0039】
このように、ポート情報取得部31がワークロードWの接続された仮想ポート14の利用帯域を取得して利用状況テーブル32に登録するので、エージェント13は、各ワークロードWの帯域使用状況を特定することができる。
【0040】
図10は、情報交換処理のフローを示すフローチャートである。図10Aは自ノード10の情報を送信する場合を示し、図10Bは他ノード10から情報を受信する場合を示す。なお、情報交換処理は、所定の時間間隔で実行される。
【0041】
図10Aに示すように、情報交換部33は、ワーク領域b[]をクリアする(ステップS11)。そして、情報交換部33は、ワークロード11をWとし、全てのワークロードWについて、ワークロードWのテナントをtとしてb[t]にワークロードWの利用帯域を加算する(ステップS12)。例えば、情報交換部33は、利用状況テーブル32を参照して、テナントtごとに各テナントtで利用しているワークロードWの利用帯域を加算する。
【0042】
そして、情報交換部33は、b[]の情報をローカルテーブル34に登録し(ステップS13)、ローカルテーブル34の情報をグローバルテーブル35の自ノード相当部分に登録する(ステップS14)。そして、情報交換部33は、ローカルテーブル34の情報を他ノード10に送信する(ステップS15)。
【0043】
このように、情報交換部33がローカルテーブル34の情報を他ノード10に送信することによって、他ノード10は、自ノード10以外のノード10の帯域利用状況を取得することができる。
【0044】
また、図10Bに示すように、情報交換部33は、他ノードから送られてきたテナントごと帯域利用状況を他ノード10に対応させてグローバルテーブル35に登録する(ステップS21)。
【0045】
このように、情報交換部33が他ノードから送られてきたテナントごと帯域利用状況を他ノード10に対応させてグローバルテーブル35に登録するので、エージェント13は、情報処理システム1全体において公平な帯域の割り当てを行うことが可能になる。
【0046】
図11は、帯域計算処理のフローを示すフローチャートである。なお、帯域計算処理は、所定の時間間隔で実行される。
【0047】
図11に示すように、帯域計算部37は、テナントをtとし、全てのテナントについて、以下のステップS31を実行する。すなわち、帯域計算部37は、現ノード10におけるテナントtの割り当て帯域計算処理を実行する(ステップS31)。ここでは、テナントtの割り当て帯域計算処理の結果、現ノード10におけるテナントtの割り当て帯域は、B[t]と計算されたとする。なお、テナントtの割り当て帯域計算処理のフローを示すフローチャートは、後述する。
【0048】
そして、帯域計算部37は、ワークロードをwとし、全てのワークロードについて、以下のステップS32を実行する。すなわち、帯域計算部37は、現ノード10におけるワークロードwの帯域設定A[w]を、以下の式(1)のように計算する(ステップS32)。なお、以下の式におけるC[w]は、現ノード10におけるワークロードwの帯域初期設定を示す。帯域初期設定は、設定情報テーブル38に格納されている。また、T[t]は、現ノード10におけるテナントtのワークロードの総帯域を示す。テナントtのワークロードの総帯域の計算処理のフローを示すフローチャートは、後述する。
A[w]=B[t]×C[w]/T[t]・・・(1)
つまり、現ノード10に、テナントtのワークロードwが複数存在する場合には、現ノード10におけるテナントtの割り当て帯域B[t]をテナントtの複数のワークロードwで分配する。この後、帯域計算部37は、設定情報テーブル38の、該当するワークロードwに対応する帯域設定に、分配されたA[w]を格納する。
【0049】
図12は、割り当て帯域計算処理のフローを示すフローチャートである。図12に示すように、帯域計算部37は、送信ポート(仮想ポート14)の帯域が不足しているか否かを判定する(ステップS41)。送信ポート(仮想ポート14)の帯域が不足していないと判定した場合には(ステップS41;No)、帯域計算部37は、割り当て帯域計算処理を終了する。
【0050】
一方、送信ポート(仮想ポート14)の帯域が不足していると判定した場合には(ステップS41;Yes)、帯域計算部37は、グローバルテーブル35を参照し、テナントtごとに、各ノード(現ノードiを除く)の利用帯域Rtiを加算して、テナントtのレートRtを以下の式(2)のように計算する(ステップS42)。
Rt=Σti・・・(2)
【0051】
そして、帯域計算部37は、現ノード10におけるテナントtの割り当て帯域rを計算する(ステップS43)。
【0052】
例えば、テナント数が2の場合、現ノード10におけるテナントTの割り当て帯域rの計算式は、以下の式(3)で表わせる。なお、Lは、テナントTの他のテナントT2との帯域の割り当ての割合を示す。Lは、テナントTの他のテナントTとの帯域の割り当ての割合を示す。Cは、現ノード10における仮想ポート14の帯域を示す。Rは、式(2)で計算されたテナントTのレートを示す。Rは、式(2)で計算されたテナントTのレートを示す。
=LC/(L+L)-L/(L+L)-L/(L+L)・・・(3)
【0053】
また、テナント数が2の場合、現ノード10におけるテナントTの割り当て帯域rの計算式は、以下の式(4)で表わせる。
=LC/(L+L)-L/(L+L)-L/(L+L)・・・(4)
【0054】
そして、帯域計算部37は、割り当て帯域計算処理を終了する。
【0055】
図13は、帯域初期設定処理のフローを示すフローチャートである。なお、帯域初期設定処理は、設定情報テーブル38の帯域初期設定が変更される時に実行される。図13に示すように、帯域計算部37は、現ノード10におけるテナントごとの総帯域領域T[]をクリアする(ステップS51)。
【0056】
そして、帯域計算部37は、ワークロード11をwとし、全てのワークロードwについて、テナントtごとに、T[t]にワークロードwの帯域初期設定を加算する(ステップS52)。帯域初期設定は、設定情報テーブル38に格納されている。そして、帯域計算部37は、帯域初期設定処理を終了する。
【0057】
このように、帯域計算部37が、各テナントに分配される帯域の割合に基づいて、自ノード10で処理するワークロードに分配する帯域を計算するので、エージェント13は、情報処理システム1全体において公平な帯域の割り当てを行うことが可能になる。
【0058】
図14は、ポート情報設定処理のフローを示すフローチャートである。なお、ポート情報設定処理は、所定の時間間隔で実行される。
【0059】
図14に示すように、ポート情報設定部39は、ワークロード11をwとし、全てのワークロードwについて、以下のステップS51~S54を実行する。すなわち、ポート情報設定部39は、設定情報テーブル38を参照し、ワークロードwに該当する帯域設定の値vを取り出す(ステップS51)。そして、ポート情報設定部39は、値vが0より大きいか否かを判定する(ステップS52)。値vが0より大きいと判定した場合には(ステップS52;Yes)、ポート情報設定部39は、ワークロードwの接続されたポートに帯域制御の値vを設定する(ステップS53)。一方、値vが0より大きくないと判定した場合には(ステップS52;No)、ポート情報設定部39は、ワークロードwの接続されたポートの帯域制御を無効化する(ステップS54)。
【0060】
そして、ポート情報設定部39は、ポート情報設定処理を終了する。
【0061】
このように、ポート情報設定部39が、ワークロードwについて、帯域計算部37によって計算された帯域をワークロードwの接続されたポートに設定するので、エージェント13は、情報処理システム1全体において公平な帯域で通信を行うことが可能になる。
【0062】
図15は、帯域計算の一例を示す図である。図15において、情報処理システム1は、ノードとノードを有する。また、Wtiはテナントtのノードiにおけるワークロードであり、RtiはWtiの生成するトラフィックのレートであり、Cはスイッチポートjの帯域幅である。なお、テナントは2つであり、テナントT1、テナントT2で識別される2つのテナントにL1、L2の割合の帯域が割り当てられているとする。
【0063】
ここで、ワークロードW11の生成するトラフィックの帯域がR11であったとする。ワークロードW21の生成するトラフィックの帯域がR21であったとする。そして、ノード側のCの帯域が不足したとする。すると、帯域計算部37は、ワークロードW11の割り当て帯域r11を、式(3)を用いて計算する。式(3)は、以下のように求められる。
【0064】
まず、2つのテナントにL、Lの割合の帯域が割り当てられているので、(r11+R12):(r21+R22)は、L:Lの関係となる。したがって、r21は、以下の式(5)となる。
21=L(r11+R12)/L1-R22・・・(5)
【0065】
そして、Cは、(r11+r21)であるので、Cは、式(5)を用いて、以下の式(6)のように変換できる。
=r11+L(r11+R12)/L1-R22・・・(6)
さらに、Cは、以下の式(7)(8)のように変換できる。
=(1+L/L)r11+R12/L-R22・・・(7)
(1+L/L)r11=C-R12/L+R22・・・(8)
【0066】
そうすると、r11は、以下の式(9)となる。
11=L/(L+L)-L12/(L+L)+L22/(L+L)・・・(9)
すなわち、r11は、式(3)と同じ式となる。
【0067】
同様に、r21は、以下の式(10)となる。
21=L/(L+L)+L12/(L+L)-L22/(L+L)・・・(10)
すなわち、r21は、式(4)と同じ式となる。
【0068】
なお、この一例では、ノードについて、テナントに1つのワークロードが存在する。しかしながら、ノードには、テナントに複数のワークロードが存在する場合がある。かかる場合には、帯域計算部37は、式(9)のように、テナントごとに帯域を割り当てた後、割り当てた帯域を複数のワークロードで分配すれば良い(図11のループ2を参照)。
【0069】
ここで、図15で示した帯域計算について、具体的に数値を入力して効果を示す。例えば、2つのテナントに割り当てられる帯域の割合L,Lを各「1」とする。ノードにおける仮想ポート14およびノードにおける仮想ポート14のそれぞれの帯域幅C、Cを各「10」とする。ノードにおけるテナントT1のワークロードW11のトラフィックのレートR11を「10」とする。ノードにおけるテナントTのワークロードW21のトラフィックのレートR21を「10」とする。ノードにおけるテナントT1のワークロードW12のトラフィックのレートR12を「4」とする。ノードにおけるテナントTのワークロードW22のトラフィックのレートR22を「2」とする。
【0070】
このような状況の下、r11は、式(9)に基づいて計算される。すなわち、r11は、「4」と計算される。また、r21は、式(10)に基づいて計算される。すなわち、r21は、「6」と計算される。すると、テナントT1に割り当てられる帯域Rは、r11とR12とを加算した値となるので、「8」(=4+4)となる。また、テナントTに割り当てられる帯域Rは、r21とR22とを加算した値となるので、「8」(=6+2)となる。つまり、帯域計算処理は、テナント間で公平になるように帯域を計算できる。
【0071】
なお、ノード内の情報のみで帯域を計算する場合では、r11、r21は、それぞれ以下の式に基づいて計算される。
11=L11/(L1+L2
21=L21/(L1+L2
【0072】
すなわち、r11、r21は、それぞれ「5」と計算される。すると、テナントT1に割り当てられる帯域Rは、r11とR12とを加算した値となるので、「9」(=5+4)となる。また、テナントTに割り当てられる帯域Rは、r21とR22とを加算した値となるので、「7」(=5+2)となる。つまり、ノード内の情報のみで帯域を計算する処理では、テナント間で不公平に帯域を計算してしまう。
【0073】
[実施例1の効果]
このようにして、上記実施例1では、複数のテナントそれぞれについて複数のワークロードを備えるノード10であって、各ノード10は、以下の処理を行う。ノード10は、他のノード10におけるテナントごとの使用帯域情報を取得する。ノード10は、自装置で処理するワークロード11に分配する帯域を、取得された使用帯域情報に基づいて計算する。ノード10は、計算された帯域を設定する。かかる構成によれば、情報処理システム1は、情報処理システム1全体としてテナント間で公平になるように帯域を制御することができる。
【0074】
また、上記実施例1では、ノード10は、他のノード10とテナントごとの使用帯域情報を交換することで他のノード10におけるテナントごとの使用帯域情報を取得する。かかる構成によれば、ノード10は、他のノード10のテナントごとの使用帯域情報を取得することで、情報処理システム1全体としてテナント間で公平になるように帯域を制御することが可能になる。
【0075】
また、上記実施例1では、ノード10は、情報処理システム1において各テナントに分配される帯域の割合に基づいて、自装置で処理するワークロードに分配する帯域を計算する。かかる構成によれば、ノード10は、情報処理システム1全体においてテナント間で公平な帯域の割り当てを行うことが可能になる。
【0076】
また、上記実施例1では、ノード10は、帯域を設定するワークロード11を決定し、決定されたワークロード11について計算された帯域を設定する。かかる構成によれば、ノード10は、情報処理システム1全体において公平な帯域で通信を行うことが可能になる。
【実施例2】
【0077】
ところで、実施例1では、ノード10は、自装置で処理するワークロード11に分配する帯域を、他のノード10におけるテナントごとの使用帯域情報に基づいて計算し、計算された帯域を設定すると説明した。しかしながら、ハードウェアリソースの制約により、帯域を設定できるポート数には、限りがある場合がある。
【0078】
そこで、実施例2では、ノード10が、帯域を設定できる仮想ポート14を決定し、決定した仮想ポート14に対して計算された帯域を設定する場合を説明する。
【0079】
ここで、情報処理システム1による帯域制御について、図16を参照して説明する。図16は、実施例2に係る情報処理システムによる帯域制御を説明する図である。図16に示すように、コンテナ環境では、1台のノード10に100を超えるコンテナ(ワークロード11)が実行される。ところが、ハードウェアリソースの制約により、帯域を設定できる仮想ポート14の数には、限りがある。そこで、ノード10は、帯域を設定できる仮想ポート14を決定し、決定した仮想ポート14に対して計算された帯域を設定する。
【0080】
図17は、実施例2に係るエージェントの機能構成を示す図である。なお、図3に示すエージェント13と同一の構成については同一符号を示すことで、その重複する構成および動作の説明ついては省略する。実施例1と実施例2とが異なるところは、帯域制御決定部41を追加した点にある。なお、帯域制御決定部41は、決定部の一例である。
【0081】
帯域制御決定部41は、帯域制御をするワークロード11を決定する。例えば、帯域制御決定部41は、自ノード10の全てのワークロード11について、ワークロード11の帯域を制御するか否かを決定する。一例として、帯域制御決定部41は、各ワークロード11について、利用帯域の値から設定帯域(割り当て帯域)の値を引いて得られる値のリストを生成する。そして、帯域制御決定部41は、nが帯域制御可能な数とした場合に、生成したリストの中で上位n個のワークロード11を帯域制御対象のワークロード11として決定する。そして、帯域制御決定部41は、設定情報テーブル38の帯域設定であって帯域制御対象でないワークロード11の帯域設定の値を「0」に設定する。すなわち、帯域制御決定部41は、帯域制御対象でないワークロード11の帯域設定を無効化する。
【0082】
帯域計算部37は、帯域制御決定部41によって決定された帯域制御対象のワークロード11について、ワークロード11に分配する帯域を計算する。例えば、図15で示した帯域計算の図において、ノードにテナントに関するワークロードW13があるとする。そして、帯域制御可能な数nを2とした場合に、ワークロードW13が帯域制御対象のワークロード11として決定されず、ワークロードW11とW21が帯域制御対象のワークロード11として決定されたとする。すると、帯域計算部37は、式(9)を用いて、テナントに属するワークロードの帯域をr11と計算する。帯域計算部37は、式(10)を用いて、テナントに属するワークロードの帯域をr21と計算する。そして、帯域計算部37は、ワークロードW11の帯域設定の値を、r11からワークロードW13の帯域設定の値「0」を引いた値とすれば良い。なお、帯域計算部37は、ワークロードW13の帯域設定は無効化されているので、帯域計算しない。
【0083】
図18Aおよび図18Bは、帯域制御決定処理のフローを示すフローチャートである。なお、帯域制御決定処理は、所定の時間間隔で実行される。
【0084】
図18Aに示すように、帯域制御決定部41は、自ノード10について、各ワークロード11の帯域を制御するか否かを決定する(ステップS61)。なお、各ワークロード11の帯域を制御するか否かを決定する処理のフローを示すフローチャートは、後述する。
【0085】
そして、帯域制御決定部41は、ワークロード11をwとし、全てのワークロードwについて、以下のステップS62~S63を実行する。すなわち、帯域制御決定部41は、ワークロードwについて、帯域制御するか否かを判定する(ステップS62)。帯域制御しないと判定した場合には(ステップS62;No)、帯域制御決定部41は、ワークロードwに対応する設定情報テーブル38の帯域設定の値を「0」に設定する(ステップS63)。一方、帯域制御すると判定した場合には(ステップS62;Yes)、帯域制御決定部41は、以降で帯域計算をすべく、帯域制御決定処理を終了する。
【0086】
図18Bに示すように、帯域制御決定部41は、設定情報テーブル38、利用状況テーブル32を参照し、自ノード11(i)の帯域超過情報Dti(=Bti-Ati)を計算する(ステップS71)。ここでは、Btiは、ノードiにおけるワークロードWtiの帯域利用状況(利用状況テーブル32の利用帯域)を示す。Atiは、ノードiにおけるワークロードWtiの帯域設定情報(設定情報テーブル38の帯域設定)を示す。
【0087】
そして、帯域制御決定部41は、Dtiが大きい順にn個選択し、対応するワークロードWtiを帯域制御対象と決定する(ステップS72)。
【0088】
[実施例2の効果]
このようにして、上記実施例2では、ノード10は、自ノード10で処理するワークロード11の数が帯域の設定可能数を超える場合には、以下の処理を行う。ノード10は、ワークロード11で用いられる仮想ポート14について、帯域の使用情報から帯域の設定情報を引いた差分に応じて、仮想ポート14に対応するワークロード11を帯域制御対象として決定する。そして、ノード10は、帯域制御対象として決定したワークロード11に分配する帯域を計算する。かかる構成によれば、ハードウェアリソースの制約により、帯域を設定できるポート数に限界がある場合であっても、ノード10は、自ノード10で処理するワークロード11に分配する帯域を、テナント間で公平になるように制御することが可能となる。
【実施例3】
【0089】
ところで、実施例1では、ノード10は、テナントごとの使用帯域情報を、他のノード10と交換することで、他のノード10におけるテナントごとの使用帯域情報を取得すると説明した。しかしながら、ノード10は、これに限定されず、テナントごとの使用帯域情報を、複数のノード10が共通にアクセスできる記憶領域を介して他のノード10と交換することで、他のノード10におけるテナントごとの使用帯域情報を取得するとしても良い。
【0090】
そこで、実施例3では、ノード10が、テナントごとの使用帯域情報を、複数のノード10が共通にアクセスできる記憶領域を介して他のノード10と交換することで、他のノード10におけるテナントごとの使用帯域情報を取得する場合を説明する。
【0091】
ここで、実施例3に係る情報処理システム1の構成について、図19を参照して説明する。図19は、実施例3に係る情報処理システムの構成の一例を示す図である。図19に示すように、情報処理システム1は、複数のノード10に加えて、Stat51を有する。Stat51は、複数のノード10が共通にアクセスできる記憶領域である。各ノード10のエージェント13は、Stat51を複数のノード10が共通にアクセスできる記憶領域として自身のテナントごとの使用帯域情報を書き込む。そして、エージェント13は、Stat51から他のノード10のテナントごとの使用帯域情報を読み込む。
【0092】
例えば、エージェント13の情報交換部33は、自ノード10の利用状況テーブル32が記憶する情報に基づいてローカルテーブル34を作成する。そして、情報交換部33は、Stat51を介して、他のノード10のエージェント13とローカルテーブル34の内容を交換する。そして、情報交換部33は、他のノード10の帯域使用状況とローカルテーブル34が記憶する情報に基づいてグローバルテーブル35を作成する。
【0093】
[実施例3の効果]
このようにして、上記実施例3では、ノード10は、他のノード10とテナントごとの使用帯域情報を、複数のノード10が共通にアクセスできる記憶領域を介して交換することで他のノード10におけるテナントごとの使用帯域情報を取得する。かかる構成によれば、ノード10は、複数のノード10が共通にアクセスできる記憶領域を用いることで、他のノード10とのテナントごとの使用帯域情報を、ノード10が必要なときに取得することができる。
【実施例4】
【0094】
ところで、実施例1では、各ノード10のエージェント13が、利用状況テーブル32が記憶する情報に基づいてローカルテーブル34を作成し、他のノード10のエージェント13とローカルテーブル34の内容を交換し、グローバルテーブル35を作成する。そして、エージェント13は、グローバルテーブル35を用いて、自ノード10の各仮想ポート14の割り当て帯域を、情報処理システム1全体でテナントに割り当てられる帯域が設定された割合になるように計算して各テナントのワークロード11に分配する。また、実施例3では、各ノード10が、テナントごとの使用帯域情報を、複数のノード10が共通にアクセスできる記憶領域を介して他のノード10と交換する。しかしながら、情報処理システム1は、これに限定されず、複数のノード10が共通にアクセスできる記憶領域に加えて、この記憶領域を処理するコントローラを備える場合であっても良い。
【0095】
そこで、実施例4では、情報処理システム1が、複数のノード10が共通にアクセスできる記憶領域に加えて、この記憶領域を処理するコントローラを備える場合を説明する。
【0096】
ここで、実施例4に係る情報処理システム1の構成について、図20を参照して説明する。図20は、実施例4に係る情報処理システムの構成の一例を示す図である。図20に示すように、情報処理システム1は、複数のノード10に加えて、Stat51およびコントローラ61を有する。Stat51は、複数のノード10が共通にアクセスできる記憶領域である。コントローラ61は、Stat51を管理し、各ノード10の帯域分配を計算して、各ノード10のエージェント13に指示を出す。
【0097】
例えば、各ノード10において、エージェント13の情報交換部33が、自ノード10の利用状況テーブル32が記憶する情報に基づいてローカルテーブル34を作成して、自ノード10のローカルテーブル34をStat51に書き込む。そして、コントローラ61は、各ノード10のローカルテーブル34からグローバルテーブル35を作成する。そして、コントローラ61は、グローバルテーブル35を用いて、ノード10ごとに、テナントに割り当てる帯域を、情報処理システム1全体でテナントに割り当てられる帯域が設定された割合になるように計算する。そして、コントローラ61は、各ノードに、計算したテナントに割り当てる帯域を通知する。そして、各ノード10において、エージェント13の帯域計算部37が、通知されたテナントに割り当てる帯域を用いて、各テナントのワークロード11に分配する。
【0098】
[実施例4の効果]
このようにして、上記実施例4では、コントローラ61が、Stat51から各ノード10におけるテナントごとの使用帯域情報を取得し、取得された使用帯域情報に基づいて各ノード10におけるテナントごとの帯域を計算する。そして、コントローラ61は、計算された各ノード10におけるテナントごとの帯域を、各ノード10に通知する。また、各ノード10は、自ノード10におけるテナントごとの使用帯域情報をStat51に書き込む。そして、各ノード10は、通知された自ノード10におけるテナントごとの帯域に基づいて、自ノード10で処理するワークロード11に分配する帯域を計算する。そして、各ノード10は、計算された帯域を仮想ポート14に設定する。かかる構成によれば、コントローラ61が各ノード10におけるテナントごとの帯域を計算するので、各ノード10は、帯域計算処理にかかる負荷を軽減することができる。また、コントローラ61が、一括して各ノード10におけるテナントごとの帯域を計算するので、情報処理システム1全体としてテナント間で公平になるように確実に帯域を制御することが可能になる。
【0099】
なお、各ノード10は、既知のパーソナルコンピュータ、ワークステーション等の情報処理装置に、上記したエージェント13等の機能を搭載することによって実現することができる。
【0100】
また、実施例1~4では、ワークロード11が、例えば、コンテナ環境におけるコンテナの場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、テナントに属するアプリケーションの場合にも適用することができる。
【0101】
また、図示したノード10の各構成要素は、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、ノード10の分散・統合の具体的態様は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。例えば、帯域計算部37を、テナントごとの帯域を計算する第1の帯域計算部と、テナントごとの帯域から各テナントのワークロード11に割り当てる帯域を計算する第2の帯域計算部とに分散しても良い。また、ポート情報取得部31とポート情報設定部39とを統合しても良い。また、各種テーブルを記憶する記憶部(図示せず)をノード10の外部装置としてネットワーク経由で接続するようにしても良い。
【0102】
以上の実施例1~4を含む実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0103】
(付記1)複数のテナントそれぞれについて複数のワークロードを備える情報処理装置であって、
他の情報処理装置におけるテナントごとの使用帯域情報を取得する取得部と、
自装置で処理するワークロードに分配する帯域を前記取得部により取得された使用帯域情報に基づいて計算する計算部と、
前記計算部により計算された帯域を設定する設定部と
を有することを特徴とする情報処理装置。
【0104】
(付記2)前記取得部は、他の情報処理装置とテナントごとの使用帯域情報を交換することで他の情報処理装置におけるテナントごとの使用帯域情報を取得する
ことを特徴とする付記1に記載の情報処理装置。
【0105】
(付記3)前記取得部は、他の情報処理装置とテナントごとの使用帯域情報を、前記複数の情報処理装置が共通にアクセスできる記憶領域を介して交換することで他の情報処理装置におけるテナントごとの使用帯域情報を取得する
ことを特徴とする付記1に記載の情報処理装置。
【0106】
(付記4)前記計算部は、前記情報処理システムにおいて各テナントに分配される帯域の割合に基づいて、自装置で処理するワークロードに分配する帯域を計算することを特徴とする付記1、2又は3に記載の情報処理装置。
【0107】
(付記5)帯域を設定するワークロードを決定する決定部をさらに有し、
前記設定部は、前記決定部により決定されたワークロードについて前記計算部により計算された帯域を設定する
ことを特徴とする付記1~4のいずれか1つに記載の情報処理装置。
【0108】
(付記6)前記決定部は、自装置で処理するワークロードの数が帯域の設定可能数を超える場合には、ワークロードで用いられるポートについて、帯域の使用情報から帯域の設定情報を引いた差分に応じて、ポートに対応するワークロードを帯域制御対象として決定する
ことを特徴とする付記5に記載の情報処理装置。
【0109】
(付記7)複数のテナントそれぞれについて複数のワークロードを複数の情報処理装置(10)を用いて処理する情報処理システムにおいて、
各情報処理装置は、
他の情報処理装置におけるテナントごとの使用帯域情報を取得する取得部と、
自装置で処理するワークロードに分配する帯域を前記取得部により取得された使用帯域情報に基づいて計算する計算部と、
前記計算部により計算された帯域を設定する設定部と
を有することを特徴とする情報処理システム。
【0110】
(付記8)複数のテナントそれぞれについて複数のワークロードを複数の情報処理装置を用いて処理する情報処理システムにおける帯域制御方法であって、
各情報処理装置は、
他の情報処理装置におけるテナントごとの使用帯域情報を取得し、
自装置で処理するワークロードに分配する帯域を前記取得部により取得された使用帯域情報に基づいて計算し、
前記計算部により計算された帯域を設定する
処理を実行することを特徴とする帯域制御方法。
【0111】
(付記9)複数のテナントそれぞれについて複数のワークロードを備える複数の情報処理装置と、コントローラと、共通の記憶領域を有する情報処理システムであって、
前記コントローラは、
前記記憶領域から各情報処理装置におけるテナントごとの使用帯域情報を取得する取得部と、
前記取得部によって取得された使用帯域情報に基づいて各情報処理装置におけるテナントごとの帯域を計算する第1の計算部と、
前記第1の計算部によって計算された各情報処理装置におけるテナントごとの帯域を、各情報処理装置に通知する通知部と、を有し、
各情報処理装置は、
自装置におけるテナントごとの使用帯域情報を前記記憶領域に書き込む書込部と、
前記通知部によって通知された自装置におけるテナントごとの帯域に基づいて、自装置で処理するワークロードに分配する帯域を計算する第2の計算部と、
前記第2の計算部により計算された帯域を設定する設定部と
を有することを特徴とする情報処理システム。
【符号の説明】
【0112】
1 情報処理システム
2 ネットワーク
10 ノード
11 ワークロード
12 仮想スイッチ
13 エージェント
14 仮想ポート
31 ポート情報取得部
32 利用状況テーブル
33 情報交換部
34 ローカルテーブル
35 グローバルテーブル
36 帯域設定テーブル
37 帯域計算部
38 設定情報テーブル
39 ポート情報設定部
41 帯域制御決定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A
図18B
図19
図20
図21