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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】車両用空調装置
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/32 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
B60H1/32 624J
B60H1/32 621C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021114711
(22)【出願日】2021-07-12
(65)【公開番号】P2023011096
(43)【公開日】2023-01-24
【審査請求日】2024-02-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】田渕 経雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】田渕 智雄
(72)【発明者】
【氏名】島内 隆行
【審査官】奥隅 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-93644(JP,A)
【文献】特開2021-37855(JP,A)
【文献】特開2014-235897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、フロント空調装置に設けられるフロント空調用熱交換器、リア空調装置に設けられるリア空調用熱交換器、電池冷却用の電池冷却用熱交換器、を冷媒が流れる冷凍サイクルを備えており、
目標吹出温度と実際の環境下で使われる吹出温度に乖離があるクールダウン中にあっては、予め定められている基準禁止時間内で所定時間が経過するまで前記冷媒の前記電池冷却用熱交換器への流れを禁止して電池冷却を休止するようにされており、
前記フロント空調用熱交換器と前記リア空調用熱交換器のどちらか一方のみに冷媒を流入して前記フロント空調装置と前記リア空調装置のどちらか一方のみを作動させるときより、前記フロント空調用熱交換器と前記リア空調用熱交換器の両方に冷媒を流入して前記フロント空調装置と前記リア空調装置の両方を作動させるときの方が、前記基準禁止時間が大とされている、車両用空調装置。
【請求項2】
前記所定時間は、前記電池の温度に基づく電池冷却要求レベルに応じて決定される、請求項1記載の車両用空調装置。
【請求項3】
前記目標吹出温度が変化したとき、前記基準禁止時間と前記所定時間が再設定される、請求項1または請求項2記載の車両用空調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用空調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2021-037855号公報は、圧縮機、空調用熱交換器、電池冷却用熱交換器、を冷媒が流れる冷凍サイクルを備える車両用空調装置において、車室内の乗員の快適性を確保することができる基準禁止時間内である際には、電池冷却要求があっても、電池冷却用熱交換器への冷媒の流れを禁止して電池冷却を休止する技術を開示している。
【0003】
ところで、フロント空調装置とリア空調装置を有しており、空調用熱交換器としてフロント空調装置に設けられるフロント空調用熱交換器とリア空調装置に設けられるリア空調用熱交換器とを有する車両用空調装置が存在する。このような車両用空調装置では、フロントとリアのどちらか一方の空調用熱交換器に冷媒を流入してフロントとリアのどちらか一方の空調装置のみが作動しているときと、フロントとリアの両方の空調用熱交換器に冷媒を流入してフロントとリアの両方の空調装置が作動しているときとで、乗員の快適性を確保することができるまでの時間が異なる。
【0004】
しかし、上記公報開示の技術では、空調装置がフロント空調装置とリア空調装置の2つを有しておらず、フロントとリアのどちらか一方の空調装置のみが作動しているときと、フロントとリアの両方の空調装置が作動しているときとで、上記の基準禁止時間を変更することを行っていない。そのため、フロント空調装置とリア空調装置の2つを有しておりフロント空調用熱交換器とリア空調用熱交換器とを有する車両用空調装置にあっては、基準禁止時間が短く乗員の快適性が達成されないおそれや、基準禁止時間が長く電池の冷却を過剰に休止してしまい電池の劣化を早めてしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-037855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、乗員の快適性確保と電池の劣化抑制の両立を図ることができる、車両用空調装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 圧縮機、フロント空調装置に設けられるフロント空調用熱交換器、リア空調装置に設けられるリア空調用熱交換器、電池冷却用の電池冷却用熱交換器、を冷媒が流れる冷凍サイクルを備えており、
目標吹出温度と実際の環境下で使われる吹出温度に乖離があるクールダウン中にあっては、予め定められている基準禁止時間内で所定時間が経過するまで前記冷媒の前記電池冷却用熱交換器への流れを禁止して電池冷却を休止するようにされており、
前記フロント空調用熱交換器と前記リア空調用熱交換器のどちらか一方のみに冷媒を流入して前記フロント空調装置と前記リア空調装置のどちらか一方のみを作動させるときより、前記フロント空調用熱交換器と前記リア空調用熱交換器の両方に冷媒を流入して前記フロント空調装置と前記リア空調装置の両方を作動させるときの方が、前記基準禁止時間が大とされている、車両用空調装置。
(2) 前記所定時間は、前記電池の温度に基づく電池冷却要求レベルに応じて決定される、(1)記載の車両用空調装置。
(3) 前記目標吹出温度が変化したとき、前記基準禁止時間と前記所定時間が再設定される、(1)または(2)記載の車両用空調装置。
【発明の効果】
【0008】
上記(1)の車両用空調装置によれば、フロント空調用熱交換器とリア空調用熱交換器のどちらか一方のみに冷媒を流入してフロント空調装置とリア空調装置のどちらか一方のみを作動させるときより、フロント空調用熱交換器とリア空調用熱交換器の両方に冷媒を流入してフロント空調装置とリア空調装置の両方を作動させるときの方が、基準禁止時間が大とされているため、つぎの効果を得ることができる。
フロントとリアのどちらか一方の空調装置のみを作動させるときは、フロントとリアの両方の空調装置を作動させるときに比べて、フロントまたはリアの乗員の快適性が達成されるまでの時間が相対的に短くて済むため、基準禁止時間を相対的に小、すなわち電池冷却を休止する時間が相対的に短くても、乗員の快適性を達成できる。
一方、フロントとリアの両方の空調装置を作動させるときは、フロントとリアのどちらか一方の空調装置のみを作動させるときに比べて、乗員の快適性を達成するのに相対的に長い時間がかかるが、基準禁止時間が相対的に大、すなわち電池冷却を休止する時間が相対的に長くされているため、乗員の快適性を達成することができる。
よって、フロントとリアのどちらか一方の空調装置のみを作動させるとき、フロントとリアの両方の空調装置を作動させるとき、の両方で乗員の快適性を達成できる。
また、フロントとリアのどちらか一方の空調装置のみを作動させるときの基準禁止時間が、フロントとリアの両方の空調装置を作動させるときの基準禁止時間に一律に合わせられている場合と異なり、電池冷却を過剰に休止することを抑制して電池の劣化を抑制することもできる。
【0009】
また、上記(1)の車両用空調装置によれば、クールダウン中に冷媒の電池冷却用熱交換器への流れを禁止して電池冷却を休止するようにされている。そのため、クールダウン中にあっては、電池冷却を休止させて乗員の快適性を早期に達成させることができる。一方、クールダウン終了後にあっては、冷媒の電池冷却用熱交換器への流れを休止することなく許可して、電池を冷却することができる。
【0010】
上記(2)の車両用空調装置によれば、所定時間が、電池の温度に基づく電池冷却要求レベルに応じて決定されるため、電池の温度に基づく電池冷却要求レベルに応じて決定されない場合に比べて、より電池の劣化を抑制することができる。
【0011】
上記(3)の車両用空調装置によれば、目標吹出温度(TAO)が変化したとき、基準禁止時間と所定時間が再設定されるため、その都度電池温度に照らし合わせた設定を行うことができ、過剰な電池冷却休止を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明実施例の車両用空調装置の概略構成図である。
図2】本発明実施例の車両用空調装置における制御装置のブロック図である。
図3】本発明実施例の車両用空調装置における制御装置の、フロントとリアの空調装置の少なくともいずれか一方が作動(オン)のときに電池冷却を休止するか許可するかを判定する制御フローチャートである。
図4】本発明実施例の車両用空調装置における電池冷却休止のマトリックスである。
図5】本発明実施例の車両用空調装置の、フロントとリアの空調装置のいずれか一方のみが作動しているときにおける、電池の温度に基づく電池冷却要求レベルと基準禁止時間および所定時間との一例を示す電池冷却休止タイマー(表)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して、本発明実施例の車両用空調装置(以下、単に空調装置ともいう)10について説明する。
【0014】
空調装置10が搭載される車両は、電動車両であり、電池を電源とするモータと内燃機関(エンジン)との両方から車両の走行駆動力を得ることができるPEHV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)である。ただし、該車両は、BEV(Battery Electric Vehicle)、HEV(Hybrid Electric Vehicle)、FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)などの電動車両であってもよい。
【0015】
車両用空調装置10は、図1図2に示すように、フロント空調装置20と、リア空調装置30と、冷凍サイクル40と、冷却水回路50と、制御装置60と、を有する。なお、本発明実施例では、フロントはFr、リアはRrであってもよい。
【0016】
フロント空調装置20は、フロントエアコンまたはフロント室内空調ユニット(Fr-HVAC(Heating Ventilation and Air Conditioning))といってもよい。フロント空調装置20は、たとえば車両のインストルメントパネルの内部等に設けられており、主に車室内の前席の領域を空調する。フロント空調装置20は、図1に示すように、フロント空調ダクト21,フロントブロワ22と、フロント空調用熱交換器(フロントエバポレータ)23と、フロントヒータコア24と、PTCヒータ25と、フロント内外気切替ドア26と、フロントエアミックスドア27と、を有する。
【0017】
フロント空調ダクト21は、内部に、車室内を空調するための空調用空気が流れる通風路21aを有する。フロント空調ダクト21は、空気流れ方向上流側端部に、通風路21aに車外の空気(外気)を取り込む外気吸込口21bと、通風路21aに車室内の空気(内気)を取り込む内気吸込口21cを有する。
【0018】
フロント外気吸込口21bとフロント内気吸込口21cは、フロント内外気切替ドア26にて開閉可能とされている。フロント内外気切替ドア26がフロント内気吸込口21cを閉塞する際(外気導入モード時)には、フロント外気吸込口21bが開放されてフロント外気吸込口21bから空気が通風路21aに取り込まれる。フロント内外気切替ドア26がフロント外気吸込口21bを閉塞する際(内気導入モード時)には、フロント内気吸込口21cが開放されてフロント内気吸込口21cから空気が通風路21aに取り込まれる。
【0019】
フロントブロワ22は、フロント空調ダクト21内でフロント内外気切替ドア26の空気流れ方向下流側に配置されている。フロントブロワ22は、通風路21aの空気流れを発生させる。フロントブロワ22の作動量により、通風路21aを流れる空気量(風量)を調整可能である。
【0020】
フロント空調用熱交換器23は、フロント空調ダクト21内でフロントブロワ22の空気流れ方向下流側に配置されている。フロント空調用熱交換器23は、その内部を流れる冷媒と通風路21aの空気との間で熱交換することによって通風路21aの空気から熱を奪う(冷却する)。フロント空調用熱交換器23には、フロント空調用熱交換器23の温度を検知可能なフロントエバフィンセンサ23aが取付けられている。
【0021】
フロントヒータコア24は、フロント空調ダクト21内でフロント空調用熱交換器23の空気流れ方向下流側に配置されている。フロントヒータコア24は、その内部を流れる冷却水と通風路21aの空気との間で熱交換することによって、通風路21aの空気に熱を与える(加熱する)。
【0022】
PTCヒータ25は、フロント空調ダクト21内でフロントヒータコア24の空気流れ方向下流側に配置されている。PTCヒータ25は、フロントヒータコア24を通った空気を加熱する補助加熱手段としての電気ヒータである。
【0023】
フロントエアミックスドア27は、フロント空調ダクト21内でフロント空調用熱交換器23の空気流れ方向下流側でフロントヒータコア24の空気流れ方向上流側に配置されている。フロントエアミックスドア27により、フロント空調用熱交換器23を通過した空気の、フロントヒータコア24およびPTCヒータ25を流れる空気量(風量)と、フロントヒータコア24およびPTCヒータ25を迂回する空気量(風量)との割合を変更可能である。
【0024】
リア空調装置30は、リアエアコンまたはリア空調ユニットといってもよい。リア空調装置30は、主に車室内の後席の領域を空調する。リア空調装置30は、リア空調ダクト31と、リアブロワ32と、リア空調用熱交換器(リアエバポレータ)33と、リアヒータコア34と、リア内外気切替ドア35と、リアエアミックスドア36と、を有する。
【0025】
リア空調ダクト31は、内部に、車室内を空調するための空調用空気が流れる通風路31aを有する。リア空調ダクト31は、空気流れ方向上流側端部に、通風路31aに車外の空気(外気)を取り込む外気吸込口31bと、通風路31aに車室内の空気(内気)を取り込む内気吸込口31cを有する。
【0026】
外気吸込口31bと内気吸込口31cは、リア内外気切替ドア35にて開閉可能とされている。リア内外気切替ドア35が内気吸込口31cを閉塞する際(外気導入モード時)には、外気吸込口31bが開放されて外気吸込口31bから空気が通風路31aに取り込まれる。リア内外気切替ドア35が外気吸込口31bを閉塞する際(内気導入モード時)には、内気吸込口31cが開放されて内気吸込口31cから空気が通風路31aに取り込まれる。
【0027】
リアブロワ32は、リア空調ダクト31内でリア内外気切替ドア35の空気流れ方向下流側に配置されている。リアブロワ32は、通風路31aの空気流れを発生させる。リアブロワ32の作動量により、通風路31aを流れる空気量(風量)を調整可能である。
【0028】
リア空調用熱交換器33は、リア空調ダクト31内でリアブロワ32の空気流れ方向下流側に配置されている。リア調用熱交換器33は、その内部を流れる冷媒と通風路31aの空気との間で熱交換することによって通風路31aの空気から熱を奪う(冷却する)。リア空調用熱交換器33の下流側には、リア空調用熱交換器33を流れてきた空気温度を検知可能なリアエバ後センサ33aが設けられている。
【0029】
リアヒータコア34は、リア調ダクト31内でリア空調用熱交換器33の空気流れ方向下流側に配置されている。リアヒータコア34は、その内部を流れる冷却水と通風路31aの空気との間で熱交換することによって、通風路31aの空気に熱を与える(加熱する)。
【0030】
リアエアミックスドア36は、リア調ダクト31内でリア空調用熱交換器33の空気流れ方向下流側でリアヒータコア34の空気流れ方向上流側に配置されている。リアエアミックスドア36により、リア空調用熱交換器33を通過した空気の、リアヒータコア34を流れる空気量(風量)と、リアヒータコア34を迂回する空気量(風量)との割合を変更可能である。
【0031】
フロント空調用熱交換器23とリア空調用熱交換器33は、冷凍サイクル40によってそれらの内部を流れる冷媒が循環可能となっている。冷凍サイクル40は、冷媒が流れる冷媒流路として、共通流路41と、フロント側空調流路42とリア側空調流路43を備える空調側流路44と、電池冷却側流路45と、を有する。
【0032】
共通流路41には、圧縮機41aと、コンデンサ41bと、レシーバ41cと、が配置されている。圧縮機41aは、冷凍サイクル40を循環する冷媒を圧縮して吐出する。コンデンサ41bは、圧縮機41aから吐出される冷媒と車室外空気との間で熱交換して冷媒を冷却する。レシーバ41cは、コンデンサ41bの下流側に接続されており、コンデンサ41bによって凝縮された冷媒の気液を分離して液冷媒を貯留する。圧縮機41a,コンデンサ41bおよびレシーバ41cは、冷凍サイクル40にそれぞれ1つのみ設けられている。
【0033】
共通流路41には、さらに、蒸発圧力調整弁41dと、二重管式内部熱交換器41eと、が配置されている。蒸発圧力調整弁41dは、圧縮機41の上流側に配置される。二重管式内部熱交換器41eは、蒸発圧力調整弁41dの下流側かつ圧縮機41aの上流側を流れる冷媒と、コンデンサ41bおよびレシーバ41cの下流側を流れる冷媒との間で、熱交換を実行させる。
【0034】
空調側流路44は、コンデンサ41bおよびレシーバ41cの下流側にある第1分岐部46aより下流側で、圧縮機41の上流側にある第1合流部46bより上流側にある部分である。
【0035】
フロント側空調流路42は、第1分岐部46aより下流側にある第2分岐部46cより下流側で、第1合流部46bより上流側にある第2合流部46dより上流側にある部分である。フロント側空調流路42に、フロント空調用熱交換器23が配置されている。
【0036】
フロント側空調流路42には、さらに、フロント空調用熱交換器23の上流側に、フロントエバ前電磁弁42bとフロント膨張弁42cが配置されている。フロントエバ前電磁弁42bは、共通流路41からフロント側空調流路42への冷媒流れをオンオフする。フロント膨張弁42cは、フロントエバ前電磁弁42bを通った冷媒を減圧させる。フロント膨張弁42cは、機械式であってもよく、フロントエバ前電磁弁42bを流れてきた冷媒流れをオンオフすることが可能(ゼロ開度可能)な電気式の膨張弁であってもよい。フロント膨張弁42cがゼロ開度可能な電気式の膨張弁である場合、フロントエバ前電磁弁42bは、第1分岐部46aより下流側であれば、図示例のように第2分岐部46cより下流側に配置されていてもよく図示はしないが上流側に配置されていてもよい。
【0037】
共通流路41を流れてきた冷媒は、フロントエバ前電磁弁42bを通ってフロント膨張弁42cによって減圧された後、フロント空調用熱交換器23に流れる。フロント空調用熱交換器23では、冷媒が周囲の空気から熱を奪い、フロント空調用熱交換器23の周囲の空気が冷やされる。
【0038】
リア側空調流路43は、第2分岐部46cと第2合流部46dとの間でフロント側空調流路42と並列となっている。リア側空調流路43に、リア空調用熱交換器33が配置されている。
【0039】
リア側空調流路43には、さらに、リア空調用熱交換器33の上流側に、リアエバ前電磁弁43bとリア膨張弁43cが配置されている。リアエバ前電磁弁43bは、共通流路41からリア側空調流路43への冷媒流れをオンオフする。リア膨張弁43cは、リアエバ前電磁弁43bを通った冷媒を減圧させる。リア膨張弁43cは、機械式であってもよく、電気式であってもよい。
【0040】
共通流路41を流れてきた冷媒は、リアエバ前電磁弁43bを通ってリア膨張弁43cによって減圧された後、リア空調用熱交換器33に流れる。リア空調用熱交換器33では、冷媒が周囲の空気から熱を奪い、リア空調用熱交換器33の周囲の空気が冷やされる。
【0041】
電池冷却側流路45は、電池パック80内に収容される図示略の電池の温度が上昇した際に電池を冷却するための冷媒流路である。電池には、電池温度を検知可能な電池温度センサ81(図2参照)が取付けられている。電池冷却側流路45は、第1分岐部46aと第1合流部46bとの間で空調側流路44と並列になっている。
【0042】
電池冷却側流路45には、電池冷却用熱交換器45aが配置されている。電池冷却用熱交換器45aは、電池とともに電池パック80内に配置されている。電池冷却側流路45は、電池冷却側流路45に設けられる電池側分岐部46eと電池側合流部46fとの間で互いに並列となる第1、第2の電池側並列流路部45b、45cを有している。そして、電池冷却用熱交換器45aは、第1、第2の電池側並列流路部45b、45cにそれぞれ配置されている。
【0043】
電池冷却側流路45には、さらに、電池冷却用熱交換器45aの上流側に、電池側電磁弁45dと電池用膨張弁45eが配置されている。電池用電磁弁45dは、電池側分岐部46eの上流側に配置されており、共通流路41から電池冷却側流路45への冷媒流れをオンオフする。電池用膨張弁45eは、第1、第2の電池側並列流路部45b、45cにそれぞれ配置されており、電池用電磁弁45dを通った冷媒を減圧させる。電池用膨張弁45eは、機械式であってもよいが、電気式の膨張弁である。
【0044】
共通流路41を流れてきた冷媒は、電池式電磁弁45dを通って電池用膨張弁45eによって減圧された後、電池冷却用熱交換器45aに流れる。電池冷却用熱交換器45aでは、冷媒が周囲の空気から熱を奪い、電池冷却用熱交換器45aの周囲の空気が冷やされる。
【0045】
フロントヒータコア24とリアヒータコア34は、冷却水回路50によってそれらの内部を流れる冷却水が循環可能となっている。冷却水回路50は、ウォータポンプ51a、水加熱ヒータ51b、内燃機関(エンジン)51c、三方弁51dが配置される冷却水共通部51と、冷却水分岐部55aと冷却水合流部55bとの間で互いに並列となるフロント、リアの冷却水並列部52,53と、を有する。
【0046】
ウォータポンプ51aは、冷却水回路50を流れる冷却水を圧縮して吐出する。水加熱ヒータ51bは、電池の電力により冷却水を昇温する。三方弁51dは、内燃機関51cを通過する流れと内燃機関51cを通過しない流れとに、冷却水共通部51を流れる冷却水経路を切り替える。
【0047】
フロント冷却水並列部52には、フロントヒータコア24が配置されており、リア冷却水並列部53には、リアヒータコア34が配置されている。冷却水共通部51から冷却水分岐部55aを通ってフロント冷却水並列部52に流れてきた冷却水は、フロントヒータコア24に流れる。フロントヒータコア24では、冷却水と周囲の空気との間で熱交換することによって、周囲の空気に熱を与える。冷却水共通部51から冷却水分岐部55aを通ってリア冷却水並列部53に流れてきた冷却水は、リアヒータコア34に流れる。リアヒータコア34では、冷却水と周囲の空気との間で熱交換することによって、周囲の空気に熱を与える。
【0048】
フロント空調用熱交換器23に冷媒を流入してフロント空調装置20が作動(オン)しているときは、圧縮機41aがオンとされフロントエバ前電磁弁42bが開とされるとともに、フロント膨張弁42cがゼロ開度可能な電気式である場合にはフロント膨張弁42cの開度がゼロとされていない。また、フロントブロワ22がオンとされている。
リア空調用熱交換器33に冷媒を流入してリア空調装置30が作動(オン)しているときは、圧縮機41aがオンとされリアエバ前電磁弁43bが開とされている。また、リアブロワ32がオンとされている。
【0049】
制御装置60は、フロント空調装置20と、リア空調装置30と、冷凍サイクル40と、冷却水回路50と、を制御可能である。
【0050】
図2に示すように、制御装置60の入力側には、フロントエバフィンセンサ23a、リアエバ後センサ33a、電池温度センサ81、車室温度を検知する内気センサ70,車外温度を検知する外気センサ71,日射量を検知する日射センサ72、が接続されている。制御装置60には、さらに、車両の乗員がフロント空調装置20およびリア空調装置30のオン/オフ、空調温度の設定等の操作を行うための操作部73、等が接続されている。
【0051】
制御装置60は、フロント空調装置20および/またはリア空調装置30が作動(オン)しているとき、作動(オン)している空調装置における空調ダクト21,31から吹き出される空調空気の目標温度である目標吹出温度(TAO)を算出する。制御装置60は、下記数式(1)を用いてTAOを算出する。
TAO=Kset×Tset-Kr×Tr-Kam×Tam-Ks×Ts+C
・・・(1)
なお、Tsetは、乗員が設定した設定温度である。Trは、内気センサ70によって検出される車室温度である。Tamは、外気センサ71によって検出される外気温である。Tsは、日射センサ72によって検出される日射量である。また、Kset、Kr、Kam、Ksはゲインであり、Cは補正用の定数である。
【0052】
制御装置60の出力側には、圧縮機41a、フロントエバ前電磁弁42b、リアエバ前電磁弁43b、電池用電磁弁45d、フロント膨張弁42c、電池用膨張弁45e、ウォータポンプ51a、水加熱ヒータ51b、フロントブロワ22,フロント内外気切替ドア26,フロントエアミックスドア27、PTCヒータ25、リアブロワ32,リア内外気切替ドア35,リアエアミックスドア36、等が接続されている。
【0053】
ここで、電池は、高温になると劣化しやすくなる。そのため、電池温度が上昇して電池を冷却する必要が生じた際(電池冷却要求時)には、制御装置60は圧縮機41aをオンにするとともに電池電磁弁45dを開にして電池冷却用熱交換器45aに冷媒が流れるようにしている。しかし、フロント、リアの少なくともどちらか一方の空調用熱交換器23,33に冷媒を流入してフロント、リアの少なくともどちらか一方の空調装置20,30が作動しているときに電池冷却要求があった場合、電池電磁弁45dを開にして冷媒の一部を電池冷却用熱交換器45aに流すと、作動している空調装置20,30の空調用熱交換器23,33へ流れる冷媒流量が減るため、空調用熱交換器23,33における空気の冷却能力が低下し乗員の空調快適性を損なうおそれがある。そのため、制御装置60は、フロント、リアの少なくともどちらか一方の空調用熱交換器23,33に冷媒を流入してフロント、リアの少なくともどちらか一方の空調装置20,30が作動しているときであってクールダウン中にあっては、冷媒の電池冷却用熱交換器45aへの流れを禁止して電池冷却を休止するようにしている(図3)。
【0054】
図3は、制御装置60の制御ルーチンを示すフローチャートである。図3は、電池冷却要求があった際に電池冷却を禁止するか許可するかを判定する、フローチャートである。
【0055】
まず、ステップS1で、電池冷却要求があるか否かを判定する。ステップS1で電池冷却要求がないと判定した場合には、何もせずそのままエンドステップに進む。一方、ステップS1で電池冷却要求があると判定した場合には、ステップS2に進む。
【0056】
ステップS2では、フロント空調用熱交換器23に冷媒を流入してフロント空調装置20が作動しているか否かを判定する。ステップS2でフロント空調用熱交換器23に冷媒を流入してフロント空調装置20が作動していないと判定した場合には、ステップS3に進む。一方、ステップS2でフロント空調用熱交換器23に冷媒を流入してフロント空調装置20が作動していると判定した場合には、ステップS4に進む。
【0057】
ステップS3では、リア空調用熱交換器33に冷媒を流入してリア空調装置30が作動しているか否かを判定する。ステップS3でリア空調用熱交換器33に冷媒を流入してリア空調装置30が作動していないと判定した場合には、フロント、リアの空調用熱交換器23,33のどちらにも冷媒が流れていないため、ステップS6に進み、電池冷却を許可する。そして、電池電磁弁45dを開にする信号を出力して、エンドステップに進む。一方、ステップS3でリア空調用熱交換器33に冷媒を流入してリア空調装置30が作動していると判定した場合には、ステップS4に進む。
【0058】
ステップS4では、フロント、リアの空調装置20,30のうち作動している空調装置20,30がクールダウン中か否かを判定する。なお、クールダウン中か否かは、フロント、リアのそれぞれで、TAOから決定される目標吹出温度と実際の環境下で使われる吹出温度に乖離があるか否かで判断する。実際の環境下で使われる吹出温度は、クールダウン中にあってはそれぞれの空調用熱交換器23,33の温度または空調用熱交換器23,33の下流側の温度と略等しいため、フロント空調装置20にあってはエバフィンセンサ23aで検知し、リア空調装置30にあってはリアエバ後センサ33aで検知する。
【0059】
ステップS4で、作動している空調装置がいずれもクールダウン中ではないと判定した場合には、クールダウン終了後であると判定し、ステップS6に進み、電池冷却を許可する。そして、電池電磁弁45dを開にする信号を出力して、エンドステップに進む。一方、ステップS4で、作動している空調装置の1つでもクールダウン中であると判定した場合には、ステップS5に進み、電池冷却を許可せず休止して、エンドステップに進む。
【0060】
ところで、制御装置60が電池冷却を許可せず休止する時間(電池冷却休止時間)が比較的長い場合、電池冷却ができず電池が劣化するおそれがある。そのため、電池冷却休止時間には、最大値である基準禁止時間が予め設定されている。しかし、フロントとリアのどちらか一方の空調用熱交換器23,33に冷媒を流入してフロントとリアのどちらか一方の空調装置20,30のみが作動しているときよりも、フロントとリアの両方の空調用熱交換器23,33に冷媒を流入してフロントとリアの両方の空調装置20,30が作動しているときの方が、乗員の快適性を確保することができるまでの時間(クールダウンの時間)が長くなる。これは、フロント、リアのどちらか一方の空調装置20,30が作動しているときよりも、フロント、リアの両方の空調装置20,30が作動しているときの方が、フロント、リアのそれぞれの空調装置20,30に流れる冷媒の量が少なくなるからである。そこで、制御装置60は、フロント、リアのどちらか一方の空調用熱交換器23,33に冷媒を流入してフロントとリアのどちらか一方の空調装置20,30のみが作動しているときよりも、フロントとリアの両方の空調用熱交換器23,33に冷媒を流入してフロントとリアの両方の空調装置20,30が作動しているときの方が、基準禁止時間を長くしている(図4)。
【0061】
図4は、電池冷却休止のマトリックスの一例を示している。図4では、フロント空調装置20とリア空調装置30のどちらか一方のみが作動(ON)しているとき(前提2,3)には、電池冷却休止時間の最大値である基準禁止時間が20分とされており、フロント空調装置20とリア空調装置30の両方が作動(ON)しているとき(前提1)には、電池冷却休止時間の最大値である基準禁止時間が30分とされている。
【0062】
ただし、電池冷却休止時間を一律に最大値である基準禁止時間に設定すると、電池温度が比較的高い場合には電池冷却が遅れ電池が劣化するおそれがある。そこで、制御装置60は、実際の電池冷却休止時間を、基準禁止時間内で所定時間(所定時間≦基準禁止時間)が経過するまでとしている。
【0063】
この所定時間は、図5に示すように、電池の温度に基づく電池冷却要求レベルに応じて決定される。図5は、フロント、リアのどちらか一方の空調用熱交換器23,33に冷媒を流入してフロントとリアのどちらか一方の空調装置20,30のみが作動しているとき、すなわち基準禁止時間が20分とされているときにおける、電池冷却休止タイマーの一例を示している。
【0064】
図5では、電池冷却要求時における電池の温度40℃以上を、レベル1~レベル6の電池冷却要求レベルに分類している。そして、電池冷却要求レベルが大になる程(電池温度が高くなる程)、実際の電池冷却休止させる時間(所定時間)が短くされている。
【0065】
なお、目標吹出温度TAOが変化したとき、基準禁止時間と所定時間が再設定されるようになっている。
【0066】
つぎに、本発明実施例の作用、効果を説明する。
【0067】
(A)フロント空調用熱交換器23とリア空調用熱交換器33のどちらか一方のみに冷媒を流入してフロント空調装置20とリア空調装置30のどちらか一方のみを作動させるときより、フロント空調用熱交換器23とリア空調用熱交換器33の両方に冷媒を流入してフロント空調装置20とリア空調装置30の両方を作動させるときの方が、基準禁止時間が大とされているため、つぎの作用、効果を得ることができる。
フロントとリアのどちらか一方の空調装置20,30のみを作動させるときは、フロントとリアの両方の空調装置20,30を作動させるときに比べて、フロントまたはリアの乗員の快適性が達成されるまでの時間が相対的に短くて済むため、基準禁止時間を相対的に小、すなわち電池冷却を休止する時間が相対的に短くても、乗員の快適性を達成できる。
一方、フロントとリアの両方の空調装置20,30を作動させるときは、フロントとリアのどちらか一方の空調装置20,30のみを作動させるときに比べて、乗員の快適性を達成するのに相対的に長い時間がかかるが、基準禁止時間が相対的に大、すなわち電池冷却を休止する時間が相対的に長くされているため、乗員の快適性を達成することができる。
よって、フロントとリアのどちらか一方の空調装置20,30のみを作動させるとき、フロントとリアの両方の空調装置20,30を作動させるとき、の両方で乗員の快適性を達成できる。
また、フロントとリアのどちらか一方の空調装置20,30のみを作動させるときの基準禁止時間が、フロントとリアの両方の空調装置20,30を作動させるときの基準禁止時間に一律に合わせられている場合と異なり、電池冷却を過剰に休止することを抑制して電池の劣化を抑制することもできる。
【0068】
(B)クールダウン中に冷媒の電池冷却用熱交換器45aへの流れを禁止して電池冷却を休止するようにされている。そのため、クールダウン中にあっては、電池冷却を休止させて乗員の快適性を早期に達成させることができる。一方、クールダウン終了後にあっては、冷媒の電池冷却用熱交換器45aへの流れを休止することなく許可して、電池を冷却することができる。
【0069】
(C)所定時間が、電池の温度に基づく電池冷却要求レベルに応じて決定されるため、電池の温度が高くなるにつれて所定時間を短くできる。よって、電池の温度に基づく電池冷却要求レベルに応じて決定されない場合に比べて、より電池の劣化を抑制することができる。
【0070】
(D)目標吹出温度(TAO)が変化したとき、基準禁止時間と所定時間が再設定されるため、その都度電池温度に照らし合わせた設定を行うことができ、電池冷却を過剰に休止してしまうことを抑制することができる。
【符号の説明】
【0071】
10 車両用空調装置
20 フロント空調装置
21 フロント空調ダクト
22 フロントブロワ
23 フロント空調用熱交換器
30 リア空調装置
31 リア空調ダクト
32 リアブロワ
33 リア空調用熱交換器
40 冷凍サイクル
41 共通流路
42 フロント側空調流路
42b フロントエバ前電磁弁
42c フロント膨張弁
43 リア側空調流路
43b リアエバ前電磁弁
43c リア膨張弁
44 空調側流路
45 電池冷却側流路
45a 電池冷却用熱交換器
45d 電池側電磁弁
45e 電池側膨張弁
50 冷却水回路
60 制御装置
80 電池パック
図1
図2
図3
図4
図5