(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】画像表示システム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240918BHJP
G01C 21/36 20060101ALI20240918BHJP
H04N 23/60 20230101ALI20240918BHJP
H04N 23/63 20230101ALI20240918BHJP
G09G 5/00 20060101ALI20240918BHJP
G09G 5/38 20060101ALI20240918BHJP
G09G 5/373 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
H04N7/18 J
G01C21/36
H04N23/60 500
H04N23/63 330
G09G5/00 510A
G09G5/00 550C
G09G5/38 100
G09G5/373 300
(21)【出願番号】P 2021189147
(22)【出願日】2021-11-22
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 英樹
(72)【発明者】
【氏名】青木 隆行
(72)【発明者】
【氏名】太田 龍佑
(72)【発明者】
【氏名】村木 均至
(72)【発明者】
【氏名】稲田 智洋
【審査官】公文代 康祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-204616(JP,A)
【文献】特開2003-030628(JP,A)
【文献】特開2007-055365(JP,A)
【文献】特開平10-176928(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105522971(CN,A)
【文献】特開2007-334566(JP,A)
【文献】特開2010-256878(JP,A)
【文献】国際公開第2018/216402(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G01C 21/36
H04N 23/60-23/698
G09G 5/00- 5/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者である運転者の視線に沿った画像を撮像する撮像器、AR画像を投影する投影器、及び前記AR画像が投影されるハーフミラーを備える、ARグラスと、
前記撮像器による撮像画像に基づいて、前記AR画像の前記ハーフミラーへの投影位置及びサイズを定める制御部と、
車室内に設けられるマーカと、
を備える画像表示システムであって、
前記マーカは、前記車室前方の内装露出面に設けられ、所定の基準線に沿って互いに離隔配置された第1マーカ及び第2マーカを含み、
前記制御部は、
前記撮像器による撮像画像内の前記第1マーカ及び前記第2マーカの画像平面座標に基づいて、実世界における前記基準線に対する前記第1マーカの前記撮像器への入射角である第1入射角と、前記基準線に対する前記第2マーカの前記撮像器への入射角である第2入射角を求める入射角算出部と、
求められた前記第1入射角、前記第2入射角、及び実世界における前記基準線に沿った前記第1マーカと前記第2マーカとのマーカ間離隔距離に基づいて、前記撮像器から前記第1マーカまでの距離であるカメラ-マーカ間距離を求める離隔距離算出部と、
前記カメラ-マーカ間距離に基づいて、前記画像平面座標における、前記第1マーカを基準とした前記AR画像の投影位置及び前記AR画像のサイズを調整する表示調整部と、
を備え
、
前記第1マーカ及び前記第2マーカは、インストルメントパネルの露出面のうち、車幅方向中央かつ車両前後方向に配列され、
前記第1マーカは、前記第2マーカよりも車両前方に配置され、
前記第1マーカの面積は、前記第2マーカの面積以下である、
画像表示システム。
【請求項2】
装着者である運転者の視線に沿った画像を撮像する撮像器、AR画像を投影する投影器、及び前記AR画像が投影されるハーフミラーを備える、ARグラスと、
前記撮像器による撮像画像に基づいて、前記AR画像の表示枠である画像表示フレームの、前記ハーフミラーへの投影位置及びサイズを定める制御部と、
車室内に設けられるマーカと、
を備える画像表示システムであって、
前記マーカは、前記車室前方の内装露出面に設けられ、所定の基準線に沿って互いに離隔配置された第1マーカ及び第2マーカを含み、
前記制御部は、
前記撮像器による撮像画像内の前記第1マーカ及び前記第2マーカの画像平面座標に基づいて、実世界における前記基準線に対する前記第1マーカの前記撮像器への入射角である第1入射角と、前記基準線に対する前記第2マーカの前記撮像器への入射角である第2入射角を求める入射角算出部と、
求められた前記第1入射角、前記第2入射角、及び実世界における前記基準線に沿った前記第1マーカと前記第2マーカとのマーカ間離隔距離に基づいて、前記撮像器から前記第1マーカまでの距離であるカメラ-マーカ間距離を求める離隔距離算出部と、
前記カメラ-マーカ間距離に基づいて、前記画像平面座標における、前記第1マーカを基準とした前記画像表示フレームの投影位置及び前記画像表示フレームのサイズを調整する表示調整部と、
を備える、画像表示システム。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の画像表示システムであって、
前記第1マーカ及び前記第2マーカは発光部材である、画像表示システム。
【請求項4】
請求項1または2に記載の画像表示システムであって、
前記第1マーカ及び前記第2マーカは互いに異なる形状である、画像表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、拡張現実(AR、Augmented Reality)画像を表示する表示システムが開示される。
【0002】
従来から、拡張現実技術を用いた画像表示システムが知られている。例えば特許文献1では、ウェアラブルデバイスの一種であるスマートグラスが運転者に掛けられる。スマートグラスにはカメラ及びディスプレイが設けられる。カメラによる撮像画像に対して画像認識が行われ、画像中の車室内の各内装部品が認識される。さらに認識された内装部品のうち、運転操作に直接関係の無い、ピラーやルーフの色や模様が変更するような画像がディスプレイに表示(重畳)される。
【0003】
また特許文献2では、道案内をするためのキャラクタであるARペースカーの画像が、スマートグラスのディスプレイに投影される。このARペースメーカーの投影位置を定めるために、ダッシュボードの上には角柱形状のマーカが設置される。このマーカが画像認識されることで、マーカを基準に、ARペースカーの投影位置を定めることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-64906号公報
【文献】特開2017-129406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、マーカを基準にしてAR画像を投影させる場合、ウェアラブル端末を装着する運転者の姿勢や位置によっては、AR画像の一部がAピラーに重なって見える等、AR画像の投影状態に不具合が生じるおそれがある。
【0006】
そこで本明細書では、AR画像の投影位置及びサイズの設定精度を従来よりも向上可能な、画像表示システムが開示される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書では、画像表示システムが開示される。当該システムは、ARグラス、制御部、及びマーカを備える。ARグラスは、装着者である運転者の視線に沿った画像を撮像する撮像器、AR画像を投影する投影器、及びAR画像が投影されるハーフミラーを備える。制御部は、撮像器による撮像画像に基づいて、AR画像のハーフミラーへの投影位置及びサイズを定める。マーカは、車室内に設けられる。マーカは、車室前方の内装露出面に設けられ、所定の基準線に沿って互いに離隔配置された第1マーカ及び第2マーカを含む。制御部は、入射角算出部、離隔距離算出部、及び表示調整部を備える。入射角算出部は、撮像器による撮像画像内の第1マーカ及び第2マーカの画像平面座標に基づいて、実世界における上記基準線に対する第1マーカの撮像器への入射角である第1入射角と、基準線に対する第2マーカの撮像器への入射角である第2入射角を求める。離隔距離算出部は、求められた第1入射角、第2入射角、及び実世界における基準線に沿った第1マーカと第2マーカとのマーカ間離隔距離に基づいて、撮像器から第1マーカまでの距離であるカメラ-マーカ間距離を求める。表示調整部は、カメラ-マーカ間距離に基づいて、画像平面座標における、第1マーカを基準としたAR画像の投影位置及びAR画像のサイズを調整する。
【0008】
上記構成によれば、第1入射角、第2入射角、及びマーカ間距離を用いた三角測量法により、カメラ-マーカ間距離が求められる。さらにカメラ-マーカ間距離に基づいて、AR画像の投影位置及びサイズが定められる。
【0009】
また上記構成において、第1マーカ及び第2マーカは発光部材であってよい。
【0010】
上記構成によれば、マーカの識別力が確保できる。
【0011】
また上記構成において、第1マーカ及び第2マーカは互いに異なる形状であってよい。
【0012】
上記構成によれば、第1マーカと第2マーカとの識別力が確保できる。
【0013】
また上記構成において、第1マーカ及び第2マーカは、インストルメントパネルの露出面のうち、車幅方向中央かつ車両前後方向に配列されてよい。
【0014】
三角測量法を用いる場合、第1マーカ及び第2マーカがカメラの光軸上に配列されると三角形が形成されず、カメラ-マーカ間距離を求めることが困難となる。運転者の視界に入りつつ、かつその中央から外れる箇所に、第1マーカ及び第2マーカが設けられることで、三角測量法における三角形を確度良く形成可能となる。また、車幅方向中央かつ車両前後方向に第1マーカ及び第2マーカが配列されることで、当該マーカは進行方向を示すように視認され、外観上の違和感が抑制される。
【0015】
また上記構成において、第1マーカは、第2マーカよりも車両前方に配置されてよい。さらに、第1マーカの面積は、第2マーカの面積以下であってよい。
【0016】
上記構成によれば、第1マーカは第2マーカと比較して、運転者からより遠方に離隔される。したがって第1マーカに対する画像認識を行う上で、第2マーカよりも大きくなるように第1マーカのサイズを定めることが考えられる。その一方で、第1及び第2マーカはインストルメントパネルに車両前後方向に設けられるところ、前方のマーカが後方のマーカよりも大きいと、進行方向を示す効果に鑑みて運転者の違和感を惹起させるおそれがある。上記構成のように、第1マーカの面積を第2マーカの面積以下とすることで、運転者が違和感を生じることを抑制可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本明細書で開示される画像表示システムでは、AR画像の投影位置及びサイズの設定精度が従来よりも向上可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】運転者の視界を例示する透視図(パース)である。
【
図3】本実施形態に係る画像表示システムのハードウェア構成を例示する図である。
【
図4】本実施形態に係る画像表示システムの機能ブロックを例示する図であって、初期設定時の各ブロックの処理内容を例示したものである。
【
図6】本実施形態に係る画像表示システムの機能ブロックを例示する図であって、AR画像表示フロー実行時の各ブロックの処理内容を例示したものである。
【
図8】撮像器による撮像画像に画像平面座標を重畳した図である。
【
図9】三角測量法によるカメラ-マーカ間距離の算出プロセスを説明する図である。
【
図10】撮像画面平面座標における、画像表示フレームの配置について説明する図である。
【
図11】ARグラスにAR画像が表示されたときの、運転者の視界を例示する透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、実施形態に係る画像表示システムが図面を用いて説明される。以下で説明する形状、材料、個数、及び数値は、説明のための例示であって、画像表示システムの仕様に応じて適宜変更することができる。また以下ではすべての図面において同等の要素には同一の符号が付される。
【0020】
図1には、車両の運転者による視界が例示される。なお、
図1-
図11に例示される実施形態では、右ハンドル車による左側通行の例が示される。しかしながら、本実施形態に係る画像表示システムは、左ハンドル車及び右側通行の場合であっても適用可能である。
【0021】
図1、
図3を参照して、本実施形態に係る画像表示システムは、ARグラス30、運転支援ECU50(制御部)、ならびに第1マーカ10及び第2マーカ12を含んで構成される。
【0022】
図2に例示されるように、運転者100は眼鏡型のウェアラブル端末であるARグラス30を装着する。ARグラス30を掛け、さらに所望の運転支援サービスを有効(オン状態)にした場合に、運転者100の視界に、
図11に例示されるような運転支援用のAR画像62が表示される。
【0023】
後述されるように、AR画像62はARグラス30のハーフミラー36に投影される。ハーフミラー36への投影に当たり、第1マーカ10(
図1参照)及び第2マーカ12を利用した三角測量法に基づき、カメラ-マーカ間距離D1(
図9参照)が求められる。カメラ-マーカ間距離D1に基づいて、画像表示フレーム60(
図10参照)の位置及びサイズが定められる。さらに画像表示フレーム60に収まるようにして、
図11に例示されるようなAR画像62がARグラス30(
図2参照)のハーフミラー36に投影される。
【0024】
<マーカ>
図1を参照して、車室内にはAR画像62投影用のマーカが設けられる。このマーカは、第1マーカ10及び第2マーカ12を含む。第1マーカ10及び第2マーカ12はともに車室前方の内装露出面に設けられる。例えばインストルメントパネル20の露出面である天面20Aに、所定の基準線L1に沿って第1マーカ10及び第2マーカ12が互いに離隔配置される。
【0025】
ここで、基準線L1は乗員に視認可能である必要は無い。例えば基準線L1として、車幅方向中央かつ車両前後方向に延設される車両中心線が用いられる。車両中心線は設計上水平面上に延設される。このことから例えば、インストルメントパネル20の天面20Aのうち、水平面部分に第1マーカ10及び第2マーカ12が設けられる。
【0026】
第1マーカ10及び第2マーカ12は、平面図形であってよい。例えば第1マーカ10及び第2マーカ12は、天面20A上に塗布されたパターンであってよい。またこれに代えて、第1マーカ10及び第2マーカ12は、天面20Aに貼着されたシールであってもよい。
【0027】
第1マーカ10及び第2マーカ12は、ともに発光部材であってよい。例えば第1マーカ10及び第2マーカ12は、蛍光塗料を含んでもよい。第1マーカ10及び第2マーカ12を発光部材とすることで、昼夜を問わずこれらのマーカの識別性が確保できる。
【0028】
また第1マーカ10及び第2マーカ12は、互いに異なる形状であってよい。例えば第1マーカ10は三角形であって、第2マーカ12は四角形であってよい。このような形状差を設けることで、第1マーカ10と第2マーカ12との識別性が確保できる。
【0029】
また第1マーカ10及び第2マーカ12は、インストルメントパネル20の天面20Aのうち、車幅方向中央かつ車両前後方向に配置されてよい。
【0030】
後述されるように、AR画像62の投影制御プロセスでは、第1マーカ10、第2マーカ12、及びARグラス30(
図2参照)の撮像器32を用いた三角測量法により、第1マーカ10と撮像器32との距離であるカメラ-マーカ間距離D1(
図9参照)が求められる。第1マーカ10、第2マーカ12が撮像器32の光軸L0上に配列されると三角測量法における三角形が形成されなくなる。
【0031】
そこで本実施形態では、運転者100の視界に入りつつ、かつその中央から外れる箇所に、第1マーカ10及び第2マーカ12が設けられる。これにより、三角測量法における三角形が確度良く形成可能となる。
【0032】
また、車幅方向中央かつ車両前後方向に第1マーカ10及び第2マーカ12が配列されることで、当該マーカ10,12は進行方向を示すように視認され、外観上の違和感が抑制される。
【0033】
さらに、第1マーカ10は、第2マーカ12よりも車両前方に配置されてよい。この場合において、第1マーカ10の面積は、第2マーカ12の面積以下であってよい。
【0034】
図1を参照して、第1マーカ10は第2マーカ12と比較して、運転者100からより遠方に離隔される。したがって画像認識において第1マーカ10を確実に認識するために、第2マーカ12よりも第1マーカ10のサイズを大きくすることが考えられる。
【0035】
その一方で、第1マーカ10及び第2マーカ12はインストルメントパネル20の天面20Aに車両前後方向に設けられる。この場合、前方の第1マーカ10が後方の第2マーカ12よりも大きいと、進行方向を示す効果に鑑みて運転者100の違和感を惹起させるおそれがある。
【0036】
そこで
図1に例示されるように、第1マーカ10の面積を第2マーカ12の面積以下とすることで、運転者100が違和感を生じることを抑制可能となる。
【0037】
<ARグラス>
図2には、本実施形態に係る画像表示システムに含まれるARグラス30の模式図が例示される。ARグラス30は眼鏡型のウェアラブル端末であって、いわゆるヘッドアップディスプレイ(HUD)としての機能を備える。
【0038】
後述されるように、ハーフミラー36または装着者である運転者100の網膜にAR画像が表示される。これにより、運転者100は前方を見ながら、つまり頭を上げたまま(ヘッドアップで)画像の閲覧が可能となる。
【0039】
ARグラス30は、
図3に例示されるように、車載電子機器である運転支援ECU50と通信可能となっている。例えばBluetooth(登録商標)及びWiFi(登録商標)等の無線通信技術が用いられる。またこれに代えて、運転支援ECU50とARグラス30とがケーブル等を用いて有線通信される。
【0040】
図2には、ARグラス30の模式図が例示される。眼鏡の部品であるテンプル(つる)やリム(フレーム)といった一般部品は図示が省略される。ARグラス30は、撮像器32、投影器34、ハーフミラー36、及び制御器38を含んで構成される。
【0041】
撮像器32は、例えばARグラス30のテンプル脇に設けられる。撮像器32は、装着者である運転者100の視線に沿った画像を撮像可能となっている。例えば撮像器32は、運転者100が正面を見た正視状態において、視線と平行となるように光軸が位置決めされる。
【0042】
撮像器32は、例えば単眼カメラから構成される。例えば撮像器32は、撮像素子が面上に配列された画素アレイ32A(
図9参照)を含む、CCDカメラまたはCMOSカメラから構成される。さらに撮像器32は、人間の視野角に最も近いと言われる焦点距離50mmとなるようにレンズ条件が定められる。レンズ32Bは例えば50mm単焦点レンズが用いられる。
【0043】
投影器34はAR画像を投影する。例えば投影器34はARグラス30のリム上方に配置されるマイクロプロジェクタである。投影器34はいわゆる透過型プロジェクタであって、ハーフミラー36に向かってAR画像を投影する。またこれに代えて、投影器34はいわゆる網膜投影型プロジェクタであって、運転者100の網膜にAR画像を投影する。
図2には、投影器34は透過型プロジェクタとして図示されている。
【0044】
ハーフミラー36はARグラス30のレンズ部分であって、実世界からの光(像)が運転者100まで透過される。また投影器34からAR画像がハーフミラー36に投影される。このようにして、実世界の風景(実景)にAR画像が重畳された拡張現実画像がハーフミラー36に表示される。
【0045】
制御器38は運転支援ECU50(
図3参照)と通信可能であるとともに、撮像器32及び投影器34を制御する。制御器38は例えばコンピュータ装置から構成され、そのハードウェア構成として、CPU38A、入出力コントローラ38B、ストレージ38C、システムメモリ38D、ジャイロセンサ38E、加速度センサ38F、及び地磁気センサ38Gを備える。これらの構成部品は内部バスに接続される。
【0046】
入出力コントローラ38Bは、撮像器32、投影器34、及び運転支援ECU50を含む外部機器との情報の入出力を管理する。システムメモリ38Dは、CPU38Aによって実行されるオペレーションシステム(OS)が使用する記憶装置である。
【0047】
ストレージ38Cは、外部記憶装置であって、例えば後述する初期設定プロセス(
図5参照)や、AR画像表示プロセス(
図7参照)を実行させるためのプログラムが記憶される。ストレージ38Cは、例えばハードディスクドライブ(HDD)やソリッドステートドライブ(SSD)から構成される。
【0048】
加速度センサ38Fは重力加速度を検出する。例えば加速度センサ38Fは、直交する3軸成分(X,Y,Z)の加速度を検出する。ジャイロセンサ38EはARグラス30の角速度を検出する。例えばジャイロセンサ38Eは、加速度センサ38Fにおける直交する3軸成分の角速度(ロール、ピッチ、ヨー)を検出する。また地磁気センサ38Gは磁北方向及び当該方向における磁力の強さを検出する。
【0049】
これら3種のセンサはいずれもARグラス30に取り付けられており、装着者である運転者100の頭の挙動に起因して、基準となる座標系(センサ座標系)がグローバル座標系に対して変位する。センサ座標系に基づく加速度センサ38F及びジャイロセンサ38Eの検出値は、グローバル座標系上の直交座標系に基づく加速度及び角速度に変換される。この変換は、地磁気センサ38Gの検出値及びカルマンフィルタを基づいたセンサ・フュージョン処理によって実行可能であることが知られている。センサ・フュージョンについては既知であるためここでは説明が省略される。
【0050】
後述されるように、撮像器32の初期状態(
図9参照)からの変位量が、グローバル座標系上の直交座標系に基づく加速度及び角速度として求められ、これらの値が入射角θ11,θ12の算出に用いられる。
【0051】
なお、センサ座標系からグローバル座標系への変換に際して、加速度センサ38Fが車両の加速度を検出することが考えられる。この場合には、上記センサ・フュージョンの前処理として、後述する入射角算出部52C(
図4参照)が、例えばカルマンフィルタの逆行列を用いて、車両の加速度センサ(グローバル座標系上の直交座標に基づく)の検出値をセンサ座標系に逆変換してもよい。さらに入射角算出部52Cは、加速度センサ38Fの直交する3軸の値から、逆変換後の検出値の値を差し引いてもよい。
【0052】
また、ストレージ38Cに記憶された初期設定プログラム及びAR画像表示プログラムをCPU38Aが実行することで、制御器38には
図4に例示される機能ブロックが生成される。この機能ブロックは、投影制御部39A及び撮像制御部39Bを含む。これらのブロックのデータ処理内容は後述される。
【0053】
<運転支援ECU>
画像表示システムの制御部である運転支援ECU50は、撮像器32による撮像画像に基づいて、AR画像のハーフミラー36への投影位置及びサイズを定める。運転支援ECU50は、車載の電子コントロールユニットである。運転支援ECU50は例えばコンピュータ装置から構成される。
【0054】
また後述されるように、運転支援ECU50は目的地までのナビゲーション機能を備える。さらに運転支援ECU50は、車線逸脱時に警報を鳴らしたり、AR画像として交通標識を表示させたりする、いわゆるADAS(先進運転支援システム、Advanced Driving Assistant System)機能を備える。
【0055】
図3には運転支援ECU50のハードウェア構成が例示される。運転支援ECU50は、CPU50A、入出力コントローラ50B、ストレージ50C、システムメモリ50D、GPU50E、フレームメモリ50F、及びGNSS50Gを備える。なお以下では、ARグラス30の制御器38と同一名のハードウェアについては適宜説明が省略される。
【0056】
GPU50E(Graphics Processing Unit)は、画像処理用の演算装置であって、後述する画像認識を行う際に主に稼働される。フレームメモリ50Fは、撮像器32により撮像されさらにGPU50Eにより演算処理された画像を記憶する記憶装置である。
【0057】
GNSS50G(全球測位衛星システム、Global Navigation Satellite System)は、人工衛星によって測位を行うシステムであって、例えばGPS(グローバル・ポジショニング・システム、Global Positioning System)が用いられる。GNSS50Gには、人工衛星から、緯度、経度、高度を含む位置座標情報が送信される。
【0058】
ストレージ50Cに記憶された初期設定プログラム及びAR画像表示プログラムをCPU50Aが実行することで、運転支援ECU50には
図4に例示される機能ブロックが生成される。運転支援ECU50は、情報処理機能を備える機能ブロックとして、画像認識部52A、ずれ量算出部52B、入射角算出部52C、離隔距離算出部52D、表示調整部52E、位置情報取得部52F、及び案内情報作成部52Gを備える。これらの機能ブロックの処理内容は後述される。
【0059】
また運転支援ECU50は、記憶部として、学習済みモデル記憶部52H、初期画像記憶部52I、撮像設定記憶部52J、及び地図データ記憶部52Kを備える。学習済みモデル記憶部52Hには、第1マーカ10及び第2マーカ12を画像認識するための学習済みモデルが記憶される。例えばこの学習済みモデルとして、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)が学習済みモデル記憶部52Hに実装される。例えばこのニューラルネットワークは、第1マーカ10の画像を入力画像とし、出力ラベルを「第1マーカ」とする複数の教師データと、第2マーカ12の画像を入力画像とし、出力ラベルを「第2マーカ」とする複数の教師データを用いて学習される。
【0060】
初期画像記憶部52Iには、撮像器32が撮像し得る初期画像データが記憶される。初期画像を説明するために、撮像器32の基準平面S(
図9参照)が用いられる。基準平面Sは、光軸L0を縦軸とし光軸L0に垂直な軸を横軸とする平面である。
【0061】
図9に例示されるように、基準平面Sが水平面と平行であってかつ光軸L0が基準線L1と平行である状態(初期状態)における、撮像器32の撮像画像が初期画像となる。初期画像データには、第1マーカ10及び第2マーカ12の輪郭線の座標情報(例えば
図8に例示されるu軸-v軸上の座標点情報)が重畳される。
【0062】
図4を参照して、撮像設定記憶部52Jには、撮像器32の撮像設定情報が記憶される。撮像設定情報には、画素アレイ32Aにおける各画素の、光軸L0に対する入射角情報が含まれる。
【0063】
図9に例示されるように、実世界の光は、光軸L0に対して所定の入射角にて画素アレイ32A上の各画素に入射する。このことから、画素アレイ32A上の画素位置と当該画素に入射した光の入射角とは一対一の関係を持つ。例えば撮像設定記憶部52Jには、撮像器32の焦点距離と、これに応じた画素位置と入射角との対応関係情報が記憶される。
【0064】
また撮像設定記憶部52Jには、第1マーカ10を基準としたAR画像の投影位置及びAR画像のサイズの基準値(画像表示基準値)が記憶される。例えば
図10を参照して、画像平面において、画像表示フレーム60が設定される。画像表示フレーム60はAR画像の表示枠を示す。この画像表示フレーム60のサイズ、例えば上辺、下辺、右辺、左辺の角度及び長さ情報及び面積情報が撮像設定記憶部52Jに記憶される。
【0065】
さらに画像表示フレーム60の車幅方向内側下端P3の、画像平面上の座標が、第1マーカ10の画像平面上の中心点P11を基準に定められる。例えば中心点P11からΔu,Δv離隔した座標(u11+Δu,v11+Δv)に幅方向内側下端P3が配置される。この、中心点P11からの変位情報が、撮像設定記憶部52Jに記憶される。
【0066】
地図データ記憶部52Kには、緯度及び経度を含む地理座標系に基づく地図データが記憶される。また地図データ記憶部52Kには、運転者100等によって設定された目的地の位置情報(緯度及び経度)が記憶される。
【0067】
<初期設定フロー>
図5には、本実施形態に係る画像表示システムによる、初期設定フローが例示される。この初期設定フローでは、撮像器32の基準平面Sが
図9に例示する初期状態となるようにARグラス30を位置決めさせて、そのときのジャイロセンサ38E、加速度センサ38F、及び地磁気センサ38Gの検出値が基準値に設定される。
【0068】
なお
図5の初期設定フロー及び
図7のAR画像表示フローでは、各ステップの実行主体が示される。(G)はARグラス30による処理を示し、(C)は運転支援ECU50による処理を示す。
【0069】
なおこの初期設定フローは、車両の走行前に実行される。例えば車両を起動させて、ナビゲーション機能を起動させたときに、運転支援ECU50からARグラス30の使用有無が運転者100に問いかけられる。例えば
図1に例示されるインパネディスプレイ28にARグラス30の使用有無画面が表示される。
【0070】
運転者100がARグラス30を装着し、さらにインパネディスプレイ28に表示された「はい」等のボタンアイコンを押下げ操作(タップ操作)すると、運転支援ECU50とARグラス30とが通信接続される。
【0071】
図4、
図5を参照して、ARグラス30の制御器38の撮像制御部39Bは、撮像器32に撮像指令を出力する。撮像器32により運転者100の視線に沿った撮像画像が得られると(S0)、その撮像画像データは、運転支援ECU50の画像認識部52Aに送信される(S1)。
【0072】
画像認識部52Aは、学習済みモデル記憶部52Hから学習済みモデル(例えばニューラルネットワーク)を呼び出し、受信した撮像画像中の第1マーカ10及び第2マーカ12を認識する(S2)。画像認識部52Aは、画像平面座標における、第1マーカ10及び第2マーカ12の輪郭線の座標情報(例えば
図8に例示されるu軸-v軸上の座標点情報)が重畳された撮像画像データをずれ量算出部52Bに送信する。
【0073】
ずれ量算出部52Bは撮像画像データと初期画像記憶部52Iに記憶された初期画像データとを比較して、両画像における第1マーカ10及び第2マーカ12の位置姿勢が一致しているか否かを判定する(S3)。
【0074】
第1マーカ10及び第2マーカ12の少なくとも一方がずれている場合、撮像器32の基準平面S(
図9参照)は同図に示す初期状態とは異なる位置、姿勢を取る。そこでずれ量算出部52Bは、初期画像データと撮像画像データとの、第1マーカ10及び第2マーカ12のずれ量を求めて、これを解消する補正方向を求める(S4)。
【0075】
求められたずれ量は表示調整部52Eに送信される。表示調整部52Eは、ずれ量に基づいたガイド画像を生成する。例えば初期状態の第1マーカ10及び第2マーカ12を示す画像データが生成される。表示調整部52Eは、生成したガイド画像データを投影制御部39Aに送信する(S5)。
【0076】
投影制御部39Aがガイド画像データを受信すると、投影器34に当該ガイド画像を投影させる(S6)。例えば投影器34はハーフミラー36にガイド画像を投影する。さらにその後、ステップS0に戻り、撮像器32による撮像が再度行われる。なおこの撮像時に、ガイド画像は投影が中断されてよい。
【0077】
一方、ステップS3にて撮像画像及び初期画像における第1マーカ10及び第2マーカ12の位置が一致している場合、ずれ量算出部52Bは、ジャイロセンサ38E、加速度センサ38F、及び地磁気センサ38Gの現在値、つまり基準平面Sが初期状態であるときの値を基準値に設定する(S7)。設定された基準値は初期画像記憶部52Iに記憶される。以上のようにして撮像器32の初期設定が完了し、
図7に例示されるAR画像表示フローが実行可能となる。
【0078】
<AR画像表示フロー>
本実施形態に係る画像表示システムに係る、AR画像表示フローでは、例えばARグラス30にAR画像としてナビゲーション画像が投影される。なお、実世界に仮想画像を重畳させるAR技術では、実世界の3次元座標と画像平面座標とが対応付けられる。この対応付けは2D3D対応とも呼ばれる。
【0079】
2D3D対応として、例えば実世界の3次元座標の各座標点とその写像である画像平面座標の各座標点とが対応付けられる。このような対応付けは、いわゆるPnP位置姿勢推定等の技術が用いられるが、その演算負荷は過大なものとなる。
【0080】
ここで、運転中の運転者100は基本的に進行方向前方に視線を定めており、そこからの変位量は、例えば歩行者の視線変位量と比較して少ない。つまり、運転者100に対するAR画像の投影は、例えば映画のスクリーンにキャプションを施す形態に近いものと考えられる。そこで、以下に説明されるAR画像表示フローでは、上述のPnP位置姿勢推定のような厳密な2D3Dを行わずに、より演算負荷の少ない形での、いわば粗い対応付けが行われる。
【0081】
図6、
図7を参照して、撮像制御部39Bは撮像器32に対して撮像指令を出力する。これを受けて撮像器32は運転者100の視線に沿った実世界の画像を撮像する。撮像器32による撮像画像データは画像認識部52Aに送信される(S10)。
【0082】
画像認識部52Aは、学習済みモデル記憶部52Hから学習済みモデル(例えばニューラルネットワーク)を呼び出し、撮像画像中の第1マーカ10及び第2マーカ12を認識する(S12)。
【0083】
さらに画像認識部52Aは、画像平面における第1マーカ10及び第2マーカ12の中心座標を求める(S14)。例えば
図8に例示されるように、撮像画像データはv軸を縦軸としu軸を横軸とする画像平面上のデータとして処理される。例えば光軸L0(
図9参照)は原点を通過して画像平面を垂直に通過する。
【0084】
図9を参照して第1マーカ10及び第2マーカ12の、画像平面上、言い換えると画素アレイ32A上の中心点P11,P12は、uv平面上の座標点として求められる。u軸及びv軸のスケール(1目盛り)は例えばそれぞれ画素の横寸法及び縦寸法であってよい。
【0085】
入射角算出部52Cには第1マーカ10及び第2マーカ12の画素アレイ32A上の中心点P11,P12の座標データが送信される。また入射角算出部52Cには、ジャイロセンサ38Eから撮像時点の回転角データが送信され、加速度センサ38Fから撮像時点の加速度データが送信される。なお上述のように、これらのデータはセンサ座標系における3軸成分データとなっている。さらに地磁気センサ38Gから撮像時点の方位データが入射角算出部52Cに送信される。
【0086】
入射角算出部52Cは、第1マーカ10の画素アレイ32A上の中心点P11のu軸成分に基づいて、
図9のような平面視における、実世界の第1マーカ10の中心点P1から入射した光が画素P11に受光される際の、光軸L0に対する入射角θ1を求める(S16)。
【0087】
上述したように、画素アレイ32A上の画素(正確には画素の位置)と光軸L0に対する入射角とが1対1に対応する。このような画素と入射角の対応関係は、例えば表形式で撮像設定記憶部52Jに記憶される。入射角算出部52Cは、撮像設定記憶部52Jに記憶された上記対応関係を参照して、画素アレイ32A上の中心点P11のu軸成分に対応する入射角θ1を求める。
【0088】
なお、
図9では、撮像器32の基準平面Sが初期状態である場合が示されており、この場合、光軸L0に対する入射角θ1は、第1マーカ10の、基準線L1に対する入射角θ11(第1入射角)と等しくなる。一方、運転者100の位置や姿勢によっては、基準平面Sが初期状態から変位する場合がある。この傾きは、入射角算出部52Cにより、ジャイロセンサ38E、加速度センサ38F、及び地磁気センサ38Gのそれぞれの検出値に基づいて検知され、その検知結果に基づいて第1入射角θ11が求められる(S17)。
【0089】
例えば上述したように、ジャイロセンサ38Eによるセンサ座標系の直交3軸成分(ロール、ピッチ、ヨー)及び加速度センサ38Fによるセンサ座標系の直交3軸成分(X軸成分、Y軸成分、Z軸成分)が、既知のカルマンフィルタ及び地磁気センサ38Gによる方位検出値を用いてグローバル座標系の各種値に変換される。
【0090】
さらに変換後のヨー角に基づいて、
図9における光軸L0の、基準線L1に対する傾きΔθが求められる。例えば
図9において光軸L0が反時計回りに傾いていれば、入射角θ1から傾きΔθが減じられた値が入射角θ11となる。また光軸L0が時計回りに傾いていれば、入射角θ1から傾きΔθが加えられた値が入射角θ11となる。
【0091】
さらに入射角算出部52Cは、第2マーカ12の画素アレイ32A上の中心点P12のu軸成分に基づいて、
図9のような平面視における、実世界の第2マーカ12の中心点P2から入射した光が画素P12に受光される際の、光軸L0に対する入射角θ2を求める(S18)。この際、上述したように、基準平面Sの初期状態からの変位がある場合にはその変位分、入射角θ2が補正され、第2マーカ12の、基準線L1に対する入射角θ12(第2入射角)が求められる(S19)。
【0092】
求められた第1入射角θ11、第入射角θ12のデータは離隔距離算出部52Dに送信される。離隔距離算出部52Dは、入射角θ11,θ12、ならびに、既知である第1マーカ10及び第2マーカ12の離隔距離D0(マーカ間離隔距離)に基づいて、撮像器32(より詳細には画素アレイ32A上の中心点P11)と実世界における第1マーカ10の中心点P1との離隔距離D1を求める(S20)。
【0093】
入射角θ11,θ12及び離隔距離D0に基づく離隔距離D1の求め方は、例えば正弦定理を用いる三角測量法に則って行われる。正弦定理及び三角測量法は既知の技術であるためここでは説明が省略される。
【0094】
求められた離隔距離D1は表示調整部52Eに送信される。表示調整部52Eは、撮像設定記憶部52Jから、上述したように、第1マーカ10の画像平面上の中心点P11のu,v座標を基準とした画像表示基準値を呼び出す(S22)。画像表示基準値には、画像表示フレーム60(
図10参照)のサイズ情報及び下端P3の画像平面上の位置の基準値が含まれる。なお上述したように、投影位置の基準値は、中心点P11のu
11,v
11座標を基準とした変位量Δu,Δvを用いて例えば(u
11+Δu,v
11+Δv)のように示される。
【0095】
表示調整部52Eは、離隔距離D1に基づいて、画像表示位置を修正する(S24)。例えば離隔距離D1が相対的に長い場合に、画像表示基準値よりも中心点P11(
図10参照)に近づくように、変位量Δu,Δvが修正される。
【0096】
また表示調整部52Eは、離隔距離D1に基づいて、画像表示サイズを修正する(S26)。例えば離隔距離D1が相対的に長い場合に、画像表示基準値よりも画像表示フレーム60(
図10参照)の面積が小さくなるように、そのサイズ情報が修正される。
【0097】
次に表示調整部52Eは、修正後の画像表示位置(u11+Δu′,v11+Δv′)及び画像表示フレーム60のサイズ情報を、ARグラス30の投影制御部39Aに送信する(S28)。
【0098】
またこれと併せて、案内情報作成部52Gは、AR画像として投影される画像データを生成する。例えば案内情報作成部52Gは、地図データ記憶部52Kに記憶された目的地及び地図データと、位置情報取得部52Fから取得された自車の現在位置とに基づいて、経路案内用の画像データを生成する。生成された画像データはARグラス30の投影制御部39Aに送信される(S28)。
【0099】
投影制御部39Aは投影器34を制御して、
図10、
図11に例示されるように、画像表示フレーム60の画像平面上のサイズおよび下端P3の位置に基づいて、ハーフミラー36上にAR画像62を投影させる(S30)。例えば投影制御部39Aには、画像平面座標に対応する投影角度が記憶されており、これに応じて投影器34の投影制御を行う。これにより、
図11に例示されるように、運転中の運転者100の視界に経路案内を示すAR画像62が表示される。さらに例えばGPU50E(
図3参照)のクロック数等に応じて、フローが再実行される。
【0100】
このように、本実施形態に係る画像表示システムによれば、運転者100と第1マーカ10との離隔距離に基づいて、AR画像62の投影位置及びサイズが調整される。運転者100の位置や姿勢に応じてAR画像62の投影位置やサイズが変更されることから、AR画像の投影位置及びサイズの設定精度を従来よりも向上可能となる。
【0101】
なお、上述の実施形態では、第1マーカ10及び第2マーカ12のみがインストルメントパネル20の天面20Aに付されていたが、マーカをさらに増やしてもよい。このようにすることで、撮像器32と任意の2点のマーカとの三角測量を複数パターンで行うことができ、その結果、撮像器32と各マーカとの距離をより精度よく求めることが可能となる。
【符号の説明】
【0102】
10 第1マーカ、12 第2マーカ、20 インストルメントパネル、20A インストルパネルの天面、30 ARグラス、32 撮像器、32A 画素アレイ、32B レンズ、34 投影器、36 ハーフミラー、38 制御器、38E ジャイロセンサ、38F 加速度センサ、38G 地磁気センサ、39A 投影制御部、39B 撮像制御部、50 運転支援ECU(制御部)、52A 画像認識部、52B ずれ量算出部、52C 入射角算出部、52D 離隔距離算出部、52E 表示調整部、52F 位置情報取得部、52G 案内情報作成部、52H 学習済みモデル記憶部、52I 初期画像記憶部、52J 撮像設定記憶部、52K 地図データ記憶部、60 画像表示フレーム、62 AR画像。