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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】表示装置及び音響装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/26 20240101AFI20240918BHJP
   B60K 35/23 20240101ALI20240918BHJP
【FI】
B60K35/26
B60K35/23
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021562272
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2019047520
(87)【国際公開番号】W WO2021111569
(87)【国際公開日】2021-06-10
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】514315159
【氏名又は名称】株式会社ソシオネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】小林 克海
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0167724(US,A1)
【文献】特開2019-172062(JP,A)
【文献】特開2019-023025(JP,A)
【文献】特開2010-202100(JP,A)
【文献】実開昭57-124454(JP,U)
【文献】特開2014-008851(JP,A)
【文献】特開2004-106658(JP,A)
【文献】特開2014-069692(JP,A)
【文献】特開平10-262293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 35/00-37/06
B60R 16/00-17/02
G01C 21/00-21/36
23/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部、及び、音源と接続して音を伝える音響部を含む表示装置であって、
前記音響部は、
前記音源から前記音が発せられる第1方向に向かって形成される第1空洞部と、
前記第1方向とは異なる第2方向に向かって形成され、かつ、前記第1空洞部と連接する複数の第2空洞部とを有し、
前記複数の第2空洞部は、それぞれが前記第1空洞部における異なる位置に接続されており、
前記音響部は、透明色である、表示装置。
【請求項2】
前記表示装置は、ヘッドアップディスプレイである
請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1空洞部には、
前記音を反射させる反射面が形成される
請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記反射面は、
前記音を前記第1方向から前記第2方向へ向かうように反射させる
請求項3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2空洞部の総体積が、前記音源による押出量以上である
請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記音源に接する空間を更に有する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1方向に向かって光を発する光源を更に有する
請求項1に記載の表示装置。
【請求項8】
前記音響部は、前記表示部の中心線を対称軸にして、左右対称に設置された左側音響部と、右側音響部とを含み、
前記左側音響部と前記右側音響部のそれぞれは、
前記第1空洞部と、前記複数の第2空洞部とを有する、請求項1記載の表示装置。
【請求項9】
音源と接続して音を伝える音響装置であって、
前記音源から前記音が発せられる第1方向に向かって透明色の材料に形成される第1空洞部と、
前記第1方向とは異なる第2方向に向かって透明色の材料に形成され、かつ、前記第1空洞部と連接する複数の第2空洞部とを有し、
前記複数の第2空洞部は、それぞれが前記第1空洞部における異なる位置に接続されている、音響装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置及び音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両装置には、ドライバに対して様々な情報を表示するHUD(Head Up Display、ヘッドアップディスプレイ)(以下単に「HUD」という。)の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2015/151194号
【文献】特開2018-84767号公報
【文献】特開2016-224461号公報
【文献】特開2017-61220号公報
【文献】実用新案登録第3186157号公報
【文献】特表2017-531212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者は、情報を表示する装置であるHUDから音楽又は音声等の音を発することが出来るようにスピーカ等の音響装置を追加した場合、音響装置により前方の視界が遮られることを新たに見出した。
【0005】
本発明の一つの側面では、前方の視界が遮られることを抑制する音響装置及び表示装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様によれば、表示部、及び、音源と接続して音を伝える音響部を含む表示装置であって、前記音響部は、前記音源から前記音が発せられる第1方向に向かって形成される第1空洞部と、前記第1方向とは異なる第2方向に向かって形成され、かつ、前記第1空洞部と連接する複数の第2空洞部とを有し、前記複数の第2空洞部は、それぞれが前記第1空洞部における異なる位置に接続されており、前記音響部は、透明色である。
【発明の効果】
【0007】
前方の視界が遮られるのを抑制できる音響装置及び表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】表示装置の使用例を示す図である。
図2】HUDの構成例を示す図である。
図3】音響部の構造例を示す図である。
図4】押出量の例を示す図である。
図5】総体積の例を示す図である。
図6】第1貫通穴の体積の計算例を示す図である。
図7】音響装置の製造例を示す図である。
図8】第2実施形態におけるHUDの構成例を示す図である。
図9】第3実施形態におけるHUDの構成例を示す図である。
図10】第3実施形態における点灯例を示す図である。
図11】音源の向きの第1変形例を示す図である。
図12】音源の向きの第2変形例を示す図である。
図13】表示装置の設置の変形例を示す図である。
図14】ルームミラーへの適用例を示す図である。
図15】第2空洞部の変形例を示す図である。
図16】表示装置の変形例を示す図である。
図17】音響装置の設置例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各実施形態について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複した説明を省略する。
【0010】
<第1実施形態>
<HUDの例>
以下、表示装置の例として、HUDを例にして説明する。また、HUDは、例えば、以下のように車両に搭載される車載機器である。
【0011】
図1は、表示装置の使用例を示す図である。以下の説明では、図1(A)に示すように、車両1が進む方向を「X軸方向」とする。また、X軸方向は、車両1のドライバが視認している方向(ドライバの位置に対して「前方」となる。)でもあるとする。そして、X軸方向に対して直交する方向(いわゆる右手方向である。)を「Y軸方向」とする。さらに、X-Y平面に対して垂直となる方向(いわゆる重力方向である。)を「Z軸方向」とする。
【0012】
そして、以下に説明する例では、HUD10は、HUD10の長手部分がY軸方向となるように設置される。
【0013】
例えば、HUD10は、例えば、図1(B)に示すように設置して使用される。
【0014】
図1(B)は、図1(A)に示す車両1における運転席付近を拡大したX-Z平面の断面図である。図示するように、例えば、HUD10は、いわゆるダッシュボード等に設置される。そして、HUD10は、図1(B)に示すようにドライバ11が前方を向いている状態において、ダッシュボード上等の視界内となる位置に設置されるのが望ましい。このような位置にHUD10が設置されると、ドライバ11は、前方から視線をあまり外さなくともHUD10に表示される情報を見ることができる。
【0015】
具体的には、図1(B)に示す状態では、ドライバ11は、前方を見ている状態である。このような状態において、HUD10が示す画像等がドライバ11の視界に入るようなHUD10の設置位置が望ましい。
【0016】
HUD10は、例えば、ドライバ11に対して、車両1の速度、ガソリン残量又は目的地への経路等の情報を表示する。
【0017】
なお、HUD10は、図示するように、常にドライバ11の視界内になくともよい。例えば、HUD10は、ダッシュボードの内部等に収納できる構造であって、表示を行う場合にダッシュボード上に設置される構造でもよい。すなわち、HUD10は、一部又は全部が、折り畳み、回転又はZ軸方向に上下する構造でもよい。また、HUD10は、収納されず、常にダッシュボード上に設置される構造であってもよい。以下、HUD10がZ軸方向において上下に移動可能な構造である場合を例に説明する。
【0018】
HUD10には、例えば、投影装置12が投影する画像等が表示される。すなわち、HUD10等の表示装置と、投影装置12とを有する投影システム等によって画像が表示される。なお、HUD10は、投影装置12が投影する画像を表示する装置に限られない。例えば、HUD10は、有機EL(Electro-Luminescence)等でもよい。また、投影システムは、光学反射板121等の光学部品を有してもよい。
【0019】
<HUDの構成例>
図2は、HUDの構成例を示す図である。例えば、HUD10は、ディスプレイ部101と、左側音響部102Lと、右側音響部102Rとを有する構成である。
【0020】
ディスプレイ部101は、表示部の例であって、画像が投影される部分となる。
【0021】
左側音響部102L及び右側音響部102Rは、例えば、ディスプレイ部101の中心線を対称軸にして左右対称に設置される。
【0022】
以下、左側音響部102L及び右側音響部102Rが内部構造も左右対称である例とし、左側音響部102Lを例に説明する。ただし、HUD10の構成は、左側音響部102L及び右側音響部102Rのように、それぞれの音響部が対称となる構成に限られない。例えば、左側音響部102L及び右側音響部102Rは、それぞれ内部構造が異なる、又は、設置位置が対称でなくともよい。また、左側音響部102L及び右側音響部102Rは、どちらか一方が設置される構成等でもよい。
【0023】
また、この例では、HUD10は、上部10Uと下部10Dで構成されるとする。以下、上部10Uと下部10Dの境界線であって、ダッシュボードの内部と外部の境界線でもある線を「境界線GL」という。なお、境界線GLは、図示するような位置でなくともよい。
【0024】
具体的には、上部10Uは、ダッシュボードよりZ軸方向において上側となる部分であって、主にディスプレイ部101、左側音響部102L及び右側音響部102Rを有する。
【0025】
下部10Dは、ダッシュボード内部に位置する部分である。例えば、下部10Dには、音源の例である、左側スピーカ103L及び右側スピーカ103R等が設置される。また、左側スピーカ103L及び右側スピーカ103Rは、左側音響部102L及び右側音響部102Rと接続し、音を伝える装置である。一方で、左側スピーカ103L及び右側スピーカ103Rには、例えば、再生装置等が電線又は無線等を介して接続される。そして、再生装置等に入力される音源データ又はメディア等に基づいて、左側スピーカ103L及び右側スピーカ103Rは、音を発する。
【0026】
なお、下部10Dは、図示するような構成に限られず、他に装置等が設置されてもよい。
【0027】
HUD10は、例えば、ダッシュボードの内部に、上部10Uが収納可能な構成である。
【0028】
<音響部の構造例>
以下、音響部の構造例を左側音響部102Lの図2におけるA-A'断面で説明する。
【0029】
図3は、音響部の構造例を示す図である。なお、図2における右側音響部102Rは、例えば、左側音響部102Lと左右対称の構造であるとして説明を省略する。
【0030】
以下の説明では、左側スピーカ103Lから発せられた音は、Z軸方向に配置された左側音響部102Lの第1空洞部201に音が伝わるものとする。以下、第1空洞部201に音が伝わる方向を「第1方向」という(図では、発音方向200で示す)。したがって、第1方向の例である、発音方向200は、音源の向き又は音源周辺に設置される構造物(この例では、第1空洞部201の向きである。)等によって調整され、音源から発せられた音が伝わる方向によって異なる。
【0031】
左側音響部102Lは、例えば、第1空洞部201、第1貫通穴2021、第2貫通穴2022、第3貫通穴2023、第4貫通穴2024、第5貫通穴2025及び第6貫通穴2026等で構成される。
【0032】
つまり、図3(A)に示す例は、第2空洞部が、第1貫通穴2021乃至第6貫通穴2026の6つの貫通穴である例となる。
【0033】
まず、第1空洞部201は、発音方向200に形成される。そして、第1空洞部201に対して異なる方向(以下「第2方向」という。)に向かって、第1貫通穴2021、第2貫通穴2022、第3貫通穴2023、第4貫通穴2024、第5貫通穴2025及び第6貫通穴2026等のように、第1空洞部201と連接する貫通穴が形成される。
【0034】
なお、この例では、貫通穴は、いずれもX軸方向の反対(図では右方向となる。)に向かって形成されるとする。すなわち、貫通穴は、図1(B)に示す例では、いずれもドライバ11に向かう方向に向かって開口部が形成される例である。そして、第1空洞部201と貫通穴は、連接するため、第1空洞部201を介して伝わる音がそれぞれの貫通穴の開口部から出力されて、ドライバ等に音を伝える。
【0035】
なお、第1空洞部201には、第1方向に対して反射面203が形成されるのが望ましい。
【0036】
図3(B)は、第1貫通穴2021に対して、反射面203を形成した場合の例を示す拡大図である。以下、反射面203が第1方向に対して形成する角度を「角度θ」とする。
【0037】
角度θは、例えば45°である。
【0038】
このような角度θであると、発音方向200において、ほぼ同じ位置に設置される第1貫通穴2021の開口部から効率良く音を出力できる。なお、反射面203は、表面が丸みを帯びたような形状であってもよい。
【0039】
したがって、貫通穴等の第2空洞部は、開口部が音を出力させたい位置に設けられる。ゆえに、図示する貫通穴の数、位置及び間隔以外にも、第2空洞部となる貫通穴等があってもよい。図示するように、ディスプレイ部101に近い位置に第2空洞部があると、例えば、ディスプレイ部101に画像に合わせた音が、ドライバにはディスプレイ部101から出力されているように感じさせる等ができる。
【0040】
図3(B)に示すような反射面203であると、音源のある方向に戻る音を少なくできる。ゆえに、図3(B)に示すような反射面203であると、音質を良くできる。
【0041】
<第2空洞部の例>
第2空洞部の構成、例えば、貫通穴の穴径、空洞長、貫通穴の数又はこれらの組み合わせは、例えば、下記(1)式に示すような条件を満たす。
【0042】
【数1】
【0043】
上記(1)式の左辺で示す「音源による押出量」(以下単に「押出量P」という場合がある。)は、音源が音を出力すると、押し出される空気の体積となる。例えば、押出量Pの単位系は、「mm」(立方ミリメートル)である。具体的には、押出量Pは、以下のような量である。
【0044】
図4は、押出量の例を示す図である。以下、音源を左側スピーカ103Lとする例で説明する。この例では、押出量Pは、下記(2)式のように計算される。
【0045】
【数2】
【0046】
上記(2)式において、「r」は、左側スピーカ103Lの半径である。また、上記(2)式において、「a」は、押出距離となる。例えば、押出距離は、音源の出力(単位系は、W(ワット)である。)等で定まる。なお、上記(2)式は、左側スピーカ103Lが円形である場合の例であり、円形でない場合では、「π×r」の箇所は左側スピーカ103Lが空気を押し出す部分の面積に変更される。すなわち、上記(2)式における「π×r」の箇所は、左側スピーカ103Lの形状等に合わせた計算式となり、左側スピーカ103Lは、円形以外の形状でもよい。
【0047】
一方で、上記(1)式の右辺で示す第2空洞部の総体積(以下単に「総体積S」という場合がある。)は、第2空洞部から出力できる空気の量となる。例えば、総体積Sの単位系は、「mm」(立方ミリメートル)である。具体的には、総体積Sは、以下のような量である。
【0048】
図5は、総体積の例を示す図である。以下、図3(A)に示す左側音響部102Lを例に説明する。また、図5は、左側スピーカ103Lの内部構造例が分かるように示す透過図である。以下、このような透過図では、外側の部分(いわゆる外壁となる部分である。)を一点鎖線で示す。一方で、以下の透過図では、内側の形状(いわゆる内壁となる部分である。)を実線及び破線で示す。
【0049】
この例では、総体積Sは、下記(3)式に示すように、それぞれの貫通穴の体積の総和である。なお、図5は、総体積Sに換算する対象となる空間を梨地で示す。
【0050】
【数3】
【0051】
例えば、図5に示すような左側音響部102Lでは、第2空洞部を構成する貫通穴は、合計で「6」個であるため、上記(3)式における貫通穴等の数「k」は、「k=6」となる。
【0052】
また、例として、第1貫通穴2021、第2貫通穴2022、第3貫通穴2023、第4貫通穴2024、第5貫通穴2025及び第6貫通穴2026は、いずれも同じ半径、かつ、同じ空洞長であるとする。すなわち、以下の説明では、すべての貫通穴の体積は同じとする。このような条件下では、上記(3)式における各体積「V」は、すべて同じ値となる。具体的には、第1貫通穴2021の体積「V」、第2貫通穴2022の体積「V」、第3貫通穴2023の体積「V」、第4貫通穴2024の体積「V」、第5貫通穴2025の体積「V」及び第6貫通穴2026の体積「V」は、同じであるとする。なお、各貫通穴の体積「V」はそれぞれ異なってもよい。各貫通穴の体積「Vi」がそれぞれ異なる場合には、各貫通穴の体積「V」は、それぞれの貫通穴の形状等に合わせて別に計算され、各計算結果を総和すると、上記(3)式における総体積Sが計算される。
【0053】
以下、第1貫通穴2021の体積「V」を説明し、他の体積については同様であるため、説明を省略する。例えば、貫通穴の体積は、下記(4)式のように計算する。
【0054】
【数4】
【0055】
図6は、第1貫通穴の体積の計算例を示す図である。上記(4)式における「c」は、第1貫通穴の半径である。また、「s」は、第1貫通穴2021の空洞長である。なお、上記(3)式及び上記(4)式、すなわち、総体積Sを計算する式は、第2空洞部を構成する要素の形状等によって異なる。また、上記(4)式は一例であり、第1貫通穴2021の形状によって適宜変更される。また、第2貫通穴2022、第3貫通穴2023、第4貫通穴2024、第5貫通穴2025及び第6貫通穴2026についても同様に適宜変更される。
【0056】
この例は、第2空洞部を構成する要素が第1貫通穴乃至第6貫通穴であり、かつ、それぞれの貫通穴の体積が同じ条件の例である。この例では、上記(3)式は、上記(4)式に基づいて、下記(5)式のように計算される。
【0057】
【数5】
【0058】
したがって、上記(1)式に対して、図5で示す具体例の値、すなわち、上記(2)式及び上記(5)式を代入すると、下記(6)式のような条件が計算できる。
【0059】
【数6】
【0060】
第2空洞部は、例えば上記(6)式に示すような条件を満たすものとなる。具体的には、第2空洞部は、上記(6)式の左辺で示す押出量Pが出力できる以上の空間を有する。したがって、上記(6)式の右辺で示す総体積Sが押出量P以上であると、音源付近で押し出された空気が出力できる。
【0061】
この例のように、以上のような条件を満たす径(上記(6)式では「c」である。)、空洞長(上記(6)式では「s」である。)、空洞の数(上記(6)式では「6」である。)又はこれらの組み合わせ等で第2空洞部は計算されてもよい。
【0062】
また、上記(1)式が示すように、第2空洞部の総体積Sは、音源による押出量P以上の体積であってもよい。
【0063】
なお、空気は、圧縮される気体である。したがって、空気の圧縮率(以下、圧縮率を変数「B」で示す。)が考慮されてもよい。具体的には、上記(1)式に代えて、例えば、下記(7)式が用いられてもよい。
【0064】
【数7】
【0065】
上記(7)式において、空気の圧縮率「B」は、「1」未満の値である。すなわち、空気の圧縮率「B」は、圧縮前の体積に対して圧縮後の体積がどの程度になるかの割合を示す値となる。
【0066】
<製造例>
例えば、音響装置は、以下のように製造される。
【0067】
図7は、音響装置の製造例を示す図である。以下、図3(A)に示すような構造となる音響装置を製造する場合を例に説明する。なお、図7に示す各図は、図3(A)と同様の断面図である。
【0068】
まず、図7(A)に示すような部分(以下「第1部分301」という。)と、図7(B)に示すような部分(以下「第2部分302」という。)とに分けて、それぞれの部品が製造される。
【0069】
第1部分301及び第2部分302は、型に樹脂等の材料を流し込む、すなわち、射出成型又は鋳造等で製造される。又は、第1部分301及び第2部分302は、削り出し、若しくは、3Dプリンタ等で製造されてもよい。
【0070】
以上のように、まず、部品を製造する形成工程が行われる。
【0071】
次に、第1部分301及び第2部分302を貼り合わせる工程が行われる。具体的には、図における第1部分301の面(以下「第1面303」という。)と、図における第2部分302の面(以下「第2面304」という。)とを張り合わせて、図7(C)に示すような形状にする貼合工程が行われる。
【0072】
図7(C)に示すように、第1面303及び第2面304を張り合わせると、第1空洞部及び第2空洞部を有する音響装置又は音響部が製造できる。
【0073】
なお、音響装置の本体部(この例では、第1部分301及び第2部分302を組み合わせた物体である。)は、例えば、アクリル樹脂又はガラスを材料に製造される。
【0074】
ただし、材料は、アクリル樹脂又はガラスに限られない。まず、材料は、アクリル樹脂又はガラス程度の硬度を有する材料であればよい。材料は、第1空洞部及び第2空洞部等を形成する。したがって、材料は、音圧がかかっても変形が少ない特性であるのが望ましい。例えば、柔らかい材料であると、音を吸収する場合がある。したがって、あまり音を吸収しない材料が用いられるのが望ましい。
【0075】
また、材料は、アクリル樹脂又はガラス程度の透明度を有するのが望ましい。すなわち、材料は、光を透過することができる特性であるのが望ましい。なお、透明度は、表示装置の種類等に基づいて定まる。
【0076】
<第2実施形態>
第2実施形態では、第1実施形態に示す表示装置に対して、表示装置が、音源と、音源に接する空間を更に有する点が異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0077】
図8は、第2実施形態におけるHUDの構成例を示す図である。以下、第1実施形態と同様に、表示装置がHUDの場合を例に説明する。
【0078】
第2実施形態では、例えば、下部10Dに、左側スピーカ103L及び右側スピーカ103Rに対して接するように、空間(図では、左側空間401L及び右側空間401Rである。)が形成される。
【0079】
このような空間があると、音質を良くすることができる。特に、このような空間があると、空間が、いわゆる共鳴室となるため、重低音の音質を良くできる。また、下部10Dのような位置に空間があると、ドライバが前方を視認する上で妨げになりにくい。
【0080】
<第3実施形態>
第3実施形態では、第1実施形態に示す表示装置に対して、表示装置が、光源を更に有する点が異なる。以下、第1実施形態と異なる点を中心に説明し、同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0081】
図9は、第3実施形態におけるHUDの構成例を示す図である。以下、第1実施形態と同様に、表示装置がHUDの場合を例に説明する。
【0082】
第3実施形態では、例えば、下部10Dの、左側音響部102L及び右側音響部102Rの下方に、それぞれ光源(図では、左側光源501L及び右側光源501Rである。)が更に設置される。なお、光源を設置する位置は、音響部を光らせることができれば、図示する以外の位置でもよい。
【0083】
左側光源501L及び右側光源501Rは、例えば、RGB型のLED(Light Emitting Diode)等である。なお、光源は、有機EL等でもよい。
【0084】
左側光源501L及び右側光源501Rがあると、例えば、以下のように点灯させることができる。
【0085】
図10は、第3実施形態における点灯例を示す図である。例えば、左側光源501L及び右側光源501Rが、音と同様の方向である発音方向200へ向かって光を発すると、音と同様に、反射面等で反射して貫通穴付近等を点灯させることができる。
【0086】
例えば、センサ等によって危険を検出又は他の情報を取得した場合等に、点灯させることでドライバに危険等を知らせるのが望ましい。具体的には、センサは、障害物、歩行者、緊急車両の接近、崖等の危険な場所への接近、交通情報又はこれらの組み合わせ等を検出する。
【0087】
特に、左側光源501L及び右側光源501Rは、複数色の光を発することができるのが望ましい。例えば、危険を検出した場合等には、左側光源501L及び右側光源501Rが赤色の光を発する。一方で、交通情報を取得した場合等には、左側光源501L及び右側光源501Rが緑色の光を発する。このように、色によって、情報の種類又は危険の度合い等がドライバに分かるように知らせてもよい。ほかにも、光の強さを変化させる、点滅及び音との組み合わせ等が行われてもよい。
【0088】
<変形例>
音源は、例えば、以下のような向きで設置されてもよい。
【0089】
図11は、音源の向きの第1変形例を示す図である。以下、図3(A)に示す左側音響部102Lを例に説明する。また、図11は、図3と同様の断面図である。図示するように、左側スピーカ103Lは、上向き(Z軸方向である。)に設置されてもよい。
【0090】
図12は、音源の向きの第2変形例を示す図である。図11と比較すると、図12に示す実施形態では、左側スピーカ103LがZ軸方向に対して、30°程度の角度をつけて設置される点が異なる。このような場合であっても、左側スピーカ103Lが発する音は、多くがZ軸方向に進む。したがって、発音方向200は、図示するように主にZ軸方向となる。
【0091】
このように、発音方向200は、音源の向きだけで定まらず、第1空洞部又は音源付近に設置される構造物等によって定まる向きとなる。
【0092】
なお、音源と音響部の間には、途中に管600が設置されてもよい。そして、管600は、例えば、金属又はアクリル樹脂等である。
【0093】
また、表示装置は、ダッシュボード以外の位置に設置されてもよい。例えば、表示装置は、以下のような位置に設置されてもよい。
【0094】
図13は、表示装置の設置の変形例を示す図である。図1(B)と比較すると、図13は、HUD10等が設置される位置が天井になる点が異なる。
【0095】
また、表示装置は、ルームミラー等でもよい。
【0096】
図14は、ルームミラーへの適用例を示す図である。図14(A)は、車両1の車内を示す図である。そして、ルームミラー13には、例えば、ルームミラー13の中央部(鏡等で後方を写す、又は、画面等になる部分である。)を避けて、左側音響部102L及び右側音響部102Rが設置されてもよい。
【0097】
図14(B)は、ルームミラー13への適用例を示す拡大左側面図である。すなわち、図14(B)は、図3(A)と同様の断面図である。例えば、図示するように、画面701及びミラー本体702等が左側音響部102Lに対して位置する。また、ミラー内空間703等があってもよい。
【0098】
ほかに、上記の実施形態は、組み合わせて実施されてもよい。
【0099】
音響装置は、上記の例のように、表示装置等と一体な構成でなくともよい。すなわち、音響装置は、表示装置等とは別に設置される装置であってもよい。
【0100】
なお、第2空洞部は、上記の例のように、貫通穴に限られない。すなわち、第2空洞部は、第1空洞部と連接し、第1空洞部を伝わってくる音を出力できる構成であればよい。したがって、第2空洞部は、貫通穴に限られず、多角形の穴等でもよい。
【0101】
また、第2空洞部の開口部の向き、すなわち、第2方向は、例えば、以下のような向きのものがあってもよい。
【0102】
図15は、第2空洞部の変形例を示す図である。図15(A)は、図5と同様に、左側スピーカ103Lの内部構造例が分かるように示す透過図である。図5と比較すると、図15(A)では、左側スピーカ103Lは、第7貫通穴2027を更に有する点が異なる。
【0103】
図15(B)は、図3(B)と同様の断面図である。
【0104】
具体的には、第7貫通穴2027は、第1貫通穴2021等とは180°逆向きの開口部となる第2空洞部の例である。このように、第2方向は、複数の方向を含んでもよい。
【0105】
第1貫通穴2021等が図15(B)において右に向かって(図1に示す位置関係では、ドライバのいる方向となる。)開口部が向くのに対して、第7貫通穴2027が図15(B)において左に向かって(図1に示す位置関係では、前方となる。)開口部が向く。このようなに第2方向は、任意の方向に設定されてもよい。このように、第2方向を音の伝えたい方向にすると、より効率良く音を伝えることができる。例えば、図示する以外の向きにも、貫通穴の開口部を形成すると、その開口部の方向に音を伝えることができる。
【0106】
以上のように、第2方向は、例えば、第1方向に対して直交する方向である。具体的には、図3(B)に示すように、第1方向がZ軸方向であるのに対して、第2方向は、X軸方向となる。以下、第1方向と第2方向の成す角度(第1方向を「0°」としたY軸回りの角度である。)を「第1角α」という。
【0107】
また、第2方向は、第1方向に対して厳密に直交しなくともよい。すなわち、第1角αは、90°に限られない。例えば、第2方向は、第1方向に対して80°乃至100°(すなわち、第1角αは、90°±10°である。)程度の角度があってもよい。
【0108】
ただし、第2方向は、第1方向に対して直交する面(すなわち、X-Y面である。)上であればどの角度でもよい。以下、X-Y面における角度(Z軸回りの角度である。)を「第2角β」とする。
【0109】
第2角βは、0°乃至360°のどの角度であってもよい。
【0110】
表示装置は、例えば、以下のような装置でもよい。
【0111】
図16は、表示装置の変形例を示す図である。例えば、表示装置は、いわゆるデジタルサイネージ10A等でもよい。このように、デジタルサイネージ10A等と一体となるように、左側音響部102L及び右側音響部102R等を組み合わせてもよい。
【0112】
なお、左側音響部102L及び右側音響部102Rは、図示するように、ディスプレイ部等と一体でなくともよい。すなわち、左側音響部102L及び右側音響部102Rは、表示部に対して、取り外し及び取り付けが可能な物理的に別な装置(すなわち、表示装置とは別の音響装置となる。)となる構成でもよい。
【0113】
<音響装置の例>
HUD以外に、例えば、以下のように音響装置として実施されてもよい。
【0114】
図17は、音響装置の設置例を示す図である。例えば、音響装置は、左側音響装置20L及び右側音響装置20Rのように、2つの音響装置を一対にして設置する。なお、音響装置は、1つで使用されてもよいし、3つ以上をセットにして使用されてもよい。
【0115】
また、図示する例では、音響装置は、天井等からぶら下げるように設置される。このような姿勢となるように、音響装置は設置されてもよい。
【0116】
このような音響装置を設置すると、音響装置の存在が意識されにくいため、プラネタリウム、水族館、博物館、展示場又はイベント会場等で音響装置がユーザに見つからないように隠す手間が省ける。また、透明色に近い色の音響装置であると、様々な位置に配置しても目立ちにくいため、様々な位置から音を出して演出をすることができる。
【0117】
<まとめ>
以上のような構成であると、光を透過する音響装置又は表示装置を提供できる。このような光を透過するような音響装置は、黒色のスピーカ等と比較して、装置の存在をあまりドライバ等のユーザに意識させずに済む。そして、上記に示すような音響部又は音響装置があると、スピーカを備えた場合と同様の音を出力できる。したがって、HUD等において、ドライバの視界を遮らない、光を透過する装置で立体音響等が実現できる。
【0118】
ゆえに、表示装置では、ドライバの視界を遮らない、又は、表示装置において画像等を投影させる表示面が狭くなるのを防ぐことができる。
【0119】
また、HUD等の表示装置において、例えば、音響部と表示部等を1つの材料で一体となるような構成にすると、画像と音の相乗効果を奏する。
【0120】
なお、上記に説明した構成等に、本発明は、限定されない。すなわち、実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更及び追加することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0121】
1 車両
10A デジタルサイネージ
10D 下部
10U 上部
11 ドライバ
12 投影装置
20L 左側音響装置
20R 右側音響装置
101 ディスプレイ部
102L 左側音響部
102R 右側音響部
103L 左側スピーカ
103R 右側スピーカ
200 発音方向
201 第1空洞部
203 反射面
203A 直角面
203B 鋭角面
401L 左側空間
401R 右側空間
501L 左側光源
501R 右側光源
2021 第1貫通穴
2022 第2貫通穴
2023 第3貫通穴
2024 第4貫通穴
2025 第5貫通穴
2026 第6貫通穴
2027 第7貫通穴
押出量
総体積
θ 角度
α 第1角
β 第2角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17