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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】光学システム
(51)【国際特許分類】
   G03B 21/14 20060101AFI20240918BHJP
   H04N 9/31 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
G03B21/14 Z
H04N9/31 500
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021573056
(86)(22)【出願日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 JP2021000346
(87)【国際公開番号】W WO2021149499
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2023-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2020008634
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金田 一賢
(72)【発明者】
【氏名】三浦 幸治
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-176203(JP,A)
【文献】特開2014-191248(JP,A)
【文献】特開2010-197716(JP,A)
【文献】特開2009-042316(JP,A)
【文献】特開2002-131837(JP,A)
【文献】特開2004-061599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03B 21/00-21/10
21/12-21/30
21/56-21/64
33/00-33/16
H04N 5/66-5/74
H04N 9/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の色光を含む光の偏光方向を所定の偏光方向に揃える偏光変換素子を有し、前記複数の色光を含む照明光を生成する第1の光学系と、
前記第1の光学系内の第1の瞳位置に配置され、第1の分割領域および第2の分割領域を含み、前記第1の分割領域および前記第2の分割領域が前記偏光変換素子から射出された前記複数の色光のうちの第1の色光に対して互いに異なる偏光特性を有する第1の偏光回転素子と、
前記第1の光学系内において、前記偏光変換素子と前記第1の偏光回転素子との間に配置され、前記偏光変換素子から射出された光に含まれる前記所定の偏光方向以外の偏光方向の光を低減する偏光子と、
それぞれが、前記第1の光学系によって生成された前記照明光に含まれる前記複数の色光のうち少なくとも前記第1の色光によって照明される複数のライトバルブと
を備える
光学システム。
【請求項2】
前記第1の偏光回転素子と前記複数のライトバルブとの間の光路上に配置され、前記複数のライトバルブのうちの少なくとも1つのライトバルブから前記偏光子へと戻る前記第1の色光の戻り光を低減する波長選択性反射素子、をさらに備える
請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記波長選択性反射素子は、前記第1の偏光回転素子と前記複数のライトバルブとの間の光路の光軸に対し傾斜配置されている
請求項2に記載の光学システム。
【請求項4】
前記波長選択性反射素子は、前記第1の偏光回転素子における前記第1の分割領域および前記第2の分割領域のうち少なくとも一方の分割領域に対応する領域に配置されている
請求項2に記載の光学システム。
【請求項5】
前記波長選択性反射素子は、前記第1の分割領域および前記第2の分割領域のうち前記一方の分割領域に対応する領域において、前記一方の分割領域からの前記複数の色光を全て透過し、前記複数のライトバルブのうちの少なくとも1つのライトバルブから前記偏光子へと戻る前記第1の色光の戻り光を反射する
請求項4に記載の光学システム。
【請求項6】
前記波長選択性反射素子は、前記第1の分割領域および前記第2の分割領域のうち他方の分割領域に対応する領域において、前記他方の分割領域からの前記複数の色光を全て透過する
請求項5に記載の光学システム。
【請求項7】
前記波長選択性反射素子は、前記第1の分割領域および前記第2の分割領域のうち前記一方の分割領域に対応する領域において、前記一方の分割領域からの前記複数の色光を全て反射し、前記複数のライトバルブのうちの少なくとも1つのライトバルブから前記偏光子へと戻る前記第1の色光の戻り光を透過する
請求項4に記載の光学システム。
【請求項8】
前記波長選択性反射素子は、前記第1の分割領域および前記第2の分割領域のうち他方の分割領域に対応する領域において、前記他方の分割領域からの前記複数の色光を全て反射する
請求項7に記載の光学システム。
【請求項9】
前記偏光子は、前記複数のライトバルブのうちの少なくとも1つのライトバルブから前記第1の偏光回転素子を介して戻る前記第1の色光の戻り光を吸収する吸収型偏光子である
請求項1に記載の光学システム。
【請求項10】
前記吸収型偏光子を冷却する冷却部材、をさらに備える
請求項9に記載の光学システム。
【請求項11】
前記第1の偏光回転素子は、少なくとも一部の領域において、前記第1の分割領域と前記第2の分割領域とが点対称に分布する分割構造を有する
請求項1に記載の光学システム。
【請求項12】
前記第1の偏光回転素子は、少なくとも半分以上の領域において、前記第1の分割領域と前記第2の分割領域とが点対称に分布する分割構造を有する
請求項11に記載の光学システム。
【請求項13】
前記複数のライトバルブによって変調された後の前記複数の色光が入射する第2の光学系と、
前記第2の光学系内の前記第1の瞳位置に共役な第2の瞳位置に配置され、第3の分割領域および第4の分割領域を含み、前記第3の分割領域および前記第4の分割領域が前記複数のライトバルブから射出された前記複数の色光のうちの第1の色光に対して互いに異なる偏光特性を有する第2の偏光回転素子と
をさらに備える
請求項1に記載の光学システム。
【請求項14】
前記第1の光学系における前記第1の分割領域および前記第2の分割領域のそれぞれと、前記第2の光学系における前記第3の分割領域および前記第4の分割領域のそれぞれとが、互いに共役である
請求項13に記載の光学システム。
【請求項15】
前記第2の光学系は、前記複数のライトバルブによって生成された画像を投影面に投影する投影光学系である
請求項13に記載の光学システム。
【請求項16】
前記複数のライトバルブは、第1のライトバルブと第2のライトバルブとを含み、
前記複数の色光は第1ないし第3の色光を含み、
前記第1の色光が前記第1のライトバルブと第2のライトバルブとに入射し、
前記第2の色光が前記第1のライトバルブおよび第2のライトバルブのうちの一方に入射し、
前記第3の色光が前記第1のライトバルブおよび第2のライトバルブのうちの他方に入射する
請求項1に記載の光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プロジェクタ等に好適な光学システムに関する。
【背景技術】
【0002】
フルカラー表示を行うプロジェクタの方式として、例えばR(赤色),G(緑色),B(青色)の各色光に共通の1つのライトバルブを用いる単板方式や、3つの色光に別々のライトバルブを用いる3板方式等がある(特許文献1~4参照)。一方、波長が短い青色光を1つのライトバルブに入射し続けると、ライトバルブの劣化を招く。特許文献1では、青色光用のライトバルブを2つ用いることでライトバルブの長寿命化を図ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-13655号公報
【文献】特開2001-324762号公報
【文献】特開2008-165058号公報
【文献】特開2006-343721号公報
【発明の概要】
【0004】
例えば青色光用のライトバルブを2つ用いることでライトバルブの長寿命化を図ろうとした場合、単純に青色光を2分岐する構成では、コントラストの増大を図ることが困難である。
【0005】
コントラストの向上を図ることが可能な光学システムを提供することが望ましい。
【0006】
本開示の一実施の形態に係る光学システムは、複数の色光を含む光の偏光方向を所定の偏光方向に揃える偏光変換素子を有し、複数の色光を含む照明光を生成する第1の光学系と、第1の光学系内の第1の瞳位置に配置され、第1の分割領域および第2の分割領域を含み、第1の分割領域および第2の分割領域が偏光変換素子から射出された複数の色光のうちの第1の色光に対して互いに異なる偏光特性を有する第1の偏光回転素子と、第1の光学系内において、偏光変換素子と第1の偏光回転素子との間に配置され、偏光変換素子から射出された光に含まれる所定の偏光方向以外の偏光方向の光を低減する偏光子と、それぞれが、第1の光学系によって生成された照明光に含まれる複数の色光のうち少なくとも第1の色光によって照明される複数のライトバルブとを備える。
【0007】
本開示の一実施の形態に係る光学システムでは、第1の光学系において、第1の瞳位置に、それぞれが互いに異なる偏光特性を有する第1の分割領域および第2の分割領域を含む第1の偏光回転素子が配置され、さらに、第1の光学系内において、偏光変換素子から射出された光に含まれる所定の偏光方向以外の偏光方向の光を低減する偏光子が配置される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の第1の実施の形態に係る光学システムの全体構成例を概略的に示す構成図である。
図2】第1の実施の形態に係る光学システムにおける蛍光体ホイールの一例を概略的に示す構成図である。
図3】第1の実施の形態に係る光学システムにおける第1の領域分割波長選択性波長板の構成および作用の一例を示す説明図である。
図4】第1の実施の形態に係る光学システムにおける第2の領域分割波長選択性波長板の構成および作用の一例を示す説明図である。
図5】第1の実施の形態に係る光学システムの望ましい構成例の全体構成を概略的に示す構成図である。
図6図5に示した構成例において生じる戻り光の光路の第1の例を示す説明図である。
図7図5に示した構成例において生じる戻り光の光路の第2の例を示す説明図である。
図8図5に示した構成例において生じる戻り光の光路の第3の例を示す説明図である。
図9図5に示した構成例において生じる戻り光の光路の第4の例を示す説明図である。
図10】第2の実施の形態に係る光学システムの要部構成例を概略的に示す構成図である。
図11】第2の実施の形態に係る光学システムにおける領域分割波長選択性ミラーの透過特性の一例を示す特性図である。
図12】第2の実施の形態に係る光学システムにおいて生じる戻り光の光路の一例を示す説明図である。
図13】第3の実施の形態に係る光学システムの要部構成例を概略的に示す構成図である。
図14】第3の実施の形態に係る光学システムにおける領域分割波長選択性ミラーの反射特性の一例を示す特性図である。
図15】第3の実施の形態に係る光学システムにおいて生じる戻り光の光路の一例を示す説明図である。
図16】第4の実施の形態に係る光学システムの要部構成例を概略的に示す構成図である。
図17】第1の領域分割波長選択性波長板の領域分割パターンの第1の変形例を概略的に示す説明図である。
図18】第1の領域分割波長選択性波長板の領域分割パターンの第2の変形例を概略的に示す説明図である。
図19】第1の領域分割波長選択性波長板の領域分割パターンの第3の変形例を概略的に示す説明図である。
図20】第1の領域分割波長選択性波長板の領域分割パターンの第4の変形例を概略的に示す説明図である。
図21】第1の領域分割波長選択性波長板の領域分割パターンの第5の変形例を概略的に示す説明図である。
図22】第1の領域分割波長選択性波長板の領域分割パターンの第6の変形例を概略的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
0.比較例
1.第1の実施の形態(領域分割された偏光回転素子を備える光学システム)
1.1 第1の実施の形態に係る光学システムの構成および作用(図1図4
1.2 第1の実施の形態に係る光学システムの望ましい構成例(図5
1.3 効果
2.第2の実施の形態(不要光を低減する波長選択性反射素子を備える光学システム)(図6図12
3.第3の実施の形態(不要光を低減する波長選択性反射素子を備える光学システム)(図13図15
4.第4の実施の形態(不要光を低減する吸収型偏光子を備える光学システム)(図16
5.第5の実施の形態(偏光回転素子の分割構造のバリエーション)(図17図22
6.その他の実施の形態
【0010】
<0.比較例>
(比較例に係る光学システムの概要と課題)
プロジェクタ等に用いられる光学システムにおいて、複数のライトバルブを備える構成が知られている。このような光学システムにおいて、複数のライトバルブに対して照明光を分ける場合、波長または偏光のいずれかの作用を用いるのが一般的である。例えば特許文献1(特開2018-13655号公報)では、波長選択性波長板を用いて、2つのライトバルブに青帯域の光を分ける構成例が開示されている。これによってライトバルブの劣化に寄与しやすい青帯域光を半減させ、光学システム全体の長寿命化を図っている。
【0011】
しかし、特許文献1に開示されている構成例では青帯域の光を2つのライトバルブに分けることはできるものの、各ライトバルブからの射出光の偏光は互いに直交している。これは、後の投影光学系においてポスト偏光子を用いてコントラストの増大ができないことを意味し、高いコントラストを実現するうえでの課題となっている。一方、波長選択性波長板ではなくダイクロイックミラーやダイクロイックプリズムを用いて類似した構成とすることも可能である。しかし、ダイクロイックミラーを用いた波長分離(色分離)は、分離波長域近傍において急峻な分離特性を必要とし、製造上の難易度が非常に高い。
【0012】
また、特許文献2(特開2001-324762号公報)で提案されている技術のように、瞳の分布を利用して高い波長分離効率を実現する手法も知られている。しかしながらこの手法では、各色のフィルタを通してフィールドシーケンシャルに単板(単一のライトバルブ)を駆動するため、波長分離効率は良好でも全体としての光利用効率は低くなってしまう。
【0013】
上記のような事情に鑑み、本開示では光分岐の手法として、瞳共役を利用した光分離、および光合成の新規な技術を提示する。本技術は様々な使用方法が考えられるが、下記のようなメリットがある。
【0014】
1.各ライトバルブからの射出光の直交状態を解消し、偏光方向を揃えることができる。このため、ポスト偏光子やポスト1/4波長板を配置することで、コントラストを向上することができる。
【0015】
2.効率を大きく上げることができる。特に、波長分離効率を波長選択波長板よりも高く保てるため、全体としての光利用効率を上げることができる。さらにその状態で各ライトバルブからの射出光に選択的にポスト偏光子作用を与えることができ、コントラストを増大することができる。
【0016】
以下の各実施の形態では、本開示の技術による光学システムをプロジェクタに適用した構成例を説明するが、本開示の技術は、プロジェクタに限らず、露光装置等にも適用可能である。
【0017】
<1.第1の実施の形態>
[1.1 第1の実施の形態に係る光学システムの構成および作用]
(光学システムの概要)
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る光学システムの全体構成例を概略的に示している。
【0018】
第1の実施の形態では、ライトバルブを2つ用いた構成例を提示する。第1の実施の形態では、青色光によるライトバルブの劣化を抑えるため、青色光を2つのライトバルブに分岐することで青色光量を半減させ、長寿命化する。そのうえでコントラストを増大させることを目的とする。
【0019】
また、第1の実施の形態では、複数の色光として第1ないし第3の色光を含む場合を例に説明をする。第1ないし第3の色光はそれぞれ、例えばR(赤色),G(緑色),B(青色)のいずれかの色光である。第1の実施の形態において、例えば青色光が、本開示の技術における「第1の色光」の一具体例に相当し、例えば緑色光が、本開示の技術における「第2の色光」の一具体例に相当し、例えば赤色光が、本開示の技術における「第3の色光」の一具体例に相当する。
【0020】
図1に示したように、第1の実施の形態に係る光学システムは、照明光学系1と、投影光学系2とを備えている。また、第1の実施の形態に係る光学システムは、照明光学系1と投影光学系2との間の光路上に、第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32と、PBS(偏光ビームスプリッタ)41とを備えている。
【0021】
照明光学系1は、青色光源10と、蛍光体ホイール11と、集光レンズ12と、QWP(1/4波長板)13と、波長選択性PBS14と、ノッチフィルタ15と、レンズアレイ16と、PSコンバータ17と、第1の領域分割波長選択性波長板51と、リレーレンズ18とを有している。
【0022】
投影光学系2は、複数のレンズ21と、第2の領域分割波長選択性波長板52と、ポスト偏光子22とを有している。
【0023】
なお、図1において、紙面に直交する方向をPBS41にとってのS偏光、光軸に直交し、紙面内に平行な方向をPBS41にとってのP偏光とする。また、適宜、PBS41にとってのS偏光に相当する方向をZ方向、PBS41にとってのP偏光に相当する方向をY方向と記す。以降の他の図においても同様である。また、以降の他の実施の形態においても同様である。
【0024】
照明光学系1は、本開示の技術における「第1の光学系」の一具体例に相当する。投影光学系2は、本開示の技術における「第2の光学系」の一具体例に相当する。第1の領域分割波長選択性波長板51は、本開示の技術における「第1の偏光回転素子」の一具体例に相当する。第2の領域分割波長選択性波長板52は、本開示の技術における「第2の偏光回転素子」の一具体例に相当する。PSコンバータ17は、本開示の技術における「偏光変換素子」の一具体例に相当する。
【0025】
照明光学系1は、互いに波長帯域の異なる複数の色光を含む照明光を生成する。照明光学系1は、少なくとも1つの波長帯域の光を複数の色光に分離する波長分離作用を有する。照明光学系1は、複数の色光としてR,G,Bの各色光を生成し、PBS41に向けて射出する。
【0026】
第1の領域分割波長選択性波長板51は、照明光学系1の瞳位置P1に配置されている。第1の領域分割波長選択性波長板51は、それぞれが互いに異なる偏光作用を持つ複数の分割領域を含む。第1の領域分割波長選択性波長板51における複数の分割領域は、例えば後述する図3に示すA領域およびB領域である。
【0027】
第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32はそれぞれ、複数の色光のうち少なくとも例えば青色光によって照明される。PBS41は、照明光学系1からの各色光を偏光方向に応じて、第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32の少なくとも一方に入射させる。PBS41は、例えば、青色光を偏光の違いによって分岐することによって、第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32に入射させる。また、PBS41は、例えば、緑色光を第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32のうち一方のライトバルブ(第1のライトバルブ31)に入射させる。また、PBS41は、例えば、赤色光を第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32のうち他方のライトバルブ(第2のライトバルブ32)に入射させる。また、PBS41は、第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32によって変調された各色光を、偏光方向に応じて投影光学系2に向けて射出する。
【0028】
第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32はそれぞれ、複数の色光のうち少なくとも1つの色光を、例えば画像信号に応じて変調する。
【0029】
投影光学系2には、PBS41を介して、第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32によって変調された後の各色光が入射する。投影光学系2は、第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32によって生成された画像を図示しないスクリーン等の投影面に投影する。
【0030】
第2の領域分割波長選択性波長板52は、投影光学系2の瞳位置P2に配置されている。第2の領域分割波長選択性波長板52は、それぞれが互いに異なる偏光作用を持つ複数の分割領域を含む。第2の領域分割波長選択性波長板52における複数の分割領域は、例えば後述する図4に示すA’領域およびB’領域である。
【0031】
照明光学系1の瞳位置P1と投影光学系2の瞳位置P2は互いに共役となっている。第1の領域分割波長選択性波長板51における複数の分割領域のそれぞれと、第2の領域分割波長選択性波長板52における複数の分割領域のそれぞれは、互いに共役となっている。
【0032】
照明光学系1の瞳位置P1は、本開示の技術における「第1の瞳位置」の一具体例に相当する。投影光学系2の瞳位置P2は、本開示の技術における「第2の瞳位置」の一具体例に相当する。
なお、本開示の技術における「第1の瞳位置」は、第1の瞳位置近傍の位置であってもよい。従って、本開示の技術における「第1の偏光回転素子」(第1の領域分割波長選択性波長板51)は、第1の瞳位置(瞳位置P1)近傍の位置に配置されていてもよい。ただし、第1の偏光回転素子は、本開示の技術における「第1の光学系」(照明光学系1)内の「偏光変換素子」(PSコンバータ17)とリレーレンズ18との間の光路上に配置されていることが好ましい。
なお、本開示の技術における「第2の瞳位置」は、第2の瞳位置近傍の位置であってもよい。従って、本開示の技術における「第2の偏光回転素子」(第2の領域分割波長選択性波長板52)は、第2の瞳位置(瞳位置P2)近傍の位置に配置されていてもよい。ただし、第2の偏光回転素子は、本開示の技術における「第2の光学系」(投影光学系2)内の絞り位置の前後にある2つのレンズ間の光路上に配置されていることが好ましい。
【0033】
ポスト偏光子22は、第2の領域分割波長選択性波長板52の射出光路上に配置されている。
【0034】
(各部の詳細な構成および作用)
図2は、蛍光体ホイール11の一構成例を概略的に示している。図3は、第1の領域分割波長選択性波長板51の構成および作用の一例を示している。図4は、第2の領域分割波長選択性波長板52の構成および作用の一例を示している。
【0035】
青色光源10は、例えば青色レーザとなっている。蛍光体ホイール11は、図2に示したように、蛍光体領域111と、偏光保持拡散板領域112とを有している。蛍光体領域111に励起光として青色光を照射することで黄色(Ye)光が得られる。偏光保持拡散板領域112は青色光に対して偏光作用がなく反射作用がある。このため、蛍光体ホイール11からは、黄色、青色、黄色、青色…の時間的繰り返しよりなる時間平均的な白色光が射出される。
【0036】
青色光源10から射出された青色光は、波長選択性PBS14で反射された後、1/4波長板13を通り円偏光となったうえで集光レンズ12を介して蛍光体ホイール11へ入射する。蛍光体ホイール11からの射出光は再度、1/4波長板13を通ることによって、波長選択性PBS14にとってのP偏光に変換される。その後、波長選択性PBS14によって透過側へ射出される。また蛍光体ホイール11から取り出された黄色光も同様に反射後、波長選択性PBS14によって透過側へ射出される。蛍光体ホイール11で発生した黄色光は無偏光状態であり、波長選択性PBS14は黄色光を全て透過させる作用を持っている。
【0037】
波長選択性PBS14から射出された青色光および黄色光はノッチフィルタ15、およびレンズアレイ16を通ったのち、PSコンバータ17を通ることで偏光状態が所定の偏光方向(例えばここではY方向の偏光(P偏光))に揃えられる。その直後の照明光学系1の瞳(第1の瞳)が形成される部分に、図3で示したような特性の第1の領域分割波長選択性波長板51が配置されている。
【0038】
図3は、第1の領域分割波長選択性波長板51の構成および作用の一例を示している。第1の領域分割波長選択性波長板51は、第1の分割領域および第2の分割領域を含み、第1の分割領域および第2の分割領域が例えば青色光に対して互いに異なる偏光特性を有する。例えば図3におけるA領域が本開示の技術における「第1の分割領域」の一具体例に相当し、B領域が本開示の技術における「第2の分割領域」の一具体例に相当する。
【0039】
第1の領域分割波長選択性波長板51は、例えば上半分(A領域)が緑色のみに作用する斜め45degに配置された1/2波長板であり、下半分(B領域)が緑色と青色とに作用する斜め45degに配置された1/2波長板となっている。なお、図3において、白く小さな円形状の部分は、この瞳における照明分布である。他の瞳部分に関する図においても同様である。第1の領域分割波長選択性波長板51において、波長板作用が照明光に及ぶと赤色光の偏光はいずれの領域でも回転せずY方向の偏光(P偏光)となる。また、緑色光の偏光はいずれの領域でも90deg回転し、Z方向の偏光(S偏光)となる。また、青色光の偏光は回転しない偏光(Y方向の偏光(P偏光))と90deg回転した偏光(Z方向の偏光(S偏光))との混在状態となる。
【0040】
なお、第1の領域分割波長選択性波長板51の偏光特性は上記した特性に限らず、他の構成にすることも可能である。例えば、第1の領域分割波長選択性波長板51を、上半分(A領域)が赤色と青色とに作用する斜め45degに配置された1/2波長板とし、下半分(B領域)が赤色のみに作用する斜め45degに配置された1/2波長板としてもよい。この場合、第1の領域分割波長選択性波長板51において、緑色光の偏光はいずれの領域でも回転しない。また、赤色光の偏光はいずれの領域でも90deg回転する。また、青色光の偏光は回転しない偏光と90deg回転した偏光との混在状態となる。
【0041】
第1の領域分割波長選択性波長板51を経たのち、各色の光束はリレーレンズ18を通してPBS41に到達すると、各偏光状態に応じて各色光が選択的に第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32へ導かれる。赤色光はP偏光であり第2のライトバルブ32へ到達し、緑色光はS偏光であり第1のライトバルブ31へ到達する。青色光はP偏光とS偏光との混在状態であり、第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32へ半々に到達する。第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32に反射型液晶を用いた場合には、各ライトバルブで白表示を行うと各々の偏光回転が生じ、各入射偏光は直交状態の射出偏光へと変化する。従って、第1のライトバルブ31では赤色光および青色光がS偏光として射出し、第2のライトバルブ32では青色光および赤色光がP偏光として射出する。従って、白表示を行うとPBS41を介した光は全て投影光学系2側へと射出することになる。
【0042】
一般的に、PBS41は偏光膜の特性上、Ts(透過S偏光成分)よりもRp(反射P偏光成分)が若干大きくなる傾向にある。従って、第2のライトバルブ32側は第1のライトバルブ31側よりもコントラストが出にくい傾向にある。これは黒表示時に第1のライトバルブ31で発生するS偏光の光よりも、第2のライトバルブ32で発生するP偏光の光の方がより多く投影光学系2側へ漏れこむためである。1つのライトバルブのみを用いる1板構成の場合にはコントラストが高くなる第1のライトバルブ31側だけを用いて構成するが、2つのライトバルブを用いる2板構成の場合には、大きくコントラストを損なう要因となる。このため、照明光学系1のFナンバーがF/2.5~3程度(かつノッチフィルタ15がある場合)において1000:1程度のコントラストを達成するためには、ポスト偏光子22(PBS41射出後の検光子)によって偏光方向を揃え、コントラストを改善する必要がある。
【0043】
第1の実施の形態に係る光学システムにおいて、ポスト偏光子22を仮にPBS41の直後に工夫なく配置した場合、青色光の偏光状態が直交しているために光量が半減してしまう。これを瞳の共役作用を利用することで改善することが第1の実施の形態に係る光学システムの最大の特徴である。
【0044】
すなわち、第1の実施の形態に係る光学システムでは、PBS41からの射出後、投影光学系2の瞳(第2の瞳)位置P2に、第2の領域分割波長選択性波長板52を配置する。
【0045】
図4は、第2の領域分割波長選択性波長板52の構成および作用の一例を示している。第2の領域分割波長選択性波長板52は、第3の分割領域および第4の分割領域を含み、第3の分割領域および第4の分割領域が例えば青色光に対して互いに異なる偏光特性を有する。例えば図4におけるA’領域が本開示の技術における「第3の分割領域」の一具体例に相当し、B’領域が本開示の技術における「第4の分割領域」の一具体例に相当する。
【0046】
投影光学系2の瞳は、照明光学系1の瞳と共役であり、ライトバルブ反射を経ているために領域的には上下反転が各々の共役部分に対応している。従って、図4に示した通り、第1の領域分割波長選択性波長板51のA領域に共役な領域は、第2の領域分割波長選択性波長板52の下部のA’領域であり、第1の領域分割波長選択性波長板51のB領域に共役な領域は、第2の領域分割波長選択性波長板52の上部のB’領域である。共役ということは第1の領域分割波長選択性波長板51のA領域を通った光は必ず第2の領域分割波長選択性波長板52のA’領域を通り、第1の領域分割波長選択性波長板51のB領域を通った光は必ず第2の領域分割波長選択性波長板52のB’領域を通る。従って、混在していた青色光のうちP偏光は選択的にB’領域に、S偏光は選択的にA’領域へ入射する。その後、A’領域では青色光の偏光は変換されず、B’領域では青色光の偏光は90deg回転される。またいずれの領域でも赤色光は偏光が回転せず、緑色光は偏光が90deg回転されるため、結果として第2の領域分割波長選択性波長板52を通過後の各色光の偏光はS偏光に統一されることになる。
【0047】
なお、第2の領域分割波長選択性波長板52の偏光特性は上記した特性に限らず、他の構成にすることも可能である。例えば、第2の領域分割波長選択性波長板52を、A’領域が赤色と青色とに作用する斜め45degに配置された1/2波長板とし、B’領域が赤色のみに作用する斜め45degに配置された1/2波長板としてもよい。この場合、第2の領域分割波長選択性波長板52において、緑色光の偏光はいずれの領域でも回転しない。また、赤色光の偏光はいずれの領域でも90deg回転する。また、青色光の偏光はA’領域では90deg回転し、B’領域では回転しない。
【0048】
第2の領域分割波長選択性波長板52を経たのち、P偏光をカットするようにポスト偏光子22を配置することで、コントラスト向上を図ることができる。この第1の実施の形態に係る光学システムを模した実験系では白色のコントラストとしてF/2.5で約1000:1の実験結果が得られており、また青色光の光量もほぼ半分ずつ第1のライトバルブ31と第2のライトバルブ32とに分岐できており想定した作用を示すことが確認できた。
【0049】
第1の実施の形態に係る光学システムでは、蛍光体ホイール11における黄色発光時に第1のライトバルブ31側に選択的に緑色光が導かれると共に、第2のライトバルブ32側に選択的に赤色光が導かれる。また、青色光が蛍光体ホイール11から射出されるタイミングでは、第1のライトバルブ31と第2のライトバルブ32とに半々ずつ青色光が導かれる。各ライトバルブでは各々の色光に対応した時間の間、各々の色光に対する諧調出力がなされる。すなわち青色光を2つに分けたうえでコントラストを高めるために瞳共役を用いていることになる。この主な目的は先に述べた通り、特にライトバルブの寿命を短くする原因である青色光を2つに分けることで入射光量を半減させ光学システム全体の寿命を大幅に向上させることであり、この意味で2つに分ける光は500nm以下であることが望ましい。
【0050】
なお、第1の実施の形態に係る光学システムの構成に対する比較例として、特許文献3(特開2008-165058号公報)に記載のプロジェクタが挙げられる。特許文献3に記載のプロジェクタでは、投影光学系内の瞳近傍に領域分割された位相差板を配置し、投影光学系内において偏光によって光を2分割している。しかしながら、単純に投影光学系内において偏光によって光を分割するのと、第1の実施の形態に係る光学システムのように、照明光学系1の瞳で分割した領域と共役になる部分に領域分割偏光作用を与えるのとでは質的な違いがある。すなわち前者ではいずれのライトバルブから発生した光にも同等の偏光作用を与えるのに対して、後者では共役関係を利用することで特定のライトバルブに到達した光に対してのみ特定の偏光作用を与えることができるという特徴を持つ。
【0051】
[1.2 第1の実施の形態に係る光学システムの望ましい構成例]
図5は、第1の実施の形態に係る光学システムの望ましい構成例の全体構成を概略的に示している。
【0052】
図5に示した光学システムは、図1に示した光学システムにおける照明光学系1に代えて照明光学系1Aを備えている。照明光学系1Aは、照明光学系1の構成に対して、プレ偏光子50をさらに備えている。
【0053】
プレ偏光子50は、照明光学系1A内において、PSコンバータ17と第1の領域分割波長選択性波長板51との間に配置されている。プレ偏光子50は、PSコンバータ17から射出された光に含まれる所定の偏光方向(図5の例ではP偏光)以外の偏光方向の光を低減する偏光子である。プレ偏光子50としては、良好な整流作用を与え消光比を上げる目的で例えば反射タイプの金属構造体のワイヤーグリッドを用いることが好ましい。プレ偏光子50をPSコンバータ17と第1の領域分割波長選択性波長板51との間に配置することにより、PSコンバータ17によって揃えきれなかった所定の偏光方向以外の偏光方向の光を低減することが可能となる。これにより、よりコントラストの向上を図ることが可能となる。
【0054】
[1.3 効果]
以上説明したように、第1の実施の形態に係る光学システムによれば、照明光学系1の瞳位置P1に、それぞれが互いに異なる偏光作用を持つ複数の分割領域を含む第1の領域分割波長選択性波長板51を配置すると共に、第1の瞳位置に共役な投影光学系2の瞳位置P2に、それぞれが互いに異なる偏光作用を持つ複数の分割領域を含む第2の領域分割波長選択性波長板52を配置するようにしたので、コントラストの向上を図ることが可能となる。
【0055】
第1の実施の形態に係る光学システムによれば、コントラスト増大が見込める他、投影光学系2における最終的な射出光の偏光を一方向に揃えることによって、投影面での色ムラ防止ができる。また1つのPBS41に対して、2つのライトバルブを使用した状態でコントラストを高められるので、結果的に光学システム全体を小さくすることができる。
【0056】
さらに、第1の実施の形態に係る光学システムによれば、照明光学系1A(図5)内において、PSコンバータ17から射出された光に含まれる所定の偏光方向以外の偏光方向の光を低減するプレ偏光子50を配置することにより、よりコントラストの向上を図ることが可能となる。
【0057】
なお、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。以降の他の実施の形態の効果についても同様である。
【0058】
<2.第2の実施の形態>
次に、本開示の第2の実施の形態に係る光学システムについて説明する。なお、以下では、上記第1の実施の形態に係る光学システムの構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0059】
上記したように第1の実施の形態に係る光学システムにおいて、図5に示した構成例のようにPSコンバータ17と第1の領域分割波長選択性波長板51との間にプレ偏光子50を配置することでコントラストの向上を図ることが可能となる。一方で、プレ偏光子50を配置した場合、第1のライトバルブ31または第2のライトバルブ32からの戻り光がプレ偏光子50で反射され、再度、照明光として第1のライトバルブ31または第2のライトバルブ32へと戻る不要光となるおそれがある。第2の実施の形態に係る光学システムでは、この不要光の発生を低減する構成について説明する。第2の実施の形態に係る光学システムの構成を説明する前に、まず、不要光の発生原理について説明する。
【0060】
(不要光の発生原理)
図6ないし図8は、図5に示した構成例において生じる戻り光の光路の第1ないし第3の例を示している。
【0061】
なお、図6ないし図8では、説明上必要な要部構成のみを示す。また、図6ないし図8では、図5に示した構成例に対して、PSコンバータ17が所定の偏光方向として入射光をS偏光に揃える場合を例に示している。第1の領域分割波長選択性波長板51には赤色光、緑色光、および青色光の各色光がS偏光で入射する。図6ないし図8では、プレ偏光子50は、S偏光のみを透過し、S偏光以外の偏光方向の光を反射する構成となっている。図6ないし図8では、第1の領域分割波長選択性波長板51が全領域において赤色光の偏光を90deg回転し、緑色光の偏光を全領域において回転しない構成となっている。また、図6ないし図8では、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域(図3におけるA領域)において青色光の偏光を90deg回転し、下側領域(図3におけるB領域)において回転しない構成となっている。
【0062】
まず、図6を参照して赤色光および緑色光の戻り光について説明する。第1の領域分割波長選択性波長板51は、赤色光に対しては全領域で偏光を回すので、第1の領域分割波長選択性波長板51からは全領域に亘ってP偏光の赤色光が射出される。P偏光の赤色光は、P偏光のままリレーレンズ18を通過し、PBS41を介して、第2のライトバルブ32へと到達する。第2のライトバルブ32は、黒表示時は偏光を回さないので、赤色光は第2のライトバルブ32においてP偏光のまま反射し、再び第1の領域分割波長選択性波長板51まで戻るP偏光の戻り光となる。第1の領域分割波長選択性波長板51では全領域で赤色光に対しては偏光を回すのでP偏光の戻り光は、S偏光の戻り光となり、プレ偏光子50へ到達する。プレ偏光子50はS偏光を透過する構成となっているので、S偏光の戻り光はそのままプレ偏光子50を通過する。このため、赤色光については不要光は発生しない。
【0063】
緑色光に対しては、第1の領域分割波長選択性波長板51は緑色光に対しては全領域で偏光を回さないので、第1の領域分割波長選択性波長板51からは全領域に亘ってS偏光の緑色光が射出される。S偏光の緑色光は、S偏光のままリレーレンズ18を進み、第1のライトバルブ31へ到達する。第1のライトバルブ31は、黒表示時は偏光を回さないので、緑色光は第1のライトバルブ31においてS偏光のまま反射し、再び第1の領域分割波長選択性波長板51まで戻るS偏光の戻り光となる。第1の領域分割波長選択性波長板51では全領域で緑色光に対しては偏光を回さないので、S偏光の戻り光のまま、プレ偏光子50へ到達する。プレ偏光子50はS偏光を透過する構成となっているので、S偏光の戻り光はそのままプレ偏光子50を通過する。このため、緑色光については不要光は発生しない。つまり、図6の構成では、赤色光と緑色光の戻り光に対しては、不要光は発生しない。
【0064】
次に、図7および図8を参照して青色光の戻り光について説明する。
【0065】
まず、図7を参照して第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域を通過した後、下側領域へと戻る青色光の戻り光について説明する。第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域では、青色光に対しては偏光を回すので、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域からはP偏光の青色光が射出される。P偏光の青色光は、P偏光のままリレーレンズ18を通過し、PBS41を介して、第2のライトバルブ32へと到達する。第2のライトバルブ32は、黒表示時は偏光を回さないので、青色光は第2のライトバルブ32においてP偏光のまま反射し、第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域に戻るP偏光の戻り光となる。第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域では青色光に対しては偏光を回さないのでP偏光の戻り光は、P偏光のままプレ偏光子50へ到達する。プレ偏光子50はS偏光を透過し、P偏光を反射する構成となっているので、P偏光の戻り光はプレ偏光子50で反射し、再び、第2のライトバルブ32へと戻る、十分な光量を持った不要光となる。
【0066】
次に、図8を参照して第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域を通過した後、上側領域へと戻る青色光の戻り光について説明する。第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域では、青色光に対しては偏光を回さないので、第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域からはS偏光の青色光が射出される。S偏光の青色光は、S偏光のままリレーレンズ18を進み、第1のライトバルブ31へ到達する。第1のライトバルブ31は、黒表示時は偏光を回さないので、青色光は第1のライトバルブ31においてS偏光のまま反射し、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域に戻るS偏光の戻り光となる。第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域では青色光に対しては偏光を回すので、P偏光の戻り光となり、プレ偏光子50へ到達する。プレ偏光子50はS偏光を透過し、P偏光を反射する構成となっているので、P偏光の戻り光はプレ偏光子50で反射し、再び、第1のライトバルブ31へと戻る、十分な光量を持った不要光となる。
【0067】
図9は、図5に示した構成例において生じる戻り光の光路の第4の例を示している。
【0068】
なお、図9では、説明上必要な要部構成のみを示す。また、図9では、図5に示した構成例と同様に、PSコンバータ17が所定の偏光方向として入射光をP偏光に揃える場合を例に示している。第1の領域分割波長選択性波長板51には赤色光、緑色光、および青色光の各色光がP偏光で入射する。図9では、プレ偏光子50は、P偏光のみを透過し、P偏光以外の偏光方向の光を反射する構成となっている。図9では、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域(図3におけるA領域)において青色光の偏光を90deg回転し、下側領域(図3におけるB領域)において回転しない構成となっている。
【0069】
図9には、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域を通過した後、下側領域へと戻る青色光の戻り光の光路を示す。第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域では、青色光に対しては偏光を回すので、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域からはS偏光の青色光が射出される。S偏光の青色光は、S偏光のままリレーレンズ18を通過し、PBS41を介して、第1のライトバルブ31へと到達する。第1のライトバルブ31は、黒表示時は偏光を回さないので、青色光は第1のライトバルブ31においてS偏光のまま反射し、第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域に戻るS偏光の戻り光となる。第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域では青色光に対しては偏光を回さないのでS偏光の戻り光は、S偏光のままプレ偏光子50へ到達する。プレ偏光子50はP偏光を透過し、S偏光を反射する構成となっているので、S偏光の戻り光はプレ偏光子50で反射し、再び、第1のライトバルブ31へと戻る、十分な光量を持った不要光となる。
【0070】
以上のように、第1の実施の形態に係る光学システムにおいて、PSコンバータ17と第1の領域分割波長選択性波長板51との間にプレ偏光子50を配置した構成の場合、PSコンバータ17から射出する偏光の方向がS偏光であってもP偏光であっても、青色光の不要光が発生する。このため、特にコントラストの黒レベルの悪化を招き、投影像に影響を及ぼす。
【0071】
(第2の実施の形態に係る光学システムの構成および作用)
図10は、第2の実施の形態に係る光学システムの要部構成例を概略的に示している。
【0072】
なお、図10では、説明上必要な要部構成のみを示す。また、図10では、図5に示した構成例に対して、PSコンバータ17が所定の偏光方向として入射光を例えばS偏光に揃える場合を例に示している。第1の領域分割波長選択性波長板51には赤色光、緑色光、および青色光の各色光が例えばS偏光で入射する。図10では、プレ偏光子50は、例えばS偏光のみを透過し、例えばS偏光以外の偏光方向の光を反射する構成となっている。図10では、例えば、第1の領域分割波長選択性波長板51が全領域において赤色光の偏光を90deg回転し、緑色光の偏光を全領域において回転しない構成となっている。また、図10では、例えば、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域(図3におけるA領域)において青色光の偏光を90deg回転し、下側領域(図3におけるB領域)において回転しない構成となっている。
【0073】
第2の実施の形態に係る光学システムは、図5に示した照明光学系1Aに代えて照明光学系1Bを備えている。照明光学系1Bは、照明光学系1Aの構成に対して、領域分割波長選択性ミラー180をさらに備えている。領域分割波長選択性ミラー180は、本開示の技術における「波長選択性反射素子」の一具体例に相当する。
【0074】
領域分割波長選択性ミラー180は、第1の領域分割波長選択性波長板51と第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32との間の光路上に配置されている。図11の構成例では、リレーレンズ18が第1のレンズ181と第2のレンズ182とを有している。領域分割波長選択性ミラー180は、リレーレンズ18における第1のレンズ181と第2のレンズ182との間の光路上に配置されている。
【0075】
領域分割波長選択性ミラー180は、第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32のうちの少なくとも1つのライトバルブからプレ偏光子50へと戻る青色光の戻り光を低減する波長選択性反射素子である。領域分割波長選択性ミラー180は、第1の領域分割波長選択性波長板51と第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32との間の光路の光軸に対し傾斜配置されている。
【0076】
図11は、第2の実施の形態に係る光学システムにおける領域分割波長選択性ミラーの透過特性の一例を示している。領域分割波長選択性ミラー180は、第1の領域分割波長選択性波長板51における上側領域(図3におけるA領域)および下側領域(図3におけるB領域)のうち少なくとも一方の分割領域に対応する領域において波長依存性のある偏光ダイクロイックプレートである。このため、領域分割波長選択性ミラー180は、第1の領域分割波長選択性波長板51における上側領域および下側領域のうち少なくとも一方の分割領域に対応する領域に配置されていればよい。
【0077】
図10の構成例では、領域分割波長選択性ミラー180は、第1の領域分割波長選択性波長板51における上側領域に対応する領域のみ、図11に示したような波長依存性のある特性を有している。すなわち、領域分割波長選択性ミラー180は、例えば、第1の領域分割波長選択性波長板51における上側領域に対応する領域では、S偏光については赤色光および緑色光を透過し、青色光を反射する特性を有する。また、領域分割波長選択性ミラー180は、例えば、第1の領域分割波長選択性波長板51における上側領域に対応する領域では、P偏光については赤色光、緑色光および青色光を透過する特性を有する。また、領域分割波長選択性ミラー180は、例えば、第1の領域分割波長選択性波長板51における下側領域に対応する領域では、偏光方向にかかわらず、赤色光、緑色光および青色光を透過する特性を有する。このように、第1の領域分割波長選択性波長板51における下側領域に対応する領域では偏光方向にかかわらず各色光を透過すればよいので、全領域に亘って波長依存性のある領域分割波長選択性ミラー180を、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域に対応する領域のみに配置する構成であってもよい。
【0078】
図12は、第2の実施の形態に係る光学システムにおいて生じる戻り光の光路の一例を示している。
【0079】
領域分割波長選択性ミラー180は、第1の領域分割波長選択性波長板51における上側領域および下側領域のうち一方の分割領域に対応する領域において、一方の分割領域からの複数の色光を全て透過する。また、領域分割波長選択性ミラー180は、第1の領域分割波長選択性波長板51における上側領域および下側領域のうち一方の分割領域に対応する領域において、第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32のうちの少なくとも1つのライトバルブから第1の領域分割波長選択性波長板51へと戻る青色光の戻り光を反射する。また、領域分割波長選択性ミラー180は、第1の領域分割波長選択性波長板51における上側領域および下側領域のうち他方の分割領域に対応する領域において、他方の分割領域からの複数の色光を全て透過する。
【0080】
図12には、上述の図8において説明した、第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域を通過した後、上側領域へと戻る青色光の戻り光に起因する不要光が除去される様子を示す。第2の実施の形態に係る光学システムでは、例えば図12に示したように、第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域からはS偏光の青色光が射出される。領域分割波長選択性ミラー180は、第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域に対応する領域ではS偏光の青色光をそのまま透過するので、S偏光の青色光は、S偏光のままリレーレンズ18を進み、第1のライトバルブ31へ到達する。第1のライトバルブ31は、黒表示時は偏光を回さないので、青色光は第1のライトバルブ31においてS偏光のまま反射し、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域に戻るS偏光の戻り光となる。ここで、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域に対応する領域にはS偏光の青色光を反射する特性を有する領域分割波長選択性ミラー180が配置されているので、青色光の戻り光は第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域には到達せず、光路外へと反射される。これにより、上側領域へと戻るS偏光の青色光の戻り光に起因する不要光が除去される。なお、領域分割波長選択性ミラー180において、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域に対応する領域では、P偏光については青色光は透過し、第2のライトバルブ32へ到達する。また、赤色光および緑色光に対しては、偏光にかかわらず、領域分割波長選択性ミラー180は透過する特性を有するので、赤色光および緑色光は、第1のライトバルブ31または第2のライトバルブ32に問題なく到達する。これにより、不要光となるS偏光の青色光のみを選択的に除去することが可能となる。
【0081】
その他の構成、作用および効果は、上記第1の実施の形態に係る光学システムと略同様であってもよい。
【0082】
<3.第3の実施の形態>
次に、本開示の第3の実施の形態に係る光学システムについて説明する。なお、以下では、上記第1または第2の実施の形態に係る光学システムの構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0083】
第3の実施の形態に係る光学システムでは、第2の実施の形態に係る光学システムと同様に、プレ偏光子50を配置したことに起因する不要光の発生を低減する構成について説明する。
【0084】
図13は、第3の実施の形態に係る光学システムの要部構成例を概略的に示している。
【0085】
なお、図13では、説明上必要な要部構成のみを示す。また、図13では、図5に示した構成例に対して、PSコンバータ17が所定の偏光方向として入射光を例えばS偏光に揃える場合を例に示している。第1の領域分割波長選択性波長板51には赤色光、緑色光、および青色光の各色光が例えばS偏光で入射する。図13では、プレ偏光子50は、例えばS偏光のみを透過し、例えばS偏光以外の偏光方向の光を反射する構成となっている。図13では、例えば、第1の領域分割波長選択性波長板51が全領域において赤色光の偏光を90deg回転し、緑色光の偏光を全領域において回転しない構成となっている。また、図13では、例えば、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域(図3におけるA領域)において青色光の偏光を90deg回転し、下側領域(図3におけるB領域)において回転しない構成となっている。
【0086】
第2の実施の形態に係る光学システムは、図5に示した照明光学系1Aに代えて照明光学系1Cを備えている。照明光学系1Cは、照明光学系1Aの構成に対して、領域分割波長選択性ミラー190をさらに備えている。領域分割波長選択性ミラー190は、本開示の技術における「波長選択性反射素子」の一具体例に相当する。
【0087】
領域分割波長選択性ミラー190は、第1の領域分割波長選択性波長板51と第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32との間の光路上に配置されている。図13の構成例では、リレーレンズ18が第1のレンズ181と第2のレンズ182とを有している。領域分割波長選択性ミラー190は、リレーレンズ18における第1のレンズ181と第2のレンズ182との間の光路上に配置され、第1のレンズ181と第2のレンズ182との間において、光路を90度折り曲げる構成とされている。
【0088】
領域分割波長選択性ミラー190は、第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32のうちの少なくとも1つのライトバルブからプレ偏光子50へと戻る青色光の戻り光を低減する波長選択性反射素子である。領域分割波長選択性ミラー190は、第1の領域分割波長選択性波長板51と第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32との間の光路の光軸に対し傾斜配置されている。
【0089】
図14は、第3の実施の形態に係る光学システムにおける領域分割波長選択性ミラーの反射特性の一例を示している。領域分割波長選択性ミラー190は、第1の領域分割波長選択性波長板51における上側領域(図3におけるA領域)および下側領域(図3におけるB領域)のうち少なくとも一方の分割領域に対応する領域において波長依存性のある偏光ダイクロイックプレートである。このため、領域分割波長選択性ミラー190は、第1の領域分割波長選択性波長板51における上側領域および下側領域のうち少なくとも一方の分割領域に対応する領域に配置されていればよい。なお、上側領域および下側領域のいずれか一方に対応する領域にのみ領域分割波長選択性ミラー190を配置する場合、他方の領域は全反射ミラーを配置する。
【0090】
図13の構成例では、領域分割波長選択性ミラー190は、第1の領域分割波長選択性波長板51における下側領域に対応する領域のみ、図14に示したような波長依存性のある特性を有している。すなわち、領域分割波長選択性ミラー190は、例えば、第1の領域分割波長選択性波長板51における下側領域に対応する領域では、P偏光については赤色光および緑色光を反射し、青色光を透過する特性を有する。また、領域分割波長選択性ミラー190は、例えば、第1の領域分割波長選択性波長板51における下側領域に対応する領域では、S偏光については赤色光、緑色光および青色光を全て反射する特性を有する。また、領域分割波長選択性ミラー190は、例えば、第1の領域分割波長選択性波長板51における上側領域に対応する領域では、偏光方向にかかわらず、赤色光、緑色光および青色光を全て反射する特性を有する。このように、第1の領域分割波長選択性波長板51における上側領域に対応する領域では偏光方向にかかわらず各色光を反射すればよいので、全領域に亘って波長依存性のある領域分割波長選択性ミラー180を、第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域に対応する領域のみに配置する構成であってもよい。
【0091】
図15は、第3の実施の形態に係る光学システムにおいて生じる戻り光の光路の一例を示している。
【0092】
領域分割波長選択性ミラー190は、第1の領域分割波長選択性波長板51における上側領域および下側領域のうち一方の分割領域に対応する領域において、一方の分割領域からの複数の色光を全て反射する。また、領域分割波長選択性ミラー190は、第1の領域分割波長選択性波長板51における上側領域および下側領域のうち一方の分割領域に対応する領域において、第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32のうちの少なくとも1つのライトバルブから第1の領域分割波長選択性波長板51へと戻る青色光の戻り光を透過する。また、領域分割波長選択性ミラー190は、第1の領域分割波長選択性波長板51における上側領域および下側領域のうち他方の分割領域に対応する領域において、他方の分割領域からの複数の色光を全て反射する。
【0093】
図15には、上述の図7において説明した、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域を通過した後、下側領域へと戻る青色光の戻り光に起因する不要光が除去される様子を示す。第3の実施の形態に係る光学システムでは、例えば図15に示したように、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域からはP偏光の青色光が射出される。領域分割波長選択性ミラー190は、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域に対応する領域ではP偏光の青色光をそのまま反射するので、P偏光の青色光は、P偏光のままリレーレンズ18を進み、第2のライトバルブ32へ到達する。第2のライトバルブ32は、黒表示時は偏光を回さないので、青色光は第2のライトバルブ32においてP偏光のまま反射し、第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域に戻るP偏光の戻り光となる。ここで、第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域に対応する領域にはP偏光の青色光を透過する特性を有する領域分割波長選択性ミラー190が配置されているので、青色光の戻り光は第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域には到達せず、光路外へと透過する。これにより、下側領域へと戻るP偏光の青色光の戻り光に起因する不要光が除去される。なお、領域分割波長選択性ミラー190において、第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域に対応する領域では、S偏光については青色光は反射され、第1のライトバルブ31に到達する。また、赤色光および緑色光に対しては、偏光にかかわらず、領域分割波長選択性ミラー190は全反射ミラーとして機能するので、赤色光および緑色光は、第1のライトバルブ31または第2のライトバルブ32に問題なく到達する。これにより、不要光となるP偏光の青色光のみを選択的に除去することが可能となる。
【0094】
その他の構成、作用および効果は、上記第1の実施の形態に係る光学システムと略同様であってもよい。
【0095】
<4.第4の実施の形態>
次に、本開示の第4の実施の形態に係る光学システムについて説明する。なお、以下では、上記第1ないし第3のいずれかの実施の形態に係る光学システムの構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0096】
第4の実施の形態に係る光学システムでは、第2の実施の形態に係る光学システムと同様に、プレ偏光子50を配置したことに起因する不要光の発生を低減する構成について説明する。
【0097】
図16は、第4の実施の形態に係る光学システムの要部構成例を概略的に示している。
【0098】
第4の実施の形態に係る光学システムは、図5に示した照明光学系1Aに代えて照明光学系1Dを備えている。照明光学系1Dは、照明光学系1Aの構成に対して、プレ偏光子50に代えてプレ偏光子50Aを備えている。プレ偏光子50Aは、本開示の技術における「吸収型偏光子」の一具体例に相当する。
【0099】
プレ偏光子50Aは、第1のライトバルブ31および第2のライトバルブ32のうちの少なくとも1つのライトバルブから第1の領域分割波長選択性波長板51を介して戻る青色光の戻り光を吸収する広帯域の吸収型の偏光子である。吸収型の偏光子なので、プレ偏光子50Aを冷却するために、プレ偏光子50Aにヒートシンク等の冷却部材500が設けられていることが好ましい。
【0100】
なお、図16では、説明上必要な要部構成のみを示す。また、図16では、図5に示した構成例と同様に、PSコンバータ17が所定の偏光方向として入射光をP偏光に揃える場合を例に示している。第1の領域分割波長選択性波長板51には赤色光、緑色光、および青色光の各色光がP偏光で入射する。図16では、プレ偏光子50Aは、P偏光のみを透過し、P偏光以外の偏光方向の光を吸収する構成となっている。図16では、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域(図3におけるA領域)において青色光の偏光を90deg回転し、下側領域(図3におけるB領域)において回転しない構成となっている。
【0101】
図16には、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域を通過した後、下側領域へと戻る青色光の戻り光の光路を示す。第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域では、青色光に対しては偏光を回すので、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域からはS偏光の青色光が射出される。S偏光の青色光は、S偏光のままリレーレンズ18を通過し、PBS41を介して、第1のライトバルブ31へと到達する。第1のライトバルブ31は、黒表示時は偏光を回さないので、青色光は第1のライトバルブ31においてS偏光のまま反射し、第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域に戻るS偏光の戻り光となる。第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域では青色光に対しては偏光を回さないのでS偏光の戻り光は、S偏光のままプレ偏光子50Aへ到達する。プレ偏光子50AはP偏光を透過し、S偏光を吸収する構成となっているので、下側領域においてS偏光の戻り光はプレ偏光子50で吸収されることで、不要光は発生しない。
【0102】
また、第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域では、青色光に対しては偏光を回さないので、第1の領域分割波長選択性波長板51の下側領域からはP偏光の青色光が射出される。P偏光の青色光は、P偏光のままリレーレンズ18を通過し、PBS41を介して、第2のライトバルブ32へと到達する。第2のライトバルブ32は、黒表示時は偏光を回さないので、青色光は第2のライトバルブ32においてP偏光のまま反射し、第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域に戻るP偏光の戻り光となる。第1の領域分割波長選択性波長板51の上側領域では青色光に対しては偏光を回すので、P偏光の戻り光は、S偏光となってプレ偏光子50Aへ到達する。プレ偏光子50AはP偏光を透過し、S偏光を吸収する構成となっているので、上側領域においてS偏光の戻り光はプレ偏光子50で吸収されることで、不要光は発生しない。
【0103】
このように、第4の実施の形態に係る光学システムでは、S偏光の戻り光およびP偏光の戻り光のいずれについても、不要光の発生を低減することが可能となる。
【0104】
その他の構成、作用および効果は、上記第1の実施の形態に係る光学システムと略同様であってもよい。
【0105】
<5.第5の実施の形態>
次に、本開示の第5の実施の形態に係る光学システムについて説明する。なお、以下では、上記第1ないし第4のいずれかの実施の形態に係る光学システムの構成要素と略同じ部分については、同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0106】
上記第1の実施の形態では、第1の領域分割波長選択性波長板51の領域分割パターンが上下に2分割された分割構造を有する場合を例に説明したが、第1の領域分割波長選択性波長板51の領域分割パターンは上下に2分割された分割構造には限らず、種々の分割構造を取り得る。同様に、第2の領域分割波長選択性波長板52の領域分割パターンについても、上下に2分割された分割構造には限らず、種々の分割構造を取り得る。第1の領域分割波長選択性波長板51と第2の領域分割波長選択性波長板52とが互いに共役となる領域分割パターンとなっていればよい。以下、第1の領域分割波長選択性波長板51について、領域分割パターンの変形例を説明する。
【0107】
図17は、第1の領域分割波長選択性波長板51の領域分割パターンの第1の変形例を概略的に示している。第1の領域分割波長選択性波長板51は、例えば図17に示したように、図3のA領域に相当する偏光特性を有する短冊状の第1の分割領域と、図3のB領域に相当する偏光特性を有する短冊状の第2の分割領域とを交互に複数、配置した構成であってもよい。
【0108】
図18は、第1の領域分割波長選択性波長板51の領域分割パターンの第2の変形例を概略的に示している。第1の領域分割波長選択性波長板51は、例えば図18に示したように、図3のA領域に相当する偏光特性を有する第1の分割領域と、図3のB領域に相当する偏光特性を有する第2の分割領域とを格子状に複数、配置した構成であってもよい。
【0109】
ここで、第2の実施の形態において説明したように、第1の実施の形態に係る光学システムにおいて、図5に示した構成例のようにプレ偏光子50を配置した場合、第1のライトバルブ31または第2のライトバルブ32からの戻り光がプレ偏光子50で反射され、再度、照明光として第1のライトバルブ31または第2のライトバルブ32へと戻る不要光となるおそれがある。この場合、第1の領域分割波長選択性波長板51において、戻り光の元となる往路の光線の位置と戻り光となる復路の光線の位置とが、反射の原則により、互いに点対称の位置となる。そして、不要光は、第1の領域分割波長選択性波長板51において、往路の光線位置と復路の光線位置とにおける偏光特性が互いに異なることに起因して発生する。このため、第1の領域分割波長選択性波長板51は、少なくとも一部の領域において、第1の分割領域と第2の分割領域とが点対称に分布する分割構造を有することが好ましい。不要光の低減のためには、第1の領域分割波長選択性波長板51は、少なくとも半分以上の領域において、第1の分割領域と第2の分割領域とが点対称に分布する分割構造を有することが好ましい。以下、図19ないし図22に、第1の領域分割波長選択性波長板51の少なくとも半分以上の領域において、第1の分割領域と第2の分割領域とが点対称に分布する分割構造を有する例を示す。
【0110】
図19は、第1の領域分割波長選択性波長板51の領域分割パターンの第3の変形例を概略的に示している。図19には、図17の分割構造に対して第1の分割領域と第2の分割領域とを全領域に亘って点対称に分布させるようにした分割構造を示す。
【0111】
図20は、第1の領域分割波長選択性波長板51の領域分割パターンの第4の変形例を概略的に示している。図20には、図18の分割構造に対して第1の分割領域と第2の分割領域とを全領域に亘って点対称に分布させるようにした分割構造を示す。
【0112】
図21は、第1の領域分割波長選択性波長板51の領域分割パターンの第5の変形例を概略的に示している。図21には、中心領域の偏光特性と外側領域の偏光特性とを互いに異ならせることにより、第1の分割領域と第2の分割領域とを全領域に亘って点対称に分布させるようにした分割構造を示す。
【0113】
図22は、第1の領域分割波長選択性波長板51の領域分割パターンの第6の変形例を概略的に示している。図20の分割構造に対して第1の分割領域と第2の分割領域とを略半分以上の領域について、点対称に分布させるようにした分割構造を示す。
【0114】
なお、製造上は、第1の分割領域と第2の分割領域との境界が少ない方が好ましい。また、光学性能上においても、第1の分割領域と第2の分割領域との境界が少ない方が好ましい。このため、例えば図20の分割構造がより好ましい。
【0115】
第1の領域分割波長選択性波長板51の分割構造を例えば図19ないし図22に示したような、少なくとも半分以上の領域について点対称な分割構造とすることにより、上記第2ないし第4の実施の形態に係る光学システムのような構成を取らずに、不要光の発生を低減することが可能となる。
【0116】
その他の構成、作用および効果は、上記第1の実施の形態に係る光学システムと略同様であってもよい。
【0117】
<6.その他の実施の形態>
本開示による技術は、上記各実施の形態の説明に限定されず種々の変形実施が可能である。
【0118】
例えば、本技術は以下のような構成を取ることもできる。
以下の構成の本技術によれば、第1の光学系において、第1の瞳位置に、それぞれが互いに異なる偏光特性を有する第1の分割領域および第2の分割領域を含む第1の偏光回転素子を配置し、さらに、第1の光学系内において、偏光変換素子から射出された光に含まれる所定の偏光方向以外の偏光方向の光を低減する偏光子を配置するようにしたので、コントラストの向上を図ることが可能となる。
【0119】
(1)
複数の色光を含む光の偏光方向を所定の偏光方向に揃える偏光変換素子を有し、前記複数の色光を含む照明光を生成する第1の光学系と、
前記第1の光学系内の第1の瞳位置に配置され、第1の分割領域および第2の分割領域を含み、前記第1の分割領域および前記第2の分割領域が前記偏光変換素子から射出された前記複数の色光のうちの第1の色光に対して互いに異なる偏光特性を有する第1の偏光回転素子と、
前記第1の光学系内において、前記偏光変換素子と前記第1の偏光回転素子との間に配置され、前記偏光変換素子から射出された光に含まれる前記所定の偏光方向以外の偏光方向の光を低減する偏光子と、
それぞれが、前記第1の光学系によって生成された前記照明光に含まれる前記複数の色光のうち少なくとも前記第1の色光によって照明される複数のライトバルブと
を備える
光学システム。
(2)
前記第1の偏光回転素子と前記複数のライトバルブとの間の光路上に配置され、前記複数のライトバルブのうちの少なくとも1つのライトバルブから前記偏光子へと戻る前記第1の色光の戻り光を低減する波長選択性反射素子、をさらに備える
上記(1)に記載の光学システム。
(3)
前記波長選択性反射素子は、前記第1の偏光回転素子と前記複数のライトバルブとの間の光路の光軸に対し傾斜配置されている
上記(2)に記載の光学システム。
(4)
前記波長選択性反射素子は、前記第1の偏光回転素子における前記第1の分割領域および前記第2の分割領域のうち少なくとも一方の分割領域に対応する領域に配置されている
上記(2)または(3)のいずれか1つに記載の光学システム。
(5)
前記波長選択性反射素子は、前記第1の分割領域および前記第2の分割領域のうち前記一方の分割領域に対応する領域において、前記一方の分割領域からの前記複数の色光を全て透過し、前記複数のライトバルブのうちの少なくとも1つのライトバルブから前記偏光子へと戻る前記第1の色光の戻り光を反射する
上記(4)に記載の光学システム。
(6)
前記波長選択性反射素子は、前記第1の分割領域および前記第2の分割領域のうち他方の分割領域に対応する領域において、前記他方の分割領域からの前記複数の色光を全て透過する
上記(5)に記載の光学システム。
(7)
前記波長選択性反射素子は、前記第1の分割領域および前記第2の分割領域のうち前記一方の分割領域に対応する領域において、前記一方の分割領域からの前記複数の色光を全て反射し、前記複数のライトバルブのうちの少なくとも1つのライトバルブから前記偏光子へと戻る前記第1の色光の戻り光を透過する
上記(4)に記載の光学システム。
(8)
前記波長選択性反射素子は、前記第1の分割領域および前記第2の分割領域のうち他方の分割領域に対応する領域において、前記他方の分割領域からの前記複数の色光を全て反射する
上記(7)に記載の光学システム。
(9)
前記偏光子は、前記複数のライトバルブのうちの少なくとも1つのライトバルブから前記第1の偏光回転素子を介して戻る前記第1の色光の戻り光を吸収する吸収型偏光子である
上記(1)に記載の光学システム。
(10)
前記吸収型偏光子を冷却する冷却部材、をさらに備える
上記(9)に記載の光学システム。
(11)
前記第1の偏光回転素子は、少なくとも一部の領域において、前記第1の分割領域と前記第2の分割領域とが点対称に分布する分割構造を有する
上記(1)に記載の光学システム。
(12)
前記第1の偏光回転素子は、少なくとも半分以上の領域において、前記第1の分割領域と前記第2の分割領域とが点対称に分布する分割構造を有する
上記(11)に記載の光学システム。
(13)
前記複数のライトバルブによって変調された後の前記複数の色光が入射する第2の光学系と、
前記第2の光学系内の前記第1の瞳位置に共役な第2の瞳位置に配置され、第3の分割領域および第4の分割領域を含み、前記第3の分割領域および前記第4の分割領域が前記複数のライトバルブから射出された前記複数の色光のうちの第1の色光に対して互いに異なる偏光特性を有する第2の偏光回転素子と
をさらに備える
上記(1)ないし(12)のいずれか1つに記載の光学システム。
(14)
前記第1の光学系における前記第1の分割領域および前記第2の分割領域のそれぞれと、前記第2の光学系における前記第3の分割領域および前記第4の分割領域のそれぞれとが、互いに共役である
上記(13)に記載の光学システム。
(15)
前記第2の光学系は、前記複数のライトバルブによって生成された画像を投影面に投影する投影光学系である
上記(13)または(14)に記載の光学システム。
(16)
前記複数のライトバルブは、第1のライトバルブと第2のライトバルブとを含み、
前記複数の色光は第1ないし第3の色光を含み、
前記第1の色光が前記第1のライトバルブと第2のライトバルブとに入射し、
前記第2の色光が前記第1のライトバルブおよび第2のライトバルブのうちの一方に入射し、
前記第3の色光が前記第1のライトバルブおよび第2のライトバルブのうちの他方に入射する
上記(1)ないし(15)のいずれか1つに記載の光学システム。
【0120】
本出願は、日本国特許庁において2020年1月22日に出願された日本特許出願番号第2020-8634号を基礎として優先権を主張するものであり、この出願のすべての内容を参照によって本出願に援用する。
【0121】
当業者であれば、設計上の要件や他の要因に応じて、種々の修正、コンビネーション、サブコンビネーション、および変更を想到し得るが、それらは添付の請求の範囲やその均等物の範囲に含まれるものであることが理解される。
図1
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