(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】通信装置、通信方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/185 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
H04B7/185
(21)【出願番号】P 2022542557
(86)(22)【出願日】2020-08-13
(86)【国際出願番号】 JP2020030812
(87)【国際公開番号】W WO2022034677
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】飯吉 建彰
【審査官】前田 典之
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-126257(JP,A)
【文献】特開平08-204626(JP,A)
【文献】国際公開第2019/155872(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0272150(US,A1)
【文献】三浦龍 他,小型無人航空機におけるワイヤレス通信技術の研究開発~空の IoT 実現に向けて~,情報通信研究機構研究報告,Vol.63,No.2,日本,情報通信研究機構,2017年10月31日,pp.53-63,[検索日2020.10.20], インターネット:<URL:https://www.nict.go.jp/publication/shuppan/kihou-journal/houkoku-vol63-2/K2017W-02-09.pdf>
【文献】三浦龍 他,無人航空機を活用した無線中継システムと地上ネットワークとの連携及び共用技術の研究開発,電波資源拡大のための研究開発 第9回成果発表会(平成 28 年),日本,総務省,2016年12月02日,pp.3-12,[検索日2020.10.20],インターネット:<URL:https://www.tele.soumu.go.jp/resource/j/fees/purpose/pdf/H27_RD01.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/185
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信を行う通信装置であって、
当該通信装置を搭載し空中に停留する第1の飛行体の周囲を飛行する飛行物体に搭載された通信機から情報を受信するための処理を行う受信処理手段と、
前記通信機から受信された前記情報に、前記情報を識別するためのタグ情報であって、前記情報を構成する複数の部分
がそれぞれ異なる経路で送信された場合に、前記複数の部分を地上局で結合できるように、前記複数の部分の前記情報の順序を示すタグ情報を付加する付加手段と、
前記地上局との通信状態を分析する分析手段と、
前記通信状態の分析結果に応じた伝送方法で、前記情報を前記地上局に伝送するための処理を行う伝送処理手段と、
を有する通信装置。
【請求項2】
前記伝送処理手段は、前記通信状態が良好でないと分析された場合に、当該通信装置によって前記地上局に送信される情報量が前記情報の量よりも少なくなるようにして、前記情報を前記地上局に伝送するための処理を行う、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記伝送処理手段は、前記通信状態が良好でないと分析された場合に、前記第1の飛行体とは異なる少なくとも1つの第2の飛行体に搭載された他の通信装置に前記情報を分散させて前記地上局に前記情報を伝送するための処理を行い、又は、前記情報の一部のみを前記地上局に伝送するための処理を行う、
請求項2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記伝送処理手段は、前記第1の飛行体の周囲に通信可能な前記第2の飛行体が存在する場合に、前記情報の少なくとも一部を前記他の通信装置を介して前記地上局に伝送するための処理を行うことで、前記情報を前記他の通信装置に分散させて前記地上局に伝送するための処理を行う、
請求項3に記載の通信装置。
【請求項5】
前記伝送処理手段は、前記第1の飛行体の周囲に通信可能な前記第2の飛行体が存在しない場合に、前記情報のうちの第1の部分のみを前記地上局に伝送するための処理を行う、
請求項3又は4に記載の通信装置。
【請求項6】
前記情報のうちの前記地上局に伝送されない第2の部分は、予め定められている、
請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
前記付加手段は、受信された前記情報に、受信された時刻を示す時刻タグを付加する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項8】
無線通信を行う通信装置を搭載し空中に停留する第1の飛行体の周囲を飛行する飛行物体に搭載された通信機から情報を受信するための処理を行い、
前記通信機から受信された前記情報に、前記情報を識別するためのタグ情報であって、前記情報を構成する複数の部分
がそれぞれ異なる経路で送信された場合に、前記複数の部分を地上局で結合できるように、前記複数の部分の前記情報の順序を示すタグ情報を付加し、
前記地上局との通信状態を分析し、
前記通信状態の分析結果に応じて、前記情報を前記地上局に伝送するための処理を行う、
通信方法。
【請求項9】
無線通信を行う通信装置を搭載し空中に停留する第1の飛行体の周囲を飛行する飛行物体に搭載された通信機から情報を受信するための処理を行うステップと、
前記通信機から受信された前記情報に、前記情報を識別するためのタグ情報であって、前記情報を構成する複数の部分
がそれぞれ異なる経路で送信された場合に、前記複数の部分を地上局で結合できるように、前記複数の部分の前記情報の順序を示すタグ情報を付加するステップと、
前記地上局との通信状態を分析するステップと、
前記通信状態の分析結果に応じて、前記情報を前記地上局に伝送するための処理を行うステップと、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、通信方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、成層圏に飛行し、定点に停留する多数の飛行船(成層圏プラットフォーム)と地上局との間で情報を送受信し、地上の所定地域に対して無線サービスを行う無線システムを開示する。また、特許文献2は、飛行体に搭載され、地上に通信エリアを形成して通信エリア内のユーザ端末と通信接続を確立してユーザ端末に無線通信サービスを提供する基地局装置を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-207700号公報
【文献】特開2020-065197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
成層圏プラットフォーム等の空中に停留する飛行体が、周囲の飛行物体から受信した情報を地上局に伝送することがある。このとき、上述した特許文献にかかる技術では、飛行体と地上局との間の通信状態が良好でない場合に、周囲の飛行物体から受信した情報を地上局に適切に伝送することができないおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、このような課題を解決するためになされたものであり、地上局との通信状態が良好でない場合であっても地上局に適切に情報を伝送することが可能な通信装置、通信システム、通信方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示にかかる通信装置は、無線通信を行う通信装置であって、当該通信装置を搭載し空中に停留する第1の飛行体の周囲を飛行する飛行物体に搭載された通信機から情報を受信するための処理を行う受信処理手段と、地上局との通信状態を分析する分析手段と、前記通信状態の分析結果に応じた伝送方法で、前記情報を前記地上局に伝送するための処理を行う伝送処理手段と、を有する。
【0007】
また、本開示にかかる通信システムは、空中に停留する第1の飛行体に搭載され、無線通信を行う通信装置と、前記第1の飛行体の周囲を飛行する飛行物体に搭載された通信機と、前記通信装置と通信を行う地上局と、を有し、前記通信装置は、前記通信機から情報を受信するための処理を行う受信処理手段と、前記地上局との通信状態を分析する分析手段と、前記通信状態の分析結果に応じて、前記情報を前記地上局に伝送するための処理を行う伝送処理手段と、を有する。
【0008】
また、本開示にかかる通信方法は、無線通信を行う通信装置を搭載し空中に停留する第1の飛行体の周囲を飛行する飛行物体に搭載された通信機から情報を受信するための処理を行い、地上局との通信状態を分析し、前記通信状態の分析結果に応じて、前記情報を前記地上局に伝送するための処理を行う。
【0009】
また、本開示にかかるプログラムは、無線通信を行う通信装置を搭載し空中に停留する第1の飛行体の周囲を飛行する飛行物体に搭載された通信機から情報を受信するための処理を行うステップと、地上局との通信状態を分析するステップと、前記通信状態の分析結果に応じて、前記情報を前記地上局に伝送するための処理を行うステップと、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、地上局との通信状態が良好でない場合であっても地上局に適切に情報を伝送することが可能な通信装置、通信システム、通信方法及びプログラムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の実施の形態にかかる通信装置の概要を示す図である。
【
図2】実施の形態1にかかる通信システムを示す図である。
【
図3】実施の形態1にかかる通信装置の構成を示す図である。
【
図4】実施の形態1にかかる通信装置で行われる通信方法を示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態2にかかる通信装置の構成を示す図である。
【
図6】実施の形態2にかかる通信装置で行われる通信方法を示すフローチャートである。
【
図7】実施の形態2にかかる情報の変化を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(本開示にかかる実施の形態の概要)
本開示の実施形態の説明に先立って、本開示にかかる実施の形態の概要について説明する。
図1は、本開示の実施の形態にかかる通信装置1の概要を示す図である。通信装置1は、例えば、コンピュータで構成されてもよい。
【0013】
通信装置1は、無線通信を行う。通信装置1は、飛行体10(第1の飛行体)に搭載されている。飛行体10は、例えば成層圏プラットフォームとして機能する。飛行体10は、成層圏等の空中に停留する。飛行体10は、例えば飛行船である。通信装置1は、飛行体10の周囲を飛行する飛行物体と無線通信を行う。また、通信装置1は、地上局と無線通信を行う。また、通信装置1は、飛行体10の周囲の通信可能な他の飛行体(第2の飛行体)と光通信を行う。この、他の飛行体(第2の飛行体)も、成層圏プラットフォームとして機能する。
【0014】
通信装置1は、受信処理部2と、分析部4と、伝送処理部6とを有する。受信処理部2は、受信処理手段(第1の通信処理手段)としての機能を有する。分析部4は、分析手段としての機能を有する。伝送処理部6は、伝送処理手段(第2の通信処理手段)としての機能を有する。
【0015】
受信処理部2は、飛行体10の周囲を飛行する飛行物体に搭載された通信機から情報を受信するための処理を行う。つまり、受信処理部2は、飛行体10の近傍を飛翔する飛行物体に搭載された通信機と通信を行うための処理を行う。詳しくは後述する。
【0016】
伝送処理部6は、飛行物体に搭載された通信機から受信された情報を地上局に伝送するための処理を行う。つまり、伝送処理部6は、地上局と通信を行うための処理を行う。詳しくは後述する。
【0017】
分析部4は、地上局との通信状態を分析する。具体的には、分析部4は、地上局との通信状態が良好であるか否かを分析する。さらに具体的には、分析部4は、地上局との通信において輻輳が発生しているか否かを分析する。そして、伝送処理部6は、分析部4による通信状態の分析結果に応じた伝送方法で、情報を地上局に伝送するための処理を行う。具体的には、伝送処理部6は、通信状態が良好でないと分析された場合に、通信装置1によって地上局に送信される情報量(例えばビット数)が、受信された情報の量(例えばビット数)よりも少なくなるようにして、受信された情報を地上局に伝送するための処理を行う。
【0018】
本実施の形態にかかる通信装置1は、上述のように構成されているので、地上局との通信状態が良好でない場合に、通信状態が良好でない場合に対応した伝送方法で、飛行物体からの情報を地上局に伝送するようにすることができる。したがって、本実施の形態にかかる通信装置1は、地上局との通信状態が良好でない場合であっても地上局と適切に通信を行うことが可能となる。つまり、本実施の形態にかかる通信装置1は、地上局との通信状態が良好でない場合であっても地上局に適切に情報を伝送することが可能となる。
【0019】
なお、通信装置1と、飛行物体に搭載された通信機と、地上局とを有する通信システムを用いても、地上局との通信状態が良好でない場合であっても地上局に適切に情報を伝送することが可能となる。また、通信装置1で実行される通信方法及び通信方法を実現するプログラムを用いても、地上局との通信状態が良好でない場合であっても地上局に適切に情報を伝送することが可能となる。
【0020】
(実施の形態1)
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0021】
図2は、実施の形態1にかかる通信システム20を示す図である。通信システム20は、複数の通信装置100と、1つ以上の通信機40と、1つ以上の地上局50を有する。通信装置100は、上述した飛行体10に搭載されている。飛行体10は、例えば成層圏等の空中に配置されている。飛行体10は、上述したように、成層圏プラットフォームとして機能する。また、飛行体10は、他のノード間の通信を中継する中継機として機能する。例えば、飛行体10は、周囲を飛行する飛行物体から受信された情報を地上局50に中継(転送)する。なお、ノードとは、互いに通信を行う対象のことである。ノードは、飛行体、飛行物体、通信装置、通信機及び地上局を含む。また、飛行体10は、空中においてほとんど移動せず、空中に停留している。
【0022】
通信機40は、飛行物体30に搭載されている。飛行物体30は、空中を飛翔する物体である。飛行物体30は、例えば、航空機、戦闘機、ミサイル、ロケット、ドローン等である。ここで、飛行物体30は飛翔中であるとする。地上局50は、地上に設置されている。地上局50は、周囲の通信装置100及び通信機40と無線通信を行う。通信機40及び地上局50は、後述するような通信装置100のハードウェア構成と同様のハードウェア構成を有してもよい。
【0023】
図2の例では、通信装置100A(通信装置A)は、飛行体10A(飛行体A)に搭載されている。通信装置100B(通信装置B)は、飛行体10B(飛行体B)に搭載されている。通信装置100C(通信装置C)は、飛行体10C(飛行体C)に搭載されている。また、通信機40A(通信機A)は、飛行物体30A(飛行物体A)に搭載されている。通信機40B(通信機B)は、飛行物体30B(飛行物体B)に搭載されている。
【0024】
通信装置100は、周囲の通信機40及び地上局50と無線通信を行う。また、通信装置100は、この通信装置100を搭載した飛行体10(第1の飛行体;以下、「対応する飛行体10」と称する)の周囲の他の飛行体10(第2の飛行体)に搭載された通信装置100(以下、「他の通信装置100」と称する)と無線通信を行う。また、通信装置100は、地上の任意のノード(例えば無線端末等)と無線通信を行ってもよい。
【0025】
通信機40は、周囲の通信装置100と無線通信を行う。また、通信機40は、この通信機40を搭載した飛行物体30(以下、「対応する飛行物体30」と称する)の周囲の他の飛行物体30に搭載された通信機40(以下、「他の通信機40」)と無線通信を行ってもよい。
【0026】
図2の例において、飛行体10Aと、飛行体10B及び飛行体10Cとの間の距離は、それぞれ、互いに無線通信が可能な程度な距離であるとする。したがって、通信装置100Aは、通信装置100B及び通信装置100Cと、相互に無線通信を行っている。また、飛行物体30Aと、飛行体10A及び飛行体10Bとの間の距離は、それぞれ、互いに無線通信が可能な程度な距離であるとする。したがって、通信機40Aは、通信装置100A及び通信装置100Bと、相互に無線通信を行っている。また、飛行物体30Bと、飛行体10Bとの間の距離は、互いに無線通信が可能な程度な距離であるとする。したがって、通信機40Bは、通信装置100Bと、相互に無線通信を行っている。また、地上局50は、通信装置100A~100Cと、相互に無線通信を行い得る。ここで、飛行物体30は、飛翔中であるので、飛行体10(又は他の飛行物体30)との間の距離は、変化する。したがって、通信機40が通信可能な相手は、都度、変化する。
【0027】
図3は、実施の形態1にかかる通信装置100の構成を示す図である。通信装置100は、主要なハードウェア構成として、制御部102と、記憶部104と、通信部106と、インタフェース部108(IF;Interface)とを有する。制御部102、記憶部104、通信部106及びインタフェース部108は、データバスなどを介して相互に接続されている。
【0028】
制御部102は、例えばCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサである。制御部102は、制御処理及び演算処理等を行う演算装置としての機能を有する。記憶部104は、例えばメモリ又はハードディスク等の記憶デバイスである。記憶部104は、例えばROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等である。記憶部104は、制御部102によって実行される制御プログラム及び演算プログラム等を記憶するための機能を有する。また、記憶部104は、処理データ等を一時的に記憶するための機能を有する。記憶部104は、データベースを含み得る。
【0029】
通信部106は、他の通信装置100、通信機40及び地上局50と通信を行うために必要な処理を行う。通信部106は、通信ポート、ルータ、ファイアウォール等を含み得る。インタフェース部108は、例えばユーザインタフェース(UI)である。インタフェース部108は、キーボード、タッチパネル又はマウス等の入力装置と、ディスプレイ又はスピーカ等の出力装置とを有する。インタフェース部108は、システム管理者によるデータの入力の操作を受け付け、システム管理者に対して情報を出力する。また、通信部106は、フェーズドアレイアンテナ等の、指向性を制御できるアンテナを有してもよい。
【0030】
実施の形態1にかかる通信装置100は、構成要素として、第1通信処理部112と、第2通信処理部114と、第3通信処理部116と、飛行物体監視部118とを有する。また、実施の形態1にかかる通信装置100は、受信処理部120と、通信状態分析部130と、伝送処理部140とを有する。伝送処理部140は、分散処理部142と、間引き処理部144とを有する。
【0031】
第1通信処理部112は、第1の通信処理手段(飛行物体通信手段)としての機能を有する。第2通信処理部114は、第2の通信処理手段(地上局通信手段)としての機能を有する。第3通信処理部116は、第3の通信処理手段(飛行体通信手段)としての機能を有する。飛行物体監視部118は、飛行物体監視手段としての機能を有する。受信処理部120は、
図1の受信処理部2に対応する。受信処理部120は、受信処理手段としての機能を有する。
【0032】
通信状態分析部130は、
図1の分析部4に対応する。通信状態分析部130は、通信状態分析手段(分析手段)としての機能を有する。伝送処理部140は、
図1の伝送処理部6に対応する。伝送処理部140は、伝送処理手段としての機能を有する。分散処理部142は、分散処理手段としての機能を有する。間引き処理部144は、間引き処理手段としての機能を有する。
【0033】
なお、上述した各構成要素は、例えば、制御部102の制御によって、プログラムを実行させることによって実現できる。より具体的には、各構成要素は、記憶部104に格納されたプログラムを、制御部102が実行することによって実現され得る。また、必要なプログラムを任意の不揮発性記録媒体に記録しておき、必要に応じてインストールすることで、各構成要素を実現するようにしてもよい。また、各構成要素は、プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組み合わせ等により実現してもよい。また、各構成要素は、例えばFPGA(field-programmable gate array)又はマイコン等の、ユーザがプログラミング可能な集積回路を用いて実現してもよい。この場合、この集積回路を用いて、上記の各構成要素から構成されるプログラムを実現してもよい。このことは、後述する他の実施の形態においても同様である。
【0034】
飛行物体監視部118は、通信部106を制御して、飛行物体30を監視するための処理を行う。具体的には、飛行物体監視部118は、マルチビームに対応可能なフェーズドアレイアンテナの指向性を制御して、通信装置100を搭載した飛行体10の周囲の複数の飛行物体30を同時に監視する。そして、飛行物体監視部118は、飛行物体30に向けてビームが放射されるように、制御を行う。つまり、飛行物体監視部118は、飛行物体30の位置を特定し、ビームを放射する方向を決定する。なお、飛行物体監視部118によってビームを向ける方向は、例えば以下の方法によって決定できる。例えば、飛行物体30から受信されたデータに含まれる位置情報(緯度、経度、高度)から、幾何学的に計算を行うことによって、飛行物体30の位置を特定して、その特定された方向にビームを放射するようにしてもよい。あるいは、モノパルス方式により電波の強度に応じて飛行物体30を自動追尾するようにしてもよい。あるいは、地上(地上局50)からの指令によって、手動でビームを放射する方向を指定してもよい。このような方法を用いることによって、より広い空域において飛行物体30を把握することができる。
【0035】
第1通信処理部112は、通信部106を制御して、飛行物体30に搭載された通信機40と通信を行うために必要な処理を行う。具体的には、第1通信処理部112は、飛行物体監視部118の制御によって特定された飛行物体30の位置に対して信号を送信するように通信部106を制御することで、通信機40に信号を送信する。例えば、第1通信処理部112は、位置が特定された飛行物体30Aに向かってビームフォーミングを行うように処理を行うことによって、通信機40Aに信号を送信する。また、第1通信処理部112は、通信装置100と通信機40との間で通信回線を確立するための処理を行う。また、第1通信処理部112は、通信機40から情報を受信するための処理を行う。このとき、飛行物体30は高速で飛行していることが多いので、ドップラー効果の影響を補正した通信を行う。具体的には、第1通信処理部112は、飛行物体30の速度を取得して、その速度に応じて、信号の周波数を補正する。また、第1通信処理部112は、通信機40と送受信する信号の増幅を行う。
【0036】
第2通信処理部114は、地上局50と通信を行うための処理を行う。具体的には、第2通信処理部114は、地上局50の位置を特定し、特定された位置に、信号を送信するように通信部106を制御する。なお、地上局50の位置情報は、予め通信装置100に格納されていてもよい。そして、第2通信処理部114は、通信装置100と地上局50との間で通信回線を確立するための処理を行う。これにより、第2通信処理部114は、地上局50と情報を送受信することができる。また、第2通信処理部114は、地上局50と送受信する信号の増幅を行う。
【0037】
第3通信処理部116は、対応する飛行体10の周囲の、対応する飛行体10とは異なる他の飛行体10に搭載された他の通信装置100と通信を行うための処理を行う。具体的には、第3通信処理部116は、光通信によって、他の通信装置100と通信を行う。なお、飛行体10は成層圏に配置されているので、飛行体10間に遮るものはほとんどない。したがって、飛行体10間で適切に光通信を行うことができる。また、第3通信処理部116は、他の飛行体10の位置を特定し、特定された位置に、信号を送信するように通信部106を制御する。なお、上述したように、飛行体10は、空中に停留しており、ほとんど移動しない。したがって、他の飛行体10の位置情報(及び対応する飛行体10の位置情報)は、予め通信装置100に格納されていてもよい。そして、第3通信処理部116は、通信装置100と他の通信装置100との間で通信回線を確立するための処理を行う。これにより、第3通信処理部116は、他の通信装置100と情報を送受信することができる。
【0038】
図4は、実施の形態1にかかる通信装置100で行われる通信方法を示すフローチャートである。以下、
図4を用いて、通信装置100の構成要素の説明を行う。
図4は、通信装置100が、対応する飛行体10の周囲を飛行する飛行物体30から情報を受信して、受信された情報を地上局50に中継する処理について、示している。以下の説明では、適宜、
図2に示した通信装置100Aが、対応する飛行体10Aの周囲を飛行する飛行物体30Aから情報を受信して、地上局50に中継する処理の例(「
図2の例」と称する)について説明する。
【0039】
受信処理部120は、飛行物体30から情報を受信する(ステップS102)。具体的には、受信処理部120は、対応する飛行体10の周囲を飛行する飛行物体30から情報を受信するための処理を行う。さらに具体的には、受信処理部120は、第1通信処理部112を制御して、飛行物体30に搭載された通信機40から、情報を受信するための処理を行う。例えば、通信装置100Aの受信処理部120は、第1通信処理部112を制御して、飛行物体30Aに搭載された通信機40Aから、情報を受信するための処理を行う。なお、受信処理部120は、飛行物体30から情報を受信する際に、情報を一度に受信しなくてもよい。受信処理部120は、情報を構成する複数のフレーム(パケット)ごとに分割して、情報を受信してもよい。
【0040】
通信状態分析部130は、地上局50との通信状態を分析する(ステップS104)。具体的には、通信状態分析部130は、地上局50との間の通信状態が良好であるか否かを分析する。さらに具体的には、通信状態分析部130は、地上局50との通信において輻輳が発生しているか否かを分析してもよい。例えば、通信状態分析部130は、地上局50との通信においてパケットロス又は遅延の発生を検出することによって、輻輳が発生しているか否かを判定してもよい。また、通信状態分析部130は、パケットロス又は遅延といった輻輳を示すパラメータから、輻輳の度合いを分析してもよい。そして、通信状態分析部130は、輻輳の度合いが予め定められた程度以上である場合に、輻輳が発生していると判定してもよい。
【0041】
そして、通信状態分析部130は、地上局50との通信において輻輳が発生していない場合に、通信状態が良好であると分析してもよい。一方、通信状態分析部130は、地上局50との通信において輻輳が発生している場合に、通信状態が良好でないと分析してもよい。なお、通信状態が良好であるか否かの判定は、輻輳の発生によるものでなくてもよい。
【0042】
伝送処理部140は、通信状態の分析結果に応じた伝送方法で、飛行物体30からの情報(伝送情報)を地上局50に伝送するための処理を行う。具体的には、伝送処理部140は、通信状態分析部130によって地上局50との通信状態は良好であると分析されたか否かを判定する(ステップS106)。通信状態が良好であると分析された場合(S106のYES)、伝送処理部140は、地上局50に対して、飛行物体30から受信された情報(伝送情報)を送信する(ステップS108)。このとき、伝送処理部140は、後述するS112及びS114の処理を行うことなく、伝送情報を地上局50に伝送する。つまり、伝送処理部140は、他のノード(飛行体10)を介さないで、直接、地上局50に、伝送情報を送信(転送)する。また、伝送処理部140は、飛行物体30から受信された伝送情報を間引くことなく、完全な情報(伝送情報)を、地上局50に伝送する。
【0043】
なお、伝送処理部140は、伝送情報にヘッダ情報を追加してもよい。ヘッダ情報は、例えば、伝送情報の識別情報と、送信元の識別情報(送信元ID)と、宛先の識別情報(宛先ID)と、中継ノードの識別情報(中継ID)とを含んでもよい。伝送情報の識別情報は、伝送処理部140において任意に設定してもよい。また、送信元IDは、伝送情報を生成した通信機40を搭載した飛行物体30の識別情報を示す。例えば、送信元IDは、伝送情報を生成した通信機40Aを搭載した飛行物体30Aの識別情報を示す。また、宛先IDは、伝送情報を伝送する宛先のノードの識別情報を示す。例えば、宛先IDは、地上局50の識別情報を示す。また、中継IDは、中継処理を行った通信装置100を搭載した飛行体10の識別情報を示す。
図2の例では、中継IDは、通信装置100Aを搭載した飛行体10Aの識別情報を示す。
【0044】
一方、通信状態が良好でないと分析された場合(S106のNO)、伝送処理部140は、通信装置100によって地上局50に直接送信される情報量(ビット数など)が少なくなるようにするための処理を行う。具体的には、伝送処理部140は、通信装置100によって地上局50に直接送信される情報量(ビット数など)が、伝送情報の量よりも少なくなるようにして、伝送情報を地上局50に伝送するための処理を行う。さらに具体的には、伝送処理部140は、対応する飛行体10の周囲に飛行体10があるか否かを判定する(ステップS110)。具体的には、伝送処理部140は、対応する飛行体10の周囲に通信可能な他の飛行体10(通信装置100)が存在するか否かを判定する。
【0045】
対応する飛行体10の周囲に通信可能な他の飛行体10(通信装置100)が存在すると判定された場合(S110のYES)、伝送処理部140は、伝送情報を分散させて伝送すると判定する。そして、伝送処理部140の分散処理部142は、少なくとも1つの他の飛行体10に搭載された他の通信装置100に伝送情報を分散させて地上局50に伝送するための処理を行う(ステップS112)。例えば、
図2の例において、通信装置100Aを搭載する飛行体10Aの周囲に通信可能な飛行体10B(通信装置100B)が存在する場合、飛行体10Aの分散処理部142は、通信装置100Bに伝送情報を分散させるための処理を行う。
【0046】
具体的には、分散処理部142は、伝送情報の少なくとも一部を、他の飛行体10の他の通信装置100を介して地上局50に伝送するための処理を行う。なお、「伝送情報の一部」(伝送情報部分)とは、例えば、伝送情報を構成する複数のフレーム(パケット)のうちの1つ以上で構成されている。例えば、飛行体10Aの分散処理部142は、伝送情報の少なくとも一部を、飛行体10Bの通信装置100Bを介して地上局50に伝送するための処理を行う。この場合、飛行体10Aの分散処理部142は、伝送情報の少なくとも一部を通信装置100Bに送信し、通信装置100Bに対して、受信された伝送情報の少なくとも一部(伝送情報又は伝送情報部分)を地上局50に中継(転送)させるための、処理を行う。これにより、通信装置100Bにおいても、
図4に示した処理が行われる。このような構成により、通信装置100は、地上局50との通信状態が良好でない場合であっても、地上局50に伝送情報を適切に伝送することができる。
【0047】
ここで、分散処理部142は、S108の説明で上述したように、伝送情報にヘッダ情報を追加してもよい。この場合、伝送情報を受信した通信装置100Bは、ヘッダ情報の宛先IDが地上局50の識別情報を示しているので、伝送情報を地上局50に中継(転送)することができる。なお、中継IDには、各通信装置100によって中継処理が行われるたびに、対応する飛行体10の識別情報が追加されていく。例えば、通信装置100Aで中継が行われた場合、中継IDは、通信装置100Aを搭載した飛行体10Aの識別情報を含む。そして、通信装置100Bに伝送情報が送信され、通信装置100Bで中継が行われた場合、中継IDは、さらに、通信装置100Bを搭載した飛行体10Bの識別情報を含む。なお、中継IDに対応付けて、その中継IDに関する飛行体10で中継が行われた時刻が付加されてもよい。
【0048】
また、分散処理部142は、例えば、地上局50との通信の輻輳の度合いに応じて、伝送情報の全てを他の通信装置100に送信するか、又は伝送情報の一部(伝送情報部分)のみを他の通信装置100に送信するかを決定してもよい。つまり、分散処理部142は、輻輳の度合いが予め定められた程度以上である場合に、伝送情報の全てを他の通信装置100に送信すると決定してもよい。この場合、通信装置100が地上局50に直接送信する情報量はゼロである。したがって、通信装置100が地上局50に直接送信する情報量は、伝送情報の量よりも少なくなる。一方、分散処理部142は、輻輳が発生しているものの輻輳の度合いが予め定められた程度未満である場合に、伝送情報の一部(伝送情報部分)のみを他の通信装置100に送信すると決定してもよい。この場合、通信装置100によって直接送信される情報量は、伝送情報の情報量から他の通信装置100に送信された伝送情報部分の情報量を減算した量に対応するので、伝送情報の量(情報量)よりも少ない。したがって、通信装置100が地上局50に直接送信する情報量は、伝送情報の量よりも少なくなる。
【0049】
また、この場合、例えば伝送情報が第1の伝送情報部分と第2の伝送情報部分とで構成されるとすると、分散処理部142は、第1の伝送情報部分を他の通信装置100に送信し、第2の伝送情報部分を地上局50に送信するように処理を行ってもよい。この場合、第1の伝送情報部分は、他の通信装置100を介して地上局50に伝送され、第2の伝送情報部分は、地上局50に直接伝送される。また、この場合、分散処理部142は、地上局50で第1の伝送情報部分と第2の伝送情報部分とを結合できるように、第1の伝送情報部分及び第2の伝送情報部分にヘッダ情報(タグ情報)を追加してもよい。このヘッダ情報は、元の伝送情報の識別情報と、各伝送情報部分の伝送情報における順序を示す情報とを含んでもよい。
【0050】
また、
図2の例において、飛行体10Aの周囲に通信可能な2つの飛行体10B(通信装置100B)及び飛行体10C(通信装置100C)が存在するとする。この場合、飛行体10A(通信装置100A)の分散処理部142は、通信装置100B及び通信装置100Cに伝送情報を分散させるための処理を行ってもよい。また、このとき、例えば伝送情報が第1の伝送情報部分と第2の伝送情報部分とで構成されるとする。この場合、通信装置100Aの分散処理部142は、第1の伝送情報部分を通信装置100Bに送信し、第2の伝送情報部分を通信装置100Cに送信するとしてもよい。この場合、第1の伝送情報部分は、通信装置100Bを介して、地上局50に伝送される。同様に、第2の伝送情報部分は、通信装置100Cを介して、地上局50に伝送される。また、この場合、分散処理部142は、地上局50で第1の伝送情報部分と第2の伝送情報部分とを結合できるように、上述したように、第1の伝送情報部分及び第2の伝送情報部分にヘッダ情報(タグ情報)を追加してもよい。このヘッダ情報は、元の伝送情報の識別情報と、各伝送情報部分の伝送情報における順序を示す情報とを含んでもよい。
【0051】
一方、対応する飛行体10の周囲に通信可能な他の飛行体10(通信機40)が存在しないと判定された場合(S110のNO)、伝送処理部140は、伝送情報を間引いて伝送すると判定する。そして、伝送処理部140の間引き処理部144は、伝送情報を間引いて地上局50に伝送するための処理を行う(ステップS114)。つまり、伝送処理部140の間引き処理部144は、伝送情報の一部(第1の部分;第1の伝送情報部分)のみを地上局50に伝送するための処理を行う。例えば、
図2の例において、通信装置100Aを搭載する飛行体10Aの周囲に通信可能な飛行体10が存在しない場合、飛行体10Aの分散処理部142は、伝送情報を間引いて地上局50に送信するための処理を行う。
【0052】
具体的には、間引き処理部144は、伝送情報のうち、地上局50に伝送される第1の伝送情報部分と、地上局50に伝送されない第2の伝送情報部分(第2の部分)とを決定する。なお、S114の処理にかかる第1の伝送情報部分及び第2の伝送情報部分は、上述したS112の処理にかかる第1の伝送情報部分及び第2の伝送情報部分とは異なり得ることに留意されたい。そして、間引き処理部144は、第1の伝送情報部分を地上局50に伝送し、第2の伝送情報部分を地上局50に伝送しないようにするための処理を行う。これにより、通信装置100が地上局50に直接送信する情報量は、伝送情報の量よりも少なくなる。このような構成により、通信装置100は、地上局50との通信状態が良好でなく、周囲に飛行体10も存在しない場合であっても、地上局50に情報を適切に伝送することが可能となる。
【0053】
ここで、第2の伝送情報部分は、予め定められていてもよい。これにより、間引き処理部144が、伝送情報のうちで、どの部分が地上局50に伝送されなくてもよいかを判断することが、不要となる。例えば、伝送情報が複数の行で構成されている場合、ある一定間隔の行のデータを、第2の伝送情報部分として削除してもよい。また、伝送情報が動画像である場合、動画像を構成する複数のフレームの一定間隔のフレームを、第2の伝送情報部分として削除してもよい。また、伝送情報が音声情報である場合、ある周波数(例えば可聴域を逸脱した周波数)の音声データを、第2の伝送情報部分として削除してもよい。なお、間引き処理部144は、伝送情報がリアルタイム性を要求されないような情報である場合、第2の伝送情報部分をバッファリングし、後で(例えば輻輳が軽減された後で)伝送するための処理を行ってもよい。これにより、第2の伝送情報部分を削除する場合と比較して、地上局50において受信される伝送情報の品質を向上させることができる。
【0054】
(実施の形態2)
次に、実施の形態2について、図面を参照しながら説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。なお、実施の形態2にかかるシステム構成は、
図2に示したものと実質的に同様であるので、説明を省略する。実施の形態2では、複数の飛行体10が、同じ1つの飛行物体30から送信された情報(送信情報;伝送情報)を受信した場合について説明する。つまり、1つの飛行物体30が、同時に、複数の飛行体10に情報を送信した場合について述べる。
【0055】
図5は、実施の形態2にかかる通信装置100の構成を示す図である。実施の形態1と同様に、実施の形態2にかかる通信装置100は、主要なハードウェア構成として、制御部102と、記憶部104と、通信部106と、インタフェース部108とを有する。また、実施の形態1と同様に、実施の形態2にかかる通信装置100は、構成要素として、第1通信処理部112と、第2通信処理部114と、第3通信処理部116と、飛行物体監視部118とを有する。また、実施の形態1と同様に、実施の形態2にかかる通信装置100は、受信処理部120と、通信状態分析部130と、伝送処理部140とを有する。実施の形態2にかかる通信装置100は、さらに、タグ付加部210を有する。タグ付加部210は、タグ付加手段(付加手段)としての機能を有する。
【0056】
図6は、実施の形態2にかかる通信装置100で行われる通信方法を示すフローチャートである。以下、
図6を用いて、実施の形態2にかかる通信装置100の構成要素の説明を行う。
図6は、複数の通信装置100が、対応する飛行体10の周囲を飛行する1つの飛行物体30から送信された情報(送信情報;伝送情報)を受信して、地上局50に中継し得る場合の処理について、示している。以下の説明では、適宜、
図2に示した通信装置100A,100Bが、飛行物体30Aから情報を受信して、地上局50に中継する処理の例(「
図2の例」と称する)について説明する。
【0057】
各通信装置100の受信処理部120は、飛行物体30から情報を受信する(ステップS202)。具体的には、S102の処理と同様にして、各通信装置100の受信処理部120は、対応する飛行体10の周囲を飛行する飛行物体30から送信された情報(送信情報)を受信するための処理を行う。ここで、実施の形態2では、飛行物体30(通信機40)から送信された送信情報と、各通信装置100で受信された情報(受信情報)とが異なる可能性がある。つまり、各通信装置100と通信機40との間の通信回線の障害等により、送信情報の一部が欠損した状態の情報が、受信情報として、通信装置100で受信され得る。
【0058】
タグ付加部210は、受信された情報(受信情報)にタグ情報を付加する(ステップS204)。このタグ情報は、受信情報(伝送情報の少なくとも一部)を識別するための情報である。タグ情報を受信情報に付加することで、後述するように、同一の飛行物体からの情報が複数の飛行体10で受信された場合に、地上局50でこれらの情報を結合することが可能となる。これにより、地上局50に伝送される情報の品質を向上することが可能となる。
【0059】
タグ情報は、例えば、時刻タグと、位置情報タグとを含む。時刻タグは、受信情報が受信された時刻を示す。位置情報タグは、飛行物体30の位置を示す。飛行物体30の位置は、上述したように、飛行物体監視部118の処理によって取得され得る。
【0060】
通信装置100は、地上局50に情報を伝送する(ステップS206)。つまり、通信装置100は、受信情報にタグ情報が付加されて得られた情報(タグ付加情報)を、地上局50に伝送する。具体的には、通信装置100は、
図4に示したS104~S114と実質的に同様の処理を行う。そして、複数の飛行体10から情報(タグ付加情報)を受信した地上局50は、タグ情報を用いて、これらの情報を結合する。これにより、飛行物体30から送信された情報(伝送情報)が再現され得る。詳しくは後述する。
【0061】
図7は、実施の形態2にかかる情報の変化を例示する図である。
図7の例では、
図2に示した通信装置100A,100Bが、飛行物体30Aから送信された情報(送信情報)を受信して、地上局50に中継する処理の例について示されている。まず、飛行物体30Aの通信機40Aが、送信情報80(伝送情報)を送信する。ここで、
図7に例示するように、送信情報80は、フレームAと、フレームBと、フレームCとから構成されている。
【0062】
通信装置100A及び通信装置100Bは、送信情報80に対応する情報を受信する。このとき、通信装置100Aは、
図7に例示するように、フレームAとフレームCとを含む受信情報82Aを受信する。つまり、通信装置100Aで受信された受信情報82Aでは、フレームBが欠落している。また、通信装置100Bは、
図7に例示するように、フレームBとフレームCとを含む受信情報82Bを受信する。つまり、通信装置100Bで受信された受信情報82Bでは、フレームAが欠落している。
【0063】
タグ付加部210は、受信情報82の各フレームに対して、タグ情報を付加する(S204)。
図7に例示するように、通信装置100Aのタグ付加部210は、受信情報82AのフレームAにタグ情報AAを付加し、フレームCにタグ情報ACを付加することで、タグ付加情報84Aを生成する。タグ情報AAは、フレームAが通信装置100Aで受信された時刻を示す時刻タグと、フレームAを送信した飛行物体30Aの位置を示す位置情報タグとを含む。タグ情報ACは、フレームCが通信装置100Aで受信された時刻を示す時刻タグと、フレームCを送信した飛行物体30Aの位置を示す位置情報タグとを含む。通信装置100Aは、タグ付加情報84Aを、地上局50に伝送(送信)する。
【0064】
また、通信装置100Bのタグ付加部210は、受信情報82BのフレームBにタグ情報BBを付加し、フレームCにタグ情報BCを付加することで、タグ付加情報84Bを生成する。タグ情報BBは、フレームBが通信装置100Bで受信された時刻を示す時刻タグと、フレームBを送信した飛行物体30Aの位置を示す位置情報タグとを含む。タグ情報BCは、フレームCが通信装置100Bで受信された時刻を示す時刻タグと、フレームCを送信した飛行物体30Aの位置を示す位置情報タグとを含む。通信装置100Bは、タグ付加情報84Bを、地上局50に伝送(送信)する。
【0065】
地上局50は、タグ付加情報84A及びタグ付加情報84Bを受信する。地上局50は、タグ付加情報84に付加されている位置情報タグを用いて、異なる通信装置100から送信された複数のタグ付加情報84が同じ飛行物体30から送信された送信情報に対応すると判定できる。つまり、タグ付加情報84A及びタグ付加情報84Bに付加された位置情報タグは、同一の位置、又は、同一の飛行物体30から送信されたと見なせる程度に極めて近接した位置、を示している。したがって、地上局50は、タグ付加情報84に付加されている位置情報タグを用いて、タグ付加情報84Aとタグ付加情報84Bとが同じ飛行物体30(飛行物体30A)から送信された送信情報80に対応すると判定できる。特に、飛行物体30から送信された情報(伝送情報)に飛行物体30の識別情報がない場合であっても、地上局50において、同じ飛行物体30から送信された情報であることを容易に把握することができる。
【0066】
さらに、地上局50は、タグ付加情報84に付加されている時刻タグを用いて、異なる通信装置100から送信された複数のタグ付加情報84が、同じ情報に基づいて生成されていると判定できる。つまり、タグ付加情報84A及びタグ付加情報84Bに付加された時刻タグは、それぞれ、対応するフレームが同じ情報(伝送情報)を構成すると見なせる程度に近接した時刻を示している。例えば、タグ情報AA,AC,BB,BCの時刻タグは、互いに近接した時刻を示している。したがって、地上局50は、タグ付加情報84に付加されている時刻タグを用いて、タグ付加情報84A及びタグ付加情報84Bが、同じ情報(送信情報80)に基づいて生成されていると判定できる。特に、飛行物体30から送信された情報(伝送情報)に伝送情報の識別情報がない場合であっても、地上局50において、受信された複数のフレームが同じ伝送情報に対応することを容易に把握することができる。
【0067】
さらに、地上局50は、タグ付加情報84に付加されている時刻タグを用いて、異なる通信装置100から送信された複数のタグ付加情報84に含まれているフレームそれぞれの、伝送情報における順序を判定できる。つまり、地上局50は、時刻タグで示される時刻が早いタイミングであるほど、その時刻タグに対応するフレームの順序は先であると判定できる。特に、飛行物体30から送信された情報(伝送情報)にフレームの順序を示すデータがない場合であっても、地上局50において、受信されたフレームの元の情報(伝送情報;送信情報80)における順序を容易に把握することができる。
【0068】
したがって、
図7に例示するように、地上局50において、異なる通信装置100から送信された複数のタグ付加情報84に含まれているフレームを適切に結合することができる。これにより、地上局50において、送信情報80(伝送情報)を適切に生成(復元)することができる。このように、通信装置100において受信情報にタグ情報を付加することで、地上局50において受信する情報の品質を向上させることが可能となる。
【0069】
(変形例)
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、
図4等に示したフローチャートの各処理の順序は、適宜、変更可能である。また、
図4等に示したフローチャートの処理の1つ以上は、なくてもよい。
【0070】
また、上述した第1通信処理部112と飛行物体監視部118とは、一体に構成されていてもよい。この場合、第1通信処理部112と飛行物体監視部118とが一体に構成された構成要素が、飛行物体監視手段として機能し得る。また、第1通信処理部112と受信処理部120とは、一体に構成されていてもよい。この場合、第1通信処理部112と受信処理部120とが一体に構成された構成要素が、受信処理手段として機能し得る。また、第2通信処理部114と伝送処理部140とは、一体に構成されていてもよい。この場合、第2通信処理部114と伝送処理部140とが一体に構成された構成要素が、伝送処理手段として機能し得る。
【0071】
上述の例において、プログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体(non-transitory computer readable medium)を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体(tangible storage medium)を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体(transitory computer readable medium)によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0072】
以上、実施の形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記によって限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0073】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
無線通信を行う通信装置であって、
当該通信装置を搭載し空中に停留する第1の飛行体の周囲を飛行する飛行物体に搭載された通信機から情報を受信するための処理を行う受信処理手段と、
地上局との通信状態を分析する分析手段と、
前記通信状態の分析結果に応じた伝送方法で、前記情報を前記地上局に伝送するための処理を行う伝送処理手段と、
を有する通信装置。
(付記2)
前記伝送処理手段は、前記通信状態が良好でないと分析された場合に、当該通信装置によって前記地上局に送信される情報量が前記情報の量よりも少なくなるようにして、前記情報を前記地上局に伝送するための処理を行う、
付記1に記載の通信装置。
(付記3)
前記伝送処理手段は、前記通信状態が良好でないと分析された場合に、前記第1の飛行体とは異なる少なくとも1つの第2の飛行体に搭載された他の通信装置に前記情報を分散させて前記地上局に前記情報を伝送するための処理を行い、又は、前記情報の一部のみを前記地上局に伝送するための処理を行う、
付記2に記載の通信装置。
(付記4)
前記伝送処理手段は、前記第1の飛行体の周囲に通信可能な前記第2の飛行体が存在する場合に、前記情報の少なくとも一部を前記他の通信装置を介して前記地上局に伝送するための処理を行うことで、前記情報を前記他の通信装置に分散させて前記地上局に伝送するための処理を行う、
付記3に記載の通信装置。
(付記5)
前記伝送処理手段は、前記第1の飛行体の周囲に通信可能な前記第2の飛行体が存在しない場合に、前記情報のうちの第1の部分のみを前記地上局に伝送するための処理を行う、
付記3又は4に記載の通信装置。
(付記6)
前記情報のうちの前記地上局に伝送されない第2の部分は、予め定められている、
付記5に記載の通信装置。
(付記7)
前記通信機から受信された前記情報に、前記情報を識別するためのタグ情報を付加する付加手段、
をさらに有する付記1から6のいずれか1項に記載の通信装置。
(付記8)
前記付加手段は、受信された前記情報に、受信された時刻を示す時刻タグを付加する、
付記7に記載の通信装置。
(付記9)
前記付加手段は、受信された前記情報に、前記飛行物体の位置を示す位置情報タグを付加する、
付記7又は8に記載の通信装置。
(付記10)
空中に停留する第1の飛行体に搭載され、無線通信を行う通信装置と、
前記第1の飛行体の周囲を飛行する飛行物体に搭載された通信機と、
前記通信装置と通信を行う地上局と、
を有し、
前記通信装置は、
前記通信機から情報を受信するための処理を行う受信処理手段と、
前記地上局との通信状態を分析する分析手段と、
前記通信状態の分析結果に応じて、前記情報を前記地上局に伝送するための処理を行う伝送処理手段と、
を有する、
通信システム。
(付記11)
無線通信を行う通信装置を搭載し空中に停留する第1の飛行体の周囲を飛行する飛行物体に搭載された通信機から情報を受信するための処理を行い、
地上局との通信状態を分析し、
前記通信状態の分析結果に応じて、前記情報を前記地上局に伝送するための処理を行う、
通信方法。
(付記12)
前記通信状態が良好でないと分析された場合に、前記通信装置によって前記地上局に送信される情報量が前記情報の量よりも少なくなるようにして、前記情報を前記地上局に伝送するための処理を行う、
付記11に記載の通信方法。
(付記13)
前記通信状態が良好でないと分析された場合に、前記第1の飛行体とは異なる少なくとも1つの第2の飛行体に搭載された他の通信装置に前記情報を分散させて前記地上局に前記情報を伝送するための処理を行い、又は、前記情報の一部のみを前記地上局に伝送するための処理を行う、
付記12に記載の通信方法。
(付記14)
前記第1の飛行体の周囲に通信可能な前記第2の飛行体が存在する場合に、前記情報の少なくとも一部を前記他の通信装置を介して前記地上局に伝送するための処理を行うことで、前記情報を前記他の通信装置に分散させて前記地上局に伝送するための処理を行う、
付記13に記載の通信方法。
(付記15)
前記第1の飛行体の周囲に通信可能な前記第2の飛行体が存在しない場合に、前記情報のうちの第1の部分のみを前記地上局に伝送するための処理を行う、
付記13又は14に記載の通信方法。
(付記16)
前記情報のうちの前記地上局に伝送されない第2の部分は、予め定められている、
付記15に記載の通信方法。
(付記17)
前記通信機から受信された前記情報に、前記情報を識別するためのタグ情報を付加する、
付記11から16のいずれか1項に記載の通信方法。
(付記18)
受信された前記情報に、受信された時刻を示す時刻タグを付加する、
付記17に記載の通信方法。
(付記19)
受信された前記情報に、前記飛行物体の位置を示す位置情報タグを付加する、
付記17又は18に記載の通信方法。
(付記20)
無線通信を行う通信装置を搭載し空中に停留する第1の飛行体の周囲を飛行する飛行物体に搭載された通信機から情報を受信するための処理を行うステップと、
地上局との通信状態を分析するステップと、
前記通信状態の分析結果に応じて、前記情報を前記地上局に伝送するための処理を行うステップと、
をコンピュータに実行させるプログラムが格納された非一時的なコンピュータ可読媒体。
【符号の説明】
【0074】
1 通信装置
2 受信処理部
4 分析部
6 伝送処理部
10 飛行体
20 通信システム
30 飛行物体
40 通信機
50 地上局
80 送信情報
82 受信情報
84 タグ付加情報
100 通信装置
112 第1通信処理部
114 第2通信処理部
116 第3通信処理部
118 飛行物体監視部
120 受信処理部
130 通信状態分析部
140 伝送処理部
142 分散処理部
144 間引き処理部
210 タグ付加部