(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】充電制御方法及び充電制御システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20240918BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20240918BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240918BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240918BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20240918BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240918BHJP
H01M 10/663 20140101ALI20240918BHJP
【FI】
H02J7/04 L
H02J7/10 L
H01M10/48 301
H02J7/00 Y
H01M10/48 Z
H01M10/44 A
H01M10/613
H01M10/663
(21)【出願番号】P 2022570791
(86)(22)【出願日】2020-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2020047776
(87)【国際公開番号】W WO2022137306
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土岐 吉正
(72)【発明者】
【氏名】周 徐斌
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-343449(JP,A)
【文献】国際公開第2019/244489(WO,A1)
【文献】特開2008-278705(JP,A)
【文献】特開2009-207312(JP,A)
【文献】国際公開第2016/113925(WO,A1)
【文献】特開2011-259672(JP,A)
【文献】特開平09-019074(JP,A)
【文献】特開2013-031303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 7/04
H02J 7/10
H01M 10/42-10/48
H01M 10/52-10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の充電を制御する充電制御方法であって、
前記二次電池の熱に関する情報として、前記二次電池の温度と前記二次電池の発熱量と前記二次電池の抜熱量とのうちの少なくとも1つと、前記二次電池の冷却システムの稼働状態とを取得する取得ステップと、
取得した前記熱に関する情報の変化に基づいて、前記二次電池の発熱量を所定値に制御するように前記二次電池の充電電流値を設定する制御ステップと、を備え、
前記制御ステップでは、取得した前記二次電池の温度、発熱量、又は抜熱量の変化に応じて前記二次電池の充電電流値を減少させる場合において、前記冷却システムの稼働
中に前記二次電池へ冷媒供給が制限されているときの当該充電電流値の設定値を、前記
冷媒供給が制限されていないときの当該充電電流値の設定値よりも、相対的に小さくする、
充電制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の充電制御方法であって、
前記制御ステップでは、取得した前記二次電池の温度、発熱量、又は抜熱量の変化に応じて前記二次電池の充電電流値を減少させる場合には、当該充電電流値の減少に応じて当該充電電流値の変更率を減少させ、当該変化に応じて前記二次電池の充電電流値を増加させる場合には、当該充電電流値が最大充電電流値を超えない範囲で当該充電電流値の増加に応じて当該充電電流値の変更率を増加させる、
充電制御方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の充電制御方法であって、
前記制御ステップでは、前記充電電流値が一定となるように、充電電力を可変とする、
充電制御方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の充電制御方法であって、
前記取得ステップでは、前記熱に関する情報を所定タイミングで取得し、
前記制御ステップでは、前記熱に関する情報に所定の変化を検知した場合に、当該変化に基づいて前記充電電流値を変更する、
充電制御方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の充電制御方法であって、
前記熱に関する情報には、前記二次電池の外部温度または前記二次電池の劣化状態が含まれ、
前記制御ステップでは、前記二次電池の外部温度または前記二次電池の劣化状態を用いて前記充電電流値を設定する、
充電制御方法。
【請求項6】
請求項5に記載の充電制御方法であって、
前記制御ステップでは、前記二次電池の外部温度または前記二次電池の劣化状態に基づいて、前記充電電流値を設定する際の判定基準を変更する、
充電制御方法。
【請求項7】
二次電池と、前記二次電池の充電を制御するコントローラとを備える充電制御システムであって、
前記コントローラは、前記二次電池の熱に関する情報として、前記二次電池の温度と前記二次電池の発熱量と前記二次電池の抜熱量とのうちの少なくとも1つと、前記二次電池の冷却システムの稼働状態とを取得し、
取得した前記熱に関する情報の変化に基づいて、前記二次電池の発熱量を所定値に制御するように前記二次電池の充電電流値を設定する制御処理を実行し、
前記制御処理では、取得した前記二次電池の温度、発熱量、又は抜熱量の変化に応じて前記二次電池の充電電流値を減少させる場合において、前記冷却システムの稼働
中に前記二次電池へ冷媒供給が制限されているときの当該充電電流値の設定値を、前記
冷媒供給が制限されていないときの当該充電電流値の設定値よりも、相対的に小さくする、
充電制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の充電を制御する充電制御方法及び充電制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池等の二次電池を充電する場合にその充電を制御する技術が存在する。例えば、JP2006-197727Aには、二次電池の残容量に基づいて、二次電池を充電する電流値を決定する技術が開示されている。
【発明の概要】
【0003】
上述した従来技術では、二次電池の残容量に基づいて決定された電流値により二次電池が充電される。ここで、二次電池の発熱量は、電流及び内部抵抗で決まる。このため、充電を継続して実行するためには、発熱量を考慮した適切な充電電流値を設定し、充電中の二次電池の温度上昇を抑制することが重要となる。
【0004】
本発明は、二次電池の温度上昇を抑制しつつ充電を継続して実行することを目的とする。
【0005】
本発明の一態様は、二次電池の充電を制御する充電制御方法である。この充電制御方法は、二次電池の熱に関する情報を取得する取得ステップと、二次電池の熱に関する情報に基づいて、二次電池の発熱量を所定値に制御するように二次電池の充電電流値を設定する制御ステップと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は、本実施形態における二次電池の制御システムの構成例を示すブロック図である。
【
図2A】
図2Aは、高圧バッテリに充電する場合における電力の遷移例を示す図である。
【
図2B】
図2Bは、高圧バッテリに充電する場合における電圧の遷移例を示す図である。
【
図2C】
図2Cは、高圧バッテリに充電する場合における電流の遷移例を示す図である。
【
図3A】
図3Aは、充電時における電池温度と最大電流との関係例を示す図である。
【
図3B】
図3Bは、
図3Aに示す充電時における電池温度と最大電流との関係例をグラフとして示す図である。
【
図4】
図4は、VCMによる高圧バッテリの充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、VCMによる高圧バッテリの充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、VCMによる高圧バッテリの充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、VCMによる高圧バッテリの充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、VCMによる高圧バッテリの充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、VCMによる高圧バッテリの充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、VCMによる高圧バッテリの充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、VCMによる高圧バッテリの充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、VCMによる高圧バッテリの充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、VCMによる高圧バッテリの充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、VCMによる高圧バッテリの充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15は、VCMによる高圧バッテリの充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、VCMによる高圧バッテリの充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0008】
[二次電池の制御システムの構成例]
図1は、本実施形態における二次電池の制御システム1の構成例を示すブロック図である。なお、二次電池の制御システム1は、電気自動車やハイブリッド車等の車両に搭載されている二次電池の充放電を制御するシステムである。その二次電池は、車両の駆動モータや補機類等の車載機器に対して電力を供給する。また、その二次電池は車載器の充電器又は車外の充電装置により充電可能な電池でもある。なお、二次電池として、例えば、リチウムイオン電池、鉛電池,ニッケル水素電池等を用いることができる。また、本実施形態では、移動体に搭載される二次電池を例にして説明するが、定置用に搭載される二次電池についても適用可能である。
【0009】
二次電池の制御システム1は、VCM(vehicle control module)10と、DC(Direct Current)/DC20と、AC(Air Conditioner)30と、PTC(Positive Temperature Coefficient)40と、INV(Inverter)50と、MOT(Motor)60と、Charger70と、二次電池ユニット100と、BMS(Battery Management Unit)160とを備える。
【0010】
二次電池ユニット100は、高圧バッテリ110と、SDSW(Service Disconnect Switch)111と、リレー112とをバッテリケースに収容して構成される。高圧バッテリ110は、複数の走行用バッテリである。なお、高圧バッテリ110を走行用バッテリと称したのは、高圧バッテリ110の電力が主にMOT60に供給されるからであるが、もちろん、他の電気負荷へも供給される。なお、本実施形態において単に「バッテリ」と称する場合には高圧バッテリ110のことを指す。
【0011】
SDSW111は、高圧バッテリ110の強電回路のオン/オフを切り替えるスイッチである。すなわち、作業時や緊急時においてSDSW111が操作されることによって回路を遮断し、安全に作業や緊急時に対応を行うことが可能となる。
【0012】
リレー112は、信号線11を介したVCM10からの制御信号に基づいて、高圧バッテリ110の充放電のオン/オフを切り替えるリレーである。
【0013】
二次電池ユニット100の内部または外部には、温度センサ121乃至123と、電流センサ130と、総電圧センサ140と、セル電圧センサ151乃至153とが備えられる。
【0014】
温度センサ121乃至123は、高圧バッテリ110に関する温度を検出する温度センサであり、検出結果をBMS160に出力する。なお、
図1では、二次電池ユニット100に複数の温度センサを備える例を示すが、二次電池ユニット100に1つの温度センサを設置するようにしてもよい。例えば、1つの温度センサを設置する場合には、二次電池ユニット100において温度が最も上がりやすい位置、例えば中央部に設置することが好ましい。また、複数の温度センサを設置する場合には、二次電池ユニット100において温度が最も上がりやすい位置とその周辺の位置に設置するようにしてもよい。このように、複数の温度センサの設置場所は、二次電池ユニット100内のレイアウトや走行条件によって適宜設定可能である。また、二次電池ユニット100に複数の温度センサが設置されている場合には、これらの温度センサにより検出された温度のうちの所定値、例えば最高値を用いて各種演算を実行することができる。なお、本実施形態では、高圧バッテリ110に関する温度を電池温度と称しても説明する。
【0015】
電流センサ130は、高圧バッテリ110に関する充電電流や放電電流の電流を検出する電流センサであり、検出結果をBMS160に出力する。
【0016】
総電圧センサ140は、高圧バッテリ110の総電圧を検出する電圧センサであり、検出結果をBMS160に出力する。なお、高圧バッテリ110への充電が行われる際には、その検出結果に基づいて充電電圧の検出値が求められる。
【0017】
セル電圧センサ151乃至153は、高圧バッテリ110を構成する各セルの電圧を検出するセル電圧センサであり、検出結果をBMS160に出力する。すなわち、セル電圧センサ151乃至153は、高圧バッテリ110を構成する各セルに設置され、セル毎の電圧が検出される。
【0018】
BMS160は、SOC(States Of Charge)演算部161及びSOH(State of Health)演算部162を備え、高圧バッテリ110の容量、温度、電圧等の管理を行う制御装置である。なお、SOCは、高圧バッテリ110の充電状態を示す値(0~100%)である。また、SOHは、高圧バッテリ110の劣化状態を示す値(0~100%)である。具体的には、SOHの値が小さいほど、高圧バッテリ110の劣化が進んでいることを示し、SOHの値が大きいほど製品出荷時に近い状態(以下、初期状態と称する)であることを示す。
【0019】
SOC演算部161は、公知の演算方法により高圧バッテリ110のSOCを演算するものであり、演算結果をVCM10に出力する。
【0020】
SOH演算部162は、公知の演算方法により高圧バッテリ110のSOHを演算するものであり、演算結果をVCM10に出力する。例えば、SOH演算部162は、内部抵抗演算部(図示略)による演算結果に基づいて高圧バッテリ110の内部抵抗を取得する。そして、SOH演算部162は、その内部抵抗と、初期状態の内部抵抗と、温度センサ121乃至123により検出された高圧バッテリ110の温度とに基づいて、高圧バッテリ110のSOHを演算する。また、例えば、SOH演算部162は、高圧バッテリ110の容量に基づいて、高圧バッテリ110のSOHを演算するようにしてもよい。
【0021】
VCM10は、車両全体を制御する車両制御装置であり、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。VCM10を複数のマイクロコンピュータで構成することも可能である。
【0022】
DC/DC20は、高圧バッテリ110から補機類への電力供給用の低圧バッテリ(図示略)へ電力を供給する際に、電圧を所定の電圧値まで降圧するDCDCコンバータである。
【0023】
AC30は、VCM10の制御に基づいて、外部から取り込んだ空気との熱交換により、車室内や車両の各部を所定の冷媒により冷却する空冷システムである。
【0024】
PTC40は、高圧バッテリ110に異常な大電流が流れた場合に抵抗を増加させ、電流を制限するデバイスである。なお、PTC40は、高圧バッテリ110の内部に組み込むようにしてもよく、高圧バッテリ110の外部に設置するようにしてもよい。
【0025】
INV50は、MOT60、高圧バッテリ110に電気的に接続されている。INV50は、MOT60が発電する交流電力を直流電力に変換して高圧バッテリ110に供給し、高圧バッテリ110から出力される直流電力を交流電力に変換してMOT60に供給するよう構成されている。このように、INV50は、駆動モータ兼発電モータ用インバータとして機能する。
【0026】
MOT60は、力行動作時に、INV50から供給される交流電流により回転駆動し、駆動輪に供給する駆動力を生成する。また、MOT60は、回生動作時に、高圧バッテリ110で回収される電気エネルギーを生成する。このようにMOT60は、駆動モータ兼発電モータとして機能する。
【0027】
Charger70は、外部充電器(急速充電器を含む)と接続する充電回路(DCDCコンバータ又はインバータ)などであり、充電器から供給された電力を高圧バッテリ110に出力する。なお、外部充電器と接続して車両への充電が行われる場合には、VCM10の制御に基づいて、充電電圧及び充電電流が設定される。
【0028】
[電力制御例]
図2Aは、高圧バッテリ110に充電する場合における電力の遷移例を示す図である。なお、
図2Aの縦軸は、高圧バッテリ110に充電する際における電力を示す。また、
図2Aの横軸は、時間軸を示す。なお、
図2B、
図2Cの横軸も時間軸を示す。
【0029】
図2Bは、高圧バッテリ110に充電する場合における電圧の遷移例を示す図である。なお、
図2Bの縦軸は、高圧バッテリ110に充電する際における電圧を示す。
【0030】
図2Cは、高圧バッテリ110に充電する場合における電流の遷移例を示す図である。なお、
図2Bの縦軸は、高圧バッテリ110に充電する際における電流を示す。
【0031】
図2A乃至
図2Cにおいて、線L1乃至L3は、電力値を可変として電流値が一定となるように充電をする場合における遷移を示す。また、点線L11乃至L13は、線L1乃至L3との比較例であり、電力が一定となるように充電をする場合における遷移を示す。
【0032】
ここで、電力を一定として充電を行う場合(点線L11に示す)には、充電により電圧が上昇すると(点線L12に示す)、電流値は低下する(点線L13に示す)。このように、電力を一定として充電を行う場合には、電圧の変化に応じて電流値も変化する。ここで、高圧バッテリ110の発熱量は、電流と内部抵抗とで決まり、電力と発熱量との比例関係が成立しない。このため、充電中に電流値が一定とならない場合には、発熱量を一定に制御することができない。すなわち、点線L11乃至L13で示す電力制御方法では、充電中に電流値が一定とならないため、発熱量を一定に制御することができず、高圧バッテリ110の発熱量の変化が予測できない。このため、高圧バッテリ110の充電を適切に行うことが困難であることも想定される。
【0033】
また、車両の使用年数と走行距離によって高圧バッテリ110が劣化してしまい、劣化後の内部抵抗とSOCが変化する。このような、高圧バッテリ110の充放電に伴うSOCや内部抵抗の変化によっても、発熱量が変化する。このため、発熱量を一定に制御するためには、これらの変化を考慮することも重要である。
【0034】
そこで、本実施形態では、高圧バッテリ110の発熱量を一定に制御するため、充電中の電流を一定とするための充電制御を実行する例を示す。すなわち、本実施形態では、高圧バッテリ110の発熱量を一定に制御し、充電中の高圧バッテリ110の温度上昇を抑える例を示す。なお、本実施形態では、外部充電器、例えばクイックチャージ(QC)から充電する場合の充電制御を例について説明する。ただし、車両内部での充電、例えば車両の走行中における余剰充電についても、本実施形態における充電制御を適用可能である。
【0035】
[充電時の電池温度と充電電流との関係例]
図3Aは、充電時における電池温度と充電電流との関係例を示す図である。
図3Bは、
図3Aに示す充電時における電池温度と充電電流との関係例をグラフとして示す図である。
図3Bに示すグラフにおいて、縦軸は充電時の充電電流を示し、横軸は、充電時の電池温度を示す。なお、BT1乃至BT13の範囲は、45乃至60℃程度の範囲とすることができる。また、MC1としては、125A程度の値を設定可能である。
【0036】
本実施形態では、電池温度に応じて充電電流の制限電流値(最大電流)を変更する。より具体的には、電池温度を複数の温度領域(BT1~BT2、BT2~BT3・・・BT12~BT13)に分け、より高い温度領域であるほど高い制限電流値を設定する。なお、最も低い温度領域(BT2未満の温度領域)では、充電電流値は、MC1とする。特に、この充電電流値MC1は、充電電力が外部充電器の設計などにより定まる最大充電電力(定格充電電力)に相当する電流値である。すなわち、電池温度が過度に上昇する可能性の低い低温領域では充電効率を優先して、最大充電電力相当の充電電流値MC1を設定する。なお、この低温領域における充電の具体的なシーンとしては、充電が開始された直後から比較的初期段階、又は高圧バッテリ110に対する冷却機能を十分に確保できる環境下における充電が想定される。
【0037】
したがって、電池温度が第1閾値BT2(走行出力制限温度BT13よりも低い値)を超えるまでの間は、充電電流値MC1で定電流充電を実行する。そして、電池温度が第1閾値BT2を超えた場合には、電池温度に基づく充電電流値(充電電流値MC1よりも小さな第1制限電流値MC2)に移行して、定電流充電を継続する。また、第n-1(nは2以上の整数)閾値温度よりも高く走行出力制限温度BT13よりも低い第n閾値温度を超えた場合には、第n-1制限電流値よりも小さな第n制限電流値にて充電を継続する。また、リアルタイム電流制限での電流の絞り代は、制限初期(第1閾値BT2を超えた直後)ほど大きく、電池温度が高くなるのに応じて小さくする。例えば、|初期充電電流値MC1-第1制限電流値MC2|>|第1制限電流値MC2-第2制限電流値MC3|>|第2制限電流値MC3-第3制限電流値MC4|>…とすることができる。ただし、所定の電池温度を超えた場合には、電流の絞り代を一定値とするようにしてもよい。例えば、第4閾値BT5を超えた後における電流の絞り代は、一定値とすることができる。なお、そのように定電流充電を継続して行う場合には、電池温度とともに、他の要素(例えば、SOH、外気温、発熱量、抜熱量、冷却状態)を用いて充電電流値を設定することができる。このように、高圧バッテリ110の発熱量を段階的に下げて、熱収支バランスを調整し、電池温度の安定化を図ることができる。
【0038】
また、
図3Bに示すように、充電時における電池温度と最大電流との関係は、定数マップ(温度-電流マップ)で設定することができる。その定数マップにおける格子点(白抜きの丸、黒塗りの丸)は、両端の温度で指定した電流制限値と称することができる。なお、温度条件が細かいマップでも1℃程度の離散的な温度条件における電流値を指定するため、この間の電流を直線近似、指数近似等で制限することを、所定電池温度間の電流制限値と表現することができる。このように、本実施形態では、両端の温度で指定した電流制限値を用いて、定めた数値補間式で充電電流値を演算することができる。また、その定数マップは、発熱量あるいは電池温度を所定値に制御するために予め設定したマップである。
【0039】
[二次電池の充電制御例]
図4は、VCM10による高圧バッテリ110の充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この処理手順は、記憶装置(図示省略)に記憶されているプログラムに基づいて実行される。また、この処理手順は、高圧バッテリ110の充電が開始された後に、所定間隔で繰り返し実行される。
【0040】
なお、VCM10は、充電制御に用いる各種情報を所定タイミングで取得するものとする。充電制御に用いる各種情報は、例えば、各センサ(温度センサ121乃至123、電流センサ130、総電圧センサ140、セル電圧センサ151乃至153)から出力された検出結果や、各演算部(SOC演算部161、SOH演算部162)から出力された演算結果である。また、VCM10は、これらの入力値に基づいて、所望の充電電流を実現するようにCharger70を操作して充電電圧を調節する。また、電池温度がBT2未満の温度領域では、充電電流を、最大充電電力に相当する最大値MC1に設定することができる。なお、
図5乃至
図16に示す例も同様に、充電制御に用いる各種情報を所定タイミングで取得し、電池温度がBT2未満の温度領域では、充電電流値として最大値MC1を設定するものとする。
【0041】
ステップS201において、VCM10は、高圧バッテリ110の温度がBT2未満であるか否かを判定する。高圧バッテリ110の温度がBT2未満である場合には、ステップS202に進む。一方、高圧バッテリ110の温度がBT2以上である高い場合には、ステップS203に進む。
【0042】
ステップS202において、VCM10は、高圧バッテリ110への最大充電電流値としてMC1を設定する。
【0043】
ステップS203において、VCM10は、高圧バッテリ110の温度がBT2以上であり、かつ、BT3未満であるか否かを判定する。高圧バッテリ110の温度がBT2以上であり、かつ、BT3未満である場合には、ステップS204に進む。一方、高圧バッテリ110の温度がBT3以上である場合には、ステップS205に進む。
【0044】
ステップS204において、VCM10は、高圧バッテリ110への最大充電電流値としてMC2を設定する。
【0045】
ステップS205において、VCM10は、高圧バッテリ110の温度がBT3以上であり、かつ、BT4未満であるか否かを判定する。高圧バッテリ110の温度がBT3以上であり、かつ、BT4未満である場合には、ステップS206に進む。一方、高圧バッテリ110の温度がBT4以上である場合には、ステップS207に進む。
【0046】
ステップS206において、VCM10は、高圧バッテリ110への最大充電電流値としてMC3を設定する。
【0047】
ステップS207において、VCM10は、高圧バッテリ110の温度がBT4以上であり、かつ、BT5未満であるか否かを判定する。高圧バッテリ110の温度がBT4以上であり、かつ、BT5未満である場合には、ステップS208に進む。一方、高圧バッテリ110の温度がBT5以上である場合には、ステップS209に進む。
【0048】
ステップS208において、VCM10は、高圧バッテリ110への最大充電電流値としてMC4を設定する。
【0049】
ステップS209において、VCM10は、高圧バッテリ110の温度がBT5以上であり、かつ、BT6未満であるか否かを判定する。高圧バッテリ110の温度がBT5以上であり、かつ、BT6未満である場合には、ステップS210に進む。
【0050】
ステップS210において、VCM10は、高圧バッテリ110への最大充電電流値としてMC5を設定する。
【0051】
ステップS209において、高圧バッテリ110の温度がBT6以上である場合には、ステップS201乃至S210に示す各処理と同様に、
図3Aに示す充電時における電池温度と最大電流との関係例に基づく処理が繰り返し行われる。なお、
図4では、ステップS211までの処理手順を省略する。
【0052】
ステップS211において、VCM10は、高圧バッテリ110の温度がBT12以上であり、かつ、BT13未満であるか否かを判定する。高圧バッテリ110の温度がBT12以上であり、かつ、BT13未満である場合には、ステップS212に進む。一方、高圧バッテリ110の温度がBT13以上である場合には、ステップS213に進む。
【0053】
ステップS212において、VCM10は、高圧バッテリ110への最大充電電流値としてMC12を設定する。
【0054】
ステップS213において、VCM10は、高圧バッテリ110の充電電流値として0を設定する。この場合には、高圧バッテリ110への充電が停止される。すなわち、所定温度BT13以上で通電を禁止する。なお、電池温度が低下した場合には充電を再開することができる。
【0055】
ステップS214において、VCM10は、高圧バッテリ110の温度が所定値BT0以下であるか否かを判定する。この判定処理は、所定時間が経過した後に実行するようにしてもよい。所定時間は、例えば、上述した各処理により設定された最大充電電流値による充電が実行された後に、その最大充電電流値の設定後の効果が発揮される程度の時間である。
【0056】
なお、所定値BT0は、電池温度が下がったら、充電電流を再度増やすための基準値である。所定値BT0として、例えば、BT1未満の値を用いることができる。例えば、所定値BT0として、BT1からヒステリシス分の温度を減算した値を設定することができる。高圧バッテリ110の温度が所定値BT0以下である場合には、ステップS201に戻る。一方、高圧バッテリ110の温度が所定値BT0よりも高い場合には、高圧バッテリ110の充電制御処理の動作を終了する。
【0057】
なお、ステップS214に示す判定処理は、高圧バッテリ110の温度に応じた最大充電電流値の設定処理(ステップS202、S204、S206、S208、S210、S212)の後の所定タイミングで実行するようにしてもよい。この場合には、所定値BT0として、
図4に示す処理手順の開始時または各判定処理時における温度、または、その温度から所定のヒステリシス分の温度を減算した値を用いるようにしてもよい。
【0058】
このように、
図4に示す例では、リアルタイム電流制限を行うことにより適切な充電制御を実現できる。この場合に設定される充電電流値の変化量は、
図3Bに示すように、電池温度が低いほど(設定される最大電流が大きいほど)大きくし、電池温度が高くなるに応じて小さくする。
【0059】
このように、
図4に示す例では、高圧バッテリ110の温度に応じた適切な充電電流値を設定することができる。また、
図5乃至
図16に示すように、高圧バッテリ110の温度に応じた充電電流値を各種条件、例えばSOHや外気温に適応できる電流値とすることも可能である。このように、本実施形態によれば、各種条件に応じた適切な充電電流制限を設定することができる。
【0060】
また、
図4に示す例では、
図3Aに示す関係例に基づく処理を行うため、VCM10の処理負荷を軽減することができ、制御実装を容易とすることができる。
【0061】
[二次電池の劣化を考慮した充電制御例]
次に、高圧バッテリ110の劣化を考慮して充電電流値を制御する例を示す。具体的には、高圧バッテリ110の温度が上がり易い条件となっている場合、例えば劣化していて発熱しやすい条件の場合には、高圧バッテリ110が高温になりやすい。ここで、二次電池の制御システム1では、高圧バッテリ110の温度が所定値に達すると(すなわち高圧バッテリ110が所定値以上高温になると)充電を停止する機能が備わっている。ただし、高圧バッテリ110の温度を適正にコントロールすることによって充電が停止することを防止し、高圧バッテリ110への充電を継続して行うことができ、高圧バッテリ110の充電量を確保することが可能となる。そこで、高圧バッテリ110が劣化していて発熱しやすい条件となっている場合には、高圧バッテリ110の充電量を確保するため、高圧バッテリ110の温度が高くなるのに応じて最大充電電流値をさらに制限し、高圧バッテリ110への充電を継続して行う設定とする。
【0062】
図5は、VCM10による高圧バッテリ110の充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、この処理手順は、記憶装置(図示省略)に記憶されているプログラムに基づいて実行される。また、この処理手順は、高圧バッテリ110の充電が開始された後に、所定間隔で繰り返し実行される。
【0063】
ステップS221において、VCM10は、高圧バッテリ110のSOHが閾値TH1以上であるか否かを判定する。ここで、閾値TH1は、高圧バッテリ110の劣化の程度を判定するための基準値である。具体的には、閾値TH1は、高圧バッテリ110の劣化の程度が低い状態、例えば初期状態であることを判定するための基準値であり、例えば90%程度の値を用いることができる。高圧バッテリ110のSOHが閾値TH1以上である場合には、ステップS222に進む。一方、高圧バッテリ110のSOHが閾値TH1未満である場合には、ステップS227に進む。
【0064】
ステップS222において、VCM10は、高圧バッテリ110の温度がBT2未満であるか否かを判定する。高圧バッテリ110の温度がBT2未満である場合には、ステップS223に進む。一方、高圧バッテリ110の温度がBT2以上である高い場合には、ステップS224に進む。
【0065】
ステップS223において、VCM10は、高圧バッテリ110への最大充電電流値としてMC1を設定する。
【0066】
ステップS224において、VCM10は、高圧バッテリ110の温度がBT2以上であり、かつ、BT4未満であるか否かを判定する。高圧バッテリ110の温度がBT2以上であり、かつ、BT4未満である場合には、ステップS225に進む。一方、高圧バッテリ110の温度がBT4以上である場合には、ステップS226に進む。
【0067】
ステップS225において、VCM10は、高圧バッテリ110への最大充電電流値としてMC4を設定する。
【0068】
ステップS226において、VCM10は、高圧バッテリ110の充電電流値として0を設定する。この場合には、高圧バッテリ110への充電が停止される。
【0069】
このように、SOHの値が比較的高い場合(ステップS221のYesの場合)、すなわち、高圧バッテリ110が初期状態である場合には、劣化状態である場合と比較して高圧バッテリ110が発熱し難く高圧バッテリ110の温度上昇が比較的緩やかであると想定される。このため、高圧バッテリ110の温度がBT2未満である場合には、最大充電電流値を上述の最大充電電力に相当する充電電流値MC1に維持または設定する。一方で、SOHの値が比較的低い場合(ステップS221のNoの場合)には高圧バッテリ110が劣化して温度上昇し易くなっていると考えられる。そのため、たとえ高圧バッテリ110の温度がBT2未満であっても、最大充電電流値をMC1よりも低く設定することを前提とした上で、ステップS227以降の処理を実行する。
【0070】
ステップS227において、VCM10は、高圧バッテリ110のSOHが閾値TH1未満であり、かつ、閾値TH2以上であるか否かを判定する。ここで、閾値TH2は、閾値TH1よりも小さい値であり、高圧バッテリ110の劣化の程度を判定するための基準値である。具体的には、閾値TH2は、高圧バッテリ110の劣化の程度が中程度、例えば中期状態であることを判定するための基準値であり、例えば80%程度の値を用いることができる。高圧バッテリ110のSOHが閾値TH1未満であり、かつ、閾値TH2以上である場合には、ステップS228に進む。一方、高圧バッテリ110のSOHが閾値TH2未満である場合には、ステップS233に進む。
【0071】
ステップS228において、VCM10は、高圧バッテリ110の温度がBT3未満であるか否かを判定する。高圧バッテリ110の温度がBT3未満である場合には、ステップS229に進む。一方、高圧バッテリ110の温度がBT3以上である高い場合には、ステップS230に進む。
【0072】
ステップS229において、VCM10は、高圧バッテリ110への最大充電電流値としてMC3を設定する。
【0073】
ステップS230において、VCM10は、高圧バッテリ110の温度がBT3以上であり、かつ、BT5未満であるか否かを判定する。高圧バッテリ110の温度がBT3以上であり、かつ、BT5未満である場合には、ステップS231に進む。一方、高圧バッテリ110の温度がBT5以上である場合には、ステップS232に進む。
【0074】
ステップS231において、VCM10は、高圧バッテリ110への最大充電電流値としてMC5を設定する。
【0075】
ステップS232において、VCM10は、高圧バッテリ110の充電電流値として0を設定する。この場合には、高圧バッテリ110への充電が停止される。
【0076】
このように、SOHの値が中程度である場合、すなわち、高圧バッテリ110が中期状態である場合には、初期状態である場合と比較して高圧バッテリ110が発熱しやすく高圧バッテリ110の温度上昇が比較的早いと想定される。このため、ステップS228、S230における判定基準として比較的高い値BT3、BT5を用いる。また、高圧バッテリ110の温度がBT3未満である場合には、
図4に示す例とは異なり、高圧バッテリ110への最大充電電流値として、比較的小さい値MC3を設定する。また、高圧バッテリ110の温度がBT3以上であり、かつ、BT5未満である場合には、高圧バッテリ110への最大充電電流値として、比較的小さい値MC5を設定する。
【0077】
ステップS230において、VCM10は、高圧バッテリ110のSOHが閾値TH2未満であり、かつ、閾値TH3以上であるか否かを判定する。ここで、閾値TH3は、閾値TH2よりも小さい値であり、高圧バッテリ110の劣化の程度を判定するための基準値である。具体的には、閾値TH3は、高圧バッテリ110の劣化の程度が後期程度、例えば後期状態であることを判定するための基準値であり、例えば70%程度の値を用いることができる。
【0078】
高圧バッテリ110のSOHが閾値TH2未満であり、かつ、閾値TH3以上である場合には、ステップS222乃至S226、S228乃至S232の各処理と略同様の処理を行うが、図示を省略する。なお、ステップS230以降の各処理は、ステップS228乃至S232の各処理で用いた判定条件よりも厳しい条件で行うようにする。
【0079】
また、高圧バッテリ110のSOHが閾値TH3未満である場合には、ステップS221、S227の各処理と略同様の判定処理を行う。この場合の判定処理では、閾値としてTH3よりも小さい値TH4を用いるようにする。
【0080】
このように、ステップS233以降の処理として、ステップS221乃至S226、S227乃至S232の各処理と略同様の処理を1回、または、複数回行う。
【0081】
このように、SOHの値が比較的低い場合、すなわち、高圧バッテリ110が後期状態である場合には、初期状態、中期状態である場合と比較して高圧バッテリ110がさらに発熱しやすく高圧バッテリ110の温度上昇も早いと想定される。このため、ステップS228、S230の処理と同様の処理における判定基準としてさらに高い値を用いる。また、高圧バッテリ110への最大充電電流値として、ステップS221乃至S226、S227乃至S232の各処理よりもさらに小さい値を設定する。
【0082】
[二次電池の劣化を考慮した充電制御の変形例]
図5では、SOHの判定処理後に、2つの電池温度の判定基準を用いて最大充電電流値を設定する例を示した。ただし、SOHの判定処理後に、3以上の電池温度の判定基準を用いて最大充電電流値を設定するようにしてもよい。そこで、
図6では、SOHの判定処理後に、3以上の電池温度の判定基準を用いて最大充電電流値を設定する例を示す。
【0083】
図6は、VCM10による高圧バッテリ110の充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図6に示す処理は、
図5に示す処理の一部を変形した例であり、
図5に示す処理と共通する部分については、その説明の一部を省略する。
【0084】
具体的には、
図5では、SOHの判定処理(ステップS221、S227)の後には、2つの判定基準(ステップS221後のBT2及びBT4、ステップS227後のBT3及びBT5)を用いて最大充電電流値を設定する例を示す。これに対して、
図6では、SOHの判定処理(ステップS241、S251)の後には、複数の判定基準(BT2乃至BT13)を用いて最大充電電流値を設定する例を示す。
【0085】
このように、
図6では、複数の判定基準(BT2乃至BT13)を用いて最大充電電流値を設定するため、比較的低い電池温度である場合には、最大充電電流値として比較的高い値を設定する。
【0086】
具体的には、ステップS241において、高圧バッテリ110のSOHが閾値TH1以上であると判定された後に、ステップS244において、高圧バッテリ110の温度がBT2以上であり、かつ、BT4未満であると判定された場合を想定する。この場合には、ステップS245において、VCM10は、高圧バッテリ110への最大充電電流値としてMC1Aを設定する。ここで、MC1Aは、MC1よりも小さく、MC2よりも大きい値である。MC1Aとして、例えば100A程度の値を用いることができる。
【0087】
また、ステップS246において、高圧バッテリ110の温度がBT4以上であり、かつ、BT6未満であると判定された場合を想定する。この場合には、ステップS247において、VCM10は、高圧バッテリ110への最大充電電流値としてMC1Bを設定する。ここで、MC1Bは、MC1Aよりも小さく、MC2よりも大きい値である。MC1Bとして、例えば80A程度の値を用いることができる。
【0088】
また、ステップS251において、高圧バッテリ110のSOHが閾値TH1未満であり、かつ、閾値TH2以上であると判定された後に、ステップS254において、高圧バッテリ110の温度がBT3以上であり、かつ、BT5未満であると判定された場合を想定する。この場合には、ステップS255において、VCM10は、高圧バッテリ110への最大充電電流値としてMC1Cを設定する。ここで、MC1Cは、MC1Bよりも小さく、MC2よりも大きい値である。MC1Cとして、例えば60A程度の値を用いることができる。
【0089】
また、ステップS246において、高圧バッテリ110の温度がBT6以上であると判定された後から、ステップS248までの各処理については、
図4に示す例と同様に、所定の電池温度に基づく判定処理と、最大充電電流値の設定処理が繰り返し行われる。この場合の判定処理に用いられる電池温度と、設定処理において設定される最大充電電流値との関係については、適宜設定可能である。なお、
図6では、ステップS247からS248までの処理手順の図示を省略する。
【0090】
また、ステップS256において、高圧バッテリ110の温度がBT6以上であると判定された後から、ステップS258までの各処理についても、
図4に示す例と同様に、所定の電池温度に基づく判定処理と、最大充電電流値の設定処理が繰り返し行われる。この場合の判定処理に用いられる電池温度と、設定処理において設定される最大充電電流値との関係についても、適宜設定可能である。ただし、ステップS247からS248までの処理において用いられる電池温度と最大充電電流値との関係によりも、最大充電電流値が小さい値となるように設定することが好ましい。なお、
図6では、ステップS257からS258までの処理手順の図示を省略する。
【0091】
また、
図6では、ステップS248、S258において、高圧バッテリ110の温度がBT12よりも大きく、かつ、BT13未満であると判定された場合に、高圧バッテリ110の最大充電電流値MC12を設定する例を示した。また、ステップS248、S258において、高圧バッテリ110の温度がBT13よりも大きいと判定された場合に、高圧バッテリ110の充電電流値0を設定する例を示した。ただし、最大充電電流値MC12や充電電流値0を設定する際の基準温度を、BT12よりも低い値とするようにしてもよい。例えば、車両が走行中には、走行での発熱による電池温度上昇による走行中の制限を回避するため、車両の速度に応じて、その基準温度を低い値に設定するようにしてもよい。
【0092】
[走行中の充電を考慮した充電制御の変形例]
電池温度が上がり易い環境や条件では、車両の走行中も同様に電池温度が上昇しやすいと想定される。このため、電池温度が上がり易い環境や条件において、走行中に充電が行われる場合には、充電電流値を制限するタイミング、すなわち電池温度を低くするタイミングを早めるようにしてもよい。すなわち、電池温度が上がりやすい環境や条件である場合には、その環境や条件に応じて、充電電流値を制限するタイミング、すなわち電池温度を低くするタイミングを早めるようにしてもよい。そこで、
図7、
図8では、車両の走行中に、充電電流値を制限するタイミングを早め、走行性能を一定とする場合の例を示す。
【0093】
図7は、VCM10による高圧バッテリ110の充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図7に示す処理は、
図5に示す処理の一部を変形した例であり、
図5に示す処理と共通する部分については、その説明の一部を省略する。
【0094】
なお、ステップS272からS276までの各処理、ステップS278からS282までの各処理については、
図5に示す例と同様に、所定の電池温度に基づく判定処理と、最大充電電流値の設定処理とが繰り返し行われる。この場合の判定処理に用いられる電池温度と、設定処理において設定される最大充電電流値との関係については、適宜設定可能である。
【0095】
例えば、
図7では、高圧バッテリ110の劣化が進んでいることを早いタイミング(ステップS271の判定処理)で判定可能である。この場合には、高圧バッテリ110のSOHが閾値TH3以上であると判定された後に、早いタイミングで充電電流値を制限することができる。このため、電池温度が上昇しやすい車両の走行中でも、充電を維持することができ、走行性能を一定とすることができる。
【0096】
[中期状態では初期状態よりも低い電池温度の閾値を用いる例]
図8は、VCM10による高圧バッテリ110の充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図8に示す処理は、
図6に示す処理の一部を変形した例であり、
図6に示す処理と共通する部分については、その説明の一部を省略する。
【0097】
具体的には、
図6では、電池温度の判定処理(ステップS244、S246)では、閾値BT2、BT4、BT6を判定基準として用いる例を示した。これに対して、
図8では、電池温度の判定処理(ステップS304、S306)では、比較的高い閾値BT2、BT5、BT6を判定基準として用いる例を示す。
【0098】
また、
図6では、電池温度の判定処理(ステップS254、S256)では、閾値BT3、BT5、BT6を判定基準として用いる例を示した。これに対して、
図8では、電池温度の判定処理(ステップS314、S316)では、比較的低い閾値BT2、BT3、BT5を判定基準として用いる例を示す。また、最大充電電流値の設定処理(ステップS315、S317)では、判定基準となる閾値BT2、BT3、BT5の低さに応じて、大きい値MC1B、MC1Cを設定する例を示す。
【0099】
なお、ステップS301からS310までの各処理、ステップS311からS320までの各処理については、
図6に示す例と同様に、所定の電池温度に基づく判定処理と、最大充電電流値の設定処理とが繰り返し行われる。
【0100】
このように、
図8では、高圧バッテリ110の劣化が進んでいる場合には、比較的低い閾値BT2、BT3、BT5を用いることにより、早いタイミングで充電電流値を制限することができる。このため、電池温度が上昇しやすい車両の走行中でも、充電を維持することができ、走行性能を一定とすることができる。
【0101】
[初期状態と中期状態で同じ電池温度の閾値を用いる例]
図9は、VCM10による高圧バッテリ110の充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図9に示す処理は、
図8に示す処理の一部を変形した例であり、
図8に示す処理と共通する部分については、その説明の一部を省略する。
【0102】
具体的には、
図8では、初期状態と判定された場合の電池温度の判定処理(ステップS302、S304、S306)では、閾値BT2、BT5、BT6を判定基準として用いる例を示した。また、
図8では、中期状態と判定された場合の電池温度の判定処理(ステップS312、S314、S316)では、閾値BT2、BT3、BT5を判定基準として用いる例を示した。
【0103】
これに対して、
図9では、初期状態及び中期状態と判定された場合の双方で、電池温度の判定処理(ステップS332、S334、S336、S342、S344、S346)では、同じ閾値BT2、BT4、BT5を判定基準として用いる例を示す。
【0104】
このように、
図9では、高圧バッテリ110の劣化状態にかかわらず同一の閾値BT2、BT4、BT5を用いることにより、VCM10の処理負荷を軽減することができる。これにより、早いタイミングで充電電流値を制限することができる。このため、電池温度が上昇しやすい車両の走行中でも、充電を維持することができ、走行性能を一定とすることができる。
【0105】
[中期状態では初期状態よりも低い電池温度の閾値を用いるが最大充電電流値は同じ値とする例]
図10は、VCM10による高圧バッテリ110の充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図10に示す処理は、
図8に示す処理の一部を変形した例であり、
図8に示す処理と共通する部分については、その説明の一部を省略する。
【0106】
具体的には、
図10では、
図8に示す例と同様に、初期状態と判定された場合の電池温度の閾値(閾値BT2、BT4、BT5)よりも、中期状態と判定された場合の電池温度の閾値(閾値BT2、BT3、BT4)を低い値とする例を示す。
【0107】
ただし、
図10では、初期状態及び中期状態と判定された場合の双方で、最大充電電流値の設定処理(ステップS363、S365、S367、S373、S375、S377)では、同一の最大充電電流値MC1、MC1A、MC1Bを設定する例を示す。
【0108】
このように、
図10では、高圧バッテリ110の劣化状態にかかわらず同一の最大充電電流値MC1、MC1A、MC1Bを用いることにより、VCM10の処理負荷を軽減することができる。これにより、早いタイミングで充電電流値を制限することができる。このため、電池温度が上昇しやすい車両の走行中でも、充電を維持することができ、走行性能を一定とすることができる。
【0109】
[気温を考慮した充電制御例]
次に、気温を考慮して充電電流値を制御する例を示す。具体的には、高圧バッテリ110の温度が上がり易い条件となっている場合、例えば気温が高い環境や条件の場合には、高圧バッテリ110が高温になりやすい。そこで、そのような環境や条件となっている場合には、高圧バッテリ110の充電量を確保するため、高圧バッテリ110が高温になるのに応じて最大充電電流値をさらに制限する設定とする。
【0110】
図11は、VCM10による高圧バッテリ110の充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図11に示す処理は、
図5に示す処理の一部を変形した例であり、
図5に示す処理と共通する部分については、その説明の一部を省略する。
【0111】
ステップS401において、VCM10は、気温が閾値T1以下であるか否かを判定する。ここで、閾値T1は、高圧バッテリ110が高温になりやすい気温であるか否かを判定するための基準値である。具体的には、閾値T1は、気温が比較的低い状態であることを判定するための基準値であり、例えば20℃程度の値を用いることができる。気温が閾値T1以下である場合には、ステップS402に進む。一方、気温が閾値T1よりも高い場合には、ステップS407に進む。
【0112】
なお、ステップS402乃至S406の各処理は、
図5に示すステップS222乃至S226の各処理と同様である。
【0113】
このように、気温が比較的低い場合、すなわち、高圧バッテリ110が高温になりにくい環境である場合には、気温が高い場合と比較して高圧バッテリ110が発熱し難く高圧バッテリ110の温度上昇が比較的緩やかであると想定される。このため、高圧バッテリ110の温度がBT2未満である場合には、
図5に示す例と同様に、最
大充電電流値を上述の最大充電電力に相当する充電電流値MC1に維持または設定する。また、高圧バッテリ110の温度がBT2以上であり、かつ、BT4未満である場合には、高圧バッテリ110への最大充電電流値として、比較的大きい値MC4を設定する。
【0114】
ステップS407において、VCM10は、気温が閾値T1よりも高く、かつ、閾値T2以下であるか否かを判定する。ここで、閾値T2は、閾値T1よりも高い値であり、高圧バッテリ110が高温になりやすい気温であるか否かを判定するための基準値である。具体的には、閾値T2は、気温が比較的高いことを判定するための基準値であり、例えば30℃程度の値を用いることができる。気温が閾値T1よりも高く、かつ、閾値T2以下である場合には、ステップS408に進む。一方、気温が閾値T2よりも高い場合には、ステップS413に進む。
【0115】
なお、ステップS408乃至S412の各処理は、
図5に示すステップS228乃至S232の各処理と同様である。
【0116】
このように、気温が比較的高い場合には、気温が比較的低い場合と比較して高圧バッテリ110が発熱しやすく高圧バッテリ110の温度上昇が比較的早いと想定される。このため、ステップS408、S410における判定基準として比較的低い値BT3、BT5を用いる。また、高圧バッテリ110の温度がBT3未満である場合には、
図5に示す例と同様に、高圧バッテリ110への最大充電電流値として、比較的小さい値MC3を設定する。また、高圧バッテリ110の温度がBT3以上であり、かつ、BT5未満である場合には、高圧バッテリ110への最大充電電流値として、比較的小さい値MC5を設定する。
【0117】
ステップS413において、VCM10は、気温が閾値T2よりも高く、かつ、閾値T3以下であるか否かを判定する。ここで、閾値T3は、閾値T2よりも高い値であり、高圧バッテリ110が高温になりやすい気温であるか否かを判定するための基準値である。具体的には、閾値T3は、気温が高いことを判定するための基準値であり、例えば35℃程度の値を用いることができる。
【0118】
気温が閾値T2よりも高く、かつ、閾値T3以下である場合には、ステップS402乃至S406、S408乃至S412の各処理と略同様の処理を行うが、図示を省略する。なお、ステップS413以降の各処理は、ステップS408乃至S412の各処理で用いた判定条件よりも厳しい条件で行うようにする。
【0119】
また、気温が閾値T3よりも高い場合には、ステップS401、S407の各処理と略同様の判定処理を行う。この場合の判定処理では、閾値としてT3よりも高い値T4を用いるようにする。
【0120】
このように、ステップS413以降の処理として、ステップS401乃至S406、S407乃至S412の各処理と略同様の処理を1回、または、複数回行う。
【0121】
このように、気温が比較的高い場合には、高圧バッテリ110がさらに発熱しやすく高圧バッテリ110の温度上昇も早いと想定される。このため、ステップS408、S410の処理と同様の処理における判定基準としてさらに低い値を用いる。また、高圧バッテリ110への最大充電電流値として、ステップS403、S405、S409、S411の各処理よりもさらに小さい値を設定する。
【0122】
[冷却システムの稼働状態を考慮した充電制御例]
次に、冷却システムの稼働状態を考慮して充電電流値を制御する例を示す。具体的には、高圧バッテリ110の温度が上がり易い条件となっている場合、例えば冷却システムが稼働していない状態では、車両が停止時の充電または走行時の充電において、高圧バッテリ110が高温になりやすい。そこで、そのような環境や条件となっている場合には、高圧バッテリ110の充電量を確保するため、高圧バッテリ110が高温になるのに応じて最大充電電流値をさらに制限する設定とする。
【0123】
図12は、VCM10による高圧バッテリ110の充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図12に示す処理は、
図5に示す処理の一部を変形した例であり、
図5に示す処理と共通する部分については、その説明の一部を省略する。
【0124】
ステップS501において、VCM10は、車両の冷却システムが稼働可能か否かを判定する。車両の冷却システムが稼働可能である場合には、ステップS502に進む。一方、車両の冷却システムが全て稼働でない場合には、ステップS507に進む。
【0125】
ここで、車両の冷却システムは、AC30である。AC30は、VCM10の制御に基づいて、車室内の冷却と車室以外の各部とに冷媒を振り分けて流している。なお、車両の冷却システムが稼働可能でない場合は、例えば、AC30が故障しているような場合や、冷却システムが稼働できない環境に車両が存在する場合を意味する。例えば、-10度程度の環境では、冷媒が凍結してしまい使用できないおそれがあるため、車両の冷却システムが稼働できない状態となる。
【0126】
また、車両の冷却システムの稼働が制限される場合は、AC30は稼働可能であるが、何らかの理由により高圧バッテリ110への冷媒の供給が制限される場合を意味する。例えば、車室内が高温となり、車室内を優先的に冷却する必要がある場合には、車室内に優先的に冷媒を供給する必要があるため、冷却システムとして高圧バッテリ110への冷媒の供給が制限される。また、外気温が低く、氷点下となっている環境では、AC30の部品が適切に稼働しないことも想定される。このような場合には、冷却システムとして高圧バッテリ110への冷媒の供給が制限される。
【0127】
なお、ステップS502乃至S506の各処理は、
図5に示すステップS222乃至S226の各処理と同様である。
【0128】
このように、車両の冷却システムが稼働可能である場合、すなわち、高圧バッテリ110が高温になりにくい環境である場合には、車両の冷却システムが稼働可能でない場合と比較して高圧バッテリ110が発熱し難く高圧バッテリ110の温度上昇が比較的緩やかであると想定される。このため、高圧バッテリ110の温度がBT2未満である場合には、
図5に示す例と同様に、最大充電電流値を上述の最大充電電力に相当する充電電流値MC1に維持または設定する。また、高圧バッテリ110の温度がBT2以上であり、かつ、BT4未満である場合には、高圧バッテリ110への最大充電電流値として、比較的大きい値MC4を設定する。
【0129】
ステップS507において、VCM10は、車両の冷却システムの稼働が制限中であるか否かを判定する。車両の冷却システムの稼働が制限中である場合には、ステップS508に進む。一方、車両の冷却システムが稼働可能ではなく、車両の冷却システムの稼働が制限中でもない場合、すなわち車両の冷却システムが稼働不可能である場合には、ステップS513に進む。
【0130】
なお、ステップS508乃至S512の各処理は、
図5に示すステップS228乃至S232の各処理と同様である。
【0131】
このように、車両の冷却システムの稼働が制限中である場合には、車両の冷却システムが全て稼働可能である場合と比較して高圧バッテリ110が発熱しやすく高圧バッテリ110の温度上昇が比較的早いと想定される。このため、ステップS508、S510における判定基準として比較的高い値BT3、BT5を用いる。また、高圧バッテリ110の温度がBT3未満である場合には、
図5と同様に、高圧バッテリ110への最大充電電流値として、比較的小さい値MC3を設定する。また、高圧バッテリ110の温度がBT3以上であり、かつ、BT5未満である場合には、高圧バッテリ110への最大充電電流値として、比較的小さい値MC5を設定する。
【0132】
ステップS513において、VCM10は、高圧バッテリ110の温度がBT4未満であるか否かを判定する。高圧バッテリ110の温度がBT4未満である場合には、ステップS514に進む。一方、高圧バッテリ110の温度がBT4以上である場合には、ステップS515に進む。
【0133】
ステップS514において、VCM10は、高圧バッテリ110への最大充電電流値としてMC5を設定する。
【0134】
ステップS515において、VCM10は、高圧バッテリ110の充電電流値0を設定する。
【0135】
このように、車両の冷却システムが稼働不可能である場合には、高圧バッテリ110がさらに発熱しやすく高圧バッテリ110の温度上昇も早いと想定される。このため、ステップS513の処理における判定基準として比較的低い値BT4を用いる。これにより、高圧バッテリ110の充電電流値0を早めに設定することができる。このため、例えば、車両の走行中における発熱により電池温度が上昇するような環境でも走行中の制限を回避することができる。
【0136】
なお、車両の冷却システムが稼働している状態で想定される電池温度上昇速度より早いと判定できる場合には、当初想定よりも低い電池温度を判定基準として設定するようにしてもよく、当初想定よりも低い発熱量となるように制御するようにしてもよい。
【0137】
[冷却システムの稼働状態を考慮した充電制御の変形例]
図12では、冷却システムの稼働状態の判定処理後に、2つの電池温度の判定基準を用いて最大充電電流値を設定する例を示した。ただし、冷却システムの稼働状態の判定処理後に、3以上の電池温度の判定基準を用いて最大充電電流値を設定するようにしてもよい。そこで、
図13では、冷却システムの稼働制限中の判定処理後に、3以上の電池温度の判定基準を用いて最大充電電流値を設定する例を示す。
【0138】
図13は、VCM10による高圧バッテリ110の充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図13に示す処理は、
図12に示す処理の一部を変形した例であり、
図12に示す処理と共通する部分については、その説明の一部を省略する。
【0139】
ステップS521乃至S526の各処理は、
図12に示すステップS501、S513乃至S515の各処理に対応する。ただし、2つの電池温度の判定基準(BT2、BT3)を用いて最大充電電流値(MC1、MC5)を設定する点が異なる。
【0140】
ステップS527乃至S536の各処理は、
図12に示すステップS507乃至S512の各処理に対応する。ただし、3以上の電池温度の判定基準(BT2、BT4、BT6、…、BT12、BT13)を用いて最大充電電流値(MC1、MC1B、MC1C、…、MC12)を設定する点が異なる。
【0141】
ステップS537乃至S545の各処理は、
図12に示すステップS502乃至S506の各処理に対応する。ただし、3以上の電池温度の判定基準(BT2、BT4、BT6、…、BT12、BT13)を用いて最大充電電流値(MC1、MC1A、MC1B、…、MC12)を設定する点が異なる。
【0142】
このように、車両の冷却システムが稼働制限中である場合には、高圧バッテリ110がさらに発熱しやすく高圧バッテリ110の温度上昇も早いと想定される。このため、ステップS530、S532の設定値として、ステップS539、S541の設定値よりも低い値MC1B、MC1Cを用いる。これにより、高圧バッテリ110の温度を早めに低く設定することができる。このため、例えば、車両の走行中における発熱により電池温度が上昇するような環境でも走行中の制限を回避することができる。
【0143】
[冷却システムの稼働状態を考慮した充電制御の変形例]
図12、
図13では、冷却システムが稼働制限中であるか否かを判定する判定処理を実行する例を示した。ただし、冷却システムが稼働制限中であるか否かを判定する判定処理を省略するようにしてもよい。そこで、
図14では、冷却システムが稼働制限中であるか否かを判定する判定処理を省略する例を示す。
【0144】
図14は、VCM10による高圧バッテリ110の充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図14に示す処理は、
図12に示す処理の一部を変形した例であり、
図12に示す処理と共通する部分については、その説明の一部を省略する。
【0145】
ステップS551乃至S560の各処理は、
図12に示すステップS501乃至S506の各処理に対応する。ただし、3以上の電池温度の判定基準(BT2、BT4、BT6、…、BT12、BT13)を用いて最大充電電流値(MC1、MC1A、MC1B、…、MC12)を設定する点が異なる。
【0146】
ステップS561乃至S565の各処理は、
図12に示すステップS513乃至S515の各処理に対応する。ただし、2つの電池温度の判定基準(BT2、BT3)を用いて最大充電電流値(MC1、MC5)を設定する点が異なる。
【0147】
このように、車両の冷却システムが稼働可能でない場合には、高圧バッテリ110がさらに発熱しやすく高圧バッテリ110の温度上昇も早いと想定される。このため、冷却システムが稼働制限中であるか否かを判定する判定処理を省略し、車両の冷却システムが稼働可能でない場合の電池温度の判定基準を比較的低い値(BT2、BT3)とする。これにより、高圧バッテリ110の温度を早めに低く設定することができる。このため、例えば、車両の走行中における発熱により電池温度が上昇するような環境でも走行中の制限を回避することができる。
【0148】
[熱に関する情報を用いた他の充電制御例]
図4乃至
図14では、高圧バッテリ110の熱に関する情報として、高圧バッテリ110の温度、高圧バッテリ110のSOH、外気温、車両の冷却システムの稼働状態を用いて充電電流値を制御する例を示した。ただし、高圧バッテリ110の熱に関する情報として、他の情報を用いて充電電流値を制御することも可能である。そこで、
図15、
図16では、他の情報を用いて充電電流値を制御する例を示す。
【0149】
[発熱量を用いた充電制御例]
図15では、高圧バッテリ110の熱に関する情報として、高圧バッテリ110の発熱量を用いて充電電流値を制御する例を示す。
【0150】
図15は、VCM10による高圧バッテリ110の充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図15に示す処理は、
図4に示す処理の一部を変形した例であり、
図4に示す処理と共通する部分については、その説明の一部を省略する。具体的には、
図15に示すステップS602、S604、S606、S608、S610、S611乃至S614は、
図4に示すステップS202、S204、S206、S208、S210、S211乃至S214に対応するため、その説明を省略する。
【0151】
また、
図15に示す閾値A1乃至A5は、最大充電電流値を設定する際に用いられる基準値である。例えば、A1は400(J)程度の値とし、A2は800(J)程度の値とし、A3は1200(J)程度の値とし、A4は1500(J)程度の値とし、A5は2000(J)程度の値とすることができる。
【0152】
ステップS601において、VCM10は、高圧バッテリ110の発熱量がA1以下であるか否かを判定する。なお、高圧バッテリ110の発熱量[W]は以下の式を用いて求めることができる。
発熱量[W]=高圧バッテリ110の内部抵抗[Ω]×電流[I]2
【0153】
高圧バッテリ110の発熱量がA1以下である場合には、ステップS602に進む。一方、高圧バッテリ110の発熱量がA1よりも大きい場合には、ステップS203に進む。
【0154】
ステップS603において、VCM10は、高圧バッテリ110の発熱量がA1よりも大きく、かつ、A2以下であるか否かを判定する。高圧バッテリ110の発熱量がA1よりも大きく、かつ、A2以下である場合には、ステップS604に進む。一方、高圧バッテリ110の発熱量がA2よりも大きい場合には、ステップS605に進む。
【0155】
ステップS605において、VCM10は、高圧バッテリ110の発熱量がA2よりも大きく、かつ、A3以下であるか否かを判定する。高圧バッテリ110の発熱量がA2よりも大きく、かつ、A3以下である場合には、ステップS606に進む。一方、高圧バッテリ110の発熱量がA3よりも大きい場合には、ステップS607に進む。
【0156】
ステップS607において、VCM10は、高圧バッテリ110の発熱量がA3よりも大きく、かつ、A4以下であるか否かを判定する。高圧バッテリ110の発熱量がA3よりも大きく、かつ、A4以下である場合には、ステップS608に進む。一方、高圧バッテリ110の発熱量がA4よりも大きい場合には、ステップS609に進む。
【0157】
ステップS609において、VCM10は、高圧バッテリ110の発熱量がA4よりも大きく、かつ、A5以下であるか否かを判定する。高圧バッテリ110の発熱量がA4よりも大きく、かつ、A5以下である場合には、ステップS610に進む。
【0158】
ステップS609において、高圧バッテリ110の発熱量がA5よりも大きい場合には、図示は省略するが、ステップS601乃至S610に示す各処理と同様に、高圧バッテリ110の発熱量と最大充電電流値との関係例に基づく処理が繰り返し行われる。
【0159】
なお、ステップS614において、高圧バッテリ110の温度が所定値BT0以下であるか否かを判定する代わりに、高圧バッテリ110の発熱量が所定値A0以下であるか否かを判定するようにしてもよい。この場合に用いられる所定値A0として、例えば、A1未満の値を用いることができる。例えば、所定値A0として、A1からヒステリシス分の値を減算した値を設定することができる。
【0160】
このように、
図15に示す例では、高圧バッテリ110の発熱量に応じた適切な充電電流値を設定することができる。なお、
図5乃至
図14で示したように、高圧バッテリ110の温度に応じた充電電流値を各種条件、例えば、SOH、外気温、車両の冷却システムの稼働状態に適応できる電流値とすることも可能である。このように、本実施形態によれば、各種条件に応じた適切な充電電流制限を設定することができる。
【0161】
また、
図15に示す例では、高圧バッテリ110の発熱量と最大充電電流値との関係例に基づく処理を行うため、VCM10の処理負荷を軽減することができ、制御実装を容易とすることができる。
【0162】
[抜熱量を用いた充電制御例]
図15では、高圧バッテリ110の熱に関する情報として、高圧バッテリ110の発熱量を用いて充電電流値を制御する例を示した。ここで、高圧バッテリ110の抜熱量よりも発熱量が大きい場合には、高圧バッテリ110の温度が上昇してしまうことになる。そこで、高圧バッテリ110の発熱量をどうように冷却するかを計算して適切に制御することが重要となる。そこで、
図16では、高圧バッテリ110の熱に関する情報として、高圧バッテリ110の抜熱量を用いて充電電流値を制御する例を示す。
【0163】
図16は、VCM10による高圧バッテリ110の充電制御処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、
図16に示す処理は、
図15に示す処理の一部を変形した例であり、
図15に示す処理と共通する部分については、その説明の一部を省略する。
【0164】
具体的には、
図15に示すステップS601、S603、S605、S607、S609の判定処理では、発熱量を用いて判定を行うのに対し、
図16に示すステップS621、S623、S625、S627、S629の判定処理では、抜熱量を用いて判定を行う点が異なる。
【0165】
なお、高圧バッテリ110の抜熱量[W]は、高圧バッテリ110の温度と、AC30から供給される冷媒温度との関係に基づいて求めることができる。例えば、高圧バッテリ110の抜熱量[W]は、以下の式を用いて求めることができる。
抜熱量[W]=(高圧バッテリ110の温度[℃]-冷媒温度[℃])÷高圧バッテリ110の熱抵抗[K/W]
【0166】
例えば、高圧バッテリ110の温度が55℃で、冷媒温度が5℃の場合には、高圧バッテリ110の温度[℃]-冷媒温度[℃]=50℃となる。この場合に、高圧バッテリ110の熱抵抗が0.05K/Wだとすると、抜熱量[W]は1000Wとなる。例えば、高圧バッテリ110の発熱量が1562.5Wであり、抜熱量が1000Wの場合には、562.5W分の熱量で高圧バッテリ110の温度が上昇する。このように、電池温度が上昇すると、その分だけ「高圧バッテリ110の温度[℃]-冷媒温度[℃]」の値が大きくなり、抜熱量も増加する。この場合には、抜熱量と発熱量がバランスするところまで電池温度が上昇することになる。
【0167】
また、
図16に示す閾値B1乃至B5は、最大充電電流値を設定する際に用いられる基準値である。例えば、B1は2000(J)程度の値とし、B2は1500(J)程度の値とし、B3は1200(J)程度の値とし、B4は800(J)程度の値とし、B5は400(J)程度の値とすることができる。
【0168】
ステップS629において、高圧バッテリ110の発熱量がB5よりも小さい場合には、図示は省略するが、ステップS621乃至S630に示す各処理と同様に、高圧バッテリ110の抜熱量と最大充電電流値との関係例に基づく処理が繰り返し行われる。
【0169】
なお、ステップS634において、高圧バッテリ110の温度が所定値BT0以下であるか否かを判定する代わりに、高圧バッテリ110の抜熱量が所定値B0以上であるか否かを判定するようにしてもよい。この場合に用いられる所定値B0として、例えば、B1よりも大きい値を用いることができる。例えば、その所定値B0として、B1からヒステリシス分の値を加算した値を設定することができる。
【0170】
このように、
図16に示す例では、高圧バッテリ110の抜熱量に応じた適切な充電電流値を設定することができる。なお、
図5乃至
図14で示したように、高圧バッテリ110の温度に応じた充電電流値を各種条件、例えば、SOH、外気温、車両の冷却システムの稼働状態に適応できる電流値とすることも可能である。このように、本実施形態によれば、各種条件に応じた適切な充電電流制限を設定することができる。
【0171】
また、
図16に示す例では、高圧バッテリ110の抜熱量と最大充電電流値との関係例に基づく処理を行うため、VCM10の処理負荷を軽減することができ、制御実装を容易とすることができる。
【0172】
図4乃至
図16に示す判定基準や最大充電電流値については、適宜変更可能であり、
図4乃至
図16に示す各条件を組み合わせて用いることも可能である。この場合に、例えば、最大充電電流値を設定するための異なる複数の条件が同時に成立した場合には、成立した条件に対応する複数の最大充電電流値のうちから、制限が最も厳しい条件に対応する最大充電電流値を設定することが好ましい。
【0173】
また、
図15に示す例では、発熱量を判定基準として用いる例を示した。この発熱量は、高圧バッテリ110の内部抵抗と電流との関係に基づいて求めることができるため、
図15に示す例は、電流を判定基準として用いる例としても把握できる。また、充電時における電力と電圧が分かれば、充電時における電流を把握することもできる。このため、
図15に示す例は、電圧、例えば総電圧またはセル電圧を判定基準として用いる例としても把握できる。
【0174】
このように、本実施形態では、単純に、閾値温度を超えたら充電停止、閾値温度を下回ると充電再開とする制御ではなく、所定の電池温度範囲(例えば、第n閾値温度~走行出力制限温度)をキープするように充電電流値を制御することができる。ただし、本実施形態では、電池温度が所定温度以上となった場合には通電を禁止して充電を停止する。なお、電池温度が低下した場合、二次電池の発熱量が低下した場合、冷却性能が向上した場合等には、通電電流を再開して充電を行うことができる。
【0175】
以上のように、本実施形態によれば、電池温度が低い低温領域においては、充電電流を外部充電器の設計などに応じて定まる定格充電電力相当の充電電流値MC1に設定して高い充電電力を確保することができる。一方、電池温度が高くなると、二次電池の発熱量及び電池温度を所定値に制御するように最大充電電流を制限する。これにより、充電終了時の電池温度が過度に上昇することを抑制し、放電電力制限を受けずに走行できる距離を大きくすることができる。
【0176】
すなわち、電池温度が高くなった場合にリアルタイム電力制限を実施すると、充電中に電流値が一定とならないため、発熱量を一定に制御することができず、高圧バッテリ110の発熱量を適切に制御できない。これに対して、電池温度が高くなった場合にリアルタイム電流制限を実施することにより、充電中の電流値を一定とすることができ、発熱量を一定に制御することができる。このように、高圧バッテリ110の発熱量の適切な制御により、高圧バッテリ110の充電を適切に行うことができ、走行できる距離を大きくすることができる。
【0177】
このように、VCM10は、高圧バッテリ110の温度と電流と総電圧とセル電圧と充電状態と劣化状態と冷却状態とを取得する。そして、VCM10は、それらの温度と電流と総電圧とセル電圧と充電状態と劣化状態とに基づいて、高圧バッテリ110の充電時における通電電流を制御する。この場合に、VCM10は、充電電流値を所定値に制御し、電池温度を所定値に制御するとともに、高圧バッテリ110の発熱量を所定値に制御する。また、VCM10は、充電電流値を所定値に制御するために、充電電力を可変として制御する。また、VCM10は、電池温度が所定値を超えた場合には、さらに電流値や発熱量を変更するように制御する。
【0178】
また、VCM10は、高圧バッテリ110の温度と電流と総電圧とセル電圧と充電状態と冷却状態との少なくとも1つ、または、それらのうちの複数の条件に基づいて、高圧バッテリ110の発熱
量を所定値に制御する。この場合に、VCM10は、発熱量あるいは電池温度を所定値に制御するために予め設定した定数マップ(
図3B参照)を用いて、高圧バッテリ110の発熱
量を所定値に制御することができる。
【0179】
また、VCM10は、高圧バッテリ110の冷却システムの稼働状況により生じる冷却性能の違いに応じて、高圧バッテリ110の温度と電流と総電圧とセル電圧と充電状態とのうちの少なくとも1つ、または、それらのうちの複数の条件に基づいて、充電電流値を所定値に制御する。この場合に、VCM10は、高圧バッテリ110の劣化等の高圧バッテリ110の発熱条件の違いや、高圧バッテリ110の冷却システムの稼働状況等に応じて目標とする所定温度を変更し、予め設定した定数マップ(
図3B参照)を用いて、高圧バッテリ110の温度を所定値に制御することができる。これにより、電池温度を所定値に制御するとともに、高圧バッテリ110の発熱量を所定値に制御することができる。
【0180】
なお、高圧バッテリ110の冷却システムの冷却性能の違いは、外部環境の温度や、高圧バッテリ110の抜熱量の違いにより生じる。そこで、VCM10は、高圧バッテリ110の冷却システムの稼働状況や外部環境の温度等に基づいて、充電電流値を所定値に制御する。これにより、電池温度を所定値に制御するとともに、高圧バッテリ110の発熱量を所定値に制御することができる。
【0181】
[本実施形態の構成及び効果]
本実施形態に係る二次電池の充電制御方法は、高圧バッテリ110(二次電池の一例)の充電を制御する充電制御方法である。この充電制御方法は、高圧バッテリ110の熱に関する情報を取得する取得ステップと、高圧バッテリ110の熱に関する情報に基づいて、高圧バッテリ110の発熱量を所定値に制御するように高圧バッテリ110の充電電流値を設定する制御ステップ(
図4乃至
図16に示す各処理)と、を備える。
【0182】
このような充電制御方法によれば、高圧バッテリ110の発熱量を考慮した適切な充電電流値を設定することができ、充電中の高圧バッテリ110の温度上昇を抑制することができる。これにより、高圧バッテリ110の温度上昇を抑制しつつ充電を継続して実行することができる。
【0183】
また、本実施形態に係る二次電池の充電制御方法において、制御ステップでは、高圧バッテリ110の充電電流値が一定となるように、高圧バッテリ110の充電電力を可変とする。
【0184】
このような充電制御方法によれば、高圧バッテリ110の発熱量を一定に調節するための具体的な制御構成が実現されることとなる。より具体的には、高圧バッテリ110の発熱量に直接的に関連する充電電流値を一定値に設定する。特に少なくとも各温度領域であるBT1~BT2、BT2~BT3・・・BT12~BT13のそれぞれにおいて一定値(MC1、MC2、・・・MC12)に設定することにより、発熱量のばらつきを抑えつつ充電を実行可能な好適な制御構成が実現されることとなる。
【0185】
また、本実施形態に係る二次電池の充電制御方法において、取得ステップでは、高圧バッテリ110の熱に関する情報を所定タイミングで取得する。例えば、
図4を参照して説明したように、VCM10は、充電制御に用いる各種情報(高圧バッテリ110の熱に関する情報の一例)を所定タイミングで取得する。この所定タイミングは、例えば、高圧バッテリ110の充電が開始された後に、所定間隔で繰り返し実行される処理手順(
図4乃至
図16に示す処理手順)の開始タイミングとすることができる。なお、他の定期的または不定期なタイミングを所定タイミングとしてもよい。また、制御ステップでは、高圧バッテリ110の熱に関する情報に所定の変化を検知した場合に、その変化に基づいて高圧バッテリ110の充電電流値を変更する。ここで、所定の変化は、例えば、
図4乃至
図16に示す各判定処理において検知される。例えば、
図4に示す例では、BT2未満であった電池温度が、BT2以上となった場合には(ステップS201のNo)、電池温度(高圧バッテリ110の熱に関する情報の一例)に所定の変化があったと検知される。この場合には、その変化に基づいて、高圧バッテリ110の充電電流値が変更される。例えば、電池温度がBT2以上、かつ、BT3未満となった場合には、高圧バッテリ110の充電電流値がMC2からMC3に変更される。
【0186】
このような充電制御方法によれば、高圧バッテリ110の熱に関する情報に所定の変化が生じた場合にその変化に基づいて充電電流値を変更するため、高圧バッテリ110の発熱量を考慮した迅速な充電電流値の設定が可能となる。
【0187】
また、本実施形態に係る二次電池の充電制御方法では、高圧バッテリ110の熱に関する情報を、高圧バッテリ110の温度と、高圧バッテリ110の発熱量と、高圧バッテリ110の抜熱量とのうちの少なくとも1つとすることができる。
【0188】
このような充電制御方法によれば、高圧バッテリ110の熱に関する情報を、高圧バッテリ110の温度、高圧バッテリ110の発熱量、及び高圧バッテリ110の抜熱量といった比較的容易に検出又は演算可能なパラメータにより定量化することができる。このため、高圧バッテリ110の発熱を考慮してより適切に充電電流値を設定するための好適な制御構成が実現される。
【0189】
また、本実施形態に係る二次電池の充電制御方法では、高圧バッテリ110の熱に関する情報に、高圧バッテリ110の外部環境または高圧バッテリ110の劣化状態を含めることができる。また、制御ステップ(
図5乃至
図14に示す各処理)では、高圧バッテリ110の温度と、高圧バッテリ110の発熱量と、高圧バッテリ110の抜熱量とのうちの少なくとも1つとともに、高圧バッテリ110の外部環境または高圧バッテリ110の劣化状態を用いて、高圧バッテリ110の充電電流値を設定する。
【0190】
このような充電制御方法によれば、高圧バッテリ110の外部環境または高圧バッテリ110の劣化状態を用いて、高圧バッテリ110の発熱量を考慮した適切な充電電流値を設定することができる。
【0191】
また、本実施形態に係る二次電池の充電制御方法において、制御ステップでは、高圧バッテリ110の外部環境または高圧バッテリ110の劣化状態に基づいて、高圧バッテリ110の充電電流値を設定する際の判定基準を変更する。
【0192】
このような充電制御方法によれば、高圧バッテリ110の外部環境等に基づいて、高圧バッテリ110の充電電流値を設定する際の判定基準を変更するため、高圧バッテリ110の発熱量を考慮した適切な充電電流値を設定することができる。
【0193】
また、本実施形態に係る二次電池の充電制御方法では、高圧バッテリ110の外部環境を、高圧バッテリ110の外部温度、または、高圧バッテリ110の冷却システムの稼働状態とすることができる。
【0194】
このような充電制御方法によれば、高圧バッテリ110の外部温度、または、高圧バッテリ110の冷却システムの稼働状態に基づいて、高圧バッテリ110の発熱量を考慮した適切な充電電流値を設定することができる。
【0195】
また、本実施形態に係る二次電池の制御システム1(二次電池の充電制御システムの一例)は、高圧バッテリ110(二次電池の一例)と、高圧バッテリ110の充電を制御するVCM10(コントローラの一例)とを備える充電制御システムである。VCM10は、高圧バッテリ110の熱に関する情報を取得し、高圧バッテリ110の熱に関する情報に基づいて、高圧バッテリ110の発熱量を所定値に制御するように高圧バッテリ110の充電電流値を設定する。
【0196】
このような二次電池の制御システム1によれば、高圧バッテリ110の発熱量を考慮した適切な充電電流値を設定することができ、充電中の高圧バッテリ110の温度上昇を抑制することができる。これにより、高圧バッテリ110の温度上昇を抑制しつつ充電を継続して実行することができる。
【0197】
なお、本実施形態で示した各処理は、各処理手順をコンピュータに実行させるためのプログラムに基づいて実行されるものである。このため、本実施形態は、それらの各処理を実行する機能を実現するプログラム、そのプログラムを記憶する記録媒体の実施形態としても把握することができる。例えば、車両に新機能を追加するためのアップデート作業により、そのプログラムを車両の記憶装置に記憶させることができる。これにより、そのアップデートされた車両に本実施形態で示した各処理を実施させることが可能となる。なお、そのアップデートは、例えば、車両の定期点検時等に行うことができる。また、ワイヤレス通信によりそのプログラムをアップデートするようにしてもよい。
【0198】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。