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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】電子部品、及び電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/06 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
H01F17/06 D
H01F17/06 F
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023502197
(86)(22)【出願日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2022003067
(87)【国際公開番号】W WO2022181181
(87)【国際公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2021030983
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100087985
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 宏司
(72)【発明者】
【氏名】三宅 敢
(72)【発明者】
【氏名】辻 博美
(72)【発明者】
【氏名】小田原 充
【審査官】後藤 嘉宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-088289(JP,A)
【文献】特開2006-174223(JP,A)
【文献】特開平05-190367(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
焼結体の磁性材からなる平板状の複数の磁性薄帯を有し、複数の前記磁性薄帯が、前記磁性薄帯の主面に対して直交する方向である積層方向に積層された素体と、
前記素体の内部で、前記主面に沿って延びている配線と、を備え
「M」及び「N」を正の整数とし、且つ「M」及び「N」の少なくともいずれか一方を2以上とし、複数の前記磁性薄帯のうち、前記積層方向において前記配線に最も近い前記磁性薄帯を第1磁性薄帯としたとき、
複数の前記磁性薄帯は、前記積層方向について前記第1磁性薄帯と同一の位置において、前記積層方向に直交する第1基準軸に沿う方向に「M」個並んでおり、前記積層方向及び前記第1基準軸に直交する第2基準軸に沿う方向に「N」個並んでおり、
前記素体は、前記第1基準軸に沿う方向に隣り合う前記磁性薄帯の間、又は前記第2基準軸に沿う方向に隣り合う前記磁性薄帯の間に位置する焼結体の非磁性材からなる非磁性部を有する
電子部品。
【請求項2】
複数の前記磁性薄帯は、前記積層方向のそれぞれの位置において、前記第1基準軸に沿う方向に「M」個並んでおり、前記第2基準軸に沿う方向に「N」個並んでいる
請求項1に記載の電子部品。
【請求項3】
前記磁性薄帯は、Fe、Ni、Fe元素及びSi元素を含む合金、Fe元素及びNi元素を含む合金、Fe元素及びCo元素を含む合金のうち、少なくとも1種類を含む
請求項1又は請求項2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記磁性薄帯では、複数の金属磁性粒子が絶縁性物質を介して結合している
請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記絶縁性物質は、O元素を含む
請求項4に記載の電子部品。
【請求項6】
前記絶縁性物質は、Si元素を含む
請求項4又は請求項5に記載の電子部品。
【請求項7】
前記絶縁性物質は、Cr元素を含む
請求項4~請求項6のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項8】
前記配線の延びる軸を中心軸とし、前記中心軸に直交する断面視で前記主面に沿う軸を第1軸とし、前記断面視で前記主面に直交する軸を第2軸とし、前記第1軸に沿う2つの方向のうちのいずれか一方を第1正方向としたとき、
前記断面視において、
前記配線の前記第1正方向の端を第1配線端とし、
前記配線に対して前記第2軸に沿う方向に積層された前記磁性薄帯のうち、前記第1配線端からの前記第2軸に沿う方向の距離が最も短い前記磁性薄帯を第2磁性薄帯とし、
前記第2磁性薄帯における前記第1軸に沿う方向の両端を除く範囲を第1範囲としたとき、
前記第1配線端を通り前記第2軸に沿う方向に延びる仮想直線を引いたときに、前記仮想直線は、前記第2磁性薄帯の前記第1範囲内を通る
請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の電子部品。
【請求項9】
前記第2磁性薄帯の前記積層方向の寸法は、前記第2磁性薄帯に対して前記積層方向に並ぶ複数の前記磁性薄帯の前記積層方向の寸法の平均値に対して、80%以上120%以下の寸法である
請求項8に記載の電子部品。
【請求項10】
焼結体の磁性材からなる平板状の複数の磁性薄帯を有し、複数の前記磁性薄帯が、前記磁性薄帯の主面に対して直交する方向である積層方向に積層された素体と、
前記素体の内部で、前記主面に沿って延びている配線と、を備え
前記素体は、複数の複数磁性薄帯の前記積層方向に隣り合う前記磁性薄帯の間に位置する焼結体の非磁性材からなる層間非磁性部を有する
電子部品。
【請求項11】
前記素体は、前記層間非磁性部を複数有し、
1つの前記層間非磁性部の前記積層方向の寸法は、複数の前記層間非磁性部の前記積層方向の寸法の平均値に対して、80%以上120%以下の寸法である
請求項10に記載の電子部品。
【請求項12】
非磁性材を含む非磁性ペーストにより非磁性層を形成し、前記非磁性層上に磁性材を含む磁性ペーストにより磁性層を形成し、前記磁性層を溝で分割し、前記溝に非磁性材を含む非磁性ペーストを充填することにより、分割磁性層を形成し、
導電材料を含む導電ペーストにより形成された配線パターンの上方に、前記分割磁性層を配置して、積層体を形成し、
前記積層体を焼成することにより、前記配線パターンを焼結体の配線に、前記非磁性層を焼結体の層間非磁性部に、前記磁性層を焼結体の磁性薄帯にする
電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記分割磁性層をシート状に形成することにより第1シートを準備し、
シート状の基材上に前記配線パターンを形成することにより第2シートを準備し、
前記第1シート及び前記第2シートを圧着することにより前記積層体を形成する
請求項12に記載の電子部品の製造方法。
【請求項14】
前記配線パターン上に、前記分割磁性層を形成することにより前記積層体を形成する
請求項12に記載の電子部品の製造方法。
【請求項15】
基材上に前記配線パターンを形成し、前記配線パターンが形成されない前記基材上に、磁性材又は非磁性材の少なくともいずれかを含むネガペーストを充填することにより、ネガパターンを形成する
請求項12~請求項14のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項16】
前記積層体を形成する際、前記分割磁性層を複数積層する
請求項12~請求項15のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
【請求項17】
前記積層体を形成する際、前記配線パターン及び前記分割磁性層によって構成される個片部を複数個行列状に配置し、
前記積層体を前記個片部ごとに分割する
請求項12~請求項16のいずれか1項に記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品、及び電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の電子部品であるインダクタ部品は、素体と、素体の内部で延びている配線と、を備えている。素体は、無機フィラー及び樹脂からなっている。例えば、磁性コンポジット体については、無機フィラーの材質は、磁性材である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-192920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電子部品は、素体における無機フィラーの充填率を高めることによって、電子部品の各種特性の向上が図られる。しかしながら、特許文献1に記載の電子部品のように、コンポジット体をビルドアップ工法で形成する場合や、一般的なコンポジット体のように、コンポジット体をモールド工法で形成する場合は、プレス加工等でコンポジット体に応力が加わる。この応力による磁性材の歪みが、磁性材の十分な特性の発揮を妨げ、磁性材の選択自由度を低下させている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、焼結体の磁性材からなる平板状の複数の磁性薄帯を有し、複数の前記磁性薄帯が、前記磁性薄帯の主面に対して直交する方向である積層方向に積層された素体と、前記素体の内部で、前記主面に沿って延びている配線と、を備える電子部品である。
【0006】
上記課題を解決するため、本開示の一態様は、非磁性材を含む非磁性ペーストにより非磁性層を形成し、前記非磁性層上に磁性材を含む磁性ペーストにより磁性層を形成し、前記磁性層を溝で分割し、前記溝に非磁性材を含む非磁性ペーストを充填することにより、分割磁性層を形成し、導電材料を含む導電ペーストにより形成された配線パターンの上方に、前記分割磁性層を配置して、積層体を形成し、前記積層体を焼成することにより、前記配線パターンを焼結体の配線に、前記非磁性層を焼結体の層間非磁性部に、前記磁性層を焼結体の磁性薄帯にする電子部品の製造方法である。
【0007】
上記の電子部品によれば、素体は、焼結体の磁性材からなる磁性薄帯を有する。磁性薄帯として焼結体を採用することで、焼結の過程で磁性薄帯の歪みを緩和することができる。その結果、電子部品の特性向上を図ることができる。
【0008】
なお、「沿う」とは、直接接触しておらず、離れた位置にある場合も含む。例えば、「第1軸に沿う」とは、第1軸に直接接触して第1軸に沿うものだけでなく、第1軸に直接接触しておらず離れた位置で第1軸に沿うものも含む。また、「沿う」とは、実質的に平行関係にあればよく、製造誤差等によって、僅かに傾いているものも含む。
【発明の効果】
【0009】
磁性薄帯が複数積層されている電子部品において、特性向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態におけるインダクタ部品の分解斜視図。
図2】インダクタ部品の第1部分の平面図。
図3図2における3-3線に沿うインダクタ部品の断面図。
図4】実施例1における磁性薄帯の拡大断面図。
図5】実施例2における磁性薄帯の拡大断面図。
図6】比較例のインダクタ部品と実施例のインダクタ部品との電流に対するインダクタンスを示すグラフ。
図7】比較例のインダクタ部品と実施例のインダクタ部品との各パラメータを示す表。
図8】第2実施形態におけるインダクタ部品の断面図。
図9】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図10】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図11】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図12】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図13】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図14】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図15】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図16】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図17】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図18】インダクタ部品の製造方法の説明図。
図19】変更例のインダクタ部品の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、電子部品の一例として、インダクタ部品の第1実施形態について説明する。なお、図面は理解を容易にするため構成要素を拡大して示している場合がある。構成要素の寸法比率は実際のものと、又は別の図中のものと異なる場合がある。また、断面図ではハッチングを付しているが、理解を容易にするために一部の構成要素のハッチングを省略している場合がある。さらに、複数の部材のうち、一部の部材のみに符号を付している場合がある。
【0012】
(全体構成)
図1に示すように、インダクタ部品10は、素体20と、インダクタ配線30と、を備えている。素体20は、複数の磁性薄帯40と、複数の層間非磁性部50と、複数の非磁性部60と、複数の非磁性膜70を有している。
【0013】
磁性薄帯40は、平板状である。複数の磁性薄帯40は、磁性薄帯40の主面MFと直交する方向である積層方向に積層されている。なお、平板状とは、主面MFを有する薄い形状のことであるが、厚みの薄い直方体に限られず、稜線や角が曲面状であってもよく、主面MFに微小な凹凸があったり、内部に空孔があったりしてもよい。
【0014】
インダクタ配線30は、素体20の内部で主面MFに沿って直線状に延びている。なお、インダクタ配線30の延びる軸を中心軸CAとする。本実施形態では、中心軸CAの延びる向きは、四角形状の主面MFのいずれかの辺の延びる向きと一致する。
【0015】
図3に示すように、中心軸CAに直交する断面視で、主面MFに沿う軸を第1軸Xとし、主面MFに直交する軸を第2軸Zとする。なお、第1軸Xに沿う方向の一方を第1正方向X1とし、第1軸Xに沿う方向の他方を第1負方向X2とする。また、中心軸CAに沿う方向の一方を正方向Y1とし、中心軸CAに沿う方向の他方を負方向Y2とする。さらに、第2軸Zに沿う方向の一方を第2正方向Z1とし、第2軸Zに沿う方向の他方を第2負方向Z2とする。本実施形態では、積層方向は、第2軸Zに沿う方向と一致する。
【0016】
図1に示すように、インダクタ部品10は、第2軸Zに沿って順に積層された、第1部分P1と、第2部分P2と、第3部分P3と、で構成されている。3つの部分P1~P3のうち、第2軸Zに沿う第2負方向Z2の端には、第1部分P1が位置している。
【0017】
図2に示すように、第1部分P1は、第2軸Zに沿う方向から視たときに正方形状である。第1部分P1は、複数の磁性薄帯40と、複数の層間非磁性部50と、複数の非磁性部60と、複数の非磁性膜70とを有する。
【0018】
図3に示すように、中心軸CAに直交する断面視で、第1部分P1の各磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う方向に積層されている。図2に示すように、第1部分P1の各磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う方向から視たときに正方形状である。第2軸Zに沿う方向から視たときに各磁性薄帯40の各辺は、第1軸X又は中心軸CAと平行である。複数の磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法は、すべて同一の寸法である。
【0019】
磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う同一の位置において、第2軸Zに直交する第1基準軸に沿う方向に、間隔をあけて2個並んでいる。また、磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う同一の位置において、第2軸Z及び第1基準軸に直交する第2基準軸に沿う方向に、間隔をあけて2個並んでいる。なお、本実施形態では、第1基準軸は中心軸CAと一致しており、且つ第2基準軸は第1軸Xと一致している。
【0020】
磁性薄帯40は、焼結体の磁性材からなる平板状である。磁性薄帯40は、Fe、Ni、Fe元素及びSi元素を含む合金、Fe元素及びNi元素を含む合金、Fe元素及びCo元素を含む合金のうち、少なくとも1種類を含んでいる。本実施形態では、磁性薄帯40は、Fe元素及びNi元素を含む合金を含んでいる金属磁性材である。なお、Feは、金属鉄であり、Niは、金属ニッケルである。
【0021】
図3に示すように、層間非磁性部50は、第2軸Zに沿う方向に隣り合っている磁性薄帯40の間に位置している。磁性薄帯40と、層間非磁性部50とは交互に積層されており、本実施形態では、層間非磁性部50は、第2軸Zに沿う方向に隣り合っている磁性薄帯40の空間を全て埋めている。層間非磁性部50は、焼結体の非磁性材からなっている。非磁性材は、例えば、アルミナ、シリカ、結晶化ガラス、非晶質ガラスである。なお、図3では、層間非磁性部50を線で図示している。
【0022】
層間非磁性部50の第2軸Zに沿う方向の寸法は、すべて同一の寸法である。また、各層間非磁性部50の第2軸Zに沿う方向の寸法は、各磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法よりも小さい。
【0023】
図2に示すように、非磁性部60は、第2軸Zに沿う同一の位置において並ぶ磁性薄帯40の間に位置している。非磁性部60は、第2軸Zに沿う方向の同一の位置において並ぶ磁性薄帯40の間の空間を全て埋めている。上述したとおり、第2軸Zに沿う同一の位置において、磁性薄帯40は、中心軸CAに沿う方向に2つ、第1軸Xに沿う方向に2つ、合計4つ存在するので、非磁性部60は4つ存在している。非磁性部60は、非磁性材からなっている。本実施形態では、非磁性部60の材質は、層間非磁性部50と同一の材質である。すなわち、非磁性部60は、焼結体の非磁性材からなっている。
【0024】
非磁性膜70は、第1部分P1において、第1軸Xに沿う第1正方向X1の端、及び第1正方向X1とは反対方向である第1負方向X2の端に位置している。非磁性膜70は、磁性薄帯40における第1軸Xに沿う方向の両端面の全域を覆っている。また、非磁性膜70は、層間非磁性部50における第1軸Xに沿う方向の両端面の全域を覆っている。さらに、非磁性膜70は、非磁性部60における第1軸Xに沿う方向の両端面の全域を覆っている。そのため、第1部分P1における第1軸Xに沿う第1正方向X1の端面は、すべて非磁性膜70で構成されている。同様に、第1部分P1における第1軸Xに沿う第1負方向X2の端面は、すべて非磁性膜70で構成されている。非磁性膜70は、非磁性材からなっている。本実施形態では、非磁性膜70の材質は、層間非磁性部50と同一の材質である。
【0025】
図1に示すように、第1部分P1から視て、第2軸Zに沿う第2正方向Z1には、第2部分P2が位置している。第2部分P2は、第2軸Zに沿う方向から視たときに、第1部分P1と同じ正方形状である。
【0026】
第2部分P2は、インダクタ配線30と、複数の磁性薄帯40と、複数の層間非磁性部50と、複数の非磁性部60と、複数の非磁性膜70と、で構成されている。
インダクタ配線30は、第2軸Zに沿う方向から視て長方形状であり、中心軸CAに沿って直線状に延びている。インダクタ配線30の中心軸CAに沿う正方向Y1の端面は、第2部分P2の外面の一部を構成しており、素体20から露出している。同様に、インダクタ配線30の中心軸CAに沿う正方向Y1とは反対方向である負方向Y2の端面は、第2部分P2の外面の一部を構成しており、素体20から露出している。
【0027】
第2軸Zから視たときに、インダクタ配線30の正方向Y1の端面及び負方向Y2の端面は、第1軸Xと平行になっている。また、インダクタ配線30の中心軸CAは、第1軸Xに沿う方向において、第2部分P2の中心に位置している。そのため、インダクタ配線30の延びる軸である中心軸CAは、第1軸Xに沿う方向における第2部分P2の中心を通っている。インダクタ配線30の第1軸Xに沿う方向の寸法は、第2部分P2の第1軸Xに沿う方向の寸法の半分である。
【0028】
インダクタ配線30の材質は、導電性材料である。導電性材料は、例えば、Cu、Ag、Au、Al、又はこれらの元素を含む合金である。本実施形態では、インダクタ配線30の材質は、Cuである。
【0029】
図3に示すように、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線30は、長方形状である。ここで、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線30に外接するとともに、第1軸Xに沿う第1辺及び第2軸Zに沿う第2辺を有する面積が最小の仮想長方形VRを描く。本実施形態では、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線30が長方形である。また、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線30の外形の長辺は第1軸Xに沿っている。さらに、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線30の外形の短辺は第2軸Zに沿っている。そのため、仮想長方形VRは、インダクタ配線30の外形と一致する。そして、仮想長方形VRの第1辺は、仮想長方形VRの第2辺よりも長い。
【0030】
第2部分P2において、インダクタ配線30でない部分は、第1部分P1と同様に、複数の磁性薄帯40と、複数の層間非磁性部50と、複数の非磁性部60と、複数の非磁性膜70と、で構成されている。
【0031】
図3に示すように、中心軸CAに直交する断面視で、第2部分P2の各磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う方向に積層されている。図2に示すように、第2部分P2の各磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う方向から視たときに長方形状である。第2軸Zに沿う方向から視たときに各磁性薄帯40の長辺は、中心軸CAと平行である。複数の磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法は、すべて同一の寸法である。
【0032】
図1に示すように、第2部分P2において、磁性薄帯40は、インダクタ配線30から視て、第1軸Xに沿う第1正方向X1及び第1負方向X2の両側に位置している。すなわち、第2部分P2において、磁性薄帯40は、第1軸Xに沿う方向に、インダクタ配線30を挟んで2個並んでいる。また、磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う同一の位置において、中心軸CAに沿う方向に、間隔をあけて2個並んでいる。
【0033】
上述した第1部分P1と同様に、第2部分P2の層間非磁性部50は、第2軸Zに沿う方向に隣り合っている磁性薄帯40の間に位置している。すなわち、図3に示すように、磁性薄帯40及び層間非磁性部50は、第1部分P1と同様に、第2軸Zに沿う方向に交互に積層されている。
【0034】
第2部分P2の非磁性部60は、第2軸Zに沿う同一の位置において並ぶ磁性薄帯40の間に位置している。非磁性部60は、第2軸Zに沿う方向の同一の位置において並ぶ磁性薄帯40の間の空間を全て埋めている。第2部分P2の非磁性部60の位置は、第2軸Zに沿う方向から視たときに、第1部分P1の非磁性部60の一部と重複している。第2部分P2の非磁性部60は、第1部分P1の非磁性部60と連続している。なお、第2部分P2において、インダクタ配線30と磁性薄帯40との間には非磁性部60は存在していない。
【0035】
非磁性膜70は、第2部分P2において、第1軸Xに沿う第1正方向X1の端、及び第1正方向X1とは反対方向である第1負方向X2の端に位置している。第2部分P2の非磁性膜70は、第1部分P1の非磁性膜70と連続している。
【0036】
第2部分P2の第2正方向Z1には、第3部分P3が位置している。第3部分P3は、第2軸Zから視たときに、第1部分P1と同じ正方形状である。第3部分P3は、複数の磁性薄帯40と、複数の層間非磁性部50と、複数の非磁性部60と、複数の非磁性膜70で構成されている。本実施形態では、第3部分P3は、第2部分P2を挟んで第1部分P1と対称的な構造であるため、詳細な説明は省略する。このようにして、素体20は、複数の磁性薄帯40と、複数の層間非磁性部50と、複数の非磁性部60と、複数の非磁性膜70と、を含んでいる。
【0037】
(第1磁性薄帯について)
図3に示すように、複数の磁性薄帯40のうち、積層方向すなわち第2軸Zに沿う方向においてインダクタ配線30に最も近い磁性薄帯40を、第1磁性薄帯41とする。本実施形態では、第1磁性薄帯41は、第1部分P1における磁性薄帯40のうち最も第2負方向Z2に位置する磁性薄帯40と、第3部分P3における磁性薄帯40のうち最も第2正方向Z1に位置する磁性薄帯40と、である。すなわち、インダクタ配線30に最も近い磁性薄帯40である第1磁性薄帯41は、インダクタ配線30と同一の層に配置していない。そのため、第2部分P2に位置する磁性薄帯40は、第1磁性薄帯41とならない。
【0038】
複数の磁性薄帯40は、積層方向すなわち第2軸Zに沿う方向について第1磁性薄帯41と同一の位置において、第1基準軸すなわち中心軸CAに沿う方向に2個、第2基準軸すなわち第1軸Xに沿う方向に2個並んでいる。
【0039】
さらに、複数の磁性薄帯40のうち、第1部分P1の第1磁性薄帯41の第1正方向X1に積層している磁性薄帯40の位置において、複数の磁性薄帯40は、中心軸CAに沿う方向に2個、第1軸Xに沿う方向に2個並んでいる。このように、第1部分P1における複数の磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う方向のそれぞれの位置において、中心軸CAに沿う方向に2個並んでおり、第1軸Xに沿う方向に2個並んでいる。
【0040】
同様に、第3部分P3における複数の磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う方向のそれぞれの位置において、中心軸CAに沿う方向に2個並んでおり、第1軸Xに沿う方向に2個並んでいる。このように、素体20における複数の磁性薄帯40は、中心軸CAに沿う方向、第1軸Xに沿う方向、及び第2軸Zに沿う方向において、規則的に配列されている。
【0041】
(第2磁性薄帯について)
図3に示すように、中心軸CAに直交する断面視において、インダクタ配線30の第1正方向X1の端を第1配線端IP1とする。また、中心軸CAに直交する断面視において、インダクタ配線30の第1負方向X2の端を第2配線端IP2とする。
【0042】
そして、インダクタ配線30に対して、第2軸Zに沿う方向に積層された磁性薄帯40のうち、第1配線端IP1からの第2軸Zに沿う距離が最も短い磁性薄帯40を第2磁性薄帯41Aとする。なお、第2軸Zに沿う方向から視た場合に、少なくとも一部分がインダクタ配線30に重複する磁性薄帯40が、インダクタ配線30に対して第2軸Zに沿う方向に積層された磁性薄帯40である。したがって、本実施形態では、第1部分P1における磁性薄帯40及び第3部分P3における磁性薄帯40が、インダクタ配線30に対して第2軸Zに沿う方向に積層された磁性薄帯40である。一方で、第2部分P2における磁性薄帯40は、インダクタ配線30に対して第2軸Zに沿う方向に積層されていない。また、本実施形態では、第2磁性薄帯41Aは、第1磁性薄帯41のうち、第1配線端IP1の第2軸Zに沿う方向に積層されている磁性薄帯40である。そのため、第2磁性薄帯41Aは、第1部分P1における磁性薄帯40のうち最も第2負方向Z2に位置する磁性薄帯40と、第3部分P3における磁性薄帯40のうち最も第2正方向Z1に位置する磁性薄帯40と、である。
【0043】
図3に示すように、1つの磁性薄帯40において、第1正方向X1の端を第1端MP1とし、第1負方向X2の端を第2端MP2とする。このとき、1つの磁性薄帯40における第1軸Xに沿う方向の両端を除く範囲を、第1範囲AR1とする。換言すれば、1つの磁性薄帯40において、第2端MP2の第1軸Xに沿う方向の位置を示す座標を0とする。1つの磁性薄帯40において、第1軸Xに沿う第1正方向X1の第1端MP1の第1軸Xに沿う方向の位置を示す座標を1とする。このときに、第1軸Xに沿う方向の位置を示す座標が、0より大きく1より小さい範囲が第1範囲AR1である。そして、図3に示すように、第1配線端IP1を通過するとともに、第2軸Zに沿う方向に第1仮想直線VL1を引く。このとき、第1仮想直線VL1は、第2磁性薄帯41Aの第1範囲AR1内を通っている。
【0044】
また、本実施形態では、第1部分P1において、複数の磁性薄帯40が、インダクタ配線30に対して第2正方向Z1に連続して積層されている。そして、中心軸CAに直交する断面視において、第1仮想直線VL1は、第2磁性薄帯41Aから第2正方向Z1に連続して積層された複数の磁性薄帯40のうち、第2磁性薄帯41Aを含めて連続して積層された2つ以上の磁性薄帯40の第1範囲AR1内を通っている。具体的には、第1仮想直線VL1は、第1部分P1に含まれている磁性薄帯40のうち、第2磁性薄帯41Aに連続して積層されたすべての磁性薄帯40の第1範囲AR1内を通っている。
【0045】
さらに、第3部分P3において、複数の磁性薄帯40が、インダクタ配線30に対して第2負方向Z2に連続して積層されている。そして、中心軸CAに直交する断面視において、第1仮想直線VL1は、第2磁性薄帯41Aから第2負方向Z2に連続して積層された複数の磁性薄帯40のうち、第2磁性薄帯41Aを含めて連続して積層された2つ以上の磁性薄帯40の第1範囲AR1内を通っている。具体的には、第1仮想直線VL1は、第3部分P3に含まれている磁性薄帯40のうち、第2磁性薄帯41Aに連続して積層されたすべての磁性薄帯40の第1範囲AR1内を通っている。
【0046】
そして、磁性薄帯40は、すべて焼結体である。本実施形態では、上述したように、磁性材がFe元素及びNi元素を含んでいる。具体的には、例えば図4に示す実施例1では、磁性薄帯40は、複数の金属磁性体45を有している。具体的には、実施例1では、金属磁性体45は、Fe元素及びNi元素を含む合金の金属磁性粒子である。そして、金属磁性体45間の粒界には、O元素を含む酸化物である絶縁性物質46が存在している。なお、図5に示す実施例2のように、磁性薄帯40では、Fe元素及びNi元素を含む合金が完全に固溶し合って一体化していてもよい。この場合、Fe元素及びNi元素を含む合金の金属磁性体45は、図4のような複数の金属磁性粒子が明確な界面を有して結合した構造を取らない。
【0047】
第2磁性薄帯41Aの第1軸Xに沿う第1正方向X1の反対方向である第1負方向X2の第2端MP2を通過するとともに、第2軸Zに沿う方向に第2仮想直線VL2を引く。このとき、第2仮想直線VL2は、インダクタ配線30を通っている。本実施形態では、インダクタ配線30の第1軸Xに沿う方向の概ね中央に位置している。
【0048】
なお、本実施形態においては、インダクタ部品10は、第1軸Xに沿う方向における中心を通る第2軸Zを対称軸として、線対称の構造となっている。ここで、インダクタ配線30の第2配線端IP2を通過するとともに、第2軸Zに沿う方向に第3仮想直線VL3を引く。また、インダクタ配線30に対して、第2軸Zに沿う方向に積層された磁性薄帯40のうち、第2配線端IP2からの第2軸Zに沿う距離が最も短い磁性薄帯40を第3磁性薄帯41Bとする。この場合に、当該第3仮想直線VL3は、中心軸CAに直交する断面視において、第3磁性薄帯41Bの第1範囲AR1内を通っている。より具体的には、第3仮想直線VL3は、第3磁性薄帯41Bの第1軸Xに沿う方向の中央を通っている。
【0049】
また、本実施形態では、中心軸CAに直交する断面視において、第3仮想直線VL3は、第3磁性薄帯41Bを含めて連続して積層された2つ以上の磁性薄帯40の第1範囲AR1内を通っている。具体的には、第3仮想直線VL3は、第1部分P1に含まれている磁性薄帯40のうち、第3磁性薄帯41Bに連続して積層されたすべての磁性薄帯40の第1範囲AR1内を通っている。
【0050】
さらに、第3仮想直線VL3は、第3部分P3に含まれている磁性薄帯40のうち、第3磁性薄帯41Bに連続して積層されたすべての磁性薄帯40の第1範囲AR1内を通っている。より具体的には、第3仮想直線VL3は、第3磁性薄帯41Bに連続して積層されたすべての磁性薄帯40の中央を通っている。このように、中心軸CAに直交する断面視において、第3仮想直線VL3が、第3磁性薄帯41Bに対して、上記の第1範囲AR1を通ることが好ましい。
【0051】
(シミュレーション結果について)
次に、インダクタ部品10について得られる特性を、比較例のインダクタ部品と比較したシミュレーション結果について説明する。シミュレーションには、ムラタソフトウェア株式会社のFemtet(登録商標)を用いた。
【0052】
先ず、シミュレーションの条件について説明する。
使用したソフトは、ムラタソフトウェア製のFemtet2019である。ソルバは、静磁場解析である。モデルは、3次元である。標準メッシュサイズは、0.01mmである。磁性体は、Fe元素及びNi元素からなる金属磁性薄帯である。磁性体BH曲線は、B=Bs×tanh(μ0×μr×H/Bs)を満たすものを使用した。なお、磁性体BH曲線は、真空の透磁率以下にならないように、比透磁率μrが1以上の部分を使用し、さらにFemtet2019の機能を使って、真空の透磁率へ外挿した。インダクタ配線30の材質は、銅である。
【0053】
次に、シミュレーションに使用するインダクタ部品のモデルの寸法や位置についての条件について説明する。
インダクタ配線30の第1軸Xに沿う方向の寸法は、500μmである。インダクタ配線30の第2軸Zに沿う方向の寸法は、100μmである。インダクタ配線30の中心軸CAに沿う方向の寸法は、2400μmである。
【0054】
磁性薄帯40の第1軸Xに沿う方向の寸法は、990μmである。磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法は、20μmである。磁性薄帯40の中心軸CAに沿う方向の寸法は、990μmである。
【0055】
層間非磁性部50の第2軸Zに沿う方向の寸法は、2.0μmである。非磁性部60の第1軸Xに沿う方向の寸法は、20μmである。非磁性部60の中心軸CAに沿う方向の寸法は、20μmである。磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向に積層する数は、41個である。磁性薄帯40の第1軸Xに沿う方向に並ぶ数は、2個である。磁性薄帯40の中心軸CAに沿う方向に並ぶ数は、2個である。
【0056】
インダクタ部品10の第2軸Zに沿う方向の寸法は、902μmである。シミュレーションにおいては、素体20は、非磁性膜70と同じ非磁性材の膜を、中心軸CAに沿う方向の両端に有している。当該膜の中心軸CAに沿う方向の寸法は、10μmである。そのため、インダクタ部品10の第1軸Xに沿う方向の寸法は、2020μmである。素体20の中心軸CAに沿う方向の寸法は、2020μmである。すなわち、このシミュレーションにおいて、インダクタ配線30の中心軸CAに沿う方向の寸法は、素体20の中心軸CAに沿う方向の寸法よりも380μmだけ大きい。そのため、素体20の正方向Y1の端面からインダクタ配線30が190μmだけ突出し、素体20の負方向Y2の端面からインダクタ配線30が190μmだけ突出した状態で、シミュレーションが行われる。
【0057】
インダクタ配線30の第2軸Zに沿う方向の寸法は、100μmである。インダクタ配線30の位置は、インダクタ配線30の重心が、素体20の重心位置に一致するように配置した。層間非磁性部50、非磁性部60及び非磁性膜70の非磁性材の比透磁率μrは、1とした。
【0058】
シミュレーションにおいて、実施例1における磁性薄帯40では、図4のようにFeNi合金の金属磁性体45は、互いに固溶しておらず、粒界を介して接する状態とした。実施例1では、比透磁率μrは、500であり、飽和磁束密度Bsは、1.3Tである。
【0059】
シミュレーションにおいて、実施例2における磁性薄帯40では、図5のようにFeNi合金の金属磁性体45は、その前駆体の金属磁性粒子同士が互いに固溶して焼結一体化しているバルク状態とした。実施例2では、比透磁率μrは、7000であり、飽和磁束密度Bsは、1.3Tである。そのため、実施例2での比透磁率μrは、実施例1での比透磁率μrに対して極めて大きい。
【0060】
また、シミュレーションにおいて、比較例における素体20は、FeNi合金からなる粉体状の金属磁性粒子と有機樹脂とのメタルコンポジット材が、充填率70%で含有されている状態とした。そのため、比較例では、比透磁率μrは、24であり、飽和磁束密度Bsは、0.91Tである。
【0061】
次に、シミュレーションによって算出する特性指標について説明する。
インダクタンスLの単位はnHであり、直流重畳特性Isatの単位はAである、直流重畳特性Isatは、電流値Idcが0.001AにおけるインダクタンスLである初期インダクタンスLinに対してインダクタンスLが20%低下する時の電流値Idcである。
【0062】
図6に示すように、実施例1、実施例2及び比較例において、電流値Idcを0.001A~80Aの範囲内で変更して、得られるインダクタンスLをシミュレーションによって算出した。
【0063】
図7に示すように、実施例1における初期インダクタンスLinは、14.7nHであり、実施例2における初期インダクタンスLinは、16.2nHであった。一方で、比較例における初期インダクタンスLinは、13.6nHであった。そのため、実施例における初期インダクタンスLinは、比較例における初期インダクタンスLinよりも大きく得られた。
【0064】
また、実施例1における直流重畳特性Isatは、55Aであり、実施例2における直流重畳特性Isatは、45Aであった。一方で、比較例における直流重畳特性Isatは、30Aであった。そのため、実施例における直流重畳特性Isatは、比較例における直流重畳特性Isatよりも大きく得られた。
【0065】
(第1実施形態の作用について)
次に、上記第1実施形態の作用について説明する。
上記第1実施形態では、磁性薄帯40は、焼結体の磁性材からなっている。焼結体では、粉末状態と比べて、金属磁性粒子が密に集合する。そのため、焼結前と比べて、単位体積当たりに含まれる金属磁性粒子の量が増える。その結果、素体20全体として、実効的な透磁率を高く得ることができる。
【0066】
また、磁性薄帯40に含まれる金属磁性体45は、焼結前において歪みが生じていることがある。仮に金属磁性体45に歪みが生じていても、焼結の過程で金属磁性体45が焼成されることで、このような歪みが解消される。なお、金属磁性体45の表面には、焼結の前処理又は焼結処理の際に酸化物層を形成してもよい。この酸化物層は、焼結後にO元素を含む絶縁性物質46となる。なお、「磁性薄帯40の歪み」は目に見える歪みに限定されず、結晶構造や分子間構造などのミクロな歪みも含む。
【0067】
(第1実施形態の効果について)
次に、上記第1実施形態の効果について説明する。
(1-1)第1実施形態によれば、磁性薄帯40は、焼結体である。磁性薄帯40として焼結体を採用することで、焼結の過程で磁性薄帯40の歪みを緩和することができる。その結果、磁性薄帯40の透磁率や保磁力といった磁気的な特性が、製造過程で低下することを抑制できる。
【0068】
そのため、磁歪定数が大きいが、飽和磁束密度Bsの高い結晶性金属磁性粒子を採用でき、素体20全体として、高い飽和磁束密度Bsを得ることができる。その結果、特性指標である初期インダクタンスLin及び直流重畳特性Isatのいずれも、素体20全体が粉体状の金属磁性粒子と有機樹脂とのメタルコンポジット材である場合と比べて、大きくなる。したがって、第1実施形態によれば、インダクタ部品10の特性向上を図ることができる。
【0069】
(1-2)上記第1実施形態によれば、焼結体である磁性薄帯40は、Fe元素及びNi元素を含む合金を有している。Fe元素及びNi元素を含む合金は、透磁率μを高く得ることができる。そのため、特性指標である初期インダクタンスLin及び直流重畳特性Isatを大きく得ることができる。
【0070】
(1-3)上記第1実施形態によれば、磁性薄帯40では、複数の金属磁性粒子である金属磁性体45が絶縁性の絶縁性物質46を介して結合している。そのため、金属磁性体45同士が接続された導電経路による、渦電流損の低減、漏れ電流・短絡の抑制を図ることができる。
【0071】
(1-4)上記第1実施形態によれば、絶縁性物質46は、O元素を含む。すなわち、絶縁性物質46は酸化物である。そのため、絶縁性物質46を設けるうえで、焼結の前処理又は焼結処理の際に、複数の金属磁性粒子の粒界を酸化させることで形成できる。よって、絶縁性物質46を設けるために、金属磁性体45を構成する前駆体とは別の材料を用いなくて済む。
【0072】
(1-5)上記実施形態によれば、第1仮想直線VL1は、第2磁性薄帯41Aの第1範囲AR1内を通っている。そのため、インダクタ配線30に電流が流れたときに発生する磁束のうち、インダクタ配線30の第1配線端IP1の近傍において、第1仮想直線VL1に沿う向きの磁束の大半は、第2磁性薄帯41Aの第1軸Xに沿う方向の端を除く部分を通過する。すなわち、インダクタ配線30に電流が流れたときに発生する磁束のうち、第2磁性薄帯41Aに沿う方向の端を通過する磁束が少なくなる。そのため、磁束が乱れたり、磁束が局所に集中したりすることを抑制できる。こうした第2磁性薄帯41Aとインダクタ配線30との位置関係によれば、磁性材料の充填率に拠らずとも、インダクタンスLが大きくなる。
【0073】
(1-6)上記実施形態によれば、複数の磁性薄帯40が、インダクタ配線30に対して第2軸Zに沿う方向に連続して積層されている。そして、中心軸CAに直交する断面視において、第1仮想直線VL1は、第2磁性薄帯41Aを含めて連続して積層された2つ以上の磁性薄帯40の第1範囲AR1内を通っている。そのため、第2磁性薄帯41Aのみならず、他の磁性薄帯40とインダクタ配線30との位置関係によれば、特性指標をさらに大きくできる。
【0074】
(1-7)上記実施形態によれば、中心軸CAに直交する断面視において、第1仮想直線VL1は、第2磁性薄帯41Aに連続して積層されたすべての磁性薄帯40の第1範囲AR1内を通っている。そのため、磁性薄帯40の第1軸Xに沿う方向における端を通ることを避けられるため、特性指標をさらに大きくできる。
【0075】
(1-8)インダクタ配線30に中心軸CAに沿う方向に電流が流れたときに発生する磁束の中には、磁性薄帯40に対して、第2軸Zに沿う方向に侵入する磁束が含まれる。このように侵入する磁束は、磁性薄帯40に渦電流を生じさせる。また、この渦電流は、第2軸Zに沿う方向から視たとき、1つ当たりの磁性薄帯40の面積が大きいほど、大きくなる。渦電流が生じると、磁束のエネルギーが熱エネルギーとして失われることになるので、損失が生じる。
【0076】
上記第1実施形態によれば、磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う同一の位置において、第1基準軸に沿う方向に2個、第2基準軸に沿う方向に2個並んでいる。そのため、磁性薄帯40が、第2軸Zに沿う同一の位置において1個である場合よりも、第2軸Zに沿う方向から視たときの磁性薄帯40の面積が小さくなる。よって、1つの磁性薄帯40で発生する渦電流が小さくなる。
【0077】
(1-9)上記第1実施形態によれば、磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う同一の位置において、第1軸Xに沿う方向に2個並んでいる。そのため、インダクタ配線30の第1配線端IP1を通る第1仮想直線VL1が通る第2磁性薄帯41Aと、インダクタ配線30の第2配線端IP2を通る第3仮想直線VL3が通る第3磁性薄帯41Bとは、異なる磁性薄帯40である。よって、インダクタ配線30の第1軸Xに沿う方向の寸法としてある程度の大きさを確保しつつ、インダクタ配線30と第2磁性薄帯41Aとの位置関係として上述した位置関係を実現できる。
【0078】
(1-10)上記第1実施形態によれば、素体20は、焼結体の非磁性材からなる非磁性部60を有している。非磁性部60は、第1基準軸に沿う方向に隣り合う磁性薄帯40の間、及び第2基準軸に沿う方向に隣り合う磁性薄帯40の間に位置する。この場合、磁性薄帯40と第2軸Zにおける同一の位置にある非磁性部60は、磁性薄帯40を焼結体とする工程と同じ工程で、焼結させることができる。
【0079】
(1-11)上記第1実施形態によれば、素体20は、焼結体の非磁性材からなる層間非磁性部50を有している。層間非磁性部50は、複数の磁性薄帯40の積層方向に隣り合う磁性薄帯40の間に位置している。この場合、積層方向に積層された磁性薄帯40を焼結体とする工程と同じ工程で、焼結させることができる。
【0080】
(1-12)上記第1実施形態によれば、複数の磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法は、全て等しい。そのため、各磁性薄帯40内での磁束密度が均一化し、特定の箇所において磁束が集中して飽和しにくい。その結果、素体20全体で見た場合の磁束密度が向上する。
【0081】
(1-13)上記第1実施形態によれば、複数の層間非磁性部50の第2軸Zに沿う方向の寸法は、全て等しい。そのため、層間非磁性部50と磁性薄帯40との界面で生じる磁束の乱れを均一化できる。
【0082】
<第2実施形態>
(インダクタ部品)
第2実施形態におけるインダクタ部品110は、第1実施形態におけるインダクタ部品10と比べて、第2部分P2の構成が異なる。以下では、第1実施形態におけるインダクタ部品10と比べて、異なる点を説明する。
【0083】
図8に示すように、第2部分P2は、インダクタ配線30と、2つのコンポジット部80で構成されている。コンポジット部80は、磁性材からなる粉体状の磁性粒子81と、非磁性材からなる非磁性母材82と、からなる。磁性粒子81は、例えば、Fe元素、Ni元素、Co元素、Cr元素、Cu元素、Al元素、Si元素、B元素、P元素等を含む金属磁性粒子である。本実施形態では、磁性粒子81は、Fe元素、Si元素及びCr元素を含む合金の金属粒子である。非磁性母材82は、例えば、ガラスやアルミナ等の無機焼結体である。
【0084】
コンポジット部80は、第2軸Zに沿う方向から視たときに長方形状である。第2軸Zに沿う方向から視たときに、コンポジット部80の長辺は、中心軸CAと平行である。コンポジット部80の第2軸Zに沿う方向の寸法は、インダクタ配線30と平行である。
【0085】
図1に示すように、第2部分P2において、2つのコンポジット部80は、インダクタ配線30から視て、第1軸Xに沿う第1正方向X1及び第1負方向X2の両側に位置している。すなわち、第2部分P2において、コンポジット部80は、第1軸Xに沿う方向に、インダクタ配線30を挟んで2つ並んでいる。
【0086】
(インダクタ部品の製造方法)
次に、インダクタ部品110の製造方法を説明する。
図9に示すように、インダクタ部品110の製造方法は、第1シート準備工程S11と、第2シート準備工程S12と、積層工程S13と、圧着工程S14と、個片化工程S15と、焼結工程S16と、被膜処理工程S17と、を備えている。
【0087】
先ず、第1シート準備工程S11を行う。第1シート210は、非磁性層211と、磁性材である金属磁性粉末212Mを含む磁性層212と、を有している。図10に示すように、第1シート210を製造するにあたっては、先ず、第1基材91としてPETからなるフィルムを準備する。第1基材91は、PETやアルミナ、フェライトの基板のように部品の完成時には除去されてしまうものであってもよいし、ガラスの非磁性層211のように残るものであってもよい。なお、以下の説明では、第1基材91の2つの主面が第2軸Zに直交するように配置されているものとし、且つ中心軸CAに直交する断面を示して説明する。また、図10図18においては、理解しやすさのため、寸法の比率を、図8とは、大きく変更して図示している。
【0088】
第1基材91の第2軸Zに沿う第2正方向Z1を向く主面に、非磁性且つ絶縁性の非磁性材からなる非磁性ペーストを塗布してシート状に成形する。これにより、非磁性層211を形成する。非磁性層211は、例えば、アルミナ、シリカ、結晶化ガラス、非晶質ガラス等を含んでいる非磁性材からなっている。
【0089】
次に、図11に示すように、非磁性層211の第2軸Zに沿う第2正方向Z1を向く面に、磁性材である金属磁性粉末212Mを含む金属磁性ペーストを塗布する。金属磁性粉末212Mは、本実施形態では、Fe元素及びNi元素を含むFeNi合金である。これにより、磁性層212を形成する。磁性層212は、樹脂92に、金属磁性粉末212Mが含まれている金属磁性ペーストからなっている。
【0090】
次に、図12に示すように、レーザ加工により、磁性層212に溝212Hを形成する。溝212Hは、磁性層212を貫通している。第2軸Zに沿う方向から視たときに、溝212Hからは、非磁性層211の一部が、第2軸Zに沿う第2正方向Z1に露出している。溝212Hは、第2軸Zに沿う方向から視たときに、第1基準軸に沿う方向及び第2基準軸に沿う方向に、磁性層212を分割している。
【0091】
次に、図13に示すように、印刷等により、磁性層212に形成された溝212Hを、非磁性且つ絶縁性の材料からなる非磁性ペーストで充填する。これにより、溝内非磁性部213を形成する。また、これと同時に、磁性層212を第1基準軸に沿う方向及び第2基準軸に沿う方向に分割した複数の分割磁性層212Dを形成する。さらに、分割磁性層212Dをシート状に形成することにより第1シート210が準備される。なお、第1シート210は、製造しようとするインダクタ部品10の磁性薄帯40の積層数と同数準備する。
【0092】
次に、第2シート準備工程S12を行う。第2シート220は、配線パターン221と、ネガパターン222と、を有している。先ず、第2シート220を製造するにあたっては、図14に示すように、第2基材93を準備する。第2基材93は、PETやアルミナ、フェライトの基板のように部品の完成時には除去されてしまうものであってもよいし、ガラスの非磁性層211のように残るものであってもよい。なお、以下の説明では、第2基材93の2つの主面が第2軸Zに直交するように配置されているものとする。
【0093】
第2基材93の第2軸Zに沿う第2正方向Z1を向く主面に、非磁性且つ絶縁性の非磁性材からなる非磁性ペーストを塗布してシート状に成形する。これにより、非磁性層211を形成する。
【0094】
次に、非磁性層211の第2軸Zに沿う第2正方向Z1を向く主面に、印刷等により、部分的に導電ペーストを塗布する。これにより、配線パターン221を形成する。配線パターン221は、導電材料である。例えば、AgやCuの導電ペーストからなっている。
【0095】
なお、配線パターン221を形成する方法は、スクリーン印刷法等の印刷以外にも、感光性材料を用いたフォトリソグラフィ法、セミアディティブ等のめっき系工法、別シートに形成された配線パターンを転写する転写法等であってもよい。また、めっき系工法や転写法の場合には、導電ペーストではなく、樹脂を含まない金属膜を配線パターン221の材料として用いればよい。
【0096】
次に、図15に示すように、非磁性層211の第2軸Zに沿う第2正方向Z1を向く主面のうち、配線パターン221が塗布されていない部分に、印刷等により、ネガペーストを充填塗布する。これにより、ネガパターン222を形成する。ネガパターン222は、図示は省略するが、磁性粒子81と、非磁性母材82の原料である非磁性粉末と、を含んでいる。これにより、第2シート220を準備する。本実施形態では、非磁性層211が、配線パターン221及びネガパターン222を形成するためのシート状の基材となっている。
【0097】
次に、準備した第1シート210及び第2シート220を積層する積層工程S13を行う。図16に示すように、先ず、第1シート210から、第1基材91を剥離し、シートの上下方向はそのままに、図示を省略する所定の治具台に載置する。そして、第2シート220における配線パターン221及びネガパターン222の非磁性層211が塗布されている面とは反対方向を向く面に、第1シート210における非磁性層211の磁性層212が塗布されている面とは反対方向を向く面を向かい合わせて接着させる。これにより、第2シート220の第2軸Zに沿う第2正方向Z1に、第1シート210が積層される。
【0098】
同様に、別の第1シート210から第1基材91を剥離する。そして、第2シート220に積層された第1シート210の第2シート220と接着している面とは反対方向を向く面に、別の第1シート210における非磁性層211の磁性層212が塗布されている面とは反対方向を向く面を向かい合わせて接着させる。なお、図示は省略するが、インダクタ部品10の第3部分P3に積層される磁性薄帯40の枚数だけ、第1シート210を積層させる。
【0099】
次に、第2シート220から、第2基材93を剥離する。そして、第2シート220における非磁性層211の配線パターン221が塗布されている面とは反対方向を向く面に、第1シート210における磁性層212の非磁性層211が塗布されている面とは反対方向を向く面を向かい合わせて接着させる。そして、第1シート210から、第1基材91を剥離する。
【0100】
同様に、第2シート220に積層された第1シート210における非磁性層211の磁性層212が塗布されている面とは反対方向を向く面に、別の第1シート210における磁性層212の非磁性層211が塗布されている面とは反対方向を向く面を向かい合わせて接着させる。なお、図示は省略するが、インダクタ部品10の第1部分P1に積層される磁性薄帯40の枚数だけ、第1シート210を積層させる。このように、第2シート220の両主面に第1シート210を繰り返し積層させる。すなわち、積層体200を形成する際に、分割磁性層212Dを複数積層させる。
【0101】
次に、圧着工程S14を行う。上記の積層工程S13によって積層された第1シート210及び第2シート220を、WIP等のプレスを行い圧着する。これによって、積層体200を形成する。
【0102】
次に、個片化工程S15を行う。図17に示すように、例えば、積層体200を、所定の破断線DLにてダイシングすることにより個片化する。これにより、積層体200を個片化した個片部201を形成する。個片部201は、配線パターン221及び分割磁性層212Dによって構成されている。複数個の個片部201は、積層体200において、第1基準軸に沿う方向及び第2基準軸に沿う方向に並ぶように、行列状に配置されている。なお、本実施形態では、個片部201は、1つの配線パターン221を有している。
【0103】
次に、焼結工程S16を行う。図18に示すように、個片化工程S15において個片化された積層体200の個片部201を、所定時間だけ焼成することにより、焼結させる。これにより、配線パターン221は、焼結体のインダクタ配線30になる。ネガパターン222は、焼結体のコンポジット部80になる。非磁性層211は、焼結体の層間非磁性部50になる。溝内非磁性部213は、焼結体の非磁性部60になる。そして、磁性層212の金属磁性粉末212Mは、磁性材からなる焼結体の金属磁性体45になる。一方で、積層体200の個片部201に含まれる樹脂は、加熱されることにより気化する。
【0104】
次に、被膜処理工程S17を行う。個片化工程S15においてダイシングした破断線DLを含む面を、非磁性の絶縁体である非磁性膜70で覆う。その結果、個片部201は、インダクタ部品110となる。なお、焼結工程S16によって、インダクタ部品110の体積は、個片部201の体積と比べて、小さくなる。
【0105】
(第2実施形態の作用について)
上記第2実施形態のインダクタ部品110によれば、焼結工程S16によって、磁性層212の金属磁性粉末212Mは、磁性材からなる焼結体になる。
【0106】
(第2実施形態の効果について)
上記第2実施形態では、上述した第1実施形態における第2部分P2のうちの磁性薄帯40及び層間非磁性部50の構成を、コンポジット部80とした点で異なる。そのため、第1部分P1及び第3部分P3における磁性薄帯40と層間非磁性部50との構成は、第1実施形態と同様である。そのため、第2実施形態におけるインダクタ部品110は、第1実施形態におけるインダクタ部品10のシミュレーション結果と同様の傾向が得られる。そのため、第2実施形態によれば、上述した第1実施形態における(1-1)~(1-13)の効果に加えて、以下の効果を奏する。
【0107】
(2-1)上記第2実施形態では、磁性薄帯40の磁性材は、Fe元素及びCo元素からなるパーメンジュールである。このような結晶性金属磁性材は、金属磁性材の中で、飽和磁束密度Bsが極めて大きい。そのため、直流重畳特性Isatの観点からは、高い電流値Idcで使用されるパワーインダクタ等における素体20の材料として好適である。
【0108】
しかしながら、Fe元素及びCo元素からなるパーメンジュール等の結晶性金属磁性材料は、磁歪定数が非常に大きい。すなわち、結晶性金属磁性材料は、磁界が発生したときの寸法の変化量が大きい材料である。そして、素体20を形成する際に、圧力を加えるなどした際に、応力により結晶性金属磁性材料の歪みが残存しやすい。このような加工時の歪みが残った状態であると、透磁率μが低下したり、磁化されていない状態に戻すための保磁力が大きく必要になったりする。
【0109】
ここで、上記第2実施形態では、焼結工程S16において、加工により発生した残留歪みを緩和することができる。このように、歪みを緩和することによって回復する特性が大きくなり得るため、結晶性の金属磁性材は、焼結体を採用することによる効果が大きく発揮される。
【0110】
(2-2)上記第2実施形態によれば、第2部分P2におけるインダクタ配線30ではない部分は、コンポジット部80で構成されている。そして、コンポジット部80では、磁性粒子81がランダムに分散されている。そのため、第2軸Zに沿う方向に発生する磁束が、第2部分P2の磁性材に侵入したときに、コンポジット部80において発生する渦電流が小さくなる。
【0111】
(2-3)仮に、1つのインダクタ部品10において、焼結後の磁性薄帯40を1つずつ積層させるとすると、手間がかかる。上記第2実施形態によれば、個片部201を複数有する積層体200を形成している。そして、積層体200を個片化することで個片部201を形成している。その後、個片部201を焼結してインダクタ部品10を製造している。そのため、複数の磁性薄帯40を積層した個片部201を効率よく製造することができる。
【0112】
(2-4)上記第2実施形態によれば、分割磁性層212Dを、シート状に形成することにより第1シート210を準備している。また、シート状の基材として非磁性層211上に配線パターン221を形成することにより、第2シート220を準備している。そして、第1シート210及び第2シート220を圧着することにより積層体200を形成している。そのため、積層体200を形成するうえで、2種類のシートを準備する工程と、積層する工程と、圧着する工程と、で積層体200を形成できる。
【0113】
(2-5)上記第2実施形態によれば、配線パターン221上に、分割磁性層212Dを形成することにより積層体200を形成している。配線パターン221を基準として、分割磁性層212Dの位置を調整することができる。
【0114】
(2-6)上記第2実施形態によれば、第2シート220を準備するうえで、シート状の基材として非磁性層211上のうち、配線パターン221が形成されない部分に、ネガパターン222を形成する。そのため、インダクタ部品110におけるコンポジット部80の位置を調整しやすい。
【0115】
(2-7)上記第2実施形態によれば、積層体200を形成する際、分割磁性層212Dを複数積層する。そのため、インダクタ部品110における積層方向に積層される複数の磁性薄帯40の数を調整しやすい。
【0116】
<その他の実施形態>
上記各実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記各実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせて実施することができる。
【0117】
・上記各実施形態において、素体20の形状は、上記各実施形態の例に限られない。例えば、第2軸Zに沿う方向から視たときに、素体20の形状は、長方形状であってもよいし、四角形以外の多角形であってもよい。さらに例えば、第2軸Zに沿う方向から視たときに、素体20の形状は、楕円等の円状であってもよい。また、素体20の形状は、第1基準軸と第2基準軸の寸法が異なる直方体や、立方体、多角柱、円柱等であってもよい。
【0118】
・上記各実施形態において、インダクタ配線30とは、電流が流れた場合に素体20に磁束を発生させることによって、インダクタ部品10にインダクタンスLを付与できるものであれば、形状は適宜に変更できる。例えば、上述したシミュレーションのように、インダクタ配線30の両端が素体20から突出していてもよい。
【0119】
また例えば、図19に示す変更例のインダクタ部品310では、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線330は、楕円状である。そして、インダクタ配線330に外接するとともに、第1軸Xに沿う第1辺及び第2軸Zに沿う第2辺を有する面積が最小の仮想長方形VR2を描く。このとき、仮想長方形VR2の第1辺は、仮想長方形VR2の第2辺よりも長い。このように、仮想長方形VR2の長辺が第1軸Xと平行であると、磁束のより集中する配線断面の第1軸Xに沿う方向の端部には、第1磁性薄帯41の反磁界の小さい領域が対応するため、より好ましい。
【0120】
また、上記実施形態において、中心軸CAに直交する断面におけるインダクタ配線30の形状は、第2軸Zに沿う第2辺が、第1軸Xに沿う第1辺よりも長くてもよい。この場合であっても、インダクタ配線30の第1正方向X1の端である第1配線端IP1には、磁束が集中する。そのため、このように、磁束のより集中する配線断面の第1配線端IP1には、第1磁性薄帯41の反磁界の小さい領域が対応するため、より好ましい。
【0121】
さらに、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線30の形状は、1つ以上の突出部分を含む場合等、線対称や回転対称等の対称性を有しない形状であってもよい。このように、中心軸CAに直交する断面において、対称性が崩れていると、磁束が他よりも集中する箇所が発生する。そして、突出部分等のように磁束が他よりも集中する箇所が第1配線端IP1となるように、第2磁性薄帯41Aの位置関係を定めることが好ましい。
【0122】
また、例えば、中心軸CAに直交する断面において、インダクタ配線30の形状は、正方形状であってもよいし、真円状であってもよい。この場合、中心軸CAに直交する断面において描く仮想長方形VRは正方形となり、仮想長方形VRの第1辺は、仮想長方形VRの第2辺より長くなくてもよい。
【0123】
なお、第1磁性薄帯41、第2磁性薄帯41A及び第3磁性薄帯41Bは、中心軸CAに直交する断面におけるインダクタ配線30の形状に併せて定められる。図19に示す変更例では、インダクタ配線330に対して、第2軸Zに沿う方向に積層された磁性薄帯40のうち、第1配線端IP1からの第2軸Zに沿う距離が最も短い磁性薄帯40は、第2部分P2に含まれる磁性薄帯40の1つである。また、第1磁性薄帯41は、インダクタ配線30に対して積層されている磁性薄帯40のうち、インダクタ配線30に最も近い磁性薄帯40である。そのため、第1磁性薄帯41は、第1部分P1のうち最もインダクタ配線30に近い磁性薄帯40及び第3部分P3のうち最もインダクタ配線30に近い磁性薄帯40である。すなわち、図19に示す変更例では、第2磁性薄帯41Aは、第1磁性薄帯41ではない。
【0124】
・上記各実施形態において、インダクタ配線30の第1軸Xに沿う方向の位置は、上記各実施形態の例に限られない。例えば、インダクタ配線30の第1軸Xに沿う方向の中央が、素体20の第1軸Xに沿う方向の中央に一致してなくてもよい。
【0125】
・上記各実施形態において、インダクタ配線30の形状は、直線状に限られない。磁性薄帯40の主面MFに沿って延びていればよく、例えば、全体として湾曲している形状や、ミアンダ形状であってもよい。インダクタ配線30が同一平面上で延びていると、インダクタ配線30の第1配線端IP1と第2磁性薄帯41Aとの配置を調整しやすい。
【0126】
・上記各実施形態において、インダクタ配線30の材質は、導電性材料であれば、上記各実施形態の例に限られない。例えば、インダクタ配線30の材質は、導電性の樹脂であってもよい。
【0127】
・上記各実施形態において、中心軸CAと、第1基準軸とは、一致していなくてもよい。また、第2基準値軸は、第1軸Xと一致していなくてもよい。例えば、上述したようにインダクタ配線30の形状がミアンダ形状の場合、中心軸CAはミアンダ状に延びる。この場合、第1基準軸は第2軸Zに直交し、第2基準軸は、第2軸Zに直交し、第1基準軸に交差すればよい。この場合であっても、磁性薄帯40が第1基準軸に沿う方向に複数個並んでいたり、第2基準軸に沿う方向に複数個並んでいたりすれば、磁性薄帯40が第2軸Zに沿う同一の位置において1個である場合よりも、第2軸Zに沿う方向から視たときの磁性薄帯40の面積が小さくなる。そのため、1つの磁性薄帯40で発生する渦電流が小さくなる。
【0128】
・上記各実施形態で説明した第1配線端IP1を通る第1仮想直線VL1と第2磁性薄帯41Aの第1範囲AR1との位置関係は、中心軸CAに直交するインダクタ配線30の断面のうち、いずれか1つの断面において満たしていればよい。つまり、インダクタ配線30のすべての領域において、第1仮想直線VL1と第2磁性薄帯41Aの第1範囲AR1との位置関係が満たされていなくてもよい。なお、第1配線端IP1を通る第1仮想直線VL1と第2磁性薄帯41Aの第1範囲AR1との位置関係を満たす断面が1つも有していなくてもよい。すなわち、インダクタ配線30の第1配線端IP1の第1軸Xに沿う方向の位置が、第2磁性薄帯41Aの第1範囲AR1内でなくてもよく、第2磁性薄帯41Aの第1軸Xに沿う方向の端に一致していてもよい。
【0129】
・上記各実施形態において、インダクタ配線30が素体20から露出している部分には、外部電極が接続されていてもよい。例えば、インダクタ配線30の中心軸CAに沿う方向の両端面、及び素体20の中心軸CAに沿う方向の両端面に、塗布、印刷、めっき等によって、外部電極を形成してもよい。
【0130】
・上記各実施形態において、磁性薄帯40と層間非磁性部50とが積層される方向は、製造上の誤差等により、中心軸CA及び第1軸Xに対して直交しないこともある。上記各実施形態において、磁性薄帯40等が「第2軸Zに沿う方向に積層されている」というのは、このような製造上の誤差などを許容するものである。
【0131】
・上記各実施形態において、第2軸Zに沿う方向に積層される磁性薄帯40の数は、2個以上であればよい。この場合、2つの磁性薄帯40の間に、インダクタ配線30及び層間非磁性部50が配置されていればよい。
【0132】
・上記各実施形態において、磁性薄帯40と層間非磁性部50とは、完全に交互に積層されていなくてもよい。
・上記各実施形態において、インダクタ配線30が単層で構成されている場合ではなく、インダクタ配線30が複数層に存在していてもよい。
【0133】
・上記各実施形態において、磁性薄帯40の材質は、磁性材であれば、上記各実施形態の例に限られない。例えば、Feであってもよいし、Niであってもよい。また、Fe元素及びCo元素を含む合金であってもよい。さらに、Fe元素、Ni元素、Co元素、Cr元素、Cu元素、Al元素、Si元素、B元素、P元素のうち、少なくとも2つ以上を含む合金であってもよい。さらに、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Al、Si、B、Pのうち、少なくとも2つ以上を含む混合物であってもよい。透磁率μが大きい磁性材であると、インダクタ部品の初期インダクタンスLinの向上を図るうえで、好適である。
【0134】
・上記各実施形態において、磁性薄帯40の金属磁性体45は、Fe元素及びNi元素の合金に限られず、Feであってもよいし、Niであってもよい。また、Fe元素及びCo元素を含む合金であってもよい。さらに、Fe元素、Ni元素、Co元素、Cr元素、Cu元素、Al元素、Si元素、B元素、P元素のうち、少なくとも2つ以上を含む合金であってもよい。また、Fe、Ni、Co、Cr、Cu、Al、Si、B、Pのうち、少なくとも2つ以上を含む混合物であってもよい。インダクタ部品として求められる特性や、焼結工程S16の条件等に合わせて適宜変更すればよい。
【0135】
・上記各実施形態において、磁性薄帯40の絶縁性物質46は、焼結前の金属磁性粉末212Mに含まれる金属がO元素を含む酸化物となったものに限られない。例えば、焼結前の金属磁性粉末212Mに、微量のSi元素が含まれており、このSi元素が、金属磁性粉末212Mの焼結中にガラス化して金属磁性体45の表面に押し出されることによって、焼結後、絶縁性物質46となってもよい。この場合、絶縁性物質46はSi元素を含む。例えば、金属磁性体45が、Fe元素、Si元素及びCr元素を含む合金であれば、金属磁性体45がFeSiCr合金であり、粒界には、Si元素やCr元素が存在することになる。つまり、粒界には、焼結前の金属磁性粉末212Mに含まれる元素のうち、拡散速度の大きいものが、存在することになる。このように、金属磁性粉末212Mに含まれる成分のうち磁性材料よりも拡散速度が大きい成分によって金属磁性体45の間の隙間が埋められることで、より高い密度の焼結体が得られる。この場合、絶縁性物質46は、Si元素及びCr元素を含む。また、金属磁性体45の粒界には、絶縁性物質46が存在していなくてもよい。
【0136】
・上記各実施形態において、層間非磁性部50の材質は、非磁性材であれば、上記各実施形態の例に限られない。層間非磁性部50が部分的に、アクリル樹脂や、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等の樹脂であってもよい。この点、非磁性部60及び非磁性膜70についても同様である。また、層間非磁性部50、非磁性部60及び非磁性膜70の材質は、非磁性材であれば、互いに異なっていてもよいし、部分的に異なっていてもよい。これらの場合、焼結工程S16の後に、個片部201の外面を樹脂でコーティングしたり、外側から空間を樹脂で充填したりすることで実現できる。なお、第2実施形態において説明した製造方法のように、層間非磁性部50を焼結体で形成する場合には、非磁性ペーストとしては、アルミナ、シリカ、結晶化ガラス、非晶質ガラス等、焼結させることのできる材料が好適である。また、層間非磁性部50、非磁性部60及び非磁性膜70の材質は、アルミナ、ガラス以外の非磁性セラミックスや、これらを含有する非磁性の無機物であってもよいし、空隙を含めてこれらの混合物であってもよい。
【0137】
また、非磁性ペーストが樹脂の場合は磁性薄帯40間が、樹脂の飛散により空隙となるが、例えば、層間非磁性部50が空隙であってもよい。また、磁性層212をシートごとに焼成した後に接着剤である樹脂層でシートを張り合わせて、層間非磁性部50を樹脂としてもよい。
【0138】
・上記実施形態において、層間非磁性部50、非磁性部60、非磁性膜70は一体化していてもよいし、別の部材であってもよい。例えば、層間非磁性部50は、中空であってもよいし、磁性薄帯40の表面が酸化した酸化膜が絶縁体となって構成されていてもよい。
【0139】
・上記実施形態において、層間非磁性部50を省いてもよい。この場合、第2軸Zに沿う方向に隣り合う磁性薄帯40同士が直接接触していてもよい。
・上記実施形態において、非磁性部60を省いてもよい。この場合、第1基準軸又は第2基準軸に沿う方向に並ぶ磁性薄帯40同士が直接接触していてもよい。また、非磁性部60が、インダクタ配線30と磁性薄帯40との間に存在していてもよい。この場合、非磁性部60によって、インダクタ配線30と磁性薄帯40との間の絶縁性を確保できる。
【0140】
なお、「複数の磁性薄帯40が積層された」及び「複数の磁性薄帯40が並ぶ」とは、具体的には、隣接する磁性薄帯40同士が完全に又は部分的に絶縁されている場合や微視的に物理的な境界が存在する場合を指す。例えば、磁性薄帯40同士が焼結されて完全に一体化されている状態等は含まない。
【0141】
・上記各実施形態において、第1部分P1及び第3部分P3の少なくとも一方に第2磁性薄帯41Aが存在するのであれば、磁性薄帯40、層間非磁性部50及び非磁性部60の構成は、変更できる。例えば、第2部分P2のうちのインダクタ配線30を除く部分全てを磁性薄帯40で構成してもよいし層間非磁性部50で構成してもよい。
【0142】
・上記各実施形態によれば、磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う同一の位置において、第1軸Xに沿う方向に2個並んでおり、中心軸CAすなわち第1基準軸に沿う方向に2個並んでいる。すなわち、「M」及び「N」を正の整数とした場合、磁性薄帯40は、第2軸Zに沿う同一の位置において、第1基準軸に沿う方向に「M」個並んでおり、第1軸Xすなわち第2基準軸に沿う方向に「N」個並んでおり、「M」及び「N」のいずれも2である。上記各実施形態において、第2基準軸に沿う方向に並ぶ磁性薄帯40の数である「M」は、1個であってもよいし、3個以上であってもよい。また、中心軸CAに沿う方向に並ぶ磁性薄帯40の数である「N」は、1個であってもよいし、3個以上であってもよい。なお、「M」及び「N」の少なくともいずれか一方が2以上であると、第2軸Zから視たときの1つ当たりの磁性薄帯40の面積を小さくできるので、渦電流による損失を小さくしやすい。
【0143】
・上記各実施形態において、複数の磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法は、異なっていてもよい。磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法が小さい場合、製造方法によっては20%程度の製造誤差が生じることもあり得る。したがって、磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法は、複数の磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法の平均値に対して、80%以上120%以下であれば、ほぼ等しいとみなせる。なお、1つの磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法は、電子顕微鏡にて1000倍から10000倍までの間の倍率に拡大した1枚の画像のうち、第2軸Zに沿う方向の最小の寸法とする。また、複数の磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法は、電子顕微鏡にて5つ以上の磁性薄帯40がおさまる1枚の画像で測定した1つの磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法の平均値である。
【0144】
・複数の磁性薄帯40の第2軸Zに沿う方向の寸法は、互いに同一でなくてもよいし、平均値に対して、20%より大きくばらついていてもかまわない。
・上記各実施形態において、複数の層間非磁性部50の第2軸Zに沿う方向の寸法は、異なっていてもよい。層間非磁性部50の第2軸Zに沿う方向の寸法が小さい場合、製造方法によっては20%程度の製造誤差が生じることもあり得る。したがって、層間非磁性部50の第2軸Zに沿う方向の寸法は、複数の層間非磁性部50の第2軸Zに沿う方向の寸法の平均値に対して、80%以上120%以下であれば、ほぼ等しいとみなせる。なお、1つの層間非磁性部50の第2軸Zに沿う方向の寸法は、電子顕微鏡にて1000倍から10000倍までの間の倍率に拡大した1枚の画像のうち、第2軸Zに沿う方向の最小の寸法とする。また、複数の層間非磁性部50の第2軸Zに沿う方向の寸法は、電子顕微鏡にて5つ以上の層間非磁性部50がおさまる1枚の画像で測定した1つの層間非磁性部50の第2軸Zに沿う方向の寸法の平均値である。
【0145】
・複数の層間非磁性部50の第2軸Zに沿う方向の寸法は、互いに同一でなくてもよいし、平均値に対して、20%より大きくばらついていてもかまわない。
・上記各実施形態において、非磁性部60の数や位置は、上記各実施形態の例に限られない。第1軸Xに沿う方向や中心軸CAに沿う方向における磁性薄帯40の数や位置に併せて、非磁性部60の数や位置を変更すればよい。また、非磁性部60の大きさも、第2軸Zに沿う方向における同一の位置における磁性薄帯40の間隔に併せて、適宜変更すればよい。
【0146】
・上記各実施形態において、非磁性膜70は省略してもよい。非磁性膜70を省略する場合には、第2実施形態におけるインダクタ部品110の製造方法において、被膜処理工程S17を省けばよい。また、被膜処理工程S17は、個片部201の外面全体に非磁性膜70を塗布して、インダクタ配線30を露出させるように部分的に削ることで、非磁性膜70を形成してもよい。
【0147】
・上記第2実施形態において、コンポジット部80の構成は、上記第2実施形態の例に限られない。例えば、非磁性母材82は、アルミナや、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などの絶縁性の熱可塑性樹脂であってもよい。なお、コンポジット部80は、第1部分P1及び第3部分P3の各磁性薄帯40のような積層構造ではなく、一体的な成形体であってもよい。このようなコンポジット部80を製造する上では、例えば、焼結工程S16の後であって、被膜処理工程S17の前に、コンポジット部80を構成する範囲に樹脂を充填すればよい。
【0148】
・上記第2実施形態におけるインダクタ部品110の製造方法では、複数のシートをそれぞれ形成した後に、積層及び圧着するシート積層工法を例示したが、これに限られない。例えば、複数のシートを順次形成及び積層していく印刷積層工法であってもよい。この場合、配線パターン221上に、分割磁性層212Dを形成することにより、配線パターン221の上方に、分割磁性層212Dが配置される。
【0149】
・上記第2実施形態におけるインダクタ部品110の製造方法において、第2シート220は、ネガパターン222に代えて、磁性層212又は非磁性層211を備えていてもよいし、磁性層212及び非磁性層211を備えていてもよい。ネガパターン222に代えて、磁性層212、非磁性層211及び溝内非磁性部213を備えている場合、第1実施形態におけるインダクタ部品10を製造できる。また、ネガパターン222は、磁性材又は非磁性材の少なくともいずれかを含んでいればよい。
【0150】
・上記第2実施形態におけるインダクタ部品110の製造方法において、個片化工程S15は省いてもよい。個片部201を1つ分だけ第1シート210及び第2シート220を準備した場合には、個片化工程S15を省けばよい。
【0151】
・上記第2実施形態において説明したインダクタ部品110の製造方法において、第1部分P1又は第3部分P3に相当する部分は、複数の磁性薄帯40と、層間非磁性部50とを有している。ここで、第2シート220を省くと、複数の第1シート210を積層した積層シートが構成される。この積層シートを焼結すると、磁性薄帯40が焼結体である磁性シートを製造できる。この磁性シートにおいては、複数の磁性薄帯40が、第2軸Z、すなわち磁性薄帯40の主面MFに直交する直交軸に沿う方向に積層されている。また、磁性薄帯40は、直交軸に沿う同一の位置において、第1軸X、すなわち磁性薄帯40の主面MFに平行な第1平行軸に沿う方向に2個並んでいる。さらに、磁性薄帯40は、直交軸に沿う同一の位置において、中心軸CA、すなわち直交軸及び第1平行軸に直交する第2平行軸に沿う方向に2個並んでいる。
【0152】
・上記各実施形態において、複数の磁性薄帯40は、規則的に配列していなくてもよい。特に、複数の磁性薄帯40が、部分的に不規則に配列していてもよい。
・上記各実施形態において、素体20に、磁性薄帯40に加えて、コンポジット体が混在していてもよい。例えば、焼結された個片部201を、粉末状の磁性材を含むコンポジット体で覆うことによって、焼結された個片部201の外側にコンポジット体が配置されていてもよい。
【0153】
・上記各実施形態では、電子部品の一例としてインダクタ部品を例示したが、電子部品であればよく、例えば、積層型のコンデンサ部品であってもよい。同様に、電子部品の製造方法の一例としてインダクタ部品の製造方法を例示したが、電子部品の製造方法であればよい。この場合、配線は、インダクタ配線である必要はなく、コンデンサのような平板状の配線であってもよいし、その他公知の形状の配線であってもよい。
【0154】
特許文献1に記載の素体は、無機フィラーの充填率を高めることによって、飽和磁束密度Bsなどの磁性材料としての特性の向上が図られる。しかしながら、特許文献1に記載の技術は、無機フィラーの粒子がランダムに分散した構造を前提としており、他の磁性材料の構造については何ら検討されていない。
【0155】
このような磁性シートは、上記各実施形態のインダクタ部品の素体20など、磁束を透過させるとともに絶縁性が求められるシートとして、好適である。また、このような磁性シートの製造方法であれば、焼結体である磁性薄帯40が規則的に並ぶ構造を効率よく製造しやすい。
【0156】
上記各実施形態及び変更例から把握できる技術的思想を以下に追記する。
<付記1>
焼結体の磁性材からなる平板状の複数の磁性薄帯を有し、複数の前記磁性薄帯が、前記磁性薄帯の主面に対して直交する方向に積層されており、
「M」及び「N」を正の整数とし、且つ「M」及び「N」の少なくともいずれか一方を2以上としたとき、
複数の前記磁性薄帯は、前記積層方向のそれぞれの位置において、前記第1基準軸に沿う方向に「M」個並んでおり、前記第2基準軸に沿う方向に「N」個並んでいる
磁性シート。
【0157】
<付記2>
非磁性材を含む非磁性ペーストにより非磁性層を形成し、前記非磁性層上に磁性材を含む磁性ペーストにより磁性層を形成し、前記磁性層を溝で分割し、前記溝に非磁性材を含む非磁性ペーストを充填することにより、分割磁性層を形成し、
複数の前記分割磁性層を積層することにより、分割磁性層群を形成し、
前記分割磁性層群を焼成することにより、前記非磁性層を焼結体の層間非磁性部に、前記磁性層を焼結体の磁性薄帯にする
磁性シートの製造方法。
【符号の説明】
【0158】
10,110,310…インダクタ部品
20…素体
30,330…インダクタ配線
40…磁性薄帯
41…第1磁性薄帯
41A…第2磁性薄帯
45…金属磁性体
46…絶縁性物質
50…層間非磁性部
60…非磁性部
70…非磁性膜
80…コンポジット部
210…第1シート
211…非磁性層
212…磁性層
220…第2シート
221…配線パターン
AR1…第1範囲
CA…中心軸
MF…主面
MP1…第1端
MP2…第2端
VL…仮想直線
VR…仮想長方形
X…第1軸
Z…第2軸
S11…第1シート準備工程
S12…第2シート準備工程
S13…積層工程
S14…圧着工程
S15…個片化工程
S16…焼結工程
図1
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