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  • 特許-回転電機及び回転電機の製造方法 図1
  • 特許-回転電機及び回転電機の製造方法 図2
  • 特許-回転電機及び回転電機の製造方法 図3A
  • 特許-回転電機及び回転電機の製造方法 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】回転電機及び回転電機の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/25 20160101AFI20240918BHJP
【FI】
H02K11/25
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023522028
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(86)【国際出願番号】 JP2021018690
(87)【国際公開番号】W WO2022244083
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-11-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 駿太
(72)【発明者】
【氏名】仲田 徹
(72)【発明者】
【氏名】室田 浩平
(72)【発明者】
【氏名】今井 達矢
(72)【発明者】
【氏名】阿部 政信
(72)【発明者】
【氏名】木村 真秀
【審査官】上野 力
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-121389(JP,A)
【文献】特開2016-129446(JP,A)
【文献】特開2011-4496(JP,A)
【文献】特開2013-225959(JP,A)
【文献】特開2013-219913(JP,A)
【文献】特開2013-219961(JP,A)
【文献】特開2008-131775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平角線によってそれぞれ形成されたU相コイル、V相コイル、及びW相コイルからなる三相コイルと、
前記三相コイルの中性点を形成し、導電性のプレートからなる中性点バスバーと、
前記三相コイルの温度を検出する温度検出器と、を備えた回転電機であって、
前記中性点バスバーは、前記三相コイルの外周に沿う円弧形状に形成され、
前記三相コイルの内の1つのコイルの一端は、前記中性点バスバーの円周方向における中央近傍に接続され、
前記三相コイルの内の残りの2つのコイルの一端は、それぞれ前記中性点バスバーの円周方向における端部近傍に接続され、
前記温度検出器は、前記中性点バスバーの前記中央近傍であって前記1つのコイルの一端に対向する位置に取り付けられ、
前記中性点バスバーは、径方向の内側に窪む凹部を有し、
前記温度検出器は、前記凹部内における前記中性点バスバーを挟んで前記1つのコイルの一端に対向する位置に設けられる、
回転電機。
【請求項2】
請求項1に記載の回転電機であって、
前記中性点バスバーと前記温度検出器は、モールド材によって一体にされている、
回転電機。
【請求項3】
請求項2に記載された回転電機の製造方法であって。
上型と下型を備えた型枠内において、前記上型及び前記下型に設けられたエジェクタピンで前記中性点バスバーと前記温度検出器とが接触した状態を維持するように挟持してモールド成形を行い、
前記モールド成形によって一体化された前記中性点バスバーと前記温度検出器を前記三相コイルに取り付ける、
回転電機の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機及び回転電機の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
JP2019-47661Aには、三相(U相、V相、W相)の巻線を有した固定子巻線と、固定子コアと、を備えた回転電機が開示されている。
【0003】
JP2019-47661Aの回転電機では、U相巻線の中性端とV相巻線の中性端を接続部材で互いに接続するとともに、V相巻線の中性端とW相巻線の中性端を接続部材で互いに接続し、U相巻線の中性端とV相巻線の中性端を接続する接続部材に温度センサを設けている。
【発明の概要】
【0004】
しかしながら、JP2019-47661Aの回転電機では、V相巻線の中性端とW相巻線の中性端を接続する接続部材に温度センサを設けているため、例えば、V相巻線の中性端とW相巻線の中性端を接続部材の間に電流が流れた場合に、温度を正確に測定できないという問題があった。
【0005】
本発明は、このような技術的課題に鑑みてなされたもので、三相コイルにおけるどのようなコイル間に電流が流れても、三相コイルの温度を正確に測定できる回転電機を提供することを目的とする。
【0006】
本発明のある態様によれば、回転電機は、平角線によってそれぞれ形成されたU相コイル、V相コイル、及びW相コイルからなる三相コイルと、三相コイルの中性点を形成し、導電性のプレートからなる中性点バスバーと、三相コイルの温度を検出する温度検出器と、を備える。当該回転電機においては、中性点バスバーは、三相コイルの外周に沿う円弧形状に形成される。三相コイルの内の1つのコイルの一端は、中性点バスバーの円周方向における中央近傍に接続され、三相コイルの内の残りの2つのコイルの一端は、それぞれ中性点バスバーの円周方向における端部近傍に接続される。温度検出器は、中性点バスバーの中央近傍であって1つのコイルの一端に対向する位置に取り付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の実施形態に係るモータの軸方向の概略断面図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るモータの中性点バスバー近傍の拡大図である。
図3A図3Aは、本発明の実施形態に係る中性点バスバーとサーミスタを金型内にセットした状態を示す図である。
図3B図3Bは、本発明の実施形態に係る金型内にモールド材を注入した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る回転電機としてのモータ100の軸方向の概略断面図である。図2は、本実施形態に係るモータ100の中性点バスバー4近傍の拡大図である。
【0010】
モータ100は、車両に搭載され、三相交流で駆動する三相誘電電動機である。モータ100は、例えば、ハイブリッド車両の駆動用モータジェネレータとして用いられる。図1に示すように、モータ100は、回転軸1と、回転軸1に固定されたロータ2と、ステータコア3と、中性点バスバー4と、を備える。モータ100は、図示しないインバータユニットから電力を供給されることでロータ2を回転させて、回転軸1を回転駆動する。
【0011】
ステータコア3は、円筒形状に形成され、径方向内側にU相コイル31、V相コイル32及びW相コイル33からなる三相コイル30を備える(図2参照)。三相コイル30は、周方向にU相コイル31、V相コイル32及びW相コイル33の順に配置されることによって構成される。
【0012】
U相コイル31、V相コイル32及びW相コイル33は、それぞれU字形状に形成された複数のセグメントコイルを相互に接続することで形成される。セグメントコイルは、断面矩形の導体の周囲を絶縁層で被覆した導線、いわゆる平角線で構成される。平角線は、電気導電率の高い金属線材である。金属線材は、例えば、銅、アルミニウム、銀、金、またはそれらの合金によって形成される。また、絶縁層は、例えば、樹脂被覆によって構成される。樹脂としては、ポリアミド系、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系などを用いることができる。
【0013】
中性点バスバー4は、例えば、導電性の金属プレートにより形成される。図1及び図2に示すように、中性点バスバー4は、三相コイル30の外周に沿う円弧形状に形成される。図2に示すように、本実施形態では、V相コイル32の一端32aが中性点バスバー4の円周方向における中央近傍(接続点4a)に接続され、U相コイル31の一端31a及びW相コイル33の一端33aが、それぞれ中性点バスバー4の円周方向における端部の近傍(接続点4b,4c)に接続される。U相コイル31、V相コイル32及びW相コイル33の他端31b,32b,33bは、インバータユニット(図示せず)に導通する金属製の端子7u,7v,7wにそれぞれ接続される。
【0014】
中性点バスバー4は、接続点4a,4b,4c近傍が円弧の中心方向に突出する形状に形成される。このような形状とすることで、中性点バスバー4の接続点4aと接続点4bとの間の領域R1、及び接続点4aと接続点4cとの間の領域R2が、三相コイル30に接触することを防止でき、これらの領域R1,R2における三相コイル30と中性点バスバー4と絶縁性を確保することができる。
【0015】
図1及び図2に示すように、モータ100は、三相コイル30の温度を検出する温度検出器としてのサーミスタ5をさらに備える。サーミスタ5は、中性点バスバー4の中央近傍(接続点4a近傍)であってV相コイル32の一端32aが接続される位置に対向するように設けられる。別の言い方をすると、サーミスタ5は、中性点バスバー4の中央近傍(接続点4a近傍)を円弧の中心方向に突出させることによって生じた径方向内側に窪む凹部4dに取り付けられる。本実施形態では、中性点バスバー4とサーミスタ5は、モールド材Mによって一体にされる。
【0016】
このように構成された中性点バスバー4では、電流が、U相コイル31とV相コイル32の間、W相コイル33とV相コイル32の間、あるいはU相コイル31とW相コイル33の間のいずれに流れた場合にも、電流が接続点4a(凹部4d)近傍に流れることになる。
【0017】
このため、接続点4aに対向する位置(凹部4d)にサーミスタ5を取り付けることにより、3つの三相コイル30のどのようなコイル間に電流が流れた場合でも、温度を測定することができる。
【0018】
これに対し、サーミスタ5を接続点4a近傍(凹部4d)以外の場所に取り付けた場合、具体的には、例えば、中性点バスバー4における接続点4bと接続点4aの間の領域R1にサーミスタ5を取り付けた場合には、W相コイル33とV相コイル32の間に電流が流れている場合の温度を測定することができない。モータ100がロック状態にある場合、あるいはモータ100の回転速度が極めて低い状態にある場合には、三相コイル30に流れる電流が大きいため、三相コイル30の温度が高くなる。このような状態で、W相コイル33とV相コイル32の間に電流が流れている場合の温度を測定することができない場合には、適切な制御を実行することができず、モータ100が損傷するおそれがある。
【0019】
そこで、本実施形態では、上述のような位置にサーミスタ5を取り付けている。これにより、3つの三相コイル30のどのようなコイル間に電流が流れた場合でも、三相コイル30の温度を正確に測定することができるので、モータ100を適切に制御することができる。
【0020】
また、上述のように、中性点バスバー4とサーミスタ5は、モールド材Mによって一体にされる。ここで、中性点バスバー4とサーミスタ5とを一体化する方法について説明する。
【0021】
本実施形態では、中性点バスバー4とサーミスタ5とをモールド成形によって一体化する。具体的には、図3(A)に示すように、上型6Aと下型6Bによって構成された金型6のキャビティC内に中性点バスバー4とサーミスタ5とをセットする。このとき、上型6Aと下型6Bに設けられたエジェクタピン60a,60bによって、中性点バスバー4とサーミスタ5とが接触した状態を維持するように中性点バスバー4とサーミスタ5とを挟持する。なお、図3(A)及び図3(B)におけるピン6C,6Dは、それぞれ、V相コイル32の他端32bと端子7vとの接続部分が挿通される貫通孔8a、及びU相コイル31の他端31bと端子7uとの接続部分が挿通される貫通孔8bとを成形するためのピンである。
【0022】
その後、金型6のキャビティC内にモールド材Mを注入することによって(図3(B)参照)、中性点バスバー4とサーミスタ5とが一体化される。
【0023】
サーミスタ5を中性点バスバー4に接着剤などによって固定した場合には、サーミスタ5と中性点バスバー4との間に接着剤が介在することになり、サーミスタ5による温度の検出精度が悪化するおそれがある。
【0024】
これに対し、本実施形態では、エジェクタピン60a,60bによって、中性点バスバー4とサーミスタ5とが接触した状態を維持するように挟持してモールド成形を行うことで、中性点バスバー4とサーミスタ5が直接接触するように一体化にされる。これにより、サーミスタ5と中性点バスバー4との間に接着剤が介在することがないので、サーミスタ5の温度を精度良く検出することができる。
【0025】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0026】
モータ100(回転電機)は、平角線によってそれぞれ形成されたU相コイル31、V相コイル32、及びW相コイル33からなる三相コイル30と、三相コイル30の中性点を形成し、導電性のプレートからなる中性点バスバー4と、三相コイル30の温度を検出するサーミスタ5(温度検出器)と、を備える。中性点バスバー4は、三相コイル30の外周に沿う円弧形状に形成され、三相コイル30の内のV相コイル32の一端32aは、中性点バスバー4の円周方向における中央近傍(接続点4a)に接続され、三相コイル30の内のU相コイル31、W相コイル33の一端33aは、それぞれ中性点バスバー4の円周方向における端部近傍に接続される。サーミスタ5(温度検出器)は、中性点バスバー4の中央近傍であってV相コイル32の一端32aに対向する位置に取り付けられる。
【0027】
この構成では、電流が、U相コイル31とV相コイル32の間、W相コイル33とV相コイル32の間、あるいはU相コイル31とW相コイル33の間のいずれかに流れた場合にも、中性点バスバー4の中央近傍(接続点4a)に流れることになる。そこで、サーミスタ5をV相コイル32の一端32aに対向する位置に設けることにより、3つの三相コイル30のどのようなコイル間に電流が流れても、三相コイル30の温度を測定することができる。
【0028】
モータ100(回転電機)では、中性点バスバー4は、径方向の内側に窪む凹部4dを有し、サーミスタ5(温度検出器)は、凹部4dに設けられる。
【0029】
この構成では、サーミスタ5(温度検出器)の径方向外側への飛び出し量を低減することができる。
【0030】
モータ100(回転電機)では、中性点バスバー4とサーミスタ5(温度検出器)は、モールド材Mによって一体にされている。
【0031】
この構成では、中性点バスバー4とサーミスタ5(温度検出器)とが一体化にされているので、サーミスタ5(温度検出器)を接着剤などによって中性点バスバー4に固定する作業を省略することができる。これにより、モータ100(回転電機)の組立時の作業効率を向上させることができる。また、サーミスタ5(温度検出器)と中性点バスバー4との間に接着剤などが介在することがないので、サーミスタ5による温度の検出精度が悪化することを防止できる。
【0032】
モータ100(回転電機)の製造方法では、上型6Aと下型6Bを備えた金型6内において、上型6A及び下型6Bに設けられたエジェクタピン60a,60bで中性点バスバー4とサーミスタ5(温度検出器)とが接触した状態を維持するように挟持してモールド成形を行う。そして、モールド成形によって一体化された中性点バスバー4とサーミスタ5(温度検出器)を三相コイル30に取り付ける。
【0033】
この構成では、中性点バスバー4とサーミスタ5は、直接接触するように一体化にされる。これにより、サーミスタ5と中性点バスバー4との間に接着剤が介在することがないので、サーミスタ5による温度の検出精度が悪化することを防止できる。また、一体化する際に、金型6に別途支持ピンなどを設ける必要がないので、コストの上昇や金型6の構造が複雑化することを抑制できる。さらに、中性点バスバー4とサーミスタ5(温度検出器)とが一体化されたものを、三相コイル30に取り付けているので、モータ100(回転電機)の組立時の作業効率を向上させることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態、上記実施形態及び変形例は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0035】
モータ100は、車両に搭載されるものに限らない。また、中性点バスバー4に係る構成を発電機に適用することも可能である。
【0036】
上記実施形態では、中性点バスバー4の中央近傍(接続点4a)にV相コイル32の一端32aが接続される場合を例に説明したが、これに限らず、中性点バスバー4の中央近傍(接続点4a)にU相コイル31の一端31a、あるいはW相コイル33の一端33aを接続するようにしてもよい。
【0037】
また、上記実施形態では、温度検出器としてサーミスタ5を例に説明したが、これに限らず、他の形式の温度検出器(熱電対、白金測温抵抗体など)であってもよい。
【0038】
上記実施形態では、中性点バスバー4とサーミスタ5とをモールド成形によって一体化した場合を例に説明したこれに限らない。測定誤差を許容できる、あるいは補正できる場合には、接着剤を用いて一体化してもよい。また、サーミスタ5を取付部材などを用いて中性点バスバー4に取り付けるようにしてもよい。
【0039】
中性点バスバー4の形状は、絶縁性が確保されていれば、領域R1,R2部分を径方向外側に膨らませなくてもよい。
【0040】
上記実施形態では、U相コイル31及びV相コイル32の他端31b,32bがモールド材Mで囲まれている場合を例に説明したが、これに限らず、W相コイル33の他端33bまでもモールド材で囲むようにしてもよい。
図1
図2
図3A
図3B