(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】樹脂シート及び成形体
(51)【国際特許分類】
C08J 5/18 20060101AFI20240918BHJP
C08K 5/57 20060101ALI20240918BHJP
C08L 27/24 20060101ALI20240918BHJP
C08K 5/09 20060101ALI20240918BHJP
C08K 5/10 20060101ALI20240918BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20240918BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240918BHJP
C08K 3/28 20060101ALI20240918BHJP
C08L 23/30 20060101ALI20240918BHJP
C08K 5/13 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C08J5/18 CEV
C08K5/57
C08L27/24
C08K5/09
C08K5/10
C08K3/34
C08K3/22
C08K3/28
C08L23/30
C08K5/13
(21)【出願番号】P 2024518280
(86)(22)【出願日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 JP2023022463
(87)【国際公開番号】W WO2023243724
(87)【国際公開日】2023-12-21
【審査請求日】2024-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2022098249
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100194250
【氏名又は名称】福原 直志
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【氏名又は名称】春田 洋孝
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】兼原 克樹
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-161166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/18
C08K 5/57
C08L 27/24
C08K 5/09
C08K 5/10
C08K 3/34
C08K 3/22
C08K 3/28
C08L 23/30
C08K 5/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂シートであって、
前記樹脂シートは、塩素化ポリ塩化ビニルと、ジメチルスズ系化合物と、を含み、
前記樹脂シートが、さらに、軟化点が50℃以上の滑剤を含み、
前記樹脂シートが、さらに、ゼオライト及び酸化防止剤を含み、
前記滑剤が、酸化ポリエチレン、脂肪酸エステル及びヒドロキシ脂肪酸からなる群より選択される1種または2種以上であり、
前記塩素化ポリ塩化ビニルの塩素含有量が、60質量%以上であり、
JIS K 7191-1 A法に準拠して測定された、前記樹脂シートの荷重たわみ温度が、80℃以上であり、
前記樹脂シートにおいて、前記樹脂シートの総質量に対する、前記塩素化ポリ塩化ビニルの含有量の割合が、
78質量%以上
85質量%以下であり、
前記樹脂シートにおいて、前記ジメチルスズ系化合物の含有量100質量部に対する、前記滑剤の含有量の割合が、40質量部~65質量部であり、
前記塩素化ポリ塩化ビニルの含有量100質量部に対する、前記ゼオライトの含有量の割合は、0.2~1.0質量部である、樹脂シート。
【請求項2】
前記樹脂シートが、さらに、モリブデン系化合物及び水酸化マグネシウムを含む、請求項1に記載の樹脂シート。
【請求項3】
前記モリブデン系化合物が、オクタモリブデン酸アンモニウムである、請求項2に記載の樹脂シート。
【請求項4】
前記樹脂シートにおいて、前記ジメチルスズ系化合物の含有量100質量部に対する、前記滑剤の含有量の割合が、40質量部~55質量部である、請求項1又は2に記載の樹脂シート。
【請求項5】
前記樹脂シートにおいて、前記ジメチルスズ系化合物の含有量100質量部に対する、前記滑剤の含有量の割合が、40質量部~52質量部である、請求項1または2に記載の樹脂シート。
【請求項6】
前記樹脂シートにおいて、前記塩素化ポリ塩化ビニルの含有量100質量部に対する、前記モリブデン系化合物及び前記水酸化マグネシウムの合計含有量の割合が、2.0質量部~10.0質量部である、請求項2に記載の樹脂シート。
【請求項7】
請求項1または2に記載の樹脂シートの成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂シート及び成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示すように、自動車、バス、鉄道のような車両、船舶、航空機等の輸送機器、建築物等の内装材には、塩化ビニル樹脂組成物を成形することで得られる樹脂シートが適用されている。
【0003】
かかる塩化ビニル樹脂組成物は、加工性に優れ、さらに、得られる樹脂シートが耐衝撃性、耐薬品性及び難燃性等に優れることから、前記内装材として、好ましく用いられている。
【0004】
このような内装材を、特に、航空機のような輸送機器に適用する際には、難燃性を内装材に付与するとともに、発煙性を抑制することが求められ、かかる機能を発揮させるために、塩化ビニル樹脂組成物に、難燃剤としてモリブデン系化合物を添加することが知られている。
【0005】
また、前記樹脂シートは、例えば、加熱下で混錬することにより塩化ビニル樹脂組成物を調製し、その後、得られた塩化ビニル樹脂組成物を押出成形により成形することにより製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記の通り、塩化ビニル樹脂組成物にモリブデン系化合物が含まれていると、押出機による押し出し時の加熱によりポリ塩化ビニル系樹脂の熱分解が誘発される虞があるという問題があった。そこで、ポリ塩化ビニル系樹脂の熱分解を抑制するために、塩化ビニル樹脂組成物に安定剤を添加することが考えられる。
【0008】
一方で、欧州においては、人の健康や環境の保護のために化学物質を管理するREACH規則が適用されている。REACH規則に合致するために、安定剤としてジメチルスズ系化合物を使用することが考えられる。しかしながら、ジメチルスズ系化合物を使用すると、樹脂シートの耐熱性(熱変形温度)が低下するという問題があった。
【0009】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、ジメチルスズ系化合物を含んでいても優れた耐燃性を有する樹脂シートと、前記樹脂シートの成形体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。
[1].樹脂シートであって、
前記樹脂シートは、塩素化ポリ塩化ビニルと、ジメチルスズ系化合物と、を含み、前記塩素化ポリ塩化ビニルの塩素含有量が、60質量%以上であり、JIS K 7191-1 A法に準拠して測定された、前記樹脂シートの荷重たわみ温度が、80℃以上である、樹脂シート。
[2].前記樹脂シートが、さらに、軟化点が50℃以上の滑剤を含む、[1]に記載の樹脂シート。
[3].前記滑剤が、酸化ポリエチレン、脂肪酸エステル及びヒドロキシ脂肪酸からなる群より選択される1種または2種以上である、[2]に記載の樹脂シート。
[4].前記樹脂シートが、さらに、モリブデン系化合物及び水酸化マグネシウムを含む、[1]~[3]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
[5].前記モリブデン系化合物が、オクタモリブデン酸アンモニウムである、[4]に記載の樹脂シート。
[6].前記樹脂シートにおいて、前記樹脂シートの総質量に対する、前記塩素化ポリ塩化ビニルの含有量の割合が、70質量%以上である、[1]~[5]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
[7].前記樹脂シートにおいて、前記ジメチルスズ系化合物の含有量100質量部に対する、前記滑剤の含有量の割合が、40質量部~65質量部である、[2]または[3]に記載の樹脂シート。
[8].前記樹脂シートにおいて、前記塩素化ポリ塩化ビニルの含有量100質量部に対する、前記モリブデン系化合物及び前記水酸化マグネシウムの合計含有量の割合が、2.0質量部~10.0質量部である、[4]または[5]に記載の樹脂シート。
[9].前記樹脂シートが、さらに、ゼオライト及び酸化防止剤のうち少なくとも一方を含む、[1]~[8]のいずれか一項に記載の樹脂シート。
[10].[1]~[9]のいずれか一項に記載の樹脂シートの成形体。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ジメチルスズ系化合物を含んでいても優れた耐燃性を有する樹脂シートと、前記樹脂シートの成形体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る樹脂シートの一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1に示す樹脂シートの製造装置の一例を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本実施形態について詳細に説明する。
【0014】
<<樹脂シート>>
本実施形態の樹脂シート1は、塩素化ポリ塩化ビニルと、ジメチルスズ系化合物と、を含み、前記塩素化ポリ塩化ビニルの塩素含有量が、60質量%以上であり、JIS K 7191-1 A法に準拠して測定された、前記樹脂シートの荷重たわみ温度が、80℃以上であることを特徴とする。
この樹脂シート1は、ジメチルスズ系化合物を含んでいても優れた耐燃性を有する。
【0015】
以下、本実施形態の樹脂シート1の一例として、塩素化ポリ塩化ビニルと、安定剤と、滑剤と、補強剤と、加工助剤と、酸化防止剤と、フィラーと、難燃剤とを含有するものを説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る樹脂シートの一例を模式的に示す断面図である。
【0017】
<塩素化ポリ塩化ビニル>
樹脂シート1には、その主材料として、塩素化ポリ塩化ビニルが含まれる。これにより、樹脂シート1の発煙及び発熱抑制効果を得ることができる。また、樹脂シート1を押出成形により成形する際に、樹脂組成物の押し出し性を向上し、樹脂シート1を均一な厚さを有するものとして成形することができる。そのため、得られる樹脂シート1は、優れた外観性を有するものとして成形される。
【0018】
塩素化ポリ塩化ビニルは、-CHCl-CHCl-で表される基を繰り返し単位として、複数有するポリマーである。
【0019】
塩素化ポリ塩化ビニルの塩素含有量、すなわち、塩素濃度率は、60質量%以上に設定され、好ましくは61質量%以上68質量%以下、より好ましくは63質量%以上67質量%以下に設定される。塩素化ポリ塩化ビニルの塩素含有量を上記下限値以上とすることで、耐熱性が向上するという効果が得られる。塩素化ポリ塩化ビニルの塩素含有量を上記上限値以下とすることで、樹脂シート作成時の加工性が向上するという効果が得られる。
【0020】
塩素化ポリ塩化ビニルの数平均重合度は、400以上1200以下であることが好ましく、600以上1000以下であることがより好ましい。塩素化ポリ塩化ビニルの数平均重合度を上記下限値以上とすることで、樹脂シート1の耐熱性をより向上せることができる。塩素化ポリ塩化ビニルの数平均重合度を上記上限値以下とすることで、樹脂シート1の加工性をより向上させることができる。
【0021】
樹脂シート1において、樹脂シート1の総質量に対する、塩素化ポリ塩化ビニルの含有量の割合は、70質量%以上であることが好ましく、75質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、78質量%以上85質量%以下であることがさらに好ましい。これにより、樹脂シート1に塩素化ポリ塩化ビニルが含まれることによる効果を、より向上させることができる。
【0022】
<安定剤>
樹脂シート1には、安定剤として、ジメチルスズ系化合物が含まれる。これにより、樹脂シート1の熱や光による分解や着色を抑制することができる。
【0023】
本明細書においては、「ジメチルスズ系化合物」とは、2個のメチル基がスズ原子と共有結合した構造を含む化合物を意味する。
欧州においては、人の健康や環境の保護のために化学物質を管理するREACH規則が適用されている。ジメチルスズ系化合物は、REACH規則に合致する化合物である。
【0024】
樹脂シート1において、塩素化ポリ塩化ビニルの含有量100質量部に対する、安定剤の含有量の割合は、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上8.0質量部以下であることがより好ましい。これにより、樹脂シート1の機械的強度を維持しつつ、樹脂シート1の熱や光による分解や着色をより抑制することができる。
【0025】
<滑剤>
樹脂シート1には、滑剤が含まれていてもよい。これにより、樹脂シート1にジメチルスズ系化合物が含まれることに起因する、樹脂シート1の耐熱性(熱変形温度)の低下をより抑制することができる。また、樹脂シート1の成形時において、金型やローラー等に対して優れた滑り性を発揮させて、成形性をより向上させることができる。
【0026】
滑剤の軟化点は、50℃以上であることが好ましく、60℃以上であることがより好ましく、80℃以上であることがさらに好ましく、82℃以上であることが特に好ましい。これにより、樹脂シート1の耐熱性の低下をより抑制することができる。
【0027】
滑剤としては、例えば、酸化ポリエチレン、脂肪酸エステル、ヒドロキシ脂肪酸、金属石鹸類、高級脂肪族アルコール、合成ワックス類等が挙げられ、これらのうちの、1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、なかでも、酸化ポリエチレン、脂肪酸エステル、ヒドロキシ脂肪酸が好ましい。
【0028】
酸化ポリエチレンのタイプとしては、例えば、高酸化タイプ、微酸化タイプ、酸変性タイプ等が挙げられる。
【0029】
酸化ポリエチレンの重量平均分子量は、1000以上3000以下であることが好ましく、1500以上2500以下であることがより好ましく、1800以上2300以下であることがさらに好ましい。これにより、樹脂シート1に滑剤が含まれることによる効果を、より向上させることができる。
【0030】
脂肪酸エステルとしては、例えば、ステアリン酸ブチル、トリグリセリド等が挙げられる。
【0031】
ヒドロキシ脂肪酸としては、例えば、ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
【0032】
樹脂シート1において、塩素化ポリ塩化ビニルの含有量100質量部に対する、滑剤の含有量の割合は、0.05質量部以上5.00質量部以下であることが好ましく、0.30質量部以上4.00質量部以下であることがより好ましい。これにより、樹脂シート1に滑剤が含まれることによる効果を、より向上させることができる。
【0033】
樹脂シート1において、ジメチルスズ系化合物の含有量100質量部に対する、滑剤の含有量の割合は、40質量部~65質量部であることが好ましく、41質量部~55質量部であることがより好ましく、43質量部~52質量部であることがさらに好ましい。これにより、樹脂シート1に滑剤が含まれることによる効果を、より向上させることができる。
【0034】
なお、樹脂シート1に対する、滑剤の添加は、樹脂シート1に含まれる構成材料の組み合わせ等によっては、省略することもできる。
【0035】
<補強剤>
樹脂シート1には、補強剤が含まれていてもよい。これにより、主として樹脂シート1の耐衝撃性をより向上させることができ、さらには、樹脂シート1の成形時における成形性をより向上させることができる。
【0036】
補強剤としては、例えば、塩素化ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、多成分アクリルゴム系樹脂等が挙げられ、なかでも、多成分アクリルゴム系樹脂が好ましく用いられる。これにより、樹脂シート1の耐久性をより向上させることができる。
【0037】
多成分アクリルゴム系樹脂(アクリル系ポリマー)としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチルのようなアクリル酸エステルを主体として、これらのモノマーと、2-クロロエチルビニルエーテル、メチルビニルケトン、アクリル酸、スチレン、アクリロニトリル、ブタジエン等との共重合体であり、例えば、カネカ社製「カネエースFM」、呉羽化学社製「クレハKM-334」等が挙げられる。
【0038】
多成分アクリルゴム系樹脂の重量平均分子量は、1.0×105以上1.0×107以下であることが好ましく、1.0×106以上7.0×106以下であることがより好ましい。
【0039】
樹脂シート1において、塩素化ポリ塩化ビニルの含有量100質量部に対する、多成分アクリルゴム系樹脂の含有量の割合は、5.0質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、6.0質量部以上14.0質量部以下であることがより好ましい。これにより、樹脂シート1の耐衝撃性をより向上させることができる。
【0040】
なお、樹脂シート1に対する、補強剤の添加は、樹脂シート1を適用する内装材に求められる耐衝撃性に応じて、省略することもできる。
【0041】
<加工助剤>
樹脂シート1には、加工助剤が含まれていてもよい。これにより、樹脂シート1の成形時における成形性をより向上させることができる。
【0042】
加工助剤としては、例えば、アクリル系加工助剤が用いられ、具体的には、2-エチルヘキシルアクリレート・ブチルアクリレート共重合体等のアクリル酸エステル共重合体(例えば、アクリル酸エステルの高分子量共重合体)、及びメチルメタクリレートとアクリル酸エステルとの共重合体等が挙げられる。
【0043】
加工助剤の重量平均分子量は、1.0×105以上5.0×106以下であることが好ましく、7.0×105以上4.0×106以下であることがより好ましく、1.3×106以上3.0×106以下であることがさらに好ましい。
【0044】
樹脂シート1において、塩素化ポリ塩化ビニルの含有量100質量部に対する、加工助剤の含有量の割合は、1.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以上10.0質量部以下であることがより好ましい。これにより、樹脂シート1の成形時における成形性をより向上させることができる。
【0045】
なお、樹脂シート1に対する、加工助剤の添加は、樹脂シート1に含まれる構成材料の組み合わせ等によっては、省略することもできる。
【0046】
<酸化防止剤>
樹脂シート1には、酸化防止剤が含まれていてもよい。これにより、樹脂シート1に含まれる構成材料の酸化をより防止することができる。
また、樹脂組成物にモリブデン系化合物が含まれていると、押出機による押し出し時の加熱により塩素化ポリ塩化ビニルの熱分解が誘発される虞がある。一方、樹脂シート1に酸化防止剤が含まれることで、塩素化ポリ塩化ビニルの熱分解の誘発をより抑制することができる。
【0047】
酸化防止剤としては、トリスノニルフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、ジフェニルデシルホスファイトのようなホスファイト系酸化防止剤(リン系酸化防止剤);ヒンダードフェノール系酸化防止剤;アルキル化モノフェノール、アルキル化ヒドロキノンのようなフェノール系酸化防止剤;アルキル化tert-ブチルフェニレンジアミン、ヒドロキシルアミンのようなアミン系酸化防止剤等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、なかでも、ホスファイト系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤が好ましい。これにより、樹脂シート1に酸化防止剤が含まれることによる効果を、より向上させることができる。
【0048】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)、ペンタエリトリトール=テトラキス[3-(3’,5’-ジ-tert-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオナート]等が挙げられる。
【0049】
樹脂シート1において、塩素化ポリ塩化ビニルの含有量100質量部に対する、酸化防止剤の含有量の割合は、0.01質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上2.0質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以上1.5質量部以下であることがさらに好ましい。これにより、塩素化ポリ塩化ビニルの熱分解の誘発をより抑制することができる。
【0050】
なお、樹脂シート1に対する、酸化防止剤の添加は、樹脂シート1に含まれる構成材料の組み合わせ等によっては、省略することもできる。
【0051】
<ゼオライト>
樹脂シート1には、ゼオライトが含まれていてもよい。樹脂組成物にモリブデン系化合物が含まれていると、押出機による押し出し時の加熱により塩素化ポリ塩化ビニルの熱分解が誘発される虞がある。一方、樹脂シート1にゼオライトが含まれることで、塩素化ポリ塩化ビニルの熱分解の誘発をより抑制することができる。
【0052】
ゼオライトとしては、特に限定されないが、例えば、チャバサイト、モルデナイト、エリオナイト、クリノプチロライトのような天然ゼオライト、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライトのような合成ゼオライト等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
ゼオライトは、樹脂シート1において、粒子を構成して含まれている。この粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、好ましくは1.0μm以上50.0μm以下程度、より好ましくは5.0μm以上30.0μm以下程度に設定される。これにより、樹脂シート1において、ゼオライトを凝集させることなく、より均一に分散させることができる。
【0054】
本明細書において「平均粒子径」とは、粒子の50%累積時の粒子径を意味し、「D50」と称することがある。
本明細書において、球状以外の形状の粒子の粒子径は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定法により求める。
【0055】
ゼオライトを含有する粒子の形状は、特に限定されず、球状、楕円状、偏平状及び針状等のいずれのものであってもよい。
【0056】
樹脂シート1において、塩素化ポリ塩化ビニルの含有量100質量部に対する、ゼオライトの含有量の割合は、0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上1.0質量部以下であることがより好ましい。これにより、塩素化ポリ塩化ビニルの熱分解の誘発をより抑制することができる。
【0057】
なお、樹脂シート1に対する、ゼオライトの添加は、樹脂シート1に含まれる構成材料の組み合わせ等によっては、省略することもできる。
【0058】
樹脂シート1は、ゼオライト及び酸化防止剤のうち少なくとも一方を含んでいることが好ましい。なお、本実施形態のように、樹脂シート1に対して、ゼオライトと酸化防止剤との双方を添加する構成とすることで、塩素化ポリ塩化ビニルの熱分解の誘発をより抑制することができる。
【0059】
<難燃剤>
樹脂シート1には、難燃剤が含まれていてもよい。これにより、樹脂シート1の難燃性をより向上し、樹脂シート1の燃焼をより抑制して、その安全性をより向上させることができる。
【0060】
難燃剤としては、三酸化アンチモンのようなアンチモン系化合物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムのような金属水酸化物;クレジルジフェニルホスフェート、トリスクロロエチルフォスフェート、トリスクロロプロピルフォスフェート、トリスジクロロプロピルフォスフェートのようなリン系化合物;メラミン系化合物、グアニジン系化合物のような窒素含有化合物;塩素化パラフィンのようなハロゲン系化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
さらに、樹脂シート1には、上記の難燃剤の他に、モリブデン系化合物が含まれていてもよい。これにより、樹脂シート1の難燃性をより向上させるとともに、樹脂シート1の発煙性をより抑制することで樹脂シート1の低毒ガス性を実現して、その安全性をより向上させることができる。
【0062】
本明細書においては、「モリブデン系化合物」とは、構成元素としてモリブデンを含む化合物を意味する。
同様に、「アンチモン系化合物」とは、構成原子としてアンチモンを含む化合物を意味し、「リン系化合物」とは、構成元素としてリンを含む化合物を意味し、「ハロゲン系化合物」とは、構成元素としてハロゲンを含む化合物を意味する。
【0063】
樹脂シート1は、難燃剤として、モリブデン系化合物及び水酸化マグネシウムを含むことが好ましい。これにより、樹脂シート1の難燃性をより向上させることができる。
【0064】
樹脂シート1において、塩素化ポリ塩化ビニルの含有量100質量部に対する、難燃剤の含有量の割合は、0.1質量部以上20.0質量部以下であることが好ましく、0.5質量部以上8.0質量部以下であることがより好ましい。これにより、樹脂シート1の難燃性をより向上させることができる。
【0065】
モリブデン系化合物は、樹脂シート1において、粒子を構成して含まれており、より詳しくは、モリブデン系化合物の一次粒子や、モリブデン系化合物以外の他の難燃剤の一次粒子を含む二次粒子を構成して含まれている。この粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、例えば、好ましくは1.0μm以上50.0μm以下程度、より好ましくは3.0μm以上15.0μm以下程度に設定される。これにより、樹脂シート1において、モリブデン系化合物を凝集させることなく、より均一に分散させることができる。
【0066】
モリブデン系化合物を含有する粒子の形状は、特に限定されず、球状、楕円状、偏平状及び針状等のいずれのものであってもよい。なお、本明細書において、その粒子の粒子径とは、各形状を備える粒子における最大径のことを言い、例えば、球状をなす場合には、直径のことをいう。
【0067】
モリブデン系化合物としては、特に限定されないが、例えば、三酸化モリブデン、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸マグネシウム、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸バリウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、二硫化モリブデン、窒化モリブデンのような無機モリブデン系化合物;ジアルキルジチオリン酸モリブデンのような有機モリブデン系化合物等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、なかでも、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸亜鉛、三酸化モリブデンが好ましく、モリブデン酸アンモニウムがより好ましい。
【0068】
モリブデン酸アンモニウムとしては、例えば、オクタモリブデン酸アンモニウム、ヘプタモリブデン酸アンモニウム等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、なかでも、オクタモリブデン酸アンモニウムが好ましい。これにより、樹脂シート1にモリブデン系化合物が含まれることによる効果を、より向上させることができる。
【0069】
モリブデン系化合物を含有する粒子は、その表面に、炭化水素基を備えるカップリング剤が連結されたものであってもよい。
【0070】
カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤等を用いることができる。
【0071】
樹脂シート1において、塩素化ポリ塩化ビニルの含有量100質量部に対する、モリブデン系化合物及び水酸化マグネシウムの合計含有量の割合は、2.0質量部以上10.0質量部以下であることが好ましく、2.5質量部以上8.0質量部以下であることがより好ましく、3.0質量部以上5.0質量部以下であることがさらに好ましい。これにより、樹脂シート1の発煙性をより抑制することができる。
【0072】
なお、樹脂シート1に対する、難燃剤の添加は、樹脂シート1を適用する内装材の用途に応じて、すなわち、樹脂シート1に求められる難燃特性に応じて、省略することもできる。
【0073】
<顔料>
樹脂シート1には、色材として、顔料が含まれていてもよい。
【0074】
この顔料としては、要求される着色(色調)に応じて選択され、例えば、酸化チタン、カーボンブラックの他、アゾ系、ベンズイミダゾロン系、ジアリライド系、キナクリドン系、イソインドリノン系、バット系、フタロシアニン系、ジオキサン系等の有機顔料や、チタンイエロー、黄鉛等の無機顔料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0075】
樹脂シート1における、塩素化ポリ塩化ビニルの含有量100質量部に対する、顔料の含有量の割合は、要求される着色(色調)に応じて設定されるが、0.01質量部以上8.00質量部以下であることが好ましく、0.05質量部以上6.00質量部以下であることがより好ましい。これにより、樹脂シート1に顔料が含まれることによる効果を、より向上させることができる。
【0076】
樹脂シート1において、モリブデン系化合物の一次粒子及びモリブデン系化合物を含有する二次粒子は、白色系の色を有している。そのため、樹脂シート1が有色系の顔料を含有する場合に、モリブデン系化合物を含有する粒子に起因する斑点模様がより顕著に視認されることから、かかる場合に、本発明の樹脂シート1がより好適に適用される。
【0077】
樹脂シート1に対する、顔料の添加は、樹脂シート1に対して、着色する必要がない場合、省略することもできる。
【0078】
樹脂シート1は、上述した、塩素化ポリ塩化ビニル、安定剤、滑剤、補強剤、加工助剤、酸化防止剤、ゼオライト、難燃剤、及び顔料の他に、例えば、紫外線吸収剤、可塑剤、帯電防止剤等を含んでいてもよい。
【0079】
樹脂シート1の厚さは、好ましくは0.5mm以上8.0mm以下、より好ましくは1.0mm以上5.0mm以下に設定される。これにより、樹脂シート1をより軽量化しつつ、その強度をより向上させることができる。
【0080】
樹脂シート1は、以下に示すような耐熱性を示す。
【0081】
すなわち、JIS K 7191-1 A法に準拠して測定された、樹脂シート1の荷重たわみ温度が、80℃以上である。これにより、樹脂シート1は、ジメチルスズ系化合物を含んでいても優れた耐熱性を有する。
【0082】
樹脂シート1の荷重たわみ温度は、75℃以上100℃以下であることが好ましく、76℃以上95℃以下であることがより好ましく、78℃以上90℃以下であることがさらに好ましい。
【0083】
また、樹脂シート1は、以下に示すような難燃性を示すことが好ましい。
【0084】
すなわち、ASTM E906に規定されたヒートリリース試験に準拠して、樹脂シート1を燃焼させた際に、樹脂シート1の着火から5分以内で測定された最大発熱速度が65kW/m2以下であることが好ましく、55kW/m2以下であることがより好ましい。これにより、樹脂シート1の難燃性をより向上させることができる。
【0085】
また、樹脂シート1の着火から2分間における総発熱量が65kW・min/m2以下であることが好ましく、55kW・min/m2以下であることがより好ましい。これにより、樹脂シート1の難燃性をより向上させることができる。
【0086】
さらに、ASTM E662に規定された発煙性試験、すなわち、NBSスモークチャンバーを用いた燃焼時の発煙濃度試験は、4.0分間の燃焼時における発煙濃度(Ds)が200以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましい。これにより、樹脂シート1の煙の発生をより抑制することができる。
【0087】
樹脂シート1は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0088】
<<樹脂シートの製造方法>>
まず、樹脂シート1の製造方法を説明するのに先立って、樹脂シート1の製造に用いる製造装置10について説明する。
【0089】
図2は、
図1に示す樹脂シートの製造装置の一例を模式的に示す側面図である。なお、
図2では、一部を誇張して図示しており、実際の寸法とは大きく異なる。
【0090】
図1に示す平板状をなす樹脂シート1は、製造装置10を用いて、塩素化ポリ塩化ビニルと、ジメチルスズ系化合物とを含有する樹脂組成物を成形することにより製造される。
【0091】
この製造装置10は、
図2に示すように、供給部100と、押出機200と、成形部300と、冷却部400と、切断部500とを有している。
【0092】
供給部100は、樹脂組成物が貯留されており、貯留された樹脂組成物を押出機200に供給するものである。供給部100では、樹脂組成物が混合(混練)された状態で貯留されている。
【0093】
押出機200は、供給部100から供給された樹脂組成物を押出法によりシートとして押し出すものである。押出機200は、樹脂組成物が通過する流路と、流路内に設けられたスクリューとを有している。スクリューが回転することにより、樹脂組成物がシートとして押し出される。
【0094】
ここで、押出機200による樹脂組成物の押し出しの際には、押出機200が備える押出機バレル(シリンダー)の温度設定、及びスクリューの回転により、樹脂組成物が加熱される。これにより、供給部100から押出機200に供給された樹脂組成物が連続的に加熱されることとなる。樹脂組成物は、通常、120℃以上200℃以下程度、より高温とされる場合には、170℃以上200℃以下程度の加熱温度に加熱される。
【0095】
成形部300は、本実施形態では、3つのローラー301、302、303を有している。各ローラー301~303は、鉛直方向に並んで配置されており、互いに独立して回転するよう構成されている。これらローラー301~303には、押し出されたシート材が掛け回され、ローラー301~303の間でシート材がそれぞれ挟持されて均一な厚さに成形される。
【0096】
冷却部400は、複数の冷却ローラー401を有している。各冷却ローラー401が成形されたシートの一方の面と当接し、これにより、このシートが冷却される。
【0097】
切断部500は、刃部501を有し、該刃部501によってシートを所定の長さに切断するものである。
【0098】
このような製造装置10を用いて、例えば、以下のようにして、樹脂シート1を製造することができる。
【0099】
[1]まず、塩素化ポリ塩化ビニルを含有する粉体に、ジメチルスズ系化合物を添加し、必要に応じて、さらに、安定剤と、滑剤と、補強剤と、加工助剤と、酸化防止剤と、ゼオライトと、難燃剤と、からなる群より選択される1種又は2種以上を添加し、その後、スーパーミキサーやヘンシェルミキサー、ブレンダー等を用いて混練することで樹脂組成物を調製する。
【0100】
[2] 次に、調製した樹脂組成物を、製造装置10を用いて成形することで樹脂シート1を得る。
【0101】
上述した製造装置10を用いた製造方法では、供給部100から供給された樹脂組成物が押出機200によって連続的にシート材が押し出され、成形部300によって、表面が平坦化されて所定の厚さに成形される。そして、冷却部400と当接して冷却され、切断部500によって所定の長さに切断されて樹脂シート1が得られる。
【0102】
なお、本実施形態では、切断されたシートを樹脂シート1として説明したが、シートを切断するのを省略し、樹脂シート1は、シートをロール状に巻回されたものであってもよい。
【0103】
また、製造装置10では、ローラー301、302、303に冷却機能を付与し、成形部300を冷却部として機能させてもよい。
【0104】
以上のような製造装置10によって、樹脂組成物を成形することで、樹脂シート1を安定的に得ることができる。
【0105】
<<成形体>>
本実施形態の成形体は、樹脂シート1の成形体である。前記成形体は、樹脂シート1を熱成形(真空成型)し、任意形状化することで得られる。
【0106】
樹脂シート1及びその成形体は、自動車、バス、鉄道のような車両、船舶、航空機、宇宙船等の輸送機器、建築物等の内装材に適用可能であり、特に、発煙性が抑制されていることから、より高い安全性が求められる輸送機器用の内装材として好ましく用いられる。
【0107】
以上、本発明の樹脂シート、樹脂シートの製造方法、及び樹脂シートの成形体について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、樹脂組成物には、任意の構成物が付加されていてもよい。
【実施例】
【0108】
以下、実施例に基づいて本実施形態をより具体的に説明する。
1.原材料の準備
樹脂組成物を調製するための原材料として、それぞれ以下に示すものを用意した。
【0109】
(塩素化ポリ塩化ビニル(CPVC))
・塩素化ポリ塩化ビニル(カネカ社製、「H-516A」;塩素濃度65%、重合度800)
【0110】
(安定剤)
・ジメチルスズ系化合物(日東化成社製、「AT-1500」、ジメチルスズメルカプト)
【0111】
(滑剤)
・ヒドロキシ脂肪酸(エメリーオレオケミカルズ社製、「LoxiolG32」)
・ヒドロキシ脂肪酸(エメリーオレオケミカルズ社製、「LoxiolG21」)
・高分子複合エステル(エメリーオレオケミカルズ社製、「VPN963」)
・酸化ポリエチレン(Honeywell社製、「A-C629A」)
・酸化ポリエチレン(三井化学社製、「HW220MP」;微酸化、分子量2000)
(補強剤)
・アクリル(MMA/BA/EA)系ポリマー(カネカ社製、「FM-50」)
【0112】
(加工助剤)
・アクリル(MMA/BA)系ポリマー(カネカ社製、「PA-20」;分子量小) ・アクリル(MMA/BA)系ポリマー(カネカ社製、「PA-40」;分子量中)
【0113】
(酸化防止剤)
・フェノール系酸化防止剤(BASFジャパン社製、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、「Irganox1010」)
【0114】
(ゼオライト)
・ゼオライト(東ソー社製、「GLS-1000」)
【0115】
(難燃剤)
・水酸化マグネシウム(協和化学工業社製、「KISUMA 5J」)
・モリブデン系化合物(クライマックス社製、「AMO-W」、オクタモリブデン酸アンモニウム)
【0116】
2.樹脂シートの製造
[実施例1]
[1]まず、上記で示した原材料のうち表1に示すものについて、表1に示す質量部でスーパーミキサーにて、100℃まで昇温しながら撹拌混合した後、30℃まで冷却することにより樹脂組成物を調製した。
【0117】
[2]次に、調製された樹脂組成物を、
図2に示す製造装置10が備える押出機200に収納し、押し出すことで、溶融状態とされたシートを得た。そして、溶融状態とされたシートをローラー301~303に掛け回し、挾持することで、平坦化し、その後、冷却部400にて冷却した。そして、切断部500によって所定長さで切断することにより、厚さ2.0mmの樹脂シート1を得た。
【0118】
[実施例2、比較例1]
前記工程[1]において、樹脂組成物を調製する際に用いた原材料、さらには、樹脂組成物に含まれる各原材料の質量部を、表1に示すようにしたこと以外は、前記実施例1と同様にして、実施例2及び比較例1の樹脂シート1を得た。
【0119】
3.樹脂シートの耐熱性の評価
各実施例及び比較例の樹脂シートについて、それらの耐熱性について、以下の方法で評価した。
【0120】
<荷重たわみ温度>
各実施例及び比較例の樹脂シートについて、以下の方法に従って、荷重たわみ温度を測定した。
ISO75-1に従い、HDT試験装置を用いて、荷重1.80MPaの条件(A法)にて荷重たわみ温度(単位:℃)を測定した。
HDT(荷重たわみ温度)試験装置としては、東洋精機製作所社製「6M-2」(商品名)を用いた。
【0121】
以上のようにして得られた各実施例及び比較例の樹脂シートにおける評価結果を、それぞれ、下記の表1に示す。
【0122】
【0123】
実施例1及び2並びに比較例1の樹脂シートは、ジメチルスズ系化合物を含んでいるので、REACH規則を満たしている。
また、実施例1及び2の樹脂シートの荷重たわみ温度は80℃以上となり、優れた耐熱性を有していることが確認された。
【0124】
一方で、比較例1における樹脂シートの荷重たわみ温度は80℃未満となり、十分な耐熱性を有していないことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0125】
本発明は、ジメチルスズ系化合物を含んでいても優れた耐燃性を有する樹脂シートと、前記樹脂シートの成形体を提供することができる。
【符号の説明】
【0126】
1・・・樹脂シート
10・・・製造装置
100・・・供給部
200・・・押出機
300・・・成形部
301・・・ローラー
302・・・ローラー
303・・・ローラー
400・・・冷却部
401・・・ローラー
500・・・切断部
501・・・刃部