(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】紫外線レーザー印刷用クルパック紙および加工品
(51)【国際特許分類】
B41M 5/26 20060101AFI20240918BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20240918BHJP
D21H 19/64 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
B41M5/26 610
D21H27/00 F
D21H19/64
(21)【出願番号】P 2024538638
(86)(22)【出願日】2023-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2023045829
【審査請求日】2024-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2022205390
(32)【優先日】2022-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】東川 一希
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 壮
(72)【発明者】
【氏名】塩田 隼介
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-132069(JP,A)
【文献】特開平6-336089(JP,A)
【文献】特開2015-189008(JP,A)
【文献】国際公開第2015/008703(WO,A1)
【文献】特開2023-39215(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/26
D21H 27/00
D21H 19/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルプを含有する紙基材上に紫外線レーザー照射により変色する無機化合物を含有する印刷層を有し、
ISO2493-1:2010に準拠して測定される、縦方向のこわさが、
0.05mNm以上0.70mNm以下であり、横方向のこわさが、
0.05mNm以上0.45mNm以下であり、
JIS Z 1707:2019に準拠して測定される、突刺強度が、7.50N以上
18.00N以下であ
り、かつ、比突刺強度が0.05N・m
2
/g以上0.30N・m
2
/g以下である、紫外線レーザー印刷用クルパック紙。
【請求項2】
前記縦方向のこわさが、0.05mNm以上0.55mNm以下であり、前記横方向のこわさが、0.05mNm以上0.35mNm以下である、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙。
【請求項3】
前記突刺強度が、12.50N以上である、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙。
【請求項4】
前記パルプの長さ加重平均繊維長が、1.2mm以上1.9mm以下である、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙。
【請求項5】
前記紙基材の坪量が、30g/m
2以上120g/m
2以下である、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙。
【請求項6】
比突刺強度が、0.13N・m
2/g以上である、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙。
【請求項7】
前記紙基材に加え、保護層および熱可塑性樹脂層から選択される少なくとも1つの層をさらに有する、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙。
【請求項8】
前記紫外線レーザー照射により変色する無機化合物が、酸化チタンおよび酸化亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙から得られた印刷物であって、
前記印刷層が、少なくとも一部に、紫外線レーザー照射により変色された前記無機化合物を含有する印刷領域を有する、
印刷物。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙を用いてなる、加工品。
【請求項11】
請求項9に記載の印刷物を用いてなる、加工品。
【請求項12】
請求項1~8のいずれか1項に記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有する、
印刷物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線レーザー印刷用クルパック紙および加工品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、包装用紙として、抄紙の際に紙を微細に収縮させることで伸張性能を付与したクルパック紙が用いられている。クルパック紙として、例えば特許文献1では、縦方向および横方向の比引張り強さなどを制御することで重包装用途でも破袋しにくいクルパック紙が開示されている。
【0003】
一方、食品用トレイなどの包装容器や、ピロー包装用の袋などの包装体には、主にプラスチック製の材料が使用されてきた。しかしながら、環境への懸念などからプラスチック製容器に代わり、紙を使用した包装材料の検討がなされている。
【0004】
また、従来、製造日や出荷日などの日付や、バーコードなどの可変情報を、包装容器や包装体に表示するために、ラベル表示またはインクジェット印刷が行われている。
特許文献2には、発熱が比較的少なく、包装材のレーザーマーキングに好ましく適用可能な技術を提供することを目的として、平均粒子径が150nm以下の第一の酸化チタン粒子を含み、紫外線レーザーの照射により色変化するレーザーマーキング層を形成するために用いられるインク組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2015/008703号
【文献】特開2020-75943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
クルパック紙は柔軟性に優れるものの、突刺強度が低く、例えばピロー包装用の袋の製造において、袋に製品を充填した際の耐落下衝撃性が不十分であった。通常、突刺強度の高い紙は硬くなりやすく、柔軟性に劣るため、クルパック紙の耐落下衝撃性と柔軟性とを両立させることは困難であった。また、クルパック紙に直接レーザーマーキングすることについても、検討されていなかった。
本開示は、耐落下衝撃性を有し、かつ柔軟性にも優れ、さらに、紫外線レーザーによる印刷が可能であり、落下試験後であっても印刷物の視認性に優れる紫外線レーザー印刷用クルパック紙および該紫外線レーザー印刷用クルパック紙を用いた印刷物の製造方法、並びに、該紫外線レーザー印刷用クルパック紙または印刷物を用いた紙加工品に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本開示は、以下の<1>~<12>に関する。
<1> パルプを含有する紙基材上に紫外線レーザー照射により変色する無機化合物を含有する印刷層を有し、ISO2493-1:2010に準拠して測定される、縦方向のこわさが、0.70mNm以下であり、横方向のこわさが、0.45mNm以下であり、JIS Z 1707:2019に準拠して測定される、突刺強度が、7.50N以上である、紫外線レーザー印刷用クルパック紙。
<2> 前記縦方向のこわさが、0.05mNm以上0.55mNm以下であり、前記横方向のこわさが、0.05mNm以上0.35mNm以下である、<1>に記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙。
<3> 前記突刺強度が、12.50N以上である、<1>または<2>に記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙。
<4> 前記パルプの長さ加重平均繊維長が、1.2mm以上1.9mm以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙。
<5> 前記紙基材の坪量が、30g/m2以上120g/m2以下である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙。
<6> 比突刺強度が、0.13N・m2/g以上である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙。
<7> 前記紙基材に加え、保護層および熱可塑性樹脂層から選択される少なくとも1つの層をさらに有する、<1>~<6>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙。
<8> 前記紫外線レーザー照射により変色する無機化合物が、酸化チタンおよび酸化亜鉛よりなる群から選択される少なくとも1つである、<1>~<7>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙。
<9> <1>~<8>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙から得られた印刷物であって、前記印刷層が、少なくとも一部に、紫外線レーザー照射により変色された前記無機化合物を含有する印刷領域を有する、印刷物。
<10> <1>~<8>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙を用いてなる、加工品。
<11> <9>に記載の印刷物を用いてなる、加工品。
<12> <1>~<8>のいずれか1つに記載の紫外線レーザー印刷用クルパック紙に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有する、印刷物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、耐落下衝撃性を有し、かつ柔軟性にも優れ、さらに、紫外線レーザーによる印刷が可能であり、落下試験後であっても印刷物の視認性に優れる紫外線レーザー印刷用クルパック紙および該紫外線レーザー印刷用クルパック紙を用いた印刷物の製造方法、並びに、該紫外線レーザー印刷用クルパック紙または印刷物を用いた紙加工品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】耐落下衝撃性および袋柔軟性評価用の袋加工模式図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示において、数値範囲を表す「X以上Y以下」や「X~Y」の記載は、特に断りのない限り、端点である下限および上限を含む数値範囲を意味する。数値範囲が段階的に記載されている場合、各数値範囲の上限および下限は任意に組み合わせることができる。
縦方向とは紙基材における抄紙方向(MD:Machine Direction)であり、繊維が配向する方向と同じである。また、横方向とは抄紙方向に対して垂直方向(CD)である。
【0011】
[紫外線レーザー印刷用クルパック紙]
本実施形態の紫外線レーザー印刷用クルパック紙(以下、単に「クルパック紙」ともいう)は、パルプを含有する紙基材上に紫外線レーザー照射により変色する無機化合物を含有する印刷層を有し、ISO2493-1:2010に準拠して測定される、縦方向のこわさが、0.70mNm以下であり、横方向のこわさが、0.45mNm以下であり、JIS Z 1707:2019に準拠して測定される、突刺強度が、7.50N以上である。
クルパック処理とは、上記の通り、抄紙機上で紙を微細に収縮させることによって伸張性能を与える処理である。具体的には、例えば、抄紙機ドライヤーの一部に、ニップロールのあるエンドレスの厚い弾性ゴム製ブランケットを備えたクルパック装置を設置する。湿紙である紙匹をクルパック装置に導入し、ニップロールとブランケットで圧縮する。このとき、予め伸長させておいたブランケットが収縮することで走行する紙匹を収縮させ(クレープ付与)、破断伸びを高めることができる。なお、できた縮みは後工程で伸びないように乾燥し、固定する。
【0012】
本発明者らは、紙基材上に紫外線レーザー照射により変色する無機化合物を含有する印刷層を設けるとともに、紙基材を製造する際のクルパック処理により、特定のこわさおよび突刺強度に制御することで、上記課題を解決できることを見出した。こわさは、紙の折り曲げやすさを示しており、突刺強度は、紙の破れづらさを示している。クルパック紙が、上記特定のこわさおよび突刺強度を有することは、適度な折り曲げやすさを有しつつ破れづらいことを示している。そのため、柔軟性および耐落下衝撃性に優れるクルパック紙を得ることができると、本発明者らは考えている。また、紙基材上に紫外線レーザー照射により変色する無機化合物を含有する印刷層を有することで、紫外線レーザーによる印刷が可能となったと考えられる。
なお、本実施形態のクルパック紙は、紙基材および印刷層のみから構成されていてもよく、また、紙基材および印刷層に加えて、熱可塑性樹脂層および保護層から選択される少なくとも1つの層をさらに有していてもよい。
【0013】
<紫外線レーザー印刷用クルパック紙の特性>
〔縦方向および横方向のこわさ〕
本実施形態の紫外線レーザー印刷用クルパック紙は、ISO2493-1:2010に準拠して測定される、クルパック紙の縦方向のこわさが、0.70mNm以下であり、クルパック紙の横方向のこわさが、0.45mNm以下であることが必要である。
こわさが上記上限を超えると、折り曲げにくくなり、柔軟性が低下する。
こわさは、実施例に記載の方法により測定される。
【0014】
こわさは、紙基材を構成するパルプの種類、配合比、クルパック紙の坪量、厚み、クルパック処理前後の速度差などにより制御することができる。こわさを大きくするには、原料パルプとして、広葉樹クラフトパルプと針葉樹クラフトパルプとを使用する場合、針葉樹クラフトパルプの比率を増やす、坪量を大きくする、厚さを増やす、クルパック処理前後の速度差を大きくするなどの方法が挙げられる。一方、こわさを小さくするには、原料パルプとして、広葉樹クラフトパルプと針葉樹クラフトパルプとを使用する場合、針葉樹クラフトパルプの比率を減らす、坪量を小さくする、厚さを減らす、クルパック処理前後の速度差を小さくするなどの方法が挙げられる。
【0015】
クルパック紙の縦方向のこわさは、好ましくは0.05mNm以上0.70mNm以下であり、より好ましくは0.10mNm以上であり、そして、好ましくは0.65mNm以下、より好ましくは0.55mNm以下、さらに好ましくは0.30mNm以下、よりさらに好ましくは0.20mNm以下である。
クルパック紙の横方向のこわさは、好ましくは0.05mNm以上0.45mNm以下であり、より好ましくは0.10mNm以上であり、そして、好ましくは0.35mNm以下、より好ましくは0.20mNm以下である。
【0016】
〔突刺強度〕
本実施形態のクルパック紙は、JIS Z 1707:2019に準拠して測定される、クルパック紙の突刺強度が7.50N以上であることが必要である。
突刺強度が上記下限未満であると、打痕や破れが生じやすくなり、耐落下衝撃性が低下する。
クルパック紙の突刺強度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0017】
突刺強度は、坪量、クルパック処理前後の速度差、針葉樹クラフトパルプの含有量、クルパック処理時のニップ圧などにより制御することができる。突刺強度を大きくするには、坪量を大きくする、クルパック処理前後の速度差を大きくする、針葉樹クラフトパルプの含有量を増やす、クルパック処理時のニップ圧を小さくするなどの方法が挙げられる。一方、突刺強度を小さくするには、坪量を小さくする、クルパック処理前後の速度差を小さくする、針葉樹クラフトパルプの含有量を減らす、クルパック処理時のニップ圧を大きくするなどの方法が挙げられる。
【0018】
クルパック紙の突刺強度は、好ましくは7.50N以上18.00N以下であり、好ましくは8.00N以上、より好ましくは10.00N以上、さらに好ましくは12.50以上である。突刺強度の上限が18.00N以下であると、製袋適性に優れるので好ましい。
【0019】
〔パルプの長さ加重平均繊維長〕
クルパック紙を離解して得られたパルプに対しISO 16065-2:2007に準拠して測定される、パルプの長さ加重平均繊維長は、好ましくは1.0mm以上2.0mm以下であり、より好ましくは1.2mm以上、さらに好ましくは1.3mm以上であり、そして、より好ましくは1.9mm以下、さらに好ましくは1.8mm以下である。
長さ加重平均繊維長が上記下限未満であると、強度が弱いため耐落下衝撃性が悪化する傾向にあるが、一方で柔軟性が増す。長さ加重平均繊維長が上記上限を超えると、強度が強いため耐落下衝撃性が向上するが、一方で柔軟性が悪化しやすくなる。すなわち、上記範囲であると、袋柔軟性と耐落下衝撃性を両立させることができる。パルプの長さ加重平均繊維長は、使用するパルプの種類などにより制御することができる。
パルプの長さ加重平均繊維長は、実施例に記載の方法により測定される。
【0020】
〔比突刺強度〕
クルパック紙の比突刺強度は、好ましくは0.05N・m2/g以上0.30N・m2/g以下であり、より好ましくは0.10N・m2/g以上、さらに好ましくは0.13N・m2/g以上である。上記範囲であると、柔軟性および耐落下衝撃性に優れる。また、上記上限以下であると、製袋適性に優れるので好ましい。
なお、比突刺強度は突刺強度を坪量で除した値である。
比突刺強度は、実施例に記載の方法により測定される。
【0021】
〔坪量〕
紙基材の坪量は、好ましくは30g/m2以上120g/m2以下であり、より好ましくは60g/m2以上、さらに好ましくは70g/m2以上であり、そして、より好ましくは110g/m2以下、さらに好ましくは90g/m2以下である。紙基材の坪量が上記下限未満であると、強度が弱いため耐落下衝撃性が悪化する傾向にあるが、一方で柔軟性が増す。坪量が上記上限を超えると、強度が強いため耐落下衝撃性が向上するが、柔軟性が悪化しやすくなる。上記範囲であると、袋柔軟性と耐落下衝撃性を両立させることができる。
クルパック紙の坪量は、好ましくは35g/m2以上200g/m2以下であり、より好ましくは50g/m2以上、さらに好ましくは70g/m2以上であり、そして、より好ましくは160g/m2以下、さらに好ましくは120g/m2以下である。クルパック紙の坪量が上記下限未満であると、強度が弱いため耐落下衝撃性が悪化する傾向にあるが、一方で柔軟性が増す。坪量が上記上限を超えると、強度が強いため耐落下衝撃性が向上するが、柔軟性が悪化しやすくなる。上記範囲であると、袋柔軟性と耐落下衝撃性を両立させることができる。
紙基材およびクルパック紙の坪量は、実施例に記載の方法により測定される。
【0022】
〔厚さ〕
紙基材の厚さは、好ましくは50μm以上300μm以下であり、より好ましくは60μm以上、さらに好ましくは70μm以上、よりさらに好ましくは80μm以上であり、そして、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは160μm以下、よりさらに好ましくは140μm以下である。
また、クルパック紙の厚さは、特に限定されないが、好ましくは55μm以上400μm以下であり、より好ましくは65μm以上、さらに好ましくは75μm以上、よりさらに好ましくは85μm以上であり、そして、より好ましくは300μm以下、さらに好ましくは240μm以下、よりさらに好ましくは180μm以下である。
紙基材およびクルパック紙の厚さは、実施例に記載の方法により測定される。
【0023】
〔密度〕
紙基材の密度は、好ましくは0.30g/cm3以上1.00g/cm3以下であり、より好ましくは0.40g/cm3以上、さらに好ましくは0.50g/cm3以上、よりさらに好ましくは0.55g/cm3以上であり、そして、より好ましくは0.90g/cm3以下、さらに好ましくは0.85g/cm3以下、よりさらに好ましくは0.80g/cm3以下である。
また、クルパック紙の密度は、好ましくは0.40g/cm3以上1.00g/cm3以下であり、より好ましくは0.50g/cm3以上、さらに好ましくは0.55g/cm3以上、よりさらに好ましくは0.60g/cm3以上であり、そして、より好ましくは0.95g/cm3以下、さらに好ましくは0.90g/cm3以下、よりさらに好ましくは0.85g/cm3以下である。
紙基材およびクルパック紙の密度は、それぞれの坪量および厚さから算出される。
【0024】
<紙基材>
次に、クルパック紙に使用しうる材料について説明する。
〔パルプ〕
紙基材を構成するパルプとしては、広葉樹未晒クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)等の広葉樹クラフトパルプ;針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等の針葉樹クラフトパルプ;砕木パルプ(GP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、リファイナーメカニカルパルプ(RMP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ケミメカニカルパルプ(CMP)、ケミグランドパルプ(CGP)等の機械パルプ;古紙パルプ;ケナフ、バガス、竹、コットン等の非木材繊維パルプ;合成パルプ等が挙げられる。これらのパルプは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
パルプは、広葉樹クラフトパルプおよび針葉樹クラフトパルプから選択される少なくとも1種以上を含有することが好ましく、広葉樹未晒クラフトパルプおよび針葉樹未晒クラフトパルプから選択される少なくとも1種以上を含有することがより好ましく、少なくとも針葉樹未晒クラフトパルプを含有することがさらに好ましく、広葉樹未晒クラフトパルプおよび針葉樹未晒クラフトパルプを含有することがよりさらに好ましい。
【0026】
パルプにおける針葉樹クラフトパルプの含有量は、好ましくは20質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上、よりさらに好ましくは40質量%以上であり、そして、より好ましくは95質量%以下、さらに好ましくは90質量%以下である。
【0027】
パルプにおける広葉樹クラフトパルプの含有量は、好ましくは0質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、そして、より好ましくは70質量%以下、さらに好ましくは65質量%以下、よりさらに好ましくは60質量%以下である。
【0028】
パルプの叩解度は、特に限定するものではないが、カナダ標準濾水度(CSF)として、好ましくは200mL以上800mL以下であり、より好ましくは300mL以上であり、そして、より好ましくは700mL以下である。CSFは、JIS P 8121-2:2012「パルプ-ろ水度試験方法-第2部:カナダ標準ろ水度法」に従って測定される。
【0029】
〔紙基材の製造方法〕
紙基材を製造する方法としては、パルプを含有する紙料を抄紙し、抄紙の際にクルパック処理を行う方法が挙げられる。なお、紙料は、必要に応じて添加剤をさらに含有してもよい。添加剤としては、例えば前述した添加剤が挙げられる。紙料は、パルプスラリーに必要に応じて添加剤を添加することにより調製できる。パルプスラリーは、パルプを水の存在下で叩解することにより得られる。パルプの叩解方法、叩解装置は特に限定されず、公知の叩解方法、叩解装置を採用しうる。
【0030】
叩解の際のパルプスラリーの固形分濃度は特に制限されないが、好ましくは0.5質量%以上10質量%以下程度であり、より好ましくは1質量%以上であり、そして、より好ましくは5質量%以下程度である。また、紙料または紙基材におけるパルプの含有量は、特に限定されず、通常用いられている範囲であればよい。例えば、紙料(固形分)または紙基材の総質量に対して、好ましくは60質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは80質量%以上であり、そして、より好ましくは100質量%未満である。
【0031】
紙基材の抄紙においては、公知の湿式抄紙機を適宜選択して使用することができる。抄紙機としては、長網式抄紙機、ギャップフォーマー型抄紙機、円網式抄紙機、短網式抄紙機などが挙げられる。これらの抄紙機にクルパック処理を実施可能なクルパック装置を設け、クルパック処理を行えばよい。
【0032】
クルパック装置としては、公知のものを用いることができる。例えば、ニップロールおよびエンドレスの厚い弾性ゴム製ブランケットを備えたクルパック装置が挙げられる。上記の通り、クルパック処理においては、ニップロールとブランケットとの間に紙匹を搬入し、ニップロールとブランケットにより紙匹を圧縮する際に、予め伸長させておいたブランケットを収縮させることで紙匹を収縮させてクレープを付与する。クルパック装置は、通常、抄紙機のドライヤー装置の一部に設けられ、クレープ化させたのち乾燥し、固定する。以上の様にして紙基材を得ることができる。
【0033】
クルパック装置を使用した抄紙において、クルパック処理の前後の抄紙速度の差によって、こわさや突刺強度を制御しうる。
抄紙速度は特に制限されないが、例えば、好ましくは200m/分以上1000m/分以下であり、より好ましくは300m/分以上、さらに好ましくは400m/分以上であり、そして、より好ましくは800m/分以下、さらに好ましくは700m/分以下であり、上記の範囲で制御すればよい。クルパック処理の前後の速度差は、特に制限されず、坪量やパルプの材料に応じて、所望のこわさや突刺強度が得られるように制御すればよい。好ましくは-5m/分~-60m/分、より好ましくは-10m/分~-50m/分、さらに好ましくは-15m/分~-40m/分である。ここでのマイナス「-」はクルパック処理後の速度が遅いことを示す。
【0034】
リール水分は、特に制限されず、坪量やパルプの材料、クルパック処理の前後の速度差などに応じて、所望のこわさや突刺強度が得られるように制御すればよい。好ましくは2.0%以上12.0%以下であり、より好ましくは5.0%以上であり、そして、より好ましくは9.0%以下である。
【0035】
<印刷層>
本実施形態の紫外線レーザー印刷用クルパック紙は、紙基材上に紫外線レーザー照射により変色する無機化合物(以下、「紫外線レーザー照射により変色する無機化合物」を「無機化合物A」ともいう)を含有する印刷層を有する。印刷層は、塗工により設けてもよく、また、ラミネートにより設けてもよく、特に限定されない。すなわち、印刷層は、無機化合物Aを含有する塗工層、または無機化合物Aを含有するラミネート層であることが好ましい。本発明において、印刷層は、所望の箇所にのみ印刷層を設けることが容易である観点、および製造容易性の観点から、塗工により設けることがより好ましい。なお、前記「塗工により設ける」とは、塗工液(インク組成物)により印刷層を形成することを意味するものであり、例えば、グラビア印刷やインクジェット印刷等により形成する場合を含むものである。
印刷層が紫外線レーザー照射により変色する無機化合物(無機化合物A)を含有することにより、紫外線レーザー照射により、印刷層中の無機化合物Aが変色し、印刷することが可能である。なお、前記無機化合物Aの変色は、印刷層が含有する無機化合物Aのイオン価数の変化により、酸素欠陥が生じることで、白色から黒色へ無機化合物Aが変色し、これにより、紫外線レーザー照射部が視認可能となっていると考えられる。
例えば、前記無機化合物Aが酸化チタンである場合、紫外線レーザー照射によって、酸化チタンのイオン価数が4価から3価へ変化し、酸素欠陥が生じることで、白色から黒色へと変化し、視認可能となっていると考えられる。なお、例えば、酸化チタンのバンドギャップは、結晶系によって異なるが、一般に3.0eV~3.2eV程度であり、これに相当する光の波長は420nm以下である。そのため、420nmを超える波長のレーザー光(例えば530nm、1064nm、10600nm)を用いても、本発明のような酸化チタンのイオン価数の変化に起因する印刷を施すことは困難である。
酸化チタン以外の無機化合物Aについても、同様に考えられる。
なお、本実施形態において、印刷可能領域とは、紫外線レーザー印刷用クルパック紙に設けられた印刷層が含有する無機化合物Aの変色、好ましくは紫外線レーザーの照射により、紫外線レーザーにより照射された部分の無機化合物Aが白色から黒色に変色することで印刷が可能である領域(部分)を意味し、印刷領域とは、印刷可能領域の中で、実際に無機化合物Aが変色している箇所、好ましくは紫外線レーザーの照射により無機化合物Aが変色し、視認可能となっている箇所、すなわち、紫外線レーザーの被照射領域を意味する。また、非印刷領域とは、印刷可能領域の中で、無機化合物Aが変色していない領域(部分)、例えば、紫外線レーザーが照射されていない領域(部分)を意味する。
【0036】
印刷層中の無機化合物Aの含有量は、好ましくは0.1g/m2以上10g/m2以下であり、より好ましくは0.2g/m2以上、さらに好ましくは0.3g/m2以上、よりさらに好ましくは0.4g/m2以上であり、そして、より好ましくは7.5g/m2以下、さらに好ましくは5g/m2以下、よりさらに好ましくは3.5g/m2以下である。
印刷層中の無機化合物Aの含有量が上記下限以上であると、十分な印刷濃度が得られるので好ましく、また、上記上限以下であると、印刷濃度が頭打ちとなり、必要量以上の無機化合物Aを含有させることによるコストアップが抑制されるので好ましい。
印刷層中の無機化合物Aの含有量が多過ぎると、紫外線レーザー照射時に無機化合物Aの飛散によると考えられる発煙が発生する傾向がある。また、発煙が生じる結果、変色した無機化合物Aが印刷層から脱離するという現象が生じるため、印刷濃度も劣化する傾向がある。
なお、紫外線レーザー印刷用紙の少なくとも印刷可能領域が無機化合物Aを含有していればよく、印刷を行わない領域において、印刷層が設けられてない部分が存在してもよい。製造の簡易性の観点から、クルパック紙の全領域に無機化合物Aを含有する印刷層が設けられていることも好ましい。
【0037】
本実施形態において、クルパック紙が、無機化合物Aを含有する印刷層の下層として、無機化合物Aを含有しない下塗り層を有していてもよい。
また、印刷層の上に、後述する樹脂層を有する場合には、該樹脂層は印刷層に該当しないものとする。
【0038】
印刷層の1m2当たりの質量(固形分、坪量)は、印刷濃度の観点および紫外線レーザー照射時の発煙を抑制する観点から、好ましくは1.0g/m2以上50g/m2以下であり、より好ましくは2.5g/m2以上、さらに好ましくは4.5g/m2以上であり、そして、より好ましくは40g/m2以下、さらに好ましくは30g/m2以下である。
【0039】
印刷層(固形分)中の無機化合物の含有量は、好ましくは0.3質量%以上95質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以上、さらに好ましくは2.0質量%以上、よりさらに好ましくは2.5質量%以上であり、そして、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは75質量%以下、よりさらに好ましくは60質量%以下である。
印刷層(固形分)中の無機化合物の含有量が上記下限以上であると、十分な印刷濃度が得られるため好ましく、また、上記上限以下であると、印刷濃度が頭打ちとなり、必要以上の無機化合物Aを含有させることによるコストアップが抑制され、また、印刷層の形成が容易であり、さらに、紫外線レーザー照射時の発煙が抑制されるので好ましい。
【0040】
印刷層の厚さは、好ましくは0.3μm以上40.0μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.0μm以上、よりさらに好ましくは2.0μm以上であり、そして、より好ましくは30.0μm以下、さらに好ましくは25.0μm以下、よりさらに好ましくは20.0μm以下である。
印刷層の厚さが上記下限以上であると、十分な印刷濃度が得られ、また、印刷層の形成が容易であるので好ましく、そして、上記上限を超える印刷層とした場合、印刷濃度が頭打ちとなる傾向にあり、また、上記上限以下であると、印刷層の形成が容易であるので好ましい。
印刷層の厚さは、印刷用紙の断面の電子顕微鏡(SEM)の観察像から測定される。
【0041】
紙基材自体が無機化合物Aを含有してもよい。紙基材が無機化合物Aを含有することにより、より鮮明な画像となる傾向にある。特に、印刷層の厚さが薄い場合には、紙基材自体が無機化合物Aを含有することにより、鮮明な画像となる傾向にあり、この場合、印刷層の厚さが2.0μm以下であると、紙基材が無機化合物Aを含有することにより効果が顕著となる傾向にある。
紙基材が無機化合物Aを含有する場合、紙基材中の無機化合物Aの含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上、よりさらに好ましくは20質量%以上である。
【0042】
印刷層は、無機化合物Aに加え、熱可塑性樹脂を含有することが好ましい。さらに、無機化合物A以外の無機顔料を含有してもよい。以下、各成分について詳述する。
〔紫外線レーザー照射により変色する無機化合物(無機化合物A)〕
印刷層が含有する無機化合物Aとしては、金属酸化物が例示され、具体的には、酸化チタン、酸化亜鉛が例示され、これらの中でも、酸化チタンが好ましい。
酸化チタンは、組成式TiO2で表され、二酸化チタン、またはチタニアとも呼ばれる。
酸化チタンは、いずれの結晶構造でもよく、ルチル型酸化チタン、アナターゼ型酸化チタン、およびブルッカイト型酸化チタンから選択される少なくとも1つであることが好ましく、入手容易性および安定性の観点から、ルチル型酸化チタンおよびアナターゼ型酸化チタンから選択される少なくとも1つであることがより好ましく、ルチル型酸化チタンであることがさらに好ましい。
酸化チタンの結晶形は、公知の方法で決定することができ、具体的には、ラマンスペクトル、XRDパターンの解析などにより決定することができる。例えば、ラマンスペクトルから同定する場合には、一般的には、ルチル型では、447±10cm-1、609±10cm-1にピークが確認され、アナターゼ型では、395±10cm-1、516±10cm-1、637±10cm-1にピークが確認される。
酸化チタンは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、酸化亜鉛は、組成式ZnOで表され、亜鉛華や亜鉛白とも呼ばれる。酸化亜鉛は、一般的にはウルツ鉱型結晶構造を有する。
無機化合物Aは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
無機化合物Aの形状は特に限定されず、不定形、球状、棒状、針状等の、いずれの形状であってもよい。
無機化合物Aが不定形または球状である場合、無機化合物Aの平均粒子径は特に限定されないが、表面平滑性に優れるクルパック紙を得る観点から、好ましくは0.01μm以上20.0μm以下であり、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.1μm以上、よりさらに好ましくは0.15μm以上、一層好ましくは0.16μm以上であり、そして、より好ましくは5.0μm以下、さらに好ましくは1.5μm以下、よりさらに好ましくは0.50μm以下である。
【0044】
また、無機化合物Aが針状である場合、無機化合物Aの長径は、特に限定されないが、表面平滑性に優れるクルパック紙を得る観点から、好ましくは0.1μm以上50.0μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上、さらに好ましくは1.5μm以上であり、そして、より好ましくは30.0μm以下、さらに好ましくは15.0μm以下である。また、短径は、好ましくは0.01μm以上3.0μm以下であり、より好ましくは0.03μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上であり、そして、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1.0μm以下である。また、酸化チタンが針状である場合、アスペクト比(長径/短径)は、好ましくは5以上300以下であり、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上であり、そして、より好ましくは100以下、さらに好ましくは30以下である。
無機化合物Aの平均粒子径、長径および短径は、実施例に記載の方法により測定される。なお、原料として使用した無機化合物Aの粒子径、長径、および短径の値を採用してもよく、原料として使用した無機化合物Aの粒子径、長径、および短径のカタログ値を採用してもよい。
【0045】
〔熱可塑性樹脂〕
印刷層に使用される熱可塑性樹脂は、バインダーとして機能する。
印刷層の熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、印刷層を塗工により設ける場合には、水性塗工液として塗布してもよく、有機溶剤系塗工液(油性塗工液)として塗布してもよい。なお、印刷層を塗工により設ける場合、該印刷層を塗工層ともいう。また、塗工層を設けるために使用する組成物を、塗工液またはインク組成物ともいう。
水性塗工液として塗布する場合には、熱可塑性樹脂は、水希釈性の熱可塑性樹脂であることが好ましい。水希釈性の樹脂とは、水溶性、エマルション型、ディスパーション型の樹脂が例示される。
水希釈性の熱可塑性樹脂としては、天然樹脂、合成樹脂のいずれでもよく、例えば、澱粉誘導体、カゼイン、シュラック、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、アクリル系樹脂、マレイン酸系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、スチレン-ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂が挙げられる。
より具体的には、アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸と、そのアルキルエステルまたはスチレン等とをモノマー成分として共重合したアクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、スチレン-アクリル酸-マレイン酸樹脂、オレフィン-(メタ)アクリル酸系共重合樹脂(例えば、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体)などが例示される。
これらの中でも、塗工液の安定性、印刷層の耐溶剤性の観点から、澱粉誘導体、カゼイン、シュラック、ポリビニルアルコールおよびその誘導体、アクリル系樹脂、マレイン酸系樹脂、およびスチレン-ブタジエン系樹脂から選択される少なくとも1つが好ましく、澱粉誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、アクリル系樹脂、マレイン酸系樹脂、およびスチレン-ブタジエン系樹脂から選択される少なくとも1つがより好ましく、澱粉誘導体、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、アクリル系樹脂、およびスチレン-ブタジエン系樹脂から選択される少なくとも1つがさらに好ましく、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコール誘導体、アクリル系樹脂、およびスチレン-ブタジエン系樹脂から選択される少なくとも1つがよりさらに好ましい。
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
有機溶剤系の塗工液(油性塗工液)とする場合には、セルロース系樹脂(例えば、硝化綿、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート)、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル共重合系樹脂等の公知の熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。
【0046】
熱可塑性樹脂の含有量は、特に限定されず、熱可塑性樹脂の種類や、塗工液中の無機化合物Aや後述する無機顔料の含有量等に応じて適宜選択すればよく、例えば、塗工液の固形分中、好ましくは5質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは15質量%以上であり、そして、より好ましくは98質量%以下である。
【0047】
印刷層を塗工により設ける場合、塗工層は、塗工液の塗布および乾燥により設けることが好ましい。
塗工液は、水性塗工液であることが好ましく、使用する水性媒体としては、水、または水と水混和性溶剤との混合物が挙げられる。
水混和性溶剤としては、低級アルコール類、多価アルコール類、およびそれらのアルキルエーテルまたはアルキルエステル類が挙げられる。具体的には、メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。
有機溶剤系塗工液である場合には、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソブチル、エステル系有機溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノール等のアルコール系有機溶剤、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤など公知の溶剤等が挙げられる。
【0048】
塗工液の固形分濃度は特に限定されないが、所望の塗工層の厚さを得る観点、塗工液を塗工容易な粘度とする観点、および乾燥容易性の観点から、好ましくは10質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは30質量%以上であり、そして、より好ましくは75質量%以下、さらに好ましくは70質量%以下、よりさらに好ましくは65質量%以下である。
【0049】
塗工液の粘度は、塗工適性、所望の塗工層の厚さを得る観点、および乾燥容易性の観点から、Brookfield型粘度計による測定で、好ましくは10mPa・s(20℃)以上5000mPa・s(20℃)以下であり、より好ましくは15mPa・s(20℃)以上、さらに好ましくは20mPa・s(20℃)以上であり、そして、より好ましくは4000mPa・s(20℃)以下、さらに好ましくは3000mPa・s(20℃)以下、よりさらに好ましくは2000mPa・s(20℃)以下である。
【0050】
印刷層をラミネートにより設ける場合には、無機化合物Aを含有するフィルムを基材に積層することが好ましい。なお、印刷層をラミネートにより設ける場合、該印刷層をラミネート層ともいう。
ラミネート層を構成する熱可塑性樹脂としては、特に限定されず、無機化合物Aを内包させてフィルム状に加工可能であればよく、公知の熱可塑性樹脂の中から、適宜選択すればよい。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリアミド;ポリアクリロニトリル;ポリ(メタ)アクリレート等が例示される。
これらの中でも、ラミネート層を構成する樹脂は、汎用的に使用することができ、かつ、紫外線の透過率が高く、フィルムの内部まで無機化合物Aの変色を可能とする観点から、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステルを含むことが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンスクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つを含むことがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、およびポリブチレンスクシネートよりなる群から選択される少なくとも1つであることがさらに好ましい。ラミネート層を構成する樹脂は、ポリオレフィンであることがよりさらに好ましく、ポリエチレンおよびポリプロピレンよりなる群から選択される少なくとも1つであることがよりさらに好ましい。ポリエチレン(PE)は、大きくは直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)のように区分される。これらの中では、押し出しラミネート性に優れることから、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。
なお、ラミネート層を構成する樹脂として、生分解性樹脂であるポリエステルを使用すると、環境負荷が低減される点で好ましく、例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートが例示される。
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
ラミネート層中の熱可塑性樹脂の含有量は、紫外線レーザー照射時の発煙を抑制する観点から、好ましくは20質量%以上99質量%以下であり、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、よりさらに好ましくは70質量%以上、一層好ましくは80質量%以上であり、そして、より好ましくは98質量%以下、さらに好ましくは95質量%以下である。
【0052】
印刷層は、上述した無機化合物Aおよび熱可塑性樹脂に加え、他の成分を含有してもよい。他の成分としては、無機化合物A以外の無機顔料(以下、単に「無機顔料」ともいう)が挙げられる。無機化合物A以外の無機顔料を含有することにより、無機化合物Aの飛散が抑制され、紫外線レーザー照射時の発煙が抑制され、また、その結果、印刷濃度が向上するので好ましい。
無機顔料は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0053】
印刷層は、上述した成分に加え、造膜剤、顔料分散剤、顔料分散樹脂、ブロッキング防止剤、湿潤剤、粘度調整剤、pH調整剤、消泡剤、一般の界面活性剤等を含有していてもよい。
【0054】
(塗工液)
印刷層を塗工により設ける場合、塗工液(インク組成物)が水性塗工液である場合には、上記の各種材料を水性媒体と混合して得ることが好ましい。なお、水性媒体との混合に先立ち、無機化合物A、熱可塑性樹脂、水、および必要に応じて無機化合物A以外の無機顔料、水混和性溶剤、顔料分散剤、顔料分散性樹脂等を混合して混練し、これに、さらに水、必要に応じて水混和性溶剤、および所定の材料の残りを添加、混合してもよい。
また、塗工液が油性塗工液である場合、有機溶剤と樹脂とを混合した後に、無機化合物Aや無機化合物A以外の顔料を添加してもよく、予め、顔料分散剤、顔料分散性樹脂等を有機材と樹脂との混合液に添加してもよく、後から添加してもよい。
塗工液は、上記各成分をホモミキサー、ラボミキサー等の高速撹拌機や、コーレス分散機、3本ロールミルやビーズミル等の分散機にて混合、分散することにより得られる。
【0055】
塗工液の塗布方法としては特に限定されず、フレキソ印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、パッド印刷、スプレー塗布、メイヤーバー、グラビアコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ダイコーター、バーコーター等により基材に塗布すればよい。
【0056】
(ラミネート層)
印刷層がラミネート層である場合、ラミネートするフィルムは、少なくとも無機化合物Aおよび熱可塑性樹脂、並びに必要に応じて無機顔料等の材料を溶融混練した原料組成物を調製し、これをフィルム状に成形した後、必要に応じて延伸することで得られる。
なお、原料組成物の調製に際し、無機化合物Aや無機顔料を高濃度で含有するマスターバッチを調製してから、これを樹脂と混合してもよい。
また、予め均一に混合した材料を成形機に仕込んでもよく、成形機と一体となったホッパーや混練機で混合してもよい。
フィルム状に成形する方法としては、従来公知の方法から適宜選択すればよく、例えば、溶融押出法、溶融流延法、カレンダー法等の中から、適宜選択すればよい。
【0057】
基材とフィルムとを接着剤層を介して貼付してもよく、またはラミネート加工してもよい。これらの中でも、ラミネート加工することが好ましい。
なお、接着剤層としては特に限定されず、公知の接着剤層から適宜選択して用いればよい。具体的には、特開2012-57112号公報の粘着剤層が例示される。
ラミネート加工としては、具体的には、熱ラミネート法、ドライラミネート法、ウェットラミネート法、押出ラミネート法等により、紙基材とラミネート層とを積層することが例示される。
これらの中でも、ラミネート層と紙基材とを貼付する工程が不要であり、製造工程の観点から、押出ラミネート法が好ましい。
【0058】
<その他の層>
紙基材上に印刷層が設けられた紫外線レーザー印刷用クルパック紙は、そのまま紫外線レーザー印刷用クルパック紙として使用することができる。また、保護層および熱可塑性樹脂層から選択される少なくとも1つの層をさらに有していてもよい。ここで、保護層は、印刷層の上に設けられ、例えば、耐水性を向上させる目的、印刷層の保護層としての機能を目的として形成される。また、熱可塑性樹脂層は、防水性および防汚性の向上等の観点から、印刷層が設けられた面とは反対面に設けられる。
すなわち、予め保護層や樹脂層が設けられた紫外線レーザー印刷用クルパック紙を使用してもよい。紫外線レーザー印刷用クルパック紙は、印刷層上に保護層を有し、かつ、印刷面とは反対面に熱可塑性樹脂層を有していてもよく、紙基材の印刷面に保護層を有し、かつ、反対面に熱可塑性樹脂層を有していなくてもよく、紙基材の印刷面に保護層を有さず、かつ、反対面に熱可塑性樹脂層を有していてもよい。
また、クルパック紙には、上記効果を損なわない程度に、その他の層、例えば、グラビア印刷等の紫外線レーザー印刷以外の印刷方法による印刷層などを設けてもよい。
【0059】
〔保護層〕
本実施形態の紫外線レーザー印刷用クルパック紙は、耐水性を向上させる観点、また、印刷層の保護層としての機能を目的として、紙基材の印刷層上に、さらに保護層を有していてもよい。
【0060】
保護層の全光線透過率は、紫外線レーザーの透過が良好である観点、および印刷物の視認性の観点から、好ましくは40%以上100%以下であり、より好ましくは60%以上であり、さらに好ましく70%以上、よりさらに好ましくは80%以上、一層好ましくは90%以上である。上限は特に限定されない。
全光線透過率は、JIS K 7361-1:1997に準拠して測定される。
【0061】
保護層を構成する樹脂は、全光線透過率が好ましくは40%以上であり、紙基材上に設けることができれば特に限定されないが、透明性および保護層を設けることが容易である観点から、保護層と紙基材とを接着剤層とを介して貼付するか、またはラミネート加工により積層する場合には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、およびデンプンから選択される少なくとも1つであることが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、およびポリビニルアルコールから選択される少なくとも1つであることがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンであることがさらに好ましく、ポリエチレンであることが特に好ましい。
また、保護層を塗工により設ける場合には、アクリル系樹脂、スチレン-マレイン酸樹脂、水溶性ポリウレタン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂などが例示される。
アクリル系樹脂としては、(メタ)アクリル酸と、そのアルキルエステル、スチレン、(メタ)アクリル酸以外の不飽和カルボン酸、エチレン、プロピレン等のその他のモノマーとを共重合した樹脂が例示され、具体的には、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸-マレイン酸樹脂などが例示され、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体が好ましい。
【0062】
保護層と紙基材とは、いずれの方法により積層されていてもよく、特に限定されないが、製造容易性の観点から、保護層と紙基材とを接着剤層とを介して貼付するか、またはラミネート加工するか、透明塗料を液状塗料の形で塗工することが好ましい。
局所的に保護層を設ける場合には、製造容易性の観点から、接着剤を介して貼付することが好ましい。また、広範囲に保護層を設ける場合には、ラミネート加工することが好ましい。
なお、接着剤層としては特に限定されず、公知の接着剤層から適宜選択して用いればよい。具体的には、特開2012-57112号公報の粘着剤層が例示される。
【0063】
保護層の厚さは特に限定されないが、印刷濃度の高い印刷物を得る観点、および印刷物および紫外線レーザー印刷用クルパック紙のハンドリング性の観点から、好ましくは5μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは12μm以上であり、そして、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下である。
【0064】
〔熱可塑性樹脂層〕
熱可塑性樹脂層に使用される熱可塑性樹脂としては特に限定されず、公知の熱可塑性樹脂の中から、適宜選択すればよい。
具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂;ポリカーボネート;ポリウレタン;ポリアミド;ポリアクリロニトリル;ポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0065】
これらの中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート等のポリエステル、ナイロン等のポリアミドが好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネートがより好ましく、ポリエチレン、ポリプロピレンがさらに好ましく、ポリエチレンがよりさらに好ましい。
また、上記の材料の他、樹脂として、バイオマス樹脂や生分解性樹脂を用いてもよい。
これらの樹脂は、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0066】
熱可塑性樹脂は、ラミネート層として、シート基材にラミネートできるものが好ましい。熱可塑性樹脂の中では、押し出しラミネート性とバリア性が優れることからポリエチレンが好ましい。
ポリエチレン(PE)は、大きくは直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)のように区分される。これらの中では、押し出しラミネート性および発泡性に優れることから、低密度ポリエチレン(LDPE)が好ましい。
【0067】
また、熱可塑性樹脂層と紙基材とは、接着剤層を介して貼付してもよい。
接着剤層としては特に限定されず、公知の接着剤層から適宜選択して用いればよい。具体的には、特開2012-57112号公報の粘着剤層が例示される。
【0068】
熱可塑性樹脂層は、公知の製造方法から適宜選択して製造すればよく、例えば、溶融押出法、溶融流延法、カレンダー法等の中から、適宜選択すればよい。熱可塑性樹脂層の厚さは特に制限されないが、防水性および防汚性の向上等の観点、および熱可塑性樹脂層の形成容易性の観点から、好ましくは5μm以上100μm以下であり、より好ましくは10μm以上、さらに好ましくは15μm以上であり、そして、より好ましくは80μm以下、さらに好ましくは50μm以下、よりさらに好ましくは30μm以下である。
【0069】
<用途>
得られた紫外線レーザー印刷用クルパック紙の用途は特に制限されず、適宜成形体とすることで、包装紙、包装袋、包装容器などの包装体、カップ、トレイなどの各種容器といった紙加工品に使用しうる。例えば、紙皿、紙カップ、紙トレイなどの紙容器や、横型ピロー包装用、縦型ピロー包装用、三方シール包装用、四方シール包装用、給袋式充填包装用、チューブ包装用、スティック包装用の袋などに使用しうる。特に、柔軟性および耐落下衝撃性に優れるため、上述した袋用途において好適に使用することができる。
なお、本実施形態の紫外線レーザー印刷用クルパック紙の用途は、包装体や容器に限定されるものではなく、例えば、ラベル、粘着テープ等に使用してもよい。
【0070】
[印刷物および印刷物の製造方法]
本実施形態の印刷物は、上述した紫外線レーザー印刷用クルパック紙から得られた印刷物であって、少なくとも一部に、紫外線レーザー照射により変色された無機化合物Aを含有する印刷領域を有する。前記変色された無機化合物Aを有する印刷領域は、紫外線レーザーの照射により変色した無機化合物Aを含有する領域であり、紫外線レーザー照射領域、すなわち、印刷領域である。
また、本実施形態の印刷物の製造方法は、上述した紫外線レーザー印刷用クルパック紙に紫外線レーザーを照射して、照射領域を変色させることにより印刷する工程を有する。
本実施形態の印刷物の製造方法に使用される紫外線レーザー印刷用クルパック紙としては、上述した紫外線レーザー印刷用クルパック紙が例示され、好ましい範囲も同様である。
【0071】
無機化合物Aが酸化チタンである場合、紫外線レーザーの照射は、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比が0.70以下となるように、紫外線レーザーを照射することが好ましい。すなわち、本実施形態の印刷物において、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度に対する、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度の比は、0.70以下であることが好ましい。
なお、印刷物において、印刷領域とは、印刷可能領域において、変色された酸化チタンを含有する領域(部分)を意味し、紫外線レーザーにより印刷された領域(部分)である。非印刷領域とは、印刷可能領域において印刷されていない領域(部分)を意味する。また、印刷可能領域とは、紫外線レーザー印刷用クルパック紙または印刷物において、紫外線レーザーによる印刷が可能な領域と、存在する場合は紫外線レーザーにより印刷された領域(部分)とを合わせた酸化チタンを含有する領域全体を意味し、非印刷可能領域とは、紫外線レーザー印刷用クルパック紙または印刷物における印刷可能領域以外の領域を意味する。
無機化合物Aが酸化チタンである場合、印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度と、非印刷領域における酸化チタンに由来するラマン強度との比(印刷領域のラマン強度/非印刷領域のラマン強度)が、0.70以下であるように印刷することが好ましい。ラマン強度の比を上記範囲内とすることにより、視認性に優れる印刷物が得られる。
上記のラマン強度の比(印刷領域のラマン強度/非印刷領域のラマン強度)は、酸化チタンとしてルチル型の酸化チタンを使用した場合には、酸化チタンに由来するラマン強度として、447±10cm-1の波数範囲の最大値のラマン強度を対比する。また、酸化チタンとしてアナターゼ型の酸化チタンを使用する場合には、酸化チタンに由来するラマン強度として、516±10cm-1の波数範囲の最大値のラマン強度を対比する。
なお、ルチル型の酸化チタンとアナターゼ型の酸化チタンが共存する場合には、ルチル型の酸化チタンに由来するラマン強度で対比することとする。
【0072】
<紫外線レーザーの照射条件>
紫外線レーザーの波長としては、印刷領域の視認性を向上させる観点から、好ましくは260nm以上370nm以下であり、より好ましくは365nm以下、さらに好ましくは360nm以下であり、そして、より好ましくは340nm以上、さらに好ましくは350nm以上である。
【0073】
紫外線レーザーの平均出力は、印刷領域の視認性を向上させる観点および経済性の観点から、好ましくは0.3W以上30W以下であり、より好ましくは0.8W以上、さらに好ましくは1.2W以上、よりさらに好ましくは1.8W以上であり、そして、より好ましくは25W以下、さらに好ましくは20W以下、よりさらに好ましくは15W以下、一層好ましくは10W以下、より一層好ましくは6W以下である。
【0074】
紫外線レーザーの繰返周波数(周波数)は、印刷領域の視認性を向上させる観点から、好ましくは10kHz以上100kHz以下であり、より好ましくは20kHz以上、さらに好ましくは30kHz以上であり、そして、より好ましくは80kHz以下、さらに好ましくは60kHz以下である。
【0075】
紫外線レーザーのスポット径は、鮮明な画像を得る観点および印刷容易性の観点から、好ましくは10μm以上300μm以下であり、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、そして、より好ましくは240μm以下、さらに好ましくは180μm以下、よりさらに好ましくは120μm以下である。
【0076】
紫外線レーザーのスキャンスピードは、高速印刷および印刷領域の視認性の観点から、好ましくは500mm/sec以上7000mm/sec以下であり、より好ましくは1000mm/sec以上、さらに好ましくは2000mm/sec以上であり、そして、より好ましくは6000mm/sec以下、さらに好ましくは5000mm/sec以下である。
【0077】
紫外線レーザーの塗りつぶし間隔(ラインピッチ)は、鮮明な画像を得る観点、および装置の入手容易性の観点から、好ましくは10μm以上300μm以下であり、より好ましくは20μm以上、さらに好ましくは30μm以上であり、そして、より好ましくは250μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。
【0078】
<印刷物の製造方法の態様>
本発明の印刷物の製造方法は、種々の態様で行うことができる。
以下に、本実施形態の印刷物の製造方法が適用可能な種々な態様について例示するが、本実施形態の印刷物の製造方法は、下記の態様に限定されるものではない。印刷する情報は特に限定されないが、可変情報であることが好ましい。
本実施形態の印刷物の製造方法は、インラインで行われることが好ましい。
(1)包装体への直接印刷
本実施形態の印刷物の製造方法の第一の実施態様は、本実施形態の紫外線レーザー印刷用クルパック紙を有する包装体に情報を印刷する方法であって、梱包ライン上を移動中、または間欠停止中の包装体に直接紫外線レーザーにて印刷する工程を有する。
第一の印刷物の製造方法は、本実施形態の紫外線レーザー印刷用クルパック紙にて包装体を作製し、紫外線レーザーにて直接印刷する。なお、少なくとも包装体の印刷される領域の最外層が、前記の紫外線レーザー印刷用クルパック紙にて作製されていればよい。
また、包装体としては、段ボール、箱、包装袋等が例示され、該包装体の側面または上面に紫外線レーザーにて直接印刷することが好ましい。
【0079】
また、上記の態様に限定されるものではなく、本実施形態の印刷物の製造方法は、本実施形態の紫外線レーザー印刷用クルパック紙を有するラベルに情報を印刷する方法であってもよい。また、紫外線レーザー印刷用クルパック紙を粘着テープとし、物品(包装体)に貼付する前後に、紫外線レーザーにより印刷することが好ましい。
【0080】
本実施形態の印刷物の製造方法は、上記の態様に限定されるものではなく、印刷が求められる各種用途に応用可能である。
【0081】
[加工品]
本実施形態の紫外線レーザー印刷用クルパック紙および印刷物は種々の加工品に応用される。すなわち、本実施形態の加工品は、本実施形態の紫外線レーザー印刷用クルパック紙または本実施形態の印刷物を用いてなる。
本実施形態の加工品としては、包装体、ラベル、または粘着テープなどが好適である。これらの中でも、包装紙、包装袋、包装容器などの包装体、カップ、トレイなどの各種容器といった紙加工品に好適に使用しうる。包装体としては、例えば、紙皿、紙カップ、紙トレイなどの紙容器や、横型ピロー包装用、縦型ピロー包装用、三方シール包装用、四方シール包装用、給袋式充填包装用、チューブ包装用、スティック包装用の袋などに使用しうる。
ラベルとしては、ラベル原紙、粘着ラベル、粘着シートが例示され、粘着テープとしては、粘着テープ、クラフトテープが例示される。
これらの中でも、特に、柔軟性および耐落下衝撃性に優れるため、上述した袋用途において好適に使用することができる。
【実施例】
【0082】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。また、特にことわりがない限り、「部」は、「質量部」を表す。また、実施例および比較例の操作は、特にことわりがない限り、室温(20~25℃)、常湿(40~50%RH)の条件で行った。
【0083】
<実施例1>
〔紙基材の製造〕
木材をパルプ化(蒸解)したNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)とLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を55:45の比率で使用し、叩解時のスラリー濃度2質量%にて、CSF(カナダ標準ろ水度)が600mLとなるまで叩解して、パルプを調製した。
上記パルプを使用し、固形分換算でパルプ100質量部に対し、合成サイズ剤(荒川化学工業株式会社製、SPS400)0.15質量部、硫酸バンド1.2質量部、歩留まり剤としてポリアクリルアミド樹脂(星光PMC株式会社製、DS4433)0.65質量部、および高分子凝集剤(歩留まり剤)として非イオン性ポリアクリルアミド(アライドコロイド製、パーコール47)0.035質量部を添加し、紙料を調製した。
上記の紙料を用いて伸縮装置(クルパック製)を備えた湿式抄紙機(ベルフォームIII型、三菱重工業株式会社製)にて、抄紙速度600m/分、リール水分7.0%で、クルパック処理前後の速度差を-20.0m/分にて抄紙し、紙の表面にクレープが付与された坪量80g/m2の紙基材を得た。
【0084】
〔塗工液の調製〕
固形分として酸化チタン(関東化学株式会社製、ルチル型 特級グレード 品番:40982-00、不定形、平均粒子径0.20μm)68部、イオン交換水32部を混合して固形分濃度を68%に調整した。その後コーレス分散機を用いて顔料分散液を作製し、エチレン-アクリル系エマルジョン(三井化学株式会社製、ケミパール S-300、固形分濃度35%、エチレン-メタクリル酸共重合体アイオノマー)をエマルジョンとして1748.6部(固形分として612部)添加して固形分濃度が36.8%の塗工液を調製した。その後、イオン交換水で希釈して固形分濃度を35.0%へ調整した。
〔紫外線レーザー印刷用紙の製造〕
上述のように調製した塗工液を、酸化チタンの塗工量が1g/m2になるように紙基材上にエアナイフコーターにて塗工し、140℃、1分間の条件で乾燥させて印刷層を形成し、紫外線レーザー印刷用クルパック紙を得た。
【0085】
<実施例2>
クルパック処理前後の速度差を-28.0m/分に変更した以外は、実施例1と同様の条件で紙基材を製造し、紫外線レーザー印刷用クルパック紙を得た。
【0086】
<実施例3>
クルパック処理前後の速度差を-30.0m/分に変更した以外は、実施例1と同様の条件で紙基材を製造し、紫外線レーザー印刷用クルパック紙を得た。
【0087】
<実施例4>
クルパック処理前後の速度差を-20.0m/分に変更し、パルプスラリーの吐出量を調整することで坪量を100g/m2に変更した以外は、実施例1と同様の条件で紙基材を製造し、紫外線レーザー印刷用クルパック紙を得た。
【0088】
<実施例5>
クルパック処理前後の速度差を-15.0m/分に変え、パルプスラリーの吐出量を調整することで坪量を120g/m2に変えた以外は、実施例1と同様の条件で紙基材を得た。
【0089】
<実施例6>
木材をパルプ化(蒸解)したNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)とLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を40:60の比率で使用し、クルパック処理前後の速度差を-25.0m/分にて抄紙した以外は、実施例1と同様の条件で紙基材を製造し、紫外線レーザー印刷用クルパック紙を得た。
【0090】
<実施例7>
木材をパルプ化(蒸解)したNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)とLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を90:10の比率で使用し、クルパック処理前後の速度差を-40.0m/分にて抄紙した以外は、実施例1と同様の条件で紙基材を製造し、紫外線レーザー印刷用クルパック紙を得た。
【0091】
<実施例8>
クルパック処理前後の速度差を-16.0m/分にて抄紙し、パルプスラリーの吐出量を調整することで坪量を50g/m2に変更した以外は、実施例1と同様の条件で紙基材を製造し、紫外線レーザー印刷用クルパック紙を得た。
【0092】
<実施例9>
木材をパルプ化(蒸解)したNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)とLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を30:70の比率で使用し、クルパック処理前後の速度差を-25.0m/分にて抄紙した以外は、実施例1と同様の条件で紙基材を製造し、紫外線レーザー印刷用クルパック紙を得た。
【0093】
<実施例10>
木材をパルプ化(蒸解)したNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)とLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を100:0の比率で使用し、クルパック処理前後の速度差を-40.0m/分にて抄紙した以外は、実施例1と同様の条件で紙基材を製造し、紫外線レーザー印刷用クルパック紙を得た。
【0094】
<実施例11>
塗工液の調製において、使用した酸化チタンを酸化亜鉛(堺化学工業株式会社製、酸化亜鉛1種、形状:不定形、平均粒子径:0.6μm)に変更した以外は、実施例2と同様にして、紫外線レーザー印刷用クルパック紙を得た。
【0095】
<実施例12>
〔保護層の形成〕
PE樹脂(日本ポリエチレン株式会社製、品番:LC522)を単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、50C150)へ投入し、実施例2で得た紫外線レーザー印刷用クルパック紙の印刷層の上に樹脂の厚みが15μmになるよう溶融積層した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、印刷層の上に、さらに保護層を有する紫外線レーザー印刷用クルパック紙を得た。なお、溶融温度は320℃とした。
【0096】
<実施例13>
実施例8の紫外線レーザー印刷用クルパック紙の印刷層とは反対面へ、熱乾燥後の塗工量が10g/m2となるように、水性アクリル粘着剤(EA-G34、東洋モートン株式会社製)100質量部に対して、硬化剤(CAT-EP8、東洋モートン株式会社製)3質量部を混合した塗工液を、リバースロールコーターを用いて塗工した後、105℃で乾燥した。次に粘着剤を塗工した面に、リニアローデンシティポリエチレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、LL-XLTN、25μm)をラミネートした。
【0097】
<実施例14>
実施例2の紫外線レーザー印刷用クルパック紙の印刷層とは反対面へ、熱乾燥後の塗工量が10g/m2となるように、水性アクリル粘着剤(EA-G34、東洋モートン株式会社製)100質量部に対して、硬化剤(CAT-EP8、東洋モートン株式会社製)3質量部を混合した塗工液を、リバースロールコーターを用いて塗工した後、105℃で乾燥した。次に粘着剤を塗工した面に、リニアローデンシティポリエチレンフィルム(フタムラ化学株式会社製、LL-XLTN 20μm)をラミネートした。
【0098】
<実施例15>
〔マスターバッチの製造方法〕
特開2015-96568号公報に習い、以下の手順でマスターバッチを作製した。
PE樹脂(ポリエチレン樹脂、日本ポリエチレン株式会社製、LC522)60部と酸化チタン40部とをタンブラーミキサー(株式会社エイシン製、TM-65S)にて45rpm、1時間の条件で混合した後、二軸押出機(株式会社日本製鋼所製、TEX30XCT、L/D=42)にてスクリュー回転数250rpm、シリンダー温度200℃の条件で溶融混練し、ストランド状に押出し、これを水槽にて冷却後、ペレタイザーを用いて平均軸径2.0mm、平均軸長3.0mmの柱状にペレット化してマスターバッチを得た。
〔ラミネート層(フィルム)の付与〕
前記マスターバッチと、前記PE樹脂とを、20μmの印刷層を形成した場合の印刷層中の酸化チタンの含有量が1.0g/m2となるように単軸押出機(株式会社東洋精機製作所製、50C150)へ投入し、実施例2の紙基材の表面に印刷層であるラミネート層の厚さが20μmになるよう押出ラミネートにより溶融積層した後、速やかに20℃に調温した冷却ロールで挟持しながら急冷して、印刷層であるラミネート層を有する紫外線レーザー印刷用紙を得た。なお、溶融温度は320℃とした。
【0099】
<比較例1>
木材をパルプ化(蒸解)したNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)とLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を45:55の比率で使用し、クルパック処理を行わず、パルプスラリーの吐出量を調整することで坪量を50g/m2に変更した以外は、実施例1と同様の条件で紙基材を得た。
【0100】
<比較例2>
木材をパルプ化(蒸解)したNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)とLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を45:55の比率で使用し、クルパック処理を行わなかった以外は、実施例1と同様の条件で紙基材を得た。
【0101】
<比較例3>
木材をパルプ化(蒸解)したNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)とLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を60:40の比率で使用し、クルパック処理を行わず、パルプスラリーの吐出量を調整することで坪量を100g/m2に変更した以外は、実施例1と同様の条件で紙基材を得た。
【0102】
<比較例4>
木材をパルプ化(蒸解)したNUKP(針葉樹未晒クラフトパルプ)とLUKP(広葉樹未晒クラフトパルプ)を45:55の比率で使用し、クルパック処理前後の速度差を-10.0m/分にて抄紙した以外は、実施例1と同様の条件で紙基材を得た。
【0103】
<比較例5>
比較例1のクルパック紙を使用する以外は実施例13と同様に作製した。
【0104】
<比較例6>
比較例2のクルパック紙を使用する以外は実施例13と同様に作製した。
【0105】
得られたクルパック紙または紙基材を用いて以下の評価を実施した。
<こわさ>
クルパック紙の縦方向および横方向のこわさは、ISO2493-1:2010(紙及び板紙-曲げ抵抗試験方法-第1部:定速たわみ)に準拠して測定した。
具体的には、調温および調湿処理として、23±5℃、50±10%の環境下に1日静置したクルパック紙を、幅38mm、長さ70mmに切り出したサンプルを準備した。こわさ試験機(L&W BENDING RESISTANCE TESTERコードNo.16-D、Lorentzen&Wattre社製)にて、曲げ長さを10mm、曲げ角度を15°に設定した上で、MD(縦方向)、CD(横方向)それぞれの曲げ抗力を測定した後、下記の式にてこわさを算出した。
【0106】
【0107】
<突刺強度・比突刺強度>
クルパック紙の突刺強度は、JIS Z 1707:2019(食品包装用プラスチックフィルム通則)に準拠して測定した。
具体的には、調温および調湿処理として、23±5℃、50±10%の環境下に1日静置したクルパック紙を用いて、引張試験機(型式RTC-1210A、株式会社エーアンドディ製)にて、突刺用の治具(株式会社エーアンドディ製)を使用し、突刺速度50mm/minに設定した上で突刺強度を測定した。
また、突刺強度を坪量で除して、比突刺強度を算出した。
【0108】
<パルプの長さ加重平均繊維長>
クルパック紙におけるパルプの長さ加重平均繊維長は、ISO 16065-2:2007に準拠して測定した。具体的には以下の通りである。
クルパック紙を40cm角に切り出し、それをイオン交換水に浸し、固形分濃度2質量%に調整した上で、24時間浸漬した。24時間浸漬した後、標準型離解機(熊谷理機工業株式会社製)を用いて、30分間離解処理を行い、パルプを繊維状に離解した。クルパック紙が熱可塑性樹脂層や保護層を有する場合には、熱可塑性樹脂層や保護層を除いた離解後のスラリー(パルプ繊維の分散液)を分取した。
得られたパルプ繊維のサンプルを用いて、繊維長測定機(型式FS-5 UHDベースユニット付、バルメット社製)を使用して、「長さ加重平均繊維長(ISO)」を測定した。なお、「長さ加重平均繊維長(ISO)」は0.2mm以上7.6mm以下の繊維を選択して計算した長さ加重平均繊維長である。
【0109】
<坪量>
紙基材の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定した。
なお、クルパック紙が紙基材に加えて樹脂層(熱可塑性樹脂層や保護層)を有する場合には、公知の方法および下記の手順で樹脂層の材料、厚さおよび密度などを特定したうえで、紙基材の坪量を算出した。具体的には、所定の大きさにカットした、熱可塑性樹脂層や保護層を有するクルパック紙の質量(全質量)を測定し、その後、熱可塑性樹脂層や保護層を有するクルパック紙をセルラーゼなどの酵素水溶液に含浸させ、紙基材を完全に溶解させたことを確認の後、熱可塑性樹脂層および保護層のみの質量(樹脂層質量)を測定し、全質量から樹脂層質量を差し引くことで紙基材のみの質量を算出し、紙基材の坪量を測定した。なお、印刷層を有する場合は研削装置(有限会社佐川製作所製、砥石寸法φ50.8×12.7mm)を用いて除去し、測定することもできる。
【0110】
<厚さ>
紙基材の厚さ(紙厚)は、JIS P 8118:2014に準拠して測定した。なお、クルパック紙が紙基材に加えて印刷層や樹脂層、保護層を有する場合には、クルパック紙の断面の電子顕微鏡(SEM)の観察像から、紙基材層、印刷層、熱可塑性樹脂層、および保護層のそれぞれについて、厚みを測定する。
【0111】
<密度>
紙基材の密度は、上述した測定方法により得られた厚さおよび坪量から算出する。
【0112】
<袋柔軟性評価>
得られたクルパック紙または紙基材を切り出して、長さ200mm、幅150mmのシート1を得た。なお、シート1は、幅が抄紙方向(MD)とした。シート1に、幅10mmの両面テープ2(型式:スコッチ超強力両面テープ プレミアゴールド スーパー多用途PPS-10、3M社製)を、
図1に示すように貼り付け、縦方向(MD)の中央(端から100mmの位置)で半分に折り込み、隙間が生じないように固定し、袋3を得た。
上記袋3へ水を充填し、水が零れるまでの充填量を評価した。数値が大きいほど袋柔軟性が良好であることを示す。なお、印刷層を設けた側が袋の外側になるように、製袋した。
4:水の充填量が150mL以上。
3:水の充填量が100mL以上150mL未満。
2:水の充填量が50mL以上100mL未満。
1:水の充填量が50mL未満。
【0113】
<耐落下衝撃性評価>
得られたクルパック紙または紙基材から、上記の<袋柔軟性評価>で作製した袋3と同様の袋を作製した。なお、印刷層を設けた側が袋の外側になるように、製袋した。
袋3へ質量50gの円盤型分銅(商品番号:201900401、株式会社村上衡器製作所製)を1つ充填し、<袋柔軟性評価>で使用した幅10mmの両面テープで密閉して、分銅を充填した袋を作製した。分銅を充填した袋は、調温および調湿処理として、23±5℃、50±10%の環境下に1日静置した。
調温および調湿処理後の袋を、袋の天面4(充填口)を上側にして、30cmの高さからSUS板の上に落下させた。さらに、落下させた袋を、今度は袋の底面5を上側にして同様に落下させた。上記の落下試験(落下回数は1つの袋につき2回)を、新たに作製した袋を使用して1水準につき合計5試験実施し、耐落下衝撃性を評価した。数値が大きいほど耐落下衝撃性が良好であることを示す。
4:5試験全てにおいて、袋に破れ、打痕は生じなかった。
3:5試験全てにおいて、袋に破れは生じなかったが、打痕は生じた。
2:1~4試験において、袋に破れが生じた。
1:5試験全てにおいて、袋に破れが生じた。
【0114】
<印刷方法>
実施例および比較例の印刷用紙にて下記条件にて紫外線レーザーで印刷した。
紫外線レーザー(品番:MD-U1020C、株式会社キーエンス製)を用いて30mm角の正方形をマーキングした。なお、印刷層に対して紫外線レーザーの照射を行った。
照射条件は、以下の通りとした。
・波長:355nm
・出力:80%(出力100%時2.5W)
・周波数:40kHz
・焦点距離:300mm(装置付属の高さ補正を使用し、焦点合わせを実施)
・スポット径=40μm(焦点合わせ時)
・塗りつぶし間隔:0.04mm
・スキャンスピード:3000mm/sec
・スポット可変:100
<評価方法>
上記で印刷したクルパック紙を、横型ピロー包装機(品番:FW3410/B、株式会社フジキカイ製)にて製袋し、天面のヒートシール部を開封し、質量50gの円盤型分銅(商品番号:201900401、株式会社村上衡器製作所製)を充填し、充填口を両面テープ(型式:スコッチ超強力両面テープ プレミアゴールド スーパー多用途PPS-10、3M社製)により封をした。なお、印刷面が袋の外側になるように、製袋した。JIS P 8113:2006(紙および板紙引張特性の試験方法)に準じて、23±5℃、50±10%の環境下に1日以上静置した袋を、30cmの高さから、SUS板を引いた床の上に、加速を付けないよう、紫外線レーザーによる印刷部分が床の上に落ちるよう、同じ袋で各1回ずつ落下させ、試験後の印刷部の様子を観察した。
また、新たに用意した袋にて、同様の評価をそれぞれ4回、計5回の評価を行った。
評価基準は、以下の通りである。
A:製袋、落下後の袋に破れ、打痕、しわが生じず、30mm角の正方形の印刷が歪まず、視認性が良好であった。
B:製袋、落下後の袋の1つ以上に、破れやしわが生じ、30mm角の正方形の印刷が歪み、視認性が悪化した。
【0115】
実施例1~15および比較例1~6の各物性と、評価結果を表1に示す。
【0116】
【0117】
表1に示すように、実施例の紫外線レーザー印刷用クルパック紙は、耐落下衝撃性を有し、かつ、柔軟性にも優れ、さらに、紫外線レーザーによる印刷が可能であり、印刷後に落下試験を行っても、視認性に優れる印刷物が得られた。
一方、突刺強度が7.5N未満である比較例1、2、4、および5では、充分な耐落下衝撃性が得られなかった。また、縦方向のこわさが0.70mNmを超える比較例3では、充分な柔軟性が得られなかった。
【符号の説明】
【0118】
1:シート、2:両面テープ、3:袋、4:袋の天面、5:袋の底面
【要約】
耐落下衝撃性を有し、かつ柔軟性にも優れ、さらに、紫外線レーザーによる印刷が可能であり、落下試験後であっても印刷物の視認性に優れる紫外線レーザー印刷用クルパック紙および該紫外線レーザー印刷用クルパック紙を用いた印刷物の製造方法、並びに、該紫外線レーザー印刷用クルパック紙または印刷物を用いた紙加工品に関する。
本発明の紫外線レーザー印刷用クルパック紙は、パルプを含有する紙基材上に紫外線レーザー照射により変色する無機化合物を含有する印刷層を有し、ISO2493-1:2010に準拠して測定される、縦方向のこわさが、0.70mNm以下であり、横方向のこわさが、0.45mNm以下であり、JIS Z 1707:2019に準拠して測定される、突刺強度が、7.50N以上である。