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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240918BHJP
   H01L 25/065 20230101ALI20240918BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20240918BHJP
   H01L 21/60 20060101ALI20240918BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240918BHJP
   H01L 23/52 20060101ALI20240918BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
H01L25/08 C
H01L21/60 311Z
H01L23/12 501P
H01L23/52 C
H01L23/52 D
H01L25/08 Z
H05K3/46 B
H05K3/46 Q
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020217060
(22)【出願日】2020-12-25
(65)【公開番号】P2022102370
(43)【公開日】2022-07-07
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】大場 隆之
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-119110(JP,A)
【文献】国際公開第2019/087764(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/120659(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/029767(WO,A1)
【文献】特開2017-212416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/447-21/449
H01L 21/60-21/607
H01L 23/12
H01L 23/52
H01L 25/00-25/18
H05K 3/46
H10B 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体チップとなる複数の製品領域が画定された複数の第1基板を準備し、電極パッド形成側を互いに同一方向に向けて各々の前記第1基板を積層し、貫通電極を介して異なる層の前記第1基板同士を直接電気的に接続する工程と、
複数の製品領域が画定された第2基板を準備し、前記第2基板の一方の面の各々の前記製品領域に、複数の第2半導体チップを、各々の電極パッド形成側を前記第2基板側に向けて固着する工程と、
電極パッド形成側を互いに同一方向に向けて、最上層の前記第1基板の電極パッド形成側に、前記第2基板に固着された複数の前記第2半導体チップを積層し、前記第2基板を除去する工程と、
複数の前記第2半導体チップの電極パッドと最上層の前記第1基板の電極パッドとを貫通電極を介して直接電気的に接続する工程と、
複数の前記第2半導体チップを並列に接続する工程と、
各々の製品領域を個片化し、最上層に、他の層よりも多くの半導体チップが配置された半導体チップ積層体を作製する工程と、を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
複数の製品領域が画定された第2基板を準備し、前記第2基板の一方の面の各々の前記製品領域に、複数の第2半導体チップを、各々の背面側を前記第2基板側に向けて固着する工程と、
複数の前記第2半導体チップを並列に接続する工程と、
第1半導体チップとなる複数の製品領域が画定された複数の第1基板を準備し、複数の前記第2半導体チップ上に、電極パッド形成側を互いに同一方向に向けて各々の前記第1基板を積層し、貫通電極を介して最下層の前記第1基板と複数の前記第2半導体チップ、及び異なる層の前記第1基板同士を直接電気的に接続する工程と、
各々の製品領域を個片化し、最下層に、他の層よりも多くの半導体チップが配置された半導体チップ積層体を作製する工程と、を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項3】
各々の前記第1基板を積層する前に、前記第1基板の背面側を薄化する工程を有する、請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
複数の前記第2半導体チップの背面側を薄化する工程を有する、請求項1乃至3の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
複数の前記第2半導体チップの側面を被覆する第1樹脂層を形成する工程を有する、請求項1乃至4の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
第3基板を準備し、前記第3基板の一方の面に、前記半導体チップ積層体を、電極パッド形成側を前記第3基板側に向けて固着する工程を有する、請求項1乃至5の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第3基板の一方の面に、前記半導体チップ積層体の側面を被覆する第2樹脂層を形成する工程を有する、請求項6に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
複数の前記第1半導体チップは、メモリーチップ及びコントローラーチップを含み、
複数の前記第2半導体チップは、ロジックチップである、請求項1乃至7の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
複数の第1半導体チップが電極パッド形成側を互いに同一方向に向けて積層され、貫通電極を介して異なる層の前記第1半導体チップ同士が直接電気的に接続され、
電極パッド形成側を互いに同一方向に向けて、最上層の前記第1半導体チップの電極パッド形成側に複数の第2半導体チップが配置され、
複数の前記第2半導体チップの電極パッドと最上層の前記第1半導体チップの電極パッドが貫通電極を介して直接電気的に接続され、
複数の前記第2半導体チップが互いに並列に接続された、半導体装置。
【請求項10】
複数の第1半導体チップが電極パッド形成側を互いに同一方向に向けて積層され、貫通電極を介して異なる層の前記第1半導体チップ同士が直接電気的に接続され、
電極パッド形成側を互いに同一方向に向けて、最下層の前記第1半導体チップの背面側に複数の第2半導体チップが配置され、
複数の前記第2半導体チップの電極パッドと最下層の前記第1半導体チップの電極パッドが貫通電極を介して直接電気的に接続され、
複数の前記第2半導体チップが互いに並列に接続された、半導体装置。
【請求項11】
最下層の前記第1半導体チップの背面が放熱面となる、請求項9に記載の半導体装置。
【請求項12】
複数の前記第2半導体チップの背面が放熱面となる、請求項10に記載の半導体装置。
【請求項13】
複数の前記第2半導体チップの側面を被覆する第1樹脂層を有する、請求項9乃至12の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項14】
複数の前記第1半導体チップの側面及び前記第1樹脂層の側面を被覆する第2樹脂層を有する、請求項13に記載の半導体装置。
【請求項15】
複数の前記第1半導体チップは、メモリーチップ及びコントローラーチップを含み、
複数の前記第2半導体チップは、ロジックチップである、請求項9乃至14の何れか一項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体応用製品はスマートフォン等の各種モバイル機器用途等として小型化、薄化、軽量化が急激に進んでいる。また、それに伴い、半導体応用製品に搭載される半導体装置にも小型化、高密度化が要求されている。さらに近年は、高帯域の性能で消費電力が小さいマイクロプロセッサーとメモリの組み合わせが必要になっている。そこで、複数の半導体チップを積層した半導体チップ積層体が提案されている。積層される半導体チップは、例えば、メモリーチップやロジックチップである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-209814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような半導体チップ積層体は、例えば、インターポーザ上に実装され、同じインターポーザ上に実装された他の半導体チップと、インターポーザに設けられた配線を介して電気的に接続される。しかし、半導体チップ積層体及び半導体チップとインターポーザとの接続にはバンプ(はんだバンプなど)を利用するため、半導体チップ積層体と半導体チップとは、バンプとインターポーザの配線を経由して接続される。そのため、半導体チップ積層体と半導体チップとを接続する部分のインピーダンスが高いことが問題であった。またウェハから個片化されたチップを積層する手法では、積層サイクルタイムが長いため、高コスト、また機械的接合に基づくチップとチップの接続不良が起きやすい課題があった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みてなされたもので、相互に接続される半導体チップ間のインピーダンスの低減と高信頼化及び低コスト化を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本半導体装置の製造方法は、第1半導体チップとなる複数の製品領域が画定された複数の第1基板を準備し、電極パッド形成側を互いに同一方向に向けて各々の前記第1基板を積層し、貫通電極を介して異なる層の前記第1基板同士を直接電気的に接続する工程と、複数の製品領域が画定された第2基板を準備し、前記第2基板の一方の面の各々の前記製品領域に、複数の第2半導体チップを、各々の電極パッド形成側を前記第2基板側に向けて固着する工程と、電極パッド形成側を互いに同一方向に向けて、最上層の前記第1基板の電極パッド形成側に、前記第2基板に固着された複数の前記第2半導体チップを積層し、前記第2基板を除去する工程と、複数の前記第2半導体チップの電極パッドと最上層の前記第1基板の電極パッドとを貫通電極を介して直接電気的に接続する工程と、複数の前記第2半導体チップを並列に接続する工程と、各々の製品領域を個片化し、最上層に、他の層よりも多くの半導体チップが配置された半導体チップ積層体を作製する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、相互に接続される半導体チップ間のインピーダンスの低減と高信頼化及び低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態に係る半導体装置を例示する断面図である。
図2】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その1)である。
図3】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その2)である。
図4】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その3)である。
図5】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その4)である。
図6】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その5)である。
図7】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その6)である。
図8】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その7)である。
図9】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その8)である。
図10】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その9)である。
図11】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その10)である。
図12】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その11)である。
図13】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その12)である。
図14】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その13)である。
図15】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その14)である。
図16】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その15)である。
図17】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その16)である。
図18】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その17)である。
図19】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その18)である。
図20】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その19)である。
図21】第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その20)である。
図22】第1実施形態に係る半導体装置のシミュレーション結果を示す図(その1)である。
図23】第1実施形態に係る半導体装置のシミュレーション結果を示す図(その2)である。
図24】第1実施形態の変形例1に係る半導体装置を例示する断面図である。
図25】第1実施形態の変形例1に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その1)である。
図26】第1実施形態の変形例1に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その2)である。
図27】第1実施形態の変形例1に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その3)である。
図28】第1実施形態の変形例1に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その4)である。
図29】第1実施形態の変形例1に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その5)である。
図30】第1実施形態の変形例1に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その6)である。
図31】第1実施形態の変形例1に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その7)である。
図32】第1実施形態の変形例1に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その8)である。
図33】第1実施形態の変形例2に係る半導体装置を例示する断面図である。
図34】第1実施形態の変形例2に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その1)である。
図35】第1実施形態の変形例2に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その2)である。
図36】第1実施形態の変形例2に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その3)である。
図37】第1実施形態の変形例2に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その4)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
〈第1実施形態〉
[半導体装置の構造]
図1は、第1実施形態に係る半導体装置を例示する断面図である。図1を参照すると、第1実施形態に係る半導体装置1は、半導体チップ30、30、30、30、及び30と、半導体チップ40及び40と、樹脂層50と、基板61と、樹脂層55とを有する。なお、半導体装置1において、半導体チップ30、30、30、30、及び30と、半導体チップ40及び40とが積層された部分を半導体チップ積層体と称する場合がある。半導体装置1では、最下層の半導体チップ30の背面が放熱面となる。
【0011】
なお、本願において、平面視とは対象物を基板61の一方の面の法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を基板61の一方の面の法線方向から視た形状を指すものとする。
【0012】
半導体チップ30、30、30、30、及び30は、電極パッド形成側を互いに同一方向に向けて順次積層され、貫通電極を介して異なる層の半導体チップ同士が直接電気的に接続された構造を有する。
【0013】
半導体チップ30は、本体31と、半導体集積回路32と、電極パッド33とを有する。また、半導体チップ30、30、30、及び30の各々は、本体31と、半導体集積回路32と、電極パッド33と、絶縁層36と、貫通電極37とを有する。半導体チップ30、30、30、及び30の各々の厚さは、例えば、5μm~15μm程度とすることができる。半導体チップ30の厚さは、適宜決定できる。
【0014】
半導体チップ30~30において、本体31は、例えばシリコン、窒化ガリウム、炭化ケイ素等から構成されている。半導体集積回路32は、例えばシリコン、窒化ガリウム、炭化ケイ素等に拡散層(図示せず)、絶縁層(図示せず)、ビアホール(図示せず)、及び配線層(図示せず)等が形成されたものであり、本体31の一方の面側に設けられている。
【0015】
電極パッド33は、図示しない絶縁膜(シリコン酸化膜など)を介して、半導体集積回路32の上面側に設けられている。電極パッド33は、半導体集積回路32に設けられた配線層(図示せず)と電気的に接続されている。電極パッド33の平面形状は、例えば、矩形や円形等とすることができる。電極パッド33の平面形状が円形である場合、電極パッド33の直径は、例えば、5μm~10μm程度とすることができる。電極パッド33のピッチは、例えば、1μm~12μm程度とすることができる。
【0016】
電極パッド33としては、例えば、Ti層やTiN層上にAu層、Al層、Cu層等を積層した積層体等を用いることができる。電極パッド33として、Ni層上にAu層を積層した積層体、Ni層上にPd層及びAu層を順次積層した積層体、Niの代わりにCo、Ta、Ti、TiN等の高融点金属からなる層を用い、同層上にCu層あるいはAl層を積層した積層体あるいはダマシン構造状の配線等を用いてもかまわない。
【0017】
半導体チップ30~30において、本体31の背面にバリア層となる絶縁層が設けられてもよい。この場合、絶縁層の材料としては、例えば、SiO、SiON、Si等を用いることができる。絶縁層の厚さは、例えば、0.05μm~0.5μm程度とすることができる。半導体チップ30~30において、本体31の背面側に絶縁層(バリア層)を形成することにより、半導体チップが背面側から金属不純物により汚染されるおそれを低減できると共に、下層に半導体チップが配置される場合には、下層の半導体チップと絶縁できる。
【0018】
上下に隣接する半導体チップは、例えば接着層等を介さずに直接接合されるが、必要な場合(例えば、半導体集積回路32の表面が平坦でない場合等)には接着層等を介してもよい。最下層を除く各半導体チップには、最下層を除く各半導体チップを貫通して土台となる半導体チップ30の電極パッド33の上面を露出するビアホールが形成されており、ビアホールの内壁(側壁)には絶縁層36が設けられている。絶縁層36の材料としては、例えば、SiO、SiON、Si等を用いることができる。絶縁層36の厚さは、例えば、0.05μm~0.5μm程度とすることができる。ビアホール内には、絶縁層36に接するように貫通電極37が充填されている。また、本体31にあらかじめ絶縁層を埋設し、この絶縁層が貫通電極37の直径より大きい場合は、絶縁層36を用いなくともよい。
【0019】
絶縁層36内に位置する貫通電極37の平面形状は、例えば、円形あるいは多角形である。絶縁層36内に位置する貫通電極37の平面形状が円形である場合、その直径は、例えば、0.5μm~5μm程度とすることができる。電極パッド33上に位置する貫通電極37の平面形状は、例えば、円形あるいは多角形である。電極パッド33上に位置する貫通電極37の平面形状が円形である場合、その直径は、例えば、絶縁層36内に位置する貫通電極37の直径と同じか、又は、例えば、絶縁層36内に位置する貫通電極37の直径よりも0.5μm~2μm程度大きくすることができる。貫通電極37のピッチは、例えば、1μm~12μm程度とすることができる。
【0020】
貫通電極37の材料は、例えば、銅である。貫通電極37は、複数の金属が積層された構造であってもよい。具体的には、例えば、貫通電極37として、Ti層やTiN層上にAu層、Al層、Cu層等を積層した積層体等を用いることができる。貫通電極37として、Ni層上にAu層を積層した積層体、Ni層上にPd層及びAu層を順次積層した積層体、Niの代わりにCo、Ta、Ti、TiN等の高融点金属からなる層を用い、同層上にCu層あるいはAl層を積層した積層体あるいはダマシン構造状の配線等を用いてもかまわない。
【0021】
このように、各々の半導体チップの電極パッド33同士は、電極パッド33の上面に形成され、さらにビアホール内に絶縁層36を介して形成された貫通電極37を介して電気的に接続されている。なお、電極パッド33と、貫通電極37の電極パッド33の上面に形成された部分とを合わせて、単に電極パッドと称する場合がある。また、電極パッド33は、半導体集積回路32に含まれるトランジスタと接続されるものであり、貫通電極37の加工上、貫通電極37の密度が一様であった方が良い場合は、特にトランジスタおよび上下基板の導通がなくとも設置できるものとすることができる。すなわち、電気接続がなされていない孤立した電極パッド33や貫通電極37が存在してもよい。孤立した電極パッド33や貫通電極37の存在により、放熱性を向上することができる。
【0022】
半導体チップ30~30において、トランジスタと接続された電極パッド33を形成するか否かは、仕様に合わせて任意に決定できる。これにより、積層した半導体チップ中の所望の半導体チップのみに貫通電極37を接続できる。例えば、同じ信号を3層目の半導体チップを素通りして4層目の半導体チップや2層目の半導体チップに供給したり、異なる信号あるいは電力を各層の半導体チップに供給したりできる。
【0023】
半導体チップ40及び40は、電極パッド形成側を、半導体チップ30、30、30、30、及び30の電極パッド形成側と同一方向に向けて、半導体チップ30上に並置されている。各半導体チップの電極パッド形成側を上側に向けたときに、半導体チップ40及び40は半導体チップ積層体の最上層に配置されている。半導体チップ40及び40の電極パッド43と半導体チップ30の電極パッド33が貫通電極47を介して直接電気的に接続されている。
【0024】
半導体チップ40と半導体チップ40とは、並列に接続されている。例えば、半導体チップ40及び40の半導体集積回路42上に絶縁膜を介して図示しない再配線を形成し、半導体チップ40と半導体チップ40とを並列に接続することができる。なお、半導体チップ30の半導体集積回路32上に絶縁膜を介して再配線を形成し、再配線により半導体チップ40と半導体チップ40とを並列に接続してもよい。その場合には、半導体チップ40及び40の電極パッド43は、貫通電極47を介して、半導体チップ30の半導体集積回路32上に絶縁膜を介して形成された再配線と直接電気的に接続される。
【0025】
図1では、半導体チップ40と半導体チップ40とが並列に接続されているが、半導体チップ30上に配置されて互いに並列に接続される半導体チップは2個には限定されず、3個以上であってもよい。
【0026】
半導体チップ40及び40は、本体41と、半導体集積回路42と、電極パッド43と絶縁層46と、貫通電極47とを有する。本体41、半導体集積回路42、電極パッド43、絶縁層46、及び貫通電極47の材料や厚さ等は、例えば、本体31、半導体集積回路32、電極パッド33、絶縁層36、及び貫通電極37と同様とすることができる。半導体チップ40及び40の各々の厚さは、例えば、10μm~15μm程度とすることができる。
【0027】
半導体チップ40及び40と半導体チップ30は、例えば接着層等を介さずに直接接合されるが、接着層等を介してもよい。半導体チップ40及び40には、半導体チップ30の電極パッドの上面を露出するビアホールが形成されており、ビアホールの内壁(側壁)には絶縁層46が設けられている。絶縁層46の材料としては、例えば、SiO、SiON、Si等を用いることができる。絶縁層46の厚さは、例えば、0.05μm~0.5μm程度とすることができる。ビアホール内には、絶縁層46に接するように貫通電極47が充填されている。半導体チップ40及び40と半導体チップ30は、貫通電極47を介して直接電気的に接続されている。また、本体41にあらかじめ絶縁層を埋設し、この絶縁層が貫通電極47の直径より大きい場合は、絶縁層46を用いなくともよい。
【0028】
絶縁層46内に位置する貫通電極47の平面形状は、例えば、円形あるいは多角形である。絶縁層46内に位置する貫通電極47の平面形状が円形である場合、その直径は、例えば、0.5μm~5μm程度とすることができる。電極パッド43上に位置する貫通電極47の平面形状は、例えば、円形あるいは多角形である。電極パッド43上に位置する貫通電極47の平面形状が円形である場合、その直径は、例えば、絶縁層46内に位置する貫通電極47の直径と同じか、又は、例えば、絶縁層46内に位置する貫通電極47の直径よりも1μm~5μm程度大きくすることができる。貫通電極47のピッチは、例えば、5μm~12μm程度とすることができる。貫通電極47の材料は、例えば、貫通電極37と同様とすることができる。
【0029】
半導体チップ30~30は、例えば、メモリーチップである。半導体チップ30は、例えば、コントローラーチップである。半導体チップ40及び40は、例えば、ロジックチップである。なお、ロジックチップとは、例えば、CPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などである。また、半導体チップ40及び40は、電源ノイズ防止のコンデンサーなどと接続されてもよい。半導体装置1では、5個の半導体チップ30~30を積層しているが、これには限定されず、任意の個数の半導体チップを積層することができる。また、半導体装置1では、半導体チップ30上に2個の半導体チップ40及び40を並置しているが、これには限定されず、3個以上の半導体チップを並置してもよい。
【0030】
半導体チップ30上には、半導体チップ40及び40の側面を被覆する樹脂層50が設けられている。樹脂層50の材料としては、例えば主たる組成がベンゾシクロブテン(BCB)である熱硬化性の絶縁性樹脂を用いることができる。また、樹脂層50の材料として、主たる組成がエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂である熱硬化性の絶縁性樹脂、およびシリカなどの固形微粉末を添加した絶縁性複合材料等を用いてもかまわない。
【0031】
また、半導体チップ30~30の側面及び樹脂層50の側面を被覆する樹脂層55が設けられている。樹脂層55の材料としては、例えば、樹脂層50と同様とすることができる。
【0032】
半導体チップ40及び40、樹脂層50、及び樹脂層55の上面には、基板61が固着されている。基板61は、例えば、シリコンであるが、ゲルマニウムやサファイアやガラス等を用いてもかまわない。基板61の厚さは、任意とすることができる。基板61は、例えば、図示しない接着層を介して、半導体チップ40及び40、樹脂層50、及び樹脂層55の上面に固着できる。接着層の材料としては、例えば主たる組成がベンゾシクロブテンである熱硬化性の絶縁性樹脂(例えば、ジビニルシロキサンベンゾシクロブテン:DVS-BCB)を用いることができる。また、接着層の材料として、主たる組成がエポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ポリイミド系樹脂である熱硬化性の絶縁性樹脂、及びシリカ等の固形微粉末を添加した絶縁性複合材料等を用いてもかまわない。また、接着層の材料として、シロキサン等のシリコンを含有する材料を用いてもかまわない。接着層の厚さは、例えば、1μm程度とすることができる。
【0033】
[半導体装置の製造工程]
次に、第1実施形態に係る半導体装置の製造工程について説明をする。図2図21は、第1実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図である。
【0034】
まず、図2及び図3に示す工程では、薄化されていない基板30Aを準備する。なお、図2は平面図、図3は断面図である。基板30Aには、複数の製品領域Aと、各々の製品領域Aを分離するスクライブ領域Bとが画定されている。製品領域Aは、例えば、縦横に配列されている。スクライブ領域BにあるCは、ダイシングブレード等が基板30Aを切断する位置(以下、「切断位置C」とする)を示している。基板30Aの各々の製品領域Aは、個片化されると半導体チップ30となる。基板30Aは、図1を参照して説明した本体31と、半導体集積回路32と、電極パッド33とを有しているが(図8参照)、ここでは、電極パッド33の図示は省略されている。
【0035】
ここでは、一例として、基板30Aの材料をシリコンウェハとする。基板30Aは、例えば円形であり、直径φ1は、例えば6インチ(約150mm)、8インチ(約200mm)、12インチ(約300mm)等である。基板30Aの厚さは、例えば0.625mm(φ1=6インチの場合)、0.725mm(φ1=8インチの場合)、0.775mm(φ1=12インチの場合)等である。なお、以降の図8図18では、図2及び図3に示す製品領域Aの1つの断面を参照しながら説明を行う。
【0036】
次に、図4に示す工程では、基板30Aと同一構造の基板30Bを準備し、基板30Bの電極パッド形成側に接着層520を介して基板510を接合する。基板510としては、アライメント時に光が透過する基板を用いることが好ましく、例えば、石英ガラスの基板等を用いることができる。接着層520としては、例えば後述する図7に示す工程において加熱する温度で軟化する接着剤(200℃程度又はそれ以下で軟化する接着剤)を用いることができる。接着層520は、例えばスピンコート法により基板510の一方の面に形成できる。接着層520は、スピンコート法の代わりに、フィルム状の接着剤を貼り付ける方法等を用いて基板510の一方の面に形成しても構わない。
【0037】
次に、図5に示す工程では、基板30Bの背面側の一部をグラインダー等で研削し、基板30Bの背面側を薄化する。そして、薄化された基板30Bの背面側に、プラズマCVD法等により絶縁層を形成してもよい。薄化後の基板30Bの厚さは、例えば、5μm~15μm程度とすることができる。基板30Bの厚さを5μm~15μm程度とすることで、ビアホールの加工時間が大幅に短縮され、薄化でアスペクト比が緩和され埋め込み性やカバレッジが改善される。
【0038】
次に、図6に示す工程では、基板30Aの電極パッド形成側に基板30Bの背面側を対向させ、基板510と接合された基板30Bを、基板30A上に積層する。基板30Aと基板30Bとは、例えば、基板30Aが平坦であれば表面活性化接合(SAB:Surface Activated Bonding)、基板30Aの表面が凹凸状であれば熱硬化樹脂を用いて接合できる。熱硬化樹脂は凹凸(段差)に合わせて厚さを変えることができ、例えば1μmの段差に対しては、2~5μmの熱硬化樹脂を用いることができる。
【0039】
次に、図7に示す工程では、図6に示す基板510及び接着層520を除去する。前述のように、接着層520として、図4に示す工程において加熱する温度で軟化する接着剤(200℃程度又はそれ以下で軟化する接着剤)を用いると好適である。これにより、図8に拡大して示す基板30Bと基板30Aの積層体が形成される。
【0040】
次に、図9に示す工程では、ビアホール30xを形成する。ビアホール30xは、基板30Bの電極パッド33、半導体集積回路32、及び本体31を貫通し、基板30Aの電極パッド33の表面が露出するように形成する。ビアホール30xは、例えばドライエッチング等により形成できる。ビアホール30xは、例えば平面視円形であり、その直径は、例えば、0.5μm~5μm程度とすることができる。
【0041】
次に、図10に示す工程では、ビアホール30xの内壁面を被覆する絶縁層36を形する。絶縁層36は、例えば、プラズマCVD法等により、ビアホール30xの内壁面、並びにビアホール30x内に露出する電極パッド33の上面を連続的に被覆する絶縁層を形成し、ビアホール30xの内壁面を被覆する部分以外をRIE(Reactive Ion Etching)等により除去することで形成できる。また、本体31にあらかじめ絶縁層を埋設し、この絶縁層が貫通電極37の直径より大きい場合は、絶縁層36を用いなくともよい。
【0042】
次に、図11に示す工程では、ビアホール30x内に貫通電極37を形成する。貫通電極37は、例えば、スパッタ法やめっき法を組み合わせてビアホール30x内に形成できる。具体的には、例えば、ビアホール30xの内壁面及びビアホール30x内に露出する電極パッド33の上面を連続的に被覆するように、Cu等の金属を200nm~500nm程度スパッタ法により成膜して給電層を形成する。そして、給電層を経由して給電する電解めっき法により、ビアホール30x内をCu等の金属で充填し、本体31の上面から突出する電解めっき層を形成する。そして、本体31の上面から突出する電解めっき層をCMP等により除去する。ビアホール30x内に充填された電解めっき層の上面と、本体31の上面とは、例えば、面一とすることができる。これにより、給電層上に電解めっき層が積層された貫通電極37を形成できる。
【0043】
次に、図12に示す工程では、図2図8と同様の工程により、基板30B上に基板30Cを積層する。そして、図9図11と同様の工程により、基板30Cに、ビアホール30x及び貫通電極37を形成する。基板30Cの電極パッド33は、基板30Cの貫通電極37を介して、基板30Bの貫通電極37と電気的に接続される。
【0044】
次に、図13に示す工程では、図12と同様にして、基板30C上に基板30Dを積層し、基板30Dに、ビアホール30x及び貫通電極37を形成する。そして、基板30Dの電極パッド33を、基板30Dの貫通電極37を介して、基板30Cの貫通電極37と電気的に接続する。さらに、基板30D上に基板30Eを積層し、基板30Eに、ビアホール30x及び貫通電極37を形成する。そして、基板30Eの電極パッド33を、基板30Eの貫通電極37を介して、基板30Dの貫通電極37と電気的に接続する。これにより、半導体チップとなる複数の製品領域が画定された基板30A~30Eが電極パッド形成側を互いに同一方向に向けて積層され、貫通電極37を介して異なる層の基板同士が直接電気的に接続された構造体が作製される。
【0045】
次に、図14に示す工程では、個片化された半導体チップ40及び40、並びに基板550を準備する。基板550は、例えば、基板30Aと同じ大きさである。基板550は、例えば、シリコンであるが、ゲルマニウムやサファイアやガラス等を用いてもかまわない。基板550には、基板30Aと同様に、複数の製品領域Aと、各々の製品領域Aを分離するスクライブ領域Bとが画定されている。そして、基板550の一方の面の各々の製品領域Aに、半導体チップ40及び40を、各々の電極パッド形成側を基板550側に向けて(すなわちフェイスダウン状態)で固着する。基板550と半導体チップ40及び40とは、例えば、接着層を介して固着できる。接着層の材料等については、図4を参照して説明したものと同様である。
【0046】
次に、図15に示す工程では、基板550の一方の面に、各々の製品領域Aに固着された半導体チップ40及び40の少なくとも側面を被覆する樹脂層50を形成する。なお、この工程では、後述する図16に示す工程で半導体チップ40及び40を薄化した後に、半導体チップ40及び40の側面が樹脂層50で完全に封止される位置まで、半導体チップ40及び40の側面を封止すれば十分である。ただし、半導体チップ40及び40の側面及び背面を被覆するように樹脂層50を形成してもよい。
【0047】
樹脂層50の材料等については、前述のとおりである。樹脂層50は、例えば、スピンコート法により基板550上に、例えば、熱硬化性の絶縁性樹脂を塗布した後、あるいは塗布後スキージ処理後、所定の硬化温度上に加熱して硬化させることにより形成できる。なお、樹脂層50は、スピンコート法の代わりに気相成長法を用いて形成してもかまわないし、フィルム状の樹脂を貼り付ける方法を用いて形成してもかまわない。
【0048】
次に、図16に示す工程では、樹脂層50の不要部分、及び各々の製品領域Aに固着された半導体チップ40及び40の背面側をグラインダー等で研削し、各々の製品領域Aに固着された半導体チップ40及び40の背面側を薄化する。これにより、半導体チップ40及び40は薄化されると共に、薄化後の半導体チップ40及び40の側面は樹脂層50で封止される。この際、ドライポリッシングやウェットエッチング等を併用してもかまわない。薄化後の半導体チップ40及び40の厚さは、例えば、5μm~15μm程度とすることができる。薄化された半導体チップ40及び40の背面側に、プラズマCVD法等により絶縁層を形成することが好ましい。
【0049】
次に、図17に示す工程では、電極パッド形成側を互いに同一方向に向けて、最上層の基板30Eの電極パッド形成側に、基板550に固着された半導体チップ40及び40を積層する。基板30Eと半導体チップ40及び40とは、例えば、前述の接合方法を用いて接合できる。半導体チップ40及び40を基板30E上に積層後、基板550を除去する。
【0050】
次に、図18に示す工程では、半導体チップ40及び40に貫通電極47を形成する。具体的には、図9に示す工程と同様にして、半導体チップ40及び40の電極パッド43、半導体集積回路42、及び本体41を貫通し、基板30Eの貫通電極37の表面が露出するようにビアホールを形成する。ビアホールは、例えば平面視円形であり、その直径は、例えば、0.5μm~5μm程度とすることができる。続いて、図10に示す工程と同様にして、ビアホールの内壁面を被覆する絶縁層46を形成後、図11に示す工程と同様にして、ビアホール内に貫通電極47を形成する。これにより、半導体チップ40及び40の電極パッド43と基板30Eの電極パッド33とが貫通電極47を介して直接電気的に接続される。
【0051】
また、半導体チップ40及び40の半導体集積回路42上に図示しない再配線を形成し、半導体チップ40と半導体チップ40とを並列に接続する。再配線は、貫通電極47と同様に、例えば、スパッタ法やめっき法を組み合わせて銅等により形成できる。なお、図13の工程で、基板30Eの半導体集積回路32上に再配線を形成してもよい。その場合には、半導体チップ40及び40の電極パッド43は、貫通電極47を介して、基板30Eの半導体集積回路32上に形成された再配線と直接電気的に接続される。
【0052】
次に、図19に示す工程では、図18に示す構造体を切断位置Cで切断して、各々の製品領域を個片化し、最上層に他の層よりも多くの半導体チップが配置された半導体チップ積層体を複数個作製する。そして、複数の半導体チップ積層体を、電極パッド形成側を基板61側に向けて、基板61の一方の面に固着する。ここでは、一例として、基板61をシリコンウェハとする。基板61の厚さは、例えば、0.5mm~1.0mm程度とすることができる。基板61と半導体チップ積層体とは、例えば、接着層を介して固着できる。接着層の材料等については、前述のとおりである。
【0053】
そして、基板61の一方の面に、半導体チップ積層体の少なくとも側面を被覆する樹脂層55を形成する。なお、この工程では、後述する図20に示す工程で半導体チップ積層体を薄化した後に、半導体チップ積層体の側面が樹脂層55で完全に封止される位置まで、半導体チップ積層体の側面を封止すれば十分である。ただし、半導体チップ積層体の側面及び背面を被覆するように樹脂層55を形成してもよい。樹脂層55の材料や形成方法は、例えば、樹脂層50の材料や形成方法と同様である。
【0054】
次に、図20に示す工程では、樹脂層55の不要部分、及び半導体チップ積層体の背面側をグラインダー等で研削し、半導体チップ積層体の背面側を薄化する。これにより、半導体チップ積層体は薄化されると共に、薄化後の半導体チップ積層体の側面は樹脂層55で封止される。この際、ドライポリッシングやウェットエッチング等を併用してもかまわない。
【0055】
次に、図21に示す工程では、図20に示す構造体を半導体チップ積層体ごとに個片化する。切断は、隣接する半導体チップ積層体の側面を被覆する樹脂層55の位置で行う。これにより、複数の半導体装置1が作製される。
【0056】
図22は、第1実施形態に係る半導体装置のシミュレーション結果を示す図(その1)である。図22において、比較例1は、半導体装置1の上下に隣接する半導体チップの貫通電極間を、マイクロバンプを介して接続した半導体装置である。なお、半導体装置1において、電極パッド部分を除く貫通電極(TSV)の直径は4μm、電極パッド部分を含む1層当たりの貫通電極の長さは10μmとした。また、比較例1に係る半導体装置において、電極パッド部分を除く貫通電極(TSV)の直径は8μm、電極パッド部分を含む18層当たりの貫通電極の長さは55μmとし、貫通電極間を接続するマイクロバンプの長さは26μmとした。
【0057】
図22より、半導体装置1では、比較例1に係る半導体装置と比べて、10MHz以下の低周波ではインピーダンスが約1/25になり、1GHz以上の高周波ではインピーダンスが約1/100になる。このように、従来はマイクロバンプを用いて電気的に接続していた半導体チップ間において、マイクロバンプを用いることなく貫通電極同士を直接接続することで、インピーダンスを大幅に下げることが可能となる。半導体装置1では、インピーダンスが下がることで高速動作が可能となり、データバスのビット幅を広げられるため、広帯域化(バンド幅の拡大)が可能となる。
【0058】
図23は、第1実施形態に係る半導体装置のシミュレーション結果を示す図(その2)である。図23において、比較例2は、半導体チップ30~30に相当する半導体チップ積層体と、半導体チップ40及び40に相当する半導体チップをシリコンインターポーザ上に並置し、マイクロバンプとシリコンインターポーザの配線を介して両者を電気的に接続した半導体装置である。貫通電極の直径や長さ、マイクロバンプの大きさは、図22の場合と同様である。
【0059】
図23より、半導体装置1では、比較例2に係る半導体層と比べて、貫通電極での消費エネルギーは約1/60になり、内部バスでの消費エネルギーは約1/4になる。このように、従来はマイクロバンプを用いて電気的に接続していた半導体チップ間において、マイクロバンプを用いることなく貫通電極同士を直接接続することで、特に貫通電極での消費エネルギーを大幅に下げることが可能となる。
【0060】
なお、半導体装置1では、半導体チップ30~30と半導体チップ40及び40とを直接接続してるのでインターポーザは不要である。内部バスとは、半導体チップ30~30と半導体チップ40及び40との接続にかかる消費電力を指しており垂直配線で接続されている。比較例2では、すなわち半導体チップ30~30と半導体チップ40及び40との信号のやり取りはインターポーザを介して行う。
【0061】
ところで、ロジックチップ(例えば半導体チップ40及び40)は微細化により内部トランジスタの個数が年々増加し、近年では1010/cm個に達している。しかしながら、微細化による内部トランジスタの個数の増加に伴い欠陥も増加するため、微細化による内部トランジスタの個数の増加は、ロジックチップの歩留まり低下の一因となっている。
【0062】
半導体装置1では、従来は1つロジックチップであったものを、内部トランジスタの個数を減らして複数のロジックチップに分割し、互いに並列に接続することが可能である。例えば、従来は1つのロジックチップであったものを、内部トランジスタの個数を減らして2つのロジックチップである半導体チップ40及び40に分割し、互いに並列に接続することが可能である。あるいは、従来は1つのロジックチップであったものを、内部トランジスタの個数を更に減らして3つ以上に分割し、互いに並列に接続することが可能である。
【0063】
個々のロジックチップにおける内部トランジスタの個数を減らすことで、チップサイズが小型化され微細化に伴なう歩留まり低下を抑制できるため、個々のロジックチップの歩留まりを改善できる。また、仮に個々のロジックチップにある程度の不良品が発生したとしても、半導体装置1の製造方法では、個々のロジックチップの良否を検査し、良品のみを他の半導体チップと積層できるので、半導体装置1の歩留まりを向上できる。すなわち、半導体装置の高信頼化及び低コスト化が可能となる。
【0064】
なお、半導体チップ30~30内、および半導体チップ30~30と半導体チップ40及び40とを垂直配線で高密度接続できることから、例えば、並列配線を行うことで並列度に比例して周波数を小さくしても、同じバンド幅を得ることができる。一般に半導体の消費電力は、周波数×(電圧)×電気容量で表すことができるので、周波数を小さく、または電圧を小さくすると消費電力を小さくすることができる。
【0065】
半導体装置1では、さらに高密度TSV(貫通配線)をチップ面内に最適配置できることから電力供給を装置内において最短の距離で行うことができ、供給電圧を低くしても電力損失が起きにくくなる。このため、前述したように周波数を小さくすることができ、電圧を小さくすることで、従来の装置に比べ周波数低下比は一乗で、電圧低下比に関しては二乗で消費電力の低減を行うことができる。
【0066】
〈第1実施形態の変形例1〉
第1実施形態の変形例1では、第1実施形態とは半導体チップ40及び40の積層位置が異なる半導体装置の例を示す。なお、第1実施形態の変形例1において、既に説明した実施形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
【0067】
図24は、第1実施形態の変形例1に係る半導体装置を例示する断面図である。図24を参照すると、第1実施形態の変形例1に係る半導体装置1Aは、各半導体チップの電極パッド形成側を上側に向けたときに、半導体チップ40及び40が半導体チップ積層体の最下層に配置されている点が、半導体装置1(図1等参照)と相違する。半導体装置1Aでは、半導体チップ40及び40の背面が放熱面となる。
【0068】
すなわち、半導体チップ30等と電極パッド形成側を互いに同一方向に向けて、半導体チップ30の背面側に、互いに並列に接続された半導体チップ40及び40が配置されている。半導体チップ40及び40の電極パッド43と半導体チップ30の電極パッド33は、貫通電極37を介して直接電気的に接続されている。
【0069】
半導体装置1Aでは、半導体チップ40及び40の側面が樹脂層50で被覆され、半導体チップ40及び40並びに樹脂層50の上に、半導体チップ30、30、30、30、及び30が順次積層されている。また、半導体チップ30~30の側面及び樹脂層50の側面を被覆する樹脂層55が設けられている。そして、半導体チップ30及び樹脂層55の上面には、基板61が固着されている。
【0070】
半導体装置1Aを作製するには、まず、図25に示す工程で、個片化された半導体チップ40及び40、並びに基板550を準備する。基板550は、例えば、基板30Aと同じ大きさである。基板550は、例えば、シリコンであるが、ゲルマニウムやサファイアやガラス等を用いてもかまわない。基板550には、基板30Aと同様に、複数の製品領域Aと、各々の製品領域Aを分離するスクライブ領域Bとが画定されている。そして、基板550の一方の面の各々の製品領域Aに、半導体チップ40及び40を、各々の背面側を基板550側に向けて(すなわちフェイスアップ状態)で固着する。基板550と半導体チップ40及び40とは、例えば、接着層を介して固着できる。接着層の材料等については、図4を参照して説明したものと同様である。
【0071】
次に、図26に示す工程では、基板550の一方の面に、各々の製品領域Aに固着された半導体チップ40及び40の側面を被覆する樹脂層50を形成する。また、半導体チップ40及び40の半導体集積回路42上に図示しない再配線を形成し、半導体チップ40と半導体チップ40とを並列に接続する。再配線は、例えば、スパッタ法やめっき法を組み合わせて銅等により形成できる。
【0072】
次に、図27に示す工程では、図2図5と同様にして、基板30E及び基板510を準備し、基板510を基板30Eの電極パッド形成側に接合し、基板30Eの背面側を薄化する。薄化後の基板30Eの厚さは、例えば、5μm~15μm程度とすることができる。薄化された基板30Eの背面側に、プラズマCVD法等により絶縁層を形成することが好ましい。
【0073】
次に、図28に示す工程では、半導体チップ40及び40の電極パッド形成側に基板30Eの背面側を対向させ、図27に示す構造体を図26に示す構造体の上に積層する。半導体チップ40及び40と基板30Eとは、例えば、表面活性化接合を用いて直接接合できる。続いて、基板510を除去し、図9図11に示す工程と同様にして、絶縁層36及び貫通電極37を形成する。貫通電極37は、半導体チップ40及び40の電極パッド43と直接電気的に接続される。なお、図26に示す工程で、半導体チップ40及び40の半導体集積回路42上に再配線を形成した場合には、基板30Eの電極パッド33は、貫通電極37を介して、半導体チップ40及び40の半導体集積回路42上に形成された再配線と直接電気的に接続される。
【0074】
次に、図29に示す工程では、図12及び図13に示す工程と同様にして、基板30E上に、基板30D、基板30C、基板30B、及び基板30Aを順次積層する。また、各基板を積層するたびに、絶縁層36及び貫通電極37を形成する。これにより、半導体チップとなる複数の製品領域が画定された基板30A~30Eが電極パッド形成側を互いに同一方向に向けて積層され、貫通電極37を介して異なる層の基板同士が直接電気的に接続された構造体が作製される。
【0075】
次に、図30に示す工程では、図29に示す構造体を切断位置Cで切断して、各々の製品領域を個片化し、最下層に他の層よりも多くの半導体チップが配置された半導体チップ積層体を複数個作製する。そして、複数の半導体チップ積層体を基板61の一方の面に固着する。ここでは、一例として、基板61をシリコンウェハとする。基板61の厚さは、例えば、0.5mm~1.0mm程度とすることができる。基板61と半導体チップ積層体とは、例えば、接着層を介して固着できる。接着層の材料等については、前述のとおりである。
【0076】
そして、基板61の一方の面に、半導体チップ積層体の少なくとも側面を被覆する樹脂層55を形成する。なお、この工程では、後述する図31に示す工程で半導体チップ積層体を薄化した後に、半導体チップ積層体の側面が樹脂層55で完全に封止される位置まで、半導体チップ積層体の側面を封止すれば十分である。ただし、半導体チップ積層体の側面及び背面を被覆するように樹脂層55を形成してもよい。樹脂層55の材料や形成方法は、例えば、樹脂層50の材料や形成方法と同様である。
【0077】
次に、図31に示す工程では、樹脂層55の不要部分、及び半導体チップ積層体の背面側をグラインダー等で研削し、半導体チップ積層体の背面側を薄化する。これにより、半導体チップ積層体は薄化されると共に、薄化後の半導体チップ積層体の側面は樹脂層55で封止される。この際、ドライポリッシングやウェットエッチング等を併用してもかまわない。
【0078】
次に、図32に示す工程では、図31に示す構造体を半導体チップ積層体ごとに個片化する。切断は、隣接する半導体チップ積層体の側面を被覆する樹脂層55の位置で行う。これにより、複数の半導体装置1Aが作製される。
【0079】
このように、各半導体チップの電極パッド形成側を上側に向けたときに、半導体チップ40及び40の積層位置は半導体装置1のように半導体チップ積層体の最上層であってもよく、半導体装置1Aのように半導体チップ積層体の最下層であってもよい。半導体装置1Aは、半導体チップ40及び40の裏面側が外部に露出しているため、放熱に有利である。半導体チップ40及び40の裏面側にヒートスプレッダを配置してもよい。
【0080】
〈第1実施形態の変形例2〉
第1実施形態の変形例2では、複数の半導体チップ積層体を基板上に並置し、両者を電気的に接続する例を示す。なお、第1実施形態の変形例2において、既に説明した実施形態と同一構成部品についての説明は省略する場合がある。
【0081】
図33は、第1実施形態の変形例2に係る半導体装置を例示する断面図である。図33を参照すると、第1実施形態の変形例2に係る半導体装置1Bは、図31に示す2つの半導体チップ積層体を水平配線及び垂直配線で接続したものである。なお、図33は、図31とは上下を反転して描かれている。
【0082】
半導体装置1Bにおいて、基板61の一方の面の反対側である他方の面(図33では上面)には、無機絶縁層71が設けられている。無機絶縁層71の材料としては、例えば、SiO、SiON、Si、および多孔質を含む材料等を用いることができる。無機絶縁層71の厚さは、例えば、0.1μm~0.5μm程度とすることができる。無機絶縁層71は、絶縁性を確保できれば薄くしてかまわない。半導体装置1の反りが無機絶縁層71等の成膜温度や厚さに比例するので、半導体装置1の反りを低減する観点から、無機絶縁層71の厚さは、絶縁耐性が得られる最小厚さ、具体的には100nm程度とすることが好ましい。無機絶縁層72~74についても同様である。無機絶縁層71~74を100nm程度に薄くすることで、半導体装置1の全体の薄化にも寄与できる。
【0083】
無機絶縁層71及び基板61を貫通し、一方の半導体チップ積層体の半導体チップ30の貫通電極37と直接電気的に接続する垂直配線81aが設けられている。また、無機絶縁層71及び基板61を貫通し、他方の半導体チップ積層体の半導体チップ30の貫通電極37と直接電気的に接続する垂直配線81bが設けられている。垂直配線81a及び81bと無機絶縁層71及び基板61との間には、絶縁層62が設けられている。絶縁層62の材料としては、例えば、SiO、SiON、Si等を用いることができる。絶縁層62の厚さは、例えば、0.05μm~0.5μm程度とすることができる。基板61が電気的に絶縁性を有する場合は絶縁層62を用いなくともよい。
【0084】
平面視において、垂直配線81a及び81bの平面形状は、例えば、円形あるいは多角形である。垂直配線81a及び81bの平面形状が円形である場合、垂直配線81a及び81bの直径は、例えば、0.5μm~5μm程度とすることができる。なお、垂直配線とは、無機絶縁層や基板の内部に、無機絶縁層や基板の表面に対しておおよそ垂直に設けられる配線を意味するが、無機絶縁層や基板の表面に対して厳密に垂直であることを意味するものではない。
【0085】
無機絶縁層71の基板61とは反対側の面(図33では上面)には、垂直配線81aの一部と垂直配線81bの一部とを直接電気的に接続する水平配線層91が設けられている。水平配線層91は、垂直配線81aと垂直配線81bとを直接電気的に接続する水平配線と、垂直配線81a又は垂直配線81bのみと直接電気的に接続する電極パッドとを含んでいる。垂直配線81aと垂直配線81bと水平配線層91とは、後述のように、同一工程で一体に形成してもよいし、別体に形成することも可能である。
【0086】
垂直配線81a及び81b並びに水平配線層91の材料は、例えば、銅である。垂直配線81a及び81b並びに水平配線層91は、複数の金属が積層された構造であってもよい。具体的には、例えば、垂直配線81a及び81b並びに水平配線層91として、Ti層やTiN層上にAu層、Al層、Cu層等を積層した積層体等を用いることができる。垂直配線81a及び81b並びに水平配線層91として、Ni層上にAu層を積層した積層体、Ni層上にPd層及びAu層を順次積層した積層体、Niの代わりにCo、Ta、Ti、TiN等の高融点金属からなる層を用い、同層上にCu層あるいはAl層を積層した積層体あるいはダマシン構造状の配線等を用いてもかまわない。
【0087】
水平配線層91において、水平配線及び電極パッドの厚さは、例えば、0.5μm~5μm程度とすることができる。水平配線層91において、水平配線のライン/スペースは、例えば、5μm/1μm、3μm/0.5μm、1μm/0.5μm程度とすることができる。水平配線層91において、電極パッドの直径は、例えば、垂直配線81a及び81bの直径と同じか、又は、例えば、垂直配線81a及び81bの直径よりも0.5μm~5μm程度大きくすることができる。電極パッドのピッチは、例えば、水平配線のピッチと同じくすることができる。水平配線のライン幅が3μm以下の場合、電極パッドサイズは水平配線のライン幅と同じにすることができる。
【0088】
なお、水平配線とは、無機絶縁層や基板の表面や内部に、無機絶縁層や基板の表面に対しておおよそ平行に設けられる配線を意味するが、無機絶縁層や基板の表面に対して厳密に平行であることを意味するものではない。
【0089】
無機絶縁層71の基板61とは反対側の面には、水平配線層91を被覆する無機絶縁層72が設けられている。無機絶縁層72の材料や厚さは、例えば、無機絶縁層71と同様とすることができる。また、無機絶縁層72を貫通し、水平配線層91の電極パッドと直接電気的に接続する垂直配線82aが設けられている。また、無機絶縁層72を貫通し、水平配線層91の電極パッドと直接電気的に接続する垂直配線82bが設けられている。さらに、無機絶縁層72の無機絶縁層71とは反対側の面(図1では上面)には、水平配線層92が設けられている。水平配線層92は、垂直配線82aと垂直配線82bとを直接電気的に接続する水平配線と、垂直配線82a又は垂直配線82bのみと直接電気的に接続する電極パッドとを含んでいる。
【0090】
垂直配線82aと垂直配線82bと水平配線層92とは、後述のように、同一工程で一体に形成してもよいし、別体に形成することも可能である。垂直配線82a及び82b並びに水平配線層92の材料、水平配線層92における水平配線及び電極パッドの厚さや水平配線のライン/スペース、水平配線層92における電極パッドの直径やピッチは、例えば、垂直配線81aと垂直配線81bと水平配線層91の場合と同様とすることができる。
【0091】
無機絶縁層72の無機絶縁層71とは反対側の面には、水平配線層92を被覆する無機絶縁層73が設けられている。無機絶縁層73の材料や厚さは、例えば、無機絶縁層71と同様とすることができる。また、無機絶縁層73を貫通し、水平配線層92の電極パッドと直接電気的に接続する垂直配線83aが設けられている。また、無機絶縁層73を貫通し、水平配線層92の電極パッドと直接電気的に接続する垂直配線83bが設けられている。さらに、無機絶縁層73の無機絶縁層72とは反対側の面(図1では上面)には、水平配線層93が設けられている。水平配線層93は、垂直配線83aと垂直配線83bとを直接電気的に接続する水平配線と、垂直配線83bのみと直接電気的に接続する電極パッドとを含んでいる。
【0092】
垂直配線83aと垂直配線83bと水平配線層93とは、後述のように、同一工程で一体に形成してもよいし、別体に形成することも可能である。垂直配線83a及び83b並びに水平配線層93の材料、水平配線層93における水平配線及び電極パッドの厚さや水平配線のライン/スペース、水平配線層93における電極パッドの直径やピッチは、例えば、垂直配線81aと垂直配線81bと水平配線層91の場合と同様とすることができる。
【0093】
無機絶縁層73の無機絶縁層72とは反対側の面には、水平配線層93を被覆する無機絶縁層74が設けられている。無機絶縁層74の材料や厚さは、例えば、無機絶縁層71と同様とすることができる。また、無機絶縁層74を貫通し、水平配線層93の電極パッドと直接電気的に接続する垂直配線84aが設けられている。また、無機絶縁層74を貫通し、水平配線層93の電極パッドと直接電気的に接続する垂直配線84bが設けられている。さらに、無機絶縁層74の無機絶縁層73とは反対側の面(図1では上面)には、垂直配線84a及び84bとを直接電気的に接続する電極パッド94が設けられている。電極パッド94は、半導体装置1を他の基板や他の半導体装置等と電気的に接続するために使用する外部接続端子となる。無機絶縁層74の無機絶縁層73とは反対側の面)に、水平配線が設けられてもよい。
【0094】
垂直配線84aと垂直配線84bと電極パッド94とは、後述のように、同一工程で一体に形成してもよいし、別体に形成することも可能である。垂直配線84a及び84b並びに電極パッド94の材料、電極パッド94の直径やピッチは、例えば、垂直配線81aと垂直配線81bと水平配線層91の電極パッドの場合と同様とすることができる。
【0095】
半導体装置1Bを作製するには、図31に示す工程の後、図34に示す工程で、基板61の他方の面に無機絶縁層71を形成する。無機絶縁層71の材料や厚さについては、前述のとおりである。無機絶縁層71は、例えば、プラズマCVD法等により形成できる。無機絶縁層71は、例えば、DHF(Dilute Hydrogen Fluoride)洗浄やアルゴンスパッタで基板61の表面を露出させた後に形成することが好ましい。これにより、膜密度が大きく、かつ耐湿性及び電気的絶縁耐性に優れた無機絶縁層71を形成できる。なお、でスピンコートができるのはウェハ形状に対してのみであるが、有機絶縁層は、膜密度が小さく、耐湿性や電気的絶縁耐性が十分でなく、微細加工性もない。また、スピンコートで塗布した有機絶縁層は、塗布後に熱処理で緻密化を行う必要がある。これに対して、無機絶縁層71は、微細加工性がある点で有機絶縁層より優れており、また、膜密度が大きいため熱処理で緻密化を行う必要がない点でも有機絶縁層より優れている。
【0096】
次に、図35に示す工程では、ビアホール71x及び71yを形成する。ビアホール71xは、無機絶縁層71及び基板61を貫通し、一方の半導体チップ積層体の半導体チップ30の貫通電極37の表面が露出するように形成する。ビアホール71yは、無機絶縁層71及び基板61を貫通し、他方の半導体チップ積層体の半導体チップ30の貫通電極37の表面が露出するように形成する。ビアホール71x及び71yは、例えばドライエッチング等により形成できる。ビアホール71x及び71yは、例えば平面視円形であり、その直径は、例えば、0.5μm~5μm程度とすることができる。
【0097】
次に、図36に示す工程では、垂直配線81a及び81b並びに水平配線層91を形成する。垂直配線81a及び81b並びに水平配線層91は、例えば、ダマシン配線で一体に形成できる。この場合には、まず、無機絶縁層71の上面に無機絶縁層71に比べエッチング耐性が高い絶縁膜(例えば、膜厚10nm~50nm程度のSiN膜等)を形成し、さらに絶縁膜上に水平配線層91と同一厚さのマスク層(例えば、SiO膜等)を形成する。そして、マスク層にエッチング加工を施し、垂直配線81a及び81b並びに水平配線層91の形成領域を開口する開口部を形成する。
【0098】
次に、ビアホール71x及び71yの内壁面を被覆する絶縁層62を形成する。絶縁層62は、例えば、プラズマCVD法等により、ビアホール71x及び71yの内壁面、並びにビアホール71x及び71y内に露出する貫通電極37及び電極パッド43の上面を連続的に被覆する絶縁層を形成し、ビアホール71x及び71yの内壁面を被覆する部分以外をRIE(Reactive Ion Etching)等により除去することで形成できる。
【0099】
次に、例えば、マスク層の開口部から露出する部分を連続的に被覆するバリア層(例えば、Ta/TaN層やTi/TiN層等)をスパッタ法等により形成し、更にバリア層上に給電層(例えば、Cu層等)をスパッタ法等により形成する。次に、給電層を経由して給電する電解めっき法により、マスク層の開口部内に露出する給電層上に電解めっき層(例えば、Cu層等)を形成する。電解めっき層は、ビアホール71x及び71y内を埋めると共にマスク層の上面から突出する。そして、マスク層の上面から突出する電解めっき層の上面側をCMP等で平坦化する。その後、マスク層を除去する。マスク層を除去する際に、マスク層の下層に形成された絶縁膜がエッチングストッパ層となる。以上により、給電層上に電解めっき層が積層された垂直配線81a及び81b並びに水平配線層91を一体で形成できる。
【0100】
なお、垂直配線81a及び81bと水平配線層91とを別々に形成することも可能である。この場合には、例えば、上記と同様にして絶縁層62を形成後、上記と同様な電解めっき法により、ビアホール71x及び71y内に垂直配線81a及び81bを形成する。なお、垂直配線81a及び81bにおいて、無機絶縁層71の上面から突出した部分は、CMP等により平坦化する。次に、無機絶縁層71の上面、垂直配線81a及び81bの上端面を連続的に被覆するバリア層(例えば、Ta/TaNやTi/TiN等)をスパッタ法等により形成し、更にバリア層上に金属層(例えば、Al等)をスパッタ法等により形成する。そして、金属層及びバリア層をフォトリソグラフィー法によりパターニングして水平配線層91を形成する。
【0101】
次に、図37に示す工程では、図34図36の工程を必要数繰り返す。ただし、絶縁層62は形成しない。すなわち、図34と同様の方法により、無機絶縁層71の基板61とは反対側の面(図37では上面)に、水平配線層91を被覆する無機絶縁層72を形成する。そして、無機絶縁層72を貫通するビアホールを形成後、垂直配線82a及び82b並びに水平配線層92を、例えば、ダマシン配線で一体に形成する。続いて、無機絶縁層72の無機絶縁層71とは反対側の面(図37では上面)に、水平配線層92を被覆する無機絶縁層73を形成する。そして、無機絶縁層73を貫通するビアホールを形成後、垂直配線83a及び83b並びに水平配線層93を、例えば、ダマシン配線で一体に形成する。続いて、無機絶縁層73の無機絶縁層72とは反対側の面(図37では上面)に、水平配線層93を被覆する無機絶縁層74を形成する。そして、無機絶縁層74を貫通するビアホールを形成後、垂直配線84a及び84b並びに電極パッド94を、例えば、ダマシン配線で一体に形成する。この工程により、一方の半導体チップ積層体の半導体チップ30の貫通電極37と、他方の半導体チップ積層体の半導体チップ30の貫通電極37の必要な部分同士が、垂直配線81a~83a、垂直配線81b~83b、及び水平配線層91~93の水平配線を介して電気的に接続される。以上の工程により、図33に示す半導体装置1Bが製造される。
【0102】
なお、図36の工程で説明したように、垂直配線82a及び82bと水平配線層92とを別々に形成することも可能である。また、垂直配線83a及び83bと水平配線層93とを別々に形成することも可能である。また、垂直配線84bと電極パッド94とを別々に形成することも可能である。また、これらは、ダマシン配線と適宜組み合わせることができる。例えば、垂直配線81a及び81bと水平配線層91とを別々に形成し、2層目以降の配線、すなわち垂直配線82a及び82bと水平配線層92、垂直配線83a及び83bと水平配線層93、垂直配線84bと電極パッド94はダマシン配線としてもよい。
【0103】
なお、図20に示す2つの半導体チップ積層体を、半導体装置1Bの同様に無機絶縁層に形成された水平配線及び垂直配線を介して電気的に接続してもよい。
【0104】
このように、半導体装置1Bでは、一方の半導体チップ積層体と他方の半導体チップ積層体とを電気的に接続する配線を設ける絶縁層として、有機材料を用いた絶縁層ではなく、無機絶縁層71~74を用いている。そして、無機絶縁層71~74を用いて、ウェハレベルで垂直配線及び水平配線を含む多層配線を行っている。これにより、多層配線間のリーク電流を減らして高密度化を行うことが可能となる。
【0105】
半導体装置1Bでは、ウェハレベルで多層配線を行い、従来は接続に利用されたバンプを介さないで電気的に接続することで、バンプの抵抗とバンプの寄生電気的容量を無くすことができる。例えば、従来の配線とバンプのシリーズ抵抗が100mΩ程度であるのに対し、半導体装置1Bでは70mΩ程度とすることができる。すなわち、半導体装置1Bでは、水平配線の抵抗を従来よりも30%程度削減できる。
【0106】
また、半導体装置1Bでは、ウェハレベルで多層配線を行うことで、水平配線のライン/スペースを5μm/1μm、3μm/0.5μm、1μm/0.5μm程度とすることができる。従来は、水平配線のライン/スペースは2μm/2μm程度であったため、半導体装置1Bでは、水平配線の集積度を最大で従来の4倍程度に高めることができ、水平配線の密度は多層化の数に比例増加し、一方の半導体チップ積層体と他方の半導体チップ積層体とを接続する配線の高密度化が可能となる。
【0107】
これにより、半導体装置1Bでは、データバスのビット幅を広げられるため、広帯域化(バンド幅の拡大)が可能となる。例えば、無機絶縁層1層当たりの配線密度を4倍にして4層化を行うことで、バンド幅を16倍に拡大できる。言い換えれば、同じバンド幅であれば、1/16の周波数でデータ転送が可能となり、消費電力を1/16に削減できる。
【0108】
また、半導体装置1Bでは、無機絶縁層71~74に形成された垂直配線と、各々の半導体チップ積層体の各々の電極パッドとを、バンプを用いずに直接電気的に接続している。これにより、配線抵抗が減少し、低消費電力で広帯域の半導体装置1Bを実現できる。また、バンプを用いた機械的接続をなくすことで、一方の半導体チップ積層体と他方の半導体チップとを接続する配線に関して、温度ストレス等に対する高信頼化を実現できる。
【0109】
また、垂直配線の長さが従来は50μm程度であったのに対し、半導体装置1では10μm程度とすることが可能である。その結果、半導体装置1では、垂直配線の断面積を一定とすると、垂直配線1層当たりの抵抗を従来の1/5とすることができる。
【0110】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0111】
例えば、上記実施形態では、平面視円形の半導体基板(シリコンウェハ)を用いた場合を例にとり説明を行ったが、半導体基板は平面視円形に限定されず、例えば平面視長方形等のパネル状のものを用いてもかまわない。
【0112】
また、半導体基板の材料はシリコンに限定されず、例えばゲルマニウムやサファイア等を用いてもかまわない。
【符号の説明】
【0113】
1、1A、1B 半導体装置
30、30、30、30、30、40、40 半導体チップ
31、41 本体
32、42 半導体集積回路
33、43、94 電極パッド
36、46、62 絶縁層
37、47 貫通電極
50、55 樹脂層
61、510、550 基板
71、72、73、74 無機絶縁層
71x、71y、74x、74y ビアホール
81a、81b、82a、82b、83a、83b、84a、84b 垂直配線
91、92、93 水平配線層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
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図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36
図37