(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】二重容器
(51)【国際特許分類】
B65F 1/08 20060101AFI20240918BHJP
B65F 1/16 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
B65F1/08
B65F1/16
(21)【出願番号】P 2020087843
(22)【出願日】2020-05-20
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】市橋 隆
【審査官】新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-116559(JP,U)
【文献】実開昭54-067120(JP,U)
【文献】実開昭60-184871(JP,U)
【文献】特開平08-057454(JP,A)
【文献】特開2013-100130(JP,A)
【文献】特開2004-299898(JP,A)
【文献】特開2014-037240(JP,A)
【文献】登録実用新案第3006575(JP,U)
【文献】登録実用新案第3222853(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65F 1/00- 1/16
B65D 43/00-85/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と側壁部とを有し上方が開口部である内装容器本体と,底部と側壁部とを有し上方が開口部であり内部に前記内装容器本体を収容する外装容器本体と,前記内装容器本体および前記外装容器本体の開口部をいずれも閉鎖する蓋とを有する二重容器であって,
前記内装容器本体は,前記外装容器本体の底部の上に置かれており,
前記蓋は
外装蓋と内装蓋とにより構成されており,
前記外装蓋は,
外板状部と,
前記
外板状部の裏面に前記外装容器本体の上縁に対応して設けられた外縁部と
を有するものであり,
前記内装蓋は,
内板状部と,
前記内板状部の表面に設けられ前記外板状部の裏面に固定される固定部と,
前記
内板状部の裏面に前記内装容器本体の開口部に対応して下向きに設けられた垂れ壁とを有するものであり,
前記固定部が前記外板状部の裏面に固定されており,
前記蓋により前記内装容器本体および前記外装容器本体の開口部を閉鎖して前記外縁部と前記外装容器本体の上縁とを接触させ,前記蓋が前記外装容器本体の側壁部の上縁に載った閉蓋状態で,
前記
内板状部
および前記外板状部は前記内装容器本体の側壁部の上縁に対して上方に浮いた位置にあるとともに,前記蓋と前記内装容器本体の上縁との間に全周にわたり上下方向に空虚な間隔があり,
前記垂れ壁の下端が前記内装容器本体の側壁部の上端より下方にあり,
前記垂れ壁の内面と前記内装容器本体の側壁部の外面とが全周にわたり空虚な間隔を置いて対面して
おり,
前記内板状部には,裏面向きに突出しており上方から見て凹状の凹部が部分的に設けられており,
前記固定部は,前記内板状部における前記凹部よりも半径方向に外側の位置に配置されている二重容器。
【請求項2】
底部と側壁部とを有し上方が開口部である内装容器本体と,底部と側壁部とを有し上方が開口部であり内部に前記内装容器本体を収容する外装容器本体と,前記内装容器本体および前記外装容器本体の開口部をいずれも閉鎖する蓋とを有する二重容器であって,
前記内装容器本体は,前記外装容器本体の底部の上に置かれており,
前記蓋は
外装蓋と内装蓋とにより構成されており,
前記外装蓋は,
外板状部と,
前記
外板状部の裏面に前記外装容器本体の上縁に対応して設けられた外縁部と
を有するものであり,
前記内装蓋は,
内板状部と,
前記内板状部の表面に設けられ前記外板状部の裏面に固定される固定部と,
前記
内板状部の裏面に前記内装容器本体の開口部に対応して下向きに設けられた垂れ壁とを有するものであり,
前記固定部が前記外板状部の裏面に固定されており,
前記蓋により前記内装容器本体および前記外装容器本体の開口部を閉鎖して前記外縁部と前記外装容器本体の上縁とを接触させ,前記蓋が前記外装容器本体の側壁部の上縁に載った閉蓋状態で,
前記
内板状部
および前記外板状部は前記内装容器本体の側壁部の上縁に対して上方に浮いた位置にあるとともに,前記蓋と前記内装容器本体の上縁との間に全周にわたり上下方向に空虚な間隔があり,
前記垂れ壁の下端が前記内装容器本体の側壁部の上端より下方にあり,
前記垂れ壁の外面と前記内装容器本体の側壁部の内面とが全周にわたり空虚な間隔を置いて対面して
おり,
前記内板状部には,裏面向きに突出しており上方から見て凹状の凹部が部分的に設けられており,
前記固定部は,前記内板状部における前記凹部よりも半径方向に外側の位置に配置されている二重容器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の二重容器であって,
前記固定部は,前記内板状部の表面側における最高部位に設けられている二重容器。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか1つに記載の二重容器であって,
前記内装蓋は,前記凹部より内側にも前記内板状部を有し,
前記凹部より内側における前記内板状部の高さが,前記凹部より外側における前記内板状部の高さより低く,
前記固定部は,前記凹部より外側における前記内板状部の表面側に設けられている二重容器。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか1つに記載の二重容器であって,
前記内板状部の表面側における前記固定部の領域とそれ以外の領域との境目に目印形状が形成されている二重容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,内装容器を外装容器に収容した二重容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の二重容器の一例として,特許文献1に記載されているものを挙げることができる。同文献には,本体容器内に内容器を設けた二重の容器が記載されている。同容器では,本体容器には外蓋を設け,内容器には内蓋を設けている。この本体容器内に,生ごみ等の収容物を収容するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記した従来の技術には,次のような問題点があった。蓋を開ける動作が煩雑なのである。外蓋を開きその後に内蓋を開くという2つの動作が必要だからである。また,外蓋および内蓋をいずれも開いた状態でそれらを手に持っていると,それだけで両手を要してしまう。このため容器へ収納物を収納する動作,あるいは容器から収納物を取り出す動作が不便である。そののちに蓋を閉じる動作も2つの動作となる。
【0005】
本発明は,前記した従来の技術が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,蓋を開閉する動作が容易な二重容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の二重容器は,底部と側壁部とを有し上方が開口部である内装容器本体と,底部と側壁部とを有し上方が開口部であり内部に内装容器本体を収容する外装容器本体と,内装容器本体および外装容器本体の開口部をいずれも閉鎖する蓋とを有する二重構造の容器であって,内装容器本体は,外装容器本体の内部に収容されており,蓋は,板状部と,板状部の裏面に外装容器本体の上縁に対応して設けられた外縁部とを有するものであり,蓋により内装容器本体および外装容器本体の開口部を閉鎖して外縁部と外装容器本体の上縁とを接触させた状態で,蓋と内装容器本体との間に全周にわたり間隔がある構成を基本とする。
【0007】
上記の二重容器では,蓋そのものを開閉する操作だけで内装容器本体および外装容器本体の開口部をいずれも開閉することができる。このため開閉操作が容易である。また,蓋を閉じる際に,内装容器本体の開口部が蓋と接触してしまうことが起こりにくい。このため,閉蓋状態では外装容器本体と蓋の外縁部とが接触する。蓋の裏面に,内装容器本体の開口部に対応する内装蓋部が設けられていてもよい。その場合の閉蓋状態でも,内装蓋部と内装容器本体との間に全周にわたり間隔がある。蓋と内装容器本体との間に間隔があるとは,蓋と内装容器本体との間に何らかの柔軟部材を配置して隙間を塞いでいる状態を含む概念である。蓋の裏面に内装蓋部が設けられている場合でも同様である。
【0008】
上記の二重容器ではさらに,蓋により内装容器本体および外装容器本体の開口部を閉鎖した状態で,蓋と内装容器本体の側壁部の上端とが全周にわたり間隔を置いて対面している。このようになっていれば,閉蓋状態にて,蓋と内装容器本体の側壁部の上端との接触が確実に防止される。さらに,蓋の裏面に,内装容器本体の開口部に対応して下向きに垂れ壁が設けられており,蓋により内装容器本体および外装容器本体の開口部を閉鎖した状態で,垂れ壁の下端が内装容器本体の側壁部の上端より下方にあり,垂れ壁の内面と内装容器本体の側壁部の外面とが全周にわたり間隔を置いて対面している。このような構成であれば,閉蓋状態にて内装容器本体に収容されている収容物の外部への飛び出しが起こりにくい。また,閉蓋時に垂れ壁と内装容器本体の側壁部とが当たってしまうことが起こりにくい。
【0009】
第1および第2の態様の二重容器では,内装容器が外装容器本体の底部の上に置かれ,蓋が外装容器本体の側壁部の上縁に載った閉蓋状態で,板状部は内装容器本体の側壁部の上縁に対して上方に浮いた位置にあり,蓋と内装容器本体の上縁との間に全周にわたり上下方向に空虚な間隔がある。第1の態様では,垂れ壁の外面と内装容器本体の側壁部の内面とが全周にわたり空虚な間隔を置いて対面している。第2の態様では,垂れ壁の内面と内装容器本体の側壁部の外面とが全周にわたり空虚な間隔を置いて対面している。
【0010】
第3および第4の態様の二重容器では,内装容器本体が外装容器本体の内部に脱着自在に収容されており,内装容器本体を外装容器本体の内部の中心に配置して収容して,蓋により内装容器本体および外装容器本体の開口部を閉鎖した状態で,内装容器本体の側壁部の最外箇所と外装容器本体の側壁部との間の間隔が,垂れ壁と内装容器本体の側壁部との対面箇所における間隔より小さい。第3の態様では,垂れ壁の内面と内装容器本体の側壁部の外面とが全周にわたり間隔を置いて対面している。第4の態様では,垂れ壁の外面と内装容器本体の側壁部の内面とが全周にわたり間隔を置いて対面している。このような構成であれば,内装容器本体と外装容器本体との配置が多少偏心していたとしても,閉蓋時に垂れ壁と内装容器本体の側壁部とが当たってしまうことが起こりにくい。
【0011】
上記態様における二重容器ではさらに,蓋は外装蓋と内装蓋とにより構成されており,外装蓋は,外板状部とその裏面に設けられた外縁部とを有し,内装蓋は,内板状部とその表面に設けられ外板状部の裏面に固定される固定部とを有し,固定部が外板状部の裏面に固定されているものであることが望ましい。このような構成であっても,開閉操作が容易である。また,既存の外装容器への適用も可能である。
【0012】
蓋が外装蓋と内装蓋との二重構成である態様の二重容器ではさらに,固定部は,内板状部の表面側における最高部位に設けられており,板状部には,裏面向きに突出しており上方から見て凹状の凹部が部分的に設けられている。そして固定部は,内板状部における凹部よりも半径方向に外側の位置に配置されている。この二重容器用内装容器を既存の外装容器と組み合わせることで,前述の二重容器と同様の利点が得られる。特に,内装蓋の剛性が向上し,歪みにより固定部が外装蓋の裏面に接触しにくくなってしまうことが防止される。また,固定部による内装蓋の外装蓋への固定が確実である。
【0013】
上記態様の二重容器用内装容器ではさらに,板状部の表面側における固定部の領域とそれ以外の領域との境目に目印形状が形成されていることが望ましい。目印形状により,固定のための両面粘着テープ等の部材の固定部への配置が容易である。前述の凹部は環状に設けられており,それより内部の部分の板状部は外部の部分の板状部よりも上下方向に低く形成されていることが望ましい。そのようになっていれば,内装蓋が多少歪んでいても,固定部が内装蓋の表面側における最高部位となる。
【0014】
本明細書には,内装容器と外装容器とからなる二重容器において内装容器の開口部を閉鎖する二重容器用の内装蓋であって,板状部と,その表面側における最高部位に設けられた固定部とを有するものも開示されている。この二重容器用内装蓋を既存の外装容器および内装容器本体と組み合わせることで,前述の二重容器と同様の利点が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本構成によれば,蓋を開閉する動作が容易な二重容器,およびその二重容器用の内装容器が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施の形態に係る二重容器の斜視図(開蓋状態)である。
【
図3】実施の形態に係る二重容器の斜視図(閉蓋状態)である。
【
図4】二重容器の構成要素である内装容器の上方からの斜視図である。
【
図5】二重容器の構成要素である内装容器の下方からの斜視図である。
【
図6】二重容器の構成要素である外装容器の斜視図である。
【
図7】閉蓋状態での二重容器における蓋付近を示す部分断面図である。
【
図8】内装蓋における粘着部の構造を示す断面図である。
【
図10】一体品である全蓋の構成例を示す断面図である。
【
図11】変形例に係る全蓋を用いる場合の二重容器の断面図(その1)である。
【
図12】変形例に係る全蓋を用いる場合の二重容器の断面図(その2)である。
【
図13】内装蓋に柔軟部材を配置した構成の場合の断面図(その1)である。
【
図14】内装蓋に柔軟部材を配置した構成の場合の断面図(その2)である。
【
図15】内装蓋に柔軟部材を配置した構成の場合の断面図(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,
図1~
図3に示す二重容器に本発明を適用したものである。
図1,
図2に示すように本形態に係る二重容器は,内装容器本体31と,外装容器本体30と,内装蓋21と,外装蓋20とを有している。
【0018】
内装容器本体31は外装容器本体30の内部に収容されている。内装容器本体31と外装容器本体30とをまとめて全本体3という。内装蓋21は,外装蓋20の裏面に固定されている。内装蓋21と外装蓋20とをまとめて全蓋2という。全本体3と全蓋2とをまとめて全容器1という。
図1中の全蓋2は斜め下から見上げた状態で示されている。
図3は閉蓋状態での外観である。閉蓋状態では全蓋2により内装容器本体31および外装容器本体30の開口部がいずれも閉鎖されている。
【0019】
図4および
図5に,内装容器本体31および内装蓋21の斜視図を示す。内装容器本体31と内装蓋21とをまとめて内装容器10という。
図4および
図5中での内装蓋21は,外装蓋20に固定されていない単体の状態でのものである。
図4では内装容器本体31および内装蓋21を,斜め上方から見下ろして示している。
図5では内装容器本体31および内装蓋21を,斜め下方から見上げて示している。
図4中には内装蓋21における
図1中には見えていない上側の面が見えている。
【0020】
図6に,外装容器本体30および外装蓋20の斜視図を示す。外装容器本体30と外装蓋20とをまとめて外装容器11という。
図6中では,外装容器本体30を斜め上方から,外装蓋20を斜め下方から見て示している。
【0021】
内装容器本体31および外装容器本体30はいずれも,底部と側壁部とを有し上方が開口部である形状のものである。内装容器本体31は,底部39(
図5参照)と側壁部37(
図4,
図5参照)とを有している。内装容器本体31の側壁部37の上端からやや下寄りの位置における外面には,取っ手環35およびその下の補強リブ51(
図2,
図4参照)が設けられている。取っ手環35は,内装容器本体31を手で持つときの取っ手としての役割および側壁部37の剛性向上の役割のためのものである。補強リブ51は,取っ手環35の剛性向上のため,および内装容器本体31同士を重ね合わせたときの嵌り込みの防止のためのものである。外装容器本体30は,底部36(
図2参照)と側壁部34(
図6参照)とを有している。外装容器本体30の側壁部34の外面には,補強リブ38が設けられている。
【0022】
内装蓋21について説明する。外装蓋20に固定される前の単体の状態での内装蓋21は,全体としてほぼ円板状の部材である。内装蓋21は,
図4に示されるように板状部23と,その縁辺の垂れ壁25とを有している。板状部23は,全体が円形である板状の部位(内板状部)である。垂れ壁25は,板状部23に対して下向きに設けられた壁状の部分である。より詳細には,板状部23と垂れ壁25との接続部分には外向きの段差42が形成されている。
【0023】
このうちの板状部23にはさらに,粘着部27と,環状凹部29とが設けられている。粘着部27は,板状部23の表(おもて)面に設けられており,内装蓋21を外装蓋20の裏面に貼り付けて固定するための固定部である。環状凹部29は,板状部23の一部を裏面向きに突出させた部分である。
図5に見るように内装蓋21を裏面側から見ると環状凹部29は凸状である。環状凹部29は,粘着部27よりも内周側に同心円状に形成されている。環状凹部29より内側にも板状部41が存在する。環状凹部29は,内装蓋21の剛性を高めるために形成されている。粘着部27は,環状凹部29より外周側に配置されている。
【0024】
外装蓋20について説明する。内装蓋21を固定する前の単体の状態での外装蓋20は,全体としてほぼ円板状の部材である。外装蓋20は,
図6に示されるように板状部22と,その縁辺の外縁24とを有している。板状部22は,全体が円形である板状の部位(外板状部)である。外縁24のすぐ内側における裏面側に,環状部26が設けられている。環状部26は,下方から見て板状部22よりも凹んでいる環状の部位である。外縁24および環状部26は,本発明における外縁部に相当する。
【0025】
全蓋2は前述のように,外装蓋20の裏面に内装蓋21を固定して一体としたものである。全蓋2では,内装蓋21の板状部23の表面の粘着部27が,外装蓋20の板状部22の裏面に貼り付けられている。粘着部27は,粘着性を有する部位である。粘着部27は,内装蓋21における上下方向に最も高い位置に設けられている。一旦外装蓋20と内装蓋21とを一体化して全蓋2とした後は,外装蓋20と内装蓋21とを分離する必要は特にない。
【0026】
全蓋2においては,外装蓋20の板状部22と内装蓋21の板状部23とが重なっている。外装蓋20の環状部26は,全蓋2の状態でも下方から見える。内装蓋21の垂れ壁25は,全蓋2の状態でも下向きの壁状をなしている。全容器1においては,内装容器本体31は外装容器本体30の底部36の上に置かれている。これにより,内装容器本体31と外装容器本体30との二重構造の全本体3を構成している。ただし内装容器本体31は外装容器本体30に対して脱着可能である。全本体3において容器として収容物を収容するための空間は,内装容器本体31の内部空間である。
【0027】
図3に示した閉蓋状態での全容器1では,
図2に示されるように,全蓋2により開口部が閉鎖されている。その詳細を
図7により説明する。
図7に示されるように閉蓋状態での全容器1では,外装蓋20の環状部26が外装容器本体30の側壁部34の上縁32に載っている。つまり環状部26は上縁32と対応して設けられており,閉蓋状態では上縁32と接触している。よって外装容器本体30の開口部は外装蓋20により閉鎖されている。
【0028】
しかしこの状態でも,内装蓋21と内装容器本体31とは接触していない。内装容器本体31の側壁部37の上縁33に対して内装蓋21の板状部23は,上方に浮いた位置にある。全蓋2の全体が外装容器本体30の上縁32に支持されているからである。つまり内装蓋21と内装容器本体31の上縁33との間には全周にわたり上下方向に間隔がある。このため,環状部26と上縁32とが接触するより前に内装蓋21と上縁33とが接触してしまうことがない。これにより,環状部26と上縁32との間に外から見えるような隙間が残ってしまうことがない。
【0029】
内装容器本体31と内装蓋21とは接触していないが,内装容器本体31の上縁33およびその内側の開口部の全領域に対して,その上方には必ず内装蓋21が存在する。このような状態を本開示技術においては,内装容器本体31の開口部が内装蓋21により閉鎖されていると称する。
【0030】
内装蓋21の垂れ壁25は,内装容器本体31の側壁部37の上縁33に対して半径方向外向きに少し離れた位置にある。このため垂れ壁25の内面と内装容器本体31の側壁部37との間には,全周にわたり半径方向に間隔がある。さらに,内装蓋21の垂れ壁25の下端28は,内装容器本体31の上縁33よりも上下方向に下方に位置している。このため,内装容器本体31の収容物が内装容器本体31の外へ飛び出すことが起こりにくい。
【0031】
上記のように構成されている本形態の二重容器(全容器1)では,全蓋2の開閉操作が簡単である。
図3の閉蓋状態から,外装蓋20を取り外す操作をするだけで外装蓋20のみならず内装蓋21も取り外されるからである。外装蓋20と内装蓋21とが一体化され全蓋2となっているからである。
図1の開蓋状態に対して全蓋2を閉じる操作も同様に簡単である。このため本形態の二重容器では,閉蓋状態に対して,一旦全蓋2を開き,内装容器本体31内に収容目的物を投入し,そして再び全蓋2を閉じる一連の動作を容易に行うことができる。その際,全蓋2の垂れ壁25と内装容器本体31とが当たってしまうことも起こりにくい。前述の半径方向の間隔による。
【0032】
また,内装容器本体31が収容物で満杯近くになっているようなときに内装容器本体31を空にする動作も容易である。その場合には,内装容器本体31を外装容器本体30から取り出して収容物を大袋等の他の容器に移し,そして内装容器本体31を外装容器本体30の内部に戻すことになる。あるいは,内装容器本体31と外装容器本体30とに手を掛けて,全本体3の全体を傾けて収容物を他の容器に移す。そのためやはり,閉蓋状態に対して一旦全蓋2を開いて再び閉じる必要があるからである。
【0033】
内装蓋21と内装容器本体31との間の間隔についてさらに説明する。まず上下方向の間隔について説明する。
図7中には上下方向の間隔として,間隔Aと間隔Bとが示されている。間隔Aは,内装容器本体31の上縁33と,段差42の内面側肩との間の上下間隔である。間隔Aとして例えば5mm程度あるとよい。間隔Aがあることで,内装蓋21と内装容器本体31とが多少偏心した配置になっていたとしても,上縁33と,段差42の内面側肩とが当たることがない。間隔Bは,内装容器本体31の上縁33と,板状部23の下面との間の上下間隔である。間隔Bが,前述の内装蓋21と上縁33との間の上下方向の間隔である。間隔Bとして例えば10mm程度あるとよい。
【0034】
次に水平方向(半径方向)の間隔について説明する。
図7中には,内装蓋21と内装容器本体31との間の水平方向の間隔として,間隔Cが示されている。間隔Cは,垂れ壁25の内面と内装容器本体31の側壁部37の外面との間の水平方向間隔である。
【0035】
図7中にはもう1つの水平方向間隔として,間隔Dが示されている。間隔Dは,内装容器本体31と内装蓋21との間の間隔ではなく,内装容器本体31と外装容器本体30との間の間隔である。より詳細には間隔Dは,内装容器本体31の側壁部37の最外部位と外装容器本体30の側壁部34の内面との間の水平方向間隔である。内装容器本体31の側壁部37の最外部位とは,本形態のように側壁部37に取っ手環35が外向きに設けられている場合にはその外面となる。本形態では,取っ手環35の外面と外装容器本体30の側壁部34の内面との間が間隔Dである。
【0036】
本形態では,間隔Dより間隔Cの方が大きい。このため,内装容器本体31が外装容器本体30に対して多少偏心して配置されていたとしても,内装容器本体31の上縁33と内装蓋21の垂れ壁25とが当たってしまうことが起こりにくい。例えば,間隔Dを1.5mm程度とするとともに間隔Cを4mm程度とすることが考えられる。
【0037】
本形態の二重容器は,既存の外装容器11に対して新たな内装容器10を組み合わせることでも実現できる。また,既存の外装容器11および既存の内装容器本体31に対して新たな内装蓋21を組み合わせることも可能である。これらの場合における内装蓋21の粘着部27については,両面粘着テープにより実現することができる。
【0038】
図8に両面粘着テープ44により実現した粘着部27の断面を示す。
図8の例では,内装蓋21における粘着部27の箇所に,両面粘着テープ44が貼られている。両面粘着テープ44における上面側には剥離紙45が残されている。この状態で剥離紙45を除去して内装蓋21を外装蓋20の裏面に貼り付ければよい。あるいは,両面粘着テープ44が貼られていない内装蓋21と,両面に剥離紙45がついた両面粘着テープ44とを用意してもよい。この場合,両面粘着テープ44の片面の剥離紙45をまず剥がして粘着部27の箇所に貼り付ける。
【0039】
図8の例では,内装蓋21の板状部23における粘着部27の領域とそれ以外の領域との境目に溝43が形成されている。溝43は,実際には
図4中に「27」で示されているように長方形状に形成されている。上記のように内装蓋21への両面粘着テープ44の貼り付けを行う場合の貼り付け箇所の目印形状となる。先に示した
図7は,両面粘着テープ44によって内装蓋21が外装蓋20の裏面に貼り付けられた状態での断面図である。この例では粘着部27に比較的薄い両面粘着テープ44を用いているので,
図7上ではほとんど見えていない。
【0040】
図8の例では,溝43より内側の領域と外側の領域とで,凹凸は設けておらずフラットになっている。よって粘着部27は内装蓋21における上下方向に最高の位置にある。
図4に見られるように,内装蓋21においては板状部23の表面より上向きには何らの形状も形成されていないからである。また,環状凹部29により内装蓋21の剛性が向上して歪みにくくなっていることで,粘着部27が最高位置でなくなってしまうことが起こりにくい。このため,内装蓋21と外装蓋20とを一体化して全蓋2とすることが容易である。両面粘着テープ44を粘着部27に貼り付けて剥離紙45を除去した状態の内装蓋21を外装蓋20と重ね合わせて上下方向に軽く押し付けるだけでよい。これにより内装蓋21が外装蓋20の裏面に固定される。
【0041】
図9に示すように,内装蓋21における板状部の高さに,環状凹部29の内外で差を付けるとよりよい。
図9の例では,最外の環状凹部29より内側の板状部41の高さが,最外の環状凹部29より外側の板状部23の高さより低くなっている。粘着部27はむろん,外側の板状部23に設けられている。このようになっていれば,内装蓋21にある程度の歪みが生じていたとしても,粘着部27が内装蓋21における上下方向に最高の位置である状況が維持される。このため内装蓋21と外装蓋20との一体化がより容易である。
【0042】
粘着部27は,板状部23における最外の環状凹部29より半径方向に外側の位置にある。このため
図4に見られるように,粘着部27は内装蓋21における縁辺付近に位置している。このことにより,内装蓋21と外装蓋20とを一体化した後,内装蓋21と外装蓋20とが剥がれにくいという利点がある。内装蓋21と外装蓋20との固定を内装蓋21の全面にて行っているのに近い状況にあるからである。
【0043】
板状部23において,粘着部27に相当する領域を他の部分よりやや盛り上げた形状にしてもよい。逆に,両面粘着テープ44の厚さ未満であれば他の部分より凹んでいてもよい。これらのように粘着部27に相当する領域を他の部分との境目に段差がある場合には,溝43はなくてもよい。段差が両面粘着テープ44の貼着位置の目印形状となるからである。また,目印形状はなくてもよい。内装蓋21と外装蓋20との固定手段は,両面粘着テープに限らず接着剤や係合構造でもよい。
【0044】
上記では全蓋2について,内装蓋21と外装蓋20とを一体化したものであるとして説明したが,必ずしもそうでなくてもよい。最初から一体品として製造した全蓋であってもよい。一体品である全蓋4を
図10に示す。
図10の全蓋4では,1枚構成の板状部46に対して,環状部26と垂れ壁48とが設けられている。
【0045】
図11に示すように垂れ壁を持たない形状の全蓋5であってもよい。
図11の全蓋5は,外装蓋20と,単純な平板状である内装蓋47とを貼り合わせたものである。
図11に示される閉蓋状態では,内装容器本体31の上縁33と外装蓋20の板状部22の裏面とが,上下方向に間隔を置いて対面している。これにより,外装容器本体30および内装容器本体31がいずれも閉鎖されている。
図11において,内装蓋47をもう少し大径にして,内装容器本体31の上縁33と閉蓋状態にて内装蓋47とが上下方向に間隔を置いて対面するようにしてもよい。
【0046】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば,内装容器10と外装容器11とを有する二重容器である全容器1において,全蓋2の構造を,内装容器本体31および外装容器本体30を一動作でまとめて開閉できるようなものとしている。そして閉蓋状態にて,外装容器本体30と外装蓋20とが接触する一方で内装容器本体31と内装蓋21とは接触しないようにしている。これにより,蓋を開閉する動作が容易な二重容器およびそのための内装容器が実現されている。
【0047】
本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,垂れ壁25を有する態様の場合について前述の説明では,閉蓋状態にて内装容器本体31の側壁部37の外側に垂れ壁25が対面することとした。しかしこれに限らず
図12に示すように,閉蓋状態にて垂れ壁50が内装容器本体31の側壁部37の内側に対面する構造の内装蓋49であってもよい。むろん,
図11,
図12に示した外装蓋20と,内装蓋47または内装蓋49とが最初から一体品として製造された全蓋であってもよい。
【0048】
前述の説明では,閉蓋状態でも内装容器本体31と内装蓋21との間には空虚な隙間があるものとした。しかしこれに限らず,内装蓋21に柔軟部材を配置してこの隙間を塞ぐようにしてもよい。
図13~
図15がその場合の例である。
図13の例では,内装蓋21に柔軟部材52を配置している。柔軟部材52は,板状部23の裏面であって,垂れ壁25のすぐ内側の位置に配置されている。これにより,内装容器本体31の上縁33と板状部23との間の上下方向の間隔が柔軟部材52で塞がれている。
図14の例では,内装蓋21に柔軟部材53を配置している。柔軟部材53は,垂れ壁25の下端付近の内側に配置されている。これにより,内装容器本体31の外面と垂れ壁25の内面との間の水平方向の間隔が柔軟部材53で塞がれている。
図15の柔軟部材54は,上下方向の間隔と水平方向の間隔との両方を塞ぐものである。
【0049】
これらの場合でも,内装容器本体31と内装蓋21とが直接に接触している訳ではない。したがって,閉蓋状態で外装容器本体30と外装蓋20とを接触させても,内装容器本体31と内装蓋21との間に間隔があることには変わりない。柔軟部材52~54としては,発泡樹脂やチューブ状の樹脂材を用いることができる。一体品の全蓋4や,垂れ壁を持たない全蓋5の場合でも,柔軟部材を配置することができる。垂れ壁50が内装容器本体31の側壁部37の内側に位置するような構成であっても,柔軟部材を配置することができる。
【0050】
上記の形態では,外装蓋20の環状部26を,板状部22の裏面に下方から見て板状部22より凹んでいる部位として外装容器本体30の上縁32に対応して設けている。しかしこれに限らず,上記のような凹状の環状部26を省略して,板状部22の裏面の平坦な部分を本発明の外縁部として利用してもよい。このように平坦な部分を外縁部とする場合,その外側の外縁24を下向きの垂れ壁状に設け,外装容器本体30の側壁部34の外面と対面するようにしてもよい。あるいは,外縁部より内側に垂れ壁を設け,側壁部34の内面と対面させるようにしてもよい。
【0051】
上記の説明ではいずれも,内装容器10や外装容器11は上方から見て円形であることとした。しかしこれに限らず,楕円形,長円形,多角形など,何でもよい。取っ手環35は必須のものでない。取っ手状の部位を設ける場合でも,環状であることは必須ではなく,周方向に対して離散的に設けられていてもよい。内装蓋21における環状凹部29は,必須のものではない。内装蓋21の補強のための凹凸形状を設ける場合でも,同心円状でなくてもよい。外装蓋20の表面に取っ手を設けてもよい。また,前述の説明では,閉蓋状態では単に全蓋2(外装蓋20)が外装容器本体30の上縁32に載っているだけであることとした。しかしこれに限らず,何らかの固定具(締め付けバンド等)により全蓋2(外装蓋20)を外装容器本体30に固定するようにしてもよい。全蓋2(外装蓋20)に係止爪などを設けて外装容器本体30に係合させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 全容器 30 外装容器本体
2 全蓋 31 内装容器本体
3 全本体 32 上縁
4 全蓋(一体品) 33 上縁
5 全蓋(垂れ壁なし) 34 側壁部
10 内装容器 35 取っ手環
11 外装容器 36 底部
20 外装蓋 37 側壁部
21 内装蓋 39 底部
22 板状部 41 板状部
23 板状部 44 両面粘着テープ
24 外縁 46 板状部
25 垂れ壁 47 内装蓋
26 環状部 48 垂れ壁
27 粘着部 49 内装蓋
28 下端 50 垂れ壁
29 環状凹部