(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】電磁弁用アクチュエータおよび電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20240918BHJP
F16K 31/08 20060101ALI20240918BHJP
H01F 7/06 20060101ALI20240918BHJP
H01F 7/16 20060101ALI20240918BHJP
H01F 7/127 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
F16K31/06 305D
F16K31/06 305E
F16K31/08
H01F7/06 C
H01F7/16 D
H01F7/16 Q
H01F7/16 R
(21)【出願番号】P 2020116110
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000146995
【氏名又は名称】テクノエクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】高倉 健一
【審査官】藤森 一真
(56)【参考文献】
【文献】特開平01-210674(JP,A)
【文献】特開2005-308040(JP,A)
【文献】実開平02-145368(JP,U)
【文献】実開平01-135275(JP,U)
【文献】米国特許第09964220(US,B1)
【文献】特開平11-280933(JP,A)
【文献】特開2003-148646(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06 - 31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
励磁コイルを形成する導線が巻回された筒部の両端に鍔部がそれぞれ設けられたボビンと、前記ボビンに対するスライドが規制された状態で前記筒部の一端部側に挿入された固定コアと、前記ボビンに対するスライドが可能に前記筒部の他端部側に挿入された可動コアと、前記ボビンと一体化されて前記励磁コイルの周囲に磁路を形成するヨークとを備えると共に、前記可動コアにおける前記固定コア側とは逆側の端部に弁体を取り付け可能に構成された電磁弁用アクチュエータであって、
前記ヨークは、一対の第1部材および当該両第1部材を連結する第2部材を備えて、当該両第1部材が前記筒部を挟んで対向させられると共に当該第2部材が当該筒部の前記一端部側に配置された状態で前記ボビンと一体化され、
前記ボビンは、前記両鍔部のうちの前記筒部の前記一端部側に設けられた第1鍔部に前記第2部材に対して係合可能な一対の係合用爪部が設けられ
、当該筒部の筒長方向に沿った仮想回動軸心を中心とする前記ヨークに対する当該ボビンの相対的な回動によって当該両係合用爪部が当該第2部材に係合していない非係合状態から当該両係合用爪部が当該第2部材に係合させられた係合状態に移行可能に構成されて、当該両係合用爪部が当該第2部材に係合させられて
当該ヨークと一体化されている電磁弁用アクチュエータ。
【請求項2】
前記ボビンにおける前記両鍔部のうちの前記筒部の前記他端部側に設けられた第2鍔部に、当該筒部内の前記可動コアをラッチするための永久磁石が取り付けられている請求項
1記載の電磁弁用アクチュエータ。
【請求項3】
前記固定コアは、前記ヨークにおける前記第2部材に固定された状態で前記ボビンにおける前記筒部の前記一端部側に挿入されている請求項1
または2記載の電磁弁用アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1から
3のいずれかに記載の電磁弁用アクチュエータと、前記可動コアに取り付けられた弁体とを備えて構成されている電磁弁。
【請求項5】
前記弁体によって開閉される弁口が形成された弁座部が前記ボビンと一体形成されている請求項
4記載の電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励磁コイルを形成する導線が巻回されたボビンと、固定コアと、可動コアと、ボビンと一体化されて励磁コイルの周囲に磁路を形成するヨークとを備えた電磁弁用アクチュエータ、並びにそのような電磁弁用アクチュエータを備えて構成された電磁弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の電磁弁用アクチュエータを備えて構成された電磁弁として、ソレノイドを備えて構成されたラッチ式電磁弁(以下、単に「電磁弁」ともいう)が下記の特許文献に開示されている。この電磁弁では、コイルボビン(以下、単に「ボビン」ともいう)、ボビンに導線が巻回されて構成されたコイル、固定鉄芯、プランジャー、ばね、ヨークおよび永久磁石を備えてソレノイドが構成されている。また、この電磁弁では、上記のプランジャーにおける下端部に排水口(弁口)を開閉可能な弁体(パイロット弁用)が取り付けられると共に、排水口を介して流入した水の圧力によって動作させられる弁体(メイン弁用:ダイヤフラム)を備えて構成されている。
【0003】
この電磁弁では、常態(コイルに対して通電されていない状態)において、永久磁石の磁力、およびばねの付勢力によってプランジャーが排水口を閉じた状態が維持される。この状態においては、弁体(ダイヤフラム)が弁座に当接させられて水の流れが遮断される。一方、ソレノイドのコイルに対して通電されたときには、プランジャーがばねの付勢力に抗して引き上げられて排水口が開口される。この状態においては、永久磁石の磁力によってプランジャーのスライドが規制される(ラッチされる)と共に、弁体(ダイヤフラム)が弁座から離間させられて水の流れが許容される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-280933号公報(第2-3頁、第1-8図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記の特許文献に開示されている電磁弁、およびそのソレノイドには、以下のような問題点が存在する。具体的には、上記の特許文献に開示の電磁弁におけるソレノイドでは、側面視コ字状の部材(以下、「コ字状部材」ともいう)と、側面視I字状の部材(以下、「I字状部材」ともいう)の2つの部材を備えてヨークが構成されている。また、このソレノイドでは、導線が巻回されてコイルが形成されたボビンの筒部内に、プランジャー、ばね、および固定鉄心がこの順で挿入され、これらが、ヨークのコ字状部材およびI字状部材の間に挟み込まれるようにして各構成部品が一体化されている。
【0006】
この場合、この種のソレノイドでは、I字状部材に形成された挿通孔や切欠き部にコ字状部材の両端に形成された凸状部を挿通させた状態でかしめる(凸状部を圧縮変形させる)「かしめ固定」や、コ字状部材およびI字状部材のいずれか一方に形成された挿通孔を挿通させた固定用ねじを両部材の他方に形成されたねじ孔にねじ込む「ねじ固定」や、コ字状部材の両端部がI字状部材に接した状態で他のボビンと共にモールドする「モールド固定」などの固定構造でコ字状部材およびI字状部材が相互に固定されてソレノイドの構成部品が一体化されている。なお、上記特許文献には、コ字状部材およびI字状部材の固定構造に関して詳細に説明されていないが、固定用ねじやモールド材が存在していないことから、「かしめ固定」によってコ字状部材およびI字状部材が相互に固定されてソレノイドの構成部品が一体化されているものと推定される。
【0007】
この場合、「かしめ固定」によってソレノイドの構成部品を一体化させた構成では、かしめ処理を行うためのプレス装置(装置そのもの、および装置にセットする専用の治具)を必要とすることから、製造コストの低減が困難となっている。また、「ねじ固定」によってソレノイドの構成部品を一体化させた構成では、固定用ねじの部品コストに加え、少なくとも2つのねじ孔を形成する工程、および少なくとも2つの固定用ねじをねじ込む工程を行う分だけ、製造コストの低減が困難となっており、また、工程数が多いことで、製造時間の短縮が困難となっている。さらに、「モールド固定」によってソレノイドの構成部品を一体化させた構成では、モールド剤の部品コストに加え、モールド処理を行うための装置(装置そのもの、およびモールド用の金型)を必要とすることから、製造コストの低減が困難となっており、加えて、モールド剤が硬化するまでの待機時間を要する分だけ製造時間の短縮が困難となっている。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、製造コストの低減、および製造時間の短縮を図り得る電磁弁用アクチュエータ、およびそのような電磁弁用アクチュエータを備えた電磁弁を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の電磁弁用アクチュエータは、励磁コイルを形成する導線が巻回された筒部の両端に鍔部がそれぞれ設けられたボビンと、前記ボビンに対するスライドが規制された状態で前記筒部の一端部側に挿入された固定コアと、前記ボビンに対するスライドが可能に前記筒部の他端部側に挿入された可動コアと、前記ボビンと一体化されて前記励磁コイルの周囲に磁路を形成するヨークとを備えると共に、前記可動コアにおける前記固定コア側とは逆側の端部に弁体を取り付け可能に構成された電磁弁用アクチュエータであって、前記ヨークは、一対の第1部材および当該両第1部材を連結する第2部材を備えて、当該両第1部材が前記筒部を挟んで対向させられると共に当該第2部材が当該筒部の前記一端部側に配置された状態で前記ボビンと一体化され、前記ボビンは、前記両鍔部のうちの前記筒部の前記一端部側に設けられた第1鍔部に前記第2部材に対して係合可能な一対の係合用爪部が設けられ、当該筒部の筒長方向に沿った仮想回動軸心を中心とする前記ヨークに対する当該ボビンの相対的な回動によって当該両係合用爪部が当該第2部材に係合していない非係合状態から当該両係合用爪部が当該第2部材に係合させられた係合状態に移行可能に構成されて、当該両係合用爪部が当該第2部材に係合させられて当該ヨークと一体化されている。
【0011】
さらに、請求項2記載の電磁弁用アクチュエータは、請求項1記載の電磁弁用アクチュエータにおいて、前記ボビンにおける前記両鍔部のうちの前記筒部の前記他端部側に設けられた第2鍔部に、当該筒部内の前記可動コアをラッチするための永久磁石が取り付けられている。
【0012】
さらに、請求項3記載の電磁弁用アクチュエータは、請求項1または2記載の電磁弁用アクチュエータにおいて、前記固定コアは、前記ヨークにおける前記第2部材に固定された状態で前記ボビンにおける前記筒部の前記一端部側に挿入されている。
【0013】
また、請求項4記載の電磁弁は、請求項1から3のいずれかに記載の電磁弁用アクチュエータと、前記可動コアに取り付けられた弁体とを備えて構成されている。
【0014】
また、請求項5記載の電磁弁は、請求項4記載の電磁弁において、前記弁体によって開閉される弁口が形成された弁座部が前記ボビンと一体形成されている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の電磁弁用アクチュエータでは、ヨークが、一対の第1部材および両第1部材を連結する第2部材を備えて、両第1部材がボビンの筒部を挟んで対向させられると共に第2部材が筒部の一端部側に配置された状態でボビンと一体化され、ボビンが、筒部の両端に設けられた両鍔部のうちの第1鍔部にヨークの第2部材に対して係合可能な一対の係合用爪部が設けられて両係合用爪部が第2部材に係合させられてヨークと一体化されている。また、請求項4記載の電磁弁では、上記の電磁弁用アクチュエータと、可動コアに取り付けられた弁体とを備えて構成されている。
【0016】
したがって、請求項1記載の電磁弁用アクチュエータ、および請求項4記載の電磁弁によれば、「かしめ固定」によって電磁弁用アクチュエータの構成部品を一体化させた構成とは異なり、かしめ処理を行うためのプレス装置(装置そのもの、および装置にセットする専用の治具)が不要となり、「ねじ固定」によって電磁弁用アクチュエータの構成部品を一体化させた構成とは異なり、固定用ねじが不要となることに加え、ねじ孔を形成する工程や固定用ねじをねじ込む工程が不要となり、「モールド固定」によって電磁弁用アクチュエータの構成部品を一体化させた構成とは異なり、モールド剤が不要となることに加え、モールド処理を行うための装置(装置そのもの、および装置にセットする専用の金型)が不要となり、かつモールド剤が硬化するまでの待機時間も不要となる。これにより、電磁弁用アクチュエータおよび電磁弁の製造時間の短縮を図りつつ、製造コストを十分に低減することができる結果、電磁弁用アクチュエータおよび電磁弁を安価に提供することができる。
【0017】
また、請求項1記載の電磁弁用アクチュエータでは、ボビンが、筒部の筒長方向に沿った仮想回動軸心を中心とするヨークに対するボビンの相対的な回動によって両係合用爪部が第2部材に係合していない非係合状態から両係合用爪部が第2部材に係合させられた係合状態に移行可能に構成されている。したがって、請求項1記載の電磁弁用アクチュエータ、およびそのような電磁弁用アクチュエータを備えた電磁弁によれば、例えば、係合用爪部を変形させながらヨークに対してボビンを筒部の筒長方向に沿って相対的に移動させて第2部材に対して係合用爪部を係合させた構成とは異なり、ボビンとヨークとを一体化させる際に、係合用爪部を変形させることなく第2部材に対して係合用爪部を係合させることができるため、係合用爪部を容易に変形しない程度に十分な強度を有する構造とすることができ、第2部材からの係合用爪部の意図しない離脱を回避することができる結果、ヨークおよびボビンが意図せずに分離する事態を好適に回避することができる。
【0018】
請求項2記載の電磁弁用アクチュエータでは、ボビンにおける両鍔部のうちの第2鍔部に、筒部内の可動コアをラッチするための永久磁石が取り付けられている。したがって、請求項2記載の電磁弁用アクチュエータ、およびそのような電磁弁用アクチュエータを備えた電磁弁によれば、ラッチ用の永久磁石を接着剤等で電磁弁用アクチュエータに固定した構成とは異なり、ボビンに対して永久磁石を容易に固定することができるため、電磁弁用アクチュエータおよび電磁弁の製造コストを一層低減することができる。
【0019】
請求項3記載の電磁弁用アクチュエータでは、固定コアが、ヨークにおける第2部材に固定された状態でボビンにおける筒部の一端部側に挿入されている。したがって、請求項3記載の電磁弁用アクチュエータ、およびそのような電磁弁用アクチュエータを備えた電磁弁によれば、固定コアとヨークとの磁気的結合状態を良好な状態とすることができると共に、ヨークに対する固定コアの位置精度を十分に向上させることができるため、電磁弁用アクチュエータおよび電磁弁の動作不良を好適に回避することができる。
【0020】
請求項5記載の電磁弁によれば、弁体によって開閉される弁口が形成された弁座部をボビンと一体形成したことにより、電磁弁用アクチュエータと弁座部とを別個に製作した後に一体化させた構成とは異なり、両者を一体化させる工程を不要とすることができる分だけ、電磁弁の製造コストを一層低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図7】ボビン21の係合用爪部33a,33を平板状部42に係合させた状態の断面図である。
【
図8】ボビン21の挿入部32aにマグネット28を挿入した状態の外観斜視図である。
【
図9】電磁弁1(アクチュエータ3)の組立て方法について説明するための説明図である。
【
図10】電磁弁1(アクチュエータ3)の組立て方法について説明するための他の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る電磁弁用アクチュエータおよび電磁弁の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0023】
図1~6に示す電磁弁1は、「電磁弁」の一例であって、弁本体2およびアクチュエータ3が一体的に形成されて、アクチュエータ3による弁本体2の開閉動作によって液体(一例として、水道水)の通過を規制/許容することができるように構成されている。なお、本例では、一例として、図示しないメイン弁(ダイヤフラム弁)に取り付けられて、メイン弁を開閉制御するための圧力室に液体を流入させるパイロット弁として使用可能な弁本体2を備えた電磁弁1の構成を例に挙げて説明するが、例えば、通過を許容する液体の流量が少量であるときには、電磁弁1をメイン弁と併用せずに単体で使用する(電磁弁1を「直動式電磁弁」として使用する)こともできる。
【0024】
弁本体2は、
図5,6に示すように、隔壁部11、弁体12およびOリング13a,13bを備えている。隔壁部11は、後述するようにアクチュエータ3のボビン21と一体的に形成されると共に、
図2,4,5に示すように、弁体12によって開閉される弁口11a(パイロットラインの起点となるオリフィス)と、隔壁部11内に液体を流入させる挿通孔11bとが形成されている。なお、本例の電磁弁1(弁本体2)では、隔壁部11における弁口11aの形成部位が「弁座部」に相当する。弁体12は、「弁体」の一例であって、後述するようにアクチュエータ3の可動コア25に取り付けられてアクチュエータ3によって弁口11aの口縁部(弁座部)に対して接離させられる。Oリング13a,13bは、隔壁部11の外周部に設けられた取付け用溝部に嵌入されて、電磁弁1を取付対象(例えば、前述のメイン弁における圧力室)に取り付けた際に取付対象と隔壁部11との間の隙間を密閉する。
【0025】
アクチュエータ3は、「電磁弁用アクチュエータ」の一例であって、
図5,6に示すように、ボビン21、励磁コイル22、固定コア23、Oリング24、可動コア25、スプリング26、ヨーク27およびマグネット28,28を備えている。なお、
図6では、励磁コイル22の図示を省略している。
【0026】
ボビン21は、「ボビン(巻枠)」の一例であって、「筒部」の一例である筒部31と、「鍔部」としての「第2鍔部」の一例である鍔部32と、「鍔部」としての「第1鍔部」の一例である鍔部33とを備えている。この場合、本例の電磁弁1(アクチュエータ3)におけるボビン21では、固定コア23および可動コア25を挿入可能に筒部31が円筒状に形成されている。また、このボビン21では、弁本体2の隔壁部11が鍔部32と一体的に形成されると共に、マグネット28,28を挿入可能な挿入部32a,32aが鍔部32に設けられ、かつ「一対の係合用爪部」に相当する係合用爪部33a,33aが鍔部33に設けられている。この場合、
図7に示すように、係合用爪部33aは、ボビン21における筒部31の筒長方向(同図における上下方向)に沿って鍔部33から起立させられた起立部35と、起立部35の上端から鍔部33の中央部に向かって鍔部33と平行に(同図における左右方向に)延出させられた延出部36とを備え、鍔部33と延出部36との離間距離がヨーク27における平板状部42の厚みと同程度となるように断面L字状に形成されている。
【0027】
励磁コイル22は、
図5に示すように、ボビン21における筒部31の周囲に導線22aが巻回されて構成されている。この場合、励磁コイル22を構成する上記の導線22aの両端部は、図示しない制御装置に接続される。固定コア(固定鉄心:プラグナット)23は、
図5,6に示すように、略円柱状に形成されてボビン21の筒部31における一端部側(
図5における上端部側)に挿入され、後述するように、ボビン21に対するスライド(ボビン21からの離脱)が規制されるようにヨーク27に固定されている(「ヨークに固定された状態でボビンにおける筒部の一端部側に挿入されている」との構成の一例)。この固定コア23には、ヨーク27における後述の嵌入用孔42aに嵌入可能な凸部23aが設けられている。Oリング24は、固定コア23に装着された状態で固定コア23と共にボビン21の筒部31内に挿入されることで固定コア23の外周面と筒部31の内周面との間の隙間を密閉する。
【0028】
可動コア(可動鉄心:プランジャー)25は、固定コア23とほぼ同径の略円柱状に形成されると共に、ボビン21に対するスライドが可能に筒部31における他端部側(
図5における下端部側)に挿入されている。この場合、本例の電磁弁1(アクチュエータ3)では、可動コア25における固定コア23側とは逆側の端部(
図5における下端部)に弁本体2の弁体12が取り付けられる構成が採用されている。スプリング26は、固定コア23および可動コア25の間に配設されて固定コア23に対して可動コア25を離反させる向きに付勢する。
【0029】
ヨーク27は、励磁コイル22が形成されたボビン21と一体化されて、筒部31に挿入された固定コア23および可動コア25を結ぶ磁路(筒部31の一端部側から他の一端部に亘る磁路)を励磁コイル22の周囲に形成する磁路形成部材として機能する。このヨーク27は、
図1,2,5,6に示すように、一対の平板状部41,41(「一対の第1部材」の一例)、および両平板状部41,41を連結する平板状部42(「第2部材」の一例)を備えて側面視コ字状に形成されて、両平板状部41,41がボビン21の筒部31を挟んで対向させられると共に、平板状部42が筒部31の一端部側(固定コア23が挿入されている側)に配置された状態でボビン21と一体化されている。
【0030】
この場合、
図1~6に示すように、本例の電磁弁1(アクチュエータ3)におけるヨーク27では、電磁弁1(アクチュエータ3)を前述の取付対象に固定するための固定用延出部41aが両平板状部41,41において平板状部42によって連結されている側の端部とは逆側の端部にそれぞれ設けられている。また、本例の電磁弁1(アクチュエータ3)におけるヨーク27では、前述したように固定コア23の凸部23aを嵌入可能な嵌入用孔42aが平板状部42に形成されている。
【0031】
マグネット28は、可動コア25をラッチする(筒部31に対する可動コア25のスライドを規制する)ための「永久磁石」の一例であって、
図5,8に示すように、ボビン21における鍔部32に設けられた挿入部32aに挿入されて、筒部31における他端部側(可動コア25が挿入されている側)に位置決めされている。
【0032】
この電磁弁1(アクチュエータ3)では、励磁コイル22が形成され、かつ固定コア23、弁体12が取り付けられた可動コア25、およびスプリング26が筒部31内に挿入された状態のボビン21が、ヨーク27における平板状部42に対する両係合用爪部33a,33aの係合によってヨーク27と一体化される構成が採用されている。具体的には、本例のボビン21では、筒部31の筒長方向に沿った仮想回動軸心L(筒部31が円筒状の本例では、筒部31の筒径方向における中心と重なる軸心:
図6参照)を中心とするヨーク27に対するボビン21の相対的な回動によって、両係合用爪部33a,33aがヨーク27の平板状部42に係合していない「非係合状態(
図9,10参照)」から、両係合用爪部33a,33aが平板状部42に係合させられた「係合状態(
図1~4,7参照)」に移行させられる構成が採用されている。
【0033】
この電磁弁1の製造(組立て)に際しては、ボビン21における筒部31の周囲に導線22aを巻回して励磁コイル22を形成した後に、形成した励磁コイル22の周囲に絶縁フィルム(図示せず)を巻回する。次いで、弁体12を取り付けた可動コア25、スプリング26、およびOリング24を装着した固定コア23をこの順で筒部31に挿入する。この際には、可動コア25に取り付けられている弁体12が弁本体2の隔壁部11における弁口11aの口縁部(弁座部)に当接させられると共に、スプリング26によって固定コア23が可動コア25に対して挿入方向の逆向き(筒部31における鍔部32側から鍔部33側に向かう向き)付勢される結果、固定コア23において凸部23aが形成されている側の端部が筒部31(鍔部33)から突出した状態となる。
【0034】
続いて、
図9,10に示すように、ヨーク27の平板状部41,41の間にボビン21を位置させ、かつボビン21から突出している固定コア23の凸部23aがヨーク27における平板状部42の嵌入用孔42aに嵌入された状態(「固定コアが、ヨークにおける第2部材に固定された状態」の一例)となるように両係合用爪部33a,33aにおける延出部36,36を避けて平板状部42をボビン21の鍔部33に接近させて両係合用爪部33a,33aの間に平板状部42を位置させる。この際には、鍔部33に向けて接近させた平板状部42が鍔部33に対して面的に接触した状態となったときに、ボビン21(筒部31)に対して平板状部42と共に移動させられた固定コア23が筒部31内に押し込まれて、固定コア23の端部(凸部23aを除く部位の端部)が鍔部33の外面と面一の状態となる。
【0035】
次いで、筒部31の筒径方向における中心(凸部23aおよび嵌入用孔42aの中心:仮想回動軸心L)を中心として、両図における矢印Aの向きでボビン21に対してヨーク27を回動させる(または、矢印Bの向きでヨーク27に対してボビン21を回動させる)、両係合用爪部33a,33aが平板状部42に係合していない「非係合状態」から、
図1,3,7に示すように、両係合用爪部33a,33aが平板状部42に係合させられた「係合状態」に移行させる。この際には、係合用爪部33aの起立部35に平板状部42の幅方向における側面が当接するまでボビン21に対してヨーク27を回動させる(または、ヨーク27に対してボビン21を回動させる)。これにより、
図7に示すように、係合用爪部33aの延出部36と鍔部33との間に平板状部42の幅方向における端部が挟み込まれるようにしてボビン21とヨーク27とが一体化した状態となる。
【0036】
続いて、ボビン21の鍔部32における挿入部32a,32aにマグネット28をそれぞれ挿入(圧入)する。この際には、挿入部32aに対する圧入によって挿入部32aからのマグネット28の離脱が規制されると共に、マグネット28が有する磁力によってヨーク27の平板状部41にマグネット28が吸着した状態となる。これにより、ヨーク27における両平板状部41,41および平板状部42、並びに両マグネット28,28によって励磁コイル22の周囲に磁路が形成される。
【0037】
また、
図8に示すように、挿入部32aに挿入したマグネット28が「楔」として機能して同図における矢印Bの向きでのボビン21に対するヨーク27の回動(または、矢印Aの向きでヨーク27に対するボビン21の回動)が規制され、「係合状態」から「非係合状態」への意図しない移行が規制される。これにより、一体化した状態のボビン21およびヨーク27が意図せずに分離する事態を回避することが可能な状態となる。この後、隔壁部11にOリング13a,13bを装着することにより、電磁弁1(アクチュエータ3)が完成する。
【0038】
この電磁弁1の使用に際しては、前述の取付対象に対して電磁弁1を固定する。この場合、取付対象には、弁本体2(隔壁部11)を挿入可能な円形凹部と、アクチュエータ3におけるヨーク27の固定用延出部41a,41aを嵌入可能な嵌入用溝部とが形成されている(いずれも図示せず)。このような取付対象に電磁弁1を固定するには、まず、取付対象の円形凹部に電磁弁1の弁本体2(隔壁部11)を挿入する。この際には、円形凹部の内周面と隔壁部11の外周面との間の隙間がOリング13a,13bによって密閉される。次いで、アクチュエータ3のボビン21における筒部31の筒長方向に沿った仮想回動軸心L(筒部31が円筒状の本例では、筒部31の筒径方向における中心と重なる軸心)を中心として取付対象に対して電磁弁1を回動させることにより、ヨーク27の固定用延出部41a,41aを取付対象の嵌入用溝部に嵌入させる。これにより、ボビン21における筒部31の筒長方向に沿った取付対象に対する電磁弁1の移動が規制されて、取付対象に対する電磁弁1の固定が完了する。なお、電磁弁1の動作については、ラッチ式の一般的な「電磁弁」と同様のため、詳細な説明を省略する。
【0039】
このように、このアクチュエータ3では、ヨーク27が、一対の平板状部41,41および両平板状部41,41を連結する平板状部42を備えて、両平板状部41,41がボビン21の筒部31を挟んで対向させられると共に平板状部42が筒部31の一端部側に配置された状態でボビン21と一体化され、ボビン21が、筒部31の両端に設けられた両鍔部32,33のうちの鍔部33にヨーク27の平板状部42に対して係合可能な一対の係合用爪部33a,33aが設けられて両係合用爪部33a,33aが平板状部42に係合させられてヨーク27と一体化されている。また、この電磁弁1では、上記のアクチュエータ3と、可動コア25に取り付けられた弁体12とを備えて構成されている。
【0040】
したがって、このアクチュエータ3および電磁弁1によれば、「かしめ固定」によってアクチュエータ3の構成部品を一体化させた構成とは異なり、かしめ処理を行うためのプレス装置(装置そのもの、および装置にセットする専用の治具)が不要となり、「ねじ固定」によってアクチュエータ3の構成部品を一体化させた構成とは異なり、固定用ねじが不要となることに加え、ねじ孔を形成する工程や固定用ねじをねじ込む工程が不要となり、「モールド固定」によってアクチュエータ3の構成部品を一体化させた構成とは異なり、モールド剤が不要となることに加え、モールド処理を行うための装置(装置そのもの、および装置にセットする専用の金型)が不要となり、かつモールド剤が硬化するまでの待機時間も不要となる。これにより、電磁弁1(アクチュエータ3)の製造時間の短縮を図りつつ、製造コストを十分に低減することができる結果、電磁弁1(アクチュエータ3)を安価に提供することができる。
【0041】
また、このアクチュエータ3では、ボビン21が、筒部31の筒長方向に沿った仮想回動軸心L(本例では、筒部31における筒径方向の中心)を中心とするヨーク27に対するボビン21の相対的な回動によって両係合用爪部33a,33aが平板状部42に係合していない「非係合状態」から両係合用爪部33a,33aが平板状部42に係合させられた「係合状態」に移行可能に構成されている。したがって、このアクチュエータ3および電磁弁1によれば、例えば、「係合用爪部」を変形させながら「ヨーク」に対して「ボビン」を「筒部」の筒長方向に沿って相対的に移動させて「第2部材」に対して「係合用爪部」を係合させた構成とは異なり、ボビン21とヨーク27とを一体化させる際に、係合用爪部33a,33aを変形させることなく平板状部42に対して係合用爪部33a,33aを係合させることができるため、係合用爪部33a,33aを容易に変形しない程度に十分な強度を有する構造とすることができ、平板状部42からの係合用爪部33a,33aの意図しない離脱を回避することができる結果、ヨーク27およびボビン21が意図せずに分離する事態を好適に回避することができる。
【0042】
さらに、このアクチュエータ3では、ボビン21における両鍔部32,33のうちの鍔部32に、筒部31内の可動コア25をラッチするためのマグネット28,28が取り付けられている。したがって、このアクチュエータ3および電磁弁1によれば、ラッチ用の「永久磁石」を接着剤等で「電磁弁用アクチュエータ」に固定した構成とは異なり、ボビン21に対してマグネット28,28を容易に固定することができるため、電磁弁1(アクチュエータ3)の製造コストを一層低減することができる。
【0043】
さらに、このアクチュエータ3では、固定コア23が、ヨーク27における平板状部42に固定された状態でボビン21における筒部31の一端部側に挿入されている。したがって、このアクチュエータ3および電磁弁1によれば、固定コア23とヨーク27との磁気的結合状態を良好な状態とすることができると共に、ヨーク27に対する固定コア23の位置精度を十分に向上させることができるため、電磁弁1(アクチュエータ3)の動作不良を好適に回避することができる。
【0044】
また、この電磁弁1によれば、弁体12によって開閉される弁口11aが形成された「弁座部(本例では、隔壁部11における弁口11aの形成部位)」をボビン21と一体形成したことにより、「電磁弁用アクチュエータ」と「弁座部」とを別個に製作した後に一体化させた構成とは異なり、両者を一体化させる工程を不要とすることができる分だけ、電磁弁1の製造コストを一層低減することができる。
【0045】
なお、「電磁弁用アクチュエータ」および「電磁弁」の構成は、上記のアクチュエータ3および電磁弁1の構成の例に限定されない。例えば、ヨーク27の平板状部42における幅方向の縁部に係合用爪部33a,33aが係合させられてボビン21およびヨーク27が一体化されている構成を例に挙げて説明したが、このような構成に代えて、平面視弧状の長孔を「第2部材」に形成し、この長孔に「係合用爪部」を挿入した後に「仮想回動軸心」を中心として「ボビン」に対して「ヨーク」を回動させる(または、「ヨーク」に対して「ボビン」を回転させる)ことで、長孔の長手方向の端部に「係合用爪部」が係合させられて「ボビン」および「ヨーク」が一体化される構成を採用することもできる(図示せず)。
【0046】
また、固定コア23がヨーク27(平板状部42)に固定された状態でボビン21の筒部31内に挿入された構成を例に挙げて説明したが、「固定コア」を「ヨーク(第2部材)」に固定することなく「ボビンの筒部」内に挿入(例えば、圧入)することもできる。
【0047】
また、ラッチ式の電磁弁1(ラッチ式の電磁弁1を構成するアクチュエータ3)の構成を例に挙げて説明したが、上記のラッチ式の電磁弁1(ラッチ式の電磁弁1を構成するアクチュエータ3)におけるマグネット28,28に代えて、マグネット28と同じ大きさで同じ形状の「着磁されていない磁性体(一例として、ヨーク27の形成材と同じ磁性体)」を鍔部32の挿入部32a,32aに挿入することで、非ラッチ式の電磁弁1(非ラッチ式の電磁弁1を構成するアクチュエータ3)を構成することもできる。
【0048】
加えて、弁本体2とアクチュエータ3と一体形成した電磁弁1の構成を例に挙げて説明したが、「電磁弁アクチュエータ(電磁弁1におけるアクチュエータ3に相当する構成要素)」と、「弁座部(電磁弁1における弁本体2に相当する構成要素)」とを別個に製作した後に一体化させて「電磁弁」を構成することもできる。
【符号の説明】
【0049】
1 電磁弁
2 弁本体
3 アクチュエータ
11 隔壁部
11a 弁口
11b 挿通孔
12 弁体
13a,13b,24 Oリング
21 ボビン
22 励磁コイル
22a 導線
23 固定コア
23a 凸部
25 可動コア
26 スプリング
27 ヨーク
28 マグネット
31 筒部
32,33 鍔部
32a 挿入部
33a 係合用爪部
35 起立部
36 延出部
41,42 平板状部
41a 固定用延出部
42a 嵌入用孔
L 仮想回動軸心