IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シオジリ製帽の特許一覧

<>
  • 特許-日除け付き帽子 図1
  • 特許-日除け付き帽子 図2
  • 特許-日除け付き帽子 図3
  • 特許-日除け付き帽子 図4
  • 特許-日除け付き帽子 図5
  • 特許-日除け付き帽子 図6
  • 特許-日除け付き帽子 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】日除け付き帽子
(51)【国際特許分類】
   A42B 1/018 20210101AFI20240918BHJP
   A42B 1/008 20210101ALI20240918BHJP
   A42B 1/00 20210101ALI20240918BHJP
   A42B 1/241 20210101ALI20240918BHJP
【FI】
A42B1/018 Z
A42B1/008 Z
A42B1/018 C
A42B1/00 X
A42B1/241
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020127861
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025191
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-03-14
(73)【特許権者】
【識別番号】597093115
【氏名又は名称】株式会社シオジリ製帽
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】塩尻 英一
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-275722(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0326791(US,A1)
【文献】特開2012-036533(JP,A)
【文献】特開2001-146621(JP,A)
【文献】米国特許第05495622(US,A)
【文献】特開2007-051408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B1/018
A42B1/04
A42B1/008
A42B1/0186
A42B1/019
A42C5/04
A42C5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の頭部を覆うクラウンと、
クラウンの下縁から前方に突出して設けられた前鍔と、
着用者の顔面前方を覆う日除け布と
を備えた日除け付き帽子であって、
日除け布が、
着用者の顔面前方を覆う前方被覆部と、
前方被覆部の左右両側に設けられ、着用者の顔面側方を覆う左右一対の側方被覆部と
を有しながらも、
着用者の首部後側を覆う部分を有さない形態とされ、
日除け布における、左側の側方被覆部から、前方被覆部を経て、右側の側方被覆部に至るまでの範囲が、連続した生地によって形成され、
それぞれの側方被覆部の上縁における前寄りの区間が、前鍔の上面側で、前鍔の基端縁に沿うように、クラウンの下縁と前鍔の基端縁との間に挟み込んだ状態で縫着されて、
それぞれの側方被覆部の上縁における後寄りの区間が、クラウンの下縁に沿って縫着され、
前鍔の前側部分を、日除け布の前方被覆部の上部に設けられた前鍔挿入用開口部を通じて日除け布から前方に突出させることによって、
日除け布の前方被覆部が、前鍔の先端縁における左右両側の前後方向中途部分から垂下する構造とされるとともに、
前方被覆部における着用者の口元周辺を覆う箇所に、保冷材を収容するための保冷材用ポケットが設けられたことを特徴とする日除け付き帽子。
【請求項2】
日除け布が、メッシュ生地で形成された請求項1記載の日除け付き帽子。
【請求項3】
前鍔挿入用開口部における前鍔よりも下側に位置する部分を、着用者の目を出すための目出し用開口部として利用することができるようにした
請求項1又は2記載の日除け付き帽子。
【請求項4】
クラウンの内面側における下縁に沿った箇所にビン皮を設け、
クラウンの側方の下縁を、ビン皮に対して縫着せずふらした状態とすることで、クラウンとビン皮との間に隙間を形成することで、当該隙間が、クラウンの内側に外気を取り込むための側方通気口として機能するようにするとともに、
日除け布の側方被覆部の上縁における後寄りの区間が、側方通気口の内部で、クラウンの内面に対して取り付けられた
請求項1~3いずれか記載の日除け付き帽子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の顔面を覆う日除け布を備えた日除け付き帽子と、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
日差しが強い時期に屋外で活動すると、日焼けしやすい。女性等、日焼けを気にする人は、日焼け止めを使用することもある。しかし、日焼け止めを塗る作業には、手間を要する。また、顔は、汗を掻きやすいため、顔に日焼け止めを塗ったとしも汗で流れ落ちやすい。このため、日焼け止めを頻繁に塗り直す必要がある。
【0003】
このような実状に鑑みて、これまでには、着用者の顔面を覆う日除け布を備えた日除け付き帽子が提案されている。例えば、特許文献1の図1には、クラウン6の下縁に日除け布1を縫い付けた日除け付き帽子が記載されている。また、特許文献2の図1には、前鍔に相当する部分の先端縁から日除け布を垂下した状態に設けた日除け付き帽子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-183440号公報
【文献】実用新案登録第3218185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、この種の日除け付き帽子を着用すると、口や鼻が日除け布で覆われるため、息苦しくなるという欠点があった。特に、暑い時期には、呼気の温度も高くなるところ、日除け布によってその呼気の熱が着用者の口元周辺に滞留するようになるため、着用者が暑苦しさを感じやすかった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、着用者の顔面を覆う日除け布を備えたものでありながら、着用者の口元周辺に熱が滞留せず、着用者が暑さや息苦しさを感じにくい日除け付き帽子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、
着用者の頭部を覆うクラウンと、
着用者の顔面前方を覆う日除け布と
を備えた日除け付き帽子であって、
日除け布における着用者の口元周辺を覆う箇所に、保冷材を収容するための保冷材用ポケットが設けられたことを特徴とする日除け付き帽子
を提供することによって解決される。
【0008】
本発明の日除け付き帽子では、日除け布における着用者の口元周辺を覆う箇所に保冷材を収容することができる。このため、着用者の口元周辺の空気を保冷材で冷却し、着用者の口元周辺を涼しく保つことが可能になる。したがって、着用者が暑さや息苦しさを感じにくくすることができる。日除け布は、クラウン等に対して完全に固定(縫着等)した状態で設けてもよいし、クラウン等に対して着脱可能な状態で設けてもよい。
【0009】
本発明の日除け付き帽子において、日除け布の素材は、ある程度の遮光性を有するものであれば特に限定されない。しかし、着用者の口元周辺に熱がさらに滞留しにくくするためには、日除け布をメッシュ生地で形成することが好ましい。これにより、着用者が暑さや息苦しさをさらに感じにくくすることができる。
【0010】
本発明の日除け付き帽子において、日除け布は、着用者の顔面前方のみを覆うものであってもよい。しかし、この場合には、顔面の側方に当たる日差しを日除け布で遮ることができず、顔面の側方が日焼けするおそれがある。このため、日除け布は、着用者の顔面前方を覆う前方被覆部と、前方被覆部の左右両側に設けられ、着用者の顔面側方を覆う左右一対の側方被覆部とを備えたものとすることが好ましい。これにより、着用者の顔面をより広い範囲で日光から保護することが可能になる。
【0011】
本発明の日除け付き帽子においては、日除け布を、クラウンの下縁から真下に垂れ下がるように設けてもよい。しかし、この場合には、着用者の顔面から日除け布が近くなりすぎて、日除け布が着用者の顔に貼り付くおそれがある。したがって、着用者が不快に感じるおそれがある。特に、日除け布における保冷材が収容された部分が着用者の口元周辺に載った状態となると、着用者の口元周辺が保冷材で直接冷やされるようになり、着用者が涼しさを通り越して冷たさを感じるようになるおそれもある。
【0012】
このため、本発明の日除け付き帽子では、クラウンの下縁から前方に突出する前鍔を設け、日除け布の前方被覆部が、前鍔における前後方向中途部分から垂下するようにすることが好ましい。これにより、日除け布を、着用者の顔面に近づきすぎず、且つ、着用者の顔面から離れすぎない適切な位置で垂れ下がるようにすることができる。したがって、日除け布が着用者の顔に貼り付かないようにして、着用者が口元周辺に適度な涼しさを感じるようにすることができる。また、着用者が日除け布を目障りに感じにくくするだけでなく、着用者が日除け布の重みを感じにくくすることも可能になる。
【0013】
本発明の日除け付き帽子において、日除け布の上縁は、前鍔の下面側に取り付けてもよい。しかし、この場合には、前鍔に対して日除け布をしっかりと取り付けにくくなる。特に、日除け布の取り付けを縫着で行う場合には、その縫着を行いにくくなる。というのも、前鍔は、通常、鍔芯と、鍔芯の上面側を覆う鍔表地と、鍔芯の下面側を覆う鍔裏地とで構成されており、その鍔芯によってある程度の硬さを有しているところ、このように硬さを有する前鍔に対して日除け布をシワなく綺麗な状態で、且つ、所望のラインに沿って縫着することは、必ずしも容易ではないからである。
【0014】
このため、本発明の日除け付き帽子においては、日除け布の側方被覆部の上縁における前寄りの区間を、前鍔の上面側で前鍔の基端縁に沿って取り付け、前鍔の前側部分を、日除け布の前方被覆部の上部(左右の側方被覆部の間)に設けられた前鍔挿入用開口部を通じて日除け布から前方に突出させることによって、日除け布の前方被覆部が、前鍔の先端縁における左右両側の前後方向中途部分から垂下する構造とすることが好ましい。これにより、日除け布の上縁をシワなく綺麗な状態で取り付ける(縫着等する)ことが可能になる。前鍔の基端縁近傍には、鍔芯等の硬い素材が存在しないため、日除け布を縫着しやすいからである。また、前鍔の基端縁をクラウンの下縁に対して縫着する際に、日除け布も一緒に縫着することも可能になる。この場合には、日除け布の縫合工程を別途設ける必要がなくなり、日除け付き帽子の製造工程をシンプルにすることも可能になる。
【0015】
本発明の日除け付き帽子において、日除け布の前方被覆部の上部に前鍔挿入用開口部を設ける場合には、前鍔挿入用開口部における前鍔よりも下側に位置する部分を、着用者の目を出すための目出し用開口部として利用できるようにする(前鍔挿入用開口部が前鍔によって完全に塞がれないようにし、その塞がれなかった部分を目出し用開口部として利用できるようにする)ことも好ましい。これにより、目出し用開口部を設ける工程を別途設けなくても、日除け布に目出し用開口部を設けることが可能になる。
【0016】
本発明の日除け付き帽子においては、クラウンの側方における下縁に沿った箇所に、クラウンの内側に外気を取り込むための側方通気口を設けるとともに、日除け布の側方被覆部の上縁における後寄りの区間を、側方通気口の内側で、クラウンに対して取り付けることも好ましい。これにより、クラウンの側方からベンチレーション(換気)を行うことができるようになることに加えて、その側方通気口を利用して日除け布の側方被覆部を取り付けることも可能になる。この構成は、クラウン等に対して日除け布を着脱可能な状態で設ける場合に特に好適である。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明によって、着用者の顔面を覆う日除け布を備えたものでありながら、着用者の口元周辺に熱が滞留せず、着用者が暑さや息苦しさを感じにくい日除け付き帽子を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】第一実施形態の日除け付き帽子を示した斜視図である。
図2】第一実施形態の日除け付き帽子を上方から見た状態を示した平面図である。
図3】第一実施形態の日除け付き帽子を前方から見た状態を示した正面図である。
図4】第一実施形態の日除け付き帽子を側方から見た状態を示した側面図である。
図5】第一実施形態の日除け付き帽子における日除け布を、図3におけるX-X面で切断した状態を示した断面図である。
図6】第二実施形態の日除け付き帽子を側方から見た状態を示した側面図である。
図7】第二実施形態の日除け付き帽子を、図3におけるY-Y面で切断した状態を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の日除け付き帽子の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、2つの実施形態(第一実施形態及び第二実施形態)を例に挙げて、本発明の日除け付き帽子を説明する。しかし、本発明の日除け付き帽子の技術的範囲は、これらの実施形態に限定されない。本発明の日除け付き帽子には、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。

【0020】
1.第一実施形態の日除け付き帽子
まず、第一実施形態の日除け付き帽子について説明する。図1は、第一実施形態の日除け付き帽子を示した斜視図である。図2は、第一実施形態の日除け付き帽子を上方から見た状態を示した平面図である。図3は、第一実施形態の日除け付き帽子を前方から見た状態を示した正面図である。図4は、第一実施形態の日除け付き帽子を側方から見た状態を示した側面図である。図5は、第一実施形態の日除け付き帽子における日除け布を、図3におけるX-X面で切断した状態を示した断面図である。
【0021】
第一実施形態の日除け付き帽子は、図1に示すように、クラウン10と、前鍔20と、日除け布30とを備えたものとなっている。この日除け付き帽子は、日除け布30で着用者の顔を覆うことで、着用者の顔を日焼けから守ることができるものとなっている。日除け布30における着用者の口元周辺を覆う部分には、保冷材用ポケットαが設けられている。この保冷材用ポケットαには、図5に示すように、保冷材100が収容される。この保冷材100によって、着用者の口元周辺の空気を保冷材で冷却することができる。着用者の呼気も冷却することができる。したがって、着用者が暑さや息苦しさを感じにくくすることができる。
【0022】
以下、本発明の日除け付き帽子を構成する各部材について説明する。
【0023】
1.1 クラウン
クラウン10は、着用者の頭部を覆うための部分となっている。第一実施形態の日除け付き帽子においては、このクラウン10を、複数枚(図1の例では6枚)の二等辺三角形状の生地(いわゆる「レンゲ」)を繋ぎ合わせることで半球状に形成している。しかし、クラウン10を構成する生地の形態や枚数は、これに限定されない。また、クラウン10は、着用者の頭部全体を覆うもの(半球状のもの)である必要はなく、着用者の頭部の一部を覆うものであってもよい。例えば、サンバイザーにおけるヘッドバンドのように、着用者の頭部における下側部分のみを覆うもの(頭頂部を覆わないもの)であってもよい。
【0024】
クラウン10は、クラウン10の外面側を形成するクラウン表地と、クラウン10の内面側を形成するクラウン表地等からなる複層構造としてもよいが、第一実施形態の日除け付き帽子では、クラウン10を1層のみで形成している。これにより、クラウン10の通気性を高めることができる。また、クラウン10を軽量化し、頭部に着用しても疲れにくいものとすることができる。クラウン10を構成する生地としては、合成繊維や天然繊維等からなる各種生地を用いることができる。しかし、本発明の日除け付き帽子は、主に、日差しの強い厚い時期に着用することを想定したものであるため、クラウン10は、通気性に優れた生地で形成することが好ましい。
【0025】
このように、通気性に優れた生地としては、メッシュ生地が挙げられる。第一実施形態の日除け付き帽子においても、メッシュ生地によってクラウン10を形成している。クラウン10を形成するメッシュ生地としては、ラッセルメッシュ生地やトリコットメッシュ生地等の経編メッシュ生地や、緯編メッシュ生地や、平織メッシュ生地や、綾織メッシュ生地や、朱子織メッシュ生地等が例示される。これらのメッシュ生地は、通常、ポリエステルやナイロン等の合成繊維や、綿等の天然繊維や、或いはこれらの複合繊維等を編製又は織製することによって形成される。
【0026】
クラウン10を形成するメッシュ生地の目付は、それを形成する生地や繊維の種類等によっても異なり、特に限定されないが、通常、50~300g/mの範囲とされる。クラウン10の通気性を良好に保つためには、メッシュ生地の目付は、250g/m以下とすることが好ましく、200g/m以下とすることがより好ましい。第一実施形態の日除け付き帽子では、ポリエステル繊維からなる目付が190g/m程度のラッセルメッシュ生地(いわゆるスポーティメッシュ)でクラウン10を形成している。ただし、クラウン10を形成する6枚の生地(レンゲ)のうち、クラウン10の前方に配される2枚の生地(着用者の額周辺を覆う2枚の生地)は、他の生地よりも目付を大きくしている。このため、これらの2枚の生地は、他の生地よりも硬くなっている。これにより、クラウン10の内面側に、前立て等の保形材を設けなくても、クラウン10を綺麗な半球状に保つことができるようになっている。
【0027】
クラウン10を構成する複数枚の生地の繋ぎ合わせは、通常、縫合によって行われる。しかし、クラウン10を構成する生地を、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる繊維で形成する場合等には、これらの生地は、シームレス加工(例えば、超音波による振動で生地同士を摩擦することで熱を発生させ、生地を溶融させて互いに溶着させる加工等)によって繋ぎ合わせることもできる。
【0028】
第一実施形態の日除け付き帽子においては、図2及び図4に示すように、クラウン10の後方下部に、半円状の切欠部を設けている。この切欠部には、アジャスター40が取り付けられている。このアジャスター40は、クラウン10の寸法を調節するためのものとなっている。第一実施形態の日除け付き帽子においては、アジャスター40を、前記切欠部における左右両側の縁部に取り付けられた左右一対のベルト部材によって構成している。これら左右一対のベルト部材を互いに固定する箇所を変更することで、クラウン10の寸法(クラウン10の下縁の周長)を調節することができる。
【0029】
また、第一実施形態の日除け付き帽子においては、クラウン10の内面側における下縁に沿った箇所であって、前記切欠部(アジャスター40を設ける切欠部)を除いた区間に、ビン皮(図示省略)を設けている。このビン皮は、汗取りバンドとも呼ばれるもので、着用者の頭部の汗が、顔に流れ落ちないように吸い取るための部分となっている。
【0030】
1.2前鍔
前鍔20は、図1に示すように、クラウン10の下縁から前方に突出して設けられた部分となっている。この前鍔20は、着用者の目に日光が直接入らないようにするための庇としての機能を発揮する部分となっている。第一実施形態の日除け付き帽子においては、前鍔20を、クラウン10の下縁における点Qと点Qとを結ぶ前側区間から前方に突出した状態に設けている。前鍔20の形態は、特に限定されないが、通常、平面視三日月状とされる。前鍔20は、通常、保形性を有する芯材(鍔芯)の上面側及び下面側をそれぞれ前鍔表地及び前鍔裏地で覆った構造とされる。
【0031】
1.3 日除け布
日除け布30は、図1に示すように、クラウン10や前鍔20から垂下されることによって、着用者の顔を覆うための部分となっている。日除け布30は、遮光性と可撓性を有するものであれば、その素材を特に限定されない。第一実施形態の日除け付き帽子においては、日除け布30を、クラウン10と同様のメッシュ生地によって形成している。これにより、日除け布30を、日差しを遮りながらも、空気を通過させることが可能なものとすることができる。日除け布30を形成するメッシュ生地は、クラウン10を形成するメッシュ生地と同様のものを採用することができる。ただし、日除け布30を形成するメッシュ生地として、目の小さなものを使用したり、抗菌作用を有するものを使用すると、日除け布30に衛生マスクの機能を付与することもできる。
【0032】
日除け布30は、着用者の顔面前方を覆う前方被覆部32と、着用者の顔面側方を覆う側方被覆部33とを有している。側方被覆部33は、左頬側を覆うものと、右頬側を覆うものとの左右一対で設けられている。これにより、日除け布30で顔の前面側を覆うだけでなく、顔の側方を覆うこともでき、顔における広い範囲を日焼けから守ることが可能になる。日除け布30は、前方被覆部32と側方被覆部33とが分離した構造のものであってもよいが、通常、前方被覆部32と側方被覆部33とが連続した構造とされる。第一実施形態の日除け付き帽子においても、前方被覆部32と左右一対の側方被覆部33とは、連続した1枚の生地(メッシュ生地)によって形成している。日除け布30の上部(より具体的には、前方被覆部32の上部であって、左右の側方被覆部33の間となる箇所)には、前鍔挿入用開口部31を形成している。この前鍔挿入用開口部31は、前鍔20の前側部分を挿入して突出させるための部分となっている。
【0033】
日除け布30における着用者の口元周辺を覆う箇所(前方被覆部32における前鍔挿入用開口部31よりも下側の部分)には、保冷材100(図5)を収容するための保冷材用ポケットαが設けられている。保冷材用ポケットαは、日除け布30(前方被覆部32)の外面側に設けてもよいが、第一実施形態の日除け付き帽子では、日除け布30(前方被覆部32)の内面(着用者の顔を向く側の面)側に設けている。具体的には、図5に示すように、日除け布30の内面側にポケット用生地34を取り付けることで、保冷材用ポケットαを形成している。これにより、日除け付き帽子の見た目を良くすることができる。
【0034】
保冷材100は、通常、カバー(包装体)の中に保冷剤を充填したものとされる。保冷材100の中身(保冷剤)は、硬く固まるものではなく、ゲル状のものとすることが好ましい。これにより、保冷材100を柔軟にして、着用者の顔面に対する当たりを柔らかくすることができる。このような性状を有する保冷材100としては、水に高吸水性ポリマーや防腐剤や安定剤等を添加したもの等が例示される。この種の保冷材100は、冷凍庫や冷蔵庫で冷却することで繰り返し使用することができる。保冷材100の形態は、保冷剤用ポケットαに収容できるのであれば、特に限定されないが、シート状(乃至はマット状)のものを使用することが好ましい。これにより、保冷材用ポケットαに保冷材100を目立たない状態(日除け布30が不自然に膨らまない状態)で収容することができる。第一実施形態の日除け付き帽子でも、保冷材100をシート状としている。保冷材100の厚さは、通常、1~20mm程度とされ、好ましくは、2~10mm程度とされる。
【0035】
保冷材100の上下幅及び左右幅は、小さくしすぎても大きくしすぎてもよくない。保冷材100を小さくしすぎると、日除け付き帽子の着用者の口元周辺における狭い範囲しか冷却することができなくなるし、保冷材100を大きくしすぎると、保冷材100の重量が増大して、日除け付き帽子の着用者が違和感を覚えやすくなったり、疲れやすくなったりするおそれがあるからである。保冷材100の上下幅及び左右幅は、3cm以上とすることが好ましく、5cm以上とすることがより好ましく、7cm以上とすることがさらに好ましい。一方、保冷材100の上下幅及び左右幅は、20cm以下とすることが好ましく、15cm以下とすることがより好ましい。
【0036】
ポケット用生地34は、通気性を有さない素材で形成してもよいが、この場合には、日除け布30の通気性がポケット用生地34によって阻害され、日除け布30と着用者の口元との間に外気が導入されにくくなったり、着用者の呼気が日除け布30の外側に逃げにくくなったりするおそれがある。このため、ポケット用生地34は、通気性を有する生地によって形成することが好ましい。特に、日除け布30を形成したメッシュ生地と同じ種類のメッシュ生地(色や素材や目付等が同じメッシュ生地)でポケット用生地34を形成することが好ましい。日除け布30は、メッシュ生地であるため、その内側が多少透けて見えるところ、ポケット用生地34を日除け布30と同じ種類のメッシュ生地で形成することで、ポケット用生地34を外側から目立ちにくくし、日除け付き帽子の見た目を良くすることができる。日除け布30を形成するメッシュ生地の仕様は、クラウン10を形成するメッシュ生地と同様であるため、説明を割愛する。
【0037】
ポケット用生地34の形状は、特に限定されないが、通常、矩形状に形成される。この矩形状のポケット用生地34の4辺(上縁、下縁、左縁及び右縁)のうち、3辺を日除け布30に縫着することで、保冷材用ポケットαを形成することができる。第一実施形態の日除け付き帽子では、矩形状のポケット用生地34の下縁、左縁及び右縁の3辺を日除け布30に縫着しており、ポケット用生地34の上縁が、保冷材用ポケットαの口部を形成するようにしている。このように、保冷材用ポケットαの口部を上向きとした場合には、その口部を閉じなくても、保冷材用ポケットαに収容された保冷材100が落ちないようにすることができる。ただし、第一実施形態の日除け付き帽子では、図5に示すように、保冷材用ポケットαの口部を閉じるための閉塞手段35を設けている。これにより、日除け布30が激しく揺れ動くことがあったとしても、保冷材100が保冷材用ポケットαから飛び出ないようにすることができる。閉塞手段35としては、面ファスナーやスナップボタン等が例示される。
【0038】
保冷材用ポケットαの寸法は、それに収容する保冷材100の寸法に応じて適宜決定される。具体的には、保冷材用ポケットαの上下幅及び左右幅は、保冷材100の上下幅及び左右幅よりも、ある程度大きく設定される。第一実施形態の日除け付き帽子においては、保冷材用ポケットαの上下幅を約13cmとし、保冷材用ポケットαの左右幅を約14cmとしており、日除け付き帽子の着用者における顎付近から目の下付近に至る範囲と、左頬から右頬に至る範囲とに保冷材用ポケットαが重なるようにしている。
【0039】
日除け布30は、その前方被覆部32が着用者の顔面の前方を覆った状態となるのであれば、その取り付け方法を特に限定されない。日除け布30は、クラウン10等に対して完全に固定してもよいし、着脱可能な状態で取り付けてもよい。第一実施形態の日除け付き帽子では、日除け布30をクラウン10等に縫着しており、日除け布30をクラウン10等から取り外すことができないようにしている。
【0040】
ところで、日除け布30(特に前方被覆部32)をクラウン10の下縁から真下に垂れ下がるようにすると、日除け布30の前方被覆部32が着用者の顔に近い位置で垂れ下がるようになる。このため、日除け布30が汗で顔に貼り付いて着用者が不快に感じるおそれがあるだけでなく、着用者が息苦しさを感じるようになるおそれもある。また、日除け布30を前鍔20の先端縁における前側区間(図1における点Qと点Qとの間の区間)に取り付けて、日除け布30がその部分から真下に垂れ下がるようにすると、日除け布30が着用者の顔から遠い位置で垂れ下がるようになる。このため、着用者が日除け布30を目障りに感じやすくなるだけでなく、日除け布30の重みが着用者に伝わりやすくなって、着用者が疲れを感じやすくなる。
【0041】
このため、第一実施形態の日除け付き帽子では、図1に示すように、日除け布30の前方被覆部32が、前鍔20における前後方向中途部分(同図における点Q及び点Q)から垂れ下がるようにしている。これにより、日除け布30の前方被覆部32が、着用者の顔に近づきすぎず、且つ、着用者の顔から離れすぎない位置で垂れ下がるようになっている。したがって、日除け布30が着用者の顔に貼り付きにくくするだけでなく、着用者が息苦しさを感じにくくすることも可能となっている。また、着用者が日除け布30を目障りに感じにくくするだけでなく、着用者が日除け布30の重みを感じにくくすることも可能となっている。
【0042】
日除け布30は、その上縁を前鍔20の下面側に固定することもできる。しかし、そうすると、日除け布30をしっかりと取り付けにくくなる。このため、第一実施形態の日除け付き帽子においては、日除け布30における側方被覆部33の上縁(図2における点Pと点Pとの間の区間P、及び、点Pと点Pとの間の区間P)を、クラウン10の下縁に縫着するとともに、そのうち、前方被覆部32の上縁における前寄りの区間(図2における点Pと点Qとの間の区間P、及び、点Pと点Qとの間の区間P)を、前鍔20の上面側で前鍔の基端縁(前鍔20とクラウン10との境界線)に沿って縫着している。
【0043】
日除け布30の側方被覆部33の上縁における前寄りの区間P,Pは、クラウン10の下縁と前鍔20の基端縁との間に挟み込んだ状態で縫着している。これにより、クラウン10の下縁と前鍔20の基端縁とを縫合する際に、それらの間に挟み込まれた日除け布30の上縁がクラウン10の下縁及び前鍔20の基端縁に縫合されるようになる。したがって、日除け布30の縫合工程を別途設ける必要がなくなり、日除け付き帽子の製造工程をシンプルにして、日除け付き帽子の製造コストを抑えることも可能となっている。
【0044】
前鍔挿入用開口部31は、前鍔20を突出させるだけの寸法があればよいが、第一実施形態の日除け付き帽子においては、図3及び図4に示すように、それに前鍔20を差し込んでも前鍔20の下側に余裕(開口部)ができる寸法で前鍔挿入用開口部31を形成している。具体的には、前鍔挿入用開口部31の上下幅を、前鍔20の上下幅よりも広く形成している。これにより、前鍔挿入用開口部31における前鍔20よりも下側に位置する部分を、着用者の目を出すための目出し用開口部として利用することが可能となっている。既に述べたように、第一実施形態の日除け付き帽子においては、日除け布30をメッシュ生地で形成したため、日除け布30に目出し用開口部を設けなくても、着用者は、日除け布30の外側の様子を視認することができるものの、日除け布30に目出し用開口部31を設けることによって、視認性をさらに良好にすることができる。

【0045】
2.第二実施形態の日除け付き帽子
続いて、第二実施形態の日除け付き帽子について説明する。第二実施形態の日除け付き帽子については、第一実施形態の日除け付き帽子と異なる構成に絞って説明する。第二実施形態の日除け付き帽子で特に言及しない構成については、第一実施形態の日除け付き帽子で述べたものと略同様の構成を採用することができる。図6は、第二実施形態の日除け付き帽子を側方から見た状態を示した側面図である。図7は、第二実施形態の日除け付き帽子を、図3におけるY-Y面で切断した状態を示した断面図である。
【0046】
第二実施形態の日除け付き帽子は、図6及び図7に示すように、クラウン10の側方における下縁に沿った箇所に、側方通気口βが設けられている。この側方通気口βは、外気A図7)をクラウン10の内側に取り込むための部分となっている。これにより、クラウン10にベンチレーション機能を付与し、日除け付き帽子をより快適に着用することが可能となっている。側方通気口βは、クラウン10に開口部を設けることによって設けてもよいが、第二実施形態の日除け付き帽子では、クラウン10の側方の下縁(図6における区間Q)を、その内側のビン皮50に対して縫着せずふらした状態とすることで、クラウン10とビン皮50との隙間が側方通気口βとして機能するようにしている。
【0047】
加えて、日除け布30の側方被覆部33の上縁における後寄りの区間Q図6)を、側方通気口βの内側で、クラウン10に対して取り付けている。側方被覆部33の上縁における後寄りの区間Qは、ビン皮50の外面側に取り付けてもよいが、第二実施形態の日除け付き帽子では、図7に示すように、クラウン10(クラウン表地)の内面側に取り付けている。これにより、側方被覆部33の上縁における後寄りの区間Qを見た目のよい状態でクラウン10に対して取り付けることが可能になる。側方被覆部33における取り付け部γ(図7)は、縫着してもよいが、面ファスナーやスナップボタン等の着脱可能な取り付け方法で取り付けることもできる。これにより、日除け布30が不要なときには、クラウン10から日除け布30を取り外すことが可能になる。
【0048】
ただし、日除け布30を取り外したときに、クラウン10の外側にビン皮50が露出すると、日除け付き帽子の見た目が悪くなる。このため、ビン皮50の外面側に、化粧メッシュ60を設けることが好ましい。化粧メッシュ60は、見栄えのよいメッシュ生地で形成される。化粧メッシュ60としては、ラッセルメッシュ生地やトリコットメッシュ生地等の経編メッシュ生地や、緯編メッシュ生地や、平織メッシュ生地や、綾織メッシュ生地や、朱子織メッシュ生地等が例示される。これらのメッシュ生地は、通常、ポリエステルやナイロン等の合成繊維や、綿等の天然繊維や、或いはこれらの複合繊維等を編製又は織製することによって形成される。

【0049】
3.用途
本発明の日除け付き帽子に係る構成は、その用途を特に限定されるものではなく、各種の帽子で採用することができる。なかでも、農作業時等に着用する作業帽で好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10 クラウン
20 前鍔
30 日除け布
31 前鍔挿入用開口部(目出し用開口部)
32 前方被覆部
33 側方被覆部
34 ポケット用生地
35 閉塞手段
40 アジャスター
50 ビン皮
60 化粧メッシュ
100 保冷材
外気
α 保冷材用ポケット
β 側方通気口
γ 取り付け部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7