(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】包装用容器
(51)【国際特許分類】
B65D 85/50 20060101AFI20240918BHJP
B65D 1/36 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
B65D85/50 100
B65D1/36
(21)【出願番号】P 2020179299
(22)【出願日】2020-10-27
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390041058
【氏名又は名称】シーピー化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺西 誠
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-128071(JP,A)
【文献】登録実用新案第3220321(JP,U)
【文献】特開2018-065618(JP,A)
【文献】特開2019-094090(JP,A)
【文献】特開2016-182988(JP,A)
【文献】特開2018-027790(JP,A)
【文献】特開2015-224040(JP,A)
【文献】特開2018-131218(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0129284(US,A1)
【文献】特開2016-145071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/50
B65D 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周壁の内側に設けた底部から底上げ状に隆起する食品の盛り付け部を有した包装用容器であって、
前記盛り付け部は、
前記食品を盛り付ける際の容器正面側から容器奥側に向かう前後方向に少なくとも二列が一定幅の空き間部を介して並設され、
各列の前記盛り付け部は、
断面台形状であり、前記容器正面側に対応して、前記食品からの滲出成分を流下可能な下り勾配を有して傾斜する食品載置部を備え、
前記食品載置部は、
前記食品載置部の表面に前記傾斜に沿って互いに平行する凸条部と凹溝部を交互に備
るとともに、前記盛り付け部の頂面および前記食品載置部とは反対面にも前記凸条部および前記凹溝部を連続して形成し、前記凹溝部が前記空き間部に通じるように備え、
前記空き間部は、中央から左右の前記底部に向けてそれぞれ下り勾配の傾斜部を有し、
前記周壁の上端には外側に伸びるフランジ部が周設され、該フランジ部のうち前記盛り付け部の左右に対応する前記フランジ部には、前記盛り付け部の頂面よりも上方に高く膨出するサイドガード部を設けた、
ことを特徴とする包装用容器。
【請求項2】
前記凸条部は、前記食品が接触する頂部を凹凸形状とした
請求項1記載の包装用容器。
【請求項3】
前記底部には、一段低く下方に膨出する凹状の脚部を備え、前記底部に流下した前記滲出成分を前記脚部に貯留可能とした
請求項1または2記載の包装用容器。
【請求項4】
前記盛り付け部は、前記容器正面側の最前列が一番低く、後列ほど高く盛り上がる請求項1から
3のうち何れか一項記載の包装用容器。
【請求項5】
請求項1
から4のうち何れか一項記載の包装用容器を容器本体として、該容器本体に嵌合によって装着可能な蓋体をさらに備える包装用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油分や水分を比較的多く含む食品を包装するのに適した樹脂製の包装用容器に係り、食品から滲出した水分や油分などで浸潤して食感や食味等の品質が低下することを防止する構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スーパーなどで販売される惣菜は合成樹脂シートを成形した包装用容器に収容され陳列されているが、時間が経つにつれ、食品から油分や水分などの成分が滲出し、こうした滲出成分が再付着(浸潤)することで食感や食味を損なうという問題がある。特に、衣のサクサク感が重要視されるコロッケや天ぷらなどの揚げ物で顕著である。
【0003】
そこで従来、容器底部に凸条部と凹溝部を交互に形成したトレイ容器が提案されている(特許文献1・2)。これら容器によれば、容器底部に食品を載置した際、凸条部(特許文献1のリブ、特許文献2の突条)によって油切りや水切りがされて、食品からの滲出成分は凹溝部(特許文献1の傾斜溝、特許文献2の谷部)を介して底部周囲等の油だまり(窪み)に排出され、食品に再付着することを防止できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-27790号公報
【文献】特開2018-65618号公報
【文献】特開2015-224040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1・2の容器では、例えばコロッケ5個をパックして販売するなど、一つの容器に何個もの食品を収容する場合、食品を重ねて盛り付けざるを得ないことが多い。この場合、食品同士が接触する部分で互いの油分や水分が浸潤し合い、これによっても食感や食味を損なうという課題が残されていた。特に、食品を上下に積み重ねて盛り付ける場合は、下にある食品が容易に浸潤するため、品質の維持が困難であった。
【0006】
他方、特許文献3には、容器の前後方法に食品の載置部を複数列並設し、各載置部の載置面を傾斜させることで、立体的な盛り付けが可能なトレイ容器が開示されているが、食品からの滲出成分をどう処理するかについては一切言及されていない。
【0007】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、食品を盛り付ける際に食品同士の重なりや接触を極力抑えて、油分や水分に代表される食品からの滲出成分が他の食品を浸潤しないように分離しつつ、分離した滲出成分の再付着をも防止する包装用容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した目的を達成するために本発明では、周壁の内側に設けた底部から底上げ状に隆起する食品の盛り付け部を有した包装用容器であって、前記盛り付け部は、前記食品を盛り付ける際の容器正面側から容器奥側に向かう前後方向に少なくとも二列が一定幅の空き間部を介して並設され、各列の前記盛り付け部は、前記容器正面側に対応して、前記食品から経時的に滲出する油分や水分等の滲出成分を流下可能な下り勾配を有して傾斜する食品載置部を備え、前記食品載置部は、その表面に前記傾斜に沿って互いに平行する凸条部と凹溝部を交互に備えるという手段を用いた。
【0009】
当該手段によれば、食品は各列の盛り付け部に盛り付けるため、列間では食品同士の接触(重なり)がなく、互いの滲出成分で浸潤し合うこともない。また、食品は盛り付け部における食品載置部に斜めに立て掛けるようにして盛り付けることになるので、食品からの滲出成分の大半は底部に流出し、再付着することがない。また、食品は凸条部と接触するのみで、凹溝部とは接触しないため、食品載置部で滲出成分が発生したとしても凹溝部に滞留し、または底部へと流下して、再付着を防止することができる。
【0010】
前記空き間部は、中央から前記底部に向けて下り勾配の傾斜部を有するものとすれば、当該空き間部に流れ込んだ滲出成分が底部へと導出されることで、滲出成分を食品から確実に分離することができる。
【0011】
食品は上述のように食品載置部に斜めに立て掛けられるため、前記凸条部は、前記食品が接触する頂部を凹凸形状とすれば、食品のずり落ちを抑制する滑り止め効果が得られ、当初の盛り付け状態を維持すると共に、分離した滲出成分との接触も防止することができる。
【0012】
一方、食品は斜めに立て掛けるので前に倒れ込むことはないが、左右へのスライドや転倒は規制されない。そこで、前記周壁の上端には外側に伸びるフランジ部が周設され、該フランジ部のうち前記盛り付け部の左右に対応する前記フランジ部には、前記盛り付け部の頂面よりも上方に高く膨出するサイドガード部を設けることで、上述した移動が規制され、当初の盛り付け状態をより確実に維持することができる。
【0013】
また、前記盛り付け部は、断面台形状とすることで、盛り付け部の強度を保持でき、その頂面および前記食品載置部とは反対面にも前記凸条部および前記凹溝部を連続して形成することで、滲出成分の底部への排出経路を増やすことができる。
【0014】
さらに、前記底部は、一段低く下方に膨出する脚部を備え、前記底部に流下した前記滲出成分を前記脚部に貯留可能とすることで、容器を多少傾けたとしても、脚部に貯留した滲出成分が底部に逆流することがなく、食品との分離状態をより確実に保持することができる。
【0015】
なお、前記盛り付け部は、前記容器正面側の最前列が一番低く、後列ほど高く膨出することで、全ての盛り付け部を同じ高さとするよりも、後列の食品の視認性が高まると同時に、ボリューム感に富んだ盛り付け態様となる。
【0016】
ここまでの手段における包装用容器を容器本体として、該容器本体に嵌合によって装着可能な蓋体をさらに備えることで、食品を衛生的に保持することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、例えば油分を豊富に含む天ぷらやフライ物などを陳列する場合であっても、食品同士の接触が少なく、また、食品からの滲出成分を確実に食品から分離することができるため、購入者が食事に供するまで最適な状態を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に係る包装用容器の斜視図
【
図7】同包装用容器を容器本体として蓋体と共に示した正面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。
図1~
図5は、本発明の一実施形態に係る包装用容器を示したもので、後述するように、蓋体を備える場合に容器本体として機能するものであるから、説明の便宜上、容器本体と称して説明する。この容器本体は、一例として四辺を周壁1で囲った平面視矩形状であり、周壁1の内側には、底部2を介して第一の盛り付け部3と第二の盛り付け部4が上方に膨出するように設けられている。第一盛り付け部3と第二盛り付け部4は、それぞれ食品を盛り付ける部分であり、構造的には、食品を盛り付ける際の容器正面側から容器奥側に向かって前後二列に並列に設けられている。
【0020】
また、第一盛り付け部3と第二盛り付け部4は、後述するように、手前側の第一盛り付け部3よりも奥側の第二盛り付け部4を底部からの高さを大きくしたという違いはあるが、そのほかの基本的な構造は両者3・4で同じである。
【0021】
すなわち、両盛り付け部3・4とも、
図3~5に示すように、断面台形状をなしており、容器正面側の斜面を食品Fの載置部3a・4aとしている。この食品載置部3a・4aは、食品Fから滲出した油分や水分などの滲出成分を底部側に流下可能な下り勾配で傾斜している。ただし、具体的な角度までを限定するものではなく、図示した角度よりも大きくても小さくてもよい。
【0022】
そして、食品載置部3a・4aは、その表面に傾斜に沿って凸条部3b・4bと凹溝部3c・4cとを互いに平行して交互に複数組設けている。また、この実施形態では、凸条部3b・4bと凹溝部3c・4cを、食品載置部3a・4aから連続して、盛り付け部3・4の頂面3d・4dおよび背面3e・4eにまで形成している。
【0023】
さらに、この実施形態では、食品載置部3a・4aに表出する凸条部3b・4bの頂部に、左右両端が開放された横溝3f・4fを等間隔に設け、当該頂部を凹凸形状としている。
【0024】
上記構成によれば、食品Fは第一盛り付け部3と第二盛り付け部4とに分けて盛り付けられるため、両盛り付け部3・4間で食品F同士が接触することがない。したがって、食品F同士で互いの滲出成分で浸潤し合うことがない。
【0025】
また、食品Fは食品載置部3a・4aそれぞれに斜めに立て掛けるようにして盛り付けられる。このとき、食品Fは食品載置部3a・4aに対しては凸条部3b・4bとのみ接触した状態で立て掛けられる。また、凸条部3b・4bの表面凹凸によって、ずり落ちが抑制される。
【0026】
このように盛り付けられた食品Fから経時的に油分や水分が滲出した場合、食品Fの下端から滲出するものは、第一盛り付け部3の食品Fにあっては当該下端を下支えする周壁1、第二盛り付け部4の食品Fにあっては当該下端を下支えする第一盛り付け部3の背面3eを伝って流下する。また、食品載置部3a・4aと接触する範囲にあっては、凹溝部3c・4cに滲出成分が流れ込み、当該食品載置部3a・4aが有する下り勾配によって流下する。したがって、滲出成分は食品Fから効果的に分離され、再付着することがない。
【0027】
ここで、第一盛り付け部3と第二盛り付け部4との間には、一定幅の空き間部5を設けている。したがって、第二盛り付け部4に盛り付けた食品Fからの滲出成分の多くは凹溝部4cを伝って当該空き間部5に流下することになる。そして、この実施形態では、この空き間部5に、
図6に示したように、その左右それぞれに中央から底部2にかけて下り勾配の傾斜部5aを設けたので、空き間部5に流下した滲出成分は傾斜部5aによって底部2へと流出することになり、より確実に食品Fへの再付着が防止される。
【0028】
さらに、この実施形態では、底部2の四隅それぞれに、一段低く下方に膨出する脚部6を設けているので、底部2に流入した滲出成分は最終的にはこの脚部6に貯留することが可能となり、底部2からの逆流によって滲出成分が食品Fに再付着することもなくなる。
【0029】
なお、盛り付けた食品Fの見栄えを良くするために、この実施形態では、前列に位置する第一盛り付け部3の底部2からの高さH1(脚部6からの高さであっても技術的に同義)よりも、後列の位置する第二盛り付け部4の底部2からの高さH2を大きくしている。よって、後列である第二盛り付け部4に盛り付けた食品Fの視認性が高まると同時に、全体としてボリューム感に富んだ盛り付け態様となる。
【0030】
さらに、この実施形態では、当該包装用容器を容器本体として蓋体7を適用するために、周壁2の外側にフランジ部8を介して蓋体7との嵌合部9(外嵌合)を設けている。これによって、食品Fを衛生的に保持することができる。
【0031】
また、左右のフランジ部8にはサイドガード部10を上方に膨出して設けている。このサイドガード部10は脚部6からの高さH3(底部2からの高さであっても技術的に同義)を第二盛り付け部4の高さH2よりも大きくしている。したがって、容器を左右に傾けるなどして食品Fが左右に変位しようとしてもサイドガード部10によって規制され、当初の盛り付け状態が保持される。
【0032】
なお、本発明は上記実施形態の構成に限定されるものではなく、少なくとも前後二列の盛り付け部を空き間部を介して設け、それぞれの食品載置部の表面に凸条部と凹溝部を形成したものであれば、それ以外の細部については自由に採否を決定することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 周壁
2 底部
3 第一盛り付け部
4 第二盛り付け部
3a・4a 食品載置部
3b・4b 凸条部
3c・4c 凹溝部
3d・4d 頂面
3e・4e 背面
3f・4f 横溝
5 空き間部
5a 傾斜部
6 脚部
7 蓋体
8 フランジ部
9 嵌合部
10 サイドガード部