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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】太陽光発電パネルの破損検査装置
(51)【国際特許分類】
   H02S 50/00 20140101AFI20240918BHJP
   G01N 21/88 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
H02S50/00
G01N21/88 J
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020184468
(22)【出願日】2020-11-04
(65)【公開番号】P2022074434
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】591012680
【氏名又は名称】柳井電機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126712
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 督生
(72)【発明者】
【氏名】澤田 耕二
(72)【発明者】
【氏名】仲野 公敏
(72)【発明者】
【氏名】倉重 知行
(72)【発明者】
【氏名】清家 雅史
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-134616(JP,A)
【文献】特開2017-215239(JP,A)
【文献】特開2010-135446(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0363054(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0094500(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02S 50/00-50/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の太陽光発電パネルを備える太陽光発電装置を上空から撮像した撮像画像を記憶する記憶部と、
前記撮像画像から、前記複数の太陽光発電パネルのそれぞれの外形特徴を抽出する外形特徴抽出部と、
前記撮像画像から、破損していない太陽光発電パネルから得られる外形特徴である理想外形を抽出する理想外形抽出部と、
前記外形特徴と前記理想外形とを比較する比較部と、
前記比較部での比較に基づいて、前記外形特徴を有する前記太陽光発電パネルの構造状態での物理的破損を検出する検出部と、を、備え、
前記複数の太陽光発電パネルの内、物理的破損を生じている太陽光発電パネルを特定可能であり、
前記外形特徴は、前記太陽光発電パネルの外枠、面積および明度の少なくとも一つを含み、
前記検出部は、前記太陽光発電パネルの前記外形特徴における面積が、前記理想外形における面積と相違する場合には、前記太陽光発電パネルに前記物理的破損が生じていると検出する、太陽光発電パネルの破損検査装置。
【請求項2】
前記構造状態での物理的破損(以下、「物理的破損」と略す)は、前記太陽光発電パネルの土台からの落下、崩落、破壊および変形の少なくとも一つを含む、請求項1記載の太陽光発電パネルの破損検査装置。
【請求項3】
前記理想外形は、前記撮像画像に含まれる前記物理的破損を生じていない前記太陽光発電パネルから抽出される外形特徴、および、前記太陽光発電装置での破損発生前に撮像された事前撮像画像から得られる前記太陽光発電パネルから抽出される外形特徴、の少なくとも一方を含む、請求項1または2記載の太陽光発電パネルの破損検査装置。
【請求項4】
前記検出部は、前記太陽光発電パネルの前記外形特徴における外枠が、前記理想外形における外枠と相違する場合には、前記太陽光発電パネルに前記物理的破損が生じていると検出する、請求項1記載の太陽光発電パネルの破損検査装置。
【請求項5】
前記検出部は、前記太陽光発電パネルの前記外枠が、前記撮像画像に含まれる他の太陽光発電パネルの前記外枠と相違する場合、もしくは前記事前撮像画像に含まれる前記太陽光発電パネルに対応する太陽光発電パネルの前記外枠と相違する場合、においては、前記太陽光発電パネルに前記物理的破損が生じていると検出する、請求項記載の太陽光発電パネルの破損検査装置。
【請求項6】
前記検出部は、前記太陽光発電パネルの前記外形特徴における明度が、前記理想外形における明度と相違する場合には、前記太陽光発電パネルに前記物理的破損が生じていると検出する、請求項1記載の太陽光発電パネルの破損検査装置。
【請求項7】
前記外形特徴抽出部は、
前記撮像画像の周波数変換画像から得られる境界に基づいて、前記外枠を抽出し、
前記撮像画像での面積算出処理に基づいて、前記面積を抽出し、
前記撮像画像の輝度成分に基づいて、前記明度を抽出する、請求項記載の太陽光発電パネルの破損検査装置。
【請求項8】
前記検出部で検出された前記物理的破損を、対応する前記太陽光発電パネルの位置情報と併せて通知する通知部を更に備える、請求項1から7のいずれか記載の太陽光発電パネルの破損検査装置。
【請求項9】
前記撮像画像は、飛行体により、前記太陽光発電装置の上空から撮像される、請求項1から8のいずれか記載の太陽光発電パネルの破損検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光発電パネルの構造状態での破損を、上空からの撮像画像によって検出できる、太陽光発電パネルの破損検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
いずれの国においても、文明的な生活を形作るために、電力を生成する必要がある。この電力生成のために、水力発電、火力発電、原子力発電などが行われており、これらの発電所が整備されている。一方で、近年の環境保護意識の高まり、地球温暖化対応のための二酸化炭素排出削減、化石燃料の使用量削減などの状況により、再生可能エネルギーを用いた発電が普及しつつある。
【0003】
この再生可能エネルギーによる発電の一つとして太陽光発電がおこなわれるようになっており、我が国を始めとして、各国で普及し始めている。普及率の高い国や地域においては、発電量全体の数割程度を賄うまでになっている。太陽光発電装置が様々な場所に設置され、太陽光発電が実現されている。
【0004】
このような太陽光発電の普及の進み始めている国では、多数の太陽光発電パネルを同じ地域に並べて、メガワット級の大きな電力を生成するメガソーラーなどが設置されるようになっている。このメガソーラーのような大型太陽光発電装置が設置されて、従来型の発電所に匹敵するほどの電力を生成するようになってきている。
【0005】
メガソーラーのような大型太陽光発電装置は、非常に数多くの太陽光発電パネルを備える。近年の太陽光発電パネルの価格低下によって、数多くの太陽光発電パネルを組み合わせる大型太陽光発電装置が実現できるようになっている。
【0006】
このような大型太陽光発電装置は、数1000枚以上の太陽光発電パネルが組み合わされて構成される。多数の太陽光発電パネルが整列して設置され、それぞれが電気的に接続される。また、必要な区画ごとでパワーコンディショナーや蓄電池が設けられ、発電した電力を効率的に取り出すことができるようになっている。
【0007】
このような構成を有する大型太陽光発電装置は、空き地に設置されることが多い。しかしながら我が国を始めとして多くの国や地域では、広大な平野が余っていないことが多い。このため、平野部であって周囲に建造物がある中で、余っている隙間の空き地などが活用されることが多い。あるいは山間部の窪地が活用されることがある。あるいは、工場の跡地、駅の跡地などのまとまった広さのある跡地が活用されることがある。
【0008】
このような隙間の空き地に、大型太陽光発電装置が設置される傾向がある。上述の通り、メガソーラーのような大型太陽光発電装置は、多くの太陽光発電パネルを使用する。結果として、隙間のような空き地に、非常に大きな領域を占める大型太陽光発電装置が設置される。
【0009】
太陽光発電装置は、これを構成する太陽光発電パネルのそれぞれが正常かつ適切に動作することで、最適な発電を実現できる。太陽光発電パネルのいずれかが劣化、故障、誤動作すると、太陽光発電装置は、最適な発電を実現できない。例えば、発電量が著しく落ちたり、発電が困難になったりする。
【0010】
特に、大型の太陽光発電装置に含まれる多数の太陽光発電パネルのいずれかに破損があると、太陽光発電装置全体での動作に不具合が出ることがある。あるいは、太陽光発電装置全体での発電能力が低下するなどの問題が生じる。
【0011】
現状では、太陽光発電パネルの一つ一つを、作業員が目視で検査している状態がある。しかしながら、上述のように、太陽光発電装置には大量の太陽光発電パネルが設置されており、これらすべてを目視で検査することは困難である。また、目視では、ガラス部材のひび割れなどを見つけるのが難しい問題もある。
【0012】
加えて、太陽光発電パネルは、山間部や湖面などの隙間地に設置されており、作業者が現場において目視で確認することが難しい状態がある。山間部の斜面を登って行かなければならなかったり、広大な敷地を歩いて確認しなければならなかったりするからである。このような場所に作業員が赴くのは、非常な危険を伴うことになる問題もある。
【0013】
一方で、太陽光発電パネルのガラス部材の破損を早期に発見できることは、太陽光発電装置の維持、管理(メンテナンス)において好適である。太陽光発電装置全体での継続的かつ最適な発電を維持するためである。
【0014】
このような状況において、太陽光発電パネルを検査する技術が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】特開2018-157726号公報
【文献】特開2019-52954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
特許文献1は、太陽電池劣化検出装置を、樹脂劣化を施された複数の太陽電池モジュールを計測、および太陽電池モデル式のパラメータフィッティングにより得られた絶縁抵抗値とシャント抵抗値に基づいて、シャント抵抗-絶縁抵抗座標平面上の回帰直線の傾きをシャント抵抗と絶縁抵抗の間の比例定数として算出して登録する比例定数算出部と、評価対象の太陽電池モジュールを計測して得られた絶縁抵抗値と、登録されている前記比例定数よりシャント抵抗値を算出し、太陽電池モデル式より導かれたモジュール出力-シャント抵抗特性より前記評価対象太陽電池モジュールのモジュール出力劣化量を検出するモジュール出力劣化検出部とを備えて構成する太陽電池劣化検出装置を開示する。
【0017】
特許文献1は、太陽光発電装置に含まれる太陽光発電パネルの電気的不具合や電気的故障を検出する。しかしながら、太陽光発電パネルは、山間部、傾斜地、湖面、隙間の土地など不便な場所に設置されていることが多い。後述するように、このような場所に設置される太陽光発電パネルは、台風、豪雨、土砂災害、地震などの災害による被害を受けることが多い。
【0018】
このような災害による被害では、複数の太陽光発電パネルが組み合わされた太陽光発電装置において、幾つかの太陽光発電パネルが破壊されたり、土台から崩れ落ちたりなどの構造状態の物理的な破損が生じる。
【0019】
特許文献1は、このような太陽光発電パネルの構造状態の物理的破損を検査することができない問題がある。
【0020】
特許文献2は、無人航空機1は、撮影により得られた撮影画像をステーション端末2に送信し、ステーション端末2は、撮影画像をサーバ装置3に転送し、サーバ装置3は、撮影画像を受信すると、画像解析部が、撮影画像中の異常領域を特定し、過去の画像解析結果を参照しつつ異常の態様を特定する。サーバ装置3は、異常領域であるか否かを、RGB値の閾値との比較で特定し、異常領域の異常の態様を、当該異常領域の大きさ及び形状に基づいて特定する検査システムを開示する。
【0021】
特許文献1は、太陽光発電パネルに生じているホットスポットを検出するに過ぎない。太陽光発電パネルにおいて、電気的不具合などを起因とするホットスポットを検出することができるとしても、上述のような災害などにより生じた太陽光発電パネルの構造状態の物理的破損を検査することはできない。
【0022】
我が国をはじめとして、太陽光発電を再生可能エネルギーとして使用する場合には、山間部、傾斜地、隙間の土地、湖面などの不便な場所に太陽光発電パネルが設置されることが多い。このような土地では、台風、豪雨、土砂災害、地震などの被害を受けやすいことが多い。例えば、豪雨による河川氾濫や土砂崩れによって、土地の一部が流されたり変形したりすることが生じやすい特徴がある。
【0023】
また、このような土地は、作業員が作業のために赴くのが大変であったり、作業をすることが困難であったりする特徴がある。
【0024】
前者の特徴のため、このような土地に設置されている太陽光発電装置(複数の太陽光発電パネルから構成される)では、このような災害などによって、少なくとも一部の太陽光発電パネルが土台から落ちたり、崩れたり、破壊されたり、変形したりするなどの破損を受ける可能性がある。すなわち構造状態の物理的破損が生じる。このような構造状態の物理的破損が生じると、破損している太陽光発電パネルの発電機能は失われてしまう。結果として、この太陽光発電パネルにより構成される太陽光発電装置の発電能力が低減する問題が生じる。
【0025】
また、太陽光発電パネルが物理的に破損している状態は、太陽光発電パネルが崩れ落ちてくるなどの二次災害に繋がる問題もある。あるいは、環境への悪影響につながる懸念もある。このため、物理的破損している太陽光発電パネルを放置することは、周辺の住民にとってのリスクにつながったり環境負荷に繋がったりする問題がある。
【0026】
一方で、後者の特徴(作業員が赴きにくい、あるいは作業しにくい)のため、このような土地で生じる可能性のある太陽光発電パネルの物理的破損を、作業員が人的作業で確認することは困難である問題もある。
【0027】
特許文献1、2は、このような問題に対応できない。すなわち、物理的破損を検査することができない問題を有している。いずれの技術も、電気的不具合やホットスポットの検査を行うにすぎないからである。
【0028】
また、特許文献2にあるような、上空からの太陽光発電パネルの撮像を応用しようとしても、太陽光発電パネルの構造状態の物理的破損を検査するには、作業員が撮像画像を目視で検査する必要がある。すなわち、上空から撮像された太陽光発電装置の撮像画像を、作業員が目視で確認しながら、物理的破損を探さなければならない。
【0029】
太陽光発電装置は、多数の太陽光発電パネルを備えており、作業員の目視作業は非常に大変であるばかりでなく、精度や効率の面でも好ましくない。すなわち、特許文献1,2などの先行技術では、太陽光発電パネルの物理的破損を検査することができない問題があった。
【0030】
本発明は、太陽光発電装置にそなわる複数の太陽光発電パネルにおける、構造状態の物理的破損を効率的かつ高い精度で検査できる、太陽光発電パネルの破損検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
上記課題に鑑み、本発明の太陽光発電パネルの破損検査装置は、複数の太陽光発電パネルを備える太陽光発電装置を上空から撮像した撮像画像を記憶する記憶部と、
前記撮像画像から、複数の太陽光発電パネルのそれぞれの外形特徴を抽出する外形特徴抽出部と、
撮像画像から、破損していない太陽光発電パネルから得られる外形特徴である理想外形を抽出する理想外形抽出部と、
外形特徴と理想外形とを比較する比較部と、
比較部での比較に基づいて、外形特徴を有する太陽光発電パネルの構造状態での物理的破損を検出する検出部と、を、備え、
複数の太陽光発電パネルの内、物理的破損を生じている太陽光発電パネルを特定可能であり。
前記外形特徴は、前記太陽光発電パネルの外枠、面積および明度の少なくとも一つを含み、
前記検出部は、前記太陽光発電パネルの前記外形特徴における面積が、前記理想外形における面積と相違する場合には、前記太陽光発電パネルに前記物理的破損が生じていると検出する

【発明の効果】
【0032】
本発明の太陽光発電パネルの破損検査装置は、上空から撮像された撮像画像から、太陽光発電パネルの外形特徴を抽出することで、物理的破損を検出することができる。例えば、太陽光発電パネルが土台から落ちたり、崩れたり、破壊されたり、変形したりしている状態を、構造状態の物理的破損として検出できる。
【0033】
また、外形特徴は画像処理により抽出されて、その外形特徴に異常があれば、物理的破損を自動検出できる。このため、作業員が撮像画像を目視検査するなどの手間や負担が軽減する。勿論、作業員が太陽光発電装置の設置現場に赴いて検査作業する手間も省ける。これらの結果、検査精度が高まると共に、人的負担や危険負担が低減できる。
【0034】
また、太陽光発電パネルの構造状態の物理的破損が検査されることで、災害発生後に生じた物理的破損のある太陽光発電パネルの除去などを早期に行うことができる。これにより、二次災害なども防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】設置されている太陽光発電装置の一例を示す写真である。
図2】設置されている太陽光発電装置の一例を示す写真である。
図3】本発明の実施の形態1における太陽光発電装置の撮像を示す模式図である。
図4】本発明の実施の形態1における太陽光発電パネルの破損検査装置のブロック図である。
図5】本発明の実施の形態1における外形特徴を説明する説明図である。
図6】本発明の実施の形態1における外形特徴の内で外枠に基づいた物理的破損を検出する模式図である。
図7】本発明の実施の形態1における事前撮像画像の模式図である。
図8】本発明の実施の形態1における面積を外形特徴として物理的破損を検出することを示す模式図である。
図9】本発明の実施の形態1における明度を外形特徴として物理的破損を検出することを示す模式図である。
図10】本発明の実施の形態2における太陽光発電パネルの破損検査装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の第1の発明に係る太陽光発電パネルの破損検査装置は、複数の太陽光発電パネルを備える太陽光発電装置を上空から撮像した撮像画像を記憶する記憶部と、
撮像画像から、複数の太陽光発電パネルのそれぞれの外形特徴を抽出する外形特徴抽出部と、
撮像画像から、破損していない太陽光発電パネルから得られる外形特徴である理想外形を抽出する理想外形抽出部と、
外形特徴と理想外形とを比較する比較部と、
比較部での比較に基づいて、外形特徴を有する太陽光発電パネルの構造状態での物理的破損を検出する検出部と、を、備え、
複数の太陽光発電パネルの内、物理的破損を生じている太陽光発電パネルを特定可能である。
【0037】
この構成により、人的作業を低減して、容易かつ確実に太陽光発電パネルの物理的破損を検出できる。
【0038】
本発明の第2の発明に係る太陽光発電パネルの破損検査装置では、第1の発明に加えて、構造状態での物理的破損(以下、「物理的破損」と略す)は、太陽光発電パネルの土台からの落下、崩落、破壊および変形の少なくとも一つを含む。
【0039】
この構成により、災害等で被害を受けることによる物理的破損を、的確に検査できる。結果として、災害後の太陽光発電パネルの問題を早期に検出でき、早期復旧や二次災害防止などが図られる。
【0040】
本発明の第3の発明に係る太陽光発電パネルの破損検査装置では、第1または第2の発明に加えて、外形特徴は、太陽光発電パネルの外枠、面積および明度の少なくとも一つを含む。
【0041】
この構成により、容易かつ確実な手段で、物理的破損を検出できる。特に、画像処理により物理的破損を見出しやすい外形特徴による検出であることで、検出精度を上げることができる。
【0042】
本発明の第4の発明に係る太陽光発電パネルの破損検査装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、理想外形は、撮像画像に含まれる物理的破損を生じていない太陽光発電パネルから抽出される外形特徴、および、太陽光発電装置での破損発生前に撮像された事前撮像画像から得られる太陽光発電パネルから抽出される外形特徴、の少なくとも一方を含む。
【0043】
この構成により、物理的破損を検出する基準として、最適なものを基準とできる。
【0044】
本発明の第5の発明に係る太陽光発電パネルの破損検査装置では、第3または第4の発明に加えて、検出部は、太陽光発電パネルの外形特徴における外枠が、理想外形における外枠と相違する場合には、太陽光発電パネルに物理的破損が生じていると検出する。
【0045】
この構成により、確実に物理的破損を検出できる。
【0046】
本発明の第6の発明に係る太陽光発電パネルの破損検査装置では、第5の発明に加えて、検出部は、太陽光発電パネルの外枠が、撮像画像に含まれる他の太陽光発電パネルの外枠と相違する場合、もしくは事前撮像画像に含まれる太陽光発電パネルに対応する太陽光発電パネルの外枠と相違する場合、においては、太陽光発電パネルに物理的破損が生じていると検出する。
【0047】
この構成により、確実に物理的破損を検出できる。
【0048】
本発明の第7の発明に係る太陽光発電パネルの破損検査装置では、第3または第4の発明に加えて、検出部は、太陽光発電パネルの外形特徴における面積が、理想外形における面積と相違する場合には、太陽光発電パネルに物理的破損が生じていると検出する。
【0049】
この構成により、破壊などに基づく物理的破損を確実に検出できる。
【0050】
本発明の第8の発明に係る太陽光発電パネルの破損検査装置では、第3または第4の発明に加えて、検出部は、太陽光発電パネルの外形特徴における明度が、理想外形における明度と相違する場合には、太陽光発電パネルに物理的破損が生じていると検出する。
【0051】
この構成により、崩落や傾きなどによる物理的破損を、確実に検出できる。
【0052】
本発明の第9の発明に係る太陽光発電パネルの破損検査装置では、第3の発明に加えて、外形特徴抽出部は、
撮像画像の周波数変換画像から得られる境界に基づいて、外枠を抽出し、
撮像画像での面積算出処理に基づいて、面積を抽出し、
撮像画像の輝度成分に基づいて、明度を抽出する。
【0053】
この構成により、外形特徴を、画像処理によって抽出できる。これらの外形特徴は、物理的破損を検出するのに適している。
【0054】
本発明の第10の発明に係る太陽光発電パネルの破損検査装置では、第1から第9の発明に加えて、検出部で検出された物理的破損を、対応する太陽光発電パネルの位置情報と併せて通知する通知部を更に備える。
【0055】
この構成により、物理的破損の結果を早期に把握できる。結果として復旧などを早期に行える。
【0056】
本発明の第11の発明に係る太陽光発電パネルの破損検査装置では、第1から第10の発明に加えて、撮像画像は、飛行体により、太陽光発電装置の上空から撮像される。
【0057】
この構成により、太陽光発電パネルの物理的破損を確実に検出できる。特に外形特徴を確実に抽出できる。
【0058】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0059】
(太陽光発電装置)
本発明の太陽光発電パネルの破損検査装置(以下、必要に応じて「破損検査装置」と略す)は、地上、湖面、水面、建造物の上、傾斜地、隙間の土地、山間部、辺境地など、様々な場所に設置されている太陽光発電装置に含まれる太陽光発電装置に備わる複数の太陽光発電パネルを、その検査対象とする。小規模の太陽光発電装置や、メガソーラーなどと呼ばれる大規模の太陽光発電装置に、複数の太陽光発電パネルが備わる。
【0060】
図1図2は、設置されている太陽光発電装置の一例を示す写真である。地形に応じて、このような不定形の太陽光発電装置100となることもある。また、太陽光発電装置100は、これを構成する太陽光発電パネル200の数によって、その発電量が決まるので、多くの太陽光発電パネル200を含む状態としたい。このため、大規模な太陽光発電装置100が、複雑な地形において設置される傾向がある。
【0061】
また、図1図2に示されるように、太陽光発電装置100は、複数の太陽光発電パネル200を備えている。発電能力を高めるために、多数の太陽光発電パネル200を必要とするからである。
【0062】
上記のような辺鄙な場所に設置されている太陽光発電装置100の構造状態の物理的破損を作業員が現場に赴いて検査するのは困難である。傾斜地や山間部などの作業危険地帯であるからである。構造状態の物理的破損が生じるのは、台風、豪雨、土砂災害、地震などの災害の後である。このような災害後に、作業員が現地に赴くことは、大変な危険を伴う上、人命尊重の点からも好ましくない。
【0063】
一方で、図1のように多数の太陽光発電パネル200が備わっているので、上空からドローンなどで撮像した画像を、作業員が目視で確認して物理的破損を探すことも非現実的である。
【0064】
本発明は、このような場所に設置されていることの多い太陽光発電装置100に含まれる太陽光発電パネル200の、構造状態の物理的破損を検出できる。すなわち、複数の太陽光発電パネル200の中で、物理的破損を生じている太陽光発電パネル200を検出することができる。あるいは、ある特定の太陽光発電パネル200の物理的破損の発生の有無を検出することができる。
【0065】
ここで、太陽光発電パネル200の構造状態の物理的破損とは、太陽光発電パネルの土台からの落下、崩落、破壊および変形の少なくとも一つを含む。
【0066】
(実施の形態1)
【0067】
(撮像画像の撮像)
図3は、本発明の実施の形態1における太陽光発電装置の撮像を示す模式図である。図3では、飛行体300が、太陽光発電装置100を撮像している状態が示されている。飛行体300は、例えばドローンと呼ばれる無人飛行隊であればよい。このような飛行体300が、太陽光発電装置100の上空を飛行することで、太陽光発電装置100を撮像できる。
【0068】
撮像された撮像画像は、無線通信や記憶媒体などを介して、後述する記憶部に転送される。この太陽光発電装置100の撮像画像は、太陽光発電装置100に含まれる複数の太陽光発電パネル200を含んでいる。1枚の撮像画像に、太陽光発電装置100に含まれるすべての太陽光発電パネル200が含まれてもよいし、一部の太陽光発電パネル200が含まれてもよい。
【0069】
上述したように、太陽光発電装置100は、山間部、傾斜地、へき地、飛び地などの不便な場所に設置されていることが多い。飛行体300による上空からの撮像によって、このような場所でも、容易かつ確実に太陽光発電装置100の撮像画像が得られる。
【0070】
この撮像画像に基づいて、太陽光発電パネルの破損検査装置は、太陽光発電パネルの物理的破損を検査する。
【0071】
(全体概要)
図4は、本発明の実施の形態1における太陽光発電パネルの破損検査装置のブロック図である。破損検査装置1は、記憶部2、外形特徴抽出部3、比較部4、検出部5、理想外形抽出部6と、を備える。
【0072】
記憶部2は、太陽光発電装置100を上空から撮像した撮像画像10を記憶する。上述したように、飛行体300により撮像された撮像画像10が、記憶される。記憶部2は、読み書き可能であり、記憶している撮像画像10が読み出されることを可能とする。
【0073】
記憶部2は、破損検査装置1の内部に備わってもいいし、ネットワークで接続される記憶機能を有するデバイスでもよい。例えば、クラウド上に備わるメモリーデバイスでもよい。このため、記憶部2が、破損検査装置1と物理的に一体であったり接続されていたりすることは必須ではない。
【0074】
外形特徴抽出部3は、記憶部2から読み出した撮像画像10から、複数の太陽光発電パネル200のそれぞれの外形特徴を抽出する。後で詳述するが、外形特徴とは、太陽光発電パネル200の外枠、面積および明度の少なくとも一つを含む。
【0075】
図2に示されるように、太陽光発電パネル200は、一定の形状と大きさを有している。このような形状や大きさを有していることで、撮像画像を画像処理することで、外枠、面積、明度を外形特徴として抽出することができる。図5は、本発明の実施の形態1における外形特徴を説明する説明図である。
【0076】
図5では、撮像画像10に複数の太陽光発電パネル200が含まれている。太陽光発電パネル200のそれぞれは、一定の形状や大きさを有している。このため、図5の右上に示すように、画像処理することで、外枠210を抽出することができる。この外枠210は、太陽光発電パネル200の外枠にフォーカスした形態であり、外形特徴の一つである。撮像画像10を、周波数変換画像に変換することで、太陽光発電パネル200の境界(エッジ)を検出することができる。この検出により、外枠210が抽出できる。
【0077】
あるいは、図5の左上のように、撮像画像10からある太陽光発電パネル200の面積220を算出できる。例えば、外枠210に基づいた積分計算などの処理が施されることで、面積220が算出できる。この面積も外形特徴の一つである。
【0078】
あるいは、図5の左下のように、撮像画像10の画像処理によって、ある太陽光発電パネル200の明度(反射明度)を算出することができる。例えば、撮像画像10を輝度画像に変換することで、太陽光発電パネル200の明度を算出することができる。この明度も外形特徴の一つである。
【0079】
このようにして、外形特徴抽出部3は、撮像画像10から太陽光発電パネル200の外形特徴を抽出する。
【0080】
理想外形抽出部6は、撮像画像10から、破損していない太陽光発電パネルの外形特徴である理想外形を抽出する。すなわち、物理的破損の検査を行うために、撮像画像10から抽出されたある太陽光発電パネル200の外形特徴の基準として、理想外形は取り扱われる。基準とされることで、この理想外形と外形特徴が比較される。この比較によって、検査対象としている撮像画像10の中に含まれる太陽光発電パネル200の構造状態の物理的破損を検出できるようになる。
【0081】
比較部4は、外形特徴と、破損していない太陽光発電パネル200から得られる外形特徴である理想外形とを比較する。すなわち、比較部4は、外形特徴抽出部3から抽出された外形特徴と、理想外形抽出部6から抽出された理想外形とを比較する。
【0082】
このとき、比較されるのは、太陽光発電パネル200の外形特徴と理想外形である。これにより、同じ太陽光発電パネル200において、外形特徴が理想外形と異なる場合には、検査対象となる太陽光っ発電パネル200において物理的破損が生じていると判断される。
【0083】
検出部5は、比較部4での比較結果に基づいて、比較された太陽光発電パネル200の構造状態での物理的破損を検出する。構造状態での物理的破損は、上述した通り、太陽光発電パネル200の土台からの落下、崩落、破壊および変形の少なくとも一つを含む。すなわち電気的な故障や、電気的故障の指標となりうるホットスポットなどを検出するのではなく、災害等によって生じる構造状態に基づく破損を検出する。
【0084】
また、検出部5は、撮像画像10に含まれる太陽光発電パネル200の内、どの太陽光発電パネル200に物理的破損が生じているかを特定可能である。すなわち、破損検査装置1は、検査対象の太陽光発電パネル200に物理的破損が生じていることの有無、どの太陽光発電パネル200に物理的破損が生じているか、撮像画像10の太陽光発電装置100に物理的破損が生じている太陽光発電パネル200が含まれていることの有無、を検出できる。
【0085】
このため、災害発生後などの太陽光発電装置100において、上空からの画像を撮像することで、災害による物理的破損の発生の有無、発生位置などを、早期に検査して把握できる。早期の把握によって、災害被害などの状況解明が早くなる。また、崩落などした太陽光発電パネル200による二次災害を未然防止することもできる。
【0086】
また、比較部4では、撮像画像10をそのままで比較しているのではなく、撮像画像10から抽出される太陽光発電パネル200の外形特徴により比較している。物理的破損が生じると、崩落、破壊、変形などによって、太陽光発電パネル200の外枠210が本来と異なる形に変化する。あるいは、破壊などによって、太陽光発電パネル200の面積220が、本来とは異なる大きさに変化する。あるいは、崩落や傾きなどによって、太陽光発電パネル200の明度230が、本来とは異なるレベルになりえる。
【0087】
あるいは、物理的破損があれば、外枠210、面積220、明度230が、物理的に破損していない周囲の太陽光発電パネル200の外形特徴と異なることにもなる。
【0088】
このように、物理的破損は、外形特徴に発現しやすい。太陽光発電パネル200の撮像画像そのものを比較したり検出部5が検査したりする必要がない。画像処理などによって得られる外形特徴のみで、比較部4の比較とこれに基づく検出部5での物理的破損の検出ができることで、検出負担が低減できる。加えて、物理的破損により生じる特性に基づいた比較や検出なので、物理的破損の高い精度での検出ができる。
【0089】
また、比較部4での比較対象となる理想外形は、検査対象としての撮像画像10に含まれる他の太陽光発電パネル200であって破損していない太陽光発電パネル200の外形特徴である。あるいは、事前に撮像された同じ太陽光発電パネル200の撮像画像から得られる、検査対象と同じ太陽光発電パネル200の外形特徴である。すなわち、理想外形も、外枠210、面積220、明度230の少なくとも一つである。
【0090】
このように、比較対象となる理想外形も、物理的破損を見る際に特徴的になりやすい特性をもった外形特徴である。そして、検査対象の太陽光発電パネル200の外形特徴と共通している。
【0091】
このように、物理的破損により生じやすい特性を反映する外形特徴および理想外形の比較に基づくことで、高い精度かつ短時間処理で、太陽光発電パネル200の物理的破損を検出できる。人的作業による目視確認を必要せず、精度、効率化の両方が図られる。
【0092】
ここで、理想外形は、検査用に撮像された撮像画像10に含まれる物理的破損の生じていない太陽光発電パネル200から抽出される外形特徴、および、検査対象の太陽光発電装置100での物理的破損発生前に撮像された事前撮像画像から得られる太陽光発電パネル200の外形特徴の少なくとも一方である。いずれかであってもよい。
【0093】
前者では、撮像画像10に含まれる他の太陽光発電パネル200との外形特徴での比較によって、外形特徴に相違のある太陽光発電パネル200を、物理的破損のあるパネルとして特定する。例えば、撮像画像中に10枚の太陽光発電パネル200が写っている場合に、ある太陽光発電パネル200の外枠210だけが変形しているとか、面積220が小さいとかといったことが、比較部4において把握される。この場合には、変形しているあるいは小さくなっている当該太陽光発電パネル200を、物理的破損の生じている太陽光発電パネル200として特定できる。
【0094】
後者では、検査対象の太陽光発電パネル200の正常状態の撮像画像が記憶部2などに記憶されている状態で、これから理想外形が抽出される。この理想外形は、対応する同じ太陽光発電パネル200の災害等の前後での変化に基づいて、太陽光発電パネル200の物理的破損を検出する。すなわち、同一の太陽光発電パネル200の時間軸での変化に基づいて、当該太陽光発電パネル200の物理的破損を検出する。
【0095】
(物理的破損検出の具体的説明)
【0096】
(その1:外枠210に基づく検出)
図6は、本発明の実施の形態1における外形特徴の内で外枠に基づいた物理的破損を検出する模式図である。図6では、撮像画像10から、外形特徴の内で外枠210が抽出された状態が示されている。また、撮像画像10において、物理的破損の生じていない他の太陽光発電パネル200の外形特徴を、理想外形として比較することが示されている。
【0097】
すなわち、同じ撮像画像10の中で、他の太陽光発電パネル200との比較により、ある太陽光発電パネル200の物理的破損を検出する場合について示している。
【0098】
図6の右上の太陽光発電パネル200Bの外形特徴として外枠210Bが抽出されている。隣接する太陽光発電パネル200Aの外形特徴として外枠210Aが抽出されている。他の太陽光発電パネル200の外枠210(図の見やすさのために、図6には符号を省略)との関係から、太陽光発電パネル200Aには物理的破損が生じておらず、太陽光発電パネル200Aから抽出された外枠210Aは、理想外形として使用できると判断できる。
【0099】
これにより、比較部4は、太陽光発電パネル200Aの外枠210Aを理想外形として取り扱う。この取り扱いの結果、比較部4は、外枠210Aを理想外形として、外枠210Bを外形特徴として比較する。図6にあるように、外枠210Bは、理想外形の外枠210Aに比較して変形している。
【0100】
この比較結果に基づいて、検出部5は、太陽光発電パネル200Bに物理的破損が生じていると判断する。外形特徴である外枠210が変形していることは、太陽光発電パネル200が、崩落、破壊、変形などの物理的な破損を受けているとの蓋然性が高いからである。
【0101】
例えば、崩落したり土台が崩れたりすれば、太陽光発電パネル200は上空から見れば斜めになっている可能性がある。すなわち、図6の右上の太陽光発電パネル200Bのように外枠210Bが抽出される。あるいは、破壊によって、太陽光発電パネル200の外周が欠けていれば、図6の右上の太陽光発電パネル200Bのように外枠210Bが抽出される。
【0102】
このように、検出部5は、太陽光発電パネル200Bの外枠210Bが、撮像画像10に含まれる他の太陽光発電パネル200Aの外枠210Aと相違する場合には、この太陽光発電パネル200Bに物理的破損が生じているとして検出する。他の太陽光発電パネル200Aを理想外形としての基準とすることによる。
【0103】
また、図6では、太陽光発電パネル200Bの外枠210Bが、平行四辺形のようになっている場合を一例として示しているが、台形のようになっている、一部が変形している、周縁が欠けている、並列の位置関係が変わってしまっている、といった状態であっても、検出部5は、当該太陽光発電パネル200Bに、物理的破損が生じていると検出する。
【0104】
また、比較部4は、検査対象の太陽光発電装置100において物理的破損が生じる前(例えば、太陽光発電装置の建設時や災害発生前など)に撮像された事前撮像画像を理想外形の基準とすることもよい。図7は、本発明の実施の形態1における事前撮像画像の模式図である。
【0105】
事前撮像画像の段階では、右上の太陽光発電パネル200B1は変形などしていない。抽出される外形特徴の外枠210B1は、本来の形をもっている。すなわち、これが理想外形の外枠210B1である。この理想外形210B1と、図6の外枠210Bとを、比較部4は、比較する。すなわち、事前撮像画像の太陽光発電パネル200Bを理想外形として、撮像画像10の太陽光発電パネル200Bの外形特徴とを比較する。このとき、理想外形の外枠210B1に対して、外形特徴の外枠210Bは、変化している。
【0106】
この変化があることに基づいて、検出部5は、図6の撮像画像10に含まれる右上の太陽光発電パネル200Bに、物理的破損が生じていると検出する。
【0107】
図6図7との比較のように、事前撮像画像から理想外形を抽出し、撮像画像から外形特徴を抽出して、その変化に基づき、物理的破損を検出することでもよい。
【0108】
(その2:面積220に基づく検出)
図8は、本発明の実施の形態1における面積を外形特徴として物理的破損を検出することを示す模式図である。図8は、ある太陽光発電装置100の撮像画像10を示しており、複数の太陽光発電パネル200を含んでいる。
【0109】
外形特徴抽出部3は、撮像画像10に含まれる太陽光発電パネル200のそれぞれの外形特徴を抽出する。このとき、一例として、太陽光発電パネル200の面積220を、外形特徴の一つとして抽出する。
【0110】
比較部4は、ある太陽光発電パネル200の外形特徴を、他の太陽光発電パネル200の外形特徴と比較する。ここで、図8の場合において、右上の太陽光発電パネル200Bの外形特徴である面積220Bは、周辺の太陽光発電パネル200の外形特徴である面積220と相違している。周辺として、太陽光発電パネル200Bに隣接する太陽光発電パネル200Aが理想外形として選択される。
【0111】
すなわち、隣接する太陽光発電パネル200Aの外形特徴である面積220Aが、理想外形として比較基準とされる。これは、他の太陽光発電パネル200の外形特徴である面積220との対比で、太陽光発電パネル200Aは、物理的破損のないものとの蓋然性が高いからである。
【0112】
検出部5は、太陽光発電パネル200Bの面積220Bが、理想外形である太陽光発電パネル200Aの面積220Aより小さいと判断できる。この判断結果に基づいて、検出部5は、太陽光発電パネル200Bに物理的破損が生じていると検出する。
【0113】
災害等によって、太陽光発電パネル200Bが破壊されたり、部分的に崩落したりすると、撮像画像10から抽出される面積220は、小さくなりうる。このため、外形特徴である面積220が理想外形の面積よりも小さければ、破壊などの物理的破損が生じていると考えられるからである。
【0114】
このように、外形特徴として面積220が抽出されることで、容易かつ正確に物理的破損が検出できる。撮像画像10のそのままを比較することは、目視であったり、複雑な画像処理が必要であったりする。これに比較して、外形特徴として面積220が抽出されて、この面積220で比較されることで、容易かつ精度の高い比較ができる。すなわち、低い負担で効率よく物理的破損を検出できる。
【0115】
なお、事前撮像画像を理想外形として、面積220での比較によって、物理的破損を検出することでもよい。
【0116】
(その3:明度230に基づく検出)
図9は、本発明の実施の形態1における明度を外形特徴として物理的破損を検出することを示す模式図である。図9は、ある太陽光発電装置100の撮像画像10を示しており、複数の太陽光発電パネル200を含んでいる。
【0117】
外形特徴抽出部3は、撮像画像10に含まれる太陽光発電パネル200のそれぞれの外形特徴を抽出する。このとき、一例として、太陽光発電パネル200の明度(反射明度)230を、外形特徴の一つとして抽出する。
【0118】
図9の右上の太陽光発電パネル200Bの明度230Bは、他の太陽光発電パネル200の明度230と相違する。例えば、明度が高い、あるいは明度が低い状態である。災害などで、太陽光発電パネル200が崩落などすると、上空に対する平面角度が変化する。この状態で、上空から撮像すると、反射光の方向が変わるので、明度が落ちたり上がったりする。すなわち、崩落などしている太陽光発電パネル200の外形特徴の明度230は、そうではない他の太陽光発電パネル200の明度230と異なっている蓋然性が高い。
【0119】
このため、比較部4は、右上の太陽光発電パネル200Bの明度230Bと、他の太陽光発電パネル200の明度230と比較する。図9では、隣接する太陽光発電パネル200Aの明度230Aを、理想外形として比較する。
【0120】
検出部5は、太陽光発電パネル200Bの明度230Bが、理想外形である明度230Aより低いあるいは高いとの結果に基づいて、太陽光発電パネル200Bに物理的破損が生じていると検出する。
【0121】
このように、明度230を外形特徴の一つとして、太陽光発電パネル200の物理的破損を検出することも好適である。
【0122】
外形特徴として明度230が抽出されることで、容易かつ正確に物理的破損が検出できる。撮像画像10のそのままを比較することは、目視であったり、複雑な画像処理が必要であったりする。これに比較して、外形特徴として明度230が抽出されて、この明度230で比較されることで、容易かつ精度の高い比較ができる。すなわち、低い負担で効率よく物理的破損を検出できる。
【0123】
特に、明度230は、撮像画像10を輝度画像に変換するだけで抽出可能である。このため、非常に簡便な画像処理を介するだけで、物理的破損の検出につなげることができる。
【0124】
なお、事前撮像画像を理想外形として、面積220での比較によって、物理的破損を検出することでもよい。すなわち、検査対象の太陽光発電パネル200の周辺の太陽光発電パネル200の明度230を理想外形としてもよいし、同じ太陽光発電パネル200の事前撮像画像の明度230を理想外形としてもよい。
【0125】
(外形特徴の抽出)
【0126】
外形特徴の一つである外枠210は、撮像画像を周波数変換画像とすることで、境界を検出できる。この境界に基づいて、外枠210が抽出される。周波数変換画像により、境界部分は、周波数値が大きく変化する。この変化部分を繋ぐと、外枠210が得られる。
【0127】
外形特徴の一つである面積220は、画像処理での面積算出処理が用いられればよい。面の積分計算などの種々の処理が用いられれば良い。
【0128】
外形特徴の一つである明度230は、撮像画像10が輝度画像に変換されて、輝度成分に基づいて抽出されればよい。輝度画像に変換されることで、輝度成分の情報から、明度230が抽出できる。
【0129】
このように、画像処理を介することで、外形特徴のそれぞれは、容易かつ確実に抽出できる。外形特徴に基づく比較によって、撮像画像そのものを比較するよりも、容易かつ精度高く必要な比較ができる。この比較によって、容易かつ確実な物理的破損を検出できる。目視検査などの人的作業を簡略できて、負担や危険性の軽減ができる。また、撮像画像そのものの目視検査よりも、物理的破損の判断精度を上げることができる。
【0130】
なお、その1~その3は、外形特徴としての一例であり、他の外形特徴を利用することでもよい。また、事前撮像画像との比較、同じ撮像画像の中での他の比較は、ケースバイケースでいずれかが採用されればよい。あるいは、両方での比較がされた上で、平均値や重みづけ平均などで、物理的破損が検出されてもよい。
【0131】
また、他の太陽光発電パネル200の外形特徴を比較対象とするときは、すべての太陽光発電パネル200の外形特徴から、特に相違するものを抜き取って、これを他の太陽光発電パネル200と比較して物理的破損を検出してもよい。あるいは、複数の太陽光発電パネル200の外形特徴の平均値を算出して、この平均値から大きく外れる者を、物理的破損の生じている太陽光発電パネル200と想定して、他の太陽光発電パネル200の外形特徴とを比較する。これにより、当該想定された太陽光発電パネル200に物理的破損が生じていると検出してもよい。
【0132】
また、その1~その3のように、外枠210、面積220、明度230を例として物理的破損を検出するが、それぞれのいずれかが用いられるだけでなく、複数の外形特徴(例えば、外枠210と明度230の2つ)での比較結果に基づいて、物理的破損の最終判断をすることもよい。より、精度の高い判断が可能となるからである。
【0133】
以上、実施の形態1における太陽光発電パネルの破損検査装置1は、容易かつ正確に、物理的破損を検出できる。作業員による現場作業や、人的な目視チェックの負担を軽減できる。早期に災害後の物理的破損を検査でき、破損した太陽光発電パネル200の除去を行えるなど、二次災害の防止にもつながる。
【0134】
なお、外形特徴の抽出精度の向上や、物理的破損の検出精度の向上などにおいて、これらの処理をデータベース化することも好適である。データベース化することで、抽出や検出での対応精度を向上させることができる。いわゆるデータベースに基づく機械学習などを通じて、外形特徴のアルゴリズムを改善していくことができたり、物理的破損の検出精度を改善していくことができたりする。これらのようないわゆるAIに基づく処理が加わることも好適である。
【0135】
(実施の形態2)
【0136】
次に、実施の形態2について説明する。
【0137】
図10は、本発明の実施の形態2における太陽光発電パネルの破損検査装置のブロック図である。図10の破損検査装置1は、通知部6を更に備えている。
【0138】
通知部6は、検出部5で検出された物理的破損を、対応する太陽光発電パネル200の位置情報と併せて通知する。通知先は、検査主体や検査部門のサーバーなどであればよい。あるいは、検査員の携帯情報端末に通知されればよい。あるいは、サーバーなどに記録用の情報として通知されてもよい。
【0139】
通知部6の通知により、物理的破損を早期に知ることができたり、データベース化したりすることができる。データベース化できると、災害などによる物理的破損を生じた太陽光発電パネル200の早期撤去や入れ替えなどを、効率よく行える。
【0140】
作業員や管理者への通知は、電子メール、携帯通知など、種々の方法にて行われればよい。
【0141】
以上のように実施の形態2における太陽光発電パネルの破損検査装置1は、破損を通知して、次の処理手順につなげることを容易化できる。
【0142】
なお、実施の形態1~2で説明された太陽光発電パネルの破損検査装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0143】
1 太陽光発電パネルの破損検査装置
2 記憶部
3 外形特徴抽出部
4 比較部
5 検出部
6 理想外形抽出部
10 撮像画像
100 太陽光発電装置
200 太陽光発電パネル
300 飛行体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10