(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】継手構造
(51)【国際特許分類】
E02D 5/24 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
E02D5/24 103
(21)【出願番号】P 2021092116
(22)【出願日】2021-06-01
【審査請求日】2024-02-19
(73)【特許権者】
【識別番号】305039699
【氏名又は名称】プラン・ドゥ・ソイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】皆川 恵三
(72)【発明者】
【氏名】北岡 茂樹
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-115368(JP,A)
【文献】特開2001-241038(JP,A)
【文献】特開2004-052333(JP,A)
【文献】特開2018-080499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/22- 5/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1鋼管杭に連結される第1継手部と第2鋼管杭に連結される第2継手部とを備え、前記第1継手部を前記第2継手部へ嵌合して外周よりピン止め、キー止め若しくはねじ止めすることで前記第1鋼管杭と前記第2鋼管杭を機械的に連結する、鋼管杭の継手構造であって、
前記第1継手部は内側鋼管部及び外側櫛部を備え、
前記外側櫛部は前記内側鋼管部へ遊挿状態で外挿され、
前記外側櫛部は前記第1鋼管杭へ直接、又は間接的 に固定され、
前記外側櫛部は前記内側鋼管部の外周へ周方向に配置される第1基部と該第1基部から前記内側鋼管部の軸方向に延設される第1スカート部とを備え、
前記第1基部において前記第1スカート部を延設させる縁と前記第1スカート部の先端側との少なくとも一方において前記内側鋼管部と前記外側櫛部とが溶接され、
前記第2継手部は外側鋼管部及び内側櫛部を備え、
前記内側櫛部は前記外側鋼管部へ遊挿状態で内挿され、
前記内側櫛部は前記第2鋼管杭へ直接、又は間接的に固定され、
前記内側櫛部は前記外側鋼管部の内周へ周方向に配置される第2基部と該第2基部から前記外側鋼管部の軸方向に延設される第2スカート部とを備え、
前記第2基部において前記第2スカート部を延設させる縁と前記第2スカート部の先端側との少なくとも一方において前記外側鋼管部と前記内側櫛部とが溶接され、
前記第1継手部と前記第2継手部とを嵌合したとき、前記第1スカート部の先端が前記第2基部へ当接し、前記第2スカート部の先端が前記第1基部へ当接する、
継手構造。
【請求項2】
前記第1基部は筒状であって前記内側鋼管部の端縁に配置され、前記第2基部は筒状であって前記外側鋼管部の端縁に配置され、
複数の前記第1スカート部が前記第1基部から一体的に延設されて、複数の前記第2スカート部が前記第2基部から一体的に延設される、請求項1に記載の継手構造。
【請求項3】
前記第1スカート部は前記第1基部から離れるにつれて幅狭となり、前記第2スカート部は前記第2基部から離れるにつれて幅狭となり、前記第1継手部と前記第2継手部とを嵌合したとき、前記第1スカート部と前記第2スカート部の側面が接触する、請求項2に記載の継手構造。
【請求項4】
前記第1継手部の前記内側鋼管部及び前記第2継手部の前記外側鋼管部、並びに前記第1継手部の前記外側櫛部及び/又は前記第2継手部の前記内側櫛部には、前記第1継手部と前記第2継手部とを嵌合したとき連通するピン孔が備えられる、請求項1~3の何れかに記載の継手構造。
【請求項5】
前記ピン孔は前記第1スカート部及び/又は前記第2スカート部に形成される、請求項4に記載の継手構造。
【請求項6】
前記ピン孔に対して接合ピンが楔状に圧入される、請求項4又は5に記載の継手構造。
【請求項7】
前記第1継手部と前記内側鋼管部との間に調整板が介在され、該調整板は前記外側櫛部より幅広である、請求項1~6の何れかに記載の継手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面に挿入する杭を複数本直列に連結させて一体化する継手の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に杭を打ち込む際には、到達すべき地盤の深さが異なるため、様々な長さの杭が必要となる。しかし、長い長さの杭は搬送が困難であるため、搬送に適した長さの杭を複数本連結し、長い長さの杭として形成することで現場では対応している。
そのため、特許文献1の鋼管杭の機械式継手構造では、下方の鋼管杭の上端部に円筒状で所定長さの外継手管が溶接され、上方の鋼管杭の下端部に外継手管に内嵌する円筒状の内継手管が溶接されている。そして、嵌合された外継手管と内継手管とを、四か所の連結ピン(接合ピン)で固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の鋼管杭の機械式継手構造は、嵌合された外継手管と内継手管とを、四か所の連結ピンで固定するため、鋼管杭に曲げ応力が加わった場合には、応力の集中が連結ピン周りの外継手管と内継手管に生じる場合があり、連結ピンをさしこむ穴の周りなどで変形・破損が生じる虞があった。
【0005】
本発明は、鋼管杭に曲げ応力が加わった場合でも、継手部分で応力の集中を生じさせることがなく、丈夫で安全性の高い継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様によれば、鋼管杭の継手構造は、第1鋼管杭に連結される第1継手部と第2鋼管杭に連結される第2継手部とを備え、第1継手部を第2継手部へ嵌合して外周よりピン止め、キー止め若しくはねじ止めすることで第1鋼管杭と第2鋼管杭を機械的に連結している。
【0007】
第1継手部は内側鋼管部及び外側櫛部を備え、外側櫛部は内側鋼管部へ遊挿状態で外挿され、外側櫛部は第1鋼管杭へ直接又は間接的に固定され、外側櫛部は内側鋼管部の外周へ周方向に配置される第1基部と第1基部から内側鋼管部の軸方向に延設される第1スカート部とを備えている。
【0008】
第1基部において第1スカート部を延設させる縁と第1スカート部の先端側との少なくとも一方において内側鋼管部と外側櫛部とが溶接され、第2継手部は外側鋼管部及び内側櫛部を備え、内側櫛部は外側鋼管部へ遊挿状態で内挿され、内側櫛部は第2鋼管杭へ溶接され、内側櫛部は外側鋼管部の内周へ周方向に配置される第2基部と第2基部から外側鋼管部の軸方向に延設される第2スカート部とを備えている。
【0009】
第2基部において第2スカート部を延設させる縁と第2スカート部の先端側との少なくとも一方において外側鋼管部と内側櫛部とが溶接され、第1継手部と第2継手部とを嵌合したとき、第1スカート部の先端が第2基部へ当接し、第2スカート部の先端が第1基部へ当接する。
【0010】
このように構成された第一の態様によれば、各櫛部のスカート部の先端が相手側櫛部の基部へ当接し、第1鋼管杭と第2鋼管杭とを軸方向にピン接続する(溶接されることなく当接状態での接続)。これにより、第1鋼管杭へ加えられた軸方向の力が第2鋼管杭へ伝達されてこれを地中へ押し込む。ここに、第1継手部及び第2継手部においてピン接続された外側櫛部と内側櫛部とは夫々の鋼管部に対して遊挿状態であるので、第1鋼管杭と第2鋼管杭に生じた曲げ応力は櫛部と鋼管部との遊びによって吸収される。換言すれば、各スカート部の先端がピン接合状態の外側櫛部と内側櫛部とは、夫々の鋼管部との遊びの範囲において、応力を逃がし応力を緩和できる。
【0011】
本発明の第二の態様によれば、第1基部は筒状であって内側鋼管部の端縁に配置され、第2基部は筒状であって外側鋼管部の端縁に配置され、複数の第1スカート部が第1基部から一体的に延設されて、複数の前記第2スカート部が第2基部から一体的に延設される。
このように、各櫛部を構成する基部とスカート部とを一体化することにより、部品点数を削減できる。
【0012】
本発明の第三の態様によれば、第1スカート部は第1基部から離れるにつれて幅狭となり、第2スカート部は第2基部から離れるにつれて幅狭となり、第1継手部と第2継手部とを嵌合したとき、第1スカート部と第2スカート部の側面が接触する。
【0013】
このように第1スカート部と第2スカート部との側面を接触させることにより、外側櫛部と内側櫛部とが溶接されていなくても、第1鋼管杭にかけられた回転方向の力を第2鋼管に伝えることができる。
ここに、第1及び第2継手部において各櫛部と鋼管部とは遊挿状態であるので、鋼管部に対する櫛部の位置(半径方向)を調整できる。これにより、第1スカート部の側面の全面を第2スカート部の側面の全面へ確実の当接させることが可能となる。もって、第1鋼管杭の回転方向の力を安定して第2鋼管杭へ伝達できる。
【0014】
本発明の第四の態様によれば、第1継手部の内側鋼管部及び第2継手部の外側鋼管部、並びに第1継手部の外側櫛部及び/又は第2継手部の内側櫛部には、第1継手部と第2継手部とを嵌合したとき連通するピン孔が備えられる。
このように、周方向の回転は各スカート部の側面に伝えらえるので、このピン孔に嵌入される接合ピンは、専らは軸方向の抜け止めを担当するものである。よって、接合ピンには大きな機械的強度が要求されず、各継手部にあけられるピン孔の径も小さいもので済む。その結果、ピン孔による各継手部の機械的強度の低下を防止できる。
【0015】
本発明の第五の態様によれば、ピン孔は第1スカート部及び/又は第2スカート部に形成される。
このように、第1鋼管杭からの、軸方向及び回転方向の力がかかる各スカート部において、かかるピン孔の径を小さくできることはこれらの機械的強度を確保する見地から特に好ましい。
【0016】
本発明の第六の態様によれば、ピン孔に対して接合ピンが楔状に圧入される。
これによれば、容易かつ迅速に継手による嵌合作業を実施することができる。
本発明の第七の態様によれば、第1継手部と内側鋼管部との間に調整板が介在され、該調整板は外側櫛部より幅広である。
これによれば、外側櫛部よりも径の大きな内側鋼管部であっても、本案継手構造によって連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の継手構造を鋼管に実施した連結前の状態を縦断面図で示す図である。
【
図2】連結後の状態を示す縦断面図、ピンを示す側面図及び断面図である。
【
図4】第1及び第2スカート部を示す展開図である。
【
図5】調整板を介して嵌合させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一実施形態)
本発明に係る継手構造を、鋼管杭の連結に実施した第一実施形態について、
図1~
図3
を参照して以下に説明する。
【0019】
本実施形態における継手構造1は、第1鋼管杭SP1と第2鋼管杭SP2とを連結するものである。継手構造1は、第1鋼管杭SP1に連結される第1継手部11と、第2鋼管杭SP2に連結される第2継手部12と、外側補強リング13と、内側補強リング14と、接合ピン15とを備えている。
【0020】
(第1継手部)
第1継手部11は、
図1に示すように、内側鋼管部111と外側櫛部112とを備えている。
内側鋼管部111は、例えば、第1鋼管杭SP1と同じ材質で、第1鋼管杭SP1より小さい外径寸法の短円筒状に形成されている。外側櫛部112は、内側鋼管部111へ遊挿状態で外挿されている。外側櫛部112は、例えば、第1鋼管杭SP1と同じ材質で、第1基部112aと第1スカート部112bとを備えている。外側櫛部112は、第1基部112a側の端部において、第1鋼管杭SP1の端部の全周において、溶接されている(第1溶接部WP1)。
【0021】
第1基部112aは、内側鋼管部111の軸方向の寸法の短い筒状に形成され、内側鋼管部111の外周方向に沿って配置される。
第1スカート部112bは、第1基部112aに対して一体に形成され、第1基部112aから内側鋼管部111の軸方向に延在する長板状の複数枚(本実施形態では四枚)が、内側鋼管部111の外周方向に等間隔で配設されている(参考
図4)。
【0022】
各第1スカート部112bは、第1基部112aから離れるにつれて幅狭となるように形成され、夫々等脚台形状に形成されている。
各第1スカート部112bは、第1スカート部112bを延設させる第1基部112aの縁において内側鋼管部111と外側櫛部112とが溶接されている(第2溶接部WP2)。
【0023】
第1スカート部112bの先端は、後述する第2基部122aの対向する面に当接するように構成されている。台形の脚に当たる第1スカート部112bの側面には、後述する第2スカート部122bの側面が対向して接触するよう構成されている(参考
図4)。
各第1スカート部112bには、後述する接合ピン15が挿入される第1ピン孔PH1が形成されている。また、内側鋼管部111における第1ピン孔PH1に対向する位置には、第2ピン孔PH2が形成されている。
【0024】
(第2継手部)
第2継手部12は、
図1に示すように、外側鋼管部121と内側櫛部122とを備えている。
外側鋼管部121は、例えば、第2鋼管杭SP2と同じ材質で、第2鋼管杭SP2より大きな外径寸法の短円筒状に形成されている。
内側櫛部122は、外側鋼管部121へ遊挿状態で内挿されている。
【0025】
内側櫛部122は、例えば、第2鋼管杭SP2と同じ材質で形成され、第2基部122aと第2スカート部122bとを備えている。内側櫛部122は、第2基部122a側の端部において、第2鋼管杭SP2の端部の全周において、溶接されている(第3溶接部WP3)。
【0026】
第2基部122aは、外側鋼管部121の軸方向の寸法の短い筒状に形成され、外側鋼管部121の内周方向に配置される。
第2スカート部122bは、第2基部122aに対して一体に形成され、第2基部122aから外側鋼管部121の軸方向に延在する長板状の複数枚(本実施形態では四枚)が、外側鋼管部121の内周方向に等間隔で配設されている(参考
図4)。
【0027】
各第2スカート部122bは、第2基部122aから離れるにつれて幅狭となるように形成され、夫々等脚台形状に形成されている。
各第2スカート部122bは、第2スカート部122bが延設される第2基部122aの縁において外側鋼管部121と内側櫛部122とが溶接されている(第4溶接部WP4)。
【0028】
第2スカート部122bの先端は、第1基部112aの対向する面に当接するように構成されている。等脚台形の脚に当たる第2スカート部122bの側面には、第1スカート部112bの側面が対向して接触するよう構成されている(参考
図4)。
外側鋼管部121には、第1継手部11と第2継手部12とを嵌合したとき第1スカート部112bの第1ピン孔PH1に連通する位置に第3ピン孔PH3が形成されている。
但し、本実施形態では、各第2スカート部122bには、ピン孔が形成されていない。
【0029】
(外側補強リング・内側補強リング)
外側鋼管部121の外周側面における第3ピン孔PH3周りには、外側補強リング13が設けられている。外側補強リング13は、例えば、鉄製で有孔の円板状に形成されている。外側補強リング13の孔は、接合ピン15が挿入可能な第4ピン孔PH4となっている。外側補強リング13は、外側鋼管部121の第3ピン孔PH3周りの座面陥没及び接合ピン15の緩みを防止する。
【0030】
内側鋼管部111の内周側面における第2ピン孔PH2の周りには、内側補強リング14が設けられている。内側補強リング14は、例えば、鉄製で有孔の円板状に形成されている。内側補強リング14の孔は、接合ピン15が挿入可能な第5ピン孔PH5となっている。内側補強リング14は、内側鋼管部111の第2ピン孔PH2周りの座面陥没及び接合ピン15の緩みを防止する。
内側補強リング14には、後述する接合ピン15の皿頭ビス152が螺着されるピン固定用裏あて16が溶接によって接着されている。ピン固定用裏あて16には、皿頭ビス152が螺着する雌螺子部が形成されたねじ孔が設けられている。
【0031】
(接合ピン)
接合ピン15は、
図2及び
図3に示すように、ピン本体151と皿頭ビス152とを備えている。ピン本体151は、円柱状に形成され、挿入される先端に向かって外径がわずかに小さくなるテーパが形成されている。このテーパによって、楔状にピン孔(PH1~5)に圧入されるようになっている。ピン本体151には、皿頭ビス152の軸部が挿入可能な挿入孔151aが軸心に沿って形成されている。挿入孔151aの頭部側の開口端部には、皿頭形状に倣う面取りが形成されている。
【0032】
皿頭ビス152は、ピン孔(PH1~5)に圧入されたピン本体151を固定するためのものである。皿頭ビス152をピン本体151の挿入孔151aから挿入してピン固定用裏あて16にねじ込むことで、接合ピン15を締結する。これによって、内側補強リング14、内側鋼管部111、第1スカート部112b、外側鋼管部121及び外側補強リング13を連結固定する。
ピンの他、キーやねじその他、棒状の部材であって、その軸方向への抜け止めができるものを用いることができる。
【0033】
(連結作業)
次に、上記のように構成された継手構造1を用いて、第1鋼管杭SP1と第2鋼管杭SP2とは、以下のように連結される。
【0034】
まず、第1継手部11を構成する外側櫛部112と内側鋼管部111とを溶接する。このとき、外側櫛部112の第1基部112a側の端部と内側鋼管部111の端部とを面一となるように合わせる。さらに、第1スカート部112bの第1ピン孔PH1と内側鋼管部111の第2ピン孔PH2とが、連通するように位置合わせする。そして、外側櫛部112の第1基部112aの第1スカート部112bに延設する縁と内側鋼管部111の端部とを溶接する。
【0035】
次に、内側補強リング14とピン固定用裏あて16とを溶接により接着する。
次に、内側鋼管部111とピン固定用裏あて16が接着された内側補強リング14とを溶接する。このとき、内側鋼管部111の第2ピン孔PH2と、内側補強リング14の第5ピン孔PH5とが連通するように位置合わせして溶接する。
【0036】
次に、第1鋼管杭SP1と内側鋼管部111等が接着された外側櫛部112とを溶接する。その際、第1鋼管杭SP1の端部と外側櫛部112の第1基部112a側の端部とを全周にわたって溶接する。
【0037】
次に、第2継手部12を構成する内側櫛部122と外側鋼管部121とを溶接する。このとき、内側櫛部122の第2基部122a側の端部と外側鋼管部121の端部とを面一となるように合わせる。さらに、外側鋼管部121の第3ピン孔PH3に第2スカート部122bが重ならないように位置合わせする。そして、内側櫛部122の第2基部122aの第2スカート部122bに延設する縁と外側鋼管部121の端部とを溶接する。
【0038】
次に、外側鋼管部121と外側補強リング13とを溶接により接着する。外側鋼管部121の第3ピン孔PH3と外側補強リング13の第4ピン孔PH4とが連通するように位置決めして溶接する。
【0039】
次に、第2鋼管杭SP2と外側鋼管部121等が接着された内側櫛部122とを溶接する。その際、第2鋼管杭SP2の端部と内側櫛部122の第2基部122a側の端部とを全周にわたって溶接する。
【0040】
次に、第1鋼管杭SP1が溶接で組付けられた第1継手部11と、第2鋼管杭SP2が溶接で組付けられた第2継手部12とを嵌合させる。このとき、第1継手部11の外側櫛部112と第2継手部12の内側櫛部122とが、かみ合うようにして嵌合するが、外側櫛部112の第1ピン孔PH1と外側鋼管部121の第3ピン孔PH3とが連通するように位置合わせして嵌合させる。
【0041】
次に、四本の接合ピン15を夫々外側補強リング13の第4ピン孔PH4より圧入する。続いて皿頭ビス152を接合ピン15の挿入孔151aより夫々挿入し、挿入した先端部をピン固定裏あて16に螺着する。これによって、第1鋼管杭SP1と第2鋼管杭SP2とを連結する。
【0042】
上記の記載で明らかなように、本実施形態における鋼管杭SP1,SP2の継手構造1は、第1鋼管杭SP1に連結される第1継手部11と第2鋼管杭SP2に連結される第2継手部12とを備え、第1継手部11を第2継手部12へ嵌合して外周よりピン止め若しくはねじ止めすることで第1鋼管杭SP1と第2鋼管杭SP2を機械的に連結している。
【0043】
第1継手部11は内側鋼管部111及び外側櫛部112を備え、外側櫛部112は内側鋼管部111へ遊挿状態で外挿され、外側櫛部112は第1鋼管杭SP1へ直接又は間接的に固定され、外側櫛部112は内側鋼管部111の外周へ周方向に配置される第1基部112aと第1基部112aから内側鋼管部111の軸方向に延設される第1スカート部112bとを備えている。
【0044】
第1基部112aにおいて第1スカート部112bを延設させる縁と第1スカート部112bの先端側との少なくとも一方において内側鋼管部111と外側櫛部112とが溶接され、第2継手部12は外側鋼管部121及び内側櫛部122を備え、内側櫛部122は外側鋼管部121へ遊挿状態で内挿され、内側櫛部122は第2鋼管杭SP2へ溶接され、内側櫛部122は外側鋼管部121の内周へ周方向に配置される第2基部122aと第2基部122aから外側鋼管部121の軸方向に延設される第2スカート部122bとを備えている。
【0045】
第2基部122aにおいて第2スカート部122bを延設させる縁と第2スカート部122bの先端側との少なくとも一方において外側鋼管部121と内側櫛部122とが溶接され、第1継手部11と第2継手部12とを嵌合したとき、第1スカート部112bの先端が第2基部122aへ当接し、第2スカート部122bの先端が第1基部112aへ当接する。
【0046】
このように構成された継手構造1によれば、各櫛部のスカート部の先端が相手側櫛部の基部へ当接し、第1鋼管杭SP1と第2鋼管杭SP2とを軸方向にピン接続する(溶接されることなく当接状態での接続)。これにより、第1鋼管杭SP1へ加えられた軸方向の力が第2鋼管杭SP2へ伝達されてこれを地中へ押し込む。ここに、第1継手部11及び第2継手部12においてピン接続された外側櫛部112と内側櫛部122とは夫々の鋼管部に対して遊挿状態であるので、第1鋼管杭SP1と第2鋼管杭SP2に生じた曲げ応力は櫛部と鋼管部との遊び(小さな隙間)によって吸収される。換言すれば、各スカート部の先端がピン接合状態の外側櫛部112と内側櫛部122とは、夫々の鋼管部との遊びの範囲において、応力を逃がすようにズレることができ、もって応力を緩和できる。
【0047】
また、第1基部112aは筒状であって内側鋼管部111の端縁に配置され、第2基部122aは筒状であって外側鋼管部121の端縁に配置され、複数の前記第1スカート部112bが第1基部112aから一体的に延設されて、複数の第2スカート部122bが第12基部から一体的に延設される。
このように、各櫛部を構成する基部とスカート部とを一体化することにより、部品点数を削減できる。
【0048】
また、第1スカート部112bは第1基部112aから離れるにつれて幅狭となり、第2スカート部122bは第2基部122aから離れるにつれて幅狭となり、第1継手部11と第2継手部12とを嵌合したとき、第1スカート部112bと第2スカート部122bの側面が接触する。
【0049】
このように第1スカート部112bと第2スカート部122bとの側面を接触させることにより、外側櫛部112と内側櫛部122とが溶接されていなくても、第1鋼管杭SP1にかけられた回転方向の力を第2鋼管に伝えることができる。
ここに、第1及び第2継手部11,12において各櫛部と鋼管部とは遊挿状態であるので、鋼管部に対する櫛部の位置(半径方向)を調整できる。これにより、第1スカート部112bの側面の全面を第2スカート部122bの側面の全面へ確実の当接させることが可能となる。もって、第1鋼管杭SP1の回転方向の力を安定して第2鋼管杭SP2へ伝達できる。
【0050】
また、第1継手部11の内側鋼管部111及び第2継手部12の外側鋼管部121、並びに第1継手部11の外側櫛部112及び/又は第2継手部12の内側櫛部122には、第1継手部11と第2継手部12とを嵌合したとき連通するピン孔PH1~5が備えられる。
このように、周方向の回転は各スカート部の側面に伝えらえるので、このピン孔に嵌入される接合ピン15は、専らは軸方向の抜け止めを担当するものである。よって、接合ピン15には大きな機械的強度が要求されず、各継手部にあけられるピン孔PH1~5の径も小さいもので済む。その結果、ピン孔PH1~5による各継手部の機械的強度の低下を防止できる。
【0051】
また、ピン孔PH1は第1スカート部112b及び/又は前記第2スカート部122bに形成される。
このように、第1鋼管杭SP1からの、軸方向及び回転方向の力がかかる各スカート部において、かかるピン孔PH1の径を小さくできることはこれらの機械的強度を確保する見地から特に好ましい。
【0052】
また、ピン孔PH1~5に対して接合ピン15が楔状に圧入される。
これによれば、容易かつ迅速に継手による嵌合作業を実施することができる。
【0053】
なお、上記実施形態において、接合ピン15は、皿頭ビス152でピン固定用裏あて16に固定するものとしたが、これに限定されない。例えば、十文字の切欠き部が形成されたピン本体に釘を打ち込んで、ピン本体の外径を膨張させることで、第1継手部11と第2継手部12とを連結するものでもよい。
【0054】
また、実施形態において、ピン孔(第1ピン孔PH1)は、外側櫛部112の第1スカート部112bに設けるものとしたが、これに限定されない。例えば、内側櫛部122の第2スカート部122bに設けてもよく、第1スカート部112bと第2スカート部122bの両方に設けてもよい。
【0055】
また、内側鋼管部111と外側櫛部112との溶接を、第1基部112aの第1スカート部112bが延設される縁で行い、外側鋼管部121と内側櫛部122との溶接を第2基部122aの第2スカート部122bが延設される縁で行ったが、これに限定されない。例えば、
図4の櫛部部分の展開図に示すように、第1スカート部112bの先端側と内側鋼管部111とを溶接してもよく、第2スカート部122bの先端側と外側鋼管部121とを溶接してもよい。
【0056】
また、第1基部112a側と第1スカート部112bの先端側の両方を溶接してもよく、第2基部122a側と第2スカート部122bの先端側の両方を溶接してもよい。
【0057】
また、第1鋼管杭SP1を外側櫛部112に直接溶接するものとしたが、これに限定されない。例えば、
図5に示すように、例えば鉄製の円板で形成された調整板17によって、間接的に溶接されて、第1鋼管杭SP1を外側櫛部112に接合してもよい。第1鋼管杭SP1が外側櫛部112及び外側鋼管部121よりも大径である場合においても、第1鋼管杭SP1と第2鋼管杭SP2とを連結することができる。
【0058】
また、第1鋼管杭SP1と外側櫛部112とを直接溶接して固定するものとしたが、これに限定されない。例えば、第1鋼管杭SP1と内側鋼管部111とを溶接し、さらに内側鋼管部111に外側櫛部112を溶接するものとしてもよい。すなわち、第1鋼管杭SP1に内側鋼管部111を介して間接的に外側櫛部112を溶接して固定してもよい。第2鋼管杭SP2と内側櫛部122とについても、同様に間接的に固定することができる。
【0059】
本発明は、上記しかつ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0060】
1:継手構造、11:第1継手部、111:内側鋼管部、112:外側櫛部、112a:第1基部、112b:第1スカート部、12:第2継手部、121:外側鋼管部、122:内側櫛部、122a:第2基部、122b:第2スカート部、15:接合ピン、17:調整板、PH1:第1ピン孔(ピン孔)、PH2:第2ピン孔(ピン孔)、PH3:第3ピン孔(ピン孔)。