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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】宅配ボックス用の錠装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 65/10 20060101AFI20240918BHJP
   E05B 65/00 20060101ALI20240918BHJP
   A47G 29/122 20060101ALI20240918BHJP
   E05C 1/14 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
E05B65/10 K
E05B65/00 D
A47G29/122 Z
E05C1/14 D
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021172150
(22)【出願日】2021-10-21
(65)【公開番号】P2023062275
(43)【公開日】2023-05-08
【審査請求日】2023-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591006117
【氏名又は名称】株式会社ナガエ
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】奥野 裕明
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-124002(JP,A)
【文献】特開平07-286458(JP,A)
【文献】実公昭56-012379(JP,Y2)
【文献】特開2009-197538(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00 - 85/28
E05C 1/00 - 21/02
A47G 29/122
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
宅配ボックスの一面を開閉する扉に取り付けて使用される宅配ボックス用の錠装置において、
前記扉が開かれるのを阻止する閉扉位置と前記扉が開かれるのを阻止しない開扉位置との間を移動可能なラッチと、前記ラッチを前記閉扉位置の方向に付勢するラッチ付勢バネと、前記扉の外側から回転操作される第一摘み部及び前記第一摘み部と一体に設けた第一可動部有した第一操作部材と、前記第一摘み部及び前記第一可動部が初期位置に保持されるように前記第一可動部を付勢する第一付勢バネと、前記扉の内側から回転操作される第二摘み部及び前記第二摘み部と一体に設けた第二可動部有し、前記第二摘み部が回転操作されることによって前記第二摘み部及び前記第二可動部がロック位置又はロック解除位置にセットされる第二操作部材と、前記扉の外側から鍵を差し込んで回転操作される鍵受け部及び前記鍵受け部と一体に設けた第三可動部有した第三操作部材と、前記扉の内面に近づける方向に押圧されて変位する押圧部及び前記押圧部と一体に設けた第四可動部有した第四操作部材とを備え、
前記第一可動部にはカム部が一体に設けられ、前記ラッチにはカム受け部が一体に設けられており、
前記ラッチ付勢バネは、前記第一付勢バネとして兼用され、前記第一摘み部及び前記第一可動部が前記初期位置から変位しているとき、前記ラッチの前記カム受け部が前記第一可動部の前記カム部に当接又は摺接し、前記ラッチ付勢バネの付勢が前記ラッチを介して前記第一可動部に伝達され、前記第一摘み部及び前記第一可動部が前記初期位置に戻る方向に付勢されるように設けられており、
前記扉に取り付けられて前記扉が閉じられた時の状態であって、前記第二摘み部及び前記第二可動部が前記ロック解除位置にセットされ、前記第一摘み部及び前記第一可動部が前記初期位置にあり、前記ラッチが前記閉扉位置にある状態を第一の閉鎖状態とし、
前記扉に取り付けられて前記扉が閉じられた時の状態であって、前記第二摘み部及び前記第二可動部が前記ロック位置にセットされ、前記第一摘み部及び前記第一可動部が前記初期位置にあり、前記ラッチが前記閉扉位置にある状態を第二の閉鎖状態としたとき、
前記第一の閉鎖状態から前記第一摘み部が回転操作され、これに連動して前記第一可動部が前記初期位置から変位すると、前記第一可動部の前記カム部が前記ラッチの前記カム受け部に当接又は摺接し、前記ラッチが前記カム部に押されて前記開扉位置に向かって移動して前記扉を開くことが可能になり、前記扉が開かれた後、前記第一摘み部及び前記第一可動部が前記初期位置に戻った状態で前記第二摘み部が回転操作され、前記第二摘み部及び前記第二可動部が前記ロック位置にセットされると、前記第二可動部の特定部位が前記第一可動部の特定部位に係合し、前記第一可動部及び前記第一摘み部が回動できないようにロックされ、
前記第二の閉鎖状態から前記鍵を前記鍵受け部に差し込んで回転操作され、これに連動して前記第三可動部が変位すると、前記第三可動部の特定部位が前記第二可動部の特定部位に当接又は摺接し、前記第二可動部が前記第三可動部に押されて前記ロック解除位置に移動し、前記第二可動部と前記第一可動部との係合が解除されることによって前記第一可動部及び前記第一摘み部が回動可能になり、
前記第一及び第二の閉鎖状態から前記押圧部が前記扉の内面に近づける方向に押圧されて変位し、これに連動して前記第四可動部が変位すると、前記第四可動部が前記ラッチの特定部位に当接又は摺接し、前記ラッチが前記第四可動部に押されて前記開扉位置に向かって移動して前記扉を開くことが可能になることを特徴とする宅配ボックス用の錠装置。
【請求項2】
前記第一の閉鎖状態で、前記第一摘み部は、正方向及び逆方向に回転操作することができ、前記ラッチは、前記第一摘み部が正逆どちらの方向に回転操作された場合でも、前記開扉位置に向かって移動するように設けられており、
前記第一可動部の前記カム部及び前記ラッチの前記カム受け部は、前記第一可動部の回動量に対する前記ラッチの移動量の比率が、正方向に回転操作された時と逆方向に回転操作された時とで等しくなるように設けられている請求項1記載の宅配ボックス用の錠装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、宅配ボックスの扉を施解錠するための錠装置に関し、特に閉じ込め防止機能を備えた錠装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、宅配ボックス内に閉じ込められた子供が容易に脱出できるようにする閉じ込め防止機能を備えた錠装置が複数提案されている。例えば、特許文献1に開示されているように、扉の端面から外方へ突出する方向にバネ付勢された扉施錠用のラッチと、ラッチを扉外部への突出位置でロックするロック機構と、宅配ボックス内に閉じ込められた小さい子供が脱出するための扉解放機構とを備えた錠装置があった。扉解放機構は、閉じ込められた子供が扉の内面に向かって回動操作する回動板と、回動板に連動して回動してロック機構によるラッチのロック状態を解除するロック解除用カムと、回動板に連動してラッチを扉の端面より内方に引き込む方向に移動させるためのラッチ引き込み用カムとで構成される。
【0003】
その他には、例えば、宅配ボックスの内側から錠装置を分解できるようにしたものや、宅配ボックスの内側から錠装置を解錠するための脱出用スライドレバーを設けたもの等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-286458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
狭くて暗い宅配ボックスの中に閉じ込められた子供は非常に混乱するので、冷静に錠装置を分解したり、脱出用スライドレバーを操作したりすることは困難である。
【0006】
一方、特許文献1の扉解放機構の場合、閉じ込められた子供が自然に行う動作、すなわち扉を何とか押し開けようとする動作を利用して脱出用の回動板を回動させる構造なので、比較的簡単に脱出することができる。しかしながら、特許文献1の錠装置は、部品点数が多くて構造も複雑である。
【0007】
本発明は、少ない部品点数でシンプルに構成することができ、子供が宅配ボックスの中に一時的に閉じ込められとしても簡単に脱出できる宅配ボックス用の錠装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、宅配ボックスの一面を開閉する扉に取り付けて使用される宅配ボックス用の錠装置であって、
前記扉が開かれるのを阻止する閉扉位置と前記扉が開かれるのを阻止しない開扉位置との間を移動可能なラッチと、前記ラッチを前記閉扉位置の方向に付勢するラッチ付勢バネと、前記扉の外側から回転操作される第一摘み部及び前記第一摘み部と一体に設けた第一可動部を有した第一操作部材と、前記第一摘み部及び前記第一可動部が初期位置に保持されるように前記第一可動部を付勢する第一付勢バネと、前記扉の内側から回転操作される第二摘み部及び前記第二摘み部と一体に設けた第二可動部を有し、前記第二摘み部が回転操作されることによって前記第二摘み部及び前記第二可動部がロック位置又はロック解除位置にセットされる第二操作部材と、前記扉の外側から鍵を差し込んで回転操作される鍵受け部及び前記鍵受け部と一体に設けた第三可動部を有した第三操作部材と、前記扉の内面に近づける方向に押圧されて変位する押圧部及び前記押圧部と一体に設けた第四可動部を有した第四操作部材とを備え、前記第一可動部にはカム部が一体に設けられ、前記ラッチにはカム受け部が一体に設けられており、
前記扉に取り付けられて前記扉が閉じられた時の状態であって、前記第二摘み部及び前記第二可動部が前記ロック解除位置にセットされ、前記第一摘み部及び前記第一可動部が前記初期位置にあり、前記ラッチが前記閉扉位置にある状態を第一の閉鎖状態とし、
前記扉に取り付けられて前記扉が閉じられた時の状態であって、前記第二摘み部及び前記第二可動部が前記ロック位置にセットされ、前記第一摘み部及び前記第一可動部が前記初期位置にあり、前記ラッチが前記閉扉位置にある状態を第二の閉鎖状態としたとき、
前記第一の閉鎖状態から前記第一摘み部が回転操作され、これに連動して前記第一可動部が前記初期位置から変位すると、前記第一可動部の前記カム部が前記ラッチの前記カム受け部に当接又は摺接し、前記ラッチが前記カム部に押されて前記開扉位置に向かって移動して前記扉を開くことが可能になり、前記扉が開かれた後、前記第一摘み部及び前記第一可動部が前記初期位置に戻った状態で前記第二摘み部が回転操作され、前記第二摘み部及び前記第二可動部が前記ロック位置にセットされると、前記第二可動部の特定部位が前記第一可動部の特定部位に係合し、前記第一可動部及び前記第一摘み部が回動できないようにロックされ、
前記第二の閉鎖状態から前記鍵を前記鍵受け部に差し込んで回転操作され、これに連動して前記第三可動部が変位すると、前記第三可動部の特定部位が前記第二可動部の特定部位に当接又は摺接し、前記第二可動部が前記第三可動部に押されて前記ロック解除位置に移動し、前記第二可動部と前記第一可動部との係合が解除されることによって前記第一可動部及び前記第一摘み部が回動可能になり、
前記第一及び第二の閉鎖状態から前記押圧部が前記扉の内面に近づける方向に押圧されて変位し、これに連動して前記第四可動部が変位すると、前記第四可動部が前記ラッチの特定部位に当接又は摺接し、前記ラッチが前記第四可動部に押されて前記開扉位置に向かって移動して前記扉を開くことが可能になる宅配ボックス用の錠装置である。
【0009】
前記ラッチ付勢バネは、前記第一付勢バネとして兼用され、前記第一摘み部及び前記第一可動部が前記初期位置から変位しているとき、前記ラッチの前記カム受け部が前記第一可動部の前記カム部に当接又は摺接し、前記ラッチ付勢バネの付勢が前記ラッチを介して前記第一可動部に伝達され、前記第一摘み部及び前記第一可動部が前記初期位置に戻る方向に付勢される構成にする。
【0010】
さらに、前記第一の閉鎖状態で、前記第一摘み部は、正方向及び逆方向に回転操作することができ、前記ラッチは、前記第一摘み部が正逆どちらの方向の回転操作された場合でも、前記開扉位置に向かって移動するように設けられており、前記第一可動部の前記カム部及び前記ラッチの前記カム受け部は、前記第一可動部の回動量に対する前記ラッチの移動量の比率が、正方向に回転操作された時と逆方向に回転操作された時とで等しくなるように設けられている構成にすることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の宅配ボックス用の錠装置は、少ない部品点数でシンプルに構成することができ、機構的な信頼性が高く動作が確実である。また、子供が宅配ボックスの中に一時的に閉じ込められたとしても、子供が行う自然な動作で押圧部が押圧され、扉を確実に開くことが可能になるので、簡単に脱出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の宅配ボックス用の錠装置の一実施形態の、宅配ボックスの扉に取り付けられた状態を扉の外面側から見た図(a)、扉の内面側から見た図(b)である[第一の閉鎖状態]。
図2】この実施形態の錠装置を、宅配ボックスの扉に取り付けられた状態を扉の上方から見た図[第一の閉鎖状態]。
図3】この実施形態の錠装置の平面図(a)、A1-A1断面図(b)である[第一の閉鎖状態]。
図4】この実施形態の錠装置を構成する各部材の概略構造を示す模式図であって、筐体の断面図(a)、ラッチの断面図(b)、ラッチ付勢バネの正面図(c)、第二操作部材の第二可動部の断面図(d)、第一操作部材の第一可動部の断面図(e)である。
図5】この実施形態の錠装置の動作を示す図であって、第一の閉鎖状態から第一操作部材の第一摘み部が回転操作された時の平面図(a)、各部材の動作を示すA2-A2断面図(b)である。
図6】この実施形態の錠装置の動作を示す図であって、図5に示す操作を行って扉が開かれた後、第二操作部材の第二摘み部が回転操作された時の平面図(a)、各部材の動作を示すA3-A3断面図(b)である。
図7】この実施形態の錠装置の動作を示す図であって、図6に示す操作の後、扉を閉じる操作が行われて第二の閉鎖状態になるまでのラッチの動作を順に示す図(a)、(b)である。
図8】この実施形態の錠装置の動作を示す図であって、第二の閉鎖状態で鍵受け部に鍵が差し込まれて回転操作されたした時の第二摘み部の動作を示す図である。
図9】この実施形態の錠装置の動作を示す図であって、第一の閉鎖状態を示す横断面図(a)、押圧部が押圧された時の各部材の動作を示す横断面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の宅配ボックスの錠装置の一実施形態について、図面に基づいて説明する。この実施形態の錠装置10は、図1図2に示すように、宅配ボックス12の本体であるボックス本体14の前面を開閉する扉16の開放端付近に取り付けて使用される。ボックス本体14の前面板は、扉16の開放端に対応する端部が内側に向かってL字形に屈曲しており、扉内面16bの端部と対向する部位にラッチ受け部14aが配設されている。
【0014】
錠装置10は、六面が閉鎖された略四角形の筐体18を有し、筐体18の内側及び外側に、錠装置10を構成する複数の部材が取り付けられている。筐体18は、扉外面16a側に配される外板部材20と、扉内面16b側に配される角筒形の枠状部材22と、扉内面16b側に配される内板部材24とで構成され、枠状部材22は、図4(a)に示すように、内側空間が複数の内壁で区切られた独特な構造になっている。その他、筐体18には、筐体18の上面及び下面の周縁部に壁板を立設することによって、印鑑を収容するための印鑑収容部18aが各々設けられている。なお、外板部材20、枠状部材22及び内板部材24の詳細な構造については、筐体18に取り付けられる各部材の構成を説明する中で述べる。
【0015】
筐体18には、ラッチ26、ラッチ付勢バネ28、第一操作部材30、第二操作部材32、第三操作部材34、及び第四操作部材36が取り付けられている。以下、各部材の構成を順に説明する。
【0016】
ラッチ26は、扉16が開かれるのを阻止する閉扉位置と、扉16が開かれるのを阻止しない開扉位置との間を変位する部材であり、筐体18の内側に配置される。閉扉位置は、図3(a)に示すように、枠状部材22に設けた透孔からヘッド部26aが突出し、ラッチ受け部14aに係合する位置である。また、開扉位置は、図5(a)に示すように、枠状部材22の内側に退避し、ヘッド部26aがラッチ受け部14aに係合しない位置である。ラッチ26は、枠状部材22の内壁によりガイドされ、閉扉位置と開扉位置との間を扉16とほぼ平行に変位することができる。
【0017】
ラッチ26には、図9(a)、(b)に示すように、ヘッド部26aの片方の角部(扉16と反対側の角部)が斜めに面取されて第一斜面26b(1)が設けられ、ヘッド部26aから少し離れた途中の位置に、ほぼ同じ角度に形成された第二斜面26b(2)が設けられている。また、図4(b)に示すように、後述する第一操作部材30のカム部40eが当接又は摺接するカム受け部26cが一対に設けられている。
【0018】
ラッチ付勢バネ28は、ラッチ26を閉扉位置の方向に付勢するコイルバネで、一端がラッチ26のヘッド部26aと反対側の端面を押圧し、他端が枠状部材22の内壁を押圧するように装着される。
【0019】
第一操作部材30は、扉16の外側から回転操作される第一摘み部38と、第一摘み部38に連動して回動する第一可動部40とを一体に設けた部材である。図4(d)に示すように、第一可動部40は、軸孔が形成された板状の中央部分40aと、中央部分40aの周囲を囲むように設けた環状部分40bと、環状部分40bを中央部分40aに連結する複数の連結部分40cとを備え、さらに環状部分40bの特定部位を内向きの円弧状に凹ませた凹部40dと、中央部部分40aの片方の面の一部の領域を厚み方向に膨出させるように設けた略矢印形のカム部40eとを備えている。第一可動部40は、筐体18の内側に配置され、中央部分40aが枠状部材22に設けた第一軸部22a(枠状部材22の厚み方向に配された軸)に取り付けられて回動可能に支持される。
【0020】
第一摘み部38は、第一可動部40の中央部分40aの、カム部40eと反対側の面に基端部が連結されており、筐体18の外板部材20及び扉16に各々設けた透孔を通じて扉16の外側に突出する。第一摘み部38は第一軸部22a周りに回動可能であり、第一摘み部38が回転操作されると、これに連動して第一可動部40が第一軸部22a周りに回動する。
【0021】
第一摘み部38及び第一可動部40は、図3(a)、(b)に示す位置が回動の初期位置であり、ラッチ付勢バネ28の付勢がラッチ26のカム受け部26cを介して第一可動部40に伝達され、第一操作部材30及び第一可動部40が初期位置に保持されるように付勢される。また、第一可動部40が初期位置にある状態で、係合受け部40dは、後述する第二可動部44に近い位置に配される。
【0022】
第二操作部材32は、扉16の内側から回転操作される第二摘み部42と、第二摘み部42に連動して回動する第二可動部44とを一体に設けた部材である。第二可動部44は、軸孔が形成された板状の中央部分44aと、中央部分44aの周囲の約1/3を囲むように設けた円弧状部分44bと、円弧状部分44bを中央部分44aに連結する複数の連結部分44cとを備え、さらに中央部分44aの側周面を内向きの円弧状に切り欠いた凹部44dと、中央部分44aの片方の面を厚み方向に凹ませた所定形状の係合受け部44eとを備えている。第二可動部44は、筐体18の内側に配置され、中央部分44aが枠状部材22に設けた第二軸部22b(枠状部材22の厚み方向に配された軸)に取り付けられて回動可能に支持される。
【0023】
第二摘み部42は、第二可動部44の中央部分44aの、係合受け部44eと反対側の面に基端部が連結され、筐体18の内板部材24に設けた透孔を通じて筐体18の外側に突出する。第二摘み部42は第二軸部22b周りに回動可能であり、第二摘み部42が回転操作されると、これに連動して第二可動部44が第二軸部22b周りに回動する。
【0024】
第二摘み部42及び第二可動部44は、図3(a)、(b)に示す回転位置がロック解除位置となり、図6(a)、(b)に示す回転位置がロック位置となる。つまり、第二摘み部42及び第二可動部44は、第二摘み部42を回転操作されることによって、ロック位置とロック解除位置のどちらかにセットされる。
【0025】
なお、図の中では省略しているが、第二可動部44がロック位置又はロック解除位置にセットされた状態が不意に変化しないようにするため、適宜な構造の仮保持機構を付設することが好ましい。
【0026】
第三操作部材34は、扉16の外側から鍵46を差し込んで回転操作される鍵受け部48と、鍵受け部48に連動して回動する第三可動部50とを一体に設けた部材である。第三可動部50は、鍵受け部48の基端部に連結された突起状の部材である。
【0027】
第三操作部材34は、鍵受け部48が第二軸部22bに取り付けられて回動可能に支持され、鍵受け部48の鍵穴48aが、筐体18の外板部材20及び扉16に各々設けた透孔を通じて扉16の外側に露出し、第三可動部50が第二可動部44の係合受け部44eの中に配置される。
【0028】
第四操作部材36は、片方の面が押圧される板状の押圧部52と、押圧部52に連動して変位する第四可動部54と一体に設けた部材である。第四可動部54は、図3(a)や図9(a)、(b)に示すように、押圧部52の、他方の面の一端部に立設された突部である。
【0029】
第四操作部材36は、内板部材24の外面側に配置され、押圧部52の、第四可動部54と反対側の端部が筐体18の内板部材24に設けた第三軸部24a(内板部材24と略平行に配置された軸)によって回動可能に支持され、第四可動部54の先端部が内板部材24に設けた透孔を通じて筐体18の内部に差し込まれ、ラッチ26の第二斜面26b(2)に対向する(又は係止される)。
【0030】
その他、錠装置10は、図1(a)、(b)に示すように、外観的にほぼ上下対称な構造になっているという特徴がある。この実施形態の宅配ボックス12の場合、扉16が右開き扉であるが、錠装置10の上下を逆にして設置することにより、左開き扉にも同様に使用することができ、デザインの統一性も維持することができる。
【0031】
次に、錠装置10の使用方法と動作を説明する。図1図3は、扉16が閉じられた時の錠装置10の状態の1つである第一の閉鎖状態を示している。第一の閉鎖状態の錠装置10は、図3(a)、(b)に示すように、第二摘み部42及び第二可動部44がロック解除位置にセットされ、第一摘み部38及び第一可動部40が初期位置にあり、ラッチ26が閉扉位置にある。第一の閉鎖状態は、ボックス本体14に荷物が入っていない状態で扉16が閉じられ、誰でも扉16を開くことができる状態、すなわち、いつでも荷物を受け取れるようにスタンバイしている状態である。
【0032】
宅配業者は、宅配ボックス12に荷物を入れる時、まずは閉じている扉16を開くため、扉16の外側から第一摘み部38を回転させる操作を行う。錠装置10は、第一の閉鎖状態から第一摘み部38が回転操作され、これに連動して第一可動部40が初期位置から変位すると、図5(a)、(b)に示すように、第一可動部40のカム部40eの一端部がラッチ26のカム受け部26cに当接又は摺接し、カム受け部26cがカム部40eに押され、ラッチ26がラッチ付勢バネ28の付勢に抗して開扉位置に向かって移動する。これでラッチ26のヘッド部26aがボックス本体14のラッチ受け部14aに係合しなくなるので、扉16を開くことができる。
【0033】
この時、第二可動部44は、ロック解除位置にセットされており、第一可動部40の環状部分40bが通過する箇所に凹部44dが配置されているので、第一摘み部38が回転操作された時、第一可動部40は、第二可動部44に接触することなくスムーズに回動することができる。
【0034】
なお、宅配業者が第一摘み部38を反対方向に回転操作した場合、第一可動部40が逆向きに回動し、カム部40eの他端部が反対側のカム受け部26cに当接又は摺接し、以下、上記と同様の動作が行われる。
【0035】
宅配業者は、扉16を開いた後、第一摘み部38から手を離し、ボックス本体14の中に荷物を入れる。そして、印鑑収容部18aに入っている印鑑(図示ぜず)を手に取り、配達伝票に受領印を押印する。錠装置10は、宅配業者が第一摘み部38から手を離した時、ラッチ付勢バネ28の付勢がラッチ26及び第一可動部40に作用し、ラッチ26が開扉位置から元の閉扉位置に戻り、第一摘み部38及び第一可動部40も初期位置に戻る。
【0036】
その後、宅配業者は、扉16を閉じる前に、扉16の内側から第二摘み部42を回転させる操作を行う。錠装置10は、第二摘み部42が回転操作され、第二可動部44がロック位置にセットされると、図6(a)、(b)に示すように、第二可動部44の中央部分44aの一部が第一可動部40の凹部40dの内側に入り込んで係合し、第一可動部40及び第一摘み部38が回動できないようにロックされる。
【0037】
そして、この状態で宅配業者が扉16を閉じる操作を行う。この時、ラッチ26は閉扉位置にあるので、図7(a)に示すように、扉16を閉じる途中、ヘッド部26aがボックス本体14のラッチ受け部14aに接触する。しかし、第一斜面26b(1)がラッチ受け部14aに押され、ラッチ26がラッチ付勢バネ28の付勢に抗して開扉位置に向かって変位するため、ヘッド部26aがラッチ受け部14aを乗り越えることができ、図7(b)に示すように扉16を閉じることができる。ラッチ26は、ラッチ受け部14aに押されなくなると、ラッチ付勢バネ28に付勢されて閉扉位置に戻る。
【0038】
図7(b)は、錠装置10の第二の閉鎖状態を示している。第二の閉鎖状態では、ボックス本体14に荷物が入れられた状態で扉16が閉じられ、錠装置10は、第二摘み部42及び第二可動部44がロック位置にセットされ、ラッチ26が閉扉位置にある。つまり、第一可動部40及び第一摘み部38が初期位置から移動できないようにロックされ、扉16の外側から第一摘み部38を回転操作することができない状態(扉16が施錠された状態)になっているので、宅配ボックス12の持ち主である使用者以外の者は、外側から扉16を開くことができず、中の荷物を勝手に取り出すことができない。
【0039】
使用者が荷物を取り出す時は、扉16を解錠状態にするため、扉16の外側から鍵穴48aに鍵46を差し込んで鍵受け部48を回転させる操作を行う。錠装置10は、第二の閉鎖状態から鍵受け部48が回転操作され、これに連動して第三可動部50が変位すると、図8に示すように、第三可動部50が第二可動部44の凹部44dの内壁面に当接又は摺接し、第二可動部44が第三可動部50に押されてロック解除位置に移動する。第二可動部44がロック解除位置にセットされると、図3(b)に示すように、第一可動部40の凹部40dと対向する位置に第二可動部44の凹部44dが配されて第一可動部40のロックが解除され、第一可動部40及び第一摘み部38が回動可能になる。
【0040】
その後、使用者は、扉16の外側から第一摘み部38を回転させる操作を行う。第一摘み部38が回転操作されると、図5(a)、(b)と同様の動作でラッチ26が開扉位置に移動するので、扉16を開くことができる。
【0041】
使用者は、扉16を開いてボックス本体14の中の荷物を取り出すと、錠装置10を操作することなく、そのまま扉16を閉じる操作を行う。すると、図7(a)、(b)と同様の動作を経て扉16が閉じられ、錠装置10は、最初の第一の閉鎖状態に戻る。
【0042】
なお、鍵46で操作される第三操作部材34は、ロック位置にある第二可動部44をロック解除位置に移動させる機能(施錠された扉16を解錠する機能)を備えていればよく、ロック解除位置にある第二可動部44をロック位置に移動させる機能(解錠された扉16を施錠する機能)は備えていなくてもよい。宅配ボックス12の使い方から見て、使用者が扉16を施錠する場面は少ないと考えられ、特に、鍵46を用いて施錠しなければならない場面はほとんど無いと考えられるからである。また、仮に使用者が扉16を施錠する場面があったとしても、宅配業者と同様に、第二摘み部38を操作することによって施錠することができる。したがって、鍵46を用いて施錠する機能を備えていなくても、特に問題にはならない。
【0043】
次に、錠装置10の閉じ込め防止機能について説明する。上記のように、図1図3に示す第一の閉鎖状態(いつでも荷物を受け取れるようにスタンバイしている状態)の時は、扉16の外側から第一摘み部38を回転操作することによって、誰でも簡単に扉16を開くことができる。したがって、子供がいたずらで扉16を開いて中に入り込む可能性があり、そのまま扉16を閉じてしまうと、錠装置10が第一の閉鎖状態に戻り、子供が一時的に閉じ込められてしまうことになる。
【0044】
ボックス本体14内に閉じ込められた子供は、扉16の外側の第一摘み部38は操作することができないので、ほぼ確実に、扉16を内側から押し開けようとする動作を行う。そして、この動作を何度か行ううちに、子供の手や体が押圧部52に接触し、押圧部52を扉16に近づける方向に押圧されて変位する。
【0045】
錠装置10は、押圧部52が扉16に近づける方向に押圧されて変位し、これに連動して第四可動部54が変位すると、図9(b)に示すように、第四可動部54の先端部がラッチ26の第二斜面26b(2)に当接又は摺接し、第二斜面26b(2)が第四可動部54に押され、ラッチ26がラッチ付勢バネ28の付勢に抗して開扉位置に向かって移動する。これにより、ラッチ26のヘッド部26aとボックス本体14のラッチ受け部14aとの係合が外れ、押圧部52を押圧する力により扉16が開いて脱出することができる。
【0046】
また、閉じ込められた子供が誤って第二摘み部42を回転操作し、第一摘み部38及び第一可動部40がロックした状態(第二の閉鎖状態)になってしまった場合でも、ラッチ26はロックされずに移動可能なので、図9(a)、(b)と同様の動作により、簡単に扉16を開いて脱出することができる。
【0047】
以上説明したように、錠装置10は、少ない部品点数でシンプルに構成することができ、子供が宅配ボックス12の中に一時的に閉じ込められたとしても、子供が行う自然な動作で押圧部52が押圧され、扉16を開くことが可能になるので、簡単に脱出することができる。
【0048】
例えば、従来の錠装置(特許文献1の錠装置)の場合、扉の施錠を、ロック機構でラッチを閉扉位置にロックすることによって行っているため、脱出用の機構は、「回動板が押圧された時、ロック機構によるラッチのロック状態をロック解除用カムで解除し、さらにラッチ引き込み用カムでラッチを開扉位置に移動させる」という複雑な構成になっている。
【0049】
これに対して、錠装置10の場合、扉の施錠を、ラッチ26は移動可能にしたまま、第一操作部材30をロックすることによって行っているという特徴があり、脱出用の機構は、「押圧部52が押圧された時、第四可動部54でラッチ26を開扉位置に移動させる」という非常にシンプルな構成にすることができ、機構的な信頼性が高く動作が確実である。
【0050】
なお、本発明の宅配ボックス用の錠装置は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、錠装置10では、ラッチ付勢バネ28を、第一摘み部38及び第一可動部40が初期位置に保持されるように第一可動部40を付勢するバネ(第一付勢バネ)として兼用し、部品点数の削減を図っている。しかし、部品配置の都合で兼用することが困難なときは、ラッチ付勢バネとは別に、専用の第一付勢バネを付設しても良い。
【0051】
錠装置10を説明する中で、第一操作部材30は、第一摘み部38と第一可動部40とを一体に設けた部材であると説明したが、「一体に設けた部材」とは、「一体に連続形成された部材」と「複数のパーツを一体に組み付けた部材」を含むものである。この点は、第二操作部材32、第三操作部材34及び第四操作部材36についても同様であり、これによって各部材の構造を極めて単純化することができる。
【0052】
第一操作部材は、第一摘み部と第一可動部とが連動して回動する構造であればよく、上記実施形態に限定されるものではない。第二操作部材及び第三操作部材についても同様である。
【0053】
第四操作部材は、閉じ込められた子供が扉を押し開けようとする力を利用できるように、押圧部が、扉の内面に向かって押圧されて変位するように取り付けてあればよい。したがって上記の第四操作部材36のように、押圧部52を第三軸部24a周りに回動させる取り付け構造にしてもよいし、例えば、押圧部を扉の内面に向かって平行移動させる取り付け構造に変更してもよい。
【0054】
その他、錠装置を構成する各部材の形状や大きさは、錠装置10の形態に限定されず、本発明が目的とする作用効果が得られる範囲で自由に変更することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 錠装置
12 宅配ボックス
14 ボックス本体
16 扉
18 筐体
26 ラッチ
26c カム受け部
28 ラッチ付勢バネ(第一付勢バネ)
30 第一操作部材
32 第二操作部材
34 第三操作部材
36 第四操作部材
38 第一摘み部
40 第一可動部
40e カム部
42 第二摘み部
44 第二可動部
46 鍵
48 鍵受け部
50 第三可動部
52 押圧部
54 第四可動部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9