(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】正極添加剤、その製造方法、これを含む正極およびリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/62 20060101AFI20240918BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240918BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240918BHJP
H01M 10/0567 20100101ALI20240918BHJP
C01B 25/45 20060101ALI20240918BHJP
H01M 4/525 20100101ALN20240918BHJP
H01M 4/505 20100101ALN20240918BHJP
H01M 4/131 20100101ALN20240918BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M10/052
H01M10/0567
C01B25/45 Z
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/131
(21)【出願番号】P 2021523290
(86)(22)【出願日】2020-03-03
(86)【国際出願番号】 KR2020003012
(87)【国際公開番号】W WO2020242021
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-01-13
(31)【優先権主張番号】10-2019-0062076
(32)【優先日】2019-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ボラン・イ
(72)【発明者】
【氏名】シン・ヨン・パク
(72)【発明者】
【氏名】テ・ク・ユ
(72)【発明者】
【氏名】テゴン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ミン・カク
(72)【発明者】
【氏名】ワン・モ・ジュン
【審査官】井原 純
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-502831(JP,A)
【文献】国際公開第2015/072093(WO,A1)
【文献】特開2012-221681(JP,A)
【文献】特開2012-142156(JP,A)
【文献】特開2015-138730(JP,A)
【文献】特開平09-241026(JP,A)
【文献】特開2014-182885(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0011132(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第110416537(CN,A)
【文献】特表2006-514776(JP,A)
【文献】特表2020-518967(JP,A)
【文献】特表2020-522851(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104781961(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62
H01M 10/05-10/0587
H01M 10/36-10/39
C01B 25/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物;
下記化学式2で表される化合物;および
リン酸リチウム(Li
3PO
4);を含む、
リチウム二次電池用正極添加剤:
[化学式1]
Li
2+aNi
bM
1-bO
2+c
前記化学式1で、Mは2価陽イオンを形成する金属元素であり、-0.2≦a≦0.2であり、0.5≦b≦1.0であり、-0.2≦c≦0.2であり、
[化学式2]
Ni
2-eM
1-eP
4O
12
前記化学式2で、0.5≦e≦1.0であり、Mは前記化学式1の定義と同意義である。
【請求項2】
前記化学式2で表される化合物は、
リチウム塩および有機溶媒を含む電解液に溶解される、
請求項1に記載のリチウム二次電池用正極添加剤。
【請求項3】
前記正極添加剤において、
前記化学式1で表される化合物は、二次粒子をなし、
前記リン酸リチウムの粒子は、前記二次粒子表面に付着されている、
請求項1または2に記載のリチウム二次電池用正極添加剤。
【請求項4】
前記正極添加剤は、
Li
2OおよびNiOをさらに含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極添加剤。
【請求項5】
リチウム原料物質、ニッケル原料物質、およびリン原料物質を含む原料混合物を準備する段階;ならびに
不活性ガスが1.5~2.5L/分の流速で供給される反応器内で、前記原料混合物を600~900℃範囲内の温度で熱処理する段階;を含む、
請求項1~4のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極添加剤の製造方法。
【請求項6】
前記不活性ガスは、窒素(N
2)ガスを含む、
請求項5に記載のリチウム二次電池用正極添加剤の製造方法。
【請求項7】
前記原料混合物中、前記リチウム原料物質および前記ニッケル原料物質によるリチウム(Li):ニッケル(Ni)のモル比は、3:1~3:2である、
請求項5または6に記載のリチウム二次電池用正極添加剤の製造方法。
【請求項8】
前記原料混合物総量(100重量%)中、前記リン原料物質は、1~10重量%で含まれる、
請求項5から7のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極添加剤の製造方法。
【請求項9】
前記リン原料物質は、
第2リン酸アンモニウム((NH
4)
2HPO
4)、第1リン酸アンモニウム(NH
4H
2PO
4)、またはこれらの混合物を含む、
請求項5から8のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極添加剤の製造方法。
【請求項10】
前記不活性ガスが供給される反応器内で、前記原料混合物を600~900℃範囲内の温度で熱処理する段階;は、
a)前記リチウム原料物質および前記ニッケル原料物質が反応して、下記化学式1で表される化合物を生成する段階;
b)前記a)段階で反応しなかったニッケル原料物質および前記リン原料物質が反応して、下記化学式2で表される化合物を生成する段階;
c)前記a)段階で反応しなかったリチウム原料物質および前記b)段階で反応しなかったリン原料物質が反応して、リン酸リチウム(Li
3PO
4)を生成する段階;ならびに
d)前記a)段階で生成された化学式1で表される化合物、前記b)段階で生成された化学式2で表される化合物、および前記c)段階で生成されたリン酸リチウム(Li
3PO
4)を含む正極添加剤を得る段階;を含む、
請求項5から9のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用正極添加剤の製造方法:
[化学式1]
Li
2+aNi
bM
1-bO
2+c
前記化学式1で、Mは2価陽イオンを形成する金属元素であり、-0.2≦a≦0.2であり、0.5≦b≦1.0であり、-0.2≦c≦0.2であり、
[化学式2]
Ni
2-eM
1-eP
4O
12
前記化学式2で、0.5≦e≦1.0であり、Mは前記化学式1の定義と同意義である。
【請求項11】
前記d)段階で得られる正極添加剤には、
前記a)~c)で反応しなかったリチウム原料物質、ニッケル原料物質、またはこれらの混合物も含まれる、
請求項10に記載のリチウム二次電池用正極添加剤の製造方法。
【請求項12】
請求項1から4のいずれか一項に記載の正極添加剤を含む正極;
リチウム塩および有機溶媒を含む電解液;ならびに
負極;を含む、
リチウム二次電池。
【請求項13】
前記リチウム二次電池の化成充電時、
前記正極添加剤から前記化学式2で表される化合物が溶出されて前記電解液に溶解された後、前記負極の表面でNi金属に還元される、
請求項12に記載のリチウム二次電池。
【請求項14】
前記リチウム二次電池を4.2Vまで化成充電した後、分離された負極表面から、200~4000ppmのNi金属が検出される、
請求項12または13に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2019年05月27日付韓国特許出願第10-2019-0062076号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み含まれる。
【0002】
本発明は、正極添加剤、その製造方法、これを含む正極およびリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、リチウムイオンの可逆的な挿入および脱離が可能な電極活物質を負極および正極にそれぞれ適用し、電解質を媒介としてリチウムイオンの移動を具現し、各電極での酸化および還元反応によって電気的エネルギーを生成する。
【0004】
しかし、リチウム二次電池の初期充放電時(1ST cycle charge-discarge)、負極に挿入(電池充電)された後に脱離(電池放電)されるリチウムイオン、および正極から脱離(電池充電)された後、再び回収(電池放電)されないリチウムイオンがそれぞれ必然的に発生する。これは、二つの電極の不可逆容量と関連している。
【0005】
二つの電極の不可逆容量の差が大きいほど、正極の初期効率が減少し、電池の駆動中にエネルギー密度が順次に減少して、電池寿命が減少することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一実施形態では、リチウムイオン電池内の正極と負極の初期不可逆容量を効果的に相殺しながらも、電解液との副反応を起こさず、ひいては、負極表面の安定化にも寄与できる物質を正極添加剤として提供する。
【0007】
また、本発明の他の一実施形態では、特定の条件下で前記一実施形態の正極添加剤を製造する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、詳細に後述する実施例を参照すれば明確になるであろう。しかし、本発明は、以下で開示される実施例に限定されるのではなく、互いに異なる多様な形態に実現することができ、本実施例は単に本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供させるものであり、本発明は請求項の範疇のみによって定義される。
【0009】
以下、本発明で使用される技術用語および科学用語において別の定義がなければ、当該発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が通常理解している意味を有する。また、従来と同一の技術的構成および作用に対する重複説明は省略する。
【0010】
本願明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているという時、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の素子を間に置いて「電気的に連結」されている場合も含む。
【0011】
本願明細書全体において、ある部材が他の部材「上に」位置しているという時、これはある部材が他の部材に接している場合だけでなく、二つの部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0012】
本願明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対になる記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0013】
本願明細書全体において使用される程度の用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造および物質許容誤差が提示される時、その数値で、またはその数値に近接した意味で使用され、本願の理解を助けるために正確な、または絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使用される。
【0014】
本願明細書全体において使用される程度の用語「~(する)段階」または「~の段階」は、「~のための段階」を意味しない。
【0015】
本願明細書全体において、マーカッシュ形式の表現に含まれている「これらの組み合わせ(ら)」の用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群より選択される一つ以上の混合または組み合わせを意味するものであって、前記構成要素からなる群より選択される一つ以上を含むことを意味する。
【0016】
本願明細書全体において、「Aおよび/またはB」の記載は、「AまたはB、またはAおよびB」を意味する。
【0017】
正極添加剤
本発明の一実施形態では、下記化学式1で表される化合物;下記化学式2で表される化合物;リン酸リチウム(Li3PO4);を含む、リチウム二次電池用正極添加剤を提供する。
【0018】
[化学式1]Li2+aNibM1-bO2+c
前記化学式1で、Mは2価陽イオンを形成する金属元素であり、-0.2≦a≦0.2であり、0.5≦b≦1.0であり、-0.2≦c≦0.2であり、
[化学式2]Ni2-eM1-eP4O12
前記化学式2で、0.5≦e≦1.0であり、Mは前記化学式1の定義と同意義である。
【0019】
前記化学式1で表される化合物は、リチウム1モル水準である通常の正極活物質に比べて過量のリチウムを含むため、リチウム二次電池の初期充電時、正極活物質よりも先にリチウムを放出して正極と負極の不可逆容量を相殺し、初期充電容量を高める正極添加剤になることができる。
【0020】
より詳細な内容は後述するが、前記化学式1で表される化合物は、リチウム原料物質(例えば、Li2O)およびニッケル原料物質(例えば、(NidM1-dO))を前記化学式1の化学量論的モル比により混合した後に熱処理することによって製造され得る。
【0021】
前記リチウム原料物質および前記ニッケル原料物質だけを使用して製造された化学式1で表される化合物の表面には、未反応原料物質が多数存在することがある。そのうち、リチウム原料物質が空気または水分と接触すればLiOH、Li2CO3などのリチウム副産物を生成することがあり、リチウム副産物が電池内で電解液と接触すればHFガスなどを生成して電池劣化の原因になり得る。
【0022】
しかし、前記リチウム副産物は、電池内で電気化学的な反応に参加できないだけでなく、電池内気体(Gas)を発生させて、電池の初期容量、初期充放電効率などを減少させるという問題がある。
【0023】
これと関連して、前記未反応原料物質を除去するための水洗(washing)処理をすることも一つの方法であるが、水洗過程で前記化学式1で表される化合物からリチウムなどが溶出されることがあり、水洗後の乾燥過程でむしろ再び副産物が増加する可能性もあり、水洗後の再汚染などによって前記リチウム副産物が除去されるには限界がある。
【0024】
したがって、前記一実施形態では、前記未反応原料物質を水洗処理しない代わりに、リン原料物質と反応させて前記化学式2で表される化合物;および前記リン酸リチウム(Li3PO4)に転換させた。
【0025】
前記化学式2で表される化合物は、前記未反応ニッケル原料物質と前記リン原料物質の反応生成物であり、前記未反応リチウム原料物質と前記リン原料物質の反応生成物であり、これらは全てリチウム副産物を生成しないことができる。
【0026】
一方、前記化学式2で表される化合物は、電池内で電解液に溶解可能であり、電池の化成充電(formation)過程で負極表面で還元されてNi層を形成することができるが、これは電池の電気化学的性能を低下させず、むしろ安定性向上に寄与することができる。
【0027】
ただし、前記一実施形態の正極添加剤を製造する条件は、特に制御される必要がある。
【0028】
後述する実験例によれば、前記リチウム原料物質、前記ニッケル原料物質、および前記リン原料物質を一括混合した後、600~900℃範囲内の温度で熱処理し、この過程で不活性ガスを供給してこそ、ようやく前記正極添加剤が製造されることが確認される。
【0029】
ここで、原料物質の一括混合有無(熱処理回数)、熱処理温度、熱処理時の不活性ガスの供給有無否およびその供給流速が全て前記提示した条件を満足しなければならない。
【0030】
もし前記因子のうちのいずれか一つでも制御されない場合、前記化学式2で表される化合物が生成されないことがある。つまり、前記因子のうちのいずれか一つでも制御されない場合、前記化学式1で表される化合物;および前記リン酸リチウム(Li3PO4);を含む添加剤は製造され得るとしても、前記化学式1で表される化合物;前記化学式2で表される化合物;およびリン酸リチウム(Li3PO4);を全て含む前記一実施形態の正極添加剤は製造されない。
【0031】
このような製造条件に対する詳細説明は後述し、以下では前記製造条件を制御して製造された、前記一実施形態の正極添加剤の構成を詳細に説明する。
【0032】
構造
前記一実施形態の正極添加剤は、第1相の二次粒子;およびその表面に位置する第2相の粒子;の構造を有することができる。ここで第2相の粒子で「粒子」とは、一次粒子または一次粒子が凝集された二次粒子であり得る。
【0033】
具体的に、前記化学式1で表される化合物は、前記第1相の二次粒子をなし、前記リン酸リチウムは、前記第2相の粒子であって、前記二次粒子表面に付着されていてもよい。
【0034】
前記化学式2で表される化合物の場合、前記二次粒子表面、内部、またはこれら二つの全てに分布され得る。
【0035】
構成成分および各成分の含有量
一方、前記一実施形態の正極添加剤は、前記化学式1で表される化合物;前記化学式2で表される化合物;およびリン酸リチウム(Li3PO4);だけでなく、Li2OおよびNiOをさらに含むことができる。これらの存在形態は、特に制限されない。例えば、前記NiO粒子およびLi2O粒子が前記化学式1で表される粒子の表面に付着されている複合体形態であるか、または前記NiO粒子および前記Li2O粒子が前記化学式1で表される化合物粒子と別途に存在する混合物形態であり得る。
【0036】
これらは、前記一実施形態の正極添加剤を製造する工程中、前記化学式2で表される化合物;および前記リン酸リチウム(Li3PO4);にまだ転換されていない、未反応原料物質に該当し得る。
【0037】
そのうちのLi2Oは、前述のようにリチウム副産物を生成する要因になることもあるが、前記化学式1で表される化合物と共に余分のLiを正極に提供することができ、正極の初期充電容量を一層高めることができるため、これを特に除去しなくてもよい。
【0038】
前記正極添加剤の総量(100重量%)中、前記化学式1で表される化合物は80~90重量%含まれ、前記Li3PO4は2~5重量%含まれ、前記NiOは5~15重量%含まれ、前記Li2Oおよび前記化学式2で表される化合物は残部に該当し得る。
【0039】
具体的に、前記化学式1で表される化合物;前記リン酸リチウム(Li3PO4);前記Li2Oおよび前記NiOは、それぞれ結晶質で、CuKαX線(X-rα)によるX線回折分析(XRD:X-Ray Diffraction)で検出され得る。
【0040】
言い換えると、CuKαX線(X-rα)によるX線回折分析(XRD:X-Ray Diffraction)を利用して、前記コアを定性分析および定量分析すれば、前記リン酸リチウム(Li3PO4);前記Li2Oおよび前記NiOの各存在有無はもちろん、各存在量が確認され得る。
【0041】
後述する実験例では、前記各正極添加剤のX線回折分析結果をBruker社のEvaluationプログラムを利用、定性分析してLi2NiO2、Li3PO4、Li2OおよびNiOに対する対応ピークを確認した。このような対応ピークに対して、TOPASプログラム(Bruker-AXS、TOPAS4、Karlsruhe、Germany)を利用したリートベルト法(Rietveld refinement)で二つの相(phase)間の定量分析を行った。リートベルト法(Rietveld refinement)は、測定されたX線回折パターンとLi2NiO2、Li3PO4、Li2OおよびNiOの各構造モデルから計算されたパターンが最もよく一致するまで使用可能な変数を反復的に調整するフィードバック過程であり、この過程で回折ピークの位置だけでなく、ピークの強度および強度比率が分析されて二つの相(phase)の含有量が定量分析される(参照文献:Rietveld, H.M.L 「Line Profiles of Neutron Powder-diffraction Peaks for Structure Refinement」 Axta. Cryst., 22, 151-2, 1967、およびBish D.L. and Howard C.J., 「Quantitative phase analysis using the Rietveld method」 J. Appl. Cryst., 21, 86-81, 1988)。
【0042】
一方、前記化学式2で表される化合物も結晶質であるが、他の構成成分に比べて微量であるため、前記正極添加剤自体のXRD分析時には検出され難いこともある。ただし、後述する実験例で、ニッケル原料物質およびリン原料物質だけを混合して熱処理した後、XRD分析した結果、前記化学式2で表される化合物が検出され、これによって前記正極添加剤にも微量ながら前記化学式2で表される化合物が含まれることを推論することができる。
【0043】
ひいては、前記正極活物質を適用したリチウム二次電池の化成充電後に分離された負極表面でニッケル金属層が検出されることから、前記正極活物質には前記化学式2で表される化合物が含まれており、この物質が電解液に溶解された後、電池の化成充電過程で負極表面にニッケル金属に還元されたと推論することができる。
【0044】
正極添加剤の製造方法
本発明の他の一実施形態では、リチウム原料物質、ニッケル原料物質、およびリン原料物質を含む原料混合物を準備する段階;ならびに不活性ガスが供給される反応器内で、前記原料混合物を600~900℃範囲内の温度で熱処理する段階;を含む、リチウム二次電池用正極添加剤の製造方法を提供する。
【0045】
ここで、原料物質の一括混合有無(熱処理回数)、熱処理温度、熱処理時の不活性ガスの供給有無およびその供給流速が全て前記提示した条件を満足してこそ前述した一実施形態の正極添加剤が最終的に得られる。
【0046】
前記原料物質を一括混合しない場合、前記リチウム原料物質および前記ニッケル原料物質だけを混合して熱処理して前記化学式1で表される化合物を製造し、その後、前記リン原料物質を混合して熱処理する工程を考慮できる。ただし、このように2回の熱処理を加える過程で、前記化学式1で表される化合物が分解された後に再合成されることがあり、これによって、前記化学式2で表される化合物が生成されないか、または生成されても微量に過ぎないようになり、前記化学式1で表される化合物の生成量も減ることができる。
【0047】
また、前記熱処理温度が900℃を超えるか、前記不活性気体が供給されないか、または供給されてもその流速が1.5L/分未満の条件で前記熱処理が進行される場合にも、構造的に不安定な前記化学式1で表される化合物が分解された後に再合成されることがあり、これによって、前記化学式2で表される化合物が生成されないか、または生成されても微量に過ぎないようになり、前記化学式1で表される化合物の生成量も減ることができる。
【0048】
以下、前述した内容と重複する内容は省略し、前記一実施形態の製造方法を詳細に説明する。
【0049】
原料物質
前記原料混合物において、前記リン原料物質は、前記原料混合物総量(100重量%)中の含有量で、1~10重量%、具体的に2~8重量%、例えば3~7重量%とすることができる。また、前記リチウム原料物質および前記ニッケル原料物質の場合、これらによるリチウム(Li):ニッケル(Ni)のモル比は、3:1~3:2とすることができ、前記化学式1のLi:Niのモル比2:1を理論的に考慮するものの、実際の製造工程において原料物質が反応しないか、消失する場合が多数存在することを考慮して調節可能な範囲を提示したものである。したがって、前記範囲は一例示に過ぎず、理論および実際を考慮して適切に調節することができる。
【0050】
前記リン原料物質は、第2リン酸アンモニウム((NH4)2HPO4)、第1リン酸アンモニウム(NH4H2PO4)、またはこれらの混合物を含むものであり、前記リチウム原料物質は、Li2O、LiOH、またはこれらの混合物を含むものであり、前記ニッケル原料物質は下記化学式3で表される化合物を含むものであり得る。
【0051】
[化学式3](NidM1-d)O
前記化学式3で、Mは2価陽イオンを形成する金属元素であり、0≦d≦0.5である。
【0052】
熱処理工程
前記熱処理段階において、前記不活性ガスは窒素(N2)ガスを含むことができ、これは1.5~2.5L/分の流速で前記反応器に供給され得る。
【0053】
具体的に、前記不活性ガスが供給される反応器内で、前記原料混合物を600~900℃範囲内の温度で熱処理する段階;は、次の通り進行され得る。
【0054】
a)前記リチウム原料物質および前記ニッケル原料物質が反応して、下記化学式1で表される化合物を生成する段階;
b)前記a)段階で反応しなかったニッケル原料物質および前記リン原料物質が反応して、下記化学式2で表される化合物を生成する段階;
c)前記a)段階で反応しなかったリチウム原料物質および前記b)段階で反応しなかったリン原料物質が反応して、リン酸リチウム(Li3PO4)を生成する段階;ならびに
d)前記a)段階で生成された化学式1で表される化合物、前記b)段階で生成された化学式2で表される化合物、および前記c)段階で生成されたリン酸リチウム(Li3PO4)を含む正極添加剤を得る段階:
[化学式1]Li2+aNibM1-bO2+c
前記化学式1で、Mは2価陽イオンを形成する金属元素であり、-0.2≦a≦0.2であり、0.5≦b≦1.0であり、-0.2≦c≦0.2であり、
[化学式2]Ni2-eM1-eP4O12
前記化学式2で、0.5≦e≦1.0であり、Mは前記化学式1の定義と同意義である。
【0055】
前記d)段階で得られる正極添加剤には、前記a)~c)で反応しなかったリチウム原料物質、ニッケル原料物質、またはこれらの混合物も含まれ得、これについては前述した。
【0056】
一方、前記b)段階で前記化学式2で表される化合物が生成されながら、Ni3P2O8も生成され、これも前記d)段階で得られる正極添加剤に含まれ得るが、前記一実施形態はこれに制限されない。
【0057】
この時、熱処理は、前記温度範囲で、5時間~11時間行われることが好ましく、より詳細には8時間~10時間行われ得る。
【0058】
前記範囲を逸脱して過度に短時間行えば、十分な反応が行われず、過度に長時間行えば、構造的に不安定な化学式1で表される化合物が分解された後に再合成されながら、その過程で化学式2で表される化合物が生成されないこともある。
【0059】
正極合剤、正極、およびリチウム二次電池
本発明のまた他の実施形態として、前述した正極添加剤を含む正極合剤、正極およびリチウム二次電池を提供する。
【0060】
前述した正極添加剤は、当業界の通常の正極合剤に適用され得、このような正極合剤から製造された正極を製造して負極、電解液などの構成要素を組み合わせてリチウム二次電池で具現すれば、正極と負極の初期不可逆容量が効果的に相殺され、ガス発生は抑制されるだけでなく、負極表面がNi層によって安定化され得る。
【0061】
後述する実験例では、前記一実施形態の正極添加剤によって負極表面にNi層が形成される効果を確認するために、極端に正極合剤に正極活物質を含めず、正極添加剤、導電剤、およびバインダーを含む正極合剤も製造した(実施例1~3)。
【0062】
前記一実施形態の正極添加剤は、如何なる正極活物質および負極活物質と適用しても、電池の化成充電(formation)中に前記化学式2で表される化合物がリチウム塩および有機溶媒を含む電解液に溶解されて前記負極の表面でNi金属に還元されることが可能である。
【0063】
前記正極添加剤が適用されたリチウム二次電池を化成充電する条件、前記正極添加剤と共に適用する正極活物質および負極活物質は特に制限されないが、後述する実験例では正極活物質を使用しないか、または使用する場合、いわゆるNCM系正極活物質を使用し、負極活物質として黒鉛を使用して、4.2Vまで化成充電する条件を利用した。
【0064】
その結果、分離された負極表面から、200~4000ppmのNi金属が検出されることが確認された。これは、前記一実施形態の正極添加剤を製造することに制限されなければならない因子-つまり、原料物質の一括混合有無(熱処理回数)、熱処理温度、熱処理時の不活性ガスの供給有無およびその供給流速など-のうちのいずれか一つでも満足しない場合、同一の条件で検出されるNi金属が100ppm未満であることに比べて2倍~2000倍に達する数値である。
【0065】
このように前記負極表面に還元されたNi金属は、電池の電気化学的性能を低下させず、むしろ負極表面を安定化することによって電池の安定した駆動を可能にする点も後述する実験例で確認された。
【0066】
一方、前記一実施形態の正極添加剤は、正極活物質と共に正極合剤で製造することができ(実施例4)、この時、前記一実施形態の正極添加剤および前記正極活物質の重量比は1:99~35:65とすることができ、その配合比に比例して負極表面に形成されたNi層の含有量も減少することができる。
【0067】
具体的に、極端に正極合剤に正極活物質を含めない場合のNi検出量は、3000~4000ppmであるが、正極添加剤:正極活物質=10:90の重量比で正極活物質を含める場合には、200~3000ppm水準のNiが検出され得る。これは、(3000~4000ppm)*(正極添加剤)/(正極添加剤+正極活物質)の式で予測可能な範囲でもある。
【0068】
前記一実施形態のリチウム二次電池において、前述した正極添加剤および正極合剤以外については、一般的に当業界に知られた事項により具現することができる。
【0069】
以下、一般的に当業界に知られた事項を簡単に提示するが、これは例示に過ぎず、これによって前記一実施形態の正極合剤が制限されない。
【0070】
前記正極活物質の場合、リチウムイオンの可逆的な挿入および脱離が可能な物質であれば、特に制限されない。例えば、コバルト、マンガン、ニッケルまたはこれらの組み合わせの金属;およびリチウム;の複合酸化物中の1種以上を含むものであり得る。
【0071】
より具体的な例を挙げると、前記正極活物質として、下記化学式のうちのいずれか一つで表される化合物を使用することができる。LiaA1-bRbD2(前記式中、0.90≦a≦1.8および0≦b≦0.5である。);LiaE1-bRbO2-cDc(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5,および0≦c≦0.05である。);LiE2-bRbO4-cDc(前記式中、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である。);LiaNi1-b-cCobRcDα(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α≦2である。);LiaNi1-b-cCobRcO2-αZα(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である。);LiaNi1-b-cCobRcO2-αZ2(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である。);LiaNi1-b-cMnbRcDα(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α≦2である。);LiaNi1-b-cMnbRcO2-αZα(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である。);LiaNi1-b-cMnbRcO2-αZ2(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である。);LiaNibEcGdO2(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5および0.001≦d≦0.1である。);LiaNibCocMndGeO2(前記式中、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5および0.001≦e≦0.1である。);LiaNiGbO2(前記式中、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);LiaCoGbO2(前記式中、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);LiaMnGbO2(前記式中、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);LiaMn2GbO4(前記式中、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である。);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiTO2;LiNiVO4;Li(3-f)J2(PO4)3(0≦f≦2);Li(3-f)Fe2(PO4)3(0≦f≦2);およびLiFePO4。
【0072】
前記化学式において、AはNi、Co、Mnまたはこれらの組み合わせであり;RはAl、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはこれらの組み合わせであり;DはO、F、S、Pまたはこれらの組み合わせであり;EはCo、Mnまたはこれらの組み合わせであり;ZはF、S、Pまたはこれらの組み合わせであり;GはAl、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、Vまたはこれらの組み合わせであり;QはTi、Mo、Mnまたはこれらの組み合わせであり;TはCr、V、Fe、Sc、Yまたはこれらの組み合わせであり;JはV、Cr、Mn、Co、Ni、Cuまたはこれらの組み合わせである。
【0073】
もちろん、この化合物表面にコーティング層を有するものも使用することができ、または前記化合物とコーティング層を有する化合物を混合して使用することもできる。前記コーティング層は、コーティング元素化合物として、コーティング元素のオキシド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネートまたはコーティング元素のヒドロキシカーボネートを含むことができる。これらコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質であり得る。前記コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはこれらの混合物を使用することができる。コーティング層形成工程は、前記化合物にこのような元素を使用して正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えばスプレーコーティング、浸漬法)などでコーティングすることができれば如何なるコーティング方法を使用してもよく、これについては当該分野に務める者によく理解され得る内容であるため、詳細な説明は省略する。
【0074】
前記一実施形態の正極合剤は、導電剤、バインダー、またはこれらの混合物;をさらに含むことができる。前記導電剤は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を招かない電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末、金属繊維などを使用することができ、また、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料を1種または1種以上を混合して使用することができる。
【0075】
前記バインダーは、正極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また正極活物質を電流集電体に良好に付着させる役割を果たし、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化されたポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン-ブタジエンラバー、アクリル化スチレン-ブタジエンラバー、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0076】
前記正極は、正極集電体;および前記正極集電体上に位置し、前述した正極合剤を含む正極合剤層;を含むことができる。
【0077】
具体的に、前記正極は、正極集電体上に正極活物質、導電剤および/またはバインダーの混合物である電極合剤を塗布した後、乾燥して製造され得、必要に応じては、前記混合物に充填剤をさらに添加することができる。
【0078】
前記正極集電体は、一般的に3~500μmの厚さに作ることができる。このような正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば特に制限されるのではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステリイルレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを使用することができる。集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態が可能である。
【0079】
前記導電剤は、通常、正極活物質を含む混合物全体重量を基準として1~50重量%で添加される。このような導電剤は、当該電池に化学的変化を誘発せずに、導電性を有するものであれば特に制限されるのではなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを使用することができる。
【0080】
一方、前記弾性を有する黒鉛系物質が導電剤として使用されることができ、前記物質と共に使用されることもできる。
【0081】
前記バインダーは、活物質と導電剤などの結合と集電体に対する結合に助力する成分であって、通常、正極活物質を含む混合物全体重量を基準として1~50重量%で添加される。このようなバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、デンプン、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン-ジエンテルポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブタジエンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。
【0082】
前記充填剤は、正極の膨張を抑制する成分として選択的に使用され、当該電池に化学的変化を誘発せずに繊維状材料であれば特に制限されるのではなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系重合体;ガラス繊維、炭素繊維などの繊維状物質が使用される。
【0083】
前記負極は、集電体および前記集電体の上に形成された負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、負極活物質を含むことができる。
【0084】
前記負極活物質としては、炭素系負極活物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、Si、SiOx(0<x<2)、Si-C複合体、Si-Q合金(前記Qはアルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族~第16族元素、遷移金属、希土類元素またはこれらの組み合わせであるが、Siではない。)、Sn、SnO2、Sn-C複合体、およびSn-R(前記Rはアルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族~第16族元素、遷移金属、希土類元素またはこれらの組み合わせであるが、Snではない。)を含む群より選択される少なくとも1種以上の負極活物質を使用することができる。
【0085】
前記負極集電体は、一般的に3~500μmの厚さに作ることができる。このような負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに、導電性を有するものであれば特に制限されるのではなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などを使用することができる。また、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体など多様な形態で使用することができる。
【0086】
前記一実施形態のリチウム二次電池は、電解質の種類および/またはセパレータの種類によって、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、またはリチウムポリマー電池であり得る。
【0087】
前記一実施形態のリチウム二次電池が液体電解質を適用したリチウムイオン電池である時、前記液体電解質を分離膜に含浸させて適用することができる。前記分離膜は、正極と負極の間に介され、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性の薄膜が使用される。分離膜の気孔直径は、一般的に0.01~10μmであり、厚さは一般的に5~300μmである。このような分離膜としては、例えば、耐薬品性および疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ガラス繊維またはポリエチレンなどで作られたシートや不織布などが使用される。電解質としてポリマーなどの固体電解質が使用される場合には固体電解質が分離膜を兼ねることもできる。
【0088】
前記液体電解質は、リチウム塩含有非水電解質であり得る。前記リチウム塩含有非水電解質は、非水電解質とリチウムからなり、非水電解質としては、非水系有機溶媒、有機固体電解質、無機固体電解質などが使用されるが、これらだけに限定されるのではない。
【0089】
前記非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、γ-ブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン(furan)、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒を使用することができる。
【0090】
前記有機固体電解質としては、例えば、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキシド誘導体、ポリプロピレンオキシド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリアジテーションリシン(agitation lysine)、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、イオン性解離基を含む重合剤などを使用することができる。
【0091】
前記無機固体電解質としては、例えば、Li3N、LiI、Li5NI2、Li3N-LiI-LiOH、LiSiO4、LiSiO4-LiI-LiOH、Li2SiS3、Li4SiO4、Li4SiO4-LiI-LiOH、Li3PO4-Li2S-SiS2などのLiの窒化物、ハロゲン化物、硫酸塩などを使用することができる。
【0092】
前記リチウム塩は、前記非水系電解質に溶解されやすい物質であって、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiB10Cl10、LiPF6、LiCF3SO3、LiCF3CO2、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、(CF3SO2)2NLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、イミドなどを使用することができる。
【0093】
また、前記リチウム塩含有非水電解質には、充放電特性、難燃性などの改善を目的で、例えば、ピリジン、トリエチルホスファート、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n-グライム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N-置換オキサゾリジノン、N,N-置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2-メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加されることもできる。場合によっては、不燃性を付与するために、四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒をさらに含むこともでき、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスをさらに含むこともでき、フルオロエチレンカーボネート(FEC:Fluoro-Ethylene Carbonate)、プロペンスルトン(PRS:Propene sultone)などをさらに含むことができる。
【0094】
一つの具体的な例において、LiPF6、LiClO4、LiBF4、LiN(SO2CF3)2などのリチウム塩を、高誘電性溶媒であるECまたはPCの環状カーボネートと低粘度溶媒であるDEC、DMCまたはEMCの線状カーボネートの混合溶媒に添加してリチウム塩含有非水系電解質を製造することができる。
【0095】
前記一実施形態のリチウム二次電池は、これを単位電池として含む電池モジュール、前記電池モジュールを含む電池パック、および前記電池パックを電源として含むデバイスで具現され得る。
【0096】
この時、前記デバイスの具体的な例としては、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、プラグインハイブリッド電気自動車、または電力貯蔵用システムであり得るが、これに限定されるのではない。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【
図1】実験例1で別途に合成されたNi
2P
4O
12のXRDである。
【
図2a】実施例1の正極活物質に対するFE-SEMイメージである。
【
図2b】
図2aで特定の部分に対するEDSイメージである。
【
図3a】実施例1のリチウム二次電池を1回充電した後に分離された負極に対するSEMイメージである。
【
図3b】
図3aで特定の部分に対するEDSイメージである。
【
図3c】
図3aで特定の部分に対するEDSイメージである。
【
図4】実施例1および3、比較例1および3の各リチウム二次電池の充放電による容量(寿命)維持率評価結果を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0098】
以下、発明の具体的な実施例を通じて発明の作用、効果をより具体的に説明する。ただし、これは発明の例示として提示されたものであり、これによって発明の権利範囲が如何なる意味でも限定されるのではない。
【0099】
実施例1
(1)正極添加剤の製造
Li2O、NiO、および(NH4)2HPO4を混合して、原料混合物を製造した。
【0100】
ただし、前記原料混合物中のLi:Niのモル比が2:1になるように前記Li2Oおよび前記NiOは1:1のモル比で混合し、前記(NH4)2HPO4は前記原料混合物総量100重量%中の5重量%になるようにした。
【0101】
不活性ガスの一種である窒素ガスが2L/分で流入される条件下で、680℃で前記原料混合物を10時間熱処理して、実施例1の正極添加剤を得た。
【0102】
(2)正極およびリチウム二次電池(コインフルセル)の製造
実施例1の正極添加剤、導電剤(Super-P、デンカブラック)およびバインダー(PVdF)を97:2:1(正極添加剤:導電剤:バインダー)の重量比で有機溶媒(NMP)内で混合して、スラリー状の正極合剤として製造した後、前記正極合剤をアルミニウム集電体上に塗布して120℃の真空オーブンで30分間乾燥して正極を製造した。
【0103】
相対電極としては、黒鉛(graphite):導電剤(super P):バインダー(CMC)=95:1:4の重量比で混合、溶媒として水を使用して負極合剤スラリーを製造し、前記負極合剤スラリーを銅集電体上に塗布して50℃の真空オーブンで20分間乾燥して負極を製造した。
【0104】
前記各構成要素を使用して、通常の製造方法により2032コインフルセル(coin full-cell)を製作した。
【0105】
実施例2
(1)正極添加剤の製造
熱処理温度を680℃から730℃に変更した点を除き、実施例1と同様な方法を利用して実施例2の正極添加剤を得た。
【0106】
(2)正極およびリチウム二次電池(コインフルセル)の製造
実施例1の正極添加剤の代わりに実施例2の正極添加剤を使用した点を除き、実施例1と同様な方法で実施例2の正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0107】
実施例3
(1)正極添加剤の製造
熱処理温度を680℃から850℃に変更した点を除き、実施例1と同様な方法を利用して実施例3の正極添加剤を得た。
【0108】
(2)正極およびリチウム二次電池(コインフルセル)の製造
実施例1の正極添加剤の代わりに実施例3の正極添加剤を使用した点を除き、実施例1と同様な方法で実施例3の正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0109】
実施例4
(1)正極添加剤の製造
実施例1と同様な方法で正極添加剤を製造した。
【0110】
(2)正極およびリチウム二次電池(コインフルセル)の製造
正極活物質(LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)、前記正極添加剤、導電剤(Super-P、デンカブラック)およびバインダー(PVdF)を88:9:2:1(正極活物質:正極添加剤:導電剤:バインダー)の重量比で有機溶媒(NMP)内で混合して、スラリー状の正極合剤として製造した後、前記正極合剤をアルミニウム集電体上に塗布して120℃の真空オーブンで30分間乾燥して正極を製造した。
【0111】
相対電極としては、黒鉛(graphite):導電剤(super P):バインダー(CMC)=95:1:4の重量比で混合し、溶媒として水を使用して負極合剤スラリーを製造し、前記負極合剤スラリーを銅集電体上に塗布して50℃の真空オーブンで20分間乾燥して負極を製造した。
【0112】
比較例1
(1)正極添加剤の製造
N2流れ(flow)を2L/分から0.5L/分に変更した点を除き、実施例1と同様な方法を利用して比較例1の正極添加剤を得た。
【0113】
(2)正極およびリチウム二次電池(コインフルセル)の製造
実施例1の正極添加剤の代わりに比較例1の正極添加剤を使用した点を除き、実施例1と同様な方法で比較例1の正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0114】
比較例2
(1)正極添加剤の製造
熱処理温度を680℃から920℃に熱処理した点を除き、実施例1と同様な方法を利用して比較例2の正極添加剤を得た。
【0115】
(2)正極およびリチウム二次電池(コインフルセル)の製造
実施例1の正極添加剤の代わりに比較例2の正極添加剤を使用した点を除き、実施例1と同様な方法で比較例2の正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0116】
比較例3
(1)正極添加剤の製造
Li2OおよびNiOを1:1のモル比で混合した後、実施例1と同様に不活性ガスの一種である窒素ガスが2L/分で流入される条件下で、680℃で10時間熱処理してリチウムニッケル酸化物を得た。
【0117】
前記リチウムニッケル酸化物を回収した後、NH4H2PO4と混合した。ここで、前記リチウムニッケル酸化物およびNH4H2PO4の混合物総量100重量%中、NH4H2PO4は5重量%になるようにした。また、この時、使用した混合条件は前記Li2OおよびNiOの混合時に使用したものと同様にした。
【0118】
前記リチウムニッケル酸化物およびNH4H2PO4の混合物は、不活性ガス窒素ガスが2L/分で流入される条件下で、730℃で10時間熱処理し、その結果、比較例3の正極添加剤を得た。
【0119】
(2)正極およびリチウム二次電池(コインフルセル)の製造
実施例1の正極添加剤の代わりに比較例3の正極添加剤を使用した点を除き、実施例1と同様な方法で比較例3の正極およびリチウム二次電池を製造した。
【0120】
実験例1:X線回折分析(XRD:X-Ray Diffraction)による、正極添加剤の定性、定量分析
CuKαX線(X-rα)を使用するX線回折分析器(Bruker AXS D4-Endeavor XRD)を利用して、実施例1~3、比較例1~3の各正極添加剤のXRD分析を実施した。
【0121】
前記各正極添加剤のX線回折分析結果をBruker社のEvaluationプログラムを利用、定性分析してLi2NiO2、Li3PO4、Li2OおよびNiOに対する対応ピークを確認した。このような対応ピークに対して、TOPASプログラム(Bruker-AXS、TOPAS4、Karlsruhe、Germany)を利用したリートベルト法(Rietveld refinement)で二つの相(phase)間の定量分析を行った。リートベルト法(Rietveld refinement)は、測定されたX線回折パターンとLi2NiO2、Li3PO4、Li2OおよびNiOの各構造モデルから計算されたパターンが最もよく一致するまで使用可能な変数を反復的に調整するフィードバック過程であり、この過程で回折ピークの位置だけでなく、ピークの強度および強度比率が分析されて二つの相(phase)の含有量が定量分析される(参照文献:Rietveld, H.M.L 「Line Profiles of Neutron Powder-diffraction Peaks for Structure Refinement」 Axta. Cryst., 22, 151-2, 1967、およびBish D.L. and Howard C.J., 「Quantitative phase analysis using the Rietveld method」 J. Appl. Cryst., 21, 86-81, 1988)。
【0122】
このようなXRD分析結果を下記表1に示した。これによって、実施例1~3、比較例1~3は、それぞれ、Li2NiO2、Li3PO4、Li2OおよびNiOを含むものであることを分かった。
【0123】
ただし、下記表1を参照すると、原料物質の一括混合有無(熱処理回数)、熱処理温度、熱処理時の不活性ガスの供給有無およびその供給流速が前記各成分の配合比に影響を与えるという点が分かる。
【0124】
【0125】
前記表1によれば、熱処理工程で供給する窒素ガスの流速が1.5L/分未満である場合(比較例1)、Li2Oが全く検出されなかった。
【0126】
また、熱処理温度が900℃を超える場合(比較例2)、Li2OおよびNiOの混合物を熱処理してLi2NiO2を製造した後、(NH4)2HPO4を別途に混合して熱処理する場合(比較例3)は、Li2NiO2の検出量が実施例に比べて顕著に減った。
【0127】
このように熱処理温度が900℃を超えたり、熱処理が2回にわたって進行される場合、Li2NiO2が分解された後に再合成され得、消失したり再合成されないままLi2Oに戻る比率が増加することができる。
【0128】
一方、前記実施例1~3で合成されるNi2P4O12は微量であるため、最終物質中の含有量を確認するよりは、別途にNiOおよび(NH4)2HPO4だけNi:P=1:2モル比で混合して熱処理することによってNi2P4O12が合成されることを確認することとした。
【0129】
その結果、得られた物質を前記と同様な方法でXRD分析を実施し、その結果を
図1に示した。
【0130】
図1によれば、Ni
2P
4O
12と同一の位置で、前記NiOおよび(NH
4)
2HPO
4原料で製造された物質のXRDピークが観察される。したがって、前記Li
2O、NiO、および(NH
4)
2HPO
4を含む原料混合物を熱処理する工程でも、Li
2NiO
2が生成することに参加しない(未反応)NiOが前記(NH
4)
2HPO
4と反応することができ、その結果、Ni
2P
4O
12が生成され得ると推論される。
【0131】
また、Ni2P4O12は、不安定な構造によって反応性が高い化合物であるため、その全量が電解液に溶解されて負極表面でNiに還元されると予想された。
【0132】
実験例2:走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)およびエネルギー分光分析(EDS:Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)による、正極添加剤内のLi
3PO
4存在形態の確認
走査電子顕微鏡(FE-SEM)(JSM-7610F Schottky Field Emission Scanning Election Microscope)を利用して実施例1の正極添加剤表面を撮影し、その撮影イメージを
図2aに示した。
【0133】
図2aで、第1相の二次粒子と、その表面に付着された第2相(
図2aで円で表示された部分)の粒子が観察される。
【0134】
前記表1で分析された正極添加剤の構成成分中の最も多い含有量を占めるものはLi2NiO2であるため、前記第1相の二次粒子はLi2NiO2と判断される。
【0135】
前記第2相の粒子成分を把握するために、エネルギー分光分析(EDS)(JSM-7610F Schottky Field Emission Scanning Election Microscope)を実施した結果、
図2aで表された部分と相応する位置で、元素Pが認識された。そのために、コーティング層はPを含むものであることが分かった。
【0136】
前記表1で分析された正極添加剤の構成成分中のPを含む化合物は、Li3PO4が唯一であるため、前記第2相の粒子はLi3PO4であることが分かる。
【0137】
もちろん、実施例ではNi2P4O12も合成されるが、これは微量であるため、Ni2P4O12とみる。
【0138】
実験例3:リチウム二次電池の充放電後の負極表面特性評価
25℃で、実施例1のリチウム二次電池に対して、次のような条件で1回の充電を進行した後、負極を分離して、その負極表面の走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)およびエネルギー分光分析(EDS:Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)分析を実施した。
【0139】
充電(Charge):0.2C、CC/CV、4.2V、0.05Cカットオフ(cut-off)
図3aのSEMイメージによれば、1回充電進行後、実施例1のリチウム二次電池から分離された負極表面で被膜(film)が観察される。当該部分に対するEDS分析結果、被膜の主成分はNiと確認される(
図3c)。これは、実施例1の正極添加剤に含まれているNi
2P
4O
12が電解質に溶解された後、前記負極の表面で還元されてNi金属層を形成した結果と推論される。
【0140】
また、実施例1~4、および比較例1~3に対して誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)分析を実施して、その結果を下記表2に示した。
【0141】
【0142】
前記表2で、実施例1~3のNi還元量が比較例1~3に比べて顕著に過量であることが確認される。
【0143】
実施例1~3の場合、Li2NiO2生成反応に参加しない(未反応)NiOが前記(NH4)2HPO4と反応することができ、その結果、Ni2P4O12が生成され得ると推論される。また、Ni2P4O12は、不安定な構造によって反応性が高い化合物であるため、その全量が電解液に溶解されて負極表面でNiに還元され得ると推論される。
【0144】
反面、比較例1の反応温度自体は実施例1~3の範囲に含まれるが、不活性気体の供給流速を1.5L/分未満に下げることによってNi2P4O12が生成されず、このようにNi2P4O12を含まない添加剤は、負極表面にNi金属層を形成できなかったであろう。
【0145】
また、熱処理温度が900℃を超える場合(比較例2)、Li2OおよびNiOの混合物を熱処理してLi2NiO2を製造した後、(NH4)2HPO4を別途に混合して熱処理する場合(比較例3)は、構造的に不安定なLi2NiO2がこれらの熱処理条件で分解された後に再合成され、その過程でNi2P4O12が生成されなかったであろう。
【0146】
ただし、比較例1~3で検出されたNiは、極微量のNiOが正極添加剤から溶出された結果と推論される。
【0147】
実験例4:リチウム二次電池の充放電による容量維持率評価
25℃で、実施例1および3、比較例1および3の各リチウム二次電池に対して、次のような条件で50サイクルの充放電を進行した。各電池の初期(1
stサイクル)放電容量に対する50番目サイクル終了後の放電容量を評価して、その結果を
図4に示した。
【0148】
充電(Charge):0.2C、CC/CV、4.25V、0.05Cカットオフ(cut-off)
放電(Discharge):0.2C、CC、2.5V、カットオフ(cut-off)
【0149】
図4から、実施例1および3の負極表面に形成されたNi金属層が電池の電気化学的特性を阻害せず、同一のサイクルで比較例1および3水準の容量が維持されるようにすることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
前記一実施形態の正極添加剤を適用したリチウムイオン電池は、正極と負極の初期不可逆容量が効果的に相殺されながらも、ガス発生は抑制され、安定した駆動が可能になり得る。