(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】建築用木材接合金具
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20240918BHJP
E04B 1/26 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
E04B1/58 508L
E04B1/58 504L
E04B1/26 G
(21)【出願番号】P 2022070620
(22)【出願日】2022-04-22
【審査請求日】2023-04-24
(73)【特許権者】
【識別番号】521131856
【氏名又は名称】株式会社メタルサポート
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203321(JP,A)
【文献】特開平09-302781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/38-1/61
E04B 1/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱または梁である第1部材に固定する第1金具と、梁である第2部材に固定する第2金具とからなり、この第1金具と第2金具とをスライド係合して連結し、この第1部材と第2部材とを接合する建築用木材接合金具であって、
前記第2部材の端部に、前記第2金具の取付孔に固定具を貫通しこの固定具をこの第2部材にねじ込みまたは打ち込みしてこの第2金具を固定する構成とされていて、
この第2金具は、本体板部に重合板部が重合状態に設けられている構成であるとともに、この重合板部の前記本体板部に設けられている前記取付孔と連通状態となる位置に連通取付孔が設けられている構成とされていて、
この重合板部の連通取付孔は、貫通させる前記固定具が前記第2部材の長さ方向に対して傾斜角度が保持された状態でこの第2部材にねじ込みまたは打ち込みされる孔形状又は前記取付孔に対して位置ずれた位置に設けられている構成とされていることを特徴とする建築用木材接合金具。
【請求項2】
前記第1部材は柱であり、この第1部材の側面に前記第1金具が受け金具として固定される構成とされていて、
前記第2部材は梁であり、この第2部材の端面に前記第2金具がスライド係合金具として前記固定具により固定される構成とされていて、
前記第1金具に上方向から下方向に前記第2金具をスライド係合して連結することで、前記第1部材に前記第2部材を接合する構成であり、
前記固定具を、前記連通取付孔および前記取付孔に貫通させ前記第2部材にねじ込みまたは打ち込みすることで、この固定具は連通取付孔および取付孔の孔形状または双方の配置により規制もしくはガイドされて前記第2部材の長さ方向に対して傾斜した状態でねじ込みまたは打ち込みされ、この固定具により前記第2金具が前記第2部材の端面に固定される構成であることを特徴とする請求項1記載の建築用木材接合金具。
【請求項3】
前記第2金具の前記重合板部は、前記本体板部よりも板厚が肉薄であることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の建築用木材接合金具。
【請求項4】
前記第2金具の前記本体板部の前記取付孔および前記重合板部の前記連通取付孔に貫通しこの第2部材にねじ込みまたは打ち込みする前記固定具は、ビスまたは釘であり、この固定具が前記第2部材の長さ方向に対して45度程度の傾斜角度でねじ込みまたは打ち込みされるように規制もしくはガイドされる孔形状およびずれ位置に前記取付孔および前記連通取付孔が配設されている構成であることを特徴とす
る請求項1、2のいずれか1項に記載の建築用木材接合金具。
【請求項5】
前記第1金具に前記第2金具を上方向から下方向にスライド係合して連結するスライド係合構造がこの第1金具と第2金具に設けられているとともに、下方向への過スライドを規制するスライド規制部が設けられている構成であることを特徴とする請求項
1、2のいずれか1項に記載の建築用木材接合金具。
【請求項6】
前記第1金具に前記第2金具を上方向から下方向にスライド係合して連結するスライド係合構造がこの第1金具と第2金具に設けられているとともに、このスライド係合して連結したスライド係合連結状態を螺着固定する螺着固定構造が設けられている構成であることを特徴とする請求項
1、2のいずれか1項に記載の建築用木材接合金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば柱と梁や梁と梁などを接合する建築用木材接合金具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
柱と梁などを接合する建築用木材接合金具には様々な構成のものが開発されてきているが、たとえば一方の受け金具を柱側面にボルト止めやビス止めして固定し、梁の端面にはこの受け金具に上方から下方にスライド係合させて連結する他方のスライド係合金具をビス止めして固定し、この一方の柱側面の受け金具に他方の梁端面のスライド係合金具をスライド係合して連結することで、柱と梁とを接合するタイプの建築用木材接合金具もあり、好評である。
【0003】
このようなタイプの接合金具では、そのスライド係合構造、その各柱や梁への固定構造、せん断力や逆せん断力に耐えるための強度アップ構造について様々な改良もなされてきている。たとえば梁端面に強固に前記他方のスライド係合金具をビス止め固定するにあたり、このビスを斜め上方から打入して固定し止着強度を上げるとともに梁の亀裂損傷を防止して強度アップを図るようなビス止め構造(ビス孔形状)の改善などもなされている。
【0004】
すなわち、一方の受け金具は、柱に多数のビスや釘などの固定具を取付孔を介してねじ込んだり打ち込んだりして(打入して)柱に固定し強度アップを図ることも、また柱に止着ボルトを貫通させこれをナットで締め付けて(ボルト止めして)固定しさらに強度アップを図ることもできるが、梁の端面に止着する他方のスライド係合金具はこのようなボルト止めができず、また多数のビスを打入することも困難である。
【0005】
また、柱と異なり梁の端面に止着するこのスライド係合金具は、単に梁の長さ方向にビスをねじ込み固定すると、梁の木目方向とビス打入方向が平行となるため木材に一気に損傷(割れ)が生じるおそれがあり強度が弱くなるおそれがある。
【0006】
そのため従来、たとえばこのビスを梁に打入する取付孔を長孔に形成し、治具(打入ガイド具)などを用いてたとえば常に梁の長さ方向に対して45度以上斜め上方からねじ込んでこのスライド係合金具を梁端面に固定するようにし梁に損傷が生じてしまうことをできるだけ防止して強度を向上させるようにするものもある。
【0007】
しかしながら、このような傾斜打入のための治具を逐次用いて行う打入作業は厄介であり施工性に劣る。
【0008】
そのため、金具の取付孔自体を斜め打入のガイドとなるように、取付孔が直孔状でなく貫通方向に対して傾斜した孔形状にドリル機やレーザー加工機用いて加工形成するなどの改良も提案されている。
【0009】
がしかし、金具製作がそれだけ厄介となり量産性に劣ることになる。またさらに金具の板厚が薄ければその金具製作はまだ比較的容易で量産可能ともいえるが、たとえば高い強度が要求される木造建築において用いられる金具の場合のように金具が比較的厚い鋼板で形成されているような場合には、この肉厚な鋼板に対して傾斜打入ガイドとなる傾斜貫通形状の取付孔を形成するためには、厄介な機械加工を要し、量産性に劣る問題が生じることになり、このような場合は打入ガイド機能を内蔵させることはやはり困難となり治具を用いての施工(取付)となってしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような現状に鑑み、前記問題を解決したもので、金具を厚い金属板で形成する場合であっても、傾斜打入のガイドとしても機能する取付孔を厄介な機械加工を要せずに設けることができ、またそのため治具など用いずいわば傾斜打入ガイド機構を内蔵でき(傾斜打入ガイド機能を有し)梁に対して十分な傾斜角度で固定具を打入し固定することが容易にでき施工性に優れ、ゆえにたとえ肉厚金属板製の高強度用の金具であっても製作容易で量産性に優れ施工性にも優れた画期的な建築用木材接合金具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0012】
柱または梁である第1部材1に固定する第1金具3と、梁である第2部材2に固定する第2金具4とからなり、この第1金具3と第2金具4とをスライド係合して連結し、この第1部材1と第2部材2とを接合する建築用木材接合金具であって、前記第2部材2の端部に、前記第2金具4の取付孔5に固定具6を貫通しこの固定具6をこの第2部材2にねじ込みまたは打ち込みしてこの第2金具4を固定する構成とされていて、この第2金具4は、本体板部7に重合板部8が重合状態に設けられている構成であるとともに、この重合板部8の前記本体板部7に設けられている前記取付孔5と連通状態となる位置に連通取付孔9が設けられている構成とされていて、この重合板部8の連通取付孔9は、貫通させる前記固定具6が前記第2部材2の長さ方向に対して傾斜角度が保持された状態でこの第2部材2にねじ込みまたは打ち込みされる孔形状又は前記取付孔5に対して位置ずれた位置に設けられている構成とされていることを特徴とする建築用木材接合金具に係るものである。
【0013】
また前記第1部材1は柱であり、この第1部材1の側面に前記第1金具3が受け金具として固定される構成とされていて、前記第2部材2は梁であり、この第2部材2の端面に前記第2金具4がスライド係合金具として前記固定具6により固定される構成とされていて、前記第1金具3に上方向から下方向に前記第2金具4をスライド係合して連結することで、前記第1部材1に前記第2部材2を接合する構成であり、前記固定具6を、前記連通取付孔9および前記取付孔5に貫通させ前記第2部材2にねじ込みまたは打ち込みすることで、この固定具6は連通取付孔9および取付孔5の孔形状または双方の配置により規制もしくはガイドされて前記第2部材2の長さ方向に対して傾斜した状態でねじ込みまたは打ち込みされ、この固定具6により前記第2金具4が前記第2部材2の端面に固定される構成であることを特徴とする請求項1記載の建築用木材接合金具に係るものである。
【0014】
また前記第2金具4の前記重合板部8は、前記本体板部7よりも板厚が肉薄であることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の建築用木材接合金具に係るものである。
【0015】
また前記第2金具4の前記本体板部7の前記取付孔5および前記重合板部8の前記連通取付孔9に貫通しこの第2部材2にねじ込みまたは打ち込みする前記固定具6は、ビスまたは釘であり、この固定具6が前記第2部材2の長さ方向に対して45度程度の傾斜角度でねじ込みまたは打ち込みされるように規制もしくはガイドされる孔形状およびずれ位置に前記取付孔5および前記連通取付孔9が配設されている構成であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の建築用木材接合金具に係るものである。
【0016】
また前記第1金具3に前記第2金具4を上方向から下方向にスライド係合して連結するスライド係合構造10がこの第1金具3と第2金具4に設けられているとともに、下方向への過スライドを規制するスライド規制部11が設けられている構成であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の建築用木材接合金具に係るものである。
【0017】
また前記第1金具3に前記第2金具4を上方向から下方向にスライド係合して連結するスライド係合構造10がこの第1金具3と第2金具4に設けられているとともに、このスライド係合して連結したスライド係合連結状態を螺着固定する螺着固定構造12が設けられている構成であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の建築用木材接合金具に係るものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明は上述のように構成したから、金具を厚い金属板で形成する場合であっても、傾斜打入のガイドとしても機能する取付孔を厄介な機械加工を要せずに設けることができ、またそのため治具など用いずいわば傾斜打入ガイド機構を内蔵でき(傾斜打入ガイド機能を有し)梁に対して十分な傾斜角度で固定具を打入し固定することが容易にでき施工性に優れ、ゆえにたとえ肉厚金属板製の高強度用の金具であっても製作容易で量産性に優れ施工性にも優れた画期的な建築用木材接合金具となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施例1のスライド係合金具である第2金具の斜視図である。
【
図2】実施例1の受け金具である第1金具の斜視図である。
【
図3】実施例1の第1金具、第2金具をそれぞれ柱と梁に取り付け固定した状態のスライド係合連結前の説明斜視図である。
【
図4】実施例1の第1金具、第2金具をそれぞれ柱と梁に取り付け固定した状態のスライド係合連結前の説明側断面図である。
【
図5】実施例1のスライド係合金具である第2金具を梁の端面の座繰り面(仕口)に固定具で取り付け固定することを示す要部の拡大説明側断面図である。
【
図6】実施例1の第1金具、第2金具をそれぞれ柱と梁に取り付け固定しスライド係合連結した状態であってその後さらにボルト止めことを示す要部の拡大説明側断面図である。
【
図7】実施例1の第1金具、第2金具をそれぞれ柱と梁に取り付け固定しスライド係合連結した状態でその後さらにボルト止めして係合連結し柱に梁を接合した状態を示す説明側断面図である。
【
図8】実施例2の第1金具、第2金具をそれぞれ柱と梁に取り付け固定した状態のスライド係合連結前の説明斜視図である。
【
図9】実施例2の第1金具、第2金具をそれぞれ柱と梁に取り付け固定した状態のスライド係合連結前の説明側断面図である。
【
図10】実施例2の第1金具、第2金具をそれぞれ柱と梁に取り付け固定しスライド係合連結した状態の要部の拡大説明側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の最適な実施形態を図面に基づいて本発明の作用を示し簡単に説明する。
【0021】
たとえば柱である第1部材1の側面に受け金具となる第1金具3を固定し、梁である第2部材2の端面にはスライド係合金具となる第2金具4を固定し、この一方の第1金具3に上方向から下方向に他方の第2金具4をスライド係合して連結し、この第1部材1(柱)と第2部材2(梁)とを接合する構成としている。
【0022】
この第2金具4は、前記第2部材2の端部に、この第2金具4に設けた取付孔5に固定具6(たとえばスクリューネジなどのビス)を貫通しこの固定具6をこの第2部材2にねじ込みまたは打ち込みして(打入して)この第2金具4を固定する構成としている。
【0023】
また本発明のこの第2金具4は、本体板部7に重合板部8を重合状態に設けた構成として、この本体板部7に前記取付孔5を設け、重合板部8にはこれと連通状態となる位置に連通取付孔9を設けた構成としている。
【0024】
そしてこの重合板部8の連通取付孔9は、貫通させる前記固定具6が前記第2部材2の長さ方向に対して十分な傾斜角度が保持された状態でこの第2部材2にねじ込みまたは打ち込みされる孔形状又は前記取付孔5に対して位置ずれた位置に設けた構成としている。
【0025】
したがって、固定具6を、連通取付孔9および取付孔5に貫通させ第2部材2にねじ込むまたは打ち込むことで、この固定具6は連通取付孔9および取付孔5の孔形状または双方の配置により打入角度が所定角度範囲となるように規制もしくはガイドされて、すなわち第2部材2の長さ方向に対して所定角度傾斜した状態でねじ込みまたは打ち込みされ、この固定具6により第2金具4が前記第2部材2の端面に固定されることとなる。
【0026】
たとえば、本体板部7に多数設けた取付孔5に対して重合板部8にこれと対応する多数の連通取付孔9をそれぞれ位置ずれた位置に設けた構成とし、この双方の孔に貫通させて固定具6を第2部材2に打入することで、治具に頼らずとも所定角度範囲の傾斜角度にこの固定具6を打入できる。すなわち、いわば傾斜打入ガイド機構を内蔵した構成に容易に形成でき、単にこの位置ずれている連通取付孔9および取付孔5にビスや釘などの固定具6を打入するだけで、治具を用いなくとも第2部材2の長さ方向に対して傾斜した角度(たとえば十分に亀裂損傷を防止できる45度程度以上の傾斜角度)に固定具6を打入できることとなるから、亀裂損傷が生じにくく耐せん断力強度に優れ施工性にも優れた建築用木材接合金具となる。
【0027】
またさらにこのように内蔵させる傾斜打入ガイド機構は、直孔状に形成した取付孔と連通取付孔の孔形状や位置ずれ配置により実現できるから、厄介な機械加工を要せずに設けることができ、ゆえにたとえ肉厚金属板製の高強度用の金具であっても製作容易で量産性に優れ施工性にも優れた画期的な建築用木材接合金具となるものである。
【実施例1】
【0028】
本発明の具体的な実施例1について図面に基づいて説明する。
【0029】
本実施例は、柱である第1部材1に固定する第1金具3と、梁である第2部材2に固定する第2金具4とを上方向から下方向にスライド係合して連結し、この第1部材1と第2部材2とを接合する建築用木材接合金具に本発明を適用した実施例である。
【0030】
すなわち、本実施例での第1部材1は柱であり、この第1部材1の側面に、第1金具3を受け金具として固定する構成とし、また本実施例の第2部材2は梁であり、この第2部材2の端面の座繰り面(仕口)に、第2金具4をスライド係合金具として固定する構成とし、この柱側面の第1金具3と、梁端面の座繰り面の第2金具4とを上方向から下方向にスライド係合して連結し、この第1部材1の側面と第2部材2の端面とを面一にして接合する構成としている。
【0031】
また本実施例では、第1金具3もこの第1金具3に形成した多数の取付孔5を介してビスなどの固定具6を第1部材1(柱)に多数ねじ込んでこの柱側面に第1金具3をビス止め固定する構成としている。
【0032】
また第2金具4も多数形成した取付孔5およびこれと位置ずれた位置で連通するように設けた連通取付孔9を介してビスなどの固定具6を第2部材2(梁)に多数ねじ込んでこの梁端面の座繰り面に第2金具4をビス止め固定する構成としている。
【0033】
さらに説明すると、本実施例では第2部材2(梁)の端部にビス止めするこの第2金具4は、厚い本体板部7に薄い重合板部8を重合状態に設けた構成としているとともに、この重合板部8の前記本体板部7に設けた各取付孔5とそれぞれ位置ずれた位置で連通状態となるように連通取付孔9を設けた構成としている。
【0034】
またこの重合板部8の連通取付孔9は、貫通させる固定具6(スクリューネジなどのビス)が第2部材2(梁)の長さ方向に対して十分な傾斜角度範囲(45度程度以上の角度範囲)にガイドされこの傾斜角度が保持される状態でこの第2部材2にねじ込みまたは打ち込みされる孔形状又は前記取付孔5に対して位置ずれた位置に設けた構成としている。
【0035】
具体的には、一方の長孔状の取付孔5の孔縁と他方の長孔状の連通取付孔9の孔縁とでその打入傾斜角度が所定角度範囲内に規制されるように構成して、この双方の孔に固定具6を貫通打入することで、自動的に第2部材2(梁)の長さ方向に対して45度程度傾斜して打入しこれが保持されるように双方の孔形状と孔配置を設定した構成としている。
【0036】
さらに説明すれば本実施例では、比較的厚い鋼板製の本体板部7に間隔をおいて薄金属板製の重合板部8を設けた構成とし、本実施例では貫通方向(板厚方向)に真っすぐな直孔状に形成した多数の取付孔5に対応して、薄板状の重合板部8に同じく直孔状の連通取付孔9を前述のようにそれぞれ少し位置ずれた位置に形成し、この各孔形状と位置ずれ配置とを前述のように設定した構成としている。
【0037】
すなわち、固定具6を、連通取付孔9および取付孔5に貫通させ第2部材2(梁)にねじ込みまたは打ち込みすることで、この固定具6は連通取付孔9および取付孔5の孔形状および双方の配置によってガイド(規制)されて第2部材2の長さ方向に対して傾斜した状態で打ち込みまたはねじ込みされ、この固定具6により第2金具4が第2部材2の端面の座繰り面に固定される構成としている。具体的には本実施例では、この孔形状と孔の位置ずれ配置の設定は適宜設定できるが、本実施例では、双方の孔に貫通するように固定具6を打入すると、自動的に亀裂損傷の発生を十分に抑制できる45度程度傾斜した角度に規制されるように十分に双方の孔が位置ずれていてその孔形状(孔縁)により傾斜角度範囲の上限と下限とが規制されるように構成している。
【0038】
また本実施例では、前述のように第1金具3も第2金具4の本体板部7も強度が要求される木造建築に使用可能な比較的厚い鋼板製で形成し、この第2金具4においてはその本体板部7と間隔置いて重合状態に設けた重合板部8は、この厚い本体板部7よりも板厚が肉薄な薄板状の金属板で構成している。
【0039】
具体的には、たとえば厚い鋼板製の本体板部7に薄い重合板部8の中央切り出し垂下片15や端部折り下げ垂下片を設置して、板面間の固定具6が傾斜貫通する間隔を介してこの本体板部7の左右立ち上げ片部間に重合板部8が(離間)重合状態に係合するように設け、この重合板部8の垂下片15部分を本体板部7の板面に溶接固定する構成としている。
【0040】
したがって、この第1金具3および第2金具4の本体板部7に形成する多数の取付孔5も重合板部8に多数形成する連通取付孔9もその離間間隔と孔形状および位置ずれ度合の設定により傾斜打入ガイド機構をこのスライド係合金具である第2金具4に設けることができ、また各孔は貫通方向に傾斜していない直孔状に形成する孔でよいから、厄介な機械加工を要することなくプレス機や穴あけ加工機やレーザー加工機により加工でき、たとえ厚い鋼板製であっても容易に形成でき量産性に優れ、また前述のようにこの各取付孔5の孔形状や形成位置および位置ずれ度合を設定すれば、単にビスなどの固定具6を、連通取付孔9および取付孔5に貫通させ第2部材2に打入することで、この孔形状および双方の配置(離間距離や位置ずれ度合)により所定傾斜角度に自動的に打入され保持されて、たとえば本実施例のように第2部材2の長さ方向に対して亀裂損傷を十分に防止できるのに十分な45度程度以上傾斜した状態に打入でき、治具を用いずこの内蔵した傾斜打入ガイド機構により容易にこのような傾斜角度で簡単にビス止め固定できることとなる。
【0041】
また本実施例では、第1金具3に第2金具4を上方向から下方向にスライド係合して連結するスライド係合構造10を、この第1金具3と第2金具4に設けた構成としている。
具体的には、各金具の左右の立ち上げ部が互いにスライド係合する構成としているとともに、互いに凹凸係合する係合部をも設けてかみ合い構造にも構成して、連結強度を高めた構成としている。
【0042】
またさらに下方向への過スライドを規制するスライド規制部11を設けた構成としている。具体的には受け金具となる第1金具3の下部に、スライド係合金具となる第2金具4の下部が突き当たる突き当て部をスライド規制部11として設けた構成としている。
【0043】
また本実施例では、スライド係合金具となる第2金具4の上部に、受け金具となる第1金具3の上部が近接する近接部を前記スライド規制部11の補助として設けている。
【0044】
また本実施例では、前記スライド係合構造10により前記第1金具3に前記第2金具4を上方向から下方向にスライド係合して連結する構成としているが、さらに本実施例では、このスライド係合して連結したスライド係合連結状態を螺着固定する螺着固定構造12を設けた構成としている。
【0045】
具体的には、第1金具3の上部にボルト止め用の筒状の螺着部13を設け、第2金具4にはこの螺着部13に螺着する螺着ボルト14が梁貫通孔17を介して上方から貫通するボルト止め用孔18を設けたボルト止め用取付部19を設け、この螺着ボルト14の頭部16をボルト止め用取付部19のボルト止め用孔18周辺で受けて、この螺着ボルト14を螺着部13に螺着することで、第1金具3と第2金具4とを螺着連結するように前記螺着固定構造12を構成している。
【0046】
これにより一層強固に連結されることとなる。すなわちこれによりかみ合ったスライド係合連結状態がさらに強固に螺着連結保持されるから、せん断力のみならず逆せん断力や引張り力に対しての耐力も強固となり強度アップが図られることとなる。
【実施例2】
【0047】
実施例2は、
図8、
図9、
図10に示すように、受け金具となる第1金具3にも傾斜打入ガイド機構を内蔵し、ビスなどの固定具6を45程度傾斜させて打入できるように構成した実施例である。これにより、スライド係合金具である第2金具4と同様に受け金具となる第1金具3も容易に傾斜ビス止めでき、たとえビス止めでも一層強固に固定でき、強度アップを図ることができる。
【0048】
具体的には、スライド係合金具である第2金具4と同様に受け金具となる第1金具3も、本体板部7に重合板部8を重合状態に設けた構成とし、この本体板部7に取付孔5を設け、重合板部8にはこれと連通状態となる位置に連通取付孔9を設けた構成としている。
【0049】
そしてこの重合板部8の連通取付孔9は、貫通させる前記固定具6が前記第1部材1(柱)の長さ方向に対して十分な傾斜角度が保持された状態でこの第1部材1にねじ込みまたは打ち込みされる孔形状又は前記取付孔5に対して位置ずれた位置に設けた構成としている。
【0050】
すなわち、実施例2ではこの第1金具3においても、固定具6を、連通取付孔9および取付孔5に貫通させ第1部材1にねじ込むまたは打ち込むことで、この固定具6は連通取付孔9および取付孔5の孔形状または双方の配置により打入角度が所定角度範囲となるように規制もしくはガイドされて、すなわち第1部材1の長さ方向に対して所定角度傾斜した状態でねじ込みまたは打ち込みされ、この固定具6により第1金具3が第1部材1の側面に固定されるように構成している。
【0051】
尚、本発明は、実施例1、2に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0052】
1 第1部材
2 第2部材
3 第1金具
4 第2金具
5 取付孔
6 固定具
7 本体板部
8 重合板部
9 連通取付孔
10 スライド係合構造
11 スライド規制部
12 螺着固定構造
13 螺着部
14 螺着ボルト
15 切り出し垂下片
16 頭部
17 梁貫通孔
18 ボルト止め用孔
19 ボルト止め用取付部