(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】生理学的信号を変換するための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/02 20060101AFI20240918BHJP
A61B 5/0205 20060101ALI20240918BHJP
A61B 5/053 20210101ALI20240918BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20240918BHJP
A61B 5/347 20210101ALI20240918BHJP
【FI】
A61B5/02 A
A61B5/0205
A61B5/053
A61B5/33 200
A61B5/347
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022110381
(22)【出願日】2022-07-08
【審査請求日】2022-10-04
(32)【優先日】2021-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521124319
【氏名又は名称】テラ クアンタム アーゲー
【氏名又は名称原語表記】TERRA QUANTUM AG
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】ベロウソフ・ユーリー
(72)【発明者】
【氏名】エルキン・ニコライ
(72)【発明者】
【氏名】レヴェンコ・セルゲイ
(72)【発明者】
【氏名】タラカノフ・イーゴリ
(72)【発明者】
【氏名】チホミロヴァ・リュドミーラ
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-327476(JP,A)
【文献】国際公開第2014/123512(WO,A1)
【文献】Odinaka, Ikenna et al.,Cardiovascular Biometrics: Combining Mechanical and Electrical Signals,IEEE Transactions on Information Forensics and Security,2015年,Vol.10, No.1,pp.16-27,DOI: 10.1109/TIFS.2014.2361261
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的信号を変換するための方法であって、
時間パラメータの関数として第1の信号(S
1)を得るステップであって、前記第1の信号(S
1)が心電図データを表す、第1の信号(S
1)を得るステップと、
前記時間パラメータの関数として第2の信号(S
2)を得るステップであって、前記第2の信号(S
2)が前記心電図データとは異なる生理学的データを表す、第2の信号(S
2)を得るステップと、
前記第1の信号(S
1)と前記第2の信号(S
2)とを混合して混合信号(M)を得るステップと、
前記混合信号(M)に関係する周波数スペクトルを生成するステップと
を含
み、
前記生理学的データが、血管のレオグラムデータを含む、方法。
【請求項2】
前記第1の信号(S
1)と前記第2の信号(S
2)との混合の前に、前記第1の信号(S
1)を正規化するステップ及び/又は前記第2の信号(S
2)を正規化するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の信号(S
1)を正規化する前記ステップは、前記第1の信号(S
1)を、所定の第1の時間間隔にわたって前記第1の信号(S
1)によって達成される第1の最大値で除算することを含み、及び/又は
前記第2の信号(S
2)を正規化する前記ステップは、前記第2の信号(S
2)を、所定の第2の時間間隔にわたって前記第2の信号(S
2)によって達成される第2の最大値で除算することを含む、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の信号(S
1)と前記第2の信号(S
2)とを混合する前記ステップが、前記第1の信号(S
1)及び前記第2の信号(S
2)を一次結合することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の信号(S
1)と前記第2の信号(S
2)とを混合する前記ステップが、前記第1の信号(S
1)及び前記第2の信号(S
2)を、前記第1の信号(S
1)及び前記第2の信号(S
2)の等しい重みで一次結合することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記混合信号(M)が、前記第1の信号(S
1)と前記第2の信号(S
2)との和によって与えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記混合信号(M)に関係する前記周波数スペクトルを生成する前記ステップが、前記混合信号(M)を積分変換することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記積分変換が、フーリエ変換及び/又は分数次フーリエ変換及び/又はラドン変換を含む、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記混合信号(M)に関係する前記周波数スペクトルを、基準周波数スペクトルと、及び/又は、請求項1~
8のいずれか一項に記載の方法に従って得られる第2の周波数スペクトルと比較するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
コンピュータ可読命令を含み、コンピュータプログラムであって、結果、前記コンピュータ可読命令は、コンピュータ上で読み出されると、前記コンピュータに請求項
1に記載の方法を実施させる、コンピュータプログラム。
【請求項11】
生理学的信号を変換するためのシステム(10、10’)であって、
時間パラメータの関数として第1の信号(S
1)を得るように適合された取得ユニット(12)であり、前記第1の信号(S
1)が心電図データを表し、及び前記時間パラメータの関数として第2の信号(S
2)を得るように適合された取得ユニット(12)であり、前記第2の信号(S
2)が前記心電図データとは異なる生理学的データを表す、取得ユニット(12)と、
前記第1の信号(S
1)と前記第2の信号(S
2)とを混合して混合信号(M)を得るように適合されている混合ユニット(14)と、
前記混合信号(M)に関係する周波数スペクトルを生成するように適合されている変換ユニット(16)と
を備え
、
前記生理学的データが、血管のレオグラムデータを含む、システム(10、10’)。
【請求項12】
前記第1の信号(S
1)を正規化するように適合され、及び/又は前記第2の信号(S
2)を正規化するように適合された正規化ユニット(18)をさらに備える、請求項
11に記載のシステム(10、10’)。
【請求項13】
前記混合ユニット(14)が、前記第1の信号(S
1)及び前記第2の信号(S
2)を一次結合するように適合されている、請求項
11に記載のシステム(10、10’)。
【請求項14】
前記混合ユニット(14)が、前記第1の信号(S
1)及び前記第2の信号(S
2)を、前記第1の信号(S
1)及び前記第2の信号(S
2)の等しい重みで一次結合するように適合されている、請求項
11に記載のシステム(10、10’)。
【請求項15】
前記変換ユニット(16)は、前記混合信号(M)を積分変換にかけて、前記混合信号(M)に関係する前記周波数スペクトルを生成するように適合されている、請求項
11に記載のシステム(10、10’)。
【請求項16】
前記混合信号(M)に関係する前記周波数スペクトルを基準周波数スペクトルと、及び/又は第2の周波数スペクトルと比較するように適合された分析ユニット(20)をさらに備える、請求項
11に記載のシステム(10、10’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生理学的信号を変換するための、特に生理学的信号を分析に適した周波数スペクトルに変換するための技法に関する。
【背景技術】
【0002】
取得された電気信号に基づく生体系の状態の分析は、非侵襲的な研究及び診断の状況において重要な役割を果たす。人体又は動物体の循環系の状態を調べることを可能にする電気信号は、重要な一例である。これに関連して、血管、特に動脈の状態の意味のある物理的特性は、その変動が動脈の異なる物理的状態を反映し得るそれらの液圧インピーダンスである。例えば、動脈は、異なる薬物への曝露後に異なる状態になり得る。動脈は、血管壁の自然弾性の結果として、その断面、したがってその液圧インピーダンスを変化させることができ(受動状態)、剛性壁を有する状態にすることもできる(能動状態)ことが実験的に示されている。液圧インピーダンスは、動脈の流管内に配置されたプローブによって直接的に測定することができる。しかし、より実際的に関連するのは、動脈の長さに沿った電気抵抗測定であり、これは液圧インピーダンスも反映し得る。有利には、これらの後者の技法は、循環系に関する重要な情報を得る非侵襲的方法を提供する。
【0003】
従来、経時的な液圧インピーダンスの変動は、動脈の長さに沿った電気抵抗測定によって決定されており、得られた時系列は、フーリエ変換によって周波数スペクトルに変換されている。ラドン変換などの他の変換も同様に、これに関連して使用されている。Y.M.Belousov他「Tomographic representation of ECG signal」(J.Russ.Laser Res.vol.39 issue3(2018))を参照されたい。
【0004】
しかしながら、これらの従来の信号変換及び分析技法は、動脈の異なる状態間でほとんど異ならないスペクトルをもたらすことがあり、したがって、動脈の異なる状態間の十分に明確な区別を提供することができないことが分かった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの考慮事項及び欠点を考慮すると、基礎となる生体系の異なる生理学的状態間のより明確かつより正確な区別を可能にする、生理学的信号を変換するための改善された技法が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの目的は、独立請求項1に記載の生理学的信号を変換するための方法、及び独立請求項11に記載の生理学的信号を変換するためのシステムによって対処される。従属請求項は、好ましい実施形態に関する。
【0007】
第1の態様では、本開示は、生理学的信号を変換するための方法であって、時間パラメータの関数として第1の信号を得るステップであって、第1の信号が心電図データを表す、第1の信号を得るステップと、時間パラメータの関数として第2の信号を得るステップであって、第2の信号が心電図データとは異なる生理学的データを表す、第2の信号を得るステップと、第1の信号と第2の信号とを混合して混合信号を得るステップと、混合信号に関係する周波数スペクトルを生成するステップとを含む、方法に関する。
【0008】
分析される生理学的データを心電図データと混合し、混合信号の周波数スペクトルを生成することによって、多くの実際的に関連するシナリオで生体系の異なる状態間のより良好な識別性を提供することができる。これに関連して、心電図データは、従来の変換及び分析技法から逃れることがある異なる状態間の区別を明らかにすることができる枠組み又は基準を提供することができる。
【0009】
本開示の文脈では、生理学的データは、人体又は動物体に関係する任意のデータであってもよい。
【0010】
特に、生理学的データは、電気生理学的データを含んでもよい。本開示の文脈では、電気生理学的データは、人体若しくは動物体の電気的測定から得られたデータ、又はその後に電気信号に変換されている人体若しくは動物体から取得される測定信号を示すことができる。
【0011】
心電図(ECG)データは、同じ人体又は同じ動物体に関係してもよい。特に、心電図データは、生理学的データと同時にサンプリングされたデータであってもよい。
【0012】
一実施形態によれば、生理学的データは、レオグラムデータを含んでもよい。
【0013】
本開示の文脈において、レオグラムデータは、液体又は気体の流れに関係する任意のデータを示すことができる。
【0014】
具体的には、生理学的データは、人体又は動物体の動脈などの血管のレオグラムデータを含んでもよい。
【0015】
一実施形態によれば、生理学的データは、電気インピーダンス及び/又は液圧インピーダンス、特に動脈などの血管の電気インピーダンス及び/又は液圧インピーダンスに関してもよい。
【0016】
第1の信号は、所定の第1の時間間隔にわたって得られてもよく、及び/又は第2の信号は、所定の第2の時間間隔にわたって得られてもよい。
【0017】
任意選択的に、第2の時間間隔は第1の時間間隔に対応する。
【0018】
第1の信号は、第1の複数の異なる時点に関連する複数の第1の信号値を含んでもよい。第1の信号値の各々は、それぞれの時点に関係する心電図測定値を反映してもよい。任意選択的に、第1の複数の異なる時点は、所定の第1の時間間隔内にある。
【0019】
同様に、第2の信号は、第2の複数の異なる時点に関連する複数の第2の信号値を含んでもよい。第2の信号値の各々は、それぞれの時点に関係する生理学的パラメータ又は特性の測定値を反映してもよく、生理学的パラメータ又は特性は心電図を構成せず、心電図に関係もしない。任意選択的に、第2の複数の異なる時点は、所定の第2の時間間隔内にある。
【0020】
一実施形態によれば、本方法は、第1の信号と第2の信号との混合の前に、第1の信号を正規化するステップ及び/又は第2の信号を正規化するステップを含むことができる。
【0021】
第1の信号及び/又は第2の信号を正規化することにより、第1の信号及び第2の信号を無次元にすることを可能にすることができ、異なるタイプ及び異なる振幅範囲の信号値の混合を容易にすることもできる。
【0022】
第1の信号を正規化するステップは、第1の信号を第1の正規化値で除算することを含むことができる。例えば、第1の信号を正規化するステップは、第1の信号を、所定の第1の時間間隔にわたって第1の信号によって達成される第1の最大値で除算することを含むことができる。
【0023】
同様に、第2の信号を正規化するステップは、第2の信号を第2の正規化値で除算することを含むことができる。例えば、第2の信号を正規化するステップは、第2の信号を、所定の第2の時間間隔にわたって第2の信号によって達成される第2の最大値で除算することを含むことができる。
【0024】
特に、第2の時間間隔は第1の時間間隔に対応してもよい。
【0025】
本開示の文脈では、第1の信号と第2の信号とを混合するステップは、第1の信号と第2の信号とを相関させる任意の動作を含んでもよい。混合信号、及び本開示の文脈は、第1の信号と第2の信号の両方に依存する任意の信号を示すことができる。
【0026】
一実施形態によれば、第1の信号と第2の信号とを混合するステップは、第1の信号と第2の信号とを一次結合することを含む。特に、第1の信号及び第2の信号は、等しい重み係数で一次結合されてもよい。
【0027】
具体的には、混合信号は、第1の信号と第2の信号との和として与えられてもよい。
【0028】
信号の一次結合は、電子的に実装するのが比較的容易であり、非一次信号結合よりも少ない処理及びメモリリソースしか必要としない場合がある。
【0029】
しかしながら、他の実施形態では、混合信号は、二次結合又はより高次の項などの、第1の信号と第2の信号との非一次結合を含んでもよい。
【0030】
混合するステップは、正規化された第1の信号と正規化された第2の信号とを混合して混合信号を得ることを含んでもよい。
【0031】
一実施形態によれば、混合信号に関係する周波数スペクトルを生成するステップは、混合信号を積分変換することを含んでもよい。
【0032】
周波数スペクトルは、積分変換の周波数スペクトルに対応してもよく、又は、積分変換の一次関数若しくは二次関数などの積分変換の関数の周波数スペクトルに対応してもよい。
【0033】
本開示の文脈では、積分変換は、電子及び/又は論理演算などによって、時間依存信号を周波数依存信号に変換するように適合された任意の変換又は信号変換を示すことができる。積分変換は、連続積分変換及び/又は離散積分変換を含んでもよい。
【0034】
本開示の文脈において、時間及び周波数は、相補的な変数の任意の対を示すことができる。
【0035】
一実施形態では、積分変換は、連続若しくは離散フーリエ変換及び/又は分数次フーリエ変換及び/又は連続若しくは離散ラドン変換を含んでもよい。
【0036】
周波数スペクトルは、特に、第1の信号及び第2の信号が関係する人体又は動物体の異なる生理学的状態に特徴的である区別を決定するために、その後の分析の対象となり得る。
【0037】
この目的のために、上述した技法を用いていくつかの異なる周波数スペクトルを得ることができ、異なる周波数スペクトルは、それらが生成される第1の信号及び第2の信号の対が異なる。例えば、異なる周波数スペクトルに関係する異なる第1の信号は、それらが取得された時間、又はそれらが取得された人体又は動物体の状態が異なり得る。
【0038】
したがって、一実施形態によれば、方法は、混合信号に関係する周波数スペクトルを、基準周波数スペクトルと、及び/又は、上述の特徴の一部若しくはすべてを有する方法に従って得られる第2の周波数スペクトルと比較するステップをさらに含む。
【0039】
続いて又は並行して異なる積分変換を使用することはまた、ユーザが異なる基礎となる生理学的状態をより良好に区別するのを支援することもできる。したがって、いくつかの実施形態では、同じ対の第1の信号と第2の信号との混合を異なる積分変換にかけ、それぞれの周波数スペクトルを互いに、及び/又は基準周波数スペクトルと比較することが有意義であり得る。
【0040】
したがって、一実施形態によれば、本方法は、混合信号に関係する第2の周波数スペクトルを生成するステップをさらに含むことができる。
【0041】
特に、混合信号に関係する第2の周波数スペクトルを生成するステップは、混合信号を上記積分変換とは異なる第2の積分変換にかけることを含んでもよい。
【0042】
第2の態様では、本開示はさらに、コンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラム又はコンピュータプログラム製品であって、結果、命令が、コンピュータ上で読み出されると、第1の態様に関して上述した特徴の一部又は全部を有する方法をコンピュータに実施させる、コンピュータプログラム又はコンピュータプログラム製品に関する。
【0043】
第3の態様では、本開示は、生理学的信号を変換するためのシステムに関する。システムは、時間パラメータの関数として第1の信号を得るように適合された取得ユニットを備え、第1の信号は心電図データを表す。取得ユニットは、時間パラメータの関数として第2の信号を得るようにさらに適合され、第2の信号は、心電図データとは異なる生理学的データを表す。システムは、第1の信号と第2の信号とを混合して混合信号を得るように適合された混合ユニットと、混合信号に関係する周波数スペクトルを生成するように適合された変換ユニットとをさらに備える。
【0044】
システムは、第1の態様に関して上記で提示された特徴の一部又は全部を有する方法を実行するように適合され得る。
【0045】
一実施形態によれば、システムは、第1の信号を正規化するように適合され、及び/又は第2の信号を正規化するように適合された正規化ユニットを備える。
【0046】
一実施形態によれば、混合ユニットは、第1の信号及び第2の信号、又は正規化された第1の信号及び正規化された第2の信号を一次結合するように適合される。
【0047】
特に、第1の信号及び第2の信号、又は正規化された第1の信号及び正規化された第2の信号は、それぞれ、(正規化された)第1の信号及び(正規化された)第2の信号の等しい重みと結合されてもよい。
【0048】
一実施形態によれば、変換ユニットは、混合信号を積分変換にかけて、混合信号に関係する周波数スペクトルを生成するように適合される。
【0049】
システムは、混合信号に関係する周波数スペクトルを基準周波数スペクトルと、及び/又は第2の周波数スペクトルと比較するように適合された分析ユニットをさらに備えることができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、取得ユニット及び/又は混合ユニット及び/又は変換ユニット及び/又は正規化ユニット及び/又は分析ユニットは、各々、別個のスタンドアロンユニットとして実現されてもよい。しかしながら、他の実施形態では、これらのユニットのうちの少なくとも2つの機能の一部は、共通のユニットに組み合わされてもよい。
【0051】
一実施形態によれば、取得ユニット及び/又は混合ユニット及び/又は変換ユニット及び/又は正規化ユニット及び/又は分析ユニットは、少なくとも部分的にハードウェアにおいて実現されてもよい。
【0052】
他の実施形態によれば、取得ユニット及び/又は混合ユニット及び/又は変換ユニット及び/又は正規化ユニット及び/又は分析ユニットは、少なくとも部分的にソフトウェア又はファームウェアにおいて実現されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
本開示の技法の特徴及び多くの利点は、添付の図面を参照した典型的な実施形態の詳細な説明から最も明らかになるであろう。
【
図1】一実施形態による生理学的信号を変換する方法を示す流れ図である。
【
図2】一実施形態による生理学的信号を変換するためのシステムの概略図である。
【
図3】別の実施形態による生理学的信号を変換するためのシステムの概略図である。
【
図4】ラットの大腿動脈液圧インピーダンスデータと心電図データとの混合から得られた受動状態及び能動状態の実験データに基づく本開示の効果を示す図である。及び
【
図5】同じラットの大腿動脈の液圧インピーダンスデータを利用するより従来的な変換技法によって処理された対応する実験データを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
ここで、本開示の技法を、動脈などの血管の液圧インピーダンスを分析する具体例に関して説明する。しかしながら、他の生理学的データの分析において同じ技法が使用されてもよい。
【0055】
図1は、一実施形態による生理学的信号を変換する方法を示す流れ図である。
【0056】
第1のステップS10において、本方法は、時間パラメータの関数として第1の信号を得ることを含み、第1の信号は心電図データを表す。
【0057】
例えば、第1の信号S1は、正の整数nについての信号値S1(t1),S1(t2),S1(t3),…,S1(tn)の時系列に対応することができ、各信号値S1(ti),i=1,…,nは、時間tiにおける人体又は動物体の事前取得された心電図又は生活心電図から得られた心電図値などの、それぞれの時間tiに関係する心電図値を表す。
【0058】
いくつかの実施形態では、第1の信号はまた、所定の間隔境界t1,T1内のいくつかの実数値時間パラメータt,t1≦t≦T1について、連続関数S1(t)によって表されてもよい。
【0059】
同様に、第2のステップS12において、時間パラメータの関数として第2の信号が得られ、第2の信号は、心電図データとは異なる生理学的データを表す。
【0060】
例えば、第2の信号S2は、nに等しくてもよく、又は等しくなくてもよい正の整数mについての時系列の信号値S2(t1),S2(t2),S2(t3),…,S2(tm)に対応することができ、各信号値S2(tj),j=1,…,mは、それぞれの時間tjに関係する生理学的データを表し、当該生理学的データは心電図データとは異なる。
【0061】
生理学的データは、人体又は動物体の血管に関係する電気インピーダンス及び/又は液圧インピーダンスなど、人体又は動物体に関係する任意の生理学的データであってもよい。例えば、血管の電気インピーダンスを、血管の長さに沿った電気抵抗測定から得ることができる。液圧インピーダンスは、電気インピーダンスに機能的に関連することが知られている。これらの技法は当該技法分野で一般的に知られており、本開示の一部を形成しない。第1の信号の心電図データと同様に、各信号値S2(tj),j=1,・・・,mは、時間tjにおける電気インピーダンス又は液圧インピーダンスの事前取得された測定値又は生活測定値を表すことができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、第2の信号はまた、間隔境界の対t1,T1に等しくてもよく、又は等しくなくてもよい所定の間隔境界t2,T2内のいくつかの実数値時間パラメータt,t2≦t≦T2について、連続関数S2(t)によって表されてもよい。
【0063】
第3のステップS14において、第1の信号と第2の信号とが混合されて混合信号が得られる。
【0064】
一例では、混合信号M(t)は、第1の信号S1(t)と第2の信号S2(t)との一次結合を、実数値パラメータa、b、cを用いた以下の形式で表すことができ、
M(t)=aS1(t)+bS2(t)+c(1)
式中、a及びbは非ゼロである。
【0065】
例えば、混合は、正の重み係数0<p<1を用いた、信号S1及びS2の加重平均に対応してもよい。
【0066】
M(t)=pS1(t)+(1-p)S2(t)(2)
【0067】
混合信号M(t)はまた、以下の形式の第1の信号S1(t)と第2の信号S2(t)との和に対応してもよい。
【0068】
M(t)=S1(t)+S2(t).(3)
【0069】
いくつかの実際的に関連するシナリオでは、第1の信号及び第2の信号は、異なる寸法の信号である場合があり、又は強度が大幅に変化し得る振幅を有する場合がある。したがって、混合の前に第1の信号及び/又は第2の信号を正規化することが有利であり得る。
【0070】
例えば、第1の信号S1(t)を正規化することは、第1の信号S1(t)を、所定の間隔境界t1,T1を有する第1の時間間隔t1≦t≦T1にわたって第1の信号によって達成される第1の最大値|S1|で除算することを含んでもよい。同様に、第2の信号S2(t)を正規化することは、第2の信号S2(t)を、所定の間隔境界t2,T2を有する第2の時間間隔t2≦t≦T2にわたって第2の信号によって達成される第2の最大値|S2|で除算することを含んでもよい。
【0071】
このとき、混合するステップは、正規化された第1の信号と正規化された第2の信号とを混合して混合信号を得ることを含んでもよい。
【0072】
例えば、正規化を考慮に入れる場合、式(1)による一次混合は、実数値パラメータa、b、cを用いた以下の式に読み替えられる。
【0073】
【0074】
式中、a及びbは非ゼロである。同様に、式(3)の和は、以下の式に読み替えられる。
【0075】
【0076】
第4のステップS16において、本方法は、混合信号に関係する周波数スペクトルを生成することを含む。
【0077】
例えば、周波数スペクトルを生成することは、以下の形式で、混合信号M(t)に積分変換Tを適用して、
M→T[M](6)
時間依存混合信号M(t)を周波数依存信号T[M](ω)に変換することを含んでもよい。例えば、積分変換Tは、フーリエ変換若しくは分数次フーリエ変換、又は、フーリエ変換若しくは分数次フーリエ変換の二乗などのフーリエ変換若しくは分数次フーリエ変換の関数を含んでもよい。
【0078】
次いで、周波数依存信号T[M](ω)を個々の周波数寄与に分解して、周波数スペクトルを分析することができる。
【0079】
本発明者らは、混合信号のスペクトルの分析が、第2の信号S2のみのスペクトルの分析又は第1の信号S1のみのスペクトルの分析と比較して、人体又は動物体の生理学的状態に対する有用なさらなる洞察を提供し得ることを見出した。
【0080】
本開示の文脈で利用することができる異なる積分変換の例、及び、信号を個別に分析することのみと比較した、第1の信号と第2の信号との混合を分析する効果を示す実験データを、
図4及び
図5を参照して以下でさらに詳細に説明する。
【0081】
図1の流れ図は、方法ステップS10~S16を一定の順序で示している。しかしながら、この順序は例示のみを目的としており、当業者は、方法ステップのいくつかの順序が逆であってもよいことを理解するであろう。
【0082】
例えば、
図1には、第1の信号を得るステップS10の後に、第2の信号を得るステップS12が示されている。しかしながら、他の例では、第2の信号を得るステップが第1の信号を得るステップに先行してもよく、又は第1の信号と第2の信号とが(ほぼ)同時に得られてもよい。
【0083】
図2は、一実施形態による生理学的信号を変換するための対応するシステム10の概略図である。
【0084】
システム10は、取得ユニット12と、取得ユニット12に通信可能に結合された混合ユニット14と、混合ユニット14に通信可能に結合された変換ユニット16とを備える。
【0085】
取得ユニット12は、時間パラメータtの関数として第1の信号S1(t)を得るように適合されており、第1の信号S1(t)は心電図データを表す。取得ユニット12は、時間パラメータtの関数として第2の信号S2(t)を得るようにさらに適合され、第2の信号S2(t)は、心電図データとは異なる生理学的データを表す。
【0086】
図2に示すように、取得ユニット12は、第1の信号S
1(t)及び第2の信号S
2(t)を混合ユニット14に提供し、混合ユニットは、第1の信号S
1(t)及び第2の信号S
2(t)を混合して、時間依存混合信号M(t)を得るように適合される。例えば、混合信号M(t)は、式(3)による、第1の信号S
1(t)と第2の信号S
2(t)との和を表してもよい。
【0087】
図2に示す実施形態では、混合ユニット14は、混合信号M(t)を変換ユニット16に提供し、変換ユニット16は、混合信号M(t)に関係する周波数スペクトルを生成するように適合され得る。例えば、変換ユニット16は、式(6)に従って、混合信号を積分変換するように適合することができ、結果得られた信号T[M](ω)を、ユーザ又はコンピュータシステムが周波数スペクトルを分析することを可能にする個々の周波数寄与に分解することができる。
【0088】
図2は、取得ユニット12、混合ユニット14、及び変換ユニット16を、通信可能に結合された別個の個々のユニットとして示している。しかしながら、当業者は、これが単なる例示的な一構成を表し、他の構成では、取得ユニット12、混合ユニット14及び変換ユニット16の全部又は一部が単一のユニットに組み合わされてもよいことを理解するであろう。
【0089】
図3は、一実施形態による生理学的信号を変換するための別のシステム10’の概略図である。
【0090】
図3に示すシステム10’は、一般に、
図2に示すシステム10に対応し、対応する構成要素は同じ参照符号で示されている。しかしながら、システム10’は、取得ユニット12と混合ユニット14との間にある正規化ユニット18と、変換ユニット16の下流の分析ユニット20とをさらに備える。
【0091】
正規化ユニット18は、第1の信号S1(t)及び/又は第2の信号S2(t)を正規化するように適合される。例えば、正規化ユニット18は、第1の信号S1(t)を、所定の第1の時間間隔t1≦t≦T1にわたって第1の信号S1(t)によって達成される第1の最大値|S1|で除算することによって、第1の信号S1(t)を正規化するように適合されてもよい。正規化ユニット18は、第2の信号S2(t)を、所定の第2の時間間隔t2≦t≦T2にわたって第2の信号S2(t)によって達成される第2の最大値|S2|で除算することによって、第2の信号S2(t)を正規化するようにさらに適合されてもよい。
【0092】
次いで、正規化ユニット18は、正規化された第1の信号S1(t)/|S1|と正規化された第2の信号S2(t)/|S2|の両方を混合ユニット14に提供することができ、混合ユニットは、続いて、正規化された第1の信号S1(t)/|S1|及び正規化された第2の信号S2(t)/|S2|を、式(4)又は式(5)などに従って結合して、時間依存混合信号M(t)にすることができる。
【0093】
混合ユニット14は、続いて、時間依存混合信号M(t)を変換ユニット16に提供することができ、変換ユニットは、
図2を参照して上述したように、混合信号M(t)に関係する周波数スペクトルを生成するように適合することができる。
【0094】
分析ユニット20は、変換ユニット16から周波数スペクトルを受信するように適合することができ、混合信号M(t)に関係する周波数スペクトルを、基準周波数スペクトル及び/又は第2の周波数スペクトルと比較するようにさらに適合することができる。
【0095】
例えば、基準周波数スペクトルは、人体又は動物体の基準日を表す、以前に取得されたスペクトルを表すことができる。自動データ分析などによって、混合信号M(t)に関係する周波数スペクトルを基準スペクトルと比較することによって、混合信号M(t)に関係する、取得された周波数スペクトルを後で分類するために使用することができる区別を識別することができる。これらの技法は、人体又は動物体の現在の生理学的状態への有用な洞察を提供することができる。
【0096】
代替的又は付加的に、分析ユニット20は、
図1~
図3を参照して上述した技法に従って生成されたが、複数の異なる積分変換T、T’によって生成された異なる周波数スペクトルを比較するように適合されてもよい。周波数依存信号T[M](ω)、T’[M](ω)の対応する周波数スペクトルの比較は、所与のシナリオにおいて、人体又は動物体の異なる生理学的状態を区別するのに最も有用な積分変換を決定することを可能にし得る。
【0097】
ここで、本開示の文脈において利用され得るいくつかの例示的な積分変換T[M]について、さらに詳細に説明する。
【0098】
ウィグナー関数及び断層像表現
すべての信号値の全体が、すべての可能な値の空間内のベクトル|f>の集合によって表されると仮定することができる。記号fはこの場合、信号振幅である。この値は、一般に複雑な値であり得る。状態空間は完全であるべきであり、すなわち、以下のとおりであるべきある。
【0099】
【0100】
これは、信号振幅がある間隔[fmin,fmax]において連続値を取り得ることを前提としている。言い換えれば、これは、連続スペクトルを有する。信号がデジタル形式で表される場合、信号は離散値をとる。この場合、特性(7)は以下のように書き換えることができる。
【0101】
【0102】
量子力学的手法を用いて信号の密度行列ρsを導入する。これは、以下の形式の純粋な状態の密度行列として表すことができる。
【0103】
ρs=|f〉〈f|.(9)
【0104】
「時間表現」におけるこの関係は、以下の式を有する。
【0105】
ρs(t,t’)=〈t|f〉〈f|t’〉≡f(t)f*(t’).(10)
【0106】
以下のように、時間依存信号ρs(t)のウィグナー・ビレ関数を定義する。
【0107】
【0108】
逆変換は、量子系のウィグナー関数に完全に対応して決定される。
【0109】
【0110】
信号は、t’=0の場合の式(10)を使用して、ウィグナー関数によって表すことができる。
【0111】
【0112】
いずれの場合も、初期時点における信号の値は、以下のように表すことができる。
【0113】
f*(0)=|f(0)|e-iφ(0),(14)
【0114】
式中、初期時点における位相φ(0)は不定のままである。したがって、以下のようになる。
【0115】
【0116】
ここで、信号断層像を定義することができる。
【0117】
【0118】
ここで、Xはエルミート演算子の固有値である。
【0119】
【0120】
通常通り、以下が得られる。
【0121】
μ=cosθ,ν=sinθ,0≦θ≦π/2.(18)
【0122】
【数11】
の固有値は、変数(t,ω)の平面内の第一象限の直線上に位置する。ウィグナー関数は、式(16)を式(12)に置換した後、信号関数を通じて明示的に書き下すことができる。
【0123】
【0124】
式(19)をω変数にわたって積分することができる。
【0125】
【0126】
したがって、以下が得られる。
【0127】
【0128】
uにわたって積分を実行すると、以下が得られる。
【0129】
【0130】
式(22)の積分における変数を以下のとおり変更する。
【0131】
t=(z+q)/2,y=z-q.(23)
【0132】
式(23)の変換のヤコビアンは-1に等しいが、積分限界は-∞から+∞に及び、次式が得られる。
【0133】
【0134】
最後に、以下のように、文字tによって積分変数のより従来的な指定を導入する断層像定義を書き換える。
【0135】
【0136】
得られた断層像表現は、例えば量子光学において広く使用されている、いわゆる分数次フーリエ変換(FRFT)と関連付けられる。一方、これは、いわゆるラドン変換に相当する。通常通り、FRFTは以下の形式で書くことができる。
【0137】
【0138】
無次元変数αは、0≦α≦1の間隔内で変化し得、変換次数と呼ばれる場合がある。変換次数は、関係α=2θ/πによって、先に導入されたパラメータθ、μ及びνと機能的に関連付けられる。この場合、関係(18)は以下のように書き換えることができる。
【0139】
【0140】
このとき、断層像表現がFRFT係数の2乗に等しいことが容易に分かる。
【0141】
ws(X,μ,ν)=|F(X,α)|2 (28)
【0142】
断層像計算
α=0及びα=1において同一の変換が実現され、フーリエ変換が得られる。コンピュータ上でのこの種の変換の数値計算は、2つの理由によって実際には複雑になり得る。第1に、現実の信号(心電図)は複雑な微細スケール構造を有し、数値表現において多数のグリッドノードを必要とする。第2に、式(26)における積分変換コアは、二次関数の虚数指数である。したがって、これは頻繁に振動する関数であり、直交式による積分の近似にさらなる問題を与える。これらの問題を克服する1つの方法は、畳み込み型の積分へのFRFTの変換である。以下の高速フーリエ変換アルゴリズムの適用は、この手順をより上首尾にする。H.M.Ozaktas他、IEEE Transactions on Signal Processing 44(1996)2141によって提示されているような以下の恒等式を使用して、
μX2-2Xt+μt2=(μ-1)X2+(X-t)2+(μ-1)t2 (29)
式(26)を以下の形式に変換することができる。
【0143】
【0144】
式(30)中の積分は、畳み込みのタイプを有する。
【0145】
一般に、変換次数αは、0≦α≦1、特にα<1の範囲内で選択することができる。いくつかの実施形態では、変換次数αは、0.90以上、特に0.95以上で選択されてもよい。
【0146】
例示的な数値計算では、間隔0≦α≦1は、50個の等しい距離に分割することができ、したがって、変換次数αは、間隔の境界を含む51個の値をとることができる。積分の直交式(30)は、均一なグリッド上に構築することができる。グリッドサイズは、計算の所与の精度に対して自動的に決定され得る。計算の許容可能な相対誤差は、10-5程度であると解釈することができる。この精度は、最大224ノットのグリッドサイズで達成することができる。PC上での1つの断層像計算は、高速フーリエ変換(FFT)アルゴリズムの適用により、数分から数十分までのコンピュータ時間で実行することができる。
【0147】
断層像形式は、本質的に時間表現の単位の選択に依存することに留意されたい。デバイスから受信された一次データでは、時間Tは通常通り秒単位で与えられてもよい。断層像が計算されるとき、無次元時間t=T/T
0が使用されてもよく、T
0は秒単位の時間であってもよい。α=1での断層断面における周波数スケールは、T
0の選択によって一義的に決定され得る。すなわち、値
【数22】
は、円周波数であってもよく、rad/秒の寸法を有してもよい。
【0148】
本開示の技法を説明するために、
図4は、上記の式(5)に従って決定されたラットの正規化された心電図データと大腿動脈の正規化された液圧インピーダンスとの和の元の時系列(
図4a)、対応する2乗フーリエスペクトル(
図4b)、並びに、動脈の2つの異なる状態(受動状態及び能動状態)についての異なる変換次数α=0.99(
図4c)及びα=0.98(
図4d)の2つのトモグラムの例を示す。液圧インピーダンスは、大腿動脈の長さに沿った電気抵抗測定によって決定されている。
【0149】
図4に示す周波数スペクトルの例では、受動状態では2つの高調波のみが大きい振幅を有するが、3次高調波は最小であるか又は0に等しい。この効果は、
図4bによる2乗分数次フーリエ変換において既に明らかにされている。この区別は、
図4c及び
図4dによる断層像においてさらに顕著である。能動状態の小周波数の振幅は、受動状態の小周波数の対応する振幅を5~7倍だけ超える。
【0150】
比較のために、
図5は、同じく動脈の2つの異なる状態(受動状態及び能動状態)について、ラットの大腿動脈の、混合のない液圧インピーダンスのみの元の時系列(
図5a)、対応する2乗フーリエスペクトル(
図5b)、及び変換次数α=0.96による断層像(
図5c)の対応する例を示す。
【0151】
比較により、
図5bによる2乗分数次フーリエ変換は受動状態と能動状態とについてほぼ同一であり、
図5cによる断層像も同様に、受動状態と能動状態とを一意に区別することを可能にする明確な傾向を提供することができないことが明らかになる。
【0152】
実施形態及び図面の説明は、本開示の技法及びそれに関連する有益な効果を説明する役割を果たすにすぎず、いかなる限定を意味するとも理解されるべきではない。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲から決定されるべきである。
【符号の説明】
【0153】
10,10’ 生理学的信号を変換するためのシステム
12 取得ユニット
14 混合ユニット
16 変換ユニット
18 正規化ユニット
20 分析ユニット