(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】足裏パッド
(51)【国際特許分類】
A61F 5/30 20060101AFI20240918BHJP
A61F 5/14 20220101ALI20240918BHJP
【FI】
A61F5/30
A61F5/14
(21)【出願番号】P 2022134101
(22)【出願日】2022-08-25
【審査請求日】2023-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000112266
【氏名又は名称】ピアス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中西 由紀美
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-247197(JP,A)
【文献】特表2022-518578(JP,A)
【文献】特表2005-501509(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0039349(US,A1)
【文献】実開昭58-105311(JP,U)
【文献】実開昭58-067422(JP,U)
【文献】特開平11-226042(JP,A)
【文献】実開平06-023515(JP,U)
【文献】特開2019-136503(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/00 - A61F 5/41
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一又は複数のエラストマー層を含むパッド本体を備え、
前記パッド本体は、上向きに突出した凸部を有し、
前記パッド本体は、粘着性を有する上面と、該上面とは反対面となる下面とで形成され、且つ、前記上面での粘着力によって足裏に対して着脱自在に貼付可能である、足裏パッドであって、
前記パッド本体は、前記上面に近い第1エラストマー層と、該第1エラストマー層に下側から接する第2エラストマー層とを含む積層構造で構成され、
前記凸部の頂点から前記下面までにおいて前記第1エラストマー層は前記第2エラストマー層よりも厚く、且つ、
前記第1エラストマー層を構成するエラストマーは前記第2エラストマー層を構成するエラストマーよりも硬い、足裏パッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば足裏に貼付されて使用されるパッド本体を備えた足裏パッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、靴を履いて歩くときに生じる痛みを防ぐべく、足裏のアーチ形状を保たせるための足裏パッドが知られている。
靴を履いて歩くときに生じる痛みは、外反母趾等によって引き起こされ、斯かる痛みを防ぐためには、内側縦アーチ(足裏の親指の根元付近とかかと付近とを結ぶラインに沿って形成されるアーチ)、外側縦アーチ(足裏の小指の根元付近とかかと付近とを結ぶラインに沿って形成されるアーチ)、横アーチ(足裏の親指の根元付近と小指の根元付近とを結ぶラインに沿って形成されるアーチ)と称される足裏の各アーチ形状を保つことが有効であるといわれている。
【0003】
足裏のアーチ形状を保たせるための上記のごとき足裏パッドとしては、例えば、足裏における前足部を除く中足部から後足部までを支持する本体部材と、この本体部材を足裏に位置させる保持部材とを備える足裏パッドが知られている(特許文献1)。
【0004】
特許文献1に記載の足裏パッドにおいて、本体部材は、足裏との対向面のうち長趾屈筋の腱が第二趾から第五趾へと分岐する分岐点に対応する位置に設けられた突起部と、足裏との対向面のうち踵骨に対応する領域の外側であって小趾外転筋に対応する領域に設けられた外側隆起部とを有する。また、保持部材は、剥離性と再粘着性とを有し足裏と向き合う粘着層を有し、粘着層が突起部及び外側隆起部以外を占めるように設けられている。
斯かる構成の足裏パッドによれば、突起部などを有する本体部材によって、足裏のアーチ形状をほぼ正常に保つことができる。また、粘着層を有する保持部材によって、足裏に着脱可能に使用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された足裏パッドは、アーチ形状を保つための上記の突起部及び外側隆起部などの凸部の面が粘着性を有しないため、例えば装着者が歩行を続けると、凸部が足裏の面方向にずれてしまいやすいという問題を有する。
【0007】
本発明は、上記問題点等に鑑み、足裏の横アーチ形状を保つことができ、且つ、横アーチ形状を保つための凸部が足裏の面方向にずれることを抑制できる足裏パッドを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る足裏パッドは、一又は複数のエラストマー層を含むパッド本体を備え、
前記パッド本体は、上向きに突出した凸部を有し、
前記パッド本体は、粘着性を有する上面と、該上面とは反対面となる下面とで形成され、且つ、前記上面での粘着力によって足裏に対して着脱自在に貼付可能であることを特徴とする。
パッド本体の凸部が足裏の特定の部位に当接するように、パッド本体を貼り付けることによって、使用者が立位のときに、エラストマー層で構成された凸部が上向きに足裏の特定部位を適度に押圧できる。これにより、足裏の横アーチ形状を保つことができる。また、上面の粘着性によって凸部が足裏に貼り付くため、凸部が足裏の面方向にずれることを抑制できる。また、使用時以外においてパッド本体を足裏から取り除くことができる。
【0009】
上記の足裏パッドにおいて、前記パッド本体は、前記上面に近い第1エラストマー層と、該第1エラストマー層に下側から接する第2エラストマー層とを含む積層構造で構成され、
凸部の頂点から下面までにおいて第1エラストマー層は第2エラストマー層よりも厚く、且つ、前記第1エラストマー層を構成するエラストマーは前記第2エラストマー層を構成するエラストマーよりも硬いことが好ましい。
斯かる足裏パッドによれば、足裏に貼り付いたパッド本体に使用者の体重がかかったときに、より柔らかい第2エラストマー層がクッションとなって足裏への過度な加圧を抑制できる。その一方で、パッド本体の凸部の頂点付近において、より硬く且つより厚い第1エラストマー層が変形しにくいことから、凸部によって足裏の特定部位をより十分に押圧できる。従って、足裏の痛みを和らげつつ足裏の横アーチ形状をより十分に保つことができる。
【0010】
上記の足裏パッドでは、第1エラストマー層を構成するエラストマー、及び、第2エラストマー層を構成するエラストマーのデュロメータ硬さがいずれも15以上35以下であることが好ましい。
斯かる足裏パッドによれば、凸部の上面によって足裏の特定部位を十分に押圧しつつ、凸部の過剰な押圧によって生じ得る足裏の痛みを緩和できる。
【0011】
上記の足裏パッドでは、パッド本体を厚さ方向に見たときの形状が卵型形状であることが好ましい。
使用時において、上記のごとき卵型形状における最も尖った外周縁の先がかかとを向くように、パッド本体を足裏における所望の特定部分に貼り付ける。これにより、横アーチ形状によって形成される足裏の窪みにパッド本体が入り込むように、パッド本体が足裏に配置される。従って、足裏におけるパッド本体の位置を安定的に維持できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の足裏パッドは、足裏の横アーチ形状を保つことができ、且つ、横アーチ形状を保つための凸部が足裏の面方向にずれることを抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】足裏パッドのパッド本体を足裏へ貼り付けるときの模式図。
【
図2】足裏パッドのパッド本体を厚さ方向に切断した模式断面図。
【
図3】足裏パッドのパッド本体の第1例を表す模式図。
【
図4】足裏パッドのパッド本体の第2例を表す模式図。
【
図7】足裏パッドのパッド本体を足裏に貼り付けた状態を表す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る足裏パッドの一実施形態について、図面を参照しつつ以下に説明する。
【0015】
図1~
図4に示すように、本実施形態の足裏パッド1は、粘着性を有する上面Sと、該上面Sとは反対面となる下面Tとを有するパッド本体10を備える。
パッド本体10は、上面Sが上向きに突出した凸部gを有し、一又は複数のエラストマー層で構成されている。
パッド本体10は、上面Sでの粘着力によって足裏に対して着脱自在に貼付可能である。
【0016】
なお、本実施形態の足裏パッド1は、パッド本体10を2つ備え、各パッド本体10が使用者の両足の裏にそれぞれ貼り付けられて使用されてもよい。
【0017】
図1~
図4に示すように、パッド本体10は、粘着性を有する上面Sと、該上面Sとは反対面となる下面Tとを備える。上面Sは、使用時に足裏に貼り付けられる面であり、使用者が立位姿勢のときに上方向を向く面である。一方、下面Tは、使用者が立位姿勢のときに下方向を向く面であり、例えば靴底と向き合うこととなる面である。
【0018】
パッド本体10は、上面Sの少なくとも一部が突出した凸部gを有する。換言すると、パッド本体10は、使用者が立位姿勢のときに突出方向が上向きとなる凸部gを有する。
パッド本体10の下面Tから上面Sまでの厚さは、パッド本体10の外周部から凸部gの頂点へ向かうほど厚くなっている。換言すると、凸部gの頂点を通るようにパッド本体10を厚さ方向に切断した断面では、凸部gの頂点から下面Tまでの厚さが最も厚い。
【0019】
図1に示すように、パッド本体10は、足裏の特定部位(後に詳述)に凸部gが当接するように、足裏における特定部分に所望の向きで貼り付けられて使用される(以下、適正に貼り付けて使用する、と表現することもある)。上述のごとく上面Sが粘着性を有するため、凸部gの上面Sも、足裏に貼り付き可能な粘着性を有する。斯かる粘着性は、比較的容易に足裏から取り除くことが可能な程度の粘着性である。即ち、上面Sでの粘着力は、足裏に対して着脱自在に貼付可能な粘着力である。上面Sが足裏に貼り付けられると、使用者が立位姿勢のときに下面Tが下方(地面)を向くこととなる。
【0020】
パッド本体10は、
図2に示すように、上面Sに近い第1エラストマー層11と、該第1エラストマー層11の下側に配置された第2エラストマー層12とを複数のエラストマー層として有する。パッド本体10は、第1エラストマー層11と第2エラストマー層12とが重なり合った積層構造を有する。
少なくともパッド本体10の中央部は、上記の積層構造を有する。
【0021】
本実施形態において、パッド本体10は、
図2に示すように、上面Sを構成する粘着層13をさらに有する。換言すると、パッド本体10は、粘着層13を有し、粘着層13によって上面Sが構成されている。粘着層13は、第1エラストマー層11に上側から接している。
本実施形態において、パッド本体10は、上面Sが粘着層13で構成されるため、粘着力によって足裏に対して着脱自在に貼付可能である。
【0022】
粘着層13は、第1エラストマー層11及び第2エラストマー層12のいずれよりも高い粘着力を有する。また、粘着層13は、後述する第1エラストマー層11及び第2エラストマー層12のいずれよりも柔らかい。
粘着層13の材質は特に限定されないが、例えばシリコーンゲルである。
【0023】
パッド本体10は、略シート状に形成されているが、凸部gの頂点における上面Sから下面Tまでの厚さが最も厚くなるように形成されている。換言すると、パッド本体10の形状は、凸部gの頂点から外周縁に向かうほど、上面Sから下面Tまでの厚さが減少する形状である。
なお、1つのパッド本体10において、凸部gは1つであり、従って凸部gの頂点も1つである。
【0024】
以下、
図3及び
図4において2つのパッド本体10をそれぞれ例示して説明する。第1例を
図3に示し、第2例を
図4に示す。それぞれの図においてパッド本体10を3方向から見た各図が(A)、(B)、(C)で示されている。これら(A)~(C)について説明する。
(A)は、パッド本体10を上面Sから下面Tへ向けて見たときの形状を表す。
(B)は、パッド本体10を足裏に適正に貼り付けたときに、足の側面側から見たときの形状を表す。(B)における横方向は、つま先及びかかとを結ぶ方向(以下、前後方向ともいう)に相当し、(B)における縦方向は、上下方向(足の厚さ方向)に相当する。上面Sが足裏に貼り付けられて、使用者が立位姿勢のときに凸部gが足裏の特定部位を押圧することとなる。
(C)は、パッド本体10を足裏に適正に貼り付けたときに、つま先側またはかかと側から見たときの形状を表す。(C)における縦方向は、足の幅方向に相当し、横方向は、上下方向(足の厚さ方向)に相当する。
なお、
図2、並びに、
図3及び
図4の(B)及び(C)の各パッド本体10は、厚さ方向の寸法を誇張するように、縦方向の縮尺と横方向の縮尺とを変えて描かれている。
【0025】
各図の(B)において示されるように、足裏に適正に貼り付けられたパッド本体10の厚さは、中心部よりもつま先側の部分で最も厚い。換言すると、つま先側外周縁と、パッド本体10の中央との間に、凸部gの頂点が配置されている。さらに換言すると、貼り付けられたパッド本体10を足の側面側から見たとき(例えば内くるぶしから外くるぶしへ向けて見たとき)に、凸部gの頂点は、パッド本体10の前後方向長さの中間よりもつま先側にある。
一方、各図の(C)において示されるように、パッド本体10を足のつま先側又はかかと側から見たときには、凸部gの頂点は、足の幅方向におけるパッド本体10の長さの中間部分にある。
【0026】
図3に示す第1例のパッド本体10は、上面Sが屈曲部分αを有する(上面Sに窪みが形成されている)という点で、
図4に示す各パッド本体10と異なる。
具体的には、パッド本体10を厚さ方向に切断した断面を、上面Sが上を向くように見たときに、
図3の(B)又は(C)に示すように、パッド本体10には、凸部gの頂点から外周縁に向けて上面Sが描く曲線の傾きがなだらかになる屈曲部分αが存在し、これにより、上面Sに窪みが形成されている。
換言すると、パッド本体10の凸部gの頂点から外周縁までの上面Sの斜面において、屈曲部分αで傾斜がなだらかになることで上面Sに窪みが形成されている。
さらに換言すると、凸部gの頂点から外周縁へ向けて、上面Sの斜面の傾斜度が減少する屈曲部分αが存在し、斯かる屈曲部分αで上面Sが窪んでいる。
なお、屈曲部分αの窪みは、凸部gの頂点の周囲すべてにおいて、頂点を取り囲むように形成されている。
【0027】
これに対して、
図4に示す第2例のパッド本体10は、第1例のパッド本体10と異なり、上面Sに窪みが形成されていない。
具体的には、パッド本体10を厚さ方向に切断した断面を、上面Sが上を向くようにみたときに、
図4の(B)又は(C)に示すように、上面Sが描く曲線の傾きが、凸部gの頂点から外周縁に向かうほど大きくなる。換言すると、パッド本体10の凸部gの頂点から外周縁までの斜面の傾斜度が、外周縁に向かうほど増大する。
【0028】
本実施形態において、パッド本体10は、一又は複数のエラストマー層で構成される。
図2等においては、複数のエラストマー層で構成されるパッド本体10を示す。エラストマーを含むエラストマー層は、適度な弾力を有するため、足裏に貼り付けられたパッド本体10は、足裏の特定部位が押圧されるときに生じ得る痛みを緩和できる。エラストマーとしては、例えば合成ゴム等が採用され、具体的には、シリコーンエラストマーが採用される。
【0029】
パッド本体10の少なくとも凸部gでは、上面Sに近い第1エラストマー層11と、該第1エラストマー層11に下側から接する第2エラストマー層12とを含む複数層の積層構造が形成されている。
凸部gの頂点から下面Tまでにおいて、第1エラストマー層11は、第2エラストマー層12よりも厚く、且つ、第1エラストマー層11を構成するエラストマーは、第2エラストマー層12を構成するエラストマーよりも硬い。
斯かる足裏パッド1によれば、足裏に貼り付いたパッド本体10に使用者の体重がかかったときに、より柔らかい第2エラストマー層12がクッションとなって足裏への過度な加圧を抑制できる。その一方で、パッド本体10の凸部gの頂点付近においては、より硬く且つより厚い第1エラストマー層11が変形しにくいことから、凸部gによって足裏の特定部位をより十分に押圧できる。従って、足裏の痛みを和らげつつ足裏の横アーチ形状をより十分に保つことができる。
【0030】
上記のエラストマーの硬さの違いは、一般的な硬さの測定方法によって判別できる。例えば、後述するデュロメータ硬さの測定によって硬さの違いを判別できる。
第1エラストマー層11を構成するエラストマー、及び、第2エラストマー層12を構成するエラストマーの各デュロメータ硬さは、各層を形成する前に測定される。換言すると、上記デュロメータ硬さは、形成された各層を用いて測定された物性値ではなく、各エラストマー自体が有する物性値である。
【0031】
第1エラストマー層11を構成するエラストマー、及び、第2エラストマー層12を構成するエラストマーのデュロメータ硬さは、いずれも15以上35以下であることが好ましい。上記デュロメータ硬さは、20以上であることがより好ましい。また、上記デュロメータ硬さは、30以下であることがより好ましい。
斯かる足裏パッド1によれば、凸部gの上面Sによって足裏の特定部位を十分に押圧しつつ、凸部gの過剰な押圧によって生じ得る足裏の痛みを緩和できる。
【0032】
上記のデュロメータ硬さは、JIS K6253-3:2012(加硫ゴム及び熱可塑性ゴム-硬さの求め方-第3部:デュロメータ硬度)に準じて測定される。なお、タイプAのデュロメータを用いて測定する。
詳しい測定条件は、下記の通りである。
測定温度:23℃、60%RH
測定時間:3秒後
測定値:5回の測定値の中央値を採用
なお、測定用試験片の厚さ及び大きさについては、上記の規格に従った。
【0033】
第1エラストマー層11を構成するエラストマーのデュロメータ硬さは、例えば15以上35以下であり、好ましくは20以上30以下である。第2エラストマー層12を構成するエラストマーのデュロメータ硬さは、例えば15以上35以下であり、好ましくは15以上25以下である。第1エラストマー層11のエラストマーは、第2エラストマー層12のエラストマーよりも、デュロメータ硬さにおいて硬く、その硬さの差は、2以上10以下であってもよく、3以上7以下であることが好ましい。
【0034】
パッド本体10を厚さ方向に見たときの形状は、特に限定されないが、例えば真円形状、楕円形状、正方形状、長方形状、三角形状、又は、これら形状が変形した形状などである。パッド本体10の形状は、丸みを帯びた三角形状(三角形状の変形)であってもよく、卵型形状(真円形状の変形)であってもよい。
パッド本体10の形状は、厚さ方向の一方から見たときに、
図3(A)に示すように、卵型形状であることが好ましい。卵型形状とは、真円形状の変形とみなしたときに真円の一直径方向における両端側の円弧のうち一方の円弧がより尖っている形状である。換言すると、卵型形状は、楕円の長径方向の一方側における円弧がより真円の円弧に近くなった形状である。なお、卵型形状は、一般的には、鶏卵の卵殻を、長径に直交する方向から見たときの形状である。
使用時においては、上記のごとき卵型形状における最も尖った外周縁の先がかかとを向くように、パッド本体を足裏における所望の特定部分に貼り付ける。これにより、横アーチ形状によって形成される足裏の窪みにパッド本体が入り込むように、パッド本体が足裏に配置される。従って、足裏におけるパッド本体の位置を安定的に維持できる。
【0035】
パッド本体10は、足裏の横アーチ形状を好適に保持すべく、足裏に適正に貼り付けられて使用される。例えば
図7に示すように、パッド本体10は、かかと側よりもつま先側で足裏との接触面積が広くなるように配置されて、足裏に貼り付けられて使用される。例えば卵型形状のパッド本体10は、足裏に貼り付けられたときに、最も尖った外周縁の先端がかかと側(後ろ側)を向くように配置される。
【0036】
卵型形状のパッド本体10の好ましい大きさなどについて下記に説明する。
パッド本体10の最大厚さ(凸部gの頂点における上面Sから下面Tまでの厚さ)は、5mm以上12mm以下であってもよく、7mm以上10mm以下であることが好ましい。
パッド本体10の長径方向長さ(使用時における足裏の前後方向長さ)は、68mm以上73mm以下であってもよく、70mm以上71mm以下であることが好ましい。一方、短径方向長さ(使用時における足幅方向長さ)は、46mm以上52mm以下であってもよく、48mm以上50mm以下であることが好ましい。
【0037】
パッド本体10の体積は、7cm3以上12cm3以下であってもよく、8cm3以上11cm3以下であることが好ましい。
パッド本体10の下面Tの面積(パッド本体10を下面側から見たときの面積)は、24cm2以上28cm2以下であってもよく、25cm2以上27cm2以下であることが好ましい。
パッド本体10の表面積は、42cm2以上46cm2以下であってもよく、43cm2以上45cm2以下であることが好ましい。
パッド本体10の質量は、8g以上15g以下であってもよく、10g以上13g以下であることが好ましい。
【0038】
図3に示す第1例のパッド本体10は、好ましくは下記の寸法等を有する。
卵型形状の第1例のパッド本体10において、上述の屈曲部分αから放射方向に外周縁まで延びる部分を辺縁平坦部と称することとする。
パッド本体10を長径方向に沿って凸部gの頂点を通るように厚さ方向に切断した断面は、
図3(B)と同様に示され、斯かる断面において、辺縁平坦部の長径方向長さは、かかと側外周縁から上述の屈曲部分αまでの長さとなる。この辺縁平坦部の長径方向長さは、9mm以上12mm以下であってもよく、10mm以上11mm以下であることが好ましい。
また、上記の辺縁平坦部における平均厚さは、0.6mm以上1.2mm以下であってもよく、0.7mm以上1.1mm以下であることが好ましい。なお、上記の平均厚さは、上述の屈曲部分αとかかと側外周縁との中間点における厚さである。
【0039】
また、卵型形状のパッド本体10を短径方向に沿って凸部gの頂点を通るように厚さ方向に切断した断面は、
図3(C)と同様に示され、斯かる断面において、凸部gの頂点の両側に屈曲部分αがそれぞれ表される。上記と同様に、屈曲部分αから放射方向に外周縁まで延びる部分を辺縁平坦部と称することとする。辺縁平坦部の短径方向長さは、パッド本体10の断面において片方の外周縁と屈曲部分αとの間の長さとなる。辺縁平坦部の短径方向長さは、3.5mm以上4.2mm以下であってもよく、3.7mm以上4.1mm以下であることが好ましい。
なお、辺縁平坦部の長径方向長さ及び短径方向長さは、屈曲部分αから各外周縁までの長さであるところ、それぞれの長さを測定するための屈曲部分αは、以下のようにして決定される。
詳しくは、
図3(B)又は
図3(C)において、屈曲部分αを覆うように、且つ、凸部gの頂点部分の上面Sと、外周部分の上面Sとが接するように、仮想直線を引く。この仮想直線から最も離れた上面の1部位を屈曲部分αとして、辺縁平坦部の長径方向長さ及び短径方向長さをそれぞれ測定する。
【0040】
パッド本体10は、足裏の横アーチ形状をより十分に保つべく、厚さ方向に見たときに上述のごとき卵型形状であり、且つ、上記の屈曲部分αを有する形状であることが好ましい。さらに、上述のごとき大きさ、表面積、又は体積などを有することが好ましい。
斯かる形状のパッド本体10を足裏に適正に貼り付けることによって、より理想的な足裏の横アーチ形状を保つことができる。
【0041】
本実施形態の足裏パッド1は、パッド本体10以外の補助部材をさらに備えてもよい。
補助部材としては、上記のパッド本体10を使用しないときに該パッド本体10を保管するための保管用部材20、パッド本体10を足裏に貼り付ける位置を決めるために利用される位置決め用線状部材30、又は、パッド本体10の足裏への粘着力を補ってより確実にパッド本体10を足裏へ貼り付けるための貼付補助シートなどが挙げられる。
【0042】
本実施形態の足裏パッド1は、例えば
図5に示すように、補助部材の保管用部材20として、パッド本体10の一方の面(使用時に足裏に貼り付けられる上面S)に貼り合わされる第1保管用シート21と、パッド本体10の他方の面(使用時に地面を向く下面T)に貼り合わされる第2保管用シート22とを有してもよい。
本実施形態の足裏パッド1は、上記の位置決め用線状部材30、又は、上記の貼付補助シートの少なくとも一方と、上記のパッド本体10とを組み合わせたもの(足裏アーチ形状矯正用キット)であってもよい。換言すると、足裏アーチ形状矯正用キットでは、上記のパッド本体10と、位置決め用線状部材30又は貼付補助シートの少なくとも一方とが組み合わされてセットになっていてもよい。
【0043】
保管用部材20としての第1保管用シート21及び第2保管用シート22は、パッド本体10を挟み込むように配置される。
【0044】
保管用部材20は、例えば、パッド本体10が足裏に貼り付けられるまでパッド本体10と貼り合わされている。保管用部材20は、パッド本体10が初めて使用されるまで、パッド本体10と貼り合わされていてもよい。また、保管用部材20は、いったん使用されたパッド本体10を次の使用時まで保管すべく、パッド本体10と貼り合わされ得る。
なお、保管用部材20は、パッド本体10の一方の面(足裏に貼り付けられる上面S)に貼り合わされる第1保管用シート21のみを有してもよい。
【0045】
第1保管用シート21及び第2保管用シート22は、柔軟な合成樹脂製などであることが好ましい。第1保管用シート21及び第2保管用シート22は、柔軟さ、透明性、低コスト等の観点で、例えばポリエチレン製、ポリプロピレン製であってもよい。また、第1保管用シート21及び第2保管用シート22は、例えばシリコーン樹脂などの剥離剤で表面処理されたクラフト紙などであってもよい。
【0046】
位置決め用線状部材30は、所定の長さを有する線状の部材である。位置決め用線状部材30は、剛性によって直線状を維持できる部材であってもよく、柔軟で曲がりやすい部材であってもよい。
位置決め用線状部材30の材質の例としては、プラスチック、金属、ゴム、繊維、これらの複合物などが用いられる。
【0047】
位置決め用線状部材30は、パッド本体10を足裏に適正に貼り付けるために利用される。貼り付け時には、
図6に示すように、内部に第1中足骨頭が存在する足裏部分と、内部に第5中足骨頭が存在する足裏部分とを結ぶ仮想直線Xを設定する。斯かる仮想直線Xよりもつま先側にパッド本体10がはみ出ないようにパッド本体10を貼り付けるために位置決め用線状部材30を利用する。使用方法の詳細については、後述する。
【0048】
貼付補助シートは、パッド本体10が足裏から剥がれ落ちることを防止してパッド本体10の貼り付き状態を補助すべく、足裏に貼り付けたパッド本体10をすべて覆うように、足裏に貼り付けて使用される。
貼付補助シートの大きさは、パッド本体10よりも大きければ特に制限されない。貼付補助シートの具体例としては、片面側に粘着面を有する粘着性シートが挙げられる。
【0049】
次に、本実施形態の足裏パッド1の使用方法について説明する。
【0050】
パッド本体10を足裏に貼り付けるときに、本実施形態の足裏パッド1を以下のようにして取り扱うことによって、パッド本体10を足裏に適正に貼り付けることができる。位置決め用線状部材30は、例えば以下のようにして使用される。本実施形態の足裏パッド1(足裏アーチ形状矯正用キット)の具体的な使用例について、図面を参照しつつ説明する。
【0051】
まず、パッド本体10の貼り付け位置を決める。
例えば、
図7に示すように、親指の付け根付近で突出する骨が内部に存在する部分と、小指の付け根付近で突出する骨が内部に存在する部分とを結ぶ仮想直線Xに沿うように、位置決め用線状部材30を配置する。好ましくは、上記の仮想直線Xと位置決め用線状部材30とが重なるように、位置決め用線状部材30を足裏に配置する。
次に、その配置を維持しつつ、パッド本体10が位置決め用線状部材30を超えてつま先側へはみ出さないように、パッド本体10の一方の面(粘着力を有する上面S)を足裏に貼り付ける。
【0052】
ここで、上記の仮想直線Xについて説明する。上記の仮想直線Xは、いわゆる横アーチ形状に沿っている。横アーチ形状は、
図6における二点鎖線の曲線で示すように、足の親指、人差し指、中指、薬指、小指の付け根付近の内部にそれぞれ存在する第1中足骨頭、第2中足骨頭、第3中足骨頭、第4中足骨頭、及び、第5中足骨頭に沿っている。横アーチ形状は、足の甲の方へ向けて膨出するような曲線を描く。仮想直線Xは、MPラインとも称される。MPは、中足指関節(中足趾関節)とも称される中足趾骨(MetatarsusPhalanx)の略称である。
【0053】
仮想直線Xに沿って配置された位置決め用線状部材30との間が離れすぎた状態で、足裏にパッド本体10を貼り付けてしまうと、パッド本体10の凸部gが足裏の適切な特定部位に配置されず、その結果、パッド本体10によって横アーチ形状を好適に保てなくなり得る。そのため、パッド本体10は、位置決め用線状部材30よりもつま先側へはみ出さず、且つ、位置決め用線状部材30に極力近い位置に配置されることが好ましい。好ましくは、パッド本体10のつま先側の端縁と、位置決め用線状部材30のかかと側の端縁とが接するように、パッド本体10が足裏に貼り付けられる。
【0054】
このようにしてパッド本体10を足裏に貼り付けることによって、足裏の横アーチ形状の位置を正確に把握していない使用者であっても、パッド本体10を適正な足裏部分に、容易且つ確実に貼り付けることができる。これにより、貼り付け位置が使用者の間で大きくばらつくことを抑制でき、いずれの使用者であっても適切な位置にパッド本体10を貼り付けることができる。そして、MPラインよりもつま先側にはみ出ないようにパッド本体10を配置できるため、パッド本体10の凸部gによって、足裏の横アーチ形状をより十分に保たせることができる。
【0055】
上記のごとく足裏にパッド本体10を貼り付けた使用者は、靴を着用して歩行したときに、好適な足裏の横アーチ形状を保った状態で歩行できる。従って、横アーチ形状が崩れる(落ち込む)ことによって生じる疾患(例えば、外反母趾等による足の痛み)が抑制されることとなる。
【0056】
また、パッド本体10は、上面Sの粘着力によって足裏に貼り付けられているため、歩行に伴って貼り付き位置がずれることを抑制できる。
【0057】
なお、パッド本体10は、靴下等を介して間接的に足裏に貼り付けられて使用されてもよいが、足裏の皮膚に貼り付けられて使用されることが好ましい。足裏の皮膚にパッド本体10を繰り返し着脱しても粘着力の低下がより起こりにくいという利点がある。
【0058】
本発明の足裏パッドは、上記例示の通りであるが、本発明は、上記例示の実施形態に限定されるものではない。また、本発明では、一般の足裏パッド等において採用される種々の形態を、本発明の効果を損ねない範囲で採用することができる。
【0059】
上記実施形態では、パッド本体10が粘着層13を有することによって、上面Sが足裏に粘着できるパッド本体10について説明したが、本発明において粘着層13は必須の構成ではない。例えば、上面を形成する第1エラストマー層が粘着性を有し、第1エラストマー層を足裏に貼り付けて使用するパッド本体10も本発明に包含される。
【0060】
上記実施形態では、パッド本体10を挟み込むように配置された2つの保管用シート(保管用部材20)を備えた足裏パッドについて説明したが、本発明において保管用部材は必須の構成ではない。
【0061】
また、上記実施形態では、位置決め用線状部材30を備えた足裏パッド(足裏アーチ形状矯正用キット)についても説明したが、本発明の足裏パッドは、位置決め用線状部材30を備えなくてもよい。本発明の足裏パッドは、パッド本体10のみで構成されてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、パッド本体10の全部を覆う大きさの貼付補助シートについて説明したが、貼付補助シートは、パッド本体10の一部を覆う大きさであってもよい。本発明の足裏パッドは、貼付補助シートを備えなくてもよい。
【実施例】
【0063】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
表1に示す物性となるように実施例の各パッド本体を作製し、作製した各パッド本体を被験者に使用してもらい、サポート力(足裏の横アーチ形状の維持性能)、及び、痛みについて、評価試験を実施した。
【0065】
(実施例1~3)
図3に示す形状のパッド本体を作製した。斯かるパッド本体の模式断面図は、
図2に示す通りである。実施例1~3において作製した各パッド本体の形状、大きさは、いずれも同じである。一方、第1エラストマー層のデュロメータ硬さは、各実施例で異なり、第2エラストマー層のデュロメータ硬さは、いずれの実施例でも20であった。それぞれの実施例における第1エラストマー層のデュロメータ硬さを表1に示す。
作製した各パッド本体の凸部の頂点部分において、第1エラストマー層の厚さが第2エラストマー層の厚さよりも厚く、且つ、第1エラストマー層を構成するエラストマーが第2エラストマー層を構成するエラストマーよりも硬かった。
また、作製した各パッド本体の長径方向長さは70mm、短径方向長さは49mm、凸部の頂点から下面までの厚さは7mm、であった。また、
図3の(B)において示されるかかと側の外周部における平均厚さは、0.8mm、屈曲部分から外周縁までの長辺方向における長さは、11mmであった。また、
図3の(C)において示される片方の外周部における屈曲部分から外周縁までの短辺方向における長さは、4mmであった。
【0066】
<デュロメータ硬さの測定>
上述した測定方法に従って、各実施例のパッド本体に用いる第1エラストマー層のエラストマー、及び、第2エラストマー層のエラストマーについて、デュロメータ硬さをそれぞれ測定した。その後、各エラストマー材料を用いてパッド本体を作製した。
デュロメータ硬さの測定結果を表1に示す。なお、表1に示された値は、5回の測定結果の中央値である。この中央値をデュロメータ硬さの値として採用した。
【0067】
<評価試験方法>
5名の被験者に各実施例のパッド本体を1日あたり8時間、足裏に貼り付けるように依頼して、7日間の実使用性能を評価した。
問題がなく非常に良好であった場合を◎、問題がなく良好であった場合を○、使用可能であるがやや不良であった場合を△、使用に耐えなかった場合を×と評価した。
評価結果を表1に示す。
【0068】
【0069】
以上の試験結果から、第1エラストマー層が第2エラストマー層よりも硬いこと、好ましくはその硬さの差が2以上8以下であること、第1エラストマー層のデュロメータ硬さが特定の範囲であること、及び、パッド本体の形状が特定の形状であることによって、足裏の横アーチ形状をより十分に保つことができ、且つ、横アーチ形状を保つための凸部が足裏の面方向にずれることをより十分に抑制できることがわかった。
【0070】
なお、
図4に示す形状に変更した点以外は、実施例1~3と同様に作製したパッド本体でも、上記と同様にして評価試験を実施した。その結果、
図4に示す形状のパッド本体よりも、
図3に示す形状のパッド本体の方が、良好な性能を発揮できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の足裏パッドは、例えば、外反母趾を予防又は治療するために、靴を履いて歩くときに、足裏に貼り付けられて使用される。また、本発明の足裏パッドは、例えばモートン病を予防又は治療するために、足裏に貼り付けられて好適に使用される。
【符号の説明】
【0072】
1:足裏パッド、
10:パッド本体、 11:第1エラストマー層、 12:第2エラストマー層、
13:粘着層、
20:保管用部材、 21:第1保管用シート、 22:第2保管用シート、
30:位置決め用線状部材、
S:上面、 T:下面、 g:凸部、 α:屈曲部分。