(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】締結構造
(51)【国際特許分類】
F16B 5/06 20060101AFI20240918BHJP
F16B 21/04 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
F16B5/06 A
F16B21/04 H
(21)【出願番号】P 2022167326
(22)【出願日】2022-10-19
【審査請求日】2023-11-27
(73)【特許権者】
【識別番号】390032056
【氏名又は名称】ヒロホー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091719
【氏名又は名称】忰熊 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】小早川 昌士
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭51-026270(JP,U)
【文献】実開昭49-017617(JP,U)
【文献】特開昭48-041880(JP,A)
【文献】実開昭50-121158(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 5/00- 5/12
F16B 21/00- 21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円孔と当該円孔の直径より短辺が短く長辺が長い長方形孔とを中心を一致させて重ねた合成孔を貫通した底面部と、前記底面部の周囲全周にわたって立ち上がった側面部と、側面部の上縁から全周にわたり底面部と平行に外側に突出した庇部と、前記円孔を挟んで前記底面部から立ち上がった一対の軸貫入部とを具備する本体ボックスと、
前記底面部をほぼ覆い尽くせる大きさの鍔部と、前記鍔部の中央から立ち上がった前記円孔の直径に等しい直径の軸部と、前記軸部の頂上に設けられ前記長方形孔を通過可能な平面視形状をもつ直方体のつまみ部であって、前記底面部の裏側に前記底面部の形状の範囲内に前記鍔部を重ねて残した状態で前記つまみ部を先頭に前記軸部までが前記合成孔に差し込まれ、前記つまみ部が前記一対の軸貫入部の上縁の上側に位置する回転つまみと、
前記底面部の向きが第1の角度にあるときに通過させ、第1の角度にないときには通過しない形状の挿入穴が夫々に開けられた結束されるべき複数の板材とを備え、
前記挿入穴を重ねて揃えた状態の複数の板材に、当該板材の片面側から前記鍔部及び底面部が差し込まれ、前記つまみ部を第1の角度から第2の角度へ回転させることにより、前記鍔部と底面部の重なりが解かれて前記鍔部と庇部との間に前記複数の板材を挟むことを特徴とする締結構造。
【請求項2】
請求項1の締結構造において、前記つまみ部の下側の軸部には突起が設けられ、一方、前記一対の軸貫入部には、前記つまみ部が第1の角度から第2の角度へ回転されたときに前記突起が嵌合する溝が設けられていることを特徴とする締結構造。
【請求項3】
請求項1の締結構造において、軸貫入部の上縁は、中央部が高く、両端に向かって降下する傾斜面が設けられており、前記中央部は平坦であり、前記中央部の両側は中央部よりも若干高い凸条で囲われていて、前記中央部の幅は、前記長方形孔の短辺の長さに等しいことを特徴とする締結構造。
【請求項4】
請求項1の締結構造において、一対の軸貫入部には、互いの間隔を狭めるように前記円孔の周方向に突出したカエリが設けられており、さらに前記カエリには、前記底面部から軸前記上縁に向かって、他方の軸貫入部に向って近接するように傾斜した傾斜面が設けられていることを特徴とする締結構造。
【請求項5】
請求項1の締結構造において、前記底面部は長方形状であって、かつ、前記鍔部は前記底面部の長辺と重なる一対の直線辺を有し、前記一対の直線辺に沿って内側に向けて前記鍔部の厚さを増すように上昇する第1テーパー面が設けられていることを特徴とする締結構造。
【請求項6】
請求項1の締結構造において、前記つまみ部は、第2の角度に回転したとき、前記底面部から前記庇部の範囲内に収まる高さであることを特徴とする締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、締結構造に関し、特にプラスチック段ボール等の板材を利用して通い箱を組立てる際に用いられる締結構造に係るものである。
【背景技術】
【0002】
工場間で製品を運搬するために、板材により作られた通い箱が利用されている。例えば、特許文献1に開示された通い箱においては、プラスチック段ボールを折曲げて、6面の内の上向きの1面を開口とした長方形の箱体とする。このような通い箱の作成には、プラスチック段ボール、厚紙、板状緩衝材、コンパネ等の板材を適宜締結・結束する。
【0003】
板材の面同士を重ね合わせてボルトとナットにより結束する一般的な作業においては、ボルト側とナット側をそれぞれスパナ等の工具に嵌合させるため、被締結部材の主面側と裏面側とでそれぞれ作業を行う必要がある。例えば、ボルトとナットの締結箇所が箱体の奥側に位置する場合、内側に手が届きにくい、又は工具が挿入しにくいという問題があった。特許文献2には、被締結部材をボルトとナットによって一方向から締付固定することが可能であり、締結固定の作業性を改善した締結固定機構部が開示されている。また、特許文献3には、ボルトとナットによる締結ではなく、ビスを打ち込むことによりワンタッチにより接合固定可能な取付け具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-354228号公報
【文献】特開2016-8647号公報
【文献】特開平2-279850号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2、3の技術によれば、板同士を一方向から締付固定可能とする事ができるが、板の表裏面に、締結固定機構部のボルト軸部、若しくは取付け具の挿入先端部が突出する。しかしながら、箱体の内側に、このような突出が発生することは、通い箱への適用において、望ましくない。また、通い箱としての性質上、搬送先での解体、分別廃棄にも適用できるように、容易に分解できることも望まれている。
本発明は、上記のような問題を解決するためになされたものであり、板材同士を一方向から締付可能な締結構造であって、板の表裏面からの突出を少なくし、かつ分解可能な締結構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係わる締結構造は、円孔と当該円孔の直径より短辺が短く長辺が長い長方形孔とを中心を一致させて重ねた合成孔を貫通した底面部と、前記底面部の周囲全周にわたって立ち上がった側面部と、側面部の上縁から全周にわたり底面部と平行に外側に突出した庇部と、前記円孔を挟んで前記底面部から立ち上がった一対の軸貫入部とを具備する本体ボックスと、
前記底面部をほぼ覆い尽くせる大きさの鍔部と、前記鍔部の中央から立ち上がった前記円孔の直径に等しい直径の軸部と、前記軸部の頂上に設けられ前記長方形孔を通過可能な平面視形状をもつ直方体のつまみ部であって、前記底面部の裏側に前記底面部の形状の範囲内に前記鍔部を重ねて残した状態で前記つまみ部を先頭に前記軸部までが前記合成孔に差し込まれ、前記つまみ部が前記一対の軸貫入部の上縁の上側に位置する回転つまみと、
前記底面部の向きが第1の角度にあるときに通過させ、第1の角度にないときには通過しない形状の挿入穴が夫々に開けられた結束されるべき複数の板材とを備え、
前記挿入穴を重ねて揃えた状態の複数の板材に、当該板材の片面側から前記鍔部及び底面部が差し込まれ、前記つまみ部を第1の角度から第2の角度へ回転させることにより、前記鍔部と底面部の重なりが解かれて前記鍔部と庇部との間に前記複数の板材を挟むことを特徴とする特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明の締結構造によれば、板同士を一方向から結束可能であり、板の表裏面からの突出を少なくし、かつ使用後は容易に分解して分別廃棄することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例による締結構造の説明図であり、
図1Aは本体ボックスの平面/底面の斜視図、
図1Bは回転つまみの平面/底面の斜視図、
図1Cは板材を結束する様子を示す。
【
図2】留め具の斜視図であり、
図2A、2Bは板材を結束する前の状態、
図2C、2Dは結束後の状態を示している。
【
図3】一対の軸貫入部とつまみ部を示す図であり、
図3Aはつまみ部の一部拡大図、
図3Bは一対の軸貫入部を平面視した図、
図3C~
図3Eは留め具がアンロック状態からロック状態に変位する際の軸部の横断面図である。
【
図4】留め具の詳細を示す図であり、
図4Aは本体ボックスと回転つまみの連結する過程を示す図、
図4Bはロック時の軸貫入部とつまみ部との位置関係を示す図、
図4CはX-X断面図、
図4DはY-Y断面図である。
【
図5】留め具の作用を示す図であり、
図5Aは留め具を板材の挿入穴を挿入する前の図、
図5Bは挿入後の図、
図5Cは結束した際の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施例の締結構造を
図1に示す。本発明の実施例の締結構造による留め具1は本体ボックス20と、回転つまみ40の2パーツで構成されており、この2つのパーツを連結させることで、回転機構を有する留め具1になる。留め具1は、両面テープやリベットの代用として板材の結束、固定ができる樹脂製の留め具で有り、板材w1、w1の片側から操作できるものである。本発明の実施例の締結構造による板材w1、w1は、プラスチック段ボール、厚紙、コンパネ等のほかに、ゴムや発泡材等の緩衝材でもよい。尚、以降説明する留め具1は、結合させる板材側の合計の厚さを10mmと想定しているが、本発明ではこれに限定されることなく、様々な厚さに設定しても良いのはもちろんである。図中、x、y,zは、3次元直交座標系を示す。
【0010】
[全体説明]
まず、
図1Aにおいて、本体ボックス20は、平面視(x-y面)において長方形状の底面部21と、底面部21の周囲全周にわたってz方向に立ち上がった側面部22と、側面部22の上縁から全周にわたり底面部21と平行に外側に突出した庇部23とを具備する。底面部21の下側面から庇部23の下側面までの距離d1(図中、z方向)は10mmである。底面部21の中央には円孔24(一部破線により作図)が貫通し、円孔24を挟んで一対の軸貫入部26、26がz方向に立ち上がっている。また、底面部21はさらに長方形孔25(同じく、一部破線により作図)が貫通している。円孔24と長方形孔25は、中心を一致させて重なり合った合成孔30になっている。このうち長方形孔25は、短辺(図中、y方向)が円孔24の直径より短く、長辺(図中、x方向)は直径より長く、かつ円孔24と長方形孔25は中心が一致している。また、長方形孔25の長辺の方向が底面部21の長辺の方向と一致している。円孔24の縁は、長方形孔25により除かれて、2つの円弧状壁27になっている。この円弧状壁27は、それぞれは、そのまま一対の軸貫入部26、26の内壁になっている。各軸貫入部26、26は、z方向において側面部22よりも低い。また、各軸貫入部26、26の上縁側の内側は、円弧の両端に向かってさらに広がるような内曲面壁28を有している。そして、各軸貫入部26、26の上縁29側の内曲面壁28の中央にはz方向に溝32が設けられている。各軸貫入部の上縁29は、中央部29aが高く、両端に向かって降下する傾斜面29bが設けられている。また、中央部29aは平坦であり、その中央部29aの両側は中央部よりも若干高い凸条29cで囲われている。中央部29aの幅(x方向)は、長方形孔25の短辺の長さに等しい。
【0011】
一方、
図1Bにおいて、回転つまみ40は、鍔部41と軸部42とつまみ部43とを具備している。鍔部41は、x-y平面において底面部21をほぼ覆い尽くせる大きさであり、底面部21の長辺と重なる一対の直線辺41a、41aと、一対の直線辺41a、41aの両端を結ぶ一対の円弧辺41b、41bとにより囲われた平面視形状を有している。一対の直線辺41a、41aに沿って内側に向けて鍔部41の厚さ(z方向)を増すように上昇する第1テーパー面41d、41dが設けられている。鍔部41の中央には、円孔24の直径に等しい直径の軸部42がz方向に立ち上がっている。つまみ部43は軸部42の頂上に設けられており、長方形孔25を通過可能な平面視で長方形形状をもつ直方体である。つまみ部43の直線辺41a、41aの方向と、平面視におけるつまみ部43の長方形状の長辺の方向は同じである。軸部42の立ち上がりから、つまみ部43の頂上面までの距離d2は、底面部21の下側面から庇部23外側までの距離d3の範囲に収まっていることが望ましい。具体的には、10mm+2mm(2mmは庇部23の肉厚)としたが、これには限定されない。鍔部41の形状に円弧辺41b、41bを取り入れたことにより、鍔部41への意図しない外力による回転や損傷を防止できる。また、鍔部41を囲うような部材を配置する際には、ニガシ形状を最少とすることができ、狭所への適用も可能とする。
【0012】
図1Cにおいて、結合させる板材w1、w1側には共通の挿入穴50が設けられる。挿入穴50は、底面部21の長方形状に等しく、両者の向きがあう所定の第1の角度において底面部21は挿入穴50に挿入可能である。図においては板材w1、w1は2枚示したが、結合させる板材w1、w1の厚み合計が10mmになれば、枚数は2枚以上でもよい。挿入穴50を重ねて揃えた状態で板材w1、w1を積層する。挿入穴50の形状の向きと底面部21の形状の向きをあわせた所定の第1の角度で、留め具1を板材w1、w1の片側から挿入穴50に挿入する。そして、つまみ部43を回して結束する。
【0013】
図2において、留め具1の斜視図であり、
図2A、Bが板材w1、w1を結束させる前の状態、
図2C、Dが板材w1、w1を結束させた後の状態である(
図2C、Dには、板材w1、w1は省略して示している。)。結合させる前は、回転つまみ40は、長方形孔25に平面視で重なった状態で、つまみ部43が一対の軸貫入部26、26の間に位置している。つまみ部43は、底面部21の合成孔30を貫通し、つまみ部43は傾斜面29bを昇る前の位置である。鍔部41は、底面部21に重なっている。
【0014】
つまみ部43を所定の第2の角度(90°)回転させると、本体ボックス20は板材w1、w1の挿入穴50により周囲が囲われているため、本体ボックス20は回転せずに、回転つまみ40のみが回転することになる。つまみ部43は、傾斜面29bを昇り、凸条29cを乗りこえ、中央部29aの範囲に収まることで「ロック」の形態になる。このときの状態を
図2C、Dに示す。鍔部41と底面部21の重なりが解かれて、鍔部41の一部が底面部21からはみ出す。この結果、はみ出した鍔部41と、庇部23との間に挟んだ板材w1、w1の抜け防止効果を得ることができる。
【0015】
板材w1、w1の片側からの操作で結束可能であるため、板材w1、w1の背面側に手や工具が入らない状態でも取り付けることができる。また、板材w1、w1を折曲げて長い四角柱を形成した場合にも、四角柱の内側に手や工具を入れなくても結束することができる。また、回転つまみ40を90°まわりアンロック(初期状態)に戻すことにより、留め具1と板材w1、w1を容易に分離することができる。
【0016】
また、つまみ部43には、半月状に掘られた溝44が設けられており、この溝44に工具等(図示せず)を差し込んでつまみ部43を回転させることができる。また、つまみ部43の回転位置を目視することにより、ロック/アンロックの判別が可能になる。
【0017】
次に、細部の詳細について説明する。
[回転つまみ40の回転状態を保持する構造]
図3を用いて、回転つまみ40を90°回転させたときに、この回転状態を保持する構造について説明する。
図3Aは、鍔部41を切除して軸部42とつまみ部43のみを下から見た斜視図である。つまみ部43の下側には、つまみ部43の下面から延びる突起47が軸部42に設けられている。一方、
図3Bに示すように、軸貫入部26、26の内曲面壁28は、円弧の両端に向かって広がるような曲面を有している。
図3Cは、ロック前の状態の軸部42と軸貫入部26、26の関係を示す断面である。つまみ部43を回転させてゆくと、突起47は内曲面壁28に沿って、一対の軸貫入部26、26を押し広げるように作用して弾発力を蓄積し(
図3D、矢印R)、つまみ部43を90°回転させると、蓄積された弾発力が開放されて溝32に突起47が嵌合する(
図3E)。これにより、90°回転させた状態を保持できる。内曲面壁28を有することで、つまみ部43を回転させる際に、突起47の干渉を弱めて、初動を軽い操作で実施できるとともに、回転完了の節度感を向上させることができる。
【0018】
また、回転状態を保持する機能は、軸貫入部26、26の上縁29とつまみ部43によっても成される。中央部29aの大きさはつまみ部43に合わせられている。
図4Bにおいて、つまみ部43を90°回転させる過程で、つまみ部43は傾斜面29bを登り、凸条29cを乗りこえる。つまみ部43が中央部29aに位置すると、つまみ部43の両側を凸条29cに挟まれた状態になって、回転状態が保持される。
【0019】
[本体ボックス20と回転つまみ40との連結]
図4Aにおいて、一対の軸貫入部26、26は一定の肉厚を有しており、その形状は、筒を縦に2分割した形状になっている。このような分割形状とすることで、一対の軸貫入部は開き方向に対して、元に戻ろうとする弾性を有することになる。各軸貫入部26、26には、互いの間隔を狭めるように周方向に突出したカエリ31が設けられている。カエリ31は、底面部21から軸貫入部26、26の上縁29に向かって、他方の軸貫入部26に向って近接するように傾斜した傾斜面31aが設けられている。回転つまみ40のつまみ部43を先頭にして軸部42までを、底面部21の裏面から合成孔30に挿入すると、つまみ部43が一対の軸貫入部26、26の間に入っていく過程で、つまみ部43は傾斜面31aに当たり、一対の軸貫入部26、26は開き方向(矢印S)に押されて弾発力を蓄積する。傾斜面31aであるため、軸貫入部26、26の押し広げは、容易である。カエリ31が設けられた範囲をつまみ部43が通過し、軸貫入部26、26の上縁29の上側に達すると、つまみ部43は回転可能な状態になる。軸貫入部26、26に溜められた弾発力が開放され、一対の軸貫入部26、26は元の形態に戻る。つまみ部43は、カエリ31によって、もはや軸貫入部26、26から抜け出ることができず、これにより、回転つまみ40と本体ボックス20は、留め具1として一体化される。このとき、鍔部41は、底面部21の形状の範囲内に重なり、底面部21の裏面側に残されている状態である。
【0020】
[鍔部と庇部に挟まれた板材同士を引き寄せる構造]
図5Aにおいて、鍔部41のつまみ部43側の面には、一対の直線辺41a、41aに沿って内側に向けて鍔部41の厚さを増すように上昇する第1テーパー面41dが設けられている。鍔部41のX-X断面図(
図1B参照)は、
図4Cに示されている。また、軸貫入部26、26の上縁29にも傾斜面29bが設けられている。
【0021】
図5Bにおいて、挿入穴50と底面部21の向きの角度を所定の第1の角度に合わせた状態で、留め具1の鍔部41、底面部21の方から、挿入穴50に挿入する。留め具1は、板材w1、w1の片面側から挿入するのである。尚、図では、結束する板材w1、w1同士の間に隙間がある状態で、留め具1が挿入穴50に挿入されることも示している。つまみ部43を所定の第2の角度(90°)回転させると、つまみ部43は傾斜面29bを昇ってゆき、鍔部41は底面部21に近接する。また、鍔部41が回転する過程で第1テーパー面41dの端部が板材w1、w1に掛かり、第1テーパー面41dの傾斜により板材w1、w1同士を引き寄せる。この作用により、結束する滞在の厚みを、設定通りの厚みに補正することができる。
【0022】
[板材の表裏面からの突出低減構造]
図5Cにおいて、本実施例では、軸部42が立ち上がる位置から、つまみ部43の頂上面までの距離d2は、底面部21の下側面から庇部23外側までの距離d3の範囲内になっている。このため、つまみ部43は、第2の角度に回転したとき、本体ボックス20の底面部21から庇部23の範囲内に収まり、庇部23からz方向に突出しない。このため、意図しない外力による回転や損傷を防止することができる。また、鍔部41の円弧辺41b、41b側において、第1テーパー面41dの裏側、板材w1、w1との段差を低減する第2テーパー面41eが設けられている。このことも、外力(図示せず)による回転や損傷を防止することに寄与する。
【0023】
以上、底面部21と挿入穴50の形状が長方形状の締結構造による実施例を説明したが、楕円形状や長円形状(トラック形状)、若しくは多角形状の他の形状でもよい。つまみ部43を回転させて所定の角度をずらしたときに、平面視において、底面部21と挿入穴50とが重ならない箇所があればよい。底面部21と挿入穴50の形状によっては、所定の第1の角度と第2の角度の差は、90°に限らないこともある。例えば、底面部21と挿入穴50が正三角形である場合には、所定の第1の角度と第2の角度の差は30°になる。また、底面部21と挿入穴50の形状は、つまみ部43を回したときに本体ボックス20がつられて回らないように、円形形状は避けるべきである。
【0024】
以上説明した実施例の締結構造によれば、板材同士を一方向から結束可能であり、板材の表裏面からの突出を少なくし、かつ使用後は容易に分解して分別廃棄することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 留め具
20 本体ボックス
21 底面部
22 側面部
23 庇部
24 円孔
25 長方形孔
26 軸貫入部
27 円弧状壁
28 内曲面壁
29 上縁
29a 中央部
29b 傾斜面
29c 凸条
30 合成孔
31 カエリ
31a 傾斜面
32 溝
41 鍔部
41a 直線辺
41b 円弧辺
41d 第1テーパー面
41e 第2テーパー面
42 軸部
43 つまみ部
44 溝
47 突起
50 挿入穴
d1 距離
d2 距離
w1 板材