(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】リチウム親和物質がコーティングされたリチウム二次電池用負極及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/1395 20100101AFI20240918BHJP
H01M 4/80 20060101ALI20240918BHJP
H01M 4/74 20060101ALI20240918BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
H01M4/1395
H01M4/80 C
H01M4/74 A
H01M4/74 C
H01M4/66 A
(21)【出願番号】P 2022539034
(86)(22)【出願日】2021-04-23
(86)【国際出願番号】 KR2021005192
(87)【国際公開番号】W WO2021221397
(87)【国際公開日】2021-11-04
【審査請求日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0050738
(32)【優先日】2020-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】チョン・ピル・イ
(72)【発明者】
【氏名】チョン・コン・ユン
(72)【発明者】
【氏名】スン・ウ・ファン
【審査官】窪田 陸人
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-153221(JP,A)
【文献】特表2017-532734(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109449443(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110504454(CN,A)
【文献】特表2014-521196(JP,A)
【文献】特開平11-233116(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0019477(US,A1)
【文献】HOU, Guangmei et al.,Growth direction control of lithium dendrites in a heterogeneous lithiophilic host for ultra-safe lithium metal batteries,J. Power Sources,2019年02月06日,416,141-147
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/64-4/84
H01M 4/00-4/62
H01M 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部気孔を有する多孔性構造または上下面が貫通された貫通口を有する負極集電体を準備する段階と、
前記負極集電体のうち正極と対面する第1面をマスキングする段階と、
前記マスキングされた負極集電体をリチウム親和物質でコーティングする段階と、
前記マスキングを除去する段階と、
を含む、リチウム二次電池用負極の製造方法
であって、
前記負極集電体は内部気孔を有する多孔性構造または上下面が貫通された貫通口を含み、
前記正極と対面する第1面を除いた前記多孔性構造または前記貫通口の表面に前記リチウム親和物質(lithiophilic material、LPM)が塗布され、
前記負極集電体の厚さは、5μm~30μmであり、
前記負極が負極活物質層を含まず、
前記マスキングする段階は、前記負極集電体の第1面にテープを付着する方法で遂行する、リチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項2】
前記コーティングする段階は、浸漬(Immersing)、スピンコーティング(Spin Coating)、ディップコーティング(Dip Coating)、スプレーコーティング(Spray Coating)、ドクターブレード(Doctor Blade)、溶液キャスティング(Solution Casting)、ドロップコーティング(Drop Coating)
、及び化学蒸着(Chemical Vapor Deposition;CVD)からなる群から選択される少なくとも一つによって遂行する、請求項
1に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項3】
前記マスキングを除去する段階の後、前記リチウム親和物質コーティング液を除去する過程をさらに含む、請求項
1または2に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【請求項4】
前記マスキングが除去された前記負極集電体は、前記マスキングされた前記正極と対面する第1面を除いた内部気孔及び貫通口にリチウム親和物質がコーティングされている、請求項
1から
3のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2020年4月27日付の韓国特許出願第2020-0050738号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容はこの明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明はリチウム親和物質がコーティングされたリチウム二次電池用負極及びその製造方法に関する。具体的には、リチウムメタルを含む負極集電体の表面でリチウムデンドライトが成長することを抑制するようにリチウム親和物質がコーティングされたリチウム二次電池用負極及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
再使用が可能であり、高いエネルギー密度を有するリチウム二次電池は、化石燃料の使用を画期的に減らすのみならずエネルギーの使用による副産物が発生しないので、環境に優しい特性を有する新しいエネルギー源として注目されている。
【0004】
前記リチウム二次電池は、ウェアラブル(wearable)デバイスまたはポータブル(portable)デバイスに適した高エネルギー密度を有する動力源及び電気自動車のような高出力電力源としても脚光を浴びている。よって、作動電圧及びエネルギー密度が高いリチウム二次電池に対する研究がもっと活発に行われている。
【0005】
リチウム二次電池の作動電圧及びエネルギー密度は、電極活物質、電解液の種類、及び電極合剤層のローディング量などによって変わることができる。正極活物質としては、リチウムコバルト複合酸化物、リチウム含有マンガン複合酸化物などが使われ、負極活物質としては、リチウム金属(Lithium metal)、炭素系物質、シリコンなどが使われる。前記リチウム金属はエネルギー密度が高い利点があるが、空気中の水分と反応すればLiOH、Li2O及びLi2CO3などの副産物が発生する問題がある。
【0006】
前記リチウム金属が電解液と反応して発生する副産物は電池の性能を著しく落とし、内部短絡を引き起こすこともできる。
【0007】
さらに、前記リチウム金属を負極に使用する場合、電池の充放電過程で前記リチウム金属の表面にリチウムデンドライト(dendrite)が形成される。前記リチウムデンドライトが成長して分離膜を貫けば、微細ショートが発生するなど、リチウム二次電池の寿命が縮むだけでなく、安全上に致命的な問題が発生することがある。
【0008】
したがって、特許文献1は、リチウム金属負極の安全性を向上させるために、リチウム金属の表面にジアクリル系モノマーを用いて架橋高分子保護薄膜を形成することにより、リチウム金属電極と高分子電解質との間の界面特性を向上させるリチウム高分子二次電池を開示する。
【0009】
しかし、前記保護薄膜は電池の駆動によって電極表面から容易に剥離されるので、リチウムデンドライトの成長を防止する効果を充分に得にくい。
【0010】
特許文献2は、集電体と保護層との間にリチウム金属を含む電極活物質層を含み、前記保護層は熱伝導物質を含み、充放電中に電極表面の熱分布が均一に維持されてリチウムデンドライトが均一に成長するリチウム二次電池用電極に関するものである。
【0011】
それにもかかわらず、特許文献2は正極と対面する負極の表面でリチウムデンドライトが成長して微細ショートが発生する問題を解決することができていない。このように、リチウム金属負極は、高エネルギー密度及び高電圧という利点にもかかわらず、リチウムデンドライトの成長のため依然として現業に適用されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】韓国登録特許第0425585号公報
【文献】韓国公開特許第2019-0013630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は前記のような問題を解決するためのものであり、リチウム二次電池用負極の表面で成長したリチウムデンドライトが正極と接触してショートが発生することを防止するためにリチウム親和物質がコーティングされたリチウム二次電池用負極及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するための本発明によるリチウム二次電池用負極は、負極集電体が内部気孔を有する多孔性構造または上下面が貫通された貫通口を含み、正極と対面する第1面を除いた前記多孔性構造または前記貫通口の表面にリチウム親和物質(lithiophilic material、LPM)が塗布されたものである。
【0015】
前記リチウム親和物質上でリチウムプレーティング(Li plating)がなされることができる。
【0016】
前記リチウム親和物質は、金属及び金属酸化物のうちの少なくとも一つであってもよい。
【0017】
前記リチウム親和物質は、Au、Ag、Pt、Zn、Si及びMgを含む金属及びCuO、ZnO、CoO及びMnOを含む金属酸化物のうちのいずれか1種以上であることができる。
【0018】
前記リチウム二次電池用負極の製造方法は、内部気孔を有する多孔性構造または上下面が貫通された貫通口を有する負極集電体を準備する段階と、前記負極集電体のうち正極と対面する第1面をマスキングする段階と、前記マスキングされた負極集電体をリチウム親和物質でコーティングする段階と、前記マスキングを除去する段階とを含むことができる。
【0019】
また、前記コーティングする段階は、浸漬(Immersing)、スピンコーティング(Spin Coating)、ディップコーティング(Dip Coating)、スプレーコーティング(Spray Coating)、ドクターブレード(Doctor Blade)、溶液キャスティング(Solution Casting)、ドロップコーティング(Drop Coating)、PVD(Physical Vapor Deposition)、及びCVD(Chemical Vapor Deposition)からなる群から選択される少なくとも一つによって遂行することができる。
【0020】
前記マスキングする段階は、前記負極集電体の第1面にテープを付着する方法で遂行することができる。
【0021】
前記マスキングを除去する段階の後、前記リチウム親和物質コーティング液を除去する過程をさらに含むことができる。
【0022】
前記マスキングが除去された前記負極集電体は、前記マスキングされた前記正極と対面する第1面を除いた内部気孔及び貫通口にリチウム親和物質がコーティングされることができる。
【0023】
また、本発明は、前記リチウム二次電池用負極を含む電極組立体を提供する。
【0024】
また、前記電極組立体は、互いに異なる2個の電極が分離膜を挟んで配置されるモノセル(mono-cell)、または隣接した電極の極性が互いに異なる3個の電極が分離膜を挟んで配置されるバイセル(bi-cell)であることができる。
【0025】
また、本発明は、前記電極組立体を電解液または固体電解質とともに電池ケースに収容するリチウム二次電池を提供する。また、本発明は、前記リチウム二次電池を単位セルとして含む電池モジュールまたは電池パックを含む。
【発明の効果】
【0026】
以上で説明したように、本発明によるリチウム二次電池用負極は、負極集電体の多孔性構造の内部気孔または貫通口でリチウムプレーティングが起こるので、リチウムデンドライトが前記内部気孔及び貫通口で成長する。また、正極と対面する方向にはリチウムデンドライトが形成されない。
【0027】
したがって、正極の方向にリチウムデンドライトが成長して内部短絡が発生することを防止することができ、リチウム二次電池の寿命特性及び安全性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施例1で製造された負極表面の写真である。
【
図2】実施例1で製造された負極においてマスキングの後にマスキング部材を除去してコーティング層が形成されなかった負極表面のSEM写真である。
【
図4】実施例1で製造された負極においてマスキングしなくてリチウム親和物質コーティング層が形成された負極表面のSEM写真である。
【
図5】実施例2で製造された負極のSEM写真である。
【
図6】実施例3で製造された負極のSEM写真である。
【
図7】実施例4で製造された負極においてマスキングの後にマスキング部材を除去してコーティング層が形成されなかった負極表面のSEM写真である。
【
図9】実施例4で製造された負極においてマスキングしなくてリチウム親和物質コーティング層が形成された負極表面のSEM写真である。
【
図10】比較例1で製造された負極表面の写真である。
【
図11】比較例2で製造された負極のSEM写真である。
【
図13】実施例1で製造された負極においてリチウム親和物質コーティング層が形成された面のEDX結果グラフである。
【
図14】実施例1で製造された負極においてリチウム親和物質コーティング層が形成された面のXRD結果グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面を参照して本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施することができる実施例を詳細に説明する。ただ、本発明の好適な実施例に対する動作原理を詳細に説明するにあたり、関連した公知の機能または構成についての具体的な説明が本発明の要旨を不必要にあいまいにする可能性があると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。
【0030】
また、図面全般にわたって類似の機能及び作用をする部分に対しては同じ図面符号を使う。明細書全般で、ある部分が他の部分と連結されていると言うとき、これは直接的に連結されている場合だけではなく、その中間に他の素子を挟んで間接的に連結されている場合も含む。また、ある構成要素を含むというのは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0031】
また、構成要素を限定するか付加して具体化する説明は、特別な制限がない限り、すべての発明に適用することができ、特定の発明に限定されない。
【0032】
また、本発明の説明及び請求範囲全般にわたって単数で表示したものは、別に言及しない限り、複数の場合も含む。
【0033】
また、本発明の説明及び請求範囲全般にわたって“または”は、特に言及しない限り、“及び”を含むものである。したがって、“AまたはBを含む”は、Aを含むか、Bを含むか、及びA及びBの両者を含む3種の場合を全部意味する。
【0034】
また、すべての数値範囲は、明らかに除くという記載がない限り、両端の値とその間のすべての中間値を含む。
【0035】
本発明によるリチウム二次電池用負極は、内部気孔を有する多孔性構造または上下面が貫通された貫通口を有する負極集電体、及び前記負極集電体の正極と対面する第1面を除いた面と内部気孔及び貫通口にコーティングされたリチウム親和物質(lithiophilic material、LPM)を含むことができる。
【0036】
前記負極集電体はリチウム金属からなるか、または銅、ニッケル、ステンレスホイル(foil)上にリチウム金属が位置する形態を有することができる。
【0037】
一般に、前記負極にリチウム金属を使う場合、高エネルギー密度及び高出力の利点があり、前記リチウム金属は金属状態のリチウムで、他の金属と合金された状態ではない純粋リチウムを意味する。しかし、前記リチウム金属は負極の表面にリチウム核を形成し、前記リチウム核が樹枝状のリチウムデンドライトとして成長して分離膜を貫いて内部短絡を引き起こす危険が高い。
【0038】
よって、本発明は、特定の部分でのみリチウムが容易に結合してリチウム核が生ずることを誘導するために、負極集電体の特定部分にのみリチウム親和物質をコーティングする。
【0039】
具体的には、リチウムデンドライトが正極の方向に成長することを防止するために、本発明は、内部気孔を有する多孔性構造または上下面が貫通された貫通口を有する負極集電体を使う。
【0040】
前記内部気孔を有する多孔性構造は負極集電体の内部に気孔がある形態を有し、前記気孔内にリチウム親和物質がコーティングできるように、前記気孔は開放型気孔(open pore)の形態を有することができる。
【0041】
また、前記多孔性構造は負極集電体の表面に複数の溝が形成された形態を有し、前記溝の底及び側面にリチウム親和物質がコーティングされ、前記リチウム親和物質上にリチウムプレーティングがなされる。
【0042】
前記上下面が貫通された貫通口を有する負極集電体は負極集電体を厚さ方向に貫く開口が形成された形態を有し、前記貫通口は負極集電体をマイクロニードルでパンチングすることで形成することができる。前記負極集電体の貫通口内にリチウム親和物質がコーティングされ、前記リチウム親和物質上でリチウムプレーティングがなされる。具体的には、前記貫通口の表面にリチウム親和物質がコーティングされる。
【0043】
また、前記負極集電体は網状(mesh)のものを使うことができ、網状になった単一層構造の負極集電体、または網状になった単一層が2個以上積層された構造の負極集電体を使うことができる。
【0044】
前記負極集電体の内部気孔または貫通口にリチウム親和物質がコーティングされれば、前記リチウム親和物質上でリチウムプレーティング(Li plating)がなされてリチウム核が形成され、前記リチウム核から成長したリチウムデンドライトは前記内部気孔または貫通口でのみ成長する。よって、負極集電体の表面から突出するようにリチウムデンドライトが成長しない。
【0045】
前記リチウム親和物質は負極集電体の正極と対面する第1面を除いた面にもコーティングされることができるので、当該面のリチウム親和物質上でリチウムプレーティングされてリチウムデンドライトが成長することができる。
【0046】
一方、正極と対面する第1面にはリチウム親和物質がコーティングされていないので、前記第1面ではリチウムデンドライトが発生しない。
【0047】
前記負極集電体の形態は、表面に微細な凹凸が形成されているか形成されていないフィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態を使うことができる。
【0048】
前記負極集電体の厚さは特に限定されないが、5μm~30μmの厚さが好ましく、10μm~20μmの厚さがより好ましい。仮に、前記負極集電体の厚さが30μm超過であれば電極の体積当たり容量が減少する問題があり、5μm未満であれば電極製造の際に折れ現象が発生する問題がある。
【0049】
本発明で、電極活物質層は選択的に含むことができる。すなわち、本発明の負極は、負極活物質層なしにリチウム親和物質がコーティングされた負極集電体のみを含むことができ、またはリチウム親和物質がコーティングされた負極集電体と負極活物質層とを含むことができる。
【0050】
前記負極活物質は、例えば、炭素材、リチウム合金、リチウム金属複合酸化物、リチウム含有チタン複合酸化物(LTO)及びこれらの組合せからなる群から選択された1種以上を含むことができる。ここで、前記リチウム合金はリチウムとの合金化が可能な元素を含むものであり、前記リチウムとの合金化が可能な元素としては、Si、Sn、C、Pt、Ir、Ni、Cu、Ti、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Alまたはこれらの合金を挙げることができる。
【0051】
前記負極活物質層の厚さは0μm~40μm、詳細に5μm~40μm、より詳細に10μm~20μmであることができる。
【0052】
本発明で、負極集電体上に負極活物質層を形成する方法は特に限定されなく、当該分野に知られた方法を使うことができる。例えば、前記負極活物質層は、負極集電体上に乾式または湿式工程で蒸着またはコーティングして形成することができる。
【0053】
前記リチウム親和物質は、金属及び金属酸化物のうちで少なくとも1種以上を選択することができる。例えば、前記金属は、金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)、亜鉛(Zn)、珪素(Si)及びマグネシウム(Mg)などがそれに相当し、前記金属酸化物は非金属であり、銅酸化物、亜鉛酸化物、コバルト酸化物などがそれに相当することができる。
【0054】
本発明は前記リチウム二次電池用負極の製造方法を提供する。具体的には、本発明は、内部気孔を有する多孔性構造または上下面が貫通された貫通口を有する負極集電体を準備する段階、前記負極集電体の前記正極と対面する第1面をマスキングする段階、前記マスキングされた負極集電体をリチウム親和物質でコーティングする段階、及び前記マスキングを除去する段階を含むリチウム二次電池用負極の製造方法を提供する。
【0055】
本発明によるリチウム二次電池用負極は、電極組立体の製造の際、正極と対面する負極集電体の第1面でリチウムデンドライトが成長することを抑制するために、リチウムがプレーティングされやすいリチウム親和物質は正極と対面しない第2面にコーティングされなければならない。よって、前記第1面をマスキングし、負極集電体の表面全体にリチウム親和物質をコーティングした後、前記負極集電体を洗浄して前記マスキングを除去する。
【0056】
本発明による負極集電体は、内部気孔または貫通口にリチウム親和物質がコーティングされなければならないので、前記マスキングする段階に使われるマスキング液は前記負極集電体の内部気孔または貫通口には塗布されてはいけない。
【0057】
したがって、前記負極集電体の内部気孔の大きさと貫通口の直径はマスキング液が浸透しない大きさにならなければならないので、マスキング液の粘度、表面張力などを考慮して適切に設計しなければならない。
【0058】
もしくは、前記マスキングのために、ポリイミドなどの素材からなるテープを付着する方法を使うことができる。
【0059】
前記リチウム親和物質をコーティングする方法は特に限定されなく、例えば、浸漬(Immersing)、スピンコーティング(Spin Coating)、ディップコーティング(Dip Coating)、スプレーコーティング(Spray Coating)、ドクターブレード(Doctor Blade)、溶液キャスティング(Solution Casting)、ドロップコーティング(Drop Coating)、物理蒸着(Physical Vapor Deposition;PVD)または化学蒸着(Chemical Vapor Deposition;CVD)によって遂行することができる。
【0060】
前記マスキングを除去する段階の後、リチウム親和物質コーティング液を除去する過程をさらに含む。洗浄過程によって、前記負極集電体の表面にコーティングされなかった余剰リチウム親和物質及び前記リチウム親和物質コーティング液を除去する。
【0061】
本発明は、前記リチウム二次電池用負極、及び正極を含む電極組立体を提供する。
【0062】
前記正極は、例えば正極集電上に正極活物質を含んでいる正極合剤を塗布してから乾燥させることで製造され、前記正極合剤は、必要に応じて、バインダー、導電材、充填材などを選択的にさらに含むこともできる。
【0063】
前記正極集電体は、当該電池に化学的変化を引き起こさないながらも高い導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムまたはステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものなどを使うことができる。また、前記正極集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の接着力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。
【0064】
前記正極活物質は電気化学的反応を引き起こすことができる物質であり、リチウム遷移金属酸化物として2種以上の遷移金属を含む。例えば、1種またはそれ以上の遷移金属に置換されたリチウムコバルト酸化物(LiCoO2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO2)などの層状化合物;1種またはそれ以上の遷移金属に置換されたリチウムマンガン酸化物;化学式LiNi1-yMyO2(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、B、Cr、ZnまたはGaであり、前記元素のうちで1種以上の元素を含む。0.01≦y≦0.7である)で表現されるリチウムニッケル系酸化物;Li1+zNi1/3Co1/3Mn1/3O2、Li1+zNi0.4Mn0.4Co0.2O2などのようにLi1+zNibMncCo1-(b+c+d)MdO(2-e)Ae(ここで、-0.5≦z≦0.5、0.1≦b≦0.8、0.1≦c≦0.8、0≦d≦0.2、0≦e≦0.2、b+c+d<1である。M=Al、Mg、Cr、Ti、SiまたはYであり、A=F、PまたはClである)で表現されるリチウムニッケルコバルトマンガン複合酸化物;化学式Li1+xM1-yM’yPO4-zXz(ここで、M=遷移金属、好ましくはFe、Mn、CoまたはNiであり、M’=Al、MgまたはTiであり、X=F、SまたはNであり、-0.5≦x≦+0.5、0≦y≦0.5、0≦z≦0.1である)で表現されるオリビン系リチウム金属ホスフェートなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
前記導電材は、通常正極活物質を含む混合物総重量を基準に、1重量%~30重量%添加される。このような導電材は、当該電池に化学的変化を引き起こさないながら導電性を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、カーボン;天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サマーブラックなどのカーボンブラック;炭素纎維や金属纎維などの導電性纎維;フッ化炭素、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などを使うことができる。
【0066】
前記バインダーは活物質と導電材などの結合と集電体に対する結合に役立つ成分であり、通常正極活物質を含む混合物の総重量を基準に、1重量%~30重量%添加される。このようなバインダーの例としては、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブチレンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などを挙げることができる。
【0067】
前記充填材は電極の膨脹を抑制する成分であり、選択的に使われ、当該電池に化学的変化を引き起こさないながらも纎維状材料であれば特に限定されるものではない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系重合剤;ガラス纎維、炭素纎維などの纎維状物質を使うことができる。
【0068】
本発明による電極組立体は、正極と負極との間に介在される分離膜を含む。
【0069】
例えば、前記電極組立体は、互いに異なる2個の電極が分離膜を挟んで配置されるモノセル(mono-cell)、または隣接した電極の極性が互いに異なる3個の電極が分離膜を挟んで配置されるバイセル(bi-cell)であることができる。具体的には、前記バイセルは、負極、分離膜、正極、分離膜及び負極が順次積層される形態を有することができ、前記負極のうち分離膜と対面する面にマスキングした状態でリチウム親和物質がコーティングされることができる。
【0070】
前記分離膜は、高いイオン透過度及び機械的強度を有する絶縁性薄膜が使われ、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンスルフィド、及びポリエチレンナフタレートからなる群から選択されたいずれか1種または2種以上の混合物からなる多孔性基材であることができる。
【0071】
以下では、本発明の実施例を参照して説明するが、これは本発明のより容易な理解のためのものであり、本発明の範疇がそれによって限定されるものではない。
【0072】
負極の製造
<実施例1>
網状(mesh)構造の銅(copper)集電体の一側面にマスキング部材としてポリイミドテープを付着した。
【0073】
前記マスキング部材が付着された銅集電体をリチウム親和物質(LPM)コーティング液に10秒間浸漬してLPMコーティングを遂行した。
【0074】
前記LPMコーティング液は、エタノールにHAuCl4を2mg/mlの濃度に溶解したものを使った。
【0075】
LPMがコーティングされた負極集電体からポリイミドテープを剥ぎ取った後、表面に残ったLPMコーティング液を除去するために、負極集電体を洗浄した。
【0076】
このような過程により、前記ポリイミドテープが付着された面を除いた残りの部分にLPMコーティングが形成された負極を製造した。
【0077】
実施例1で製造された負極表面の写真を
図1に示し、前記負極のSEM写真を
図2から
図4に示した。
図1で、(a)はマスキングの後にマスキング部材を除去してコーティング層が形成されなかった表面であり、(b)はマスキングしなくてリチウム親和物質コーティング層が形成された表面である。
【0078】
図2はマスキングの後にマスキング部材を除去してコーティング層が形成されなかった負極の表面であり、
図3は
図2の白色四角部の拡大図であり、
図4はマスキングしなくてリチウム親和物質コーティング層が形成された負極の表面である。
【0079】
図4は網状構造の銅集電体において厚さ方向の表面でコーティングされたLPM粒子が確認される。
【0080】
<実施例2>
前記実施例1で、LPMコーティング液のHAuCl4の濃度を2mg/mlから5mg/mlに変更したことを除き、前記実施例1と同様な方法で負極を製造した。
【0081】
実施例2で製造された負極のSEM写真を
図5に示す。
図5を参照すると、表面にLPMコーティング層が形成されたことを確認することができる。
【0082】
<実施例3>
前記実施例1で、LPMコーティング液のHAuCl4をAgNO3に変更したことを除き、前記実施例1と同様な方法で負極を製造した。
【0083】
実施例3で製造された負極のSEM写真を
図6に示す。
図6を参照すると、表面にLPMコーティング層が形成されたことを確認することができる。
【0084】
<実施例4>
前記実施例1で、銅集電体をブロンズ(bronze)集電体に変更したことを除き、前記実施例1と同様な方法で負極を製造した。
【0085】
実施例4で製造された負極のSEM写真を
図7から
図9に示す。
【0086】
図7は実施例4で製造された負極において、マスキングの後にマスキング部材を除去してコーティング層が形成されなかった負極表面のSEM写真であり、
図8は
図7の白色四角部の拡大図であり、
図9は実施例4で製造された負極においてマスキングしなくてリチウム親和物質コーティング層が形成された負極表面のSEM写真である。
【0087】
<比較例1>
LPMコーティングを遂行しなかった表面の滑らかな銅集電体を準備して負極として使った。
【0088】
比較例1で製造された負極表面の写真を
図10に示す。
【0089】
<比較例2>
LPMコーティングを遂行しなかった網状構造の銅集電体を準備して負極として使った
比較例2で製造された負極のSEM写真を
図11及び
図12に示す。
図12は
図11の白色四角部の拡大図である。
【0090】
<比較例3>
マスキング部材を塗布しなかった網状構造の銅集電体を、2mg/mlのHAuCl4をエタノールに溶解したLPMコーティング液に10秒間浸漬することで、銅集電体の両面にLPMコーティング層が形成された負極を製造した。
【0091】
ショート発生実験
前記実施例1から実施例4及び比較例1から比較例3で製造された負極を使ってコイン電池(coin cell)を製造した。
【0092】
正極形成用スラリーの製作のために、正極活物質としてNCM811、導電材としてカーボン、バインダーとしてポリビニリデンフルオライドを95:2:3の重量比で混合した。
【0093】
前記正極形成用スラリーをアルミニウム集電体上に厚さ20μmになるようにドクターブレードを用いて塗布した後、120℃で4時間真空乾燥させた。
【0094】
前記真空乾燥結果物に対してロールプレスで圧延工程を遂行して3mAh/cm2の正極を製造した。
【0095】
液体電解質を製造するために、エチレンカーボネートとエチルメチルカーボネートの体積比(体積%)が3:7になるように混合した混合物に、リチウム塩としてLiPF6 1M、ビニリデンカーボネート0.5体積%、及びフルオロエチレンカーボネート1体積%を追加した。
【0096】
前記液体電解質と前記正極と負極とを用いてコイン電池(coin cell)を製造し、前記コイン電池(coin cell)を下記のような条件で充放電しながらショートが発生する充放電回数を測定して下記の表1に記載した。
【0097】
充電条件:CC(定電流)/CV(定電圧)、4.25V、0.5C、0.1C 電流遮断(current cut-off)
放電条件:CC(定電流)条件3V、0.5C
【0098】
前記ショートが発生する充放電回数は、前記充放電条件で寿命評価を遂行しているうち、遮断(cut-off)電圧に到逹しなかったにもかかわらず、電圧が上昇せずに一定電圧が維持されるかまたは電圧が低くなる時点を意味する。
【0099】
【0100】
追加として、実施例1で製造された負極で、リチウム親和物質コーティング層が形成された面のEDX結果は
図13のように現れ、XRD結果は
図14のように現れた。
【0101】
図13及び
図14を参照すると、リチウム親和物質コーティング層でAuが測定されることを確認することができる。
【0102】
前記表1を参照すると、LPMコーティングが形成された場合、短絡がよく発生しないことが分かる。また、負極集電体の両面にLPMコーティングが形成される場合と一面にLPMコーティングが形成される場合とを比較すると、両面に形成される場合に短絡がより早く発生することが分かる。これは、分離膜と対面する負極にもLPMコーティングが形成されれば、正極側にリチウムデンドライトが成長して分離膜を貫いて短絡が発生するからである。
【0103】
また、LPMコーティング液に溶解した金属塩の濃度及び種類によって短絡発生の時間に多少の差が発生するが、LPMコーティング液が一側面にのみ形成される場合には集電体の種類にかかわらず、比較例の負極を使うことに比べて寿命特性及び安全性が著しく向上することが分かる。
【0104】
本発明が属する分野で通常の知識を有する者であれば前記内容に基づいて本発明の範囲内で多様な応用及び変形の実施が可能であろう。
【産業上の利用可能性】
【0105】
以上で説明したように、本発明によるリチウム二次電池用負極は、負極集電体の多孔性構造の内部気孔または貫通口でリチウムプレーティングがなされるので、リチウムデンドライトが前記内部気孔及び貫通口で成長する。また、正極と対面する方向にはリチウムデンドライトが形成されない。
【0106】
したがって、正極の方向にリチウムデンドライトが成長して内部短絡が発生することを防止することができ、リチウム二次電池の寿命特性及び安全性を向上させることができる。