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特許7556597バンドブレーキ装置、及び、羽根つきドラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】バンドブレーキ装置、及び、羽根つきドラム
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/807 20060101AFI20240918BHJP
   F16D 49/10 20060101ALI20240918BHJP
   F16D 65/10 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
F16D65/807
F16D49/10
F16D65/10
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023099910
(22)【出願日】2023-06-19
【審査請求日】2024-01-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595031605
【氏名又は名称】柵木 貞雄
(74)【代理人】
【識別番号】110003535
【氏名又は名称】スプリング弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】柵木 貞雄
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-143362(JP,U)
【文献】実開昭53-154550(JP,U)
【文献】実公昭51-044068(JP,Y2)
【文献】実開昭54-141285(JP,U)
【文献】特公昭46-038444(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/807
F16D 49/10
F16D 65/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転するハブに固定され、前記ハブと一体的に回転する円環状の底部、及び、前記底部の外周から立ち上がる円筒状の外壁部を有し、上部が開放された形状を有するドラムと、
車両の車両本体部に固定され、前記外壁部の外周面の外側に円状空間部を有して前記ドラムを囲繞する円筒碗状の囲繞部分を有するハウジングと、
前記ハウジングに設けられ、前記円状空間部に前記ドラムの前記外周面を囲うように配設された円弧状の帯状バンドと、を有し、
前記帯状バンドが前記ドラムの前記外周面を圧接して摩擦を発生させて前記ハブの回転にブレーキをかけるバンドブレーキ装置において、
前記ドラムの内部に設けられ、前記底部の周方向に間隔をあけて回転中心から前記外壁部へと向かう半径方向に放射状に配設された複数枚の羽根を備え、
前記羽根は、円環状のベースプレート上に設けられ、前記ベースプレートは、前記ドラムと略同心となるように、前記底部に固定され、
前記羽根は、前記ベースプレートの一部を切込み、切込み部分を立ち上げることにより形成され、
前記ドラムは、前記底部の周方向に、間隔をあけて略同心円状に配置された複数の貫通孔を有し、
前記ベースプレートは、前記貫通孔と対応する位置に略同径の第2の貫通孔を有し、
重なり合う前記貫通孔と前記第2の貫通孔とにより形成される部分にドラム工具の先端を挿入可能に構成された、バンドブレーキ装置。
【請求項2】
前記ドラムは、前記底部の内周から立ち上がる円筒状の内壁部を有し、
前記ハブは、前記ドラムの前記底部の中心の孔に挿入され、前記内壁部の内周面により支えられ、
前記羽根は、前記内壁部の外周面、及び、前記外壁部の内周面からなる群より選択される少なくとも一方にほぼ接するように配置される、請求項1に記載のバンドブレーキ装置。
【請求項3】
前記羽根は、前記内壁部の外周面から、前記外壁部の内周面にわたって設けられる、請求項2に記載のバンドブレーキ装置。
【請求項4】
バンドブレーキ装置に使用される羽根つきドラムであって、
車輪と共に回転するハブに固定され、前記ハブと一体的に回転する円環状の底部、及び、前記底部の外周から立ち上がる円筒状の外壁部を有し、上部が開放された形状を有し、
その内部に設けられ、前記底部の周方向に間隔をあけて回転中心から前記外壁部へと向かう半径方向に放射状に配設された複数枚の羽根を備え、
前記羽根は、円環状のベースプレート上に設けられ、前記ベースプレートは、前記ドラムと略同心となるように、前記底部に固定され、
前記羽根は、前記ベースプレートの一部を切込み、切込み部分を立ち上げることにより形成され、
前記ドラムは、前記底部の周方向に、間隔をあけて略同心円状に配置された複数の貫通孔を有し、
前記ベースプレートは、前記貫通孔と対応する位置に略同径の第2の貫通孔を有し、
重なり合う前記貫通孔と前記第2の貫通孔とにより形成される部分にドラム工具の先端を挿入可能に構成された、羽根つきドラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バンドブレーキ装置、羽根つきドラム、及び、羽根つきベースプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ママチャリやシティサイクルなどの日常生活で使用される軽快車といわれている自転車の後輪用のブレーキとして、バンドブレーキ装置が使用されていることが多い。バンドブレーキ装置としては、例えば特許文献1がある。
【0003】
図6は、一般的なバンドブレーキ装置の構造説明図である。従来のバンドブレーキ装置101は、後輪と共に回転するハブに固定されたドラム104と、自転車のフレーム106に固定され、ドラム104の外周面104Aの外側に円状空間部を有してドラム104を囲繞する囲繞部分108Aを有するハウジング108と、ハウジング108内の円状空間部108Bにドラム104の外周面104Aを囲うように配設された帯状バンド110とを有している。なお、符号の102は車軸である。
【0004】
そして、ブレーキワイヤ(図示せず)を介してブレーキ把手(図示せず)に連結されたブレーキレバー112をA方向に作動することによって回動中心114の右側部分が持ち上がり(回動中心114の左側部分は、右側部分とは接合しておらずフレームに固定されているので、回動中心114の右側部分が持ち上がっても不動である。)帯状バンド110でドラム104の外周面104Aを圧接する。これにより、帯状バンド110とドラム104の外周面104Aとの間に摩擦を発生させてハブの回転にブレーキをかけるようにしている。なお、符号の102は車軸である。
【0005】
また、自転車の出荷時には、作業者が上記の円状空間部の側方の開放口からドラム104の外周面104Aと帯状バンド110との間隔を目視しながら、調整ボルト116で帯状バンド110とドラム104の外周面104Aとの隙間距離を適切に調整して適正なブレーキ隙間になるようにブレーキ隙間調整作業が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】実開昭61-22937号公報、
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に示された従来のバンドブレーキ装置は、帯状バンドでドラムの外周面を圧接することによって摩擦を発生させる際に発生する摩擦熱がドラム内にこもり易く、放熱性が悪い。これにより、ブレーキ性能が不安定になるという問題がある。例えば長い坂道等を下る場合のようにブレーキをかけ続ける必要がある場合、ブレーキが熱を持ちブレーキのききが悪くなる等の問題がある。
【0008】
ところで、日本自転車協会は、自転車に乗る人の安心・安全で環境に優しい自転車の供給を目的として、「自転車安全基準」を自主基準として制定しており、これに合格した自転車はBAAマークを貼付することができる。
上述の摩擦によるブレーキ性能の低下は、「自転車安全基準」に照らして好ましくない状態であり、摩擦熱によりバンドブレーキ装置自体の耐久性も低下するという問題もある。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、シンプルな構成でありながら放熱性が改良されたバンドブレーキ装置の提供を課題とする。また、本発明は、羽根つきドラム、及び、羽根つきベースプレートの提供も課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を解決することができることを見出した。
【0011】
[1] 車輪と共に回転するハブに固定され、上記ハブと一体的に回転する円環状の底部、及び、上記底部の外周から立ち上がる円筒状の外壁部を有し、上部が開放された形状を有するドラムと、車両の車両本体部に固定され、上記外壁部の外周面の外側に円状空間部を有して上記ドラムを囲繞する円筒碗状の囲繞部分を有するハウジングと、上記ハウジングに設けられ、上記円状空間部に上記ドラムの上記外周面を囲うように配設された円弧状の帯状バンドと、上記帯状バンドが上記ドラムの上記外周面を圧接して摩擦を発生させて上記ハブの回転にブレーキをかけるバンドブレーキ装置において、上記ドラムの内部に設けられ、上記底部の周方向に間隔をあけて回転中心から上記外壁部へと向かう半径方向に放射状に配設された複数枚の羽根を備える、バンドブレーキ装置。
[2] 上記羽根は、円環状のベースプレート上に設けられ、上記ベースプレートは、上記ドラムと略同心となるように、上記底部に固定される、[1]に記載のバンドブレーキ装置。
[3] 上記羽根は、上記ベースプレートの一部を切込み、切込み部分を立ち上げることにより形成される、[2]に記載のバンドブレーキ装置。
[4] 上記ドラムは、上記底部の内周から立ち上がる円筒状の内壁部を有し、
上記ハブは、上記ドラムの上記底部の中心の孔に挿入され、上記内壁部の内周面により支えられ、上記羽根は、上記内壁部の外周面、及び、上記外壁部の内周面からなる群より選択される少なくとも一方にほぼ接するように配置される、[1]に記載のバンドブレーキ装置。
[5] 上記羽根は、上記内壁部の外周面から、上記外壁部の内周面にわたって設けられる、[4]に記載のバンドブレーキ装置。
[6] 上記ドラムは、上記底部の周方向に、間隔をあけて略同心円状に配置された複数の孔を有する、[1]に記載のバンドブレーキ装置。
[7] バンドブレーキ装置に使用される羽根つきドラムであって、車輪と共に回転するハブに固定され、上記ハブと一体的に回転する円環状の底部、及び、上記底部の外周から立ち上がる円筒状の外壁部を有し、上部が開放された形状を有し、その内部に設けられ、上記底部の周方向に間隔をあけて回転中心から上記外壁部へと向かう半径方向に放射状に配設された複数枚の羽根を備える、羽根つきドラム。
[8] バンドブレーキ装置のドラムの内部に取り付けられる羽根付きベースプレートであって、円環状のベースプレートと、上記円環状のベースプレート上に設けられ、周方向に間隔をあけて中心から外周方向へと向かう半径方向に放射状に配設された複数枚の羽根を備え、上記ドラムは、車輪と共に回転するハブに固定され、上記ハブと一体的に回転する円環状の底部、及び、上記底部の外周から立ち上がる円筒状の外壁部を有し、上部が開放された形状を有し、上記ベースプレートは、上記ドラムと略同心となるように、上記ドラムの内部であって、上記底部に固定して用いられる、羽根つきベースプレート。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、シンプルな構成でありながら放熱性が改良されたバンドブレーキ装置が提供される。また、本発明によれば、羽根つきドラム、及び、羽根つきベースプレートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例1の羽根つきドラムの分解斜視図である。
図2】実施例2のバンドブレーキ装置の底面図である。
図3】実施例2のバンドブレーキ装置の平面図である。
図4】実施例3の羽根つきドラムの斜視図である。
図5】実施例4の羽根つきドラムの斜視図である。
図6】従来のドラムブレーキ装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0015】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化した一例であって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、及び、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。また、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なる場合があり、また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なることがある。
【0016】
(実施例1)
図1は、本発明の実施例1の羽根つきドラムの分解斜視図である。羽根つきドラム100は、ドラム12と、ドラム12の底部12Hにビス48によって固定される羽根つきベースプレート10とにより構成される。
【0017】
ドラム12は、中心部に孔12Fを有する円環状の底部12Hと、底部12Hの外周から立ち上がる円筒状の外壁部12Aと、底部12Hの内周から立ち上がる円筒状の内壁部12Kとを備える。外壁部12A、及び、内壁部12Kは、孔12Fの中心に対して、同心円状に配置されている。また、ドラム12の上部(天面側)は開放されている(開放円筒状)。
【0018】
内壁部12Kの内周面12Eには、図示しないネジ溝が設けられており(雌ネジ構造)、外周にネジ溝が設けられたハブ(雄ネジ構造)が挿入されて、固定される。そのため、羽根つきドラム100は、ハブ(図示しない)と一体的に回転する。
【0019】
羽根つきベースプレート10は、円環状の板材である本体10Aの一部を切込み、切込み部分を立ち上げることで形成された複数枚の羽根10Cを備える。羽根10Cは、周方向に間隔をあけて、中心から外周方向へと向かう半径方向に放射状に配置されている。
本体10Aの中心部には、ドラム12の内壁部12Kの外周よりも大径に構成された孔10Fが設けられ、内壁部12Kの外周面12Lと、孔10Fの内周面10Eとが略接触する状態にて、同心に嵌め込まれる。
【0020】
羽根つきベースプレート10の本体10Aには、貫通孔10Dが周方向に間隔をあけて配置されている。羽根つきベースプレート10とドラム12とを組み合わせたとき、底部12Hにおける、貫通孔10Dに対応する位置には、貫通孔12Dが設けられており、これらにビス48がねじ込まれて、羽根つきベースプレート10は、底部12Hに固定され、ドラム12とともに回転する。
【0021】
羽根つきベースプレート10の本体10Aには、貫通孔10Dより大径とされる貫通孔10Bが設けられている。貫通孔10Bは、整備者等の指が挿入できる程度の大きさとされ、具体的には、直径1~3cmとされる。
同様に、ドラム12の底部12Hの対応箇所にも、略同径とされる貫通孔12Cが設けられる。
ドラム12と羽根つきベースプレート10とが重ね合わされると貫通孔10Bと貫通孔12Cとが重なり合い、工具等を挿入できるよう構成される。これにより、後述するハウジングに装着された状態の羽根つきドラム100を取り出したり、また、ハブに固定された羽根つきドラム100を取り外したりする際に、この部分に汎用のドラム工具の先端を挿入することができ、より容易に作業が実施できる。
【0022】
また、ドラム12はその底部12Hに周方向に間隔をあけて、貫通孔12Cよりやや小径とされた貫通孔12Gが6個設けられている。貫通孔12Gは、空気を流通口としての役割を有する。
羽根つきドラム100は、羽根つきベースプレート10の羽根10Cにより、その回転時に内部に空気流が生ずる。この空気流によって、制動時に生ずる摩擦熱が冷却される。
更に、貫通孔12Gにより、羽根つきドラム100の内部の空気を排出したり、外部から吸気したりするのがより容易となるため、冷却効果がより向上する。
【0023】
なお、本実施例では、羽根10Cは、羽根つきベースプレート10の本体10Aを切込み、これを立ち上げる(折り曲げる)ことにより形成される。これによって、部品点数が低減し、低コストにて効果的な冷却効果を得ることができる。また、羽根つきベースプレート10は、従来のドラムブレーキ装置が有するドラムに対しても簡単な加工(ネジ孔の形成)のみで取り付けられるため、すでに広く使用されている自転車にも容易に適用できる。
なお、羽根つきベースプレート10における羽根10Cは、本体10Aを切り込んで形成される場合に限らず、一体として形成されていてもよいし、溶接等によって付加されたものであってもよい。また、その形状、枚数も限定されない。
【0024】
また、本実施例では、ドラム12に対して、羽根つきベースプレート10が固定されることで、羽根つきドラム100が構成されている。しかし、本発明の羽根つきドラムは、上記構成に限定されるものではなく、その内部に、回転中心から外壁部12Aの内周面12Jに向かう半径方向に放射状に複数枚の羽根が配置されていればよい。例えば、ドラムと羽根とが一体成形されたものであってもよい。また羽根の形状も、いわゆる軸流ファン状であってもよいし、遠心ファン状であってもよい。
【0025】
(実施例2)
次に、羽根つきドラム100を備える本発明のバンドブレーキ装置の全体構成について説明する。図2は、本発明の実施例2のバンドブレーキ装置の底面図である。また、図3は、バンドブレーキ装置の平面図である。
【0026】
バンドブレーキ装置200は、主として、羽根つきドラム100と、ハウジング14と、帯状バンド16と、調整ボルト18とで構成される。そして、帯状バンド16が例えば車輪(図示せず)と共に回転するハブと一体的に回転するドラム12の外壁部12Aの外周面12Bを圧接することによって摩擦を発生させてハブの回転にブレーキをかけるようにしている。なお、ハブは車輪と共に回転する。
【0027】
バンドブレーキ装置200は、自転車の後輪用のブレーキとして使用されていることが多いが、他の車両、例えば車椅子や乳母車等のブレーキとして使用することもでき、自転車に限定するものではない。但し、以下の説明では、バンドブレーキ装置200を取り付ける車両として自転車(図示せず)の例で説明し、自転車の後輪のハブに本発明のバンドブレーキ装置200を取り付けた例で説明する。
【0028】
帯状バンド16がドラム12の外周面12Bを圧接するための機構については、本発明の本質ではないので、詳しい説明はしないが、例えば従来技術の図8で説明したレバー機構及びブレーキ把手(図示せず)に連結されたブレーキワイヤを使用することができる。なお、本実施の形態では、レバー機構としてクランク部材28を使用する例で説明する。
【0029】
ドラム12は円筒状の外周面12Bを有する外壁部12Aを備える略円筒碗状に形成される。即ち、ドラム12の外壁部12Aは、図2の場合には紙面奥側に突起しており、図3の場合には紙面手前側に突起している。略円筒碗状に形成されたドラム12の外壁部12Aの厚みは、帯状バンド16の幅よりも僅かに大きい程度の小幅に形成されている。
【0030】
ドラム12の底部12Hの中心部には、ハブに固定するための孔12Fが形成され、孔12Fには雌ネジが刻設されている。これにより、ドラム12はハブに設けられた雄ネジ部材(図示せず)に螺合することにより固定され、ハブと一体的に回転する。
【0031】
ハウジング14は、円弧状外周枠14Aとハウジング側板14Bとによって、略円筒碗状に形成された囲繞部分14Cと、囲繞部分14Cから略U字板状に延設された支持部分14Dとで構成されている。即ち、ハウジング14の円弧状外周枠14Aは図2の場合には紙面手前側に突起しており、図3の場合には紙面奥側に突起している。囲繞部分14Cは円弧状外周枠14Aとハウジング側板14Bの円板状部分で構成され、支持部分14Dはハウジング側板14Bの略U字板状部分で構成される。
【0032】
ハウジング14の囲繞部分14Cのハウジング側板14Bの中心部には車軸に貫通する貫通孔14Eが形成されている。また、支持部分14Dには、自転車のフレームに固定するための固定孔14Fが形成されている。
【0033】
ハウジング14の囲繞部分14Cを形成する円弧状外周枠14Aは、ドラム12の外壁部12Aよりも大径に形成されている。そして、ドラム12とハウジング14とを自転車に取り付けてドラム12とハウジング14とが組み合わされたときに、ハウジング14はドラム12の外周面12Bの外側に円状空間部14Gを有してドラム12を囲繞する。この場合、略円筒碗状のドラム12と、略円筒碗状のハウジング14の囲繞部分14Cとが対面する向きで合わされる。また、ハウジング14の支持部分14Dには、クランク部材28の揺動中心である支点部28Aに設けられた揺動軸32を介して揺動自在に支持される。
【0034】
帯状バンド16は、ハウジング14の円弧状外周枠14Aの内面側に円弧状に配設される。これにより、ドラム12とハウジング14とを自転車に取り付けてドラム12とハウジング14とが組み立てられたときに、帯状バンド16はドラム12の外周面12Bを囲うように円弧状に配設される。そして、帯状バンド16の一方端が円弧状外周枠14Aの一端部に固定ピン34で固定され、帯状バンド16の他方端がクランク部材28の作用点部28Bに設けられた連結ピン36に連結される。また、クランク部材28の力点部28Cには、ブレーキワイヤ(図示せず)の一端を連結する連結ボルト38が設けられる。
【0035】
帯状バンド16は板バネ材料で形成された帯状金属板16Aと、帯状金属板16Aの内面側(ドラム12の外周面12Bの側)に貼設された帯状摩擦部材16B(例えば帯状ゴム板)とで構成される。
【0036】
これにより、帯状バンド16は、ハウジング14の円弧状外周枠14Aの内面側に沿って円弧状に湾曲することによって、外側(ドラム12の外周面12Bから離間する方向)に付勢力が働いている。
【0037】
したがって、自転車にブレーキをかけていない通常時には、帯状バンド16とドラム12の外周面12Bとの間には隙間が形成されている。これにより、ハブ体と共に回転するドラム12の回転を帯状バンド16が阻害することはない。そして、自転車にブレーキをかけてクランク部材28の力点部28Cをブレーキワイヤ(図示せず)でX方向に引っ張ることによって、クランク部材28が揺動軸32(支点部28A)を揺動中心として揺動して、クランク部材28の作用点部28Bは矢印Yに揺動する。
【0038】
これにより、帯状バンド16の湾曲が縮小する方向に帯状バンド16が引っ張られるので、帯状バンド16の帯状摩擦部材16Bがドラム12の外周面12Bを圧接する。その結果、帯状バンド16と回転するドラム12との間に摩擦が発生し、自転車にブレーキがかかる。
【0039】
制動時に生じる摩擦熱は、羽根つきドラム100が有する羽根10Cの回転(走行時には羽根つきドラム100は回転している)によって、貫通孔12C、12G等を介して外部へと排出される。これにより、バンドブレーキ装置200の内部が冷却され、ブレーキ性能が維持されると共に、帯状バンド16等の耐久性も向上する。
【0040】
なお、バンドブレーキ装置200においては、羽根つきドラム100は、ドラム12が外側となるように(羽根10Cが外部から視認しにくい方向に)固定されている。
しかし、これを逆にして、羽根10Cが外部から視認できる方向に、言い換えれば、図2における羽根つきドラム100の装着方向を表裏反対にして固定してもよい。この場合、冷却効果はより高まりやすい。
【0041】
調整ボルト18はハウジング14の円弧状外周枠14Aに複数個設けられる。本実施の形態では、調整ボルト18を2本設けた例で説明する。2本の調整ボルト18は、円弧状外周枠14Aの円弧中央部近傍に所定間隔を置いて形成された雌ネジ孔に螺合した状態で支持される。
【0042】
即ち、2本の調整ボルト18は、調整ボルト18を回して円弧状外周枠14Aからドラム12の方向への出没量を調整することによって、調整ボルト18の先端が帯状バンド16の外面に当接して押し付ける。また、調整ボルト18は、その先端が車軸の中心軸に向くように円弧状外周枠14Aに螺合されている。
【0043】
2本の調整ボルト18のハウジング14の円弧状外周枠14Aへの設置位置及び所定間隔は、2本の調整ボルト18で帯状バンド16の外側を押し付けたときに、ドラム12の外周面12Bに対する帯状バンド16全体の隙間距離が略均等になる設置位置及び所定間隔とすることが好ましい。
【0044】
これにより、2本の調整ボルト18で帯状バンド16の外面の2箇所をドラム12の側に押すことによって、帯状バンドの帯状摩擦部材16Bとドラム12の外周面12Bとの隙間距離を均等に調整することができる。
【0045】
(実施例3)
図4は、本発明の実施例3の羽根つきドラムの斜視図である。
羽根つきドラム300は、ドラム12内に固定された羽根つきベースプレート40を備える。羽根つきベースプレート40は、実施例1の羽根つきベースプレート10と略同様の形状であるものの、羽根40Cの外側のエッジ部分40Gが、ドラム12の外壁部12Aの内周面12Jとほぼ接触するよう構成されている点が異なる。
【0046】
羽根40Cのエッジ部分40Gが内周面12Jと接触することで、羽根つきドラム300の回転時にドラム12の内外の空気を入れ替えるための空気流がより効率的に生じやすい。羽根40Cのエッジ部分40Gから、空気流がより逃げにくいため、所望の方向への空気流が起きやすい。
なお、エッジ部分40Gと内周面12Jは、ぴったり接触するよう構成されていてもよいが、羽根つきベースプレート40の加工に高い精度を要求されることから、一定程度の隙間を有していてもよい。この場合、当該隙間をコーキング剤等で埋めてもよい。
【0047】
羽根つきベースプレート40においては、羽根40Cのエッジ部分40Gを内周面12Jとほぼ接触するように構成されている。内側のエッジ部分40Hは、外周面12Lとは一定の隙間をあけて構成されている。
このようにすることで、羽根40Cは、1枚のベースプレートから切込んで形成できるという利点がある。
1枚のベースプレートから羽根40Cを形成できるため、部品点数も少なく、かつ、既存の自転車のドラムにも容易に取り付けられる。
なお、本実施例では、エッジ部分40Gが内周面12Jとほぼ接触するように構成されているが、その逆に、内側のエッジ部分40Hのみを外周面12Lとほぼ接触するように構成しても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0048】
(実施例4)
図5は、本発明の実施例4の羽根つきドラムの斜視図である。
羽根つきドラム400は、ドラム12内に固定された羽根つきベースプレート40を備える点は、実施例3の羽根つきドラム300と同様である。羽根つきドラム400は、羽根40Cを内周側に延長する補助羽根60を有する。補助羽根60は、内周側のエッジ部から、外周面12Lにわたって設けられている。
【0049】
図5の場合、補助羽根60は透明プラスチックにより形成され、羽根40Cの表面に貼付されている。補助羽根60により内周側に延長された羽根40Cは、外周面12Lから、内周面12Jにわたって設けられる形態となっており、回転の際にエッジ部からもれる空気流がより抑制されるため、より効率的な冷却が可能となる。なお、補助羽根60の材質はプラスチックに限定されない。金属等であってもよい。
【0050】
なお、本実施例では、羽根40Cが内周面12Jとほぼ接するように設けられ、補助羽根60により内側に延長されている。上記以外にも、羽根が外周面12Lとほぼ接するように設けられ、補助羽根によって外側に、内周面12Jにわたるように延長されていてもよい。
上記のように構成することで、羽根つきベースプレート40は、1枚の円環状板材から構成でき、より安価であるうえに、補助羽根により、より効率的な冷却が可能となる。この構成によれば、既存の自転車等のドラムにも容易に羽根を追加できる点で好ましい。
また、すでに説明したとおり、羽根は、ドラムと一体として形成されていてもよく、外周面12Lから内周面12Jにわたるよう配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 ベースプレート
12 ドラム
14 ハウジング
16 帯状バンド
18 調整ボルト
28 クランク部材
32 揺動軸
34 固定ピン
36 連結ピン
38 連結ボルト
40 ベースプレート
48 ビス
60 補助羽根
100、300、400 羽根つきドラム
102 車軸
110 帯状バンド
112 ブレーキレバー
114 回動中心
116 調整ボルト
200 バンドブレーキ装置
【要約】
【課題】 シンプルな構成でありながら放熱性が改良されたバンドブレーキ装置の提供
【解決手段】 車輪と共に回転するハブに固定され、ハブと一体的に回転する円環状の底部、及び、底部の外周から立ち上がる円筒状の外壁部を有し、上部が開放された形状を有するドラムと、車両の車両本体部に固定され、外壁部の外周面の外側に円状空間部を有してドラムを囲繞する円筒碗状の囲繞部分を有するハウジングと、ハウジングに設けられ、円状空間部にドラムの外周面を囲うように配設された円弧状の帯状バンドと、帯状バンドがドラムの外周面を圧接して摩擦を発生させてハブの回転にブレーキをかけるバンドブレーキ装置において、ドラムの内部に設けられ、底部の周方向に間隔をあけて回転中心から外壁部へと向かう半径方向に放射状に配設された複数枚の羽根を備える、バンドブレーキ装置。
【選択図】 図1

図1
図2
図3
図4
図5
図6