(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】キャピラリ供給モジュール、キャピラリ提供機構及びワイヤボンディング装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
H01L21/60 301G
(21)【出願番号】P 2023194223
(22)【出願日】2023-11-15
【審査請求日】2024-02-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】内田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】国吉 勝俊
【審査官】小池 英敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-112260(JP,A)
【文献】特開2008-141025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/447-H01L 21/449
H01L 21/60 -H01L 21/607
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキャピラリが載置されるベース載置面と、前記複数のキャピラリのうち取り出しの対象となった前記キャピラリが接するベース取出面と、を含むベースと、
前記ベースに取り付けられると共に、前記ベース載置面に対面するカバー覆い面と前記ベース取出面に対面するカバー取出面と、を含むカバーと、を備え、
前記ベース及び前記カバーは、
前記ベース載置面と前記カバー覆い面との間に形成された領域であるキャピラリ収容部と、
前記ベース取出面と前記カバー取出面との間に形成された領域であるキャピラリ供給口と、を構成し、
前記キャピラリ供給口は、前記キャピラリの基端から先端に向かう方向に沿って並ぶ第1供給口部及び第2供給口部と、を含み、
前記第1供給口部の開口幅は、前記キャピラリ
において円筒形状であるキャピラリ本体部の直径であるよりも小さく、
前記第2供給口部の開口幅は、前記キャピラリ
において円筒形状であるキャピラリ本体部の直径よりも大きい、キャピラリ供給モジュール。
【請求項2】
前記第1供給口部を構成する前記ベース取出面及び前記カバー取出面の少なくとも一方には、前記ベース取出面及び前記カバー取出面の他方に向かって突出する突起が設けられている、請求項1に記載のキャピラリ供給モジュール。
【請求項3】
前記キャピラリの軸線に沿った前記第1供給口部の長さは、前記第2供給口部の長さより、長い、請求項1に記載のキャピラリ供給モジュール。
【請求項4】
前記ベース載置面と前記ベース取出面とは互いに共通の仮想平面上に存在せず、
前記ベース載置面から前記ベース取出面までの角度は、180度より大きい、請求項1に記載のキャピラリ供給モジュール。
【請求項5】
複数の前記キャピラリのそれぞれが配置される複数の保持溝を有し、前記ベースに配置されるキャピラリ保持部材と、
前記キャピラリ保持部材を前記カバーに向けて押圧する保持力を発生する保持力発生部材と、
前記キャピラリ保持部材を前記ベースに向けて引っ張る解除力を発生する解除力発生部材と、をさらに備える、請求項1に記載のキャピラリ供給モジュール。
【請求項6】
複数のキャピラリを、前記キャピラリの軸線と直交する供給方向に並べて収容するキャピラリ収容部と、前記キャピラリ
において円筒形状であるキャピラリ本体部の直径より小さい開口幅である第1供給口部及び前記キャピラリ
において円筒形状であるキャピラリ本体部の直径より大きい開口幅である第2供給口部を含むキャピラリ供給口と、を有し、前記供給方向に沿って前記キャピラリ収容部から前記キャピラリ供給口に前記キャピラリを移動させるキャピラリ供給モジュールと、
前記キャピラリ供給口に位置する前記キャピラリを前記軸線に沿って、前記第1供給口部から前記第2供給口部へ移動させることによって、前記キャピラリを取り出す動作を実行するキャピラリ取替モジュールと、を備える、キャピラリ提供機構。
【請求項7】
前記キャピラリ供給モジュールは、
ベースと、カバーと、複数の前記キャピラリのそれぞれが配置される複数の保持溝を有するキャピラリ保持部材と、前記キャピラリ保持部材を前記カバーに向けて押圧する保持力を発生する保持力発生部材と、前記キャピラリ保持部材を前記ベースに向けて引っ張る解除力を発生する解除力発生部材と、を有し、
前記キャピラリ供給モジュールが前記キャピラリ取替モジュールに配置されていないときにおける複数の前記キャピラリは、前記キャピラリ収容部から前記キャピラリ供給口に向かって移動しないように、前記キャピラリ保持部材と前記保持力発生部
材によって拘束された状態であり、
前記キャピラリ供給モジュールが前記キャピラリ取替モジュールに配置されているときにおける複数の前記キャピラリは、前記キャピラリ収容部から前記キャピラリ供給口に向かって移動可能であるように、前記キャピラリ保持部材と前記保持力発生部
材による拘束が、前記解除力発生部
材によって解除された状態である、請求項6に記載のキャピラリ提供機構。
【請求項8】
ホーンに取り付けられると共にワイヤが挿入される使用済みキャピラリと、
前記使用済みキャピラリを交換用キャピラリに交換する交換ユニットと、を備え、
前記交換ユニットは、
ホーンから引き抜かれた前記使用済みキャピラリを所定の直線方向に沿って、交換位置から取替位置まで搬送すると共に、前記使用済みキャピラリに代えて前記ホーンに取り付けるための前記交換用キャピラリを前記所定の直線方向とは逆方向に取替位置から交換位置まで送り機構によって搬送するキャピラリ搬送モジュールと、
複数の前記交換用キャピラリを、前記交換用キャピラリの軸線と直交する供給方向に並べて収容するキャピラリ収容部と、前記交換用キャピラリ
において円筒形状であるキャピラリ本体部の直径より小さい開口幅である第1供給口部及び前記交換用キャピラリ
において円筒形状であるキャピラリ本体部の直径より大きい開口幅である第2供給口部を含むキャピラリ供給口と、を有し、前記供給方向に沿って前記キャピラリ収容部から前記キャピラリ供給口に前記交換用キャピラリを移動させるキャピラリ供給モジュールと、
前記キャピラリ供給口に位置する前記交換用キャピラリを前記軸線に沿って、前記第1供給口部から前記第2供給口部へ移動させることによって、前記交換用キャピラリを取り出す動作を実行するキャピラリ取替モジュールと、を有するワイヤボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャピラリ供給モジュール、キャピラリ提供機構及びワイヤボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤボンディング装置は、ワイヤを用いて半導体チップの電極とリードフレームを電気的に接続する。ワイヤは、キャピラリと称される部品から、半導体チップの電極等に押圧される共に必要に応じて熱又は超音波などが与えられる。その結果、ワイヤは、半導体チップの電極等に接合される。このような接合動作を、ボンディングと称する。
【0003】
ボンディングが繰り返されると、キャピラリの先端が摩耗するなどの理由から所望のボンディングの結果が得られにくくなる。そこで、キャピラリは、ボンディングの回数などに基づいて設定される交換条件を満たすごとに交換される。
【0004】
特許文献1~3は、ワイヤボンディングに関する技術をそれぞれ開示する。特許文献1は、ボンディングツールであるキャピラリを交換しながら、連続してボンディングを行うことができる装置及び方法を開示する。特許文献2は、キャピラリの位置を正確に検出する装置及び方法を開示する。特許文献3は、ワイヤ抜け及びワイヤ曲がりをより効果的に抑制する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4700595号
【文献】特開2001-249007号公報
【文献】特許第4467631号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このキャピラリを交換する作業は、使用済みのキャピラリを新しいキャピラリへ単に交換する動作だけではなく、新しいキャピラリに挿通されるワイヤをボンディングが再開可能な状態とする動作まで含む。つまり、キャピラリを交換するためにボンディングを停止してから、新しいキャピラリによるボンディングを再開するまでには、複数の工程を要する。キャピラリを交換する作業を行うためには、ボンディングを中断する必要があるので、当該技術分野にあっては、これらのような複数の工程を含んだキャピラリを交換する作業に要する時間を短縮することが望まれている。
【0007】
本発明は、キャピラリを交換する作業に要する時間を短縮するキャピラリ供給モジュール、当該キャピラリ供給モジュールを備えたキャピラリ提供機構及びワイヤボンディング装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態であるキャピラリ供給モジュールは、複数のキャピラリが載置されるベース載置面と、複数のキャピラリのうち取り出しの対象となったキャピラリが接するベース取出面と、を含むベースと、ベースに取り付けられると共に、ベース載置面に対面するカバー覆い面とベース取出面に対面するカバー取出面と、を含むカバーと、を備え、ベース及びカバーは、ベース載置面とカバー覆い面との間に形成された領域であるキャピラリ収容部と、ベース取出面とカバー取出面との間に形成された領域であるキャピラリ供給口と、を構成し、キャピラリ供給口は、キャピラリの基端から先端に向かう方向に沿って並ぶ第1供給口部及び第2供給口部と、を含み、第1供給口部の開口幅は、キャピラリの直径よりも小さく、第2供給口部の開口幅は、キャピラリの直径よりも大きい。
【0009】
このキャピラリ供給モジュールによれば、複数のキャピラリを収容したキャピラリ収容部からキャピラリ供給口を介して、交換用である新たなキャピラリを供給することができる。つまり、キャピラリ供給モジュールを取り替えることによって、複数の新たな交換用のキャピラリを供給することが可能になる。従って、交換用のキャピラリを1本ずつ交換する態様と比較して、キャピラリを交換する作業に要する時間を短縮することができる。
【0010】
上記のキャピラリ供給モジュールにおいて、第1供給口部を構成するベース取出面及びカバー取出面の少なくとも一方には、ベース取出面及びカバー取出面の他方に向かって突出する突起が設けられていてもよい。この構成によると、外部からの操作に応じて、キャピラリ供給口からキャピラリを取り出すことができる。
【0011】
上記のキャピラリ供給モジュールのキャピラリの軸線に沿った第1供給口部の長さは、第2供給口部の長さより、長くてもよい。この構成によれば、キャピラリ供給口に保持されたキャピラリの姿勢を安定して維持することができる。
【0012】
上記のキャピラリ供給モジュールにおいて、ベース載置面とベース取出面とは互いに共通の仮想平面上に存在せず、ベース載置面からベース取出面までの角度は、180度より大きくてもよい。この構成によれば、ベース載置面を斜面とする配置が可能である。その結果、キャピラリが斜面を転がることにより、キャピラリは、キャピラリ収容部からキャピラリ供給口へ円滑に移動できる。
【0013】
上記のキャピラリ供給モジュールは、複数のキャピラリのそれぞれが配置される複数の保持溝を有し、ベースに配置されるキャピラリ保持部材と、キャピラリ保持部材をカバーに向けて押圧する保持力を発生する保持力発生部材と、キャピラリ保持部材をベースに向けて引っ張る解除力を発生する解除力発生部材と、をさらに備えてもよい。この構成によれば、意図しないタイミングでキャピラリ供給モジュールからキャピラリが落ちてしまうことを抑制できる。
【0014】
本発明の別の形態であるキャピラリ提供機構は、複数のキャピラリを、キャピラリの軸線と直交する供給方向に並べて収容するキャピラリ収容部と、キャピラリの直径より小さい開口幅である第1供給口部及びキャピラリの直径より大きい開口幅である第2供給口部を含むキャピラリ供給口と、を有し、供給方向に沿ってキャピラリ収容部からキャピラリ供給口にキャピラリを移動させるキャピラリ供給モジュールと、キャピラリ供給口に位置するキャピラリを軸線に沿って、第1供給口部から第2供給口部へ移動させることによって、キャピラリを取り出す動作を実行するキャピラリ取替モジュールと、を備える。
【0015】
このキャピラリ提供機構は、上記のキャピラリ供給モジュールを備えている。従って、キャピラリ取替モジュールに装着されるキャピラリ供給モジュールを差し替えることによって、複数の新たな交換用のキャピラリをキャピラリ取替モジュールに供給することが可能になる。従って、交換用のキャピラリを1本ずつ交換する態様と比較して、キャピラリを交換する作業に要する時間を短縮することができる。
【0016】
上記のキャピラリ提供機構において、キャピラリ供給モジュールは、ベースと、カバーと、複数のキャピラリのそれぞれが配置される複数の保持溝を有するキャピラリ保持部材と、キャピラリ保持部材をカバーに向けて押圧する保持力を発生する保持力発生部材と、キャピラリ保持部材をベースに向けて引っ張る解除力を発生する解除力発生部材と、を有し、キャピラリ供給モジュールがキャピラリ取替モジュールに配置されていないときにおける複数のキャピラリは、キャピラリ収容部からキャピラリ供給口に向かって移動しないように、キャピラリ保持部材と保持力発生部によって拘束された状態であり、キャピラリ供給モジュールがキャピラリ取替モジュールに配置されているときにおける複数のキャピラリは、キャピラリ収容部からキャピラリ供給口に向かって移動可能であるように、キャピラリ保持部材と保持力発生部による拘束が、解除力発生部によって解除された状態であってもよい。
【0017】
この構成によれば、キャピラリ供給モジュールがキャピラリ取替モジュールに装着されていないときに、キャピラリ供給モジュールからキャピラリが落ちてしまうことを抑制できる。さらに、キャピラリ供給モジュールがキャピラリ取替モジュールに装着されているときに、キャピラリ供給モジュールからキャピラリを取り出すことができる。つまり、キャピラリ供給モジュールをキャピラリ取替モジュールに装着するだけで、キャピラリの落下を抑制する状態からキャピラリを供給可能な状態へ切り替えることができる。
【0018】
本発明のさらに別の形態であるワイヤボンディング装置は、ホーンに取り付けられると共にワイヤが挿入される使用済みキャピラリと、使用済みキャピラリを交換用キャピラリに交換する交換ユニットと、を備え、交換ユニットは、ホーンから引き抜かれた使用済みキャピラリを所定の直線方向に沿って、交換位置から取替位置まで搬送すると共に、使用済みキャピラリに代えてホーンに取り付けるための交換用キャピラリを所定の直線方向とは逆方向に取替位置から交換位置まで送り機構によって搬送するキャピラリ搬送モジュールと、複数の交換用キャピラリを、交換用キャピラリの軸線と直交する供給方向に並べて収容するキャピラリ収容部と、交換用キャピラリの直径より小さい開口幅である第1供給口部及び交換用キャピラリの直径より大きい開口幅である第2供給口部を含むキャピラリ供給口と、を有し、供給方向に沿ってキャピラリ収容部からキャピラリ供給口に交換用キャピラリを移動させるキャピラリ供給モジュールと、キャピラリ供給口に位置する交換用キャピラリを軸線に沿って、第1供給口部から第2供給口部へ移動させることによって、交換用キャピラリを取り出す動作を実行するキャピラリ取替モジュールと、を有する。
【0019】
このワイヤボンディング装置は、上記のキャピラリ供給モジュールを備えている。従って、キャピラリ取替モジュールに装着されるキャピラリ供給モジュールを差し替えることによって、複数の新たな交換用のキャピラリをキャピラリ取替モジュールに供給することが可能になる。従って、交換用のキャピラリを1本ずつ交換する態様と比較して、キャピラリを交換する作業に要する時間を短縮することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、キャピラリを交換する作業に要する時間を短縮するキャピラリ交換機構及びワイヤボンディング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は、実施形態のワイヤボンディング装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、上クランパ及び下クランパを示す正面図である。
【
図3】
図3は、キャピラリ交換ユニットの構成を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、キャピラリ交換ユニットの具体的な構成に示す斜視図である。
【
図5】
図5は、搬送モジュールの具体的な構成の一例を示す斜視図である。
【
図6】
図6(a)、
図6(b)、
図6(c)及び
図6(d)は、キャピラリ交換ユニットが行う第1搬送動作を説明するための図である。
【
図7】
図7(a)、
図7(b)、
図7(c)及び
図7(d)は、キャピラリ交換ユニットが行う第2搬送動作を説明するための図である。
【
図8】
図8は、取替モジュールの具体的な構成の一例を示す斜視図である。
【
図9】
図9(a)及び
図9(b)は、キャピラリ交換ユニットが行う引き抜き動作を説明するための図である。
【
図11】
図11は、マガジンカバーを分離してキャピラリ供給モジュールの内部を示す斜視図である。
【
図12】
図12は、キャピラリ供給モジュールをキャピラリ取替モジュールに取り付けた様子を示す側面図である。
【
図13】
図13は、マガジンカバーを裏面から見た斜視図である。
【
図14】
図14は、マガジンベース、キャピラリ保持機構及びキャピラリ送り機構を分解して示す斜視図である。
【
図15】
図15は、キャピラリ供給口を拡大して示す側面図である。
【
図16】
図16は、キャピラリ供給口を拡大して示す平面図である。
【
図19】
図19は、交換用キャピラリを保持した様子を示す断面図である。
【
図20】
図20は、交換用キャピラリの保持を解除した様子を示す断面図である。
【
図21】
図21は、実施形態のワイヤボンディング装置が備えるコントローラの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面を参照しながら本発明を実施するための形態を詳細に説明する。図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
図1は、本発明の実施形態であるワイヤボンディング装置を示す斜視図である。ワイヤボンディング装置1は、ワイヤボンディングユニット2と、ボンディングステージ3と、カメラユニット4と、キャピラリ交換ユニット5と、コントローラ6と、を有する。
【0024】
ワイヤボンディングユニット2は、半導体チップ11に対してボンディングワイヤ12を接合する。ボンディングステージ3は、ワイヤボンディングの対象である複数の半導体チップ11をワイヤボンディングユニット2の作業領域に順次移動させる。カメラユニット4は、ワイヤボンディングユニット2の動作を制御するための撮像画像を得る。キャピラリ交換ユニット5は、複数回のワイヤボンディングによって交換する必要が生じた使用済みキャピラリを新たな交換用キャピラリに交換する。コントローラ6は、ワイヤボンディング装置1の各部の動作の制御及び各種の処理を行う各種の制御部を備えている。
【0025】
ワイヤボンディングユニット2は、メインベース21と、ツール用XYステージ22と、サブベース23と、を有する。さらに、ワイヤボンディングユニット2は、ボンディングモジュール24と、Z軸駆動部25と、モジュールベース26と、下ワイヤクランパ27と、上ワイヤクランパ28と、を有する。
【0026】
ツール用XYステージ22は、メインベース21に取り付けられている。サブベース23は、ツール用XYステージ22の可動ステージに取り付けられている。ツール用XYステージ22は、サブベース23をX軸方向及びY軸方向に移動させる。サブベース23には、ボンディングモジュール24、下ワイヤクランパ27、上ワイヤクランパ28及びカメラユニット4が取り付けられている。例えば、サブベース23がツール用XYステージ22によってX軸方向に移動すると、ボンディングモジュール24、下ワイヤクランパ27、上ワイヤクランパ28及びカメラユニット4も一体となってX軸方向に移動する。
【0027】
より詳細には、サブベース23は、サブベース主面23aと、サブベース壁面23bと、を含む。サブベース主面23aには、Z軸駆動部25が取り付けられており、Z軸駆動部25にはモジュールベース26が取り付けられている。そして、モジュールベース26には、ボンディングモジュール24及び下ワイヤクランパ27が取り付けられている。一方、サブベース壁面23bには、Z軸駆動部25及びモジュールベース26といった中間部材を介することなく上ワイヤクランパ28及びカメラユニット4が取り付けられている。この構成によると、ボンディングモジュール24及び下ワイヤクランパ27は、Z軸駆動部25によってZ軸方向に往復移動する。より詳細には、ボンディングモジュール24の先端及び下ワイヤクランパ27の先端は、Z軸駆動部25を中心とした往復円弧運動が可能である。この往復円弧運動の際には、ボンディングモジュール24に対する下ワイヤクランパ27の相対的な位置は維持される。一方、上ワイヤクランパ28及びカメラユニット4は、Z軸駆動部25によってZ軸方向に往復移動しない。
【0028】
要するに、ボンディングモジュール24及び下ワイヤクランパ27は、X軸方向、Y軸方向及びZ軸方向のそれぞれに移動する。これに対して、上ワイヤクランパ28及びカメラユニット4は、X軸方向及びY軸方向に移動する。本実施形態の例示では、上ワイヤクランパ28及びカメラユニット4は、Z軸方向には移動しない。しかし、上ワイヤクランパ28及びカメラユニット4が、Z軸方向に移動可能な構成を採用することも可能である。
【0029】
<ボンディングモジュール24>
ボンディングモジュール24は、ホーンホルダ241と、超音波ホーン242と、キャピラリ243と、を有する。ホーンホルダ241の基端側は、Z軸駆動部25に取り付けられている。ホーンホルダ241の先端側には、超音波ホーン242が取り付けられている。超音波ホーン242の先端側の部分には、キャピラリ243が着脱可能取り付けられている。
【0030】
ボンディングツールであるキャピラリ243は、ボンディングワイヤ12を半導体チップ11に接合する。キャピラリ243は、キャピラリ本体部243aと、キャピラリテーパ部243bと、を有する。キャピラリ本体部243aは、円筒形状であり、超音波ホーン242の先端部分に把持される。キャピラリテーパ部243bは、先端に向かって先細る円錐形状であり、キャピラリテーパ部243bの先端が半導体チップ11のパッド等に押し付けられる。キャピラリ243には、キャピラリ本体部243aの基端面からキャピラリテーパ部243bの先端面に至るキャピラリ貫通孔243hが形成されている。キャピラリ貫通孔243hには、ボンディングワイヤ12が挿通される。
【0031】
<下ワイヤクランパ27及び上ワイヤクランパ28>
図2に示すように、下ワイヤクランパ27及び上ワイヤクランパ28は、ボンディングワイヤ12を把持する状態と、ボンディングワイヤ12を把持しない状態と、を相互に切り替えることができる。上述したように、下ワイヤクランパ27は、Z軸方向に沿って移動可能である。従って、Z軸方向に沿う位置が固定された上ワイヤクランパ28に対して、下ワイヤクランパ27の位置は、上ワイヤクランパ28に近づいた位置と、上ワイヤクランパ28から離れた位置と、相互に切り替えることができる。この把持状態及び開放状態の切り替えと、位置の切り替えとによって、下ワイヤクランパ27及び上ワイヤクランパ28は、ボンディングワイヤ12をキャピラリ貫通孔243hから引き込む動作と、ボンディングワイヤ12をキャピラリ貫通孔243hに送り出す動作と、を行うことができる。
【0032】
<カメラユニット>
カメラユニット4は、半導体チップ11を撮像する。半導体チップ11の撮像画像は、半導体チップ11にワイヤボンディングを行う場合において、キャピラリ243の位置決めのために用いられる。このように、カメラユニット4は、ワイヤボンディングを行うために用いられるワイヤボンディング用カメラユニットとして機能する。
【0033】
また、カメラユニット4は、キャピラリ交換ユニット5によるキャピラリ243の自動交換にも用いられる。例えば、カメラユニット4は、超音波ホーン242のロック状態をリリース状態に切り替える動作の際に、後述する解除ピン部511の位置決め動作に用いられる。カメラユニット4は、キャピラリ243の先端から突出するボンディングワイヤ12の状態がボンディングを再開可能な状態であるか否かを判定する動作に用いられる。
【0034】
カメラユニット4は、撮像素子を有するカメラ41と、カメラ41を支持するカメラアーム42と、ツール用XYステージ22と、カメラ制御部66と、を有する。カメラアーム42の基端部は、ツール用XYステージ22に取り付けられている。カメラアーム42の先端部には、カメラ41が取り付けられている。カメラアーム42は、ボンディングステージ3の上方の位置において、カメラ41を支持する。
【0035】
カメラ41及びカメラアーム42は、サブベース23を介してツール用XYステージ22に取り付けられている。つまり、カメラ41及びカメラアーム42は、ツール用XYステージ22によって駆動されることにより、キャピラリ243等と共に、XY平面に沿う平行移動が可能である。このように、ツール用XYステージ22は、ワイヤボンディングユニット2の構成要素の一部として機能すると共に、カメラユニット4の構成要素の一部としても機能する。カメラ制御部66は、カメラユニット4の各種の動作の制御及び各種の処理を実行する。カメラ制御部66が行う制御の詳細については、後述する。
【0036】
<キャピラリ交換ユニット>
キャピラリ交換ユニット5は、超音波ホーン242に取り付けられた使用済みキャピラリ243Eを回収するとともに、超音波ホーン242に対して新規な交換用キャピラリ243Tを装着する。つまり、キャピラリ243の交換作業とは、キャピラリ243を回収する作業と、キャピラリ243を装着する作業と、を含む。このキャピラリ243の交換作業は、予め設定された条件を満たした場合に、自動的に実施される。例えば、当該条件は、ボンディング作業の回数としてもよい。すなわち、所定回数のボンディング作業を実施するごとに、キャピラリ243を交換する作業を行うものとしてよい。
【0037】
図3は、キャピラリ交換ユニット5を構成する部材を示す概念図である。
図4は、キャピラリ交換ユニット5の具体的な構成例を示す斜視図である。キャピラリ交換ユニット5は、解除モジュール51と、搬送モジュール52(キャピラリ搬送モジュール)と、取替モジュール53と、供給モジュール54(キャピラリ供給モジュール)と、を有する。解除モジュール51、搬送モジュール52及び取替モジュール53は、一体の装置であるように交換ユニット本体50に収められている。交換ユニット本体50は、供給モジュール54が挿入されるモジュールスロット50aを有する。
【0038】
<解除モジュール>
解除モジュール51は、解除ピン部511と、解除シャフト512と、解除駆動部513と、を有する。
【0039】
解除モジュール51は、キャピラリ243が超音波ホーン242に拘束された状態から、キャピラリ243が超音波ホーン242から解放された状態に、切り替える(リリース動作)。さらに、解除モジュール51は、キャピラリ243が超音波ホーン242から解除された状態から、キャピラリ243が超音波ホーン242に拘束された状態に、切り替える。
【0040】
<搬送モジュール>
搬送モジュール52は、搬送キャリッジ521と、搬送直動シャフト522と、搬送駆動部523と、を有する。搬送モジュール52は、さらに、搬送回転ラック524と、搬送回転ピニオン525と、を有する。
【0041】
搬送モジュール52は、交換位置52Sにおいて超音波ホーン242から使用済みキャピラリ243Eを引き抜く。さらに、搬送モジュール52は、引き抜いた使用済みキャピラリ243Eを交換位置52Sから取替位置52Eまで搬送する。
【0042】
搬送モジュール52は、取替位置52Eにおいて取替モジュール53から交換用キャピラリ243Tを受け取る。搬送モジュール52は、交換用キャピラリ243Tを取替位置52Eから交換位置52Sまで搬送する。搬送モジュール52は、交換位置52Sにおいて超音波ホーン242に交換用キャピラリ243Tを挿入する。
【0043】
このように、搬送キャリッジ521の移動は、交換位置52Sと取替位置52Eとの間での直線移動と、使用済みキャピラリ243Eの姿勢を変更する回転移動と、を含む。そして、本実施形態では、回転移動のすべての期間は、直線移動の一部の期間に重複する。換言すると、直線移動の期間は、直線移動のみの期間と、直線移動と回転移動とが並行する期間と、含む。
【0044】
続いて、
図5を参照しながら、搬送モジュール52のさらに具体的な構成の一例を説明する。搬送モジュール52は、上述した搬送キャリッジ521等に加えて、さらに、搬送ベース526を備える。搬送ベース526は、搬送ベース底面部52Aと、搬送ベース立面部52Bと、を有する。搬送ベース底面部52Aから搬送ベース立面部52Bが起立しており、搬送ベース526をY方向から見ると、L字状を呈する。
【0045】
搬送ベース底面部52Aの裏面には、搬送駆動部523であるモータが取り付けられている。搬送駆動部523の出力軸は、Z方向に向く。搬送ベース底面部52Aの主面には搬送直動シャフト522が起立している。搬送直動シャフト522の下端側は、搬送駆動部523の出力軸に連結されている。搬送直動シャフト522の上端側は、搬送ベース立面部52Bの主面から起立するシャフト支持部528に連結されている。シャフト支持部528は搬送直動シャフト522の上端を回転可能に支持する。円柱状の搬送直動シャフト522の外周面には、らせん状のねじ溝が形成されている。つまり、搬送直動シャフト522は、送りねじ(リードスクリュー)である。搬送直動シャフト522は、搬送駆動部523の出力軸の回転に応じて、回転する。搬送直動シャフト522が回転すると、搬送直動シャフト522の送りねじとかみ合うねじ部を有する搬送キャリッジ521の直線移動が生じる。つまり、搬送直動シャフト522は、搬送駆動部523の回転運動を搬送キャリッジ521の直線運動に変換する部材の一部である。
【0046】
搬送モジュール52は、さらに、搬送案内シャフト527を備える。搬送案内シャフト527は、搬送直動シャフト522の回転に起因する搬送キャリッジ521の移動を、Z軸に沿う直線移動に規制する。搬送案内シャフト527は、円柱状の部材である。搬送案内シャフト527は、搬送キャリッジ521の移動方向を規制するものであるから、搬送直動シャフト522とは異なり、搬送案内シャフト527の外周面にはねじ溝は形成されていないし、回転可能な構成ともされていない。つまり、搬送案内シャフト527の下端側は、搬送ベース底面部52Aに固定されている。そして、搬送案内シャフト527の上端側は、搬送ベース立面部52Bから起立するシャフト固定部に固定されている。
【0047】
搬送キャリッジ521は、キャリッジベース52Cと、キャリッジシャフト52Dと、キャピラリキャッチャ52Fと、を有する。キャリッジベース52Cは、搬送直動シャフト522から駆動力を受け、Z軸に沿って上下方向に移動する。具体的には、搬送キャリッジ521は、交換位置52Sから取替位置52Eへ移動することができる。その逆に、搬送キャリッジ521は、取替位置52Eから交換位置52Sへ移動することができる。なお、搬送キャリッジ521は、交換位置Sと取替位置52Eとの間における任意の位置に留まることもできる。
【0048】
キャリッジベース52Cは、キャリッジ本体52C1と、キャリッジフランジ52C2、52C3とを含む。キャリッジ本体52C1には、キャリッジシャフト52Dが挿通する貫通穴が設けられている。キャリッジ本体52C1の第1側面の下側には、キャリッジフランジ52C2が設けられている。キャリッジフランジ52C2には、搬送直動シャフト522のねじ溝とかみ合うねじ部が設けられている。このねじ部と搬送直動シャフト522によって送りねじ機構が構成される。キャリッジ本体52C1の第2側面の略中央にはキャリッジフランジ52C3が設けられている。キャリッジフランジ52C3には、搬送案内シャフト527が挿通される貫通穴52Hが設けられている。例えば、貫通穴52Hの形状は、長孔である。
【0049】
キャリッジシャフト52Dは、キャリッジ本体52C1の貫通穴に通されている。キャリッジシャフト52Dは、キャリッジ本体52C1に対して回転可能である。キャリッジシャフト52Dの先端には、キャピラリキャッチャ52Fが固定されている。
【0050】
キャピラリキャッチャ52Fは、キャリッジシャフト52Dの回転に応じて、回転する。キャピラリキャッチャ52Fは、キャリッジシャフト52Dの軸線と直交する方向に延びる。キャピラリキャッチャ52Fは、円柱状の部材である。キャピラリキャッチャ52Fの基端は、キャリッジシャフト52Dの先端に固定されている。キャピラリキャッチャ52Fの先端には、キャッチャ開口52Gが形成されている。このキャッチャ開口52Gには、キャピラリテーパ部243bが挿入される。キャピラリキャッチャ52Fは、キャピラリ243を保持可能な構成を有する。ここでいう保持とは、キャピラリ243の軸線が鉛直方向に対して傾いた場合でも、キャピラリキャッチャ52Fからキャピラリ243が抜け落ちることがないことをいう。例えば、キャピラリ243の軸線が鉛直方向に直交となるようにした場合であっても、キャピラリ243はキャピラリキャッチャ52Fから脱落することはない。
【0051】
キャリッジシャフト52Dの基端には、搬送回転ピニオン525が取り付けられている。すでに述べたように、キャピラリキャッチャ52Fは、キャリッジシャフト52Dの回転に応じて、回転する。このキャリッジシャフト52Dの回転は、搬送回転ピニオン525と搬送回転ラック524によってなされる。搬送回転ピニオン525、キャリッジシャフト52D及びキャピラリキャッチャ52Fは、一体となって回転可能である。搬送回転ピニオン525にかみ合う搬送回転ラック524は、搬送ベース立面部52Bに取り付けられている。より詳細には、搬送回転ラック524は、搬送ベース立面部52Bの下方、すなわち取替位置52Eの近傍に取り付けられている。搬送回転ラック524及び搬送回転ピニオン525は、搬送キャリッジ521の直線運動をキャピラリキャッチャ52Fの回転運動に変換するラックアンドピニオン機構を構成する。
【0052】
[第1搬送動作]
ここで、使用済みキャピラリ243Eを交換位置52Sから取替位置52Eに搬送する場合を第1搬送動作と称する。第1搬送動作では、まず、下方向に向かう直線移動が開始され、搬送キャリッジ521が搬送回転ラック524に至るまで直線移動のみが実行される。
【0053】
直線移動は、搬送直動シャフト522と搬送駆動部523によって実行される。搬送キャリッジ521と搬送直動シャフト522とは、いわゆる送りねじ機構を構成する。搬送駆動部523が搬送直動シャフト522を回転させると、ねじ軸である搬送直動シャフト522に設置された搬送キャリッジ521が直動する。搬送キャリッジ521の移動方向は、搬送直動シャフト522の回転方向によって決まる。
【0054】
そして、搬送キャリッジ521が搬送回転ラック524に至った後は、直線移動と時計方向への回転移動とが並行して実行される。
【0055】
より詳細には、搬送直動シャフト522の下端側には、搬送回転ラック524が設けられている。
図6(a)に示すように、交換位置52Sにある搬送キャリッジ521が搬送直動シャフト522の下端側に近づくと
図6(b)に示すように搬送キャリッジ521に設けられた搬送回転ピニオン525が搬送回転ラック524にかみ合う。その結果、搬送キャリッジ521の移動に伴って、搬送キャリッジ521が所定の方向に回転する(
図6(c)参照)。例えば、
図6(d)に示すように、搬送キャリッジ521は、時計方向に90度回転する。その結果、取替位置52Eに移動した使用済みキャピラリ243Eの姿勢は、交換位置52Sにおける使用済みキャピラリ243Eの姿勢と異なっている。ここで言う使用済みキャピラリ243Eの姿勢とは、Z軸方向を基準とした使用済みキャピラリ243Eの軸線Aの角度と定義してよい。例えば、交換位置52Sにおける使用済みキャピラリ243Eの姿勢は、Z軸方向に対する角度が0度である。例えば、取替位置52Eにおける使用済みキャピラリ243Eの姿勢は、Z軸方向に対する角度が90度である。
【0056】
なお、使用済みキャピラリ243Eの軸線Aに方向の定義を加えると、使用済みキャピラリ243Eの姿勢をさらに詳細に定義できる。例えば、使用済みキャピラリ243Eの基端から先端に向かう方向を正とする。この場合にも、交換位置52Sにおける使用済みキャピラリ243Eの姿勢は、Z軸方向に対する角度が0度である。例えば、搬送キャリッジ521の回転によって、使用済みキャピラリ243Eの先端が上側であり基端が下側となった場合には、交換位置52Sにおける使用済みキャピラリ243Eの姿勢は、Z軸方向に対する角度が180度であると言える。
【0057】
[第2搬送動作]
次に、交換用キャピラリ243Tを取替位置52Eから交換位置52Sに搬送する場合を第2搬送動作と称する。
図7(a)及び
図7(b)に示すように第2搬送動作では、上方向に向かう直線移動が開始されると同時に半時計方向への回転移動が並行して実行される。搬送キャリッジ521が搬送回転ラック524とかみ合っている期間は、直線移動と回転移動とが並行する。そして、
図7(c)及び
図7(d)に示すように、搬送キャリッジ521が搬送回転ラック524とかみ合わなくなった後は、上方向に向かう直線移動のみが実行される。
【0058】
<取替モジュール>
図8は、取替モジュール53の具体的な構成の一例を示す斜視図である。取替モジュール53は、取替テーブル531と、取替駆動部532と、取替直動シャフト533と、取替ばねシャフト534と、取替稼働片535と、取替固定片536と、取替案内シャフト537と、マガジンスロット538と、取替ベース539と、を有する。
【0059】
取替テーブル531、取替稼働片535及び取替ばねシャフト534は、一体となって取替テーブルユニット53Sを構成する。取替テーブルユニット53Sは、取替ベース539に対して往復移動が可能である。取替テーブルユニット53Sは、取替駆動部532及び取替直動シャフト533によって往復移動のための駆動力を受ける。また、取替テーブルユニット53Sは、取替案内シャフト537によって往復移動の方向が規制されている。取替案内シャフト537は、取替テーブル531の貫通穴に挿通されている。取替案内シャフト537の一方の端部は取替ベース539において取替駆動部532の側に固定されており、取替案内シャフト537の他方の端部は取替ベース539において取替固定片536の側に固定されている。
【0060】
モータである取替駆動部532は、取替ベース539に対して固定されている。この取替駆動部532には、取替直動シャフト533が連結されている。つまり、取替直動シャフト533の一方の端部は取替駆動部532につながっている。そして、取替直動シャフト533の他方の端部は、取替ベース539に設けられたベアリングによって回転可能に支持されている。
【0061】
取替稼働片535は、取替テーブル531に近づく動作と、取替テーブル531から離れる動作と、が可能である。換言すると、取替稼働片535から取替テーブル531までの距離は、可変である。取替ばねシャフト534は、シャフト本体534aとシャフト本体534aが挿入される圧縮バネ534bと、を有する。取替稼働片535には、シャフト本体534aの一方の端部が配置されている。取替稼働片535は、シャフト本体534aに対して固定されていてもよい。取替テーブル531にはシャフト本体534aの他方の端部が配置されている。取替テーブル531は、シャフト本体534aに対して相対的に移動可能である。圧縮バネ534bは、取替稼働片535と取替テーブル531との間に配置されている。圧縮バネ534bは、取替稼働片535から取替テーブル531までの距離を広げる力を発揮する。この力によって、取替稼働片535から取替テーブル531までの距離は、所定の当初距離に保たれている。
【0062】
取替テーブル531は、取替直動シャフト533の回転に応じて移動する。つまり、取替直動シャフト533と取替テーブル531とは、いわゆる送りねじ機構を構成する。取替テーブル531が取替直動シャフト533から駆動力を受けることによって、取替テーブル531を含む取替テーブルユニット53Sが往復移動する。
【0063】
ここで、取替稼働片535が取替固定片536に当接した状態で、さらに取替テーブル531が取替固定片536に向かう方向の駆動力を受けることがある。この場合には、取替稼働片535は取替固定片536に当接しているので移動することはない。一方、取替テーブル531は、取替稼働片535に向かってさらに移動することができる。つまり、取替稼働片535に取替テーブル531が次第に近づく。取替稼働片535に取替テーブル531が近付くと、圧縮バネ534bが圧縮されるので、取替テーブル531は、圧縮バネ534bから受ける反力に抗して、取替稼働片535に近づいていく。
【0064】
一方、取替稼働片535に取替テーブル531が近付いた状態であるとき、取替テーブル531が取替固定片536から離れる方向の駆動力を受けることがある。このとき、取替テーブル531は、次第に取替固定片536から離れ、所定の当初距離に復帰する。
【0065】
取替テーブル531の取替テーブル主面531Sには、交換用キャピラリ243Tを受ける受け溝531bが設けられている。受け溝531bにおいて取替稼働片535側の端部は、開放されている。一方、受け溝531bにおいて取替駆動部532側の端部は、閉鎖されている。取替テーブル主面531Sにおいて、取替駆動部532側の端部には、取替テーブル主面531Sから起立するテーブル起立部531aが設けられている。テーブル起立部531aは、供給モジュール54のキャピラリ供給口54bに待機している交換用キャピラリ243Tを取替固定片536側に押圧する。この押圧によって、交換用キャピラリ243Tが取替固定片536側に移動するので、交換用キャピラリ243Tをキャピラリ供給口54bから受け溝531bに取り出すことができる。
【0066】
[引き抜き動作]
取替モジュール53は、取替位置52Eに搬送された使用済みキャピラリ243Eを搬送キャリッジ521から引き抜く。より詳細には、取替駆動部532及び取替直動シャフト533の動作によって、取替テーブル531及び取替稼働片535が一体となって取替固定片536から離れる(
図9(b)参照)。取替稼働片535は、キャピラリ243のキャピラリテーパ部243bに引っかかっているので、取替稼働片535が取替固定片536から離れる方向に移動すると、取替稼働片535の移動に伴ってキャピラリ243も取替固定片536から離れる方向に移動する。その結果、キャピラリ243は、搬送キャリッジ521から引き抜かれる。
【0067】
[取替動作]
さらに、取替モジュール53は、使用済みキャピラリ243Eが引き抜かれた搬送キャリッジ521に交換用キャピラリ243Tを差し込む。より詳細には、取替駆動部532及び取替直動シャフト533の動作によって、取替テーブル531及び取替稼働片535が一体となって取替固定片536に近づく。この取替テーブル531及び取替稼働片535が取替固定片536に近づく動作は、以下に説明するいくつかの段階を含む。
【0068】
第1の段階(
図10(a)参照)として、取替テーブル531の移動に伴い、取替テーブル起立部531aは、キャピラリ供給口54bに位置する交換用キャピラリ243Tの基端面を押圧しながら取替固定片536に近づく。その結果、交換用キャピラリ243Tは、キャピラリ供給口54bから取替テーブル531上に落下する(
図10(b)参照)。第2の段階として、取替テーブル531の移動に伴い、取替稼働片535が取替固定片536に接触する(
図10(c)参照)。第3の段階として、取替テーブル531の移動に伴い、取替テーブル531が取替固定片536にさらに近づく。この第3の段階では、取替稼働片535は取替固定片536に当接しているから、取替稼働片535は移動しない。従って、第3の段階では、交換用キャピラリ243Tを乗せた取替テーブル531が、取替固定片536に当接する取替稼働片535に近づく。換言すると、第3の段階では、交換用キャピラリ243Tを乗せた取替テーブル531から取替固定片536に当接する取替稼働片535までの距離が次第に短くなる。第4の段階(
図10(d)参照)として、取替テーブル531の移動に伴い、取替テーブル531に乗った交換用キャピラリ243Tのキャピラリテーパ部243bが取替稼働片535及び取替固定片536を通過して、搬送キャリッジ521に差し込まれる。
【0069】
<供給モジュール>
供給モジュール54は、キャピラリ収容部54aと、キャピラリ供給口54bと、を有する。
【0070】
供給モジュール54は、上述したように交換ユニット本体50のモジュールスロット50aに差し込まれる。供給モジュール54は、必要に応じて、モジュールスロット50aから取り外すことが可能である(
図4参照)。供給モジュール54は、キャピラリ収容部54aに複数の交換用キャピラリ243Tを収容している。供給モジュール54は、取替モジュール53の動作に応じて、キャピラリ供給口54bから取替モジュール53に交換用キャピラリ243Tをひとつずつ供給する。
【0071】
以下、
図11~
図20を参照しながら供給モジュール54の構造について詳細に説明する。
図11に示すように、供給モジュール54は、マガジンカバー541と、マガジンベース542と、を有する。マガジンベース542には、キャピラリ収容部54aのための凹部が設けられている。マガジンカバー541は、マガジンベース542に着脱可能に取り付けられている。
【0072】
図12に示すように、マガジンベース542にマガジンカバー541が取り付けられることにより、キャピラリ収容部54aとキャピラリ供給口54bとが形成される。キャピラリ収容部54aは、ベース載置面542bと、カバー覆い面541aとの間に形成された領域である(
図12参照)。キャピラリ供給口54bは、ベース取出面542dと、カバー取出面541bとの間に形成された領域である(同
図12参照)。
【0073】
図13に示すように、マガジンカバー541は、カバー覆い面541aと、カバー取出面541bと、を有する。カバー覆い面541aには、3つのカバーマグネット541Mが埋め込まれている。
【0074】
図14に示すように、マガジンベース542は、ベース連結面542aと、ベース載置面542bと、ベース溝面542c(ベース溝部)と、ベース取出面542dと、ベース裏面542eと、を含む。ベース連結面542aには、マガジンカバー541が接する。ベース連結面542aには、複数の段部を有する溝が設けられている。第1の段部の底面は、ベース載置面542bである。ベース載置面542bには、交換用キャピラリ243Tが載置される。第2の段部の底面は、ベース溝面542cである。ベース溝面542cには、後述するキャピラリ保持テーブル54S1が配置される。
【0075】
ベース取出面542dは、ベース載置面542bにつながっている。つまり、ベース取出面542dにも、交換用キャピラリ243Tが接触可能である。ベース取出面542dは、ベース載置面542bにつながっているものの、互いに同一の仮想平面上には存在しない。ベース取出面542dとベース載置面542bとの間には、稜線542kが存在する。ベース取出面542dとベース載置面542bとの間の角度542Aは、例えば180度より大きい。
【0076】
供給モジュール54が取替モジュール53に配置された状態であるときのベース載置面542b及びベース取出面542dを側面視する(
図12参照)。ベース載置面542bは、Z方向に対して傾いている。つまり、供給モジュール54が取替モジュール53に配置された状態であるとき、ベース載置面542bは斜面であるとも言える。これに対して、ベース取出面542dは、Z方向に対して並行である。つまり、供給モジュール54が取替モジュール53に配置された状態であるとき、ベース取出面542dによって形成されるキャピラリ供給口54bは、鉛直下向きに延びているとも言える。
【0077】
つまり、供給モジュール54は、取替モジュール53に対して斜め方向に差し込まれている。この状態において、ベース裏面542eは、スロット主面538bに接する。さらに、ベース掛止面542fは、スロット上面538aに接する。ベース掛止面542fとスロット上面538aとの接触により、取替モジュール53に対する供給モジュール54の差し込み深さが決まる。
【0078】
<キャピラリ供給口>
図15は、キャピラリ供給口54bを交換用キャピラリ243Tの軸線ATの方向(Y方向)から見た図である。上述したように、キャピラリ供給口54bは、カバー取出面541bとベース取出面542dとによって形成される。カバー取出面541bからベース取出面542dまでの開口幅G54bは、交換用キャピラリ243Tの直径D243よりわずかに大きい。従って、交換用キャピラリ243Tは、キャピラリ収容部54aから転がり落ちてキャピラリ供給口54bに位置することができる。
【0079】
そして、ベース取出面542dには、突起54Tが設けられている。この突起54Tは、交換用キャピラリ243Tをキャピラリ供給口54bに一時的に留めるためのものである。突起54Tは、ベース取出面542dからカバー取出面541bに向かって突出する。従って、突起54Tの突起先端面54Taからカバー取出面541bまでの開口幅G54aは、交換用キャピラリ243Tの直径よりも小さい。従って、交換用キャピラリ243Tは、突起54Tにひっかかるのでキャピラリ供給口54bから落下しない。
【0080】
図16は、キャピラリ供給口54bを鉛直上向き(+Z方向)に見た図である。キャピラリ供給口54bの長さは、供給口長さL54bである。
図16の例示では、供給口長さL54bは、交換用キャピラリ243Tのキャピラリ長さL243よりも長い。そして、突起54Tは、ベース取出面542dの幅方向における一部分に設けられている。つまり、キャピラリ供給口54bを構成するベース取出面542dは、突起54Tが設けられている部分と、突起が設けられていない部分と、を含む。突起54Tが設けられている部分は、キャピラリ供給口54bにおける第1供給口部54b1に対応する。突起54Tが設けられていない部分は、キャピラリ供給口54bにおける第2供給口部54b2に対応する。交換用キャピラリ243Tは、突起54Tが設けられている部分に引っかかる。従って、交換用キャピラリ243Tが突起54Tに引っかかっている限り、交換用キャピラリ243Tはキャピラリ供給口54bから落下しない。一方、突起54Tが設けられていない部分における長さW1は、交換用キャピラリ243Tのキャピラリ直径243Dよりも大きいので、交換用キャピラリ243Tはキャピラリ供給口54bから落下する。
【0081】
突起54Tは、交換用キャピラリ243Tのキャピラリ本体部243aに接する位置に設けられている。キャピラリ本体部243aは、キャピラリテーパ部243bより長い。従って、突起54Tが設けられている部分の長さW1は、突起54Tが設けられていない部分の長さW2より長い。例えば、突起54Tの長さW1は、キャピラリ本体部243aに対応し、突起54Tが設けられていない部分の長さW2は、キャピラリテーパ部243bに対応するとしてもよい。
【0082】
キャピラリ収容部54aからキャピラリ供給口54bに落下した交換用キャピラリ243Tは、突起54Tに引っかかる。そして、取替モジュール53の取替テーブル531によって、交換用キャピラリ243Tが紙面左側に押されると、交換用キャピラリ243Tは、次第に突起54Tが設けられていない部分に移動する。そして、キャピラリ本体部243aの基端が次第に突起54Tが設けられていない部分に至ると、交換用キャピラリ243Tは、キャピラリ供給口54bから取替テーブル531に落下する。
【0083】
上述したように、交換用キャピラリ243Tは、取替テーブル531のテーブル起立部531aによってキャピラリ基端面243eが押圧される。従って、
図15に示すように、軸線ATの方向から見たとき、テーブル起立部531aは、交換用キャピラリ243Tの一部に重複している。例えば、テーブル起立部531aは、交換用キャピラリ243Tの軸線ATには重複しない。換言すると、テーブル起立部531aの上端面531cは、交換用キャピラリ243Tの軸線ATよりも下に位置する。
【0084】
このような位置関係によると、交換用キャピラリ243Tとテーブル起立部531aとの関係は、2つの態様を取り得る。第1の態様は、テーブル起立部531aが紙面右側から左側に移動するものである。第1の態様では、テーブル起立部531aがキャピラリ基端面243eを押圧しながら移動することによって、交換用キャピラリ243Tを紙面左側に移動させる(
図17(a)、(b)参照)。第1の態様では、テーブル起立部531aの移動に伴って交換用キャピラリ243Tもテーブル起立部531aと同じ方向に移動する。そして、交換用キャピラリ243Tが第1供給口部54b1から第2供給口部54b2に移動することによって、交換用キャピラリ243Tは、取替テーブル531上に取り出される(
図17(c)参照)。
【0085】
第2の態様は、第1の態様とは逆に、テーブル起立部531aが紙面左側から右側に移動するものである。
図18(a)に示すように、まず、テーブル起立部531aは、交換用キャピラリ243Tの左側に位置している。このとき、テーブル起立部531aは、交換用キャピラリ243Tに接しない。そして、テーブル起立部531aが紙面右側に移動すると、テーブル起立部531aは、キャピラリテーパ部243bに接する(
図18(b)参照)。キャピラリテーパ部243bは、斜面であるから、テーブル起立部531aがキャピラリテーパ部243bに引っかかることはない。テーブル起立部531aは、キャピラリテーパ部243bを押し上げながら、紙面右側に移動する。このとき、交換用キャピラリ243Tは、テーブル起立部531aの高さに応じて上方に押し上げられる。しかし、交換用キャピラリ243Tは、テーブル起立部531aの紙面右側への移動に応じて、テーブル起立部531aと共に紙面右側に移動しない。
【0086】
そして、テーブル起立部531aは、キャピラリ本体部243aの外周面に接しながら、さらに紙面右側に移動する(
図18(c)参照)。このときも、交換用キャピラリ243Tは、上方にわずかに押し上げられるだけであり、紙面右側に向かって移動しない。そして、テーブル起立部531aがキャピラリ基端面243eより右側に達したときに、交換用キャピラリ243Tは元の位置に復帰する(
図18(d)参照)。
【0087】
このように、テーブル起立部531aがキャピラリ供給口54bに位置する交換用キャピラリ243Tの軸線ATに重複しないという構成によって、テーブル起立部531aと共に交換用キャピラリ243Tが移動する態様と、テーブル起立部531aと共に交換用キャピラリ243Tが移動しない態様と、を実現することができる。
【0088】
さらに、
図14に示すように、マガジンベース542は、保持機構配置穴54H1と、送り機構配置穴54H2と、を含む。保持機構配置穴54H1は、ベース溝面542cに開口を有する穴である。保持機構配置穴54H1は、ベース溝面542cからベース裏面542eに至る貫通穴である。送り機構配置穴54H2は、ベース載置面542bに開口を有する穴である。送り機構配置穴54H2は、ベース載置面542bからベース裏面542eに至る貫通穴である。
【0089】
マガジンベース542には、いくつかの部品が取り付けられている。マガジンベース542には、ベースマグネット542Mとベースピン54Pとが取り付けられている。これらのベースマグネット542Mとベースピン54Pは、マガジンベース542にマガジンカバー541を取り付けるためのものである。ベースマグネット542Mは、カバーマグネット541Mと吸着することによって、マガジンベース542にマガジンカバー541を固定される。また、ベースマグネット542Mの固定によれば、マガジンベース542からマガジンカバー541を容易に取り外すこともできる。従って、空となった供給モジュール54に対して、新たな交換用キャピラリ243Tを充填するために、マガジンカバー541を容易に取り外すことができる。
【0090】
マガジンベース542には、キャピラリ保持機構54Sが取り付けられている。
キャピラリ保持機構54Sは、交換用キャピラリ243Tを取り出せない状態と、交換用キャピラリ243Tを取り出せる状態とを切り替えるものである。供給モジュール54を取替モジュール53に装着する前や装着する作業中は、交換用キャピラリ243Tを取り出す必要がない。そこで、意図せず交換用キャピラリ243Tが排出されることを防止するために、キャピラリ保持機構54Sは、収容している交換用キャピラリ243Tの位置を積極的に保持する。
【0091】
より詳細には、キャピラリ保持機構54Sは、キャピラリ保持テーブル54S1(キャピラリ保持部材)と、ガイドピン54S2と、保持バネ54S3(保持力発生部材、
図19参照)と、保持マグネット54S4(解除力発生部材、
図19参照)と、を有する。キャピラリ保持テーブル54S1は、交換用キャピラリ243Tを拘束する状態と、交換用キャピラリ243Tの拘束を解除する状態と、を切り替える。キャピラリ保持テーブル54S1は、テーブル板部54S5と、テーブル本体部54S6と、を含む。
【0092】
テーブル板部54S5は、ベース溝面542c上に配置される。テーブル板部54S5の主面には、複数の保持溝54S7が設けられている。一つの保持溝54S7には、1本の交換用キャピラリ243Tが配置可能である。例えば
図14のテーブル板部54S5には、10個の保持溝54S7が設けられている。従って、供給モジュール54は、10本の交換用キャピラリ243Tを収容することができる。
【0093】
テーブル本体部54S6は、テーブル板部54S5の裏面から突出する部位である。テーブル本体部54S6は、保持機構配置穴54H1に挿入される。テーブル本体部54S6には、2か所のガイド穴54S8が設けられている。ガイド穴54S8のそれぞれには、ガイドピン54S2が挿入されている。ガイドピン54S2は、保持機構配置穴54H1の側壁に形成された穴54H3に差し込まれている。ガイド穴54S8は、マガジンベース542の厚み方向を長手方向とする長孔である。この長孔にガイドピン54S2が差し込まれているので、キャピラリ保持テーブル54S1は、全体としてマガジンベース542の厚み方向に往復移動が可能である。換言すると、キャピラリ保持テーブル54S1は、マガジンカバー541に近づく移動と、マガジンカバー541から離れる移動と、が可能である。
【0094】
図19に示すように、キャピラリ保持テーブル54S1がマガジンカバー541に近づく移動は、マガジンベース542とテーブル板部54S5との間に配置される保持バネ54S3による。保持バネ54S3は、キャピラリ保持テーブル54S1をマガジンカバー541に向けて押圧する力を発揮する。
【0095】
図20に示すように、キャピラリ保持テーブル54S1がマガジンカバー541から離れる移動は、保持マグネット54S4による。保持マグネット54S4は、取替モジュール53のマガジンスロット538に設けられたスロットマグネット53Mと引き合うことにより、キャピラリ保持テーブル54S1をマガジンカバー541から離す向きの力を発揮する。
【0096】
さらに、マガジンベース542には、キャピラリ送り機構54K(
図14参照)が取り付けられている。キャピラリ送り機構54Kは、キャピラリ収容部54aからキャピラリ供給口54bに向けて、交換用キャピラリ243Tを積極的に送り込むためのものである。
【0097】
より詳細には、キャピラリ送り機構54Kは、送りシャフト54K1と、送りバネ54K2と、送り部材54K3と、を有する。送りバネ54K2には送りシャフト54K1が差し込まれており、当該送りシャフト54K1は、送りバネ54K2と共に送り機構配置穴54H2に配置されている。送りシャフト54K1の上端側には、送り部材54K3が配置されている。送り部材54K3は、送りバネ54K2から受けた力を交換用キャピラリ243Tに伝える。送り部材54K3は、送りシャフト54K1が差し込まれる貫通穴が設けられた腕部54K4と、交換用キャピラリ243Tに接するキャピラリ押圧部54K5と、を含む。
【0098】
<コントローラ>
図21に示すように、コントローラ6は、ワイヤボンディングユニット2及びキャピラリ交換ユニット5の動作を制御する。コントローラ6は、各種プログラムを実行するプロセッサと、プログラム及び所望のデータベースを記憶するメモリと、を有するコンピュータである。コントローラ6は、ワイヤボンディング装置1に設けられた各種センサから提供される情報を受け入れる。そして、コントローラ6は、受け入れた情報を用いて、ワイヤボンディングユニット2及びキャピラリ交換ユニット5の動作を制御するための制御信号を出力する。
【0099】
コントローラ6は、キャピラリ交換プログラムを実行することによって、
図12に示すいくつかの機能構成要素の機能を発揮する。具体的には、コントローラ6は、ボンディング制御部61と、クランパ制御部62と、解除制御部63と、搬送制御部64と、取替制御部65と、を有する。ボンディング制御部61は、Z軸駆動部25に制御信号G61aを出力し、ツール用XYステージ22に制御信号G61bを出力する。クランパ制御部62は、下ワイヤクランパ27に制御信号G62aを出力し、上ワイヤクランパ28に制御信号G62bを出力する。解除制御部63は、キャピラリ交換ユニット5の解除駆動部513に制御信号G63を出力する。搬送制御部64は、キャピラリ交換ユニット5の搬送駆動部523に制御信号G64を出力する。取替制御部65は、キャピラリ交換ユニット5の取替駆動部532に制御信号G65を出力する。
【0100】
コントローラ6は、機能的な構成要素として、カメラ制御部66と、検知センサ制御部67と、を有する。カメラ制御部66は、カメラ41によって取得された平面画像、立面画像を画像処理する。その結果、各部のXYZ方向の位置が検出される。
【0101】
検知センサ制御部67は、キャピラリ交換ユニット5に設けられた複数の検知センサ50Sから検知データを受ける。例えば、検知センサ50Sは、キャピラリ交換ユニット5の内部において順次搬送される使用済みキャピラリ243E及び交換用キャピラリ243Tが所定の位置に存在することを確認する。コントローラ6は、使用済みキャピラリ243E及び交換用キャピラリ243Tが所定の位置に存在することが確認された後に、次の動作に移行する。
【0102】
<作用効果>
供給モジュール54は、複数の交換用キャピラリ243Tが載置されるベース載置面542bと、複数の交換用キャピラリ243Tのうち取り出しの対象となった交換用キャピラリ243Tが接するベース取出面542dと、を含むマガジンベース542と、マガジンベース542に取り付けられると共に、ベース載置面542bに対面するカバー覆い面541aとベース取出面542dに対面するカバー取出面541bと、を含むマガジンカバー541と、を備える。マガジンベース542及びマガジンカバー541は、ベース載置面542bとカバー覆い面541aとの間に形成された領域であるキャピラリ収容部54aと、ベース取出面542dとカバー取出面541bとの間に形成された領域であるキャピラリ供給口54bと、を構成し、キャピラリ供給口54bは、交換用キャピラリ243Tの基端から先端に向かう方向に沿って並ぶ第1供給口部54b1及び第2供給口部54b2と、を含み、第1供給口部54b1の開口幅G54aは、交換用キャピラリ243Tの直径D243よりも小さく、第2供給口部54b2の開口幅G54bは、交換用キャピラリ243Tの直径D243よりも大きい。
【0103】
この供給モジュール54によれば、複数の交換用キャピラリ243Tを収容したキャピラリ収容部54aからキャピラリ供給口54bを介して、交換用キャピラリ243Tを供給することができる。つまり、供給モジュール54を差し替えることによって、複数の交換用キャピラリ243Tを供給することが可能になる。従って、交換用キャピラリ243Tを1本ずつ交換する態様と比較して、交換用キャピラリ243Tを交換する作業に要する時間を短縮することができる。
【0104】
第1供給口部54b1を構成するベース取出面542dには、カバー取出面541bに向かって突出する突起54Tが設けられる。この構成によると、外部からの操作に応じて、キャピラリ供給口54bから交換用キャピラリ243Tを取り出すことができる。
【0105】
交換用キャピラリ243Tの軸線に沿った第1供給口部54b1の長さは、第2供給口部54b2の長さより、長い。この構成によれば、キャピラリ供給口54bに保持された交換用キャピラリ243Tの姿勢を安定して維持することができる。
【0106】
ベース載置面542bとベース取出面542dとは互いに共通の仮想平面上に存在しない。ベース載置面542bからベース取出面542dまでの角度は、180度より大きい。この構成によれば、ベース載置面542bを斜面とする配置が可能である。その結果、交換用キャピラリ243Tが斜面であるベース載置面542bを転がることにより、キャピラリ収容部54aからキャピラリ供給口54bへ円滑に移動することが可能である。
【0107】
供給モジュール54は、複数の交換用キャピラリ243Tのそれぞれが配置される複数の保持溝54S7を有する。マガジンベース542に配置されるキャピラリ保持テーブル54S1と、キャピラリ保持テーブル54S1をマガジンカバー541に向けて押圧する保持力を発生する保持バネ54S3と、キャピラリ保持テーブル54S1をマガジンベース542に向けて引っ張る解除力を発生する保持マグネット54S4と、をさらに備える。この構成によれば、意図しないタイミングで供給モジュール54から交換用キャピラリ243Tが落ちてしまうことを抑制できる。
【0108】
キャピラリ提供機構55は、複数の交換用キャピラリ243Tを、交換用キャピラリ243Tの軸線と直交する供給方向に並べて収容するキャピラリ収容部54aと、交換用キャピラリ243Tの直径より小さい開口幅G54aである第1供給口部54b1及び交換用キャピラリ243Tの直径より大きい開口幅G54bである第2供給口部54b2を含むキャピラリ供給口54bと、を有し、供給方向に沿ってキャピラリ収容部54aからキャピラリ供給口54bに交換用キャピラリ243Tを移動させる供給モジュール54と、キャピラリ供給口54bに位置する交換用キャピラリ243Tを軸線に沿って、第1供給口部54b1から第2供給口部54b2へ移動させることによって、交換用キャピラリ243Tを取り出す動作を実行する取替モジュール53と、を備える。
【0109】
このキャピラリ提供機構55は、上記の供給モジュール54を備えている。従って、取替モジュール53に装着される供給モジュール54を差し替えることによって、複数の交換用キャピラリ243Tを取替モジュール53に供給することが可能になる。従って、交換用キャピラリ243Tを1本ずつ交換する態様と比較して、交換用キャピラリ243Tを交換する作業に要する時間を短縮することができる。
【0110】
供給モジュール54は、マガジンベース542と、マガジンカバー541と、複数の交換用キャピラリ243Tのそれぞれが配置される複数の保持溝54S7を有するキャピラリ保持テーブル54S1と、キャピラリ保持テーブル54S1をマガジンカバー541に向けて押圧する保持力を発生する保持バネ54S3と、キャピラリ保持テーブル54S1をマガジンベース542に向けて引っ張る解除力を発生する保持マグネット54S4と、を有し、供給モジュール54が取替モジュール53に配置されていないときにおける複数の交換用キャピラリ243Tは、キャピラリ収容部54aからキャピラリ供給口54bに向かって移動しないように、キャピラリ保持テーブル54S1と保持バネ54S3によって拘束された状態であり、供給モジュール54が取替モジュール53に配置されているときにおける複数の交換用キャピラリ243Tは、キャピラリ収容部54aからキャピラリ供給口54bに向かって移動可能であるように、キャピラリ保持テーブル54S1と保持バネ54S3による拘束が、保持マグネット54S4によって解除された状態である。
【0111】
この構成によれば、供給モジュール54が取替モジュール53に装着されていないときに、供給モジュール54から交換用キャピラリ243Tが落ちてしまうことを抑制できる。さらに、供給モジュール54が取替モジュール53に装着されているときに、供給モジュール54から交換用キャピラリ243Tを取り出すことができる。つまり、供給モジュール54を取替モジュール53に装着するだけで、交換用キャピラリ243Tの落下を抑制する状態から交換用キャピラリ243Tを供給可能な状態へ切り替えることができる。
【0112】
ワイヤボンディング装置1は、超音波ホーン242に取り付けられると共にボンディングワイヤ12が挿入される使用済みのキャピラリ243と、使用済みのキャピラリ243を交換用キャピラリ243Tに交換するキャピラリ交換ユニット5と、を備える。キャピラリ交換ユニット5は、超音波ホーン242から引き抜かれた使用済みキャピラリ243Eを所定の直線方向に沿って、交換位置から取替位置まで搬送すると共に、使用済みキャピラリ243Eに代えて超音波ホーン242に取り付けるための交換用キャピラリ243Tを所定の直線方向とは逆方向に取替位置から交換位置まで送りねじ機構によって搬送する搬送モジュール52と、複数の交換用キャピラリ243Tを、交換用キャピラリ243Tの軸線と直交する供給方向に並べて収容するキャピラリ収容部54aと、交換用キャピラリ243Tの直径より小さい開口幅G54aである第1供給口部54b1及び交換用キャピラリ243Tの直径より大きい開口幅G54bである第2供給口部54b2を含むキャピラリ供給口54bと、を有し、供給方向に沿ってキャピラリ収容部54aからキャピラリ供給口54bに交換用キャピラリ243Tを移動させる供給モジュール54と、キャピラリ供給口54bに位置する交換用キャピラリ243Tを軸線に沿って、第1供給口部54b1から第2供給口部54b2へ移動させることによって、交換用キャピラリ243Tを取り出す動作を実行する取替モジュール53と、を有する。
【0113】
このワイヤボンディング装置1は、上記の供給モジュール54を備えている。従って、取替モジュール53に装着される供給モジュール54を差し替えることによって、複数の新たな交換用キャピラリ243Tを取替モジュール53に供給することが可能になる。従って、交換用キャピラリ243Tを1本ずつ交換する態様と比較して、交換用キャピラリ243Tを交換する作業に要する時間を短縮することができる。
【0114】
<変形例>
以上、本発明であるキャピラリを交換する方法及びワイヤボンディング装置の例示について説明したが、キャピラリを交換する方法及びワイヤボンディング装置は、上記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0115】
1…ワイヤボンディング装置、41…カメラ、52…搬送モジュール(キャピラリ搬送モジュール)、52E…取替位置、54…供給モジュール(キャピラリ供給モジュール)、243…キャピラリ、243E…使用済みキャピラリ、243h…キャピラリ貫通孔、243T…交換用キャピラリ、A…軸線。
【要約】
【課題】キャピラリを交換する作業に要する時間を短縮する。
【解決手段】供給モジュール54は、複数の交換用キャピラリ243Tが載置されるベース載置面542bと、交換用キャピラリ243Tが接するベース取出面542dと、を含むマガジンベース542と、マガジンベース542に取り付けられると共に、ベース載置面542bに対面するカバー覆い面541aとベース取出面542dに対面するカバー取出面541bと、を含むマガジンカバー541と、を備える。キャピラリ供給口54bは、交換用キャピラリ243Tの基端から先端に向かう方向に沿って並ぶ第1供給口部54b1及び第2供給口部54b2と、を含み、第1供給口部54b1の開口幅G54aは、交換用キャピラリ243Tの直径よりも小さく、第2供給口部54b2の開口幅G54bは、交換用キャピラリ243Tの直径D243よりも大きい。
【選択図】
図16