IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスエヌヴィア カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7556610光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジ及びその製造方法
<>
  • 特許-光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジ及びその製造方法 図1
  • 特許-光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジ及びその製造方法 図2
  • 特許-光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジ及びその製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/28 20060101AFI20240918BHJP
   C08B 37/08 20060101ALI20240918BHJP
   C08F 299/00 20060101ALI20240918BHJP
   A61L 15/28 20060101ALN20240918BHJP
   A61L 31/04 20060101ALN20240918BHJP
   A61L 31/14 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
C08J9/28 101
C08B37/08 Z
C08J9/28 CEP
C08F299/00
A61L15/28 100
A61L31/04 120
A61L31/14 500
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023530678
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-12-19
(86)【国際出願番号】 KR2021016590
(87)【国際公開番号】W WO2022108264
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2020-0156125
(32)【優先日】2020-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518279417
【氏名又は名称】エスエヌヴィア カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】パク、サム デ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ス ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ファン、ヨン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン、セ ミン
【審査官】山本 晋也
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-222867(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0076811(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0009579(US,A1)
【文献】国際公開第2019/178825(WO,A1)
【文献】国際公開第02/060971(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/026214(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J
C08F
C08B
A61L
A61K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジを製造するための化合物であって、
下記化学式2:
【化2】
(式中
記m及びnは、それぞれ独立して1~10,000の正の整数である)
で表され
ことを特徴とする化合物
【請求項2】
(S1)下記化学式2で表される化合物を製造する段階;及び
(S2)前記化学式2で表される化合物に光開始剤を添加して光架橋型ヒアルロン酸スポンジを製造する段階;を含み、
前記(S2)段階は、
(S2A)前記化学式2で表される化合物に光開始剤及び水(HO)を添加して水溶液を製造する段階;
(S2B)前記水溶液に紫外線(Ultraviolet Ray、UV)を照射して光架橋反応を行う段階;及び、
(S2C)前記光架橋反応後、-40~40℃で凍結乾燥して光架橋型ヒアルロン酸スポンジを製造する段階;で構成される
【化4】
(式中、
前記m及びnは、それぞれ独立して1~10,000の正の整数である)
ことを特徴とする光架橋型ヒアルロン酸スポンジの製造方法。
【請求項3】
前記(S1)段階は、
(S1A)ヒアルロン酸(Hyaluronic acid、HA)を水(HO)に溶解させて第1溶液を製造する段階;
(S1B)前記第1溶液に光架橋性官能基を有する化合物及び塩基を添加して第2溶液を製造する段階;及び
(S1C)前記第2溶液にアルコールを添加して沈殿物を生成して前記化学式2で表される化合物を製造する段階;で構成される
請求項2に記載の光架橋型ヒアルロン酸スポンジの製造方法。
【請求項4】
前記光架橋性官能基を有する化合物は、メタアクリル無水物(Methacrylic anhydride)、アクリル無水物(acrylic anhydride)、3-ブテン酸無水物(3-butenoic anhydride)、4-ペンテン酸無水物(4-pentenoic anhydride)、5-ヘキセン酸無水物(5-hexenoic anhydride)、6-ヘプテン酸無水物(6-heptenoic anhydride)、7-オクテン酸無水物(7-octenoic anhydride)、8-ノナン酸無水物(8-nonenoic anhydride)及び9-デセン酸無水物(9-decenoic anhydride)からなる群から選ばれた1種以上である
請求項3に記載の光架橋型ヒアルロン酸スポンジの製造方法。
【請求項5】
前記光開始剤は、
2-ヒドロキシ1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]2-メチル-1-プロパノン(2-hydroxy-1-[4-(2-hydroxyethoxy)phenyl]2-methyl-1-propanone)、3-(4-ベンゾイルフェノキシ)-2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリド(3-(4-benzoylphenoxy)-2-hydroxy-N,N,N-trimethyl-1-propanaminium-chloride)、メチルジエタノールアミン(methyldiethanolamine)、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸ナトリウム(sodium phenyl-2,4,6-trimethylbenzoylphosphinate)、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(lithium phenyl-2,4,6-trimethylbenzoylphosphinate)、ベンジルジメチルケタル(benzyldimethylketal)、及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(1-hydroxy-cyclohexylphenylketone)からなる群から選ばれた1種以上である
請求項2に記載の光架橋型ヒアルロン酸スポンジの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジ及びその製造方法に関し、より詳しくは、べたつきや流れ落ちがなく、柔軟な性質により身体のいろんな部位に使用することができ、水分結合力に優れて組職再生に役立つことができ、生体適合性に非常に優れているため、身体に長期間貼り付けられる場合、皮膚内へ吸収されるので、除去しなければならない手間を省くことができ、光架橋反応により多様な長さの高分子を含むことから、多孔性形態の医療用止血剤、創傷被覆材、癒着防止材などとして活用可能な光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、外科手術及び傷跡治療分野において生分解性高分子を利用して、架橋、凍結乾燥により製造されたスポンジ形態の吸水性材料が多く研究されている。このような材料は、生体適合性が高くかつ架橋されているため水分を長く保持することができ、吸収時に毒性がないので体内外の傷口回復に有用に用いられる。
【0003】
特に、人体内の多様な組職の構成成分であるヒアルロン酸(Hyaluronic acid、HA)は、傷口回復に役立つことができるので、架橋基を導入することにより、 傷口縫合だけではなく、組職再生にも役立つことができる。
【0004】
しかし、従来の架橋型ヒアルロン酸は、大部分がゲル(gel)の剤形で利用するしかなく、これは、ゲルのべたつき、流れ落ちなどのため適用が制限されており、これをパッチなどに製造しても、柔軟性が劣り、物性を調節しにくいから、限られた分野でのみ活用されることができるという問題点があった。
【0005】
本発明者らは、前述した問題点を解消するために、べたつき、流れ落ちなどの不具合をもたらさないスポンジ形態の光架橋型ヒアルロン酸の開発を進めた。しかし、先行して開発された製品は、柔らかい性質が足りなく身体の曲面部位に使うには制限事項があった。
【0006】
したがって、本発明者らは、身体の多様な曲面部位に適用するための柔軟性が付与されたスポンジ形態の光架橋型共重合ヒアルロン酸の開発が急がれると認識し、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、べたつきや流れ落ちがなく、べたつきや流れ落ちがなく、柔軟性が付与されて身体のいろんな部位に使用でき、水分結合力に優れて組職再生に役立つことができ、生体適合性に非常に優れているため、身体に長期間貼り付けられる場合、皮膚内に吸収されるので、除去しなければならない手間を省くことができる光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジ及びその製造方法を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、光架橋反応により多様な長さの高分子を含むので、多孔性形態の医療用止血剤、創傷被覆材、癒着防止材などとして活用可能な光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジ及びその製造方法を提供することである。
【0009】
本発明の課題は、前述した課題に限定されなく、言及されていないまた他の課題は下記の記載から当業者に明確に理解されることができるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明は光架橋型ヒアルロン酸スポンジ、その製造方法及びその用途を提供する。
【0011】
以下、本明細書についてより詳細に説明する。
【0012】
本発明は、下記化学式Iで表される化合物を含む光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジを提供する。
【0013】
【化1】
【0014】
式中、
前記R及びRは、それぞれ独立してC0~C7のアルキル基であり、
前記R及びRは、それぞれ独立してC0~C1のアルキル基であり、
前記m及びnは、それぞれ独立して1~10,000の正の整数である。
【0015】
本発明において、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式2で表された化合物であることを特徴とする。
【0016】
【化2】
【0017】
また、本発明は、下記の段階を含むことを特徴とする光架橋型ヒアルロン酸スポンジの製造方法を提供する。
【0018】
(S1)下記化学式1で表される化合物を製造する段階;及び
(S2)前記化学式1で表される化合物に光開始剤を添加して光架橋型ヒアルロン酸スポンジを製造する段階。
【0019】
【化3】
【0020】
式中、
前記R及びRは、それぞれ独立してC0~C7のアルキル基であり、
前記R及びRは、それぞれ独立してC0~C1のアルキル基であり、
前記m及びnは、それぞれ独立して1~10,000の正の整数である。
【0021】
本発明において、前記(S1)段階は、下記の段階で構成されることを特徴とする。
【0022】
(S1A)ヒアルロン酸(Hyaluronic acid、HA)を水(HO)に溶解させて第1溶液を製造する段階;
(S1B)前記第1溶液に光架橋性官能基を有する化合物及び塩基を添加して第2溶液を製造する段階;及び
(S1C)前記第2溶液にアルコールを添加して沈殿物を生成して前記化学式Iで表される化合物を製造する段階。
【0023】
本発明において、前記光架橋性官能基を有する化合物は、メタアクリル無水物(Methacrylic anhydride)、アクリル無水物(acrylic anhydride)、3-ブテン酸無水物(3-butenoic anhydride)、4-ペンテン酸無水物(4-pentenoic anhydride)、5-ヘキセン酸無水物(5-hexenoic anhydride)、6-ヘプテン酸無水物(6-heptenoic anhydride)、7-オクテン酸無水物(7-octenoic anhydride)、8-ノナン酸無水物(8-nonenoic anhydride)及び9-デセン酸無水物(9-decenoic anhydride)からなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする。
【0024】
本発明において、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式2で表される化合物であることを特徴とする。
【0025】
【化4】
【0026】
本発明において、前記(S2)段階は、下記の段階で構成されることを特徴とする。
【0027】
(S2A)前記化学式1で表される化合物に光開始剤及び水(HO)を添加して水溶液を製造する段階;
(S2B)前記水溶液に紫外線(Ultraviolet Ray、UV)を照射して光架橋反応を行う段階;及び
(S2C)前記光架橋反応後、-40~40℃で凍結乾燥して光架橋型ヒアルロン酸スポンジを製造する段階。
【0028】
本発明において、前記光開始剤は、
2-ヒドロキシ1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]2-メチル-1-プロパノン(2-hydroxy-1-[4-(2-hydroxyethoxy)phenyl]2-methyl-1-propanone)、3-(4-ベンゾイルフェノキシ)-2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリド(3-(4-benzoylphenoxy)-2-hydroxy-N,N,N-trimethyl-1-propanaminium-chloride)、メチルジエタノールアミン(methyldiethanolamine)、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸ナトリウム(sodium phenyl-2,4,6-trimethylbenzoylphosphinate)、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(lithium phenyl-2,4,6-trimethylbenzoylphosphinate)、ベンジルジメチルケタル(benzyldimethylketal)、及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(1-hydroxy-cyclohexylphenylketone)からなる群から選ばれた1種以上であることを特徴とする。
【0029】
本発明の光架橋型ヒアルロン酸スポンジ及びその製造方法で言及されたすべての事項は、互いに矛盾しない限り、同様に適用される。
【発明の効果】
【0030】
本発明の光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジ及びその製造方法は、べたつきや流れ落ちがなく、柔軟性が付与されて身体のいろんな部位に使用でき、水分結合力に優れて組職再生に役立つことができ、生体適合性に非常に優れているため、身体に長期間貼り付けられる場合、皮膚内に吸収されるので、除去しなければならない手間を省くことができる。
【0031】
また、本発明の光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジ及びその製造方法は、光架橋反応により多様な長さの高分子を含むので、多孔性形態の医療用止血剤、創傷被覆材、癒着防止材などとして有用に活用可能である。
【0032】
本発明の効果は、以上で言及したこれらの効果に限定されなく、言及されていないまた他の効果は、特許請求の範囲の記載から当業者に明確に理解されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジ製造方法を概略的に示したブロック図である。
図2】本発明によって実施例1で製造された化学式2で表される化合物のH NMRスペクトラムである。
図3】本発明によって実施例1で製造された光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジ及び比較例1で製造された比較光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジの水分結合力及び柔軟性を確認したイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本明細書で使われる用語は、本発明での機能を考慮しながら、できるだけ現在広く使われている一般的な用語を選択したが、これは当分野に携わる技術者の意図または判例、新しい技術の出現などによって変わることができる。また、特定の場合は、出願人が任意に選定した用語もあり、この場合、当該発明の説明部分で詳しくその意味を記載する。したがって、本発明で使われる用語は、単純な用語の名称ではない、その用語が持つ意味と本発明の全般に亘る内容に基づいて定義される。
【0035】
他の意味で定義されない限り、技術的や科学的な用語を含めてここで使われるすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を持つ者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有している。一般的に使用される辞典に定義されているような用語は、関連技術の文脈上で有する意味と一致する意味を有するものと解釈すべきであり、本出願において明らかに定義しない限り、理想的や過度に形式的な意味と解釈されない。
【0036】
数値範囲は、該範囲に定義された数値を含む。本明細書の全般に亘って、与えられたすべての最大の数値限定は、より低い数値限定が明確に記載されているように、すべてのより低い数値限定を含む。本明細書の全般に亘って、与えられたすべての最小の数値限定は、より高い数値限定が明確に記載されているように、すべてのより高い数値限定を含む。本明細書の全般に亘って、与えられたすべての数値限定は、より狭い数値限定が明確に記載されているように、より広い数値範囲内のより好ましいすべての数値範囲を含む。
【0037】
以下、本発明の実施例を詳しく記述するが、下記実施例によって本発明が限定されないことは自明である。
【0038】
光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジ
【0039】
本発明は、光架橋型ヒアルロン酸共重合スポンジに関し、より詳しくは、 下記化学式1で表される化合物を含む光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジに関する。
【0040】
【化5】
【0041】
式中、
前記R及びRは、それぞれ独立してC0~C7のアルキル基であり、
前記R及びRは、それぞれ独立してC0~C1のアルキル基であり、
前記m及びnは、それぞれ独立して1~10,000の正の整数である。
【0042】
前記化学式1で表される化合物は、ヒアルロン酸を母体として、前記ヒアルロン酸に光架橋ができる官能基が添加された構造であることができ、より具体的に、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式2で表される化合物であることができる。
【0043】
【化6】
【0044】
光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジの製造方法
【0045】
本発明は、下記段階を含む光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジの製造方法を提供する。
【0046】
(S1)下記化学式1で表される化合物を製造する段階;及び
(S2)前記化学式1で表される化合物に光開始剤を添加して光架橋型ヒアルロン酸スポンジを製造する段階。
【0047】
【化7】
【0048】
式中、
前記R及びRは、それぞれ独立してC0~C7のアルキル基であり、
前記R及びRは、それぞれ独立してC0~C1のアルキル基であり、
前記m及びnは、それぞれ独立して1~10,000の正の整数である。前記(S1)段階は、化学式1で表される化合物を製造する段階であって、下記の段階で構成されることができる。
【0049】
(S1A)ヒアルロン酸(Hyaluronic acid、HA)を水(HO)に溶解させて第1溶液を製造する段階;
(S1B)前記第1溶液に光架橋性官能基を有する化合物及び塩基を添加して第2溶液を製造する段階;及び
(S1C)前記第2溶液にアルコールを添加して沈殿物を生成して前記化学式Iで表される化合物を製造する段階。
【0050】
前記化学式1で表される化合物は、ヒアルロン酸を母体として、前記ヒアルロン酸に光架橋が可能な官能基が添加された構造であることができ、より具体的に、前記化学式1で表される化合物は、下記化学式2で表される化合物であることができる。
【0051】
【化8】
【0052】
前記(S1A)段階は、ヒアルロン酸を水(HO)に溶解させて第1溶液を製造する段階であって、前記第1溶液を0~5℃で冷凍させる段階をさらに含むことができる。
【0053】
前記第1溶液は、前記ヒアルロン酸と水を1:4~100(ヒアルロン酸:水)の重量比で含むことができ、好ましくは、ヒアルロン酸と水を1:4~20(ヒアルロン酸:水)の重量比で含むことができ、最も好ましくは、1:8~12(ヒアルロン酸:水)の重量比で含むことができる。
【0054】
前記(S1B)段階は、前記(S1A)段階で製造された前記第1溶液に光架橋性官能基を有する化合物及び塩基を添加して第2溶液を製造する段階であってもよい。
【0055】
前記光架橋性官能基を有する化合物は、メタアクリル無水物(Methacrylic anhydride)、アクリル無水物(acrylic anhydride)、3-ブテン酸無水物(3-butenoic anhydride)、4-ペンテン酸無水物(4-pentenoic anhydride)、5-ヘキセン酸無水物(5-hexenoic anhydride)、6-ヘプテン酸無水物(6-heptenoic anhydride)、7-オクテン酸無水物(7-octenoic anhydride)、8-ノナン酸無水物(8-nonenoic anhydride)及び9-デセン酸無水物(9-decenoic anhydride)からなる群から選ばれた1種以上であることができる。
【0056】
前記光架橋性官能基を有する化合物は、前記化学式1で表される化合物に結合されて光架橋反応によって重合体を形成し、光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジの構造を形成することができるようになる。
【0057】
前記塩基は、水酸化ナトリウム(sodium hydroxide、NaOH)、炭酸ナトリウム(sodium carbonate、NaCO)、重炭酸ナトリウム(sodium bicarbonate、NaHCO)、水酸化カリウム(potassium hydroxide、KOH)、炭酸ナトリウム(potassium carbonate、KCO)、及び重炭酸ナトリウム(potassium bicarbonate、KHCO)からなる群から選ばれた1種以上であることができ、好ましくは、1~5Mの濃度を有する水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムであってもよく、最も好ましくは、1~3Mの濃度を有する水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムであってもよい。
【0058】
前記(S1B)段階において、塩基を添加することで光架橋性官能基を有する化合物の無水物結合を弱化させてヒアルロン酸に結合されているヒドロキシ(-OH)基と光架橋性官能基を有する化合物との間の重合反応を誘導して新しいエステル結合(ester bond)が生成されるように誘導する。
【0059】
前記(S1B)段階において、前記塩基を添加することでpHを5~9に維持させることができ、好ましくはpHを6~8で維持させることができる。前記pHが中性を維持することで、化学式1で表される化合物のエステル結合生成に効果的に反応が行われることができる。
【0060】
前記(S1C)段階は、前記(S1B)段階で製造された前記第2溶液にアルコールを添加することで沈殿物を生成し、前記化学式1で表される化合物を製造する段階であってもよい。
【0061】
前記アルコールは、分岐鎖状または直鎖状のC1~C4の低級アルコールであることができ、好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、及び1,4-ブタノールからなる群から選ばれた1種以上であることができ、最も好ましくは、エタノール及びイソプロパノールからなる群から選ばれた1種以上であることができる。
【0062】
前記(S1C)段階は、前記沈殿物を乾燥する段階をさらに含むことができる。前記乾燥は、真空乾燥、減圧乾燥、沸騰乾燥、熱風乾燥、噴霧乾燥または凍結乾燥であってもよき、好ましくは、真空乾燥または減圧乾燥することができ、最も好ましくは、真空乾燥できる。
【0063】
前記(S2)段階は、本発明による光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジを製造する段階であって、下記の段階で構成されることができる。
【0064】
(S2A)前記化学式1で表される化合物に光開始剤及び水(HO)を添加して水溶液を製造する段階;
(S2B)前記水溶液に紫外線(Ultraviolet Ray、UV)を照射して光架橋反応を行う段階;及び
(S2C)前記光架橋反応後、-40~40℃で凍結乾燥して光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジを製造する段階。
【0065】
より具体的に、前記(S2A)段階は、前記(S1)段階で製造された前記化学式1で表される化合物に光開始剤及び水(HO)を添加して水溶液を製造する段階であってもよい。
【0066】
前記光開始剤は、
2-ヒドロキシ1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]2-メチル-1-プロパノン(2-hydroxy-1-[4-(2-hydroxyethoxy)phenyl]2-methyl-1-propanone)、3-(4-ベンゾイルフェノキシ)-2-ヒドロキシ-N,N,N-トリメチル-1-プロパンアミニウムクロリド(3-(4-benzoylphenoxy)-2-hydroxy-N,N,N-trimethyl-1-propanaminium-chloride)、メチルジエタノールアミン(methyldiethanolamine)、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸ナトリウム(sodium phenyl-2,4,6-trimethylbenzoylphosphinate)、フェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィン酸リチウム(lithium phenyl-2,4,6-trimethylbenzoylphosphinate)、ベンジルジメチルケタル(benzyldimethylketal)、及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(1-hydroxy-cyclohexylphenylketone)からなる群から選ばれた1種以上であることができる。
【0067】
前記光開始剤は、前記化学式1で表される化合物に結合された光架橋性官能基と反応して紫外線の照射による重合反応を開始することができる。
【0068】
前記(S2A)段階では、前記化学式1で表される化合物:光開始剤は、1~100:1の重量比で混合することができ、好ましくは、前記化学式1で表示される化合物:光開始剤は5~50:1の重量比で混合することができ、最も好ましくは、 前記化学式1で表される化合物:光開始剤は10~30:1の重量比で混合することができる。
【0069】
前記(S2B)段階は、前記(S2A)段階で製造された前記水溶液に紫外線(Ultraviolet Ray、UV)を照射して光架橋反応を行う段階であってもよく、前記紫外線は、300~500nmであってもよく、好ましくは、350~450nmであってもよい。
【0070】
前記(S2C)段階は、前記(S2B)段階遂行後、-40~40℃で凍結乾燥して光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジを製造する段階であってもよい。
【0071】
前記凍結乾燥は、12~48時間の間行われることができ、好ましくは、18~36時間の間行われることができるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
前記凍結乾燥は、1~100mTorrの圧力で行われることができ、好ましくは、1~50mTorrの圧力で行われることができる。
【0073】
光架橋型ヒアルロン酸スポンジの用途
【0074】
本発明は、前記光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジを含む医療用止血剤、創傷被覆材または癒着防止材に利用されることができ、これらに限定されず、生分解性医療用素材として使用し得るものであれば容易に適用可能である。
【0075】
前記化学式1で表される化合物を含む光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジ及びその製造方法は、先に定義したものと同様であり、言及されたすべての事項は、互いに矛盾しない限り、同様に適用される。
【0076】
本発明の利点及び特徴、並びにそれらを達成する方法は、詳細に後述する実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は以下開示する実施例に限定されるものではなく、相異なる種々の形態で具現されることができ、ただし、これらの実施例は、本発明の開示を完全にするとともに、本発明の属する技術分野における通常の知識を持つ者に、発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇によって定義されるものに過ぎない。
【0077】
以下で言及された試薬及び溶媒は、特別な言及がない限り、Sigma Aldrich Korea社から購入したものであって、H NMRは、Varian Gemini-300(300MHz)スペクトロメーター (Palo Alto社製、California、USA)で測定した。
【0078】
<実施例1>光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジ
1.1.化学式2で表される化合物の製造
【0079】
【化9】
100mlの水(HO)に10gのヒアルロン酸(Hyaluronic acid、HA)(26mmol)を添加して第1溶液を製造し、前記第1溶液にメタアクリル無水物(Methacrylic anhydride)と3-ブテン酸無水物(3-butenoic anhydride)、及び3MのNaOHを添加して第2溶液を製造した。そして、前記第2溶液にエタノールを添加して沈殿物を生成し、前記沈殿物を精製して真空乾燥して化学式2で表される化合物を製造した。
【0080】
H NMR(300MHz、DO):δ(ppm)=5.9、5.6、(2H、-C=CH)、5.7、4.9、4.8、(3H、-CH=CH)、4.5-4.3(2H、CH)、3.8-3.0(10H、CH)、2.4-2.2(2H、CH)、1.7(3H、CH)、1.8(3H、CH)。
【0081】
収率(yield):83%
【0082】
1.2.化学式2で表される化合物を含む光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジ
【0083】
前記製造された化学式2で表される化合物と、光開始剤(2-ヒドロキシ1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]2-メチル-1-プロパノン)とを、20:1の重量比で混合した混合物を水に添加して水溶液を製造した。そして、前記水溶液に365nmの波長の範囲で紫外線(UV)を照射して光架橋反応を行い、-20℃及び5mTorrで凍結乾燥して化学式2で表される化合物を含む光架橋型ヒアルロン酸スポンジを製造した。
【0084】
<比較例1>比較光架橋型ヒアルロン酸スポンジ製造
【0085】
下記化学式3で表される化合物と、光開始剤(2-ヒドロキシ1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]2-メチル-1-プロパノン)とを、20:1の重量比で混合した混合物を水に添加して水溶液を製造した。そして、前記水溶液に365nmの波長範囲で紫外線(UV)を照射して光架橋反応を行い、-20℃及び5mTorrで凍結乾燥して化学式3で表される化合物を含む比較の光架橋型ヒアルロン酸スポンジを製造した。
【0086】
【化10】
【0087】
<実験例1>水分結合力の確認
【0088】
ヒアルロン酸の吸湿性並びに水分結合力及び柔軟性を確認するために、次のような実験を遂行した。まず、前記実施例1及び比較例1で製造された光架橋型ヒアルロン酸スポンジ及び比較の光架橋型ヒアルロン酸スポンジに個別的に水を落とした後、30分後確認し、その結果は、図3に示した。
【0089】
図3を参照すれば、比較例1で製造された比較光架橋型ヒアルロン酸スポンジの場合、反応基のアルキル基の長さが短く、これは架橋の長さが短くなるので、架橋されたスポンジは硬い性質を示す。したがって、水分に接触して曲げられると柔軟性が足りなくて砕けてしまう現象を観察することができる。一方、本発明による実施例1で製造された光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジの場合、アルキル基の長さが長くなった架橋剤が添加され、これは架橋の長さが長くなるので、架橋されたスポンジは比較例1よりも柔軟な性質を示すことを確認することができる。
【0090】
前記結果は、手術後または傷跡の皮膚に貼り付ける場合、本発明による光架橋型共重合ヒアルロン酸スポンジは、血または滲出物を吸収し、より柔軟性のある形態を有しやすく、湿潤環境を提供するのに有利であるので、臓器または皮膚再生に役立つことができることを意味する。
【0091】
以上の説明から、本発明の属する技術分野における当業者は、本発明のその技術的思想や必須特徴を変更することなく、他の具体的な形態で実施されることができる。これと係わって、前述した実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的なものではない。
図1
図2
図3